JP3710271B2 - 平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの二方式が知られている。ツーシートタイプの平版印刷版については、特開昭57−158844号公報に詳しく記載されている。又、モノシートタイプについては、特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
本発明が対象とする、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、更にその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成に成っている。この平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュ・オフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)が施される。また版面の保護のために仕上げ処理が通常施されている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
DTR法を用いた平版印刷版では、露光によって感光核を生じたハロゲン化銀結晶は化学現像によって黒化銀となり、一方未感光のハロゲン化銀結晶は現像液中の銀塩錯化剤により銀塩錯体となって物理現像核まで拡散し、核の存在下で物理現像を生起して銀画像部を形成する。
【0008】
本発明が対象とするアルミニウム平版印刷版は、従来から一般的に用いられている、ハロゲン化銀乳剤層の上に物理現像核を有する平版印刷版とは構成が異なり、ハロゲン化銀乳剤層の下に物理現像核を有する構成になっている。この両者の構成の違いは、製版処理によって形成された銀画像の性質に影響を及ぼすことが分かってきた。
【0009】
即ち、乳剤層中の銀塩錯体が上(現像液側)に拡散するか、または下(支持体側)に拡散するかによって、転写効率等が異なり転写銀の出来方に影響することが考えられる。つまり、本発明が対象とするアルミニウム平版印刷版は、転写効率(画像形成効率)が劣り、転写銀量の少ない銀画像ができやすく、この転写銀量の少ない銀画像部、例えば細線や網点の縁部分は印刷初期段階で画像が消失するという、アルミニウム平版印刷版特有の問題をかかえていた。この問題は、平版印刷版の銀画像が印刷物に忠実に再現できないという印刷再現性低下の原因になっていた。
【0010】
印刷再現性とは、平版印刷版の銀画像と同じ画像が印刷物に忠実に再現できることを云う。印刷再現性が良い場合、印刷する前に、平版印刷版の銀画像を見て、印刷物の画像が分かるという利点があり、これは平版印刷版を製版する際に重要である。印刷再現性が悪い場合、所望の印刷物が得られるかどうかは印刷しないと分からないという問題があり、製版、印刷の作業効率を低下させていた。
【0011】
一方、DTR法を利用した平版印刷版には、製版カメラで数秒〜数十秒間の露光を与えて製版するカメラタイプと、レーザー光(ヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザー、発光ダイオード等)を用いてダイレクト製版する走査型露光用平版印刷版が知られている。近年、走査型露光用の平版印刷版を用いたCTP(コンピュータ・ツー・プレート)システムによってカラー印刷が可能になった。しかしながら、上記印刷再現性の問題は4色印刷するカラー印刷において、特に重大な問題であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、平版印刷版の版面上の銀画像を印刷物に忠実に再現することができる平版印刷版の製版方法を提供することである。特に走査型露光用平版印刷版を用いたカラー印刷に好適な製版方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を露光した後、現像液による処理、ハロゲン化銀乳剤層を除去するための水洗液による処理、および仕上げ液による処理を行う製版方法において、該水洗液がアルカノールアミン、メソイオン性化合物、チオエーテル化合物の中から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする平版印刷版の製版方法、によって達成された。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明が対象とする平版印刷版の製版方法において、水洗処理は現像後のハロゲン化銀乳剤層をウォッシュ・オフ(剥離除去)する役目があり、仕上げ処理は版面の保護および銀画像部の感脂化の役目がある。本発明者は水洗液または仕上げ液にハロゲン化銀溶剤を含有させることによって、アルミニウム平版印刷版の印刷再現性が向上することを見いだした。
【0015】
本発明の作用について、次のようなことが推測される。銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)によって形成された銀画像には、還元された金属銀を初め色々な種類の銀コンプレックスが存在する。転写銀量の多い部分は、主に安定した金属銀で構成されているため、充分に感脂化され、インキ受理性を発現し、また充分な耐刷力を有する。一方、本発明が対象とするアルミニウム平版印刷版は、DTR現像によって転写銀量の少ない銀画像ができやすい。特に細線画像や網点画像の縁部分は少ない転写銀量で形成されやすい。この転写銀量の少ない部分は、銀コンプレックスの存在比率が高いために、耐刷力が弱く、画像がすぐに消失する。このことが製版後の版面の銀画像と印刷物の画像の再現性を低下させている。従ってDTR現像で形成された銀画像が水洗処理(ウォッシュ・オフ)で表面に露出するとき、もしくは露出した後に銀画像にハロゲン化銀溶剤を作用させることによって、銀コンプレックスが除去され、その結果印刷再現性が向上していると推測される。
【0016】
走査型露光においては、画質はビーム径とビームの絞りに依存する。ビーム径が大きい場合またはビームの絞りが甘い場合は、細線や網点画像にフリンジが生じやすい。そのフリンジ部は、見かけ上、版面の画像を形成しているが、少ない転写銀量で形成されているため、印刷初期段階で画像が消失し、印刷再現性を低下させていた。従って、本発明はアルミニウム平版印刷版を各種タイプの走査型露光に適用可能とし、これをもってカラー印刷を可能にした。
【0017】
本発明に用いられるハロゲン化銀溶剤としては、チオ硫酸アンモニウム及びチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、メソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物が挙げられる。
【0018】
これらのハロゲン化銀溶剤の中でも特にアルカノールアミン、メソイオン性化合物及びチオエーテル化合物が好ましい。アルカノールアミンとしては、例えば2ー(2ーアミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、Nーメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。水洗液または仕上げ液への添加量は処理液1リットル当り0.1〜100g、好ましくは1〜50gである。
【0019】
本発明に用いられるメソイオン性化合物は化1で示される化合物である。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、Mは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及び、セレン原子からなる群から選択される複素環化合物であり、その構造の中に5員環、又は、6員環を少なくとも1つは含む構造を有するものであり、例えば、イミダゾリウム環、ピラゾリウム環、オキサゾリウム環、イソキサゾリウム環、チアゾリウム環、イソチアゾリウム環、1,3−ジチオール環、1,3,4−オキサジアゾリウム環、1,2,3−オキサジアゾリウム環、1,3,2−オキサジアゾリウム環、1,2,3−トリアゾリウム環、1,3,4−トリアゾリウム環、1,3,4−チアジアゾリウム環、1,2,3−チアジアゾリウム環、1,2,4−チアジアゾリウム環、1,2,3,4−オキサトリアゾリウム環、1,2,3,4−テトラゾリウム環、1,2,3,4−チアトリアゾリウム環、等である。また、A-は−O-、−S-又は−N-−Rを表し、ここにRはアルキル基(好ましくは炭素数6個以下)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3個以上6個以下)、アルケニル基(好ましくは炭素数2個以上6個以下)、アルキニル基(好ましくは炭素数2個以上6個以下)、アラルキル基、アリール基(好ましくは炭素数6個以上12個以下)、又は、複素環基(好ましくは炭素数6個以下)を表す。
【0022】
本発明において用いられるメソイオン化合物の中では、下記化2、又は、化3で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
化2中、R1、R3は、同じでも異なっていても良く、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を示し、R2は水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基をす。又、R1とR2又はR2とR3で環を形成していても良い。
【0025】
【化3】
【0026】
化3中、Xは、S又はOを示し、R4、R5は、同じでも異なっていても良く、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、ジアルキルアミノ基を示す。
【0027】
本発明に用いられる化2にて表わされる一般式の化合物の具体例としては、特開平4−324448号明細書で開示されているものであり、化4〜化14を例示するが、本発明はもちろんこれらのみに限定されるものではない。
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
【0038】
【化14】
【0039】
本発明に用いられる化3にて表わされる一般式の化合物の具体例としては、特開平4−328559号明細書で開示されているものであり、化15〜化28を例示するが、本発明はもちろんこれらのみに限定されるものではない。
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
【化22】
【0048】
【化23】
【0049】
【化24】
【0050】
【化25】
【0051】
【化26】
【0052】
【化27】
【0053】
【化28】
【0054】
本発明に用いられる、化2、又は、化3にて表わされる一般式の化合物の添加量は種々の条件により異なるが、処理液1リットル当り0.01g〜10gであり、好ましくは0.1g〜5gの範囲である。
【0055】
本発明に用いられるチオエーテル化合物は下記一般式(1)で表される。
【0056】
【化29】
【0057】
式中R1及びR2はそれぞれアルキル基を表し、R1とR2とは同一でも異なっていてもよく、結合して環を形成してもよい。またこれらのアルキル基はアミノ基、アミド基、アンモニウム基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基、アミノカルボニル基又はアミノスルホニル基等で置換されていてもよい。またこれらのアルキル基は炭素数が1〜5のものが好ましい。R3は他の二価基が介在してもよいアルキレン基を表す。mは0又は1〜4の整数を表し、mが2以上のとき、各々のR3は同一であっても異なっていてもよい。
本発明に用いられるチオエーテル化合物の具体例を以下に示す。
【0058】
【化30】
【0059】
【化31】
【0060】
【化32】
【0061】
【化33】
【0062】
【化34】
【0063】
【化35】
【0064】
【化36】
【0065】
【化37】
【0066】
【化38】
【0067】
【化39】
【0068】
【化40】
【0069】
【化41】
【0070】
【化42】
【0071】
【化43】
【0072】
【化44】
【0073】
【化45】
【0074】
【化46】
【0075】
【化47】
【0076】
【化48】
【0077】
【化49】
【0078】
【化50】
【0079】
【化51】
【0080】
【化52】
【0081】
上記チオエーテル化合物の添加量は、処理液1リットル当り0.01g〜20gであり、好ましくは0.1g〜10gの範囲である。
【0082】
本発明に用いられる水洗液には、上記ハロゲン化銀溶剤の他に、pHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、タンパク質分解酵素を含有するのが好ましい。タンパク質分解酵素はゼラチンなどのタンパク質を加水分解できる植物性または動物性酵素で、公知のものが用いられる。例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ(例えば、長瀬産業(株)製のビオプラーゼ)等が挙げられる。この中でも特に、トリプシン、パパイン、フィシン、細菌プロティナーゼが好ましい。水洗液中への酵素の含有量は、0.1〜30g/リットル程度が適当である。
【0083】
更に、水洗液に銀画像部を親油性にする化合物(親油化剤)を含有するのが好ましい。親油化剤としてはメルカプト基またはチオン基を有する化合物が好ましく用いられる。特に好ましくは、メルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物であり、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されている。以下にその具体例を挙げるが、これらに限定されることはない。
【0084】
2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジエチル−ベンゾイミダゾリン−2−チオン、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2´−ジメルカプト−1,1´−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ〔1,2−a〕−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0085】
処理液中への親油化剤の含有量は、0.01〜10g/リットル程度が適当である。
【0086】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、通常、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が採用されている。
【0087】
水洗処理によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。本発明において、仕上げ液には上記ハロゲン化銀溶剤の他に、非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。また、上記親油化剤及びタンパク質分解酵素を含有することが好ましい。
【0088】
本発明に用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤を含ませることができる。また、上記親油化剤を含有させるのが好ましい。現像液のpHは通常10〜14、好ましくは12〜14である。
【0089】
本発明が対象とする平版印刷版は、アルミニウム支持体上に物理現像核及びハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀主体(塩化銀50モル%以上のものを意味する)が好ましい。
【0090】
また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感あるいはスペクトル増感することができる。
【0091】
本発明において、走査型露光用平版印刷版に好適に用いられる増感色素は、アルゴンレーザー対応として、特願平7−283280号、同平8−27723号に記載の増感色素、赤色及び赤外レーザー対応として、特開平2−251853号、同平3−274055号、同平4−9853号、特願平8−45874号に記載の増感色素が挙げられる。
【0092】
ハロゲン化銀乳剤層の親水性コロイドとしてはゼラチンを用いることがハロゲン化銀粒子を作成する際に好ましい。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチンを用いることができる。また、それらの修飾ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチンなど)も用いることができる。また、更にポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有させることができる。用いられる親水性コロイドとしては、現像後の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まないことが望ましい。ハロゲン化銀乳剤層中のゼラチン量は1〜10g/m2程度で、好ましくは2〜5g/m2である。
【0093】
本発明に用いられる粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板は、例えば米国特許第5,427,889号公報に記載されているものが挙げられる。
【0094】
本発明で用いられる物理現像核層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできる。これらの詳細及び製法については、例えば、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。
【0095】
本発明において、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に、特開平3−116151号公報記載の水膨潤性中間層、同平4−282295号公報に記載の疎水性重合体ビーズを含有する中間層を設けてもよい。
【0096】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0097】
実施例1
電解粗面化処理と陽極酸化によって、平均直径約5μmのプラトー上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつこれらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。
【0098】
このアルミニウム支持体上に、少量の親水性バインダーを含む硫化パラジウムの物理現像核液を塗布し乾燥した。物理現像核層に含まれるPdS核量は3mg/m2であった。
【0099】
ハロゲン化銀乳剤を次のようにして調整した。不活性ゼラチンの水溶液を60℃に保ち、強く撹拌しながら、硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を同時に4ml/minの添加速度で加えることにより塩沃臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を調整した。これらの乳剤粒子は平均サイズが0.3μであり、全粒子の90重量%以上が平均粒子サイズの±30%以内に含まれていた。こうして得られた乳剤を通常の方法で沈殿、水洗処理を行なった後再溶解し、さらにチオ硫酸ナトリウム、塩化金酸を加え化学増感し、更にオルソ増感した。
【0100】
作成したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え塗布液を作成した(pHは4.0)。この塗布液を前記物理現像核が塗布されたしたアルミニウム支持体に銀量が2g/m2(ゼラチン量は3g/m2)になるように塗布、乾燥して平版印刷版を作成した。
【0101】
このようにして得られた平版印刷版に、解像力チャートを用いて50μmの細 線が得られるようにカメラ露光し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−8N自動現像機)で処理して平版印刷版を作成した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(22℃、15秒間浸漬)、水洗処理工程(33℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層を剥離する)、仕上げ処理工程(21℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程から構成されている。
現像液、水洗液及び仕上げ液は下記に示す。
【0102】
水を加えて全量を1000ccにする。
pHは13.4に調製する。
【0103】
<水洗液A>
第1燐酸カリウム 40g
水を加えて全量を1000ccに調整する。pHは6.0に調整した。
【0104】
<水洗液B>
上記水洗液Aにモノエタノールアミンを6g加えた。
【0105】
<水洗液C>
上記水洗液Aにトリエタノールアミンを6g加えた。
【0106】
<水洗液D>
上記水洗液Aに2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールアミンを6g加えた。
【0107】
<水洗液E>
上記水洗液Aに化14の化合物を1g加えた。
【0108】
<水洗液F>
上記水洗液Aに化19の化合物を1g加えた。
【0109】
<水洗液G>
上記水洗液Aに化35の化合物を1g加えた。
【0110】
<仕上げ液A>
アラビアゴム 10g
タンパク質分解酵素(ビオプラーゼAL−15) 1g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
第1燐酸ナトリウム 10g
水を加えて全量を1000ccに調整する。pH6.0に調整した。
【0111】
得られた印刷版を印刷機ハイデルベルグMO(Heidelberg社製オフセット印刷機の商標)にかけ印刷した。印刷を開始して100枚目の印刷物について、細線の再現性をマイクロデンシトメーターで測定した。表1には印刷版上の50μmの細線が印刷物に再現された線幅を示す。尚、印刷物細線の数値が50μmに近いほど優れていることを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1より本発明の水洗液を用いると印刷版と印刷物の細線の差が減少し、ほぼ忠実に再現していることが分かる。
【0114】
実施例2
保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.25μmの、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムを銀 1モル当たり0.006ミリモルドープさせた塩沃臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を作成した。更に、この乳剤に硫黄金増感を施し、化29増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。得られたハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え、実施例1と同様に塗布、乾燥して走査型露光用平版印刷版を作成した。
【0115】
【化53】
【0116】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機(ビーム径30μm)で10%の網点画像が版面上に得られるように出力し、実施例1と同様に処理して印刷版を得た。得られた印刷版は実施例1と同様に印刷し、100枚印刷したときの印刷物の網点面積を測定した。その結果を表2に示す。印刷物の網点面積が10%に近いほど、版面画像が印刷物の画像に忠実に再現されていることを意味する。
【0117】
【表2】
【0118】
レーザー光源に対応できる走査型露光用平版印刷版において、本発明の印刷版は版面上の網点をほぼ忠実に再現している。
【0128】
【発明の効果】
本発明によれば、銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版を用いた印刷において、平版印刷版の版面上の画像と印刷物の画像の差を実質的になくすことができる。特に、走査型露光用平版印刷版においては、版面上の銀画像を印刷物に忠実に再現することによって、カラー印刷適性を向上させた。
Claims (1)
- 粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を露光した後、現像液による処理、ハロゲン化銀乳剤層を除去するための水洗液による処理、および仕上げ液による処理を行う製版方法において、該水洗液がアルカノールアミン、メソイオン性化合物、チオエーテル化合物の中から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
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