JP3705003B2 - 重合体溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体溶液の製造方法に関する。詳しくは、不飽和単量体を溶媒中でラジカル重合させて、反応後の重合溶液から残存する未反応不飽和単量体を特定の条件下で効率的に除去するところの重合体溶液の製造方法に関する。
本発明によれば、未反応不飽和単量体の含有量が少ないため、使用に際し、安全性が高く、臭気の少ない重合体溶液を製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
重合反応終了後の重合溶液から残存不飽和単量体を除去する方法は幾つか提案されている。例えば、1)窒素等を送り込んで不飽和単量体を揮散させる。2)単蒸留により不飽和単量体を溶剤と共に留去する。3)重合の終期に少量の開始剤を添加して、不飽和単量体の重合を促進させる。4)重合終期にオゾン等を系内に吹き込み、未反応不飽和単量体を除去する。5)アクリル酸エステル不飽和単量体と反応するヒドラジン等の塩基性物質を添加する。6)γ線等のイオン化性放射線を照射する方法等が知られている。
【0003】
しかしながら、1)、2)の方法では多量の溶剤を同時に蒸留しなければならず、効率が悪いと同時に、多成分溶剤の場合には次にその溶剤を使用することは困難である。3)の方法では未反応不飽和単量体を非常に少量まで減少させるためには、非常に長時間の重合反応時間を必要とする。4)、5)の場合には未反応不飽和単量体を減少することは可能であるが、生成した化合物は同じく低分子量化合物であり、安全性に関して解決するとは言い難い。また、6)の場合には大きな装置が必要となり、必ずしも経済的ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、重合溶液から残存する未反応モノマーを除去する従来法については、効率、安全性、経済性の面でいろいろな問題点があり、満足し得るものではない。
本発明は、残存不飽和単量体含有量が少なく、その結果、安全性が高く、且つ臭気の少ない重合体溶液の製造方法を提供することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かゝる事情に鑑み鋭意検討した結果、不飽和単量体を溶媒中でラジカル重合させて、得られた重合溶液から残存する未反応不飽和単量体を特定の条件下で除去することにより、未反応不飽和単量体の量を著しく低減し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、
1.ラジカル重合開始剤、並びに該溶媒の沸点より低い沸点を持つ不飽和単量体を一種又は二種以上含む不飽和単量体を用いてラジカル重合を行って重合体溶液を製造する方法において、下記(1)〜(4)の条件を用いることを特徴とする重合体溶液の製造方法
(1)不飽和単量体合計量と溶媒との仕込み重量比を
不飽和単量体合計量/溶媒=1/9〜7/3とする。
(2)溶媒の沸点より低い沸点を持つ不飽和単量体のうち、最も低い転化率の不飽和単量体の転化率が90%以上となるまで重合する。
(3)重合終了後に理論段数3段以上、還流比0.5以上の蒸留条件下で未反応の不飽和単量体を選択的に濃縮除去する。
(4)留去後の溶媒の除去率を仕込み溶媒量の20重量%以下とする。
2.未反応の不飽和単量体及び溶媒を留去する際に、留去液中の不飽和単量体濃度を70%以下とする1項に記載の重合体溶液の製造方法
3.溶媒が多成分系混合溶媒である1又は2項に記載の重合体溶液の製造方法
4.溶媒が炭化水素系溶媒である1ないし3項のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法
5.溶媒がイソパラフィンである1ないし3項のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法
6.溶媒が炭素数8〜18のイソパラフィンである1ないし3項のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法
7.不飽和単量体がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有してもよいアルキルエステル、N−置換アルキルアクリルアミド、N−置換アルキルメタクリルアミド、アルキルビニルエステル、スチレン、スチレン誘導体及びアルキルビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種である1ないし6項のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法
8.不飽和単量体がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル及び置換基の炭素数1〜6のN−置換アクリルアミド又はN−置換メタクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の不飽和単量体である1ないし6項のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法
、にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)重合反応
本発明においては、先ず不飽和単量体を溶媒中でラジカル重合させて重合体溶液を製造するが、その際、
(1)不飽和単量体合計量と溶媒との仕込み重量比を
不飽和単量体合計量/溶媒=1/9〜7/3とする
(2)溶媒の沸点より低い沸点を持つ不飽和単量体のうち、最も低い転化率の不飽和単量体の転化率が90%以上となるまで重合する
ことが必要である。
【0008】
(不飽和単量体)
本発明で用いられる不飽和単量体については、その沸点が反応に使用する溶媒の沸点より低ければ特に制限は受けない。好ましい不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有してもよいアルキルエステル、N−置換アルキルアクリルアミド、N−置換アルキルメタクリルアミド、アルキルビニルエステル、スチレン、スチレン誘導体及びアルキルビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0009】
そして、アクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有してもよいアルキルエステル、N−置換アルキルアクリルアミド、N−置換アルキルメタクリルアミド、アルキルビニルエステル、スチレン誘導体及びアルキルビニルエーテルの具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の脂肪族アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートのようなアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートのようなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルアミノアルキルエステル;N−メチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、メチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0010】
特にアクリル酸、メタクリル酸及びその炭素数1〜6のアルキルエステル又は炭素数1〜6のN−置換アクリルアミド又はN−置換メタクリルアミドが好適に用いられる。炭素数が6を越えると不飽和単量体の沸点が高くなり、使用する溶媒の種類が非常に限定されてしまう。
尚、使用する溶媒の沸点より高い沸点を持つ不飽和単量体であっても、重合反応性が良好で容易に重合反応後の未反応不飽和単量体量が非常に少なくなる場合には、溶媒の沸点より低い沸点の不飽和単量体と同時に使用しても良い。
同様に、シリコーンマクロマーのように、分子量が1000以上の不飽和単量体はたとえ未反応のままで残存していても臭気等の問題はなく、安全性にも問題の無いため、溶媒の沸点より低い沸点の不飽和単量体と併用して使用しても良い。
【0011】
(溶媒)
本発明で用いられる溶媒については、特に限定はされず、溶液重合反応に通常用いられる溶媒が用いられるが、重合に用いる全ての不飽和単量体及び重合体の両方を溶解するものが好ましい。具体的には、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等のようなアルコール類、ヘプタン、イソパラフィン、n−パラフィン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン系溶剤が用いられる。これらの溶剤は単独で用いても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0012】
特に多成分系混合溶剤を用いる場合に本発明の製造方法が好ましく用いられる。何故ならば、単独溶剤の場合には単蒸留法を用いて未反応不飽和単量体を除去したとしても、蒸留時に未反応不飽和単量体と同伴してくる多量の溶媒は未反応不飽和単量体を除去するか、或いは未反応の不飽和単量体を含んだまま、次の重合反応に用いることが可能である。しかしながら、多成分系混合溶剤の場合には、単蒸留で留去してくる成分は反応器内に残る重合体溶液中の溶媒の成分と異なり、次回の反応に用いた場合は、その多成分溶剤系の組成が異なることになり、重合反応時における分子量への影響や、得られた重合体溶液中の溶剤の沸点や組成が変化するため、同じ品質の重合体溶液が得られないと言う問題を生じるからである。多成分溶剤の中でも特にn−パラフィンやイソパラフィン等の炭化水素系溶媒の場合は非常に多くの成分を含んでおり、本発明が好適に用いられる溶剤である。中でも一般に安価で且つ臭気が少ないためより広く使用されているイソパラフィンは異性体を含めて非常に多くの成分を含んでおり、本発明の製造方法に好適に用いることができる。使用する不飽和単量体の沸点が溶媒の沸点より低いことを考慮に入れた場合、好ましいイソパラフィンは炭素数8〜18のイソパラフィンが好ましい。炭素数が8より少ないと沸点が100℃より低くなり、使用可能な単量体の種類が非常に限定されてしまう。
【0013】
(ラジカル重合開始剤)
本発明で用いられるラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物が挙げられる。
重合反応は先ず反応器に溶媒、不飽和単量体、ラジカル重合開始剤を添加し、重合反応に必要な温度まで加熱して行われる。この際、必要に応じて不飽和単量体或いはラジカル重合開始剤は分割添加或いは滴下による連続添加を行っても良い。この際、重合反応は不飽和単量体合計量と溶媒との仕込み重量比を不飽和単量体合計量/溶媒=1/9〜7/3の割合で行われる。不飽和単量体の重量比が1/9より低いと、重合反応速度も遅くなり、残存不飽和単量体を減少させる意味でも効率的とは言えない。また不飽和単量体の量が7/3より多いと重合反応熱の除去が困難となり、また重合後の溶液粘度が非常に高くなるので現実的ではない。
【0014】
重合反応温度は通常のラジカル重合開始剤を好適に使用可能な範囲であれば良く、通常は40〜120℃の範囲で行われる。また反応時間は使用されるラジカル重合開始剤、不飽和単量体の種類、反応温度等によって異なるが、通常4〜24時間行われる。以上の条件は重合反応に用いられる不飽和単量体の転化率が90%以上になるように選択される必要がある。90%よりも転化率が低いと重合体の収率が悪いばかりでなく、その後に未反応不飽和単量体を除去する際の効率が悪くなる。
尚、重合反応に際し、メルカプト化合物等の分子量調整剤を使用しても差し支えない。
【0015】
(II)未反応不飽和単量体の除去
本発明においては、重合反応終了後、得られた重合溶液から蒸留により未反応不飽和単量体をできるだけ除去するが、その際、
(3)重合終了後に理論段数3段以上、還流比0.5以上の蒸留条件下で未反応の不飽和単量体を選択的に濃縮除去する
(4)留去後の溶媒の除去率を仕込み溶媒量の20重量%以下とする
ことが必要である。
【0016】
蒸留については、重合終了後に理論段数3段以上、還流比0.5以上の蒸留条件下で未反応の不飽和単量体及び溶媒を留去する。理論段数が3段より少ないか、或いは還流比が0.5より少ないと、未反応不飽和単量体を除くために多量の溶媒を留去することが必要となり、効率的でない。同様に、蒸留条件は留去後の溶媒の除去率を仕込み溶媒量の20重量%以下とするように設定される。
未反応の不飽和単量体及び溶媒を留去する際に、留去液中の不飽和単量体濃度を70%以下とすることが好ましい。留去液中の不飽和単量体濃度が70%を越えると留去液中の不飽和単量体が重合反応を起こし、蒸留塔内及び還流槽等の中で重合体が生成し、目詰まり等の問題が生じる危険性がある。通常、不飽和単量体等の製造工程においてはこの重合反応を抑制するため、上部より重合禁止剤等を徐々に添加する等の処理が行われるが、重合禁止剤を添加すると、蒸留過程において重合禁止剤がボトムの重合体溶液中に入り、化粧品等の基材として使用される場合、安全性等に問題となり、本発明が目的とする安全性の高い重合体溶液の製造方法の目的に合致しない。
重合反応装置と蒸留装置が別にあり、重合反応後、重合液を蒸留装置に移送し未反応不飽和単量体の蒸留留去を行っても良いし、蒸留塔を備え付けた反応器を用いて、重合反応後、引き続いて未反応不飽和単量体の蒸留留去を行っても良い。
【0017】
このようにして得られた重合体溶液中には、未反応不飽和単量体を重合体に対し1000ppm以下、好ましくは500ppm以下とすることが可能であり、その結果、安全性が高く、且つ臭気が少ないため、医療用或いは化粧品用基材等の安全性が重視される用途に好適に用いることが可能である。得られた重合体溶液はそのまま使用しても良く、若しくは他の溶剤で希釈して使用しても良い。イソパラフィン等の溶媒を使用した場合には、エマルジョンの形で水中に分散した形で使用しても良い。
【0018】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各実験例中における%及びppmは重量基準である。
【0019】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた五つ口フラスコにイソドデカン(沸点180℃):150部、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル:1部を加えて、窒素気流下70℃まで加熱した。70℃に達した後、t−ブチルアクリレート(沸点121℃):80部、2−エチルヘキシルメタクリレート(沸点229℃):20部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で更に1時間反応を続けた後、85℃まで加熱し、更に5時間反応を続行した。得られた重合体は分子量125,000、未反応不飽和単量体が対重合体当りt−ブチルアクリレートが4500ppm、2−エチルヘキシルメタクリレートが180ppm残存している約40%の重合体溶液が得られた。次いで反応器に理論段数7段の蒸留装置(還流槽の大きさは仕込み溶媒の3%の容量)を取付け、減圧下、80℃で還流比5で仕込み溶媒の8%を留去した。その結果残存不飽和単量体は対重合体当り、t−ブチルアクリレートが150ppm、2−エチルヘキシルメタクリレートが120ppmであった。尚、留去溶媒中には2−エチルヘキシルメタクリレートが存在しないことから、未反応t−ブチルアクリレート留去時に一部重合反応で減少したものである。本重合体溶液は全未反応不飽和単量体が対重合体当り、合計270ppmであり、不飽和単量体の臭気もせず、且つ未反応不飽和単量体の残存量が少ない安全性の高い重合体溶液であった。
【0020】
実施例2
実施例1と同様な五つ口フラスコに炭素数10〜12の市販イソパラフィン(アイソパーG;エクソン社;沸点158〜175℃)を122部、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート:1部を加えて、窒素気流下80℃まで加熱した。80℃に達した後、t−ブチルアクリレート:90部、2−エチルヘキシルメタクリレート:10部を4時間かけて滴下した。滴下終了後80℃で更に4時間反応を続行した。得られた重合体は分子量95,000、未反応不飽和単量体が対重合体当りt−ブチルアクリレートが8200ppm、2−エチルヘキシルメタクリレートが40ppm残存している約45%の重合体溶液が得られた。次いで反応器に理論段数7段の蒸留装置(還流槽の大きさは仕込み溶媒の3%の容量)を取付け、減圧下、80℃で全還流を行い、還流槽の組成が安定した時点で三回に分けて、各2.5%ずつバッチ留去した(合計7.5%)。その結果残存未反応不飽和単量体は対重合体当り、t−ブチルアクリレートが90ppm、2−エチルヘキシルメタクリレートが30ppmであった。本重合体溶液は全未反応不飽和単量体が対重合体当り、合計120ppmであり、不飽和単量体の臭気もなく、且つ未反応不飽和単量体の残存量の少ない安全性の高い重合体溶液であった。
【0021】
実施例3
実施例1と同様な五つ口フラスコに炭素数12〜15の市販イソパラフィン(アイソパーM;エクソン社;沸点218〜253℃)を400部、アクリル酸(沸点141℃):5部、t−ブチルアクリレート:75部、分子量5,000のシリコーンマクロマー(FM0721;チッソ(株)製):20部、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル:1部を加えて、窒素気流下80℃まで加熱し、8時間かけて反応した。得られた重合体は分子量140,000、未反応不飽和単量体が対重合体当りアクリル酸が1200ppm、t−ブチルアクリレートが12,000ppm残存している約25%の重合体溶液が得られた。次いで反応器に理論段数10段の蒸留装置(還流槽の大きさは仕込み溶媒の2%の容量)を取付け、減圧下、80℃で全還流を行い、還流槽の組成が安定した時点で三回に分けて、各1.5%ずつバッチ留去した(合計4.5%)。その結果残存未反応不飽和単量体は対重合体当り、アクリル酸が20ppm、t−ブチルアクリレートが60ppmであった。本重合体溶液は全未反応不飽和単量体が対重合体当り、合計80ppmであり、不飽和単量体の臭気もなく、且つ未反応不飽和単量体の残存量の少ない安全性の高い重合体溶液であった。
【0022】
比較例1
実施例2と同様に重合反応を行った。得られた重合体溶液を単蒸留で未反応不飽和単量体を除去しようとしたが、未反応t−ブチルアクリレートを重合体当り200ppmまで除去しようとすると、仕込み溶媒の40%を留去する必要があった。しかしながら、留去した溶媒は低沸点成分が多く、次回の重合反応に使用した場合、重合体溶液の沸点範囲が異なってしまうため、得られた重合体溶液製品が常に均一な品質のものが得られない問題があった。
【0023】
比較例2
実施例2と同様に重合反応を行った後、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレートを更に1部添加し、80℃にて更に16時間重合反応を継続した。得られた重合体溶液の未反応不飽和単量体は対重合体当り、t−ブチルアクリレートが1800ppm、2−エチルヘキシルメタクリレートが20ppm残存しており、不飽和単量体の臭気がある重合体溶液であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、不飽和単量体を溶媒中でラジカル重合させて重合体溶液を製造する際に、未反応不飽和単量体の含有量が少ないため、使用に際し、安全性が高く、臭気の少ない重合体溶液を得ることができる。
Claims (8)
- 不飽和単量体及び重合体の溶媒、ラジカル重合開始剤、並びに該溶媒の沸点より低い沸点を持つ不飽和単量体を一種又は二種以上含む不飽和単量体を用いてラジカル重合を行って重合体溶液を製造する方法において、下記(1)〜(4)の条件を用いることを特徴とする重合体溶液の製造方法。
(1)不飽和単量体合計量と溶媒との仕込み重量比を
不飽和単量体合計量/溶媒=1/9〜7/3とする。
(2)溶媒の沸点より低い沸点を持つ不飽和単量体のうち、最も低い転化率の不飽和単量体の転化率が90%以上となるまで重合する。
(3)重合終了後に理論段数3段以上、還流比0.5以上の蒸留条件下で未反応の不飽和単量体を選択的に濃縮除去する。
(4)留去後の溶媒の除去率を仕込み溶媒量の20重量%以下とする。 - 未反応の不飽和単量体及び溶媒を留去する際に、留去液中の不飽和単量体濃度を70%以下とする請求項1に記載の重合体溶液の製造方法。
- 溶媒が多成分系混合溶媒である請求項1又は2に記載の重合体溶液の製造方法。
- 溶媒が炭化水素系溶媒である請求項1ないし3のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法。
- 溶媒がイソパラフィンである請求項1ないし3のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法。
- 溶媒が炭素数8〜18のイソパラフィンである請求項1ないし3のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法。
- 不飽和単量体がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の置換基を有してもよいアルキルエステル、N−置換アルキルアクリルアミド、N−置換アルキルメタクリルアミド、アルキルビニルエステル、スチレン、スチレン誘導体及びアルキルビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1ないし6のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法。
- 不飽和単量体がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル及び置換基の炭素数1〜6のN−置換アクリルアミド又はN−置換メタクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の不飽和単量体である請求項1ないし6のいずれかに記載の重合体溶液の製造方法。
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