JP2004151290A - 平版印刷版の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の印刷諸特性を安定的に向上させた製版方法を提供することである。詳しくは、現像ラチチュードに優れ、耐刷力の改良された印刷特性を安定的に得ることができる処理方法を提供することである。
【解決手段】粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を現像処理した後、ハロゲン化銀乳剤層を除去する平版印刷版の処理方法において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
【選択図】 なし
【解決手段】粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を現像処理した後、ハロゲン化銀乳剤層を除去する平版印刷版の処理方法において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とし銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷版の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については 、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著 、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの2方式が知られている。ツーシートタイプの平版印刷版については、特開昭57−158844号公報に詳しく記載されている。又、モノシートタイプについては、特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、特開昭57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、同7−77805号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、更にその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成になっている。この平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液が塗布される。所謂、ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基またチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有することも一般的である。
【0008】
前記アルミニウム平版印刷版の製版における課題の1つとして、水洗処理時のハロゲン化銀乳剤層等のゼラチン層除去の問題がある。アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の水洗除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。このハロゲン化銀乳剤層の水洗除去が不十分な状態で製版されたアルミニウム平版印刷版は、印刷時にインキ受理性やインキ脱離性が著しく低下するという不都合が生じる。
【0009】
上記水洗処理は、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。
【0010】
また、アルミニウム平版印刷版の製版処理において、とくに現像条件(現像温度、現像時間、現像液の成分やpH等)の変化に対して現像ラチチュードが狭く、現像安定性に劣り、耐刷性が悪化するという問題がある。
【0011】
このような問題に対して、現像液においては特開2002−82442、同2000−162776号(特許文献1、2)等には現像液に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールを含有させることが記載されている。また、平版印刷版の耐刷性向上においては特開平7−72630号、同2001−201858号(特許文献3、4)に水溶性基を有する含窒素複素環化合物について記載されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献において各種の課題を解決することが記載されているが現像ラチチュードに満足できる耐刷性を得られていないのが実情である。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−8442号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開2000−162776号公報(第3頁)
【特許文献3】
特開平7−72630号公報(第2〜5頁)
【特許文献4】
特開2001−201858号公報(第11〜12頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の印刷諸特性を安定的に向上させた製版方法を提供することである。詳しくは、現像ラチチュードに優れ、耐刷力を飛躍的に改良された印刷特性を安定的に得ることができる処理方法を提供することである。
【0015】
【発明を解決する手段】
上記課題に対して、平版印刷版の構成層およびその処理液等の両方から探索を行った結果、両方の組み合わせの中に発明の目的を満たすものがあることを見いだし、検討を重ねた結果本発明に到達した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0016】
粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を現像処理した後、ハロゲン化銀乳剤層を除去する平版印刷版の処理方法において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
【0017】
また、本発明において平版印刷版の構成層中にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有させることで、現像液には実質的に現像主薬を含有させない、いわゆるアルカリ活性化液で処理する方法(アクチベータ型)において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することで、より優れた現像ラチチュードと耐刷性が得られる。また更に、該現像液中にアルカノールアミンを含有することで短時間での現像処理ラチチュードを向上させることができる。また、更に該平版印刷版の構成層にチオサリチル酸もしくはその誘導体を添加することによって更に長時間での現像ラチチュードも向上させる効果が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、平版印刷版に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物について以下に詳しく説明する。
【0019】
本発明の平版印刷版に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物において水溶性基とは、置換基にスルホ基もしくはカルボキシ基からなる酸基を有するものであり、下記一般式にて表される。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1は直接もしくはアルキレン基、またはアリーレン基を介して複素環の炭素原子もしくは窒素原子に結合する1もしくは2以上のスルホ基もしくはカルボキシ基を表し、Zは5ないし6員環の含窒素複素環を形成する原子群を表す。
【0022】
上記含窒素複素環としては、イミダリン環、イミダゾール環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、ピラゾール環、ピラゾロン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサゾロン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアゾロン環、セレナゾリン環、セレナゾール環、セレナゾロン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、テトラゾール環、ベンツイミダゾール環、ベンツトリアゾール環、インダゾール環、ベンツオキサゾール環、ベンツチアゾール環、ベンツセレナゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサジン環、チアジン環、テトラジン環、キナゾリン環、フタラジン環、ポリアザインデン環(例えばトリアザインデン環、テトラザインデン環、ペンタザインデン環等)等から選ばれることが望ましい。このうち特に好ましい含窒素複素環化合物としては、メルカプトテトラゾール、メルカプトチアジアゾール、メルカプトオキサジアゾール類であり、最も好ましくはメルカプトテトラゾール類である。以下にメルカプトテトラゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトオキサジアゾール類であらわされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
本発明に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に含有されるのが好ましいが、必要に応じて設けられる中間層あるいは保護層(オーバー層)に含有してもよく、また複数の層に含有してもよい。含有する量は、ハロゲン化銀乳剤層の場合は、ハロゲン化銀1モル当たり10−4〜10−2モル、好ましくは5×10−4〜10−3モルであり、その他の層の場合は前記の量より多い目(1〜5倍)に用いるのがよい。添加時期は、塗布液を塗布するまでの任意の時期でよい。本発明に用いられる水溶性基を有する含窒素複素環メルカプト化合物以外のメルカプト含窒素複素環化合物あるいは非メルカプト含窒素複素環化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明の平版印刷版には更にチオサリチル酸もしくはその誘導体を含有するのが好ましい。本発明のチオサリチル酸もしくはその誘導体としてはとしては下記一般式で表される。
【0027】
【化4】
【0028】
上記一般式中のR2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミド基を示す。以下に具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
本発明に用いられる、チオサリチル酸もしくはその誘導体はハロゲン化銀乳剤層に含有することが好ましいが必要に応じて中間層あるいはオーバー層に含有することも出来る。含有する量としては、ハロゲン化銀乳剤層の場合、ハロゲン化銀1モル当たり10−4〜10−2モル、好ましくは5×10−4〜10−3モルであり、その他の層の場合ではより多い目(1〜5倍)に用いる。
【0032】
本発明の平版印刷版において更に、構成層中にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を用いたアクチベータ型にすることができる。現像主薬として好ましくはポリヒドロキシベンゼン系現像主薬を含有する。ポリヒドロキベンゼン系現像主薬の量は、まったく現像主薬を含有しないアルカリ活性化液で現像したときにDTR現像を十分に生起するに必要な量(すなわちアルカリ活性化に必要な量)であり、塗布銀量等にもよるが、一般的には硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.2〜2モル、好ましくは0.3〜1モルである。
【0033】
本発明に用いられるポリヒドロキシベンゼン系現像主薬としては、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、クロルハイドロキノン、ブロモハイドロキノン、メチルハイドロキノン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を併用してもよい。好ましくは、ハイドロキノンである。また、本発明のアルミニウム印刷版には、上記したポリヒドロキシベンゼン系現像主薬の他に、メトールや1−フェニル−3−ピラゾリジノン類のような補助現像主薬を含有させるのが特に好ましい。特に3−ピラゾリジノン類が好ましく、ハイドロキノン1モルに対し0.03〜0.24モル、好ましくは0.06〜0.15モルである。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤層に含有する銀量は、硝酸銀換算で、2.5g/m2以下が好ましく、2.0g/m2以下がより好ましく、下限は、1g/m2程度である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(主としてゼラチン)の塗布量は0.5〜3g/m2、好ましくは1〜2g/m2である。
【0035】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらにヨウ化銀を含むものからなる。ハロゲン化銀結晶は、ロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいてもよい。特に、ロジウム塩及びイリジウム塩が好ましい。これらの添加量はハロゲン化銀1モル当り10−8〜10−3モルである。ハロゲン化銀の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし14面体粒子、さらにはコアシェル型、平板状粒子でもよい。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶であってもよく、その平均粒径は0.2〜0.8μmの範囲である。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩を含む、塩化銀が80モル%以上の単分散もしくは多分散結晶がある。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々な方法で増感することが出来る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、たとえばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用など当該技術分野において良く知られた方法で化学的に増感することが好ましい。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーとして主にゼラチンが用いられるが、その一部をデキストリン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換することもできる。ハロゲン化銀乳剤層のゼラチン量は、0.5〜4g/m2程度である。
【0038】
本発明において、物理現像核層には物理現像核として、銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶等を含有する。物理現像核層には、親水性バインダーを含んでいてもいなくても良いが、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含むことが出来、その含有量は0.5g/m2以下であることが好ましい。物理現像核層は、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬を含有してもよく、更にホルマリン、ジクロロ−s−トリアジン等の公知の硬膜剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明のアルミ平版印刷版は、粗面化及び陽極酸化されたアルミニウム支持体上に、物理現像核を担持させ、その上にハロゲン化乳剤層を塗設した平版印刷版である。この平版印刷版は、更に物理現像核とハロゲン化銀乳剤層の間に適宜中間層を設けることができ、またハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層を設けることができる。
【0040】
そのオーバー層、中間層はゼラチンなどの親水性ポリマーからなり、特開昭61−47946、同61−75338に記載されているようなポリメチルメタアクリレートラテックスやシリカなどのマット剤またはすべり剤を含むことができる。本発明において、ハロゲン化銀乳剤層およびその他の親水性コロイド層にはフィルター染料として、あるいは、イラジエーション防止などの目的で染料を含ませても良く、その他に、帯電防止剤、可塑剤や空気かぶり防止剤、硬膜剤及び塗布助剤を含むことができる。
【0041】
本発明の平版印刷版の製版処理に用いられる現像液について以下に説明する。本発明に用いられる現像液には、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有する。水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの水溶性基とは、スルホ基もしくはカルボキシ基からなる酸基のことである。水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくは誘導体は下記の一般式で表すことができる。
【0042】
【化7】
【0043】
式中、R3は水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アシル基を表す。これらの基は、更にスルホ基及びカルボキシ基以外の置換基を有してもよい。
【0044】
本発明の現像液に用いられる水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの使用量は、現像液1リットル当り2×10−5モル〜1×10−2モル、好ましくは1×10−4モル〜5×10−3モルである。以下に具体例を示すがこれらに限定されるものではない。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
本発明の現像液には更にアルカノールアミンを用いることが好ましく、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。使用量は現像液1リットル当り0.005モル〜1.5モル、好ましくは0.01モル〜1.0モルである。
【0048】
本発明の現像液には、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾール以外の添加剤として画像部を親油性にする化合物(親油化剤)を含有させてもよい。親油化剤としては、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、105、106ページに記載されている化合物が挙げられる。例えばメルカプト基またはチオン基を有する化合物、4級アンモニウム化合物等があり、特に好ましくは、メルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物であり、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されている。以下にその具体例を挙げるが、これらに限定されることはない。
【0049】
2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジエチル−ベンゾイミダゾリン−2−チオン、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2´−ジメルカプト−1,1´−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ〔1,2−a〕−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる現像液には、現像主薬、例えばハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−3ピラゾリジノン及びその誘導体等の3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、キレート剤、例えばエチレンジアミン4酢酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、アニオン性ゼラチン凝集剤、例えばポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体等の添加剤を含有させることができる。
【0051】
本発明に用いられる現像液のpHは10〜14が適当であり、より好ましくはpH12.0〜14.0の範囲である。また現像液の温度としては、15℃〜30℃の範囲が適当であり、現像時間は5sec〜30secが適当である。
【0052】
また、前述したように、平版印刷版にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有したアクチベータ型平版印刷版の現像処理に用いられる現像液には現像主薬は全く含まない方が好ましい。
【0053】
本発明の作用は、明確に分かっていないが、高pHのアルカリ液がアルミニウム印刷版の乳剤層に浸透すると内蔵されている現像主薬により極めて迅速な化学現像とDTR(物理)現像が進行し、印刷版にとって非常に良好なDTR銀が形成されるものと考えられる。
【0054】
本発明において、現像処理後にハロゲン化銀乳剤層及びその他の親水性コロイド層を除去する方法としては、水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、水洗液を吹き付けながらスクラブロールで剥離除去する方法、水洗液を吹き付けながらブレードによって剥離除去する方法、及び剥離シートを密着させて剥離した後水洗される方法が実施される。これらの水洗液にはpHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤を含有させてもよい。水洗液中には更にタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ)や、前記した親油化剤を含有させることができる。
【0055】
現像処理と水洗処理の間に、現像の進行を停止させる中和安定化処理を施してもよく、中和液に前記親油化剤を含有させてもよい。
【0056】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に用いられている。
【0057】
アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。とりわけ、インキを受容する銀画像部は強い親油性が必要であり、ゼラチン等の親油性を阻害する物質は完全に排除する必要がある。
【0058】
水洗処理によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。本発明において、仕上げ液には、非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。また、画像部の親油性を更に向上させるために、上記親油化剤を含有することが好ましい。更に上記酵素を含有することができる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが勿論本発明はこれだけに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
アルミニウム支持体の電解粗面化処理及び陽極酸化は米国特許第5,427,889号公報に記載の方法に従って、平均直径約5μmのプラト−上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつ これらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、中心線平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。
【0061】
上記アルミニウム支持体上に、少量の親水性バインダーを含む硫化パラジウムの物理現像核液を塗布し、その後乾燥した。物理現像核層に含まれるPdS核量は3mg/m2であった。
【0062】
ハロゲン化銀乳剤として、保護コロイドとして、アルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.25μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムをハロゲン化銀1モル当り6×10−6モルドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr15モル%、AgI0.4モル%)を作成した。その後フロキュレーションさせ、洗浄した。更にこの乳剤に硫黄金増感を施した後、赤色感光性の増感色素をハロゲン化銀1モル当たり1×10−3モル加えて分光増感した。
【0063】
このようにして作成したハロゲン化銀乳剤に下記表1に示す添加剤1、2を銀1モル当たり5×10−4モル添加して調整した乳剤にゼラチンと界面活性剤を加えて調節し、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上に銀量が2.5g/m2、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン)が2.5g/m2になるように塗布、乾燥して平版印刷材料を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−85N自動現像機)で処理して平版印刷版を作成した。現像温度20℃処理時間が8sec、現像温度23℃処理時間8、12、16sec、現像温度26℃処理時間16secになるように変化させ、水洗処理(35℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層をウオッシュオフする)、仕上げ処理(21℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程を経て製版された。
【0066】
現像液は以下の組成の現像液A、B、C及びDを用いた。
<現像液A>
水酸化ナトリウム 25g
ポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体
(平均分子量50万) 10g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 2g
無水亜硫酸ナトリウム 100g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
ハイドロキノン 15g
1−フェニル−3ピラゾリジノン 3g
水酸化ナトリウム 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.3
【0067】
<現像液B>
上記現像液Aに比較として添加剤A−3を0.8g加えた。
【0068】
<現像液C>
上記現像液AにC−1を0.8g加えた。
【0069】
<現像液D>
上記現像液Cにモノメチルエタノールアミンを50g加えた。
【0070】
用いた水洗液及び仕上げ液の組成を下記に示す。
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000ccに調整する。pHは6.0に調整した。タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0071】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
モノエタノールアミン 5.0g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
脱イオン水で1000mlとする。
pHは7.2に調整した。
【0072】
各々の現像液A、B、CおよびDにおいて上記表1記載の平版印刷版を現像処理し、耐刷力を評価した。
【0073】
耐刷力は10万枚までの印刷を行い、細線銀画像が印刷中に欠落する印刷枚数で評価した。評価としては以下に示す5段階で評価し、結果を表2に示す。
◎・・・ 8万枚以上
○・・・ 6万以上〜8万枚未満
△・・・ 4万以上〜6万枚未満
△×・・・2万以上〜4万枚未満
×・・・ 2万枚以下
【0074】
【表2】
【0075】
表2の結果より、水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有する本発明の平版印刷版(試料3及び4)を、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの誘導体を含有する現像液(現像液C及びD)で処理することで本発明の目的とする現像ラチチュードに優れた耐刷性が得られる。また、更にチオサリチル酸を含有した平版印刷版(試料4)を用いることによって、あるいは更にアルカノールアミンを含有した現像液(現像液D)を用いることによって現像ラチチュードが更に広がることがわかる。
【0076】
実施例2
上記実施例1と同様に作成したハロゲン化銀乳剤に現像主薬として硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を添加し、実施例1と同様に下記表3に示す試料5〜8を作成し実施例1と同様にして製版した。
【0077】
【表3】
【0078】
現像液は実施例1よりハイドロキノンと1−フェニル−3ピラゾリジノンを省き以下、実施例1と同様にE、F、GおよびHの現像液を用いて実施した。
<現像液E>
水酸化ナトリウム 25g
ポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体
(平均分子量50万) 10g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 2g
無水亜硫酸ナトリウム 100g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
水酸化ナトリウム 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.3
【0079】
<現像液F>
上記現像液Eに比較として添加剤A−3を0.8g加えた。
【0080】
<現像液G>
上記現像液EにC−1を0.8g加えた。
【0081】
<現像液H>
上記現像液Gにモノメチルエタノールアミンを50g加えた。
【0082】
水洗液及び仕上げ液は実施例1と同様のものを用い同様に評価した。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4の結果より本発明のアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有したアクチベータ型平版印刷版においては更に現像温度を広げた場合においても、本発明である水溶性基とメルカプト基を有する平版印刷版を水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有した現像液で現像処理することでより以上の効果があることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
上記実施例より明らかに本発明である水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有した平版印刷版を水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有した現像液で現像処理することで現像ラチチュードが優れた耐刷性を得られることが可能になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とし銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷版の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については 、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著 、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディフュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
その中で述べられているように、DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、あるいはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの2方式が知られている。ツーシートタイプの平版印刷版については、特開昭57−158844号公報に詳しく記載されている。又、モノシートタイプについては、特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、特開昭57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、同7−77805号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、更にその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成になっている。この平版印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液が塗布される。所謂、ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基またチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有することも一般的である。
【0008】
前記アルミニウム平版印刷版の製版における課題の1つとして、水洗処理時のハロゲン化銀乳剤層等のゼラチン層除去の問題がある。アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の水洗除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。このハロゲン化銀乳剤層の水洗除去が不十分な状態で製版されたアルミニウム平版印刷版は、印刷時にインキ受理性やインキ脱離性が著しく低下するという不都合が生じる。
【0009】
上記水洗処理は、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。
【0010】
また、アルミニウム平版印刷版の製版処理において、とくに現像条件(現像温度、現像時間、現像液の成分やpH等)の変化に対して現像ラチチュードが狭く、現像安定性に劣り、耐刷性が悪化するという問題がある。
【0011】
このような問題に対して、現像液においては特開2002−82442、同2000−162776号(特許文献1、2)等には現像液に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールを含有させることが記載されている。また、平版印刷版の耐刷性向上においては特開平7−72630号、同2001−201858号(特許文献3、4)に水溶性基を有する含窒素複素環化合物について記載されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献において各種の課題を解決することが記載されているが現像ラチチュードに満足できる耐刷性を得られていないのが実情である。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−8442号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開2000−162776号公報(第3頁)
【特許文献3】
特開平7−72630号公報(第2〜5頁)
【特許文献4】
特開2001−201858号公報(第11〜12頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の印刷諸特性を安定的に向上させた製版方法を提供することである。詳しくは、現像ラチチュードに優れ、耐刷力を飛躍的に改良された印刷特性を安定的に得ることができる処理方法を提供することである。
【0015】
【発明を解決する手段】
上記課題に対して、平版印刷版の構成層およびその処理液等の両方から探索を行った結果、両方の組み合わせの中に発明の目的を満たすものがあることを見いだし、検討を重ねた結果本発明に到達した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0016】
粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を現像処理した後、ハロゲン化銀乳剤層を除去する平版印刷版の処理方法において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
【0017】
また、本発明において平版印刷版の構成層中にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有させることで、現像液には実質的に現像主薬を含有させない、いわゆるアルカリ活性化液で処理する方法(アクチベータ型)において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有さないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することで、より優れた現像ラチチュードと耐刷性が得られる。また更に、該現像液中にアルカノールアミンを含有することで短時間での現像処理ラチチュードを向上させることができる。また、更に該平版印刷版の構成層にチオサリチル酸もしくはその誘導体を添加することによって更に長時間での現像ラチチュードも向上させる効果が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、平版印刷版に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物について以下に詳しく説明する。
【0019】
本発明の平版印刷版に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物において水溶性基とは、置換基にスルホ基もしくはカルボキシ基からなる酸基を有するものであり、下記一般式にて表される。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1は直接もしくはアルキレン基、またはアリーレン基を介して複素環の炭素原子もしくは窒素原子に結合する1もしくは2以上のスルホ基もしくはカルボキシ基を表し、Zは5ないし6員環の含窒素複素環を形成する原子群を表す。
【0022】
上記含窒素複素環としては、イミダリン環、イミダゾール環、イミダゾロン環、ピラゾリン環、ピラゾール環、ピラゾロン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサゾロン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアゾロン環、セレナゾリン環、セレナゾール環、セレナゾロン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、テトラゾール環、ベンツイミダゾール環、ベンツトリアゾール環、インダゾール環、ベンツオキサゾール環、ベンツチアゾール環、ベンツセレナゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサジン環、チアジン環、テトラジン環、キナゾリン環、フタラジン環、ポリアザインデン環(例えばトリアザインデン環、テトラザインデン環、ペンタザインデン環等)等から選ばれることが望ましい。このうち特に好ましい含窒素複素環化合物としては、メルカプトテトラゾール、メルカプトチアジアゾール、メルカプトオキサジアゾール類であり、最も好ましくはメルカプトテトラゾール類である。以下にメルカプトテトラゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトオキサジアゾール類であらわされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
本発明に用いられる水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に含有されるのが好ましいが、必要に応じて設けられる中間層あるいは保護層(オーバー層)に含有してもよく、また複数の層に含有してもよい。含有する量は、ハロゲン化銀乳剤層の場合は、ハロゲン化銀1モル当たり10−4〜10−2モル、好ましくは5×10−4〜10−3モルであり、その他の層の場合は前記の量より多い目(1〜5倍)に用いるのがよい。添加時期は、塗布液を塗布するまでの任意の時期でよい。本発明に用いられる水溶性基を有する含窒素複素環メルカプト化合物以外のメルカプト含窒素複素環化合物あるいは非メルカプト含窒素複素環化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明の平版印刷版には更にチオサリチル酸もしくはその誘導体を含有するのが好ましい。本発明のチオサリチル酸もしくはその誘導体としてはとしては下記一般式で表される。
【0027】
【化4】
【0028】
上記一般式中のR2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミド基を示す。以下に具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
本発明に用いられる、チオサリチル酸もしくはその誘導体はハロゲン化銀乳剤層に含有することが好ましいが必要に応じて中間層あるいはオーバー層に含有することも出来る。含有する量としては、ハロゲン化銀乳剤層の場合、ハロゲン化銀1モル当たり10−4〜10−2モル、好ましくは5×10−4〜10−3モルであり、その他の層の場合ではより多い目(1〜5倍)に用いる。
【0032】
本発明の平版印刷版において更に、構成層中にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を用いたアクチベータ型にすることができる。現像主薬として好ましくはポリヒドロキシベンゼン系現像主薬を含有する。ポリヒドロキベンゼン系現像主薬の量は、まったく現像主薬を含有しないアルカリ活性化液で現像したときにDTR現像を十分に生起するに必要な量(すなわちアルカリ活性化に必要な量)であり、塗布銀量等にもよるが、一般的には硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.2〜2モル、好ましくは0.3〜1モルである。
【0033】
本発明に用いられるポリヒドロキシベンゼン系現像主薬としては、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、クロルハイドロキノン、ブロモハイドロキノン、メチルハイドロキノン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を併用してもよい。好ましくは、ハイドロキノンである。また、本発明のアルミニウム印刷版には、上記したポリヒドロキシベンゼン系現像主薬の他に、メトールや1−フェニル−3−ピラゾリジノン類のような補助現像主薬を含有させるのが特に好ましい。特に3−ピラゾリジノン類が好ましく、ハイドロキノン1モルに対し0.03〜0.24モル、好ましくは0.06〜0.15モルである。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤層に含有する銀量は、硝酸銀換算で、2.5g/m2以下が好ましく、2.0g/m2以下がより好ましく、下限は、1g/m2程度である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(主としてゼラチン)の塗布量は0.5〜3g/m2、好ましくは1〜2g/m2である。
【0035】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらにヨウ化銀を含むものからなる。ハロゲン化銀結晶は、ロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいてもよい。特に、ロジウム塩及びイリジウム塩が好ましい。これらの添加量はハロゲン化銀1モル当り10−8〜10−3モルである。ハロゲン化銀の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし14面体粒子、さらにはコアシェル型、平板状粒子でもよい。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶であってもよく、その平均粒径は0.2〜0.8μmの範囲である。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩を含む、塩化銀が80モル%以上の単分散もしくは多分散結晶がある。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々な方法で増感することが出来る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、たとえばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用など当該技術分野において良く知られた方法で化学的に増感することが好ましい。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーとして主にゼラチンが用いられるが、その一部をデキストリン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換することもできる。ハロゲン化銀乳剤層のゼラチン量は、0.5〜4g/m2程度である。
【0038】
本発明において、物理現像核層には物理現像核として、銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶等を含有する。物理現像核層には、親水性バインダーを含んでいてもいなくても良いが、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含むことが出来、その含有量は0.5g/m2以下であることが好ましい。物理現像核層は、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬を含有してもよく、更にホルマリン、ジクロロ−s−トリアジン等の公知の硬膜剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明のアルミ平版印刷版は、粗面化及び陽極酸化されたアルミニウム支持体上に、物理現像核を担持させ、その上にハロゲン化乳剤層を塗設した平版印刷版である。この平版印刷版は、更に物理現像核とハロゲン化銀乳剤層の間に適宜中間層を設けることができ、またハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層を設けることができる。
【0040】
そのオーバー層、中間層はゼラチンなどの親水性ポリマーからなり、特開昭61−47946、同61−75338に記載されているようなポリメチルメタアクリレートラテックスやシリカなどのマット剤またはすべり剤を含むことができる。本発明において、ハロゲン化銀乳剤層およびその他の親水性コロイド層にはフィルター染料として、あるいは、イラジエーション防止などの目的で染料を含ませても良く、その他に、帯電防止剤、可塑剤や空気かぶり防止剤、硬膜剤及び塗布助剤を含むことができる。
【0041】
本発明の平版印刷版の製版処理に用いられる現像液について以下に説明する。本発明に用いられる現像液には、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有する。水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの水溶性基とは、スルホ基もしくはカルボキシ基からなる酸基のことである。水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくは誘導体は下記の一般式で表すことができる。
【0042】
【化7】
【0043】
式中、R3は水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アシル基を表す。これらの基は、更にスルホ基及びカルボキシ基以外の置換基を有してもよい。
【0044】
本発明の現像液に用いられる水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの使用量は、現像液1リットル当り2×10−5モル〜1×10−2モル、好ましくは1×10−4モル〜5×10−3モルである。以下に具体例を示すがこれらに限定されるものではない。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
本発明の現像液には更にアルカノールアミンを用いることが好ましく、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。使用量は現像液1リットル当り0.005モル〜1.5モル、好ましくは0.01モル〜1.0モルである。
【0048】
本発明の現像液には、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾール以外の添加剤として画像部を親油性にする化合物(親油化剤)を含有させてもよい。親油化剤としては、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、105、106ページに記載されている化合物が挙げられる。例えばメルカプト基またはチオン基を有する化合物、4級アンモニウム化合物等があり、特に好ましくは、メルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物であり、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されている。以下にその具体例を挙げるが、これらに限定されることはない。
【0049】
2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジエチル−ベンゾイミダゾリン−2−チオン、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2´−ジメルカプト−1,1´−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ〔1,2−a〕−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる現像液には、現像主薬、例えばハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−3ピラゾリジノン及びその誘導体等の3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、キレート剤、例えばエチレンジアミン4酢酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、アニオン性ゼラチン凝集剤、例えばポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体等の添加剤を含有させることができる。
【0051】
本発明に用いられる現像液のpHは10〜14が適当であり、より好ましくはpH12.0〜14.0の範囲である。また現像液の温度としては、15℃〜30℃の範囲が適当であり、現像時間は5sec〜30secが適当である。
【0052】
また、前述したように、平版印刷版にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有したアクチベータ型平版印刷版の現像処理に用いられる現像液には現像主薬は全く含まない方が好ましい。
【0053】
本発明の作用は、明確に分かっていないが、高pHのアルカリ液がアルミニウム印刷版の乳剤層に浸透すると内蔵されている現像主薬により極めて迅速な化学現像とDTR(物理)現像が進行し、印刷版にとって非常に良好なDTR銀が形成されるものと考えられる。
【0054】
本発明において、現像処理後にハロゲン化銀乳剤層及びその他の親水性コロイド層を除去する方法としては、水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、水洗液を吹き付けながらスクラブロールで剥離除去する方法、水洗液を吹き付けながらブレードによって剥離除去する方法、及び剥離シートを密着させて剥離した後水洗される方法が実施される。これらの水洗液にはpHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤を含有させてもよい。水洗液中には更にタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ)や、前記した親油化剤を含有させることができる。
【0055】
現像処理と水洗処理の間に、現像の進行を停止させる中和安定化処理を施してもよく、中和液に前記親油化剤を含有させてもよい。
【0056】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に用いられている。
【0057】
アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。とりわけ、インキを受容する銀画像部は強い親油性が必要であり、ゼラチン等の親油性を阻害する物質は完全に排除する必要がある。
【0058】
水洗処理によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。本発明において、仕上げ液には、非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。また、画像部の親油性を更に向上させるために、上記親油化剤を含有することが好ましい。更に上記酵素を含有することができる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが勿論本発明はこれだけに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
アルミニウム支持体の電解粗面化処理及び陽極酸化は米国特許第5,427,889号公報に記載の方法に従って、平均直径約5μmのプラト−上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつ これらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、中心線平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。
【0061】
上記アルミニウム支持体上に、少量の親水性バインダーを含む硫化パラジウムの物理現像核液を塗布し、その後乾燥した。物理現像核層に含まれるPdS核量は3mg/m2であった。
【0062】
ハロゲン化銀乳剤として、保護コロイドとして、アルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.25μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムをハロゲン化銀1モル当り6×10−6モルドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr15モル%、AgI0.4モル%)を作成した。その後フロキュレーションさせ、洗浄した。更にこの乳剤に硫黄金増感を施した後、赤色感光性の増感色素をハロゲン化銀1モル当たり1×10−3モル加えて分光増感した。
【0063】
このようにして作成したハロゲン化銀乳剤に下記表1に示す添加剤1、2を銀1モル当たり5×10−4モル添加して調整した乳剤にゼラチンと界面活性剤を加えて調節し、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上に銀量が2.5g/m2、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン)が2.5g/m2になるように塗布、乾燥して平版印刷材料を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−85N自動現像機)で処理して平版印刷版を作成した。現像温度20℃処理時間が8sec、現像温度23℃処理時間8、12、16sec、現像温度26℃処理時間16secになるように変化させ、水洗処理(35℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層をウオッシュオフする)、仕上げ処理(21℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程を経て製版された。
【0066】
現像液は以下の組成の現像液A、B、C及びDを用いた。
<現像液A>
水酸化ナトリウム 25g
ポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体
(平均分子量50万) 10g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 2g
無水亜硫酸ナトリウム 100g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
ハイドロキノン 15g
1−フェニル−3ピラゾリジノン 3g
水酸化ナトリウム 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.3
【0067】
<現像液B>
上記現像液Aに比較として添加剤A−3を0.8g加えた。
【0068】
<現像液C>
上記現像液AにC−1を0.8g加えた。
【0069】
<現像液D>
上記現像液Cにモノメチルエタノールアミンを50g加えた。
【0070】
用いた水洗液及び仕上げ液の組成を下記に示す。
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000ccに調整する。pHは6.0に調整した。タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0071】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
モノエタノールアミン 5.0g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
脱イオン水で1000mlとする。
pHは7.2に調整した。
【0072】
各々の現像液A、B、CおよびDにおいて上記表1記載の平版印刷版を現像処理し、耐刷力を評価した。
【0073】
耐刷力は10万枚までの印刷を行い、細線銀画像が印刷中に欠落する印刷枚数で評価した。評価としては以下に示す5段階で評価し、結果を表2に示す。
◎・・・ 8万枚以上
○・・・ 6万以上〜8万枚未満
△・・・ 4万以上〜6万枚未満
△×・・・2万以上〜4万枚未満
×・・・ 2万枚以下
【0074】
【表2】
【0075】
表2の結果より、水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有する本発明の平版印刷版(試料3及び4)を、水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールの誘導体を含有する現像液(現像液C及びD)で処理することで本発明の目的とする現像ラチチュードに優れた耐刷性が得られる。また、更にチオサリチル酸を含有した平版印刷版(試料4)を用いることによって、あるいは更にアルカノールアミンを含有した現像液(現像液D)を用いることによって現像ラチチュードが更に広がることがわかる。
【0076】
実施例2
上記実施例1と同様に作成したハロゲン化銀乳剤に現像主薬として硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を添加し、実施例1と同様に下記表3に示す試料5〜8を作成し実施例1と同様にして製版した。
【0077】
【表3】
【0078】
現像液は実施例1よりハイドロキノンと1−フェニル−3ピラゾリジノンを省き以下、実施例1と同様にE、F、GおよびHの現像液を用いて実施した。
<現像液E>
水酸化ナトリウム 25g
ポリスチレンスルホン酸と無水マレイン酸共重合体
(平均分子量50万) 10g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 2g
無水亜硫酸ナトリウム 100g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
水酸化ナトリウム 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.3
【0079】
<現像液F>
上記現像液Eに比較として添加剤A−3を0.8g加えた。
【0080】
<現像液G>
上記現像液EにC−1を0.8g加えた。
【0081】
<現像液H>
上記現像液Gにモノメチルエタノールアミンを50g加えた。
【0082】
水洗液及び仕上げ液は実施例1と同様のものを用い同様に評価した。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4の結果より本発明のアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有したアクチベータ型平版印刷版においては更に現像温度を広げた場合においても、本発明である水溶性基とメルカプト基を有する平版印刷版を水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有した現像液で現像処理することでより以上の効果があることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
上記実施例より明らかに本発明である水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有した平版印刷版を水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有した現像液で現像処理することで現像ラチチュードが優れた耐刷性を得られることが可能になる。
Claims (4)
- 粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版を現像処理した後、ハロゲン化銀乳剤層を除去する平版印刷版の処理方法において、該平版印刷版に水溶性基とメルカプト基を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ該現像液中に水溶性基を有しないメルカプトテトラゾールもしくはその誘導体を含有することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
- 該平版印刷版中にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有する請求項1に記載の平版印刷版の処理方法。
- 該現像液中にアルカノールアミンを含有する請求項1又は2に記載の平版印刷版の処理方法。
- 該平版印刷版中にチオサリチル酸もしくはその誘導体を含有する請求項1、2又は3に記載の平版印刷版の処理方法。
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JP2012082116A (ja) * | 2010-10-14 | 2012-04-26 | Mitsubishi Paper Mills Ltd | 銀超微粒子分散液およびこれを含有した抗菌性窯業用表面処理剤 |
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