JP3636554B2 - 連続溶液重合法における不純物の除去方法 - Google Patents
連続溶液重合法における不純物の除去方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタクリル系樹脂の連続重合法における不純物の除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル系樹脂は、その卓越した透明性、良好な機械的性質、加工性並びに成形品における外観の美麗さなどによって、例えば照明器具、看板、各種装飾品、銘板、テールランプなどの自動車部品、テーブルウェアーなどに広く用いられている。又、最近は各種レンズ、光ディスク、導光板などの光学分野にも広く用いられてきている。その為に、高度な光学特性が要求されつつある。
【0003】
メタクリル系樹脂の製造方法としては懸濁重合法が広く採用されている。しかしながら、この製造方法の最大の欠点は、使用される懸濁安定剤がポリマー中に一部残存し、ポリマー特性、特に光学特性が低下することである。
この懸濁重合法の欠点を改良する方法として、塊状重合法(特開昭49−37993号公報、特開平3−111408号公報)、溶液重合法(特開昭63−57613号公報、特公平7−119259号公報)が考えられている。
【0004】
これらの方法によれば、懸濁重合方法と異なり、懸濁安定剤が使用されない為に光学特性に優れたメタクリル系樹脂の製造が可能である。しかしながら、別の問題が生ずる。
懸濁重合はバッチ式重合であるが、工業的な塊状重合あるいは溶液重合は、連続重合で実施する。即ち重合後の未反応単量体を回収、リサイクル液とし、新たな単量体を追加して重合、重合液を脱揮して、ポリマーと未反応単量体を分離、ポリマーを取り出すと同時に未反応単量体をリサイクル使用して連続生産するが、リサイクル液中に混入してくる重合時に生成する不純物などがポリマー中に混入し、光学特性が低下する。これを回避する為に、通常は、リサイクル液の精製を実施する。精製の方法は、未反応の単量体とポリマーを分離・回収する脱揮工程にパーシャルコンデンサーを設置し高沸点不純物を除去する方法、または、蒸留塔を設置し不純物を除去する方法が従来より行われている。
【0005】
パーシャルコンデンサーを設置し高沸点不純物を除去する方法においては、除去すべき不純物の沸点が回収する未反応の単量体あるいは使用する溶媒沸点と比較して充分に高くないと除去は困難であるという欠点を有し、蒸留塔での精製が好ましい。しかしながら、塊状重合で蒸留塔を使用して精製する方法は、一般的には、リサイクル液を蒸留塔に供給蒸留し、蒸留塔ボトム部よりメタクリル酸メチル単量体と共に高沸点の不純物を抜き出すことにより実施される。しかしながら、ボトム液の滞留時間が長く且つ温度が高い為、蒸留塔ボトムでメタクリル酸メチル単量体の重合が進行し、リボイラーでの熱交換効率の低下や生成したポリマーによる配管の閉塞等が起こる。あるいは極端な場合は、蒸留塔ボトム全体で重合が進行し、固化してしまうなど工業的に安定に製造する上において大きな問題点がある。
【0006】
溶液重合で蒸留塔を使用して精製する方法は、特公平7−119259号公報に開示されている。しかしながら、この明細書にメタクリル酸メチル単量体と溶媒との混合物の中間的分別の必要性を回避する為に、メタクリル酸メチル単量体の沸点に近似した沸点を有する溶媒を使用することが好ましいと記載されているが、溶媒が入ることにより、ボトム液中のメタクリル酸メチル単量体の濃度は下がり塊状重合よりはボトム液中での重合は改良はされる方向ではある。しかしながら、沸点がメタクリル酸メチル単量体に近似した沸点を有する溶媒を使用した場合、ボトム液中のメタクリル酸メチル単量体濃度は高く、従って蒸留塔ボトムでの重合は避けきれず、塊状重合と同じ問題が起こる。特公平7−119259号公報では、これを避ける為に、溶媒量を40重量%以上とすることにより未反応単量体と溶媒の比率を下げてボトム液中のメタクリル酸メチル単量体濃度を下げることにより、蒸留塔ボトムでの重合を防止している。しかしながらこの溶媒量を40重量%以上とする方法では、別の大きな問題がある。それは、生産するメタクリル系樹脂の耐熱分解性の低下である。耐熱分解性が低下するとメタクリル系樹脂を成形加工する時にポリマーのジッパー反応による分解が起こり、このメタクリル酸メチル単量体を主体とした分解生成物が原因で、いわゆるシルバーストリークと呼ばれる銀条跡が発生し、それが製品不良となる問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、工業的に安定して重合時に生成する不純物等を除去し、光学特性に優れ、且つ耐熱分解性にも優れたメタクリル系樹脂の連続重合製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決する方法を鋭意検討した結果、重合時の全混合物の重量に基づき溶媒量が25重量%以下となる様な組成で、且つメタクリル酸メチル単量体より高い沸点を有する溶媒を使用して単量体と溶媒からなるリサイクル液あるいはリサイクル液と新たな単量体を蒸留、連続重合することにより、蒸留塔ボトム部での重合の進行による問題を起こすことなく、経済的かつ効率的に重合時に生成する副生成物、更に原料中に含まれる重合禁止剤及び不純物あるいはリサイクル液保存の為に添加する重合禁止剤等の不純物を除去でき、光学特性に優れ且つ耐熱分解性にも優れたメタクリル系樹脂を製造できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、重合時の全混合物の重量に基づき溶媒量が25重量%以下になる組成で(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶媒を連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスあるいは、重合時の全混合物の重量に基づき溶媒量が25重量%以下になる組成で(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液を連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶媒と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスにおいて、単量体の沸点より高い沸点を有する溶媒を使用し、蒸留塔ボトム部よりボトム液を連続的もしくは断続的に抜き出すことを特徴とする連続溶液重合法である。
【0010】
本発明におけるメタクリル酸メチルを主成分とする単量体としては、メタクリル酸メチル単独あるいはメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体とからなる。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸エステル類は耐熱分解性に優れ、又アクリル酸エステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は成形加工時の流動性が高く好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸エステル類を共重合させる場合のアクリル酸エステル類の使用量は、15重量%以下が好ましい。15重量%以上では、耐熱分解性、流動性等の改良効果は高いが、耐熱性即ち熱変形温度が低下し好ましくない。このアクリル酸エステル類の中でも、特にアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、それを少量メタクリル酸メチルと共重合させても上記改良効果は著しく最も好ましい。上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0011】
本発明における溶媒としては、蒸留塔ボトム及び蒸留塔内部でメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチル単量体と共重合可能な単量体混合物や除去すべき不純物を溶解させ、且つ、メタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体より高い沸点を有しており、具体例として、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族化合物、オクタン、デカン等の脂肪族化合物、デカリン等の脂環族化合物、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル化合物、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン等のハロゲン化合物等が挙げられる。溶媒の沸点は、メタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高いこと、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上高いことが望ましい。この中でも、特にアルキルベンゼンが重合に悪影響を及ぼすこともなく且つ重合で生成する不純物の溶解性も高く好ましい。また、アルキルベンゼンの中でもトルエン、キシレン、エチルベンゼン、特にキシレン、エチルベンゼンが、適度な沸点を有し、脱揮にも負荷が少なく、又、重合に悪影響を及ぼすこともなく、重合で生成する不純物の溶解性も高く且つ工業的に安価に入手することができ最も好ましい。溶媒量は、溶媒の沸点によっても異なるが、重合時の全混合物の重量に基づき25重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。下限は0.1重量%である。0.1重量%であっても溶媒の沸点が高ければ、蒸留塔ボトムは溶媒のみとなり、ここでの重合によるトラブルは防止できる。溶媒量が25重量%では耐熱分解性が劣り好ましくない。0.1重量%以下では、運転上のバラツキ等で蒸留塔ボトム部での重合が起こる場合もあり、好ましくない。溶媒は一種あるいは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0012】
リサイクル液の重合防止の為、あるいは原料単量体の重合防止の為に添加する重合禁止剤は、溶媒及び単量体に溶解するものであれば特に限定するものではないが、例えば、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、t−ブチルカテコール等を用いる事ができる。
原料中に含まれる不純物とは、原料であるメタクリル酸メチル単量体に含まれる不純物や、連続溶液重合プロセスにて使用する重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒等に含まれる不純物などである。
【0013】
重合時に生成する副生成物としては、重合反応器にて生成した生成物の内、脱揮工程で重合物と分離・回収される成分であり、例えば、触媒分解物やメタクリル酸メチル単量体の二量体、三量体等、オリゴマー成分などである。
代表的な蒸留塔の一例を図1、連続溶液重合プロセスの一例を図2に示す。
本発明は、例えば、図に示す様な設備を使用して以下の様に実施する。即ち、(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して蒸留塔へ供給し、蒸留塔ボトム部より不純物を連続的若しくは断続的に抜き出しすと同時に蒸留された単量体及び溶媒、更に重合開始剤、分子量調整剤を追加添加し、連続して重合反応機に供給し、重合反応機に重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用して連続溶液重合する。あるいは(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液を連続して蒸留塔へ供給し、蒸留塔ボトム部より不純物を連続的若しくは断続的に抜き出しすと同時に蒸留された単量体及び溶媒と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体と、更に重合開始剤、分子量調整剤を追加添加し、連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用し連続溶液重合する。
【0014】
蒸留は、例えば充填塔式、棚段式などの蒸留塔により実施する。蒸留の方式は、例えば、除去したい不純物を含むリサイクル液あるいはこれと新たな単量体との混合液を蒸留塔の中段または上段より供給し、蒸留塔ボトム液をリボイラー等の加熱器で加熱しながら蒸留し、蒸留塔の塔頂部より留出するメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒の蒸気をコンデンサーにて凝縮することによって実施する。この際、単量体より高い不純物は蒸留塔ボトムに濃縮される。この不純物は、蒸留塔ボトムより連続してあるいは断続して取り出すと同時に取り出した量の溶媒を追加することによって連続的に不純物を除去することができる。なお蒸留は、上記の如く、新たな単量体と重合後の未反応単量体及び溶媒を含むリサイクル液とを併せて蒸留する方法とリサイクル液のみを蒸留する方法とがあるが、前者の方が新たな単量体中に含まれる不純物も除去でき、より好ましい。なお、蒸留塔は、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体が蒸留塔ボトム液に混入しないだけの段数を有しておれば本発明は有効に作用する。
【0015】
本発明の蒸留塔による不純物除去は、使用する溶媒の沸点がメタクリル酸メチルを主成分とする単量体の沸点より高いため、蒸留塔ボトム液は除去すべき不純物と溶媒のみとなる。そこで、この蒸留塔ボトム液をリボイラー等の加熱器を使用して加熱しながら、ボトム液の一部を連続的もしくは断続的に系外に抜き出し、除去すべき不純物の蓄積防止が計れる。この時、抜き出す量が少ない場合、この蒸留塔ボトム液中の不純物濃度が高くなり、液粘度の上昇による加熱器での熱交換効率の悪化や不純物の析出に伴う配管や加熱器の閉塞を起こす可能性がある。また、抜き出す量が多すぎる場合は運転上の問題は発生しないが経済的でない。そのため、不純物の除去にあたっては加熱器の能力がある限り不純物が析出しない程度に蒸留塔ボトム液の抜き出し量を減らす事が好ましい。
【0016】
上記の様に蒸留したメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶剤、場合により新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体、更に重合開始剤、分子量調整剤などを個別にあるいは混合して重合反応機に供給し重合する。この単量体溶液は、光学特性を向上させる為に、例えば向流接触塔へ連続的に供給し、不活性ガスと置換し、単量体溶液中の溶存酸素を1ppm以下とする。更に金属異物などの異物を除去する為に、単量体溶液を0.5μ以下のフィルターで濾過することが好ましい。
【0017】
この際、使用する重合開始剤は、重合温度で活性に分解しラジカルを発生するもので、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−クミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーフタレート、ジ−tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−tert−アミルパーオキジド、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド及びラウリルパーオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブタノールジアセテート、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2−フェニルアゾ2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−2プロピルアゾホルムアシド及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物などを用いることができる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、全反応混合物の重量に基づき0.0010〜0.03重量%の範囲が好ましい。
【0018】
更に、この際使用する分子量調整剤は、主としてメルカプタン類が使用される。メルカプタン類としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタンなどのアルキル基または置換アルキル基を有する第一級、第二級及び第三級メルカプタン、フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン、チオグリコール酸とそのエステル及びエチレンチオグリコールなどが使用できる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの分子量調整剤の使用量は、製造する重合体の分子量に応じて適宜決定されるが、通常は、全反応混合物の重量に基づき0.01〜0.5重量%の範囲で選ばれる。
【0019】
重合反応機は、ダブルヘリカルリボン、ピッチドバドル型などの攪拌翼で均一に攪拌されている装置を使用する。重合は、単量体溶液を重合反応機に連続して供給し、単量体の重合転化率が40〜70%の範囲内で実質的に一定になる様に、120〜160℃の温度で重合反応を実施する。重合転化率が40%未満では、揮発成分による脱揮工程の負荷が大きく、例えば予備加熱器の伝熱面積の制約から脱揮不十分になる場合があり好ましくない。一方、70%を越えると、例えば、重合反応機から予備加熱器間での配管圧力損失が大きくなって、重合液の輸送が困難となり好ましくない。重合温度が120℃未満では、重合速度が遅すぎて実用的でなく、又160℃を越えると重合速度が速すぎて、重合転化率の調整が困難となるあるいは耐熱分解性が低下する等で好ましくない。
【0020】
この様な重合反応により得られた重合液は、脱揮して重合物を取り出すと同時に揮発分である未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を分離する。揮発分は、リサイクル液として蒸留・再使用し、連続的にメタクリル系樹脂を製造する。なお、リサイクル液は、通常その保存時の重合防止の為重合禁止剤を添加することが好ましい。脱揮装置としては、多段ベント付き押出機、脱揮タンクなどを使用する。好ましくは、重合液を予備加熱器などで200〜290℃の温度に加熱し、上部に十分な空間を有し、且つ200〜250℃、20〜100トールの温度、真空下の脱揮タンクにフィードして重合物を取り出すと同時に未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒からなる揮発成分を分離しリサイクル液として再使用する。重合体に残存する揮発分は、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。この減圧下に保持された脱揮タンクに重合液を導入する方法は、揮発成分の瞬間的な揮発とそれによる発泡を生じて、極めて大きな蒸発面積を形成し、高沸点の溶剤を使用しても効率的に短時間で揮発成分が除去され、ポリマー中に残存する溶媒あるいは残留単量体が少なく、且つポリマーの着色も少なく光学特性に優れた好ましい脱揮方法である。
【0021】
以下、蒸留塔での不純物除去の方法について図1で補足説明する。
除去すべき不純物を含む単量体と溶媒はライン1より蒸留塔2に連続的に供給される。蒸留塔2の内部は、ラシヒリング等の充填剤等を充填するか、シーブトレイ等の棚段を設置して蒸留を効率良く実施できる構造になっている。塔底部に蓄積した不純物と溶媒は滞留液循環ポンプ3を経由しリボイラー4にて加熱された後、塔内に戻される。リボイラー4は一般に多管式熱交換器が使用され、熱媒の供給量や温度の管理は蒸留塔内の温度や蒸留塔底部の滞留液量が一定となるよう適切な制御機構を設置し制御される。不純物を含む溶媒は循環ポンプ3の出口より分岐している抜き出しライン5より連続的もしくは断続的に排出される。蒸留された単量体や溶媒はコンデンサー6にて冷却凝縮された後、反応器に連続的に供給される。また、蒸留塔の圧力は真空ライン7に設置されたコントロールバルブにて一定圧力に制御する。
【0022】
【発明の実施の形態】
重合体の各性質は次の様にして測定した。
(1)重合体の固有粘度の測定は、重合体150mgをクロロホルム50mlに溶解し、25℃の温度でオストワルド粘度計で行った。
(2)全光線透過率の測定は、ASTMD−1003法に基づいて行った。
(3)耐熱分解性の測定は、3オンスの射出成型機を使用し、温度を290℃に設定した。ポリマーを計量した後、成形機内に10分間滞留させた。成形機内に滞留させることによりポリマーが熱分解し、分解したガス量に比例したポリマーがノズルから排出されるが、その排出量を計量し熱分解性の尺度とした。
【0023】
【実施例1】
重合反応器より排出され脱揮タンクで脱揮回収され、ハイドロキノン0.01部を添加したメタクリル酸メチル77.1重量%、アクリル酸メチル1.7重量%、エチルベンゼン21.3重量%のリサイクル液/メタクリル酸メチル97.9重量%、アクリル酸メチル2.1重量%のフレッシュ単量体溶液を47/53の重量比に混合し、連続して蒸留塔にフィードした。蒸留塔はステンレス製の図1に示す構造で、内部にはラシヒリングが充填されている。蒸留塔は真空ライン7に設置されたコントロールバルブにより80Torrに保持された状態で蒸留塔底部の滞留液量が一定になるようリボイラーにより滞留液をスチームで加熱する。蒸留塔ボトム部はほぼエチルベンゼンとリサイクル液中に含まれる不純物のみからなり、この滞留液の温度が95℃に一定になるようにして抜き出しライン5から不純物を連続して抜き出した。蒸留された単量体溶液は、メタクリル酸メチル88.1重量%、アクリル酸メチル1.9重量%、エチルベンゼン10.0重量%であった。この単量体溶液にに重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン110ppm、オクチルメルカプタン1600ppmを追加し、完全混合型重合反応機で重合温度155℃、滞留時間2.0時間で重合し、重合転化率53%まで連続的に重合し、重合液を連続的に重合反応機から取り出し、次いで加熱板で260℃に加熱し、加熱板の間隔を通して脱揮タンクに流延落下せしめた。脱揮タンク、30トール、230℃に維持し重合体と未反応単量体及び溶剤と分離した。重合体は押出ダイスより押し出し、更に未反応単量体及び溶剤はリサイクル液として蒸留再使用し一週間の連続運転を実施した。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸メチル含有量1.9重量%、残存単量体2300ppmであった。又、固有粘度56ml/g、全光線透過率93%、耐熱分解性の尺度である排出量24gであった。ポリマー中の大きな異物は無く且つ製品の着色も無かった。又、1週間の連続運転で蒸留塔でのポリマー生成による詰まりは全く発生しなかった。
【0024】
【実施例2】
実施例1の条件を、エチルベンゼンをトルエンに変更し、蒸留塔の圧力を80Torrから100Torrに変更、実施例1とほぼ同じ重合転化率、分子量となる様に重合開始剤、連鎖移動剤を微修正した以外は実施例1と同様な操作をおこなった。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸メチル含有量1.9重量%、残存単量体2200ppmであった。又、固有粘度54ml/g、全光線透過率93%、耐熱分解性の尺度である排出量21gであった。ポリマー中の大きな異物は無く且つ製品の着色も無かった。又、1週間の連続運転で蒸留塔でのポリマー生成による詰まりは全く発生しなかった。
【0025】
【比較例1】
実施例1の条件を、エチルベンゼンを沸点がメタクリル酸メチル単量体の沸点とほぼ同じn−ヘプタンに変更し、蒸留塔の圧力を80Torrから120Torrに変更した以外は実施例1と全く同様な操作をおこなった。この時、運転開始後4日で蒸留塔底部滞留液からの抜き出しラインにポリマーが析出し、6日目に抜き出しラインが閉塞したためその後の運転を中止した。
【0026】
【比較例2】
実施例1の条件で、蒸留操作を行わなかった以外は実施例1と全く同様な操作を行った。製品として回収したポリメタクリル酸メチルは徐々に着色した。
【0027】
【比較例3】
重合反応機にフィードするトルエン量を10.0重量%から30.0重量%に変更、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの比率は同じにすること以外は実施例2と同様な操作を行った。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸メチル含有量2.0重量%、残存単量体2300ppmであった。又、固有粘度55ml/g、全光線透過率92%、ポリマー中の大きな異物は無く且つ製品の着色も無かった。又、1週間の連続運転で蒸留塔でのポリマー生成による詰まりは全く発生しなかったが、耐熱分解性の尺度である排出量34gと熱分解性に劣っていた。
【0028】
【発明の効果】
本発明の連続溶液重合方法により、不純物が除去され、製品の着色を防止しながら、安定に長期間の連続溶液重合を実施することができる。従って、連続溶液重合法により高品質の製品を高い生産性で製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の不純物除去方法に使用する蒸留塔を例示した図である。
【図2】本発明の不純物除去方法に使用する蒸留塔を利用した連続溶液重合装置の概略図を例示した図である。
【符号の説明】
1、ビニル単量体及び溶媒の供給ライン
2、蒸留塔
3、循環ポンプ
4、リボイラー
5、不純物抜き出しライン
6、コンデンサー
7、真空ライン
8、重合反応槽
9、送液ポンプ
10、加熱板
11、脱揮タンク
12、真空ライン
Claims (8)
- 重合時の全混合物の重量に基づき溶媒量が25重量%以下になる組成で(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶媒を連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスにおいて、単量体の沸点より高い沸点を有する溶媒を使用し、蒸留塔ボトム部よりボトム液を連続的もしくは断続的に抜き出すことを特徴とする連続溶液重合法。
- 重合時の全混合物の重量に基づき溶媒量が25重量%以下になる組成で(a)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液を連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶媒と(b)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応の単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスにおいて、単量体の沸点より高い沸点を有する溶媒を使用し、蒸留塔ボトム部よりボトム液を連続的もしくは断続的に抜き出すことを特徴とする連続溶液重合法。
- 溶媒の沸点がビニル単量体の沸点より10℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の連続溶液重合法。
- 溶媒がアルキルベンゼンであることを特徴とする請求項1又は2記載の連続溶液重合法。
- 溶剤が、キシレン及びエチルベンゼンから選ばれることを特徴とする請求項4記載の連続溶液重合法。
- 溶剤が、トルエンであることを特徴とする請求項4記載の連続溶液重合法。
- メタクリル酸メチルを主成分とする単量体が、メタクリル酸メチル単独あるいはメタクリル酸メチル単量体と15重量%以下のアクリル酸エステル単量体からなることを特徴とする請求項1又は2記載の連続溶液重合法。
- アクリル酸エステル単量体がアクリル酸メチル単量体又はアクリル酸エチル単量体であることを特徴とする請求項7の連続溶液重合法。
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