JP4296364B2 - アクリルシラップの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体の重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルシラップはメタクリル樹脂注型板、光伝送繊維や光導波路などの光学材料、アクリル人造大理石、人工印材、床材、接着剤、粘着剤、文化財・剥製等修復材料または医用材料などの中間原料として従来より用いられている。
【0003】
このうちメタクリル酸メチルを主成分とするシラップの製造方法は特公昭36−3392号公報、特公平1−11652号公報、特開昭49−104937号公報、特開平3−111408号公報、特開平9−67495号公報、および特開平9−194673号公報等、多数出願されている。
【0004】
アクリルシラップの製造方法は2つに大別される。1つは特開昭49−104937号公報、特開平9−194673号公報等に開示されている、別途調製した重合体を単量体に溶解する方法である。本発明とは基本的に異なる製造方法であり、しかも一旦重合体を取り出した後再度単量体に溶解するため、エネルギー的にも経済的にも不利である。もう1つは特公昭36−3392号公報や特公平1−11652号公報等で開示されている、単量体を部分的に塊状重合させる方法であり部分重合法とも呼ばれる。部分重合法は更に回分法と連続法とに分けられる。
【0005】
部分重合法のうち第一の回分法による製造方法として、例えば特公昭36−3392号公報には、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体および連鎖移動剤からなる原料を80℃に昇温し、少量のアゾビスイソブチロニトリルまたは過酸化ベンゾイルを重合開始剤として加え、同時に100℃に昇温し還流下で27〜50分重合し、所定の粘度になった時点で重合禁止剤としてハイドロキノンを含有する冷たいメタクリル酸メチルを加えて急冷することによりアクリルシラップを製造する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では重合開始剤が完全に分解しない状態で重合を停止するため、得られたシラップ中に重合開始剤が残存しており、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなる。例えば重合開始剤に用いる過酸化ベンゾイルの100℃での半減期は約22分であるから、所定の粘度に達した時点では加えた量に対して42〜20%の重合開始剤が製品中に残存している。また反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難であり、一旦重合開始剤を加えた後に昇温を行い還流下で反応させるが、昇温速度や還流量などについての詳細な記述はなく、僅かな温度の変化の影響により製品の重合率、粘度が大きく変化するから安定した製造は行えない。
特公平1−11652号公報では、SMCまたはBMCの中間原料としてシラップを製造するに際し、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えた反応容器にメタクリル酸メチル89重量%、メタクリル酸5重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート6重量%からなる単量体100部に対しn−ドデシルメルカプタン0.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.05部を含む原料を仕込み、80℃、窒素雰囲気下で重合を行い、反応液が所定の粘度に達した時点で重合禁止剤としてハイドロキノンおよびp−メトキシフェノールを加え速やかに室温まで冷却し重合を禁止する方法により、カルボン酸を含むアクリルシラップを製造する方法が開示されている。
しかしながらこの方法においては、所定の粘度に達した時点で重合禁止剤を加えて強制的に重合を停止しており、得られたシラップ中には重合開始剤が残存しているので、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなる。また反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難である。僅かな温度の変化の影響により製品の重合率、粘度が大きく変化するため安定した製造は行えない。
また特開平9−67495号公報ではSMCまたはBMCの中間原料としてシラップを製造するに際し、メタクリル酸メチル190部、メタクリル酸10部からなる単量体を窒素雰囲気下80℃に昇温し、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.05部と連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.8部を加え重合を行い、反応液が所定の粘度に達した時点でメタクリル酸メチル50部を加え急冷する方法により、シラップ中の重合体にカルボン酸を含むアクリルシラップを製造する方法が開示されている。
しかしながらこの方法においては、所定の粘度に達した時点で単量体を加え急冷することで強制的に重合を停止しており、得られたシラップ中には重合開始剤が残存しているので、貯蔵安定性の劣ったものとなる。また反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難である。僅かな温度の変化の影響により製品の重合率、粘度が大きく変化するため安定した製造は行えない。
【0006】
従来行われてきた回分法では反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難であり、僅かな温度変化の影響により製品の重合率、粘度が大きく変化するため、安定した品質の製品は得られがたい。
また重合開始剤が残存しないようにするため反応温度での半減期が短い重合開始剤を用いると、一度に多量の重合開始剤が分解し、重合反応が急速に進行するため重合反応を制御することができない。このため回分法で使用可能な重合開始剤は重合温度での半減期が長いものに限定されるので、得られたシラップ中に重合開始剤が残存しており、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなる。
【0007】
部分重合法のうち第二に連続法による製造方法として、例えば特開平3−111408号公報には原料中の溶存酸素を1ppm未満とし、反応液の沸騰を抑え、130〜160℃において重合率が45〜70%となるように重合させる方法が開示されている。この完全混合槽による連続法においても、原料中の溶存酸素を除去する必要があり、重合反応は窒素雰囲気下で行われるので多量の窒素を必要とする。
また上記の完全混合槽による連続法では連続キャスト板向けなど大量少品種生産には適しているとしても、種々の用途に適した製品を作るための少量多品種の生産には不向きである。
【0008】
このように、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体の重合を行う場合、窒素等の不活性ガスを単量体中に導入することにより単量体中の溶存酸素を除去することが広く行われている。
酸素は重合反応において重合禁止剤あるいは重合開始剤として働くことが知られている。例えばJ.C.Bevington(J.C.Bevington、大津 隆行ほか訳、東京化学同人、「ラジカル重合」、1966年、p.182〜183)によれば、ポリマーラジカルが酸素に対して高い反応性を有し、付加反応によりパーオキシラジカルを生成すること、およびこのパーオキシラジカルと単量体の反応速度が非常に小さいので、通常の場合酸素は重合を抑制することが記されている。
また松本ら(高分子化学、26、1969、p.180〜186)によれば、精製した単量体と酸素とが反応してパーオキサイドが生成し、このうち特にヒドロキシパーオキサイドは通常の重合開始剤のようにラジカルを発生し重合開始反応を起こすこと、多量の酸素が存在すると単量体との共重合体を生成するため、通常の単量体だけの重合を抑制することが記されている。
このように単量体中に酸素が溶存していると、酸素が単量体と反応してパーオキサイドや共重合体を生成し、温度や酸素濃度等の条件により、重合を抑制したり、あるいは逆に重合を開始したりするので重合反応が不安定となる。
メタクリル酸メチルを主成分とする単量体の重合を工業的にかつ安定的に実施するには、重合に及ぼす影響が実質的になくなる程度まで溶存酸素を除去することが必要である。
【0009】
同様に、半回分法においても重合に及ぼす影響が実質的になくなる程度まで溶存酸素を除去するためには多量の不活性ガスを用いる必要があり、製造コスト上昇の一因となる。重合の阻害要因を除去し、しかも製造コストを削減できる方法が待ち望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来法の上記のような問題点を解決し、種々の用途に適しかつ安定した品質のアクリルシラップを効率的にかつ容易に製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定の製造方法によって、種々の用途に適しかつ安定した品質のアクリルシラップを、効率的にかつ容易に製造し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体成分を50重量%未満の範囲で含むメタクリル酸メチルからなる単量体、重合開始剤および連鎖移動剤を含む混合物からアクリルシラップを製造するに際し、(1)原料の全量に対し20〜70重量%の単量体を用い、単量体に対し200〜1000vol%の不活性ガスを単量体に接触させて溶存酸素を置換した後に昇温し、(2)系内組成物の沸点に達し還流を開始した時点で連鎖移動剤を添加し、(3)次いで反応温度を系内組成物の沸点とし、かつ還流を維持しながら、原料の全量に対し80〜30重量%の単量体を不活性ガスを単量体に接触させずに、0.1〜10時間の範囲から選ばれた時間かけて連続的にまたは分割して添加し、(4)単量体の添加と同時に、反応温度での半減期が10〜300秒の重合開始剤を連続的にまたは分割して加え反応を行う、GPCで測定したシラップ中重合体の重量平均分子量が2万〜50万であり、25℃における粘度が1.0×102 〜5.0×105 mPa・sであるアクリルシラップの製造方法に関するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアクリルシラップの製造方法について具体的に説明する。
【0014】
本発明では単量体成分としてメタクリル酸メチルを主成分とし、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体成分を50重量%未満の範囲で任意に加えて用いることができる。この単量体成分はメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはフマル酸などの不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチルを除く不飽和カルボン酸エステル、不飽和ニトリル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸のイミド及び/または酸無水物、スチレンなどの芳香族ビニル、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルなど、エチレン性二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0015】
本発明においては、初期に仕込む原料のみ、単量体に対し200〜1000vol%の不活性ガスを単量体に接触させて溶存酸素を置換すればよく、系内組成物の沸点で、かつ還流を維持しながら反応を行うことにより、添加原料中に不活性ガスを接触させなくても、酸素が実質的に系内から除去された状態で重合を行うことができる。不活性ガスの量が単量体に対し200vol%未満では溶存酸素を十分低減することができない。1000vol%を超える量を用いることも可能であるがいたずらに不活性ガスの消費量を増加させるだけで経済的でない。また不活性ガスを単量体に接触させる手段には、バブリング、アトマイジングあるいはモーションレスミキサーによる気液接触および気液の分離など、公知の手段を用いることができる。
【0016】
本発明においては、反応槽中の反応液100重量部に対し、1分あたりの還流量を0.01重量部〜10.0重量部であるように還流状態を維持することにより系内の酸素を系外に除去する。1分あたりの還流量が0.01重量部未満では原料の添加により系内にもたらされる酸素の系外への除去が不完全であり、設定通りの重合率を得ることができない。逆に1分あたりの還流量が10.0重量部を超えるのは急激な重合反応が起こっている場合かまたは過剰な熱量がジャケットから与えられている場合であり、前者では重合反応の制御が不可能であり、後者ではエネルギー効率が悪く、いずれも好ましくない。
【0017】
本発明においては、反応温度での半減期が10〜300秒になるような重合開始剤を用い、単量体及び重合開始剤の添加終了後0〜5時間還流状態を維持することにより、重合開始剤を完全に分解させ、得られるシラップの貯蔵安定性を向上させることができる。
【0018】
重合開始剤の半減期は例えば日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料および和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の諸定数等により容易に求めることができ、例えば2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよび/またはビス( 4−t−ブチルシクロヘキシル) パーオキシジカーボネートなどが用いられる。
【0019】
用いられる重合開始剤は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができ、重合反応槽で所望の重合率を得るために必要な量が添加される。また重合開始剤を単独で添加する方法、単量体原料と混合して添加する方法のいずれも用いることができる。本発明によるアクリルシラップの粘度は重合率、重合体の分子量および重合体中のメタクリル酸メチルと共重合可能な不飽和単量体単位の分率により影響を受けるが、必要な粘度範囲を満足するためには、原料全体に対する重合開始剤の使用量として5.0×10-5〜2.0wt%が好ましく、5.0×10-4〜1.0wt%がさらに好ましい。
【0020】
連鎖移動剤としては重合反応を阻害せず所望の分子量の製品が得られるものであれば何でもよい。通常はメルカプタン類が用いられる。
連鎖移動剤としてメルカプタン類を用いた場合には、僅かづつ重合が進行することが知られている。最初に仕込む原料中にメルカプタン類が含まれた状態で昇温すると、昇温パターンの変動により添加開始前のポリマー濃度が変動し、製品の重合率が変動するため安定した製造が行えない。従って、昇温が完了して単量体および/または重合開始剤の供給を開始する直前に連鎖移動剤の全量を添加することが好ましい。
【0021】
本発明において原料は大きく分けて、初めから仕込まれる原料、すなわち初期仕込分および重合開始剤とともに後で添加される残りの原料、すなわち添加分に分けられる。この初期仕込分と添加分の重量比は通常20:80〜70:30の範囲である。反応装置にもよるが、初期仕込分が20wt%未満では攪拌翼の大部分が液面より上にあるため攪拌効率が悪く、好ましくない。
【0022】
添加原料の供給速度は添加中を通じ一定となるように制御される。また添加時間は0.1〜10時間であり、好ましくは0.5〜8時間である。添加時間が0.1時間未満では発熱量が多く、しかも反応槽内液量の増加速度が大きいため大容量の熱交換器、大流量の定量ポンプなどを必要とし好ましくない。また10時間を超えると仕込から製品取出までの工程時間が長くなり生産性の点から好ましくない。
【0023】
単量体および/または重合開始剤の添加終了後、0.01〜5時間、好ましくは0.01〜1時間さらに加熱を継続する。この反応時間は重合開始剤が99%以上分解する時間とするのが望ましい。重合開始剤が残存していると冷却時の影響により最終製品の重合率および粘度が変動しメタクリル酸メチルシラップを安定に製造することが困難となるばかりでなく、得られたメタクリル酸メチルシラップの貯蔵安定性が低下し好ましくない。5時間を超えて加熱を継続することも可能であるが、仕込から製品取出までの工程時間が長くなり生産性の点から好ましくない。最終的な重合率は設定分子量およびメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の濃度にもよるが、15〜50重量%である。
【0024】
本発明においては一定時間加熱を継続した後重合禁止剤を加えてから冷却し、製品を取り出すことが好ましい。冷却する前に重合禁止剤を加えることにより、冷却操作中にメルカプタン類による重合が進行することを抑制し、さらに安全に安定した条件でアクリルシラップを製造することができる。また冷却する前に重合禁止剤を加えることにより連鎖移動剤にメルカプタン類を用いる場合であってもアクリルシラップの貯蔵安定性は良好となり、アクリルシラップ中に残存するメルカプタン類の不活性化処理を行う必要はない。
【0025】
得られたシラップの着色をさけるため、重合禁止剤としてはヒンダードフェノール系重合禁止剤を用いることが好ましい。ヒンダードフェノール系重合禁止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)および/または2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらのヒンダードフェノール系重合禁止剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また上記ヒンダードフェノール系重合禁止剤の存在下、例えばリン系重合禁止剤のような、ヒンダードフェノール系重合禁止剤と併用することでさらに着色を抑制することが公知である重合禁止剤を併用することも可能である。
【0026】
さらに、冷却時においては酸素を含むガスを導入することが望ましい。酸素を含むガスとしては空気または空気と窒素の混合ガス等が挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物存在下でシラップ中に酸素を十分溶存させることにより、アクリルシラップの貯蔵安定性が良好となる。
【0027】
以上のようにして得られたアクリルシラップはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したシラップ中重合体の重量平均分子量が3万〜30万であり、25℃における粘度が1.0×102 〜5.0×105 mPa・s、好ましくは1.0×102 〜1.0×105 mPa・sであることを特徴とするものとなる。
【0028】
得られたアクリルシラップは注型板、光伝送繊維や光導波路などの光学材料、アクリル人造大理石、人工印材、床材、接着剤、粘着剤、文化財・剥製等修復材料または医用材料などの中間原料として用いることができる。必要に応じ充填材、繊維補強材、低収縮剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、有機溶剤等の希釈剤、架橋剤、レベリング剤、脱泡剤、沈降防止剤、離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤、UV吸収剤、顔料および/または染料等の公知の添加剤と本発明のアクリルシラップを混合し用いることもできる。
【0029】
【実施例】
本発明をさらに具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
重合率は重量法により、試料を大量の冷ヘキサン中に投入し生じた沈澱物を精製・減圧乾燥し求めた。シラップ中重合体の分子量は東ソー(株)製8010型ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。粘度はB型粘度計を用い25℃で測定した。
実施例1
撹拌機、冷却管、定量ポンプを備えた3Lセパラブルフラスコにメタクリル酸メチル911g、メタクリル酸28gを仕込み、100ml/分の流量で30分間(単量体に対し300vol%)窒素バブリングを行った後、窒素雰囲気下で昇温した。100℃に達し還流が始まった時点で1−ドデカンチオール11gを加え、還流量を20g/分に維持しながらメタクリル酸メチル940gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.14g(100℃における半減期=96秒)からなる溶液を3時間かけて定量ポンプを用いて添加した。添加終了後0.3時間加熱を継続し、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール2.98gを加えた後、冷却管を通して空気が入り得る状態で室温まで攪拌しながら冷却した。得られたシラップの重合率は35.1%、酸価は7.4mgKOH/g、25℃における粘度は2100mPa・sであった。またGPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量は5.1万であった。
同じ実験を3回繰り返したところ、重合率は35.1±0.2%、酸価はいずれも7.4mgKOH/g、25℃における粘度は2100±100mPa・s、GPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量はいずれも5.1万であった。
【0030】
比較例1
還流を行わなかった以外は実施例1と同様に反応を行った。得られたシラップの重合率は31.1%、酸価は7.4mgKOH/g、25℃における粘度は610mPa・sであった。またGPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量は5.0万であった。
同じ実験を3回繰り返したところ、重合率は31.3±0.8%、酸価はいずれも7.4mgKOH/g、25℃における粘度は650±180mPa・s、GPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量は5.0〜5.1万であり、再現性あるデータは得られなかった。
【0031】
参考例1
還流を行わず、昇温前に、原料に対し3倍量の窒素バブリングを行いかつ窒素雰囲気下で反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行った。得られたシラップの重合率は35.1%、酸価は7.4mgKOH/g、25℃における粘度は2100mPa・sであった。またGPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量は5.1万であった。
同じ実験を3回繰り返したところ、重合率は35.1±0.2%、酸価はいずれも7.4mgKOH/g、25℃における粘度は2100±100mPa・s、GPCにより測定したシラップ中重合体の重量平均分子量はいずれも5.1万であり、実施例1と同じ性状のシラップが得られた。
【0032】
実施例2〜3
表1に示した反応条件で実施例1と同様に反応を行い、表1に示す性状を有する無色透明なアクリルシラップを得た。
同じ実験を3回繰り返したところ、重合率、粘度およびシラップ重合体中の重量平均分子量ともに再現性あるデータを有するシラップが得られた。
【0033】
比較例2〜3
表1に示した反応条件で比較例1と同様に反応を行い、表1に示す性状を有する無色透明なアクリルシラップを得た。
同じ実験を3回繰り返したところ、シラップ重合体中の重量平均分子量は同じ値を示したが、重合率は平均値の5%、25℃における粘度は平均値の3割程度変動し、再現性あるデータは得られなかった。
【0034】
参考例2〜3
表1に示した条件で参考例1と同様に反応を行い、表1に示す性状を有する無色透明なアクリルシラップを得た。
同じ実験を3回繰り返したところ、重合率、粘度およびシラップ重合体中の重量平均分子量ともに再現性あるデータを有するシラップが得られた。
【0035】
【発明の効果】
本発明により所望の特性を有するアクリルシラップを安定に製造することができ、工業的意義は大きい。
【0036】
【表1】
Claims (1)
- メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体成分を50重量%未満の範囲で含むメタクリル酸メチルからなる単量体、重合開始剤および連鎖移動剤を含む混合物からアクリルシラップを製造するに際し、(1)原料の全量に対し20〜70重量%の単量体を用い、単量体に対し200〜1000vol%の不活性ガスを単量体に接触させて溶存酸素を置換した後に昇温し、(2)系内組成物の沸点に達し還流を開始した時点で連鎖移動剤を添加し、(3)次いで反応温度を系内組成物の沸点とし、かつ還流を維持しながら、原料の全量に対し80〜30重量%の単量体を0.1〜10時間の範囲から選ばれた時間かけて連続的にまたは分割して添加し、(4)単量体の添加と同時に、反応温度での半減期が10〜300秒の重合開始剤を連続的にまたは分割して加え反応を行うことを特徴とする、GPCで測定したシラップ中重合体の重量平均分子量が2万〜50万であり、25℃における粘度が1.0×102 〜5.0×105 mPa・sであるアクリルシラップの製造方法。
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