JP3779777B2 - メタクリル系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液重合法によるメタクリル系樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル系樹脂は、その卓越した透明性、良好な機械的性質、加工性並びに成形品における外観の美麗さなどによって、例えば照明器具、看板、各種装飾品、銘板、テールランプなどの自動車部品、テーブルウェアーなどに広く用いられている。又、最近は各種レンズ、光ディスク、導光板などの光学分野にも広く用いられてきている。その為に、高度な光学特性が要求されつつある。
【0003】
メタクリル系樹脂の製造方法としては懸濁重合方法が広く採用されている。しかしながら、この製造方法の最大の欠点は、使用される懸濁安定剤がポリマー中に一部残存し、ポリマー特性、特に光学特性が低下することである。
この懸濁重合方法の欠点を改良する方法として、塊状重合法(特開昭49−37993号公報、特開平3−111408号公報など)、溶液重合法(特開昭63−57613号公報、特開平1−172401号公報など)が提案されている。これらの方法によれば、懸濁重合方法と異なり、懸濁安定剤が使用されない為に光学特性に優れたメタクリル系樹脂の製造が可能である。しかしながら、塊状重合は、安定な重合反応の制御が困難で時として重合系の粘度が増大するに伴いポリマー分子の拡散が制限され、停止反応が低下する、いわゆるゲル効果により暴走反応を招く問題点がある。
【0004】
更に、この塊状重合を工業的なレベルで連続的に生産する場合、もう一つの大きな問題がある。即ち、一般に工業的にメタクリル系樹脂を塊状重合で連続して生産する場合、一般的には完全混合型の重合反応機を使用して重合させるが、重合転化率100%とすると重合液の粘度が高く成りすぎて攪拌できないなどの問題がある為、通常重合転化率を70%以下に抑えて重合させる。その為、重合後の未反応メタクリル酸メチルよりなるリサイクル液を再使用する。しかしながら、リサイクル液は、重合時生成する不純物などを含む為、蒸留塔あるいはパーシャルコンデンサーなどで精製する。光学特性が要求されるメタクリル系樹脂では、特に重合時に生成する不純物、特に着色不純物を除去する為に、リサイクル液の精製は必要である。
【0005】
リサイクル液の精製は、上記の如く蒸留塔あるいはパーシャルコンデンサーなどが使用されるが、パーシャルコンデンサーは、不純物の沸点の低いものの除去は困難である為、通常蒸留塔による方法が用いられる。蒸留塔で精製する場合、不純物は、メタクリル酸メチル等単量体より沸点が高い為、蒸留されず、蒸留塔ボトムに残存し、蒸留塔ボトム部のメタクリル酸メチル単量体を主成分とするボトム液と共に抜き出すことによって除去する。しかしながら、メタクリル酸メチル単量体を主成分とするボトム液の滞留時間が長く且つ温度が高い為、蒸留塔ボトムでメタクリル酸メチル単量体の重合が進行し、リボイラーでの熱交換効率の低下や生成したポリマーによる配管の閉塞等が起こる。あるいは極端な場合は、蒸留塔ボトム全体で重合が進行し、固化してしまうなど工業的に安定に製造する上において大きな問題点がある。
【0006】
一方、溶液重合は、溶剤によって反応系の粘度が低減される為、ゲル効果を抑制でき暴走反応を抑制できる。又、溶媒としてメタクリル酸メチル等単量体より高い沸点のものを使用すれば蒸留塔ボトムは溶媒が主成分となりここでの重合はほとんど起こらず重合で生成する不純物を溶媒と共に抜き出すことができ、メタクリル系樹脂を極めて安定に生産することができる。しかしながら、大きな別の問題がある。それは、生産するメタクリル系樹脂の耐熱分解性の低下である。耐熱分解性が低下するとメタクリル系樹脂を成形加工する時にポリマーのジッパー反応による分解が起こり、このメタクリル酸メチル単量体を主体とした分解生成物が原因で、いわゆるシルバーストリークと呼ばれる銀条跡が発生し、それが製品不良となる問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたメタクリル系樹脂、特に光学特性及び耐熱分解性に優れ、且つ工業的にメタクリル系樹脂を安定して製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決する方法を見出だすべく鋭意検討した結果、連続溶液重合法で溶媒量を、重合時の全混合物の重量に基ずき10重量%以下、好ましくは5重量%以下とすることにより、耐熱分解性に優れ、ゲル効果による暴走反応も抑制され、更にリサイクル液を蒸留塔を使用して精製するプロセスの場合は、蒸留塔ボトムでのポリマーの生成も起こらず重合時に生成する不純物を安定して取り出すことができ、工業的に極めて安定に光学純度の高いメタクリル系樹脂を製造することができることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
[1] (A)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液と新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶剤を連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応のビニル単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスにおいて、使用する溶媒量が、重合時の全混合物の重量に基づき0.1〜5重量%(ただし、5重量%を除く)であり、該溶媒がメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高い沸点であることを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。
[2](B)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液を連続して蒸留塔へ供給し、蒸留されたメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒と新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒をリサイクル使用する連続溶液重合プロセスにおいて、使用する溶媒量が、重合時の全混合物の重量に基づき0.1〜5重量%(ただし5重量%を除く)であり、該溶媒がメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高い沸点であることを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。
[3] メタクリル酸メチルを主成分とする単量体が、メタクリル酸メチル単独あるいはメタクリル酸メチル単量体と15重量%以下のアクリル酸エステル単量体からなることを特徴とする[1]又は[2]記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[4] アクリル酸エステル単量体がアクリル酸メチル単量体又はアクリル酸エチル単量体であることを特徴とする[3]記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[5]溶媒がアルキルベンゼンであることを特徴とする[1]又は[2]記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[6]溶媒が、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれることを特徴とする[5]のメタクリル系樹脂の製造方法。
に関するものである。
【0010】
メタクリル酸メチルを主成分とする単量体としは、メタクリル酸メチル単独あるいはメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体とからなる。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸エステル類は耐熱分解性が良く、又アクリル酸エステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は成形加工時の流動性が高く好ましい。
【0011】
メタクリル酸メチルに共重合させるアクリル酸エステル類の使用量は、15重量%以下が好ましい。15重量%を越えると、耐熱分解性、流動性等の改良効果は高いが、耐熱性即ち熱変形温度が低下し好ましくない。アクリル酸エステル類の中でも、特にアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、それを少量メタクリル酸メチルと共重合させても上記改良効果は著しく最も好ましい。共重合可能な単量体は一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0012】
本発明で用いる溶媒は、蒸留塔ボトム及び蒸留塔内部でメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチル単量体と共重合可能な単量体混合物や除去すべき不純物を溶解させ、且つ、メタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体より高い沸点を有しておれば特に限定するものではないが、通常、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族化合物、オクタン、デカン等の脂肪族化合物、デカリン等の脂環族化合物、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル化合物、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン等のハロゲン化合物等を用いる事ができる。使用する溶媒の沸点は、メタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高いこと、好ましくは15℃以上、さらに好ましくは30℃以上高いことが望ましい。この中でも、特にトルエン、キシレン、エチルベンゼンが工業的に安価に入手することができ、且つ重合に悪影響を及ぼすことがなく且つ重合で生成する不純物の溶解性も高く最も好ましい。
【0013】
使用する溶媒量は、重合時の全混合物の重量に基づき0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。この範囲の溶媒量では、耐熱分解性は良好であり塊状重合品と大きな差はないかあるいは驚くべきことに少量の溶媒添加したものが優れる。この理由は、通常耐熱分解性を落とす一つの原因は2つのポリマー成長ラジカルの不均化反応停止によって生成される重合体末端二重結合構造である(特開平3−294307号公報)。しかしながら、この末端二重結合は、溶媒が存在することによって水素引き抜き停止による水素末端構造となり不均化反応による末端二重結合構造の生成が抑制されることによると推定される。
【0014】
又、この溶媒量でもゲル化による暴走反応は抑制される。この理由は、ゲル効果による暴走反応は、上記の如く重合系の粘度が増大するに伴いポリマー分子の拡散が制限され、停止反応が低下することによって起こるが、溶媒があることによってその溶媒からの水素引き抜きにより停止反応が促進されることによると推定される。更に、この溶媒量で蒸留塔ボトムでの重合が防止される。
【0015】
当然、溶媒量が多いものは問題がないが、0.1重量%の添加であっても、蒸留塔ボトムは、使用する溶媒が蒸留する単量体よりも沸点が高いとボトム液は溶媒が主成分となる。このボトム液中の単量体が少なくそこでの重合が起こらず安定に運転できる。溶媒量が10重量%を越えると、耐熱分解性の低下が大きく好ましくない。0.1重量%より少ないと、ゲル効果による暴走反応が起こり易くなり好ましくない。なお、溶媒量を10重量%以下にすると、重合反応系の粘度が高くなり、重合反応の制御が困難となるケースもあるが、これは重合転化率をやや低めにすることでこの問題は解決する。
【0016】
本発明の連続溶液重合プロセスとしては、混合装置、温度調節装置を備え、連続的に原料の供給と反応液の排出を行わせしめることのできる供給口と排出口を備えた容器を単独または複数直列に接続した構成の反応機に原料として単量体と溶媒を主成分とする原料を連続的に供給し同時に最終反応機から反応液を連続的に排出し、排出された反応液を連続的に予備加熱機を通して脱揮装置に導入し、高温減圧下に未反応単量体及び溶剤を蒸発させることにより重合体を分離して得るプロセスをいう。
【0017】
個々の重合反応機としては、攪拌翼により均一に攪拌され均一な反応液組成が得られる構造で、反応機の例としては、ダブルヘリカルリボン、ピッチドバドル、タービン、アンカー型などの攪拌翼で均一に攪拌可能な完全混合型反応機を用いることができる。これらの個々の完全混合型反応機においては、溶媒量を10重量%以下の場合も、重合転化率が70%を越える場合に、重合反応の制御が困難となったり、重合反応機について継続される機器への配管中の圧力損失が大きくなって、重合液の輸送が困難となり好ましくない。従って、完全混合型反応機の重合転化率は70%以下とすることが必要である。
【0018】
また、完全混合型反応機での重合転化率が40%未満であれば、揮発成分による脱揮工程の負荷が大きく、例えば予備加熱器の伝熱効率の制約から脱揮不十分になる場合があり好ましくない。
一方、完全混合型反応機以外の反応機を単独または複数の完全混合型反応機の後段に用いることができる。このような反応機においては、反応機内での均一混合を必要としない為、重合の局部的な進行による系の攪拌状態の不安定化が起こらず、重合転化率は、安定な重合反応物の移送が可能な範囲であればよい。
【0019】
メタクリル系樹脂の重合温度としては、一般的な120−160℃の範囲内の温度が好ましい。重合温度が120℃未満であれば、重合が遅すぎ、また160℃を越えると転化率の調整が困難となるため好ましくない。
本発明の連続溶液重合プロセスの一例を図1で説明する。
(A)新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体1と重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液9とを連続して蒸留塔2へ供給し、蒸留された単量体及び溶剤、更に重合開始剤、分子量調整剤を連続して重合反応機5に供給、重合し、次いで重合液を脱揮タンク8で脱揮して重合物10を取り出すと同時に未反応のビニル単量体及び溶媒をリサイクル使用して連続溶液重合する。又は(B)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液9を連続して蒸留塔2へ供給し、蒸留されたメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶剤と新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体1及び溶剤、更に重合開始剤、分子量調整剤を連続して重合反応機5に供給、重合し、次いで重合液を脱揮タンク8で脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応のビニル単量体及び溶媒をリサイクル使用して連続溶液重合する。
【0020】
蒸留は、例えば充填塔式、棚段式などの蒸留塔により実施する。蒸留の方式は、例えば、除去したい不純物を含むリサイクル液あるいはこれと新たな単量体との混合液を蒸留塔の中段または上段より供給し、蒸留塔ボトム液をリボイラー等の加熱器で加熱しながら蒸留し、蒸留塔の塔頂部より留出するメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒の蒸気をコンデンサーにて凝縮することによって実施する。この際、使用する溶媒の沸点が単量体より高い場合、重合時に生成する不純物、例えばメタクリル酸メチルダイマー、オリゴマーあるいは金属異物、ポリマーの焼け異物などの不純物更にリサイクル液の貯蔵安定化の為に添加する重合禁止剤あるいは原料中に含まれる重合禁止剤など光学特性を低下させる不純物は蒸留塔ボトムに濃縮される。この不純物は、蒸留塔ボトムより連続してあるいは断続して取り出すと同時に取り出した量の溶媒を追加することによって連続的に不純物を除去することができる。なお蒸留は、上記の如く、新たな単量体と重合後の未反応単量体及び溶媒を含むリサイクル液とを併せて蒸留する方法とリサイクル液のみを蒸留する方法とがあるが、前者の方が新たな単量体中に含まれる異物が除去でき、より好ましい。
【0021】
上記の様に蒸留したメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶剤、場合により新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体、更に重合開始剤、分子量調整剤などを個別にあるいは混合して重合反応機に供給し重合する。この単量体溶液は、光学特性を向上させる為に、例えば向流接触塔へ連続的に供給し、不活性ガスと置換し、単量体溶液中の溶存酸素を1ppm以下とする。更に金属異物などの異物を除去する為に、単量体溶液を0.5μ以下のフィルターで濾過することが好ましい。
【0022】
この際、使用する重合開始剤は、重合温度で活性に分解しラジカルを発生するもので、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−クミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーフタレート、ジ−tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−tert−アミルパーオキジド、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド及びラウリルパーオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブタノールジアセテート、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2−フェニルアゾ2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−2プロピルアゾホルムアシド及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物などを用いることができる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、全反応混合物の重量に基づき0.0010〜0.03重量%の範囲が好ましい。
【0023】
更に、この際使用する分子量調整剤は、主としてメルカプタン類が使用される。メルカプタン類としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタンなどのアルキル基または置換アルキル基を有する第一級、第二級及び第三級メルカプタン、フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン、チオグリコール酸とそのエステル及びエチレンチオグリコールなどが使用できる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの分子量調整剤の使用量は、製造する重合体の分子量に応じて適宜決定されるが、通常は、全反応混合物の重量に基づき0.01〜0.5重量%の範囲で選ばれる。
【0024】
この様な重合反応により得られた重合液は、脱揮して重合物を取り出すと同時に揮発分である未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を分離する。揮発分は、リサイクル液として蒸留・再使用し、連続的にメタクリル系樹脂を製造する。脱揮装置としては、多段ベント付き押出機、脱揮タンクなどを使用する。好ましくは、重合液を予備加熱器などで200〜290℃の温度に加熱し、上部に十分な空間を有し、且つ200〜250℃、20〜100トールの温度、真空下の脱揮タンクにフィードして重合物を取り出すと同時に未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒からなる揮発成分を分離しリサイクル液として再使用する。重合体に残存する揮発分は、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下である。この減圧下に保持された脱揮タンクに重合液を導入する方法は、揮発成分の瞬間的な揮発とそれによる発泡を生じて、極めて大きな蒸発面積を形成し、高沸点の溶剤を使用しても効率的に短時間で揮発成分が除去され、ポリマー中に残存する溶媒あるいは残留単量体が少なく、且つポリマーの着色も少なく光学特性に優れた好ましい脱揮方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
重合体の物性の測定方法は以下のとおりである。
(1)重合体の固有粘度の測定
重合体150mgをクロロホルム50mlに溶解し、25℃の温度でオストワルド粘度計で測定した。
(2)全光線透過率の測定
ASTM D−1003法によって測定した。
(3)耐熱分解性の測定
3オンスの射出成型機を使用し、成形機の温度を290℃に設定した。ポリマーを計量した後、成形機内に10分間滞留させた。成形機内に滞留させることによりポリマーが熱分解し、分解したガス量に比例したポリマーがノズルから排出されるが、その排出量を計量し熱分解性の尺度とした。
【0026】
【実施例1】
メタクリル酸メチル91.6重量%、アクリル酸メチル2.0重量%及びエチルベンゼン6.4重量%の重合後のリサイクル液/メタクリル酸メチル98.0重量%及びアクリル酸メチル2.0重量%の新たな単量体溶液を47/53の重量比で蒸留塔に連続してフィードした。蒸留された単量体溶液は、メタクリル酸メチル95重量%、アクリル酸メチル2.0重量%、エチルベンゼン3.0重量%であった。この単量体溶液に1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが105ppmになる量及びn−オクチルメルカプタンが1950ppmになる量を連続的に追添加し重合反応機に連続的に供給、重合温度155℃、滞留時間2.0時間で重合した。この際の単量体の重合転化率は53%であった。この重合液を連続的に重合反応機から取り出し、次いで加熱板で260℃に加熱し、加熱板の間隔を通して脱揮タンクに流延落下せしめた。脱揮タンク、30トール、230℃に維持し重合体と未反応単量体及び溶剤と分離した。重合体は押出ダイスより押出し、更に未反応単量体及び溶剤はリサイクル液として蒸留再使用し約5日の連続運転を実施した。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸メチル含有量は1.9重量%、残存単量体は2300ppmであった。又、固有粘度は、56ml/g、全光線透過率は93%、耐熱分解性の尺度である排出量は17gであった。又、蒸留塔ボトムでのポリマーの析出は全くなかった。
【0027】
【実施例2〜5、比較例1〜2】
実施例1における条件を表1に示た以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果を表1に示す。なお実施例1も併記する。
なお、比較例1は、約5日間の運転でリボイラホー部に一部ポリマーの析出が見られた。しかしながら実施例は、全てポリマーの析出は見られなかった。
【0028】
【表1】
【0029】
【実施例6】
使用するアクリル酸メチルをアクリル酸エチルに変えた以外は実施例1と同様にメタクリル系樹脂を製造した。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸エチル含有量2.0重量%、残存単量体2300ppm、固有粘度54ml/g、全光線透過率93%、耐熱分解性の尺度である排出量17gであった。又、蒸留塔ボトムでのポリマーの析出は全くなかった。
【0030】
【実施例7】
使用する溶媒を混合キシレンに変えた以外は実施例1と同様にメタクリル系樹脂を製造した。得られたメタクリル系樹脂ペレット中のアクリル酸メチル含有量2.0重量%、残存単量体2300ppm、固有粘度58ml/g、全光線透過率93%、耐熱分解性の尺度である排出量16gであった。又、蒸留塔ボトムでのポリマーの析出は全くなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、連続溶液重合において溶媒量を、重合時の全混合物の重量に基づき10重量%以下、好ましくは5重量%以下とすることにより、耐熱分解性に優れ、又、ゲル効果による暴走反応も抑制され、更に、蒸留塔ボトムでのポリマー生成もなく重合時に生成する不純物などを取り出すこともでき、従って工業的に極めて安定に光学純度の高いメタクリル系樹脂を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶液重合プロセスでの連続溶液重合装置の一例を示す。
【符号の説明】
1、新たな単量体供給ライン
2、蒸留塔
3、不純物抜き出しライン
4、コンデンサー
5、重合反応機
6、定量ポンプ
7、加熱板
8、脱揮タンク
9、揮発分リサイクルライン
10、脱揮タンク
11、ポリマー払い出しライン
Claims (6)
- (A)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液と新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して蒸留塔へ供給し、蒸留された単量体及び溶剤を連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応のビニル単量体及び溶媒をリサイクル使用してなる連続溶液重合プロセスにおいて、使用する溶媒量が、重合時の全混合物の重量に基づき0.1〜5重量%(ただし、5重量%を除く)であり、該溶媒がメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高い沸点であることを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。
- (B)重合後の未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒を含むリサイクル液を連続して蒸留塔へ供給し、蒸留されたメタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒と新たなメタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを連続して重合反応機に供給、重合し、次いで重合液を脱揮して重合物を取り出すと同時に未反応メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び溶媒をリサイクル使用する連続溶液重合プロセスにおいて、使用する溶媒量が、重合時の全混合物の重量に基づき0.1〜5重量%(ただし、5重量%を除く)であり、該溶媒がメタクリル酸メチル単量体及びメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の沸点より高い沸点であることを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。
- メタクリル酸メチルを主成分とする単量体が、メタクリル酸メチル単独あるいはメタクリル酸メチル単量体と15重量%以下のアクリル酸エステル単量体からなることを特徴とする請求項1又は2記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- アクリル酸エステル単量体がアクリル酸メチル単量体又はアクリル酸エチル単量体であることを特徴とする請求項3記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- 溶媒がアルキルベンゼンであることを特徴とする請求項1又は2記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- 溶媒が、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれることを特徴とする請求項5のメタクリル系樹脂の製造方法。
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JP (1) | JP3779777B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2009125764A1 (ja) | 2008-04-08 | 2009-10-15 | 住友化学株式会社 | 熱板融着用メタクリル樹脂組成物、熱板融着への使用及び融着方法 |
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1996
- 1996-09-20 JP JP24982196A patent/JP3779777B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2009125764A1 (ja) | 2008-04-08 | 2009-10-15 | 住友化学株式会社 | 熱板融着用メタクリル樹脂組成物、熱板融着への使用及び融着方法 |
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JPH1087706A (ja) | 1998-04-07 |
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