JP3712095B2 - 入出力バランス型フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入出力バランス型フィルタに関し、特に、携帯電話や自動車電話等の無線通信機器等に使用される入出力バランス型フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、携帯電話や自動車電話等の無線通信機器にあっては、送信系の回路のミキサ段と変調段との間に、フィルタ機能とインピーダンス変換機能を有する入出力バランス型フィルタと呼ばれる差動形のフィルタが使用されている。従来より、この種の入出力バランス型フィルタとしては、図13の電気等価回路図に示すものが知られている。このフィルタ101は、インダクタL21及びキャパシタC21からなるLC並列共振回路102と、インダクタL22及びキャパシタC22からなるLC並列共振回路103とを、結合キャパシタC25,C26を介して接続した回路構成を有している。そして、フィルタ101において、入力端子111aと入力端子112aとの間に入力された信号は、フィルタされると共にインピーダンス変換されて、出力端子111bと出力端子112bとの間から出力される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、入出力バランス型フィルタ101を構成する場合、従来、ディスクリート部品であるインダクタ部品やキャパシタ部品を組み合わせて、プリント基板等に形成した回路パターンを介して接続していたため、フィルタ101のサイズ(占有面積)が大きくなり、その小型化に限界があった。しかも、ディスクリート部品の個々の電気定数のばらつきにより、入出力バランス型フィルタ101の平衡伝送特性が劣化するという問題もあった。さらに、ディスクリート部品は、通常、その電気定数が所定の数値にランク設定されており、所望の特性を得るために電気定数を微調整することが困難であった。さらに、ディスクリート部品の実装状態によって、フィルタ101の特性が変動するという問題もあった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、小型で、良好な電気特性を安定して有し、かつ、その電気特性の調整が容易な入出力バランス型フィルタを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る入出力バランス型フィルタは、第1のLCフィルタ回路部と第2のLCフィルタ回路部を有し、前記第1のLCフィルタ回路部のコモン側ラインと前記第2のLCフィルタ回路部のコモン側ラインが、前記第1のLCフィルタ回路部および前記第2のLCフィルタ回路部とは別に設けられた一つの結合インダクタを介して相互に電気的に接続され、かつ、前記結合インダクタがグランドに落とされていないことを特徴とする。第1のLCフィルタ回路部と第2のLCフィルタ回路部はそれぞれ、例えばバンドパスフィルタである。
【0006】
以上の構成により、結合インダクタの中間点は位相の基準点となり、第1のLCフィルタ回路部と第2のLCフィルタ回路部のそれぞれの位相の基準点が同じになる。従って、入出力バランス型フィルタの位相特性の変動が抑えられる。
【0007】
また、本発明に係る入出力バランス型フィルタは、複数の絶縁層と、複数の第1のコイル導体パターン及び第1のキャパシタ導体パターンと、複数の第2のコイル導体パターン及び第2のキャパシタ導体パターンと、一つの結合インダクタ導体パターンとで積層体を構成すると共に、前記第1のコイル導体パターン及び第1のキャパシタ導体パターンにて第1のLCフィルタ回路部を構成し、前記第2のコイル導体パターン及び第2のキャパシタ導体パターンにて第2のLCフィルタ回路部を構成し、前記結合インダクタ導体パターンを介して前記第1のLCフィルタ回路部のコモン側ラインと前記第2のLCフィルタ回路部のコモン側ラインを相互に電気的に接続し、かつ、前記結合インダクタ導体パターンをグランドに落としていないことを特徴とする。ここに、結合インダクタ導体パターンは積層体の内部や表面に配設され、その形状は例えば線対称形状とされる。
【0008】
以上の構成により、第1のLCフィルタ回路部及び第2のLCフィルタ回路部が一つの積層体内に形成され、入出力バランス型フィルタが小型となる。そして、第1及び第2のLCフィルタ回路部を構成するインダクタやキャパシタの各電気定数と結合インダクタの電気的特性とが、コイル導体パターン、キャパシタ導体パターン及び結合インダクタ導体パターンの幾何学的な形状や寸法の設定により定まる。従って、これらの導体パターンを変更することにより、フィルタの設計パラメータを自由に選択することができ、フィルタの設計の自由度が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る入出力バランス型フィルタの実施の形態について添付の図面を参照して説明する。各実施形態において、同一部品及び同一部分には同じ符号を付した。
【0010】
[第1実施形態、図1〜図8]
本発明に係る入出力バランス型フィルタの第1実施形態の回路構成を図1に示す。入出力バランス型フィルタ1は、バンドパスフィルタとして機能する二つのLCフィルタ回路部15,16を備えている。LCフィルタ回路部15は、インダクタL1及びキャパシタC1からなるLC並列共振回路2と、インダクタL2及びキャパシタC2からなるLC並列共振回路3とを、結合キャパシタC5を介して接続した回路構成を有している。LCフィルタ回路部16は、インダクタL3及びキャパシタC3からなるLC並列共振回路4と、インダクタL4及びキャパシタC4からなるLC並列共振回路5とを、結合キャパシタC6を介して接続した回路構成を有している。
【0011】
LCフィルタ回路部15の入力端子11aはLC並列共振回路2のインダクタL1の途中(中間タップ)に接続され、出力端子11bはLC並列共振回路3のインダクタL2の途中(中間タップ)に接続されている。同様に、LCフィルタ回路部16の入力端子12aはLC並列共振回路4のインダクタL3の途中(中間タップ)に接続され、出力端子12bはLC並列共振回路5のインダクタL4の途中(中間タップ)に接続されている。そして、LCフィルタ回路部15のコモン側ライン8とLCフィルタ回路部16のコモン側ライン9は、一つの結合インダクタL5を介して接続されている。
【0012】
図1の回路構成を有する表面実装型の入出力バランス型フィルタ1の具体的な構成を図2に示す。LCフィルタ回路部15を構成しているLC並列共振回路2,3のインダクタL1,L2及びLCフィルタ回路部16を構成しているLC並列共振回路4,5のインダクタL3,L4は、それぞれ絶縁性を有するセラミックシート21上に形成されたコイル導体パターン31a〜31e,32a〜32e,33a〜33e,34a〜34eからなっている。また、LC並列共振回路2,3のキャパシタC1,C2、LC並列共振回路4,5のキャパシタC3,C4及び結合キャパシタC5,C6は、それぞれ絶縁性を有するセラミックシート23上に形成されたキャパシタ導体パターン39〜46により形成されている。
【0013】
セラミックシート21の表面の左側半分には、コイル導体パターン31a〜31eとコイル導体パターン32a〜32eとをそれぞれ形成している。これらコイル導体パターン31a〜31e及び32a〜32eは、セラミックシート21に形成したビアホール36を介して直列に電気的に接続され、LCフィルタ回路部15の螺旋状のインダクタL1及びインダクタL2をそれぞれ構成している。セラミックシート21の表面の右側半分には、コイル導体パターン33a〜33eとコイル導体パターン34a〜34eとをそれぞれ形成している。これらコイル導体パターン33a〜33e及び34a〜34eは、セラミックシート21に形成したビアホール36を介して直列に電気的に接続され、LCフィルタ回路部16の螺旋状のインダクタL3及びインダクタL4をそれぞれ構成している。
【0014】
インダクタL1を構成しているコイル導体パターン31a〜31eの各々は、インダクタL2を構成しているコイル導体パターン32a〜32eの各々に対して線対称となるように、かつ、インダクタL3を構成しているコイル導体パターン33a〜33eの各々に対して線対称となるようにセラミックシート21上に形成されている。同様に、インダクタL4を構成しているコイル導体パターン34a〜34eの各々は、インダクタL2を構成しているコイル導体パターン32a〜32eの各々に対して線対称となるように、かつ、インダクタL3を構成しているコイル導体パターン33a〜33eの各々に対して線対称となるようにセラミックシート21上に形成されている。従って、インダクタL1の巻方向は、インダクタL2の巻方向やインダクタL3の巻方向とは逆方向になり、インダクタL4の巻方向とは同方向になる。すなわち、互いに隣接するインダクタは互いに磁界を強め合う巻方向(逆方向)を有し、シート21の対角線方向に位置しているインダクタは互いに磁界を弱め合う巻方向(同方向)を有している。これにより、フィルタ1の平衡伝送特性を向上させることができる。
【0015】
一方、セラミックシート23の表面の左側半分には、キャパシタ導体パターン39,41,42,45をそれぞれ形成している。キャパシタ導体パターン39と41はLCフィルタ回路部15のキャパシタC1を構成し、キャパシタ導体パターン39と42はキャパシタC2を構成し、キャパシタ導体パターン41,42と45は結合キャパシタC5を構成している。同様に、セラミックシート23の表面の右側半分には、キャパシタ導体パターン40,43,44,46をそれぞれ形成している。キャパシタ導体パターン40と43はLCフィルタ回路部16のキャパシタC3を構成し、キャパシタ導体パターン40と44はキャパシタC4を構成し、キャパシタ導体パターン43,44と46は結合キャパシタC6を構成している。これらキャパシタ導体パターン39と40、キャパシタ導体パターン41,42と43,44、並びにキャパシタ導体パターン45と46は、それぞれセラミックシート23上に線対称となるように形成されている。
【0016】
そして、キャパシタ導体パターン39〜44の面積を大きくしてキャパシタC1〜C4の静電容量を大きくすると、LCフィルタ回路部15,16の中心周波数を低くすることができる。さらに、キャパシタ導体パターン45,46の面積を大きくして結合キャパシタC5,C6の静電容量を大きくすると、LCフィルタ回路部15,16の通過帯域幅を広くすることができる。
【0017】
さらに、セラミックシート22の表面には、結合インダクタ導体パターン38が形成されている。結合インダクタ導体パターン38はU字形状を有する線対称のパターン形状を有し、一つの結合インダクタL5を構成している。セラミックシート21,22,23等は誘電体粉末や磁性体粉末を結合剤等と一緒に混練したものをシート状にしたものである。各導体パターン31a〜34e,38〜46はAg,Pd,Ag−Pd,Ni,Cu等からなり、印刷等の方法により形成される。
【0018】
以上のセラミックシート21,22,23は、ダミー用セラミックシート24を間にして保護用セラミックシート25と共に積層された後、図3に示すように、一体的に焼成されて積層体50とされる。積層体50の手前側の側面には、LCフィルタ回路部15の入力端子11a及び中継端子51と、LCフィルタ回路部16の入力端子12a及び中継端子52とが形成されている。積層体50の奥側の側面には、LCフィルタ回路部15の出力端子11b及び中継端子53と、LCフィルタ回路部16の出力端子12b及び中継端子54とが形成されている。積層体50の左側端面にはLCフィルタ回路部15の中継端子55,56が形成され、右側端面にはLCフィルタ回路部16の中継端子57,58が形成されている。
【0019】
LCフィルタ回路部15の入力端子11aはコイル導体パターン31bの途中から延在した引出し部に接続され、出力端子11bはコイル導体パターン32bの途中から延在した引出し部に接続されている。LCフィルタ回路部16の入力端子12aはコイル導体パターン33bの途中から延在した引出し部に接続され、出力端子12bはコイル導体パターン34bの途中から延在した引出し部に接続されている。すなわち、入力端子11a,12a及び出力端子11b,12bは、外部回路とのインピーダンスマッチングのために、それぞれインダクタL1,L2,L3,L4の途中に接続され、中間タップ取出しを行っている。通常、インダクタL1〜L4を予め高インピーダンスに設計しておき、中間タップ取出し位置をインダクタL1〜L4の途中に設定する。そして、この中間タップ取出し位置を移動させることにより、フィルタ1の入出力インピーダンスを所望の数値に変更させることができる。具体的には、中間タップ取出し位置をキャパシタ導体パターン41〜44側に移動させると、フィルタ1の入出力インピーダンスは低下する。
【0020】
LCフィルタ回路部15の中継端子51は、インダクタL1の一端部(具体的にはコイル導体パターン31eの端部)及びキャパシタC1の一端部(具体的にはキャパシタ導体パターン39の一端部39a)に接続されている。中継端子55は、インダクタL1の他端部(具体的にはコイル導体パターン31aの端部)、キャパシタC1の他端部及び結合キャパシタC5の一端部(具体的にはキャパシタ導体パターン41の端部)に接続されている。中継端子56は、インダクタL2の一端部(具体的にはコイル導体パターン32aの端部)、キャパシタC2の一端部及び結合キャパシタC5の他端部(具体的にはキャパシタ導体パターン42の端部)に接続されている。中継端子53は、インダクタL2の他端部(具体的にはコイル導体パターン32eの端部)、結合インダクタL5の一端部(具体的には結合インダクタ導体パターン38の一端部38a)及びキャパシタC2の他端部(具体的にはキャパシタ導体パターン39の他端部39b)に接続されている。
【0021】
同様に、LCフィルタ回路部16の中継端子52は、インダクタL3の一端部(具体的にはコイル導体パターン33eの端部)及びキャパシタC3の一端部(具体的にはキャパシタ導体パターン40の一端部40a)に接続されている。中継端子57は、インダクタL3の他端部(具体的にはコイル導体パターン33aの端部)、キャパシタC3の他端部及び結合キャパシタC6の一端部(具体的にはキャパシタ導体パターン43の端部)に接続されている。中継端子58は、インダクタL4の一端部(具体的にはコイル導体パターン34aの端部)、キャパシタC4の一端部及び結合キャパシタC6の他端部(具体的にはキャパシタ導体パターン44の端部)に接続されている。中継端子54は、インダクタL4の他端部(具体的にはコイル導体パターン34eの端部)、結合インダクタL5の他端部(具体的には結合インダクタ導体パターン38の他端部38b)及びキャパシタC2の他端部(具体的にはキャパシタ導体パターン40の他端部40b)に接続されている。
【0022】
LCフィルタ回路部15のコモン側ライン8は、中継端子51,53及びキャパシタ導体パターン39にて形成されている。LCフィルタ回路部16のコモン側ライン9は、中継端子52,54及びキャパシタ導体パターン40にて形成されている。そして、コモン側ライン8,9は、結合インダクタ導体パターン38を介して電気的に接続されている。
【0023】
このような構成を有する入出力バランス型フィルタ1は、結合インダクタ導体パターン38の中間点がLCフィルタ回路部15,16のそれぞれの位相の基準点となる。従って、LCフィルタ回路部15,16が同じ位相の基準点を有することになり、フィルタ1の位相特性の変動が抑えられる。さらに、結合インダクタ導体パターン38の幾何学的な形状や寸法を変更することにより、フィルタ1の減衰特性において極の位置を変えることができる。例えば、図4及び図5に示すような凸字形状の結合インダクタ導体パターン38A,38B、あるいは図6及び図7に示すようなH字形状の結合インダクタ導体パターン38C,38Dに変更すると、図8に示すように極の位置が変わる。図8において、曲線A1は図2に示されている結合インダクタ導体パターン38を有したフィルタ1の減衰特性を表示し、曲線A2は図4に示されている結合インダクタ導体パターン38Aを有したフィルタの減衰特性を表示し、曲線A3は図5に示されている結合インダクタ導体パターン38Bを有したフィルタの減衰特性を表示し、曲線A4は図6に示されている結合インダクタ導体パターン38Cを有したフィルタの減衰特性を表示し、曲線A5は図7に示されている結合インダクタ導体パターン38Dを有したフィルタの減衰特性を表示している。
【0024】
また、LCフィルタ回路部15,16を構成しているインダクタL1〜L5及びキャパシタC1〜C6が、一つの積層体50に内蔵されているので、プリント基板への実装時における占有面積が小さいコンパクトな入出力バランス型フィルタ1を得ることができる。さらに、LCフィルタ回路部15,16に対する周囲温度や実装状態等の動作条件が略同じになり、安定した特性を有する入出力バランス型フィルタ1を得ることができる。また、LCフィルタ回路部15,16を構成するインダクタL1〜L4及びキャパシタC1〜C6の各電気定数と結合インダクタL5の電気的特性とが、コイル導体パターン31a〜34e、キャパシタ導体パターン39〜46、結合インダクタ導体パターン38の幾何学的な形状や寸法に応じて定まる。従って、導体パターン31a〜34e等を変更するだけで、フィルタ1の設計パラメータを自由に選択することができ、フィルタ1の設計変更を容易に行うことができる。
【0025】
さらに、LCフィルタ回路部15を構成している導体パターン31a〜32e,39,41,42,45とLCフィルタ回路部16を構成している導体パターン33a〜34e,40,43,44,46とは、シート21,23上に並置されかつ線対称に形成されるので、導体パターン31a〜34e等を形成する際の製造条件が等しくなる。従って、得られるLCフィルタ回路部15の共振回路定数とLCフィルタ回路部16の共振回路定数が略等しくなる。しかも、結合インダクタ導体パターン38が線対称形状であるので、入出力バランス型フィルタ1は安定した良好な平衡伝送特性を得ることができる。
【0026】
[第2実施形態、図9〜図11]
本発明に係る入出力バランス型フィルタの第2実施形態の回路構成を図9に、その具体的な構成の分解斜視図を図10に、外観斜視図を図11に示す。この入出力バランス型フィルタ61は、前記第1実施形態の入出力バランス型フィルタ1のような中間タップによる入出力の取出しに代えて、キャパシタC7,C8,C9,C10による入出力の取出しを行うようにしたものである。
【0027】
入出力の取出しを行うキャパシタC7〜C10は、図10に示すように、セラミックシート23上に形成されたキャパシタ導体パターン41a〜44a,41b〜44b,71〜74からなっている。すなわち、キャパシタ導体パターン71と41a,41bはキャパシタC7を構成し、キャパシタ導体パターン72と42a,42bはキャパシタC8を構成し、キャパシタ導体パターン73と43a,43bはキャパシタC9を構成し、キャパシタ導体パターン74と44a,44bはキャパシタC10を構成している。
【0028】
そして、キャパシタ導体パターン71の端部は入力端子11aに接続され、キャパシタ導体パターン72の端部は出力端子11bに接続され、キャパシタ導体パターン73の端部は入力端子12aに接続され、キャパシタ導体パターン74の端部は出力端子12bに接続されている。キャパシタ導体パターン41a,41bの端部は中継端子55に接続され、キャパシタ導体パターン42a,42bの端部は中継端子56に接続され、キャパシタ導体パターン43a,43bの端部は中継端子57に接続され、キャパシタ導体パターン44a,44bの端部は中継端子58に接続されている。このようにすれば、フィルタ61の入力側及び出力側インピーダンスを低下させることができ、入出力インピーダンスの設計の自由度が高くなる。
【0029】
[第3実施形態、図12]
本発明にかかる入出力バランス型フィルタの第3実施形態の斜視図を図12に示す。この入出力バランス型フィルタ81は、前記第1実施形態で説明した入出力バランス型フィルタ1において、結合インダクタ導体パターン38を省略し、替わりに積層体50の側面に結合インダクタ導体パターン82を配置したものと同様のものである。
【0030】
このような構成を有する入出力バランス型フィルタ81は、結合インダクタ導体パターン82の中間点がLCフィルタ回路部15,16のそれぞれの位相の基準点となる。従って、LCフィルタ回路部15,16が同じ位相の基準点を有することになり、フィルタ81の位相特性の変動を抑えることができる。なお、結合インダクタ導体パターン82をレーザ等によるトリミングによりその一部を削除することにより、製品化された後においてもフィルタ特性の微調整が可能となる。
【0031】
[他の実施形態]
本発明にかかる入出力バランス型フィルタは以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0032】
フィルタの入力側に接続される外部回路と出力側に接続される外部回路のそれぞれのインピーダンスが異なる場合には、例えばフィルタの入力側の取出しには中間タップによる取出し手段を適用し、出力側の取出しにはキャパシタによる取出し手段を適用してもよい。
【0033】
さらに、LCフィルタ回路部の結合キャパシタは必ずしも必要なものではなく、仕様によっては省略しても良い。また、LCフィルタ回路部も、LC並列共振回路を多段化したものに限定されない。
【0034】
また、前記実施形態は、シートを積層して一体的に焼結するものであるが、必ずしもこれに限定されない。シートは予め焼結されたものを用いてもよい。また、以下に説明する製法によってフィルタを生産してもよい。印刷等の手段によりペースト状の絶縁性材料を塗布、乾燥して絶縁性膜を形成した後、この絶縁性膜の表面にペースト状の導電体材料を塗布、乾燥してコイル導体パターンやキャパシタ導体パターンを形成する。こうして順に重ね塗りをすることによって積層構造を有するフィルタが得られる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、結合インダクタの中間点が第1及び第2のLCフィルタ回路部のそれぞれの位相の基準点となる。従って、第1及び第2のLCフィルタ回路部が同じ位相の基準点を有することになり、位相特性の変動が少なく、位相特性の安定した入出力バランス型フィルタを得ることができる。さらに、結合インダクタ導体パターンの幾何学的な形状や寸法を変更することにより、フィルタの減衰特性において極の位置を容易に変えることができる。
【0036】
また、第1及び第2のLCフィルタ回路部が、一つの積層体に内蔵されているので、プリント基板への実装時における占有面積が小さいコンパクトな入出力バランス型フィルタを得ることができる。さらに、第1及び第2のLCフィルタ回路部に対する周囲温度や実装状態等の動作条件が略同じになり、安定した特性を有する入出力バランス型フィルタを得ることができる。また、第1及び第2のLCフィルタ回路部を構成するインダクタ及びキャパシタの各電気定数と結合インダクタの電気的特性とが、コイル導体パターン、キャパシタ導体パターン、結合インダクタ導体パターンの幾何学的な形状や寸法に応じて定まることにより、これらの導体パターンを変更するだけで、フィルタの設計パラメータを自由に選択することができ、フィルタの設計変更を容易に行うことができる。
【0037】
さらに、第1のLCフィルタ回路部を構成している導体パターンと第2のLCフィルタ回路部を構成している導体パターンが絶縁層上に並置されかつ線対称に形成されるので、導体パターンを形成する際の製造条件が等しくなる。従って、得られる第1のLCフィルタ回路部の共振回路定数と第2のLCフィルタ回路部の共振回路定数が略等しくなる。しかも、結合インダクタ導体パターンが線対称形状であるので、入出力バランス型フィルタは安定した良好な平衡伝送特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る入出力バランス型フィルタの第1実施形態の電気等価回路図。
【図2】図1に示した入出力バランス型フィルタの構成を示す分解斜視図。
【図3】図2に示した入出力バランス型フィルタの外観を示す斜視図。
【図4】図2に示した結合インダクタ導体パターンの変形例を示す斜視図。
【図5】図2に示した結合インダクタ導体パターンの別の変形例を示す斜視図。
【図6】図2に示した結合インダクタ導体パターンのさらに別の変形例を示す斜視図。
【図7】図2に示した結合インダクタ導体パターンのさらに別の変形例を示す斜視図。
【図8】結合インダクタ導体パターンを変更したときのフィルタの減衰特性を示すグラフ。
【図9】本発明に係る入出力バランス型フィルタの第2実施形態の電気等価回路図。
【図10】図9に示した入出力バランス型フィルタの構成を示す分解斜視図。
【図11】図10に示した入出力バランス型フィルタの外観を示す斜視図。
【図12】本発明に係る入出力バランス型フィルタの第3実施形態を示す斜視図。
【図13】従来の入出力バランス型フィルタの電気等価回路図。
【符号の説明】
1,61,81…入出力バランス型フィルタ
2,3,4,5…LC並列共振回路
8,9…コモン側ライン
11a,12a…入力端子
11b,12b…出力端子
15,16…LCフィルタ回路部
21,22,23,24,25…セラミックシート
31a〜34e…コイル導体パターン
38,38A〜38D,82…結合インダクタ導体パターン
39〜46…キャパシタ導体パターン
50…積層体
L1,L2,L3,L4…インダクタ
L5…結合インダクタ
C1,C2,C3,C4…キャパシタ
C5,C6…結合キャパシタ
Claims (6)
- 第1のLCフィルタ回路部と第2のLCフィルタ回路部を有し、前記第1のLCフィルタ回路部のコモン側ラインと前記第2のLCフィルタ回路部のコモン側ラインが、前記第1のLCフィルタ回路部および前記第2のLCフィルタ回路部とは別に設けられた一つの結合インダクタを介して相互に電気的に接続され、かつ、前記結合インダクタがグランドに落とされていないことを特徴とする入出力バランス型フィルタ。
- 複数の絶縁層と、複数の第1のコイル導体パターン及び第1のキャパシタ導体パターンと、複数の第2のコイル導体パターン及び第2のキャパシタ導体パターンと、一つの結合インダクタ導体パターンとで積層体を構成すると共に、前記第1のコイル導体パターン及び第1のキャパシタ導体パターンにて第1のLCフィルタ回路部を構成し、前記第2のコイル導体パターン及び第2のキャパシタ導体パターンにて第2のLCフィルタ回路部を構成し、前記結合インダクタ導体パターンを介して前記第1のLCフィルタ回路部のコモン側ラインと前記第2のLCフィルタ回路部のコモン側ラインを相互に電気的に接続し、かつ、前記結合インダクタ導体パターンをグランドに落としていないことを特徴とする入出力バランス型フィルタ。
- 前記結合インダクタ導体パターンが前記積層体の内部に配設されていることを特徴とする請求項2記載の入出力バランス型フィルタ。
- 前記結合インダクタ導体パターンが前記積層体の表面に配設されていることを特徴とする請求項2記載の入出力バランス型フィルタ。
- 前記結合インダクタ導体パターンが線対称形状であることを特徴とする請求項2記載の入出力バランス型フィルタ。
- 前記第1のLCフィルタ回路部と前記第2のLCフィルタ回路部がそれぞれバンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の入出力バランス型フィルタ。
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