JP3701493B2 - 水田投げ込み用農薬製剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時的に固化することを防止し、水田への農薬の拡散性及び溶解性が改良された水田投げ込み用農薬パック剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水田用農薬はその使用の便のために、種々の剤型、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、粒剤等に製剤され、水面又は稲体に散布されてきた。しかし、近年、農家の高齢化、兼業化、或は女性の労働に負うところが多くなったこと等の理由から、農薬散布の省力化が要求されるようになってきた。
【0003】
このため、フロアブル剤や、製剤中の有効成分含量を高めて製剤としての散布量を低減するいわゆる1kg粒剤が多く用いられるようになってきた。しかし、フロアブル剤は、風向きによっては、処理時に散布者に飛沫がかかる場合があることや、空き瓶の処理の問題等があり、1kg粒剤は、散布器具が必要であることや均一散布性等の問題点がある。
【0004】
更に、最近は、農薬の固形製剤を水溶性のフィルムに分包とし、この分包を、水田に入らずに畦畔等から投げ込むだけで処理可能な省力農薬製剤が提案され(特開平3−173802号公報)、ジャンボ剤やパック剤の名前で商品化されている。
【0005】
このような投げ込み製剤としては、▲1▼大型の発泡錠剤をそのまま水田中に投げ込むもの(特開平6−107503号公報)、▲2▼小型の発泡錠剤を水溶性フィルムの分包とし、これを水田中に投げ込むもの(特開平5−339106号公報)、▲3▼塩化カリウムのような水溶性のキャリヤーを水溶性のフィルム形成性高分子とともに造粒し、有効成分を含有させたものを水溶性フィルムに分包とするもの(特開平5−78207号公報)、▲4▼水面に浮遊するように調製した農薬固形製剤を水溶性フィルムに分包とするもの(特開平6−336403号公報)、▲5▼水面拡展性を有するオイルを水溶性の容器に詰めたもの(特開平5−339103号公報)等が知られている。
【0006】
これらの投げ込み製剤は、農薬有効成分含量が高く、又、局所施用されるため、投げ込まれた地点から速やかに有効成分が拡散しないと、有効成分の不均一による薬害や効力のムラ、又場合によっては、有効成分の残留による後作物への影響といった欠陥が生じ易い。
【0007】
上記▲4▼のタイプの投げ込み製剤のうち、固形製剤が粉末製剤又は粒剤である場合、小分けされた分包を外袋に乱雑に詰め、商品形態として保存すると、貯蔵・輸送の間に積載による加圧等の力が分包に加わって、見かけ上、不定形に固化したような状態となり、水田に投げ込んだときに、特に水田の水深が浅いときには、分包の底面が土面に接触してしまい、これがあたかも碇の役を果たして内部の農薬粉末製剤又は粒剤が十分に水田中に拡がらない場合がある。この様な場合、手で十分に揉まないと固化した状態が解消されないばかりか、場合によっては、水溶性フィルムが破れるおそれもある。
【0008】
一方、特開平6−192004号公報に、穴のあいた水溶性フィルムを用いて農薬製剤を分包した水田投げ込み剤の記載がある。しかしながら、この技術は、具体的には、上記▲2▼のタイプの炭酸塩と有機酸よりなる発泡剤を含有する農薬錠剤又はブリックを、ポリビニルアルコールのフィルムに分包とし、これを水田に投入れると、当初より分包中にあった空気、及び炭酸塩と有機酸よりなる発泡剤が水中で反応して生じた炭酸ガスにより、フィルムがドーム状になって固形剤の上を覆い、固形剤の水面での拡がりを阻害するという欠点を、穴を開けたPVAのフィルムに包装することで防止するというものであり、上記▲4▼のタイプの発泡剤を含有しない水面浮遊性の粉末製剤又は粒剤を、水溶性フィルムに分包としたときに生じる経時的な固化の防止を目的とした本願とは、その目的並びに技術思想を全く異にするものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、不定形に固化しない水田投げ込み用農薬パック剤について鋭意検討を加えた結果、意外にも水溶性フィルムに、内部の粉末製剤又は粒剤が漏れない程度の小さい穴をあけるだけで、上記の固化現象を防止でき、水田への農薬の拡散性及び溶解性が改良されることを見出し本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水面に浮遊し、拡展する性質を有し、発泡剤を含有しない農薬粉末製剤又は粒剤を、該農薬粉末製剤又は粒剤が漏れない程度の穴を1個又は2個以上あけた水溶性フィルムに分包とし、経時的に固化することを防止した水田投げ込み用農薬パック剤に関する。
【0011】
本発明の水田投げ込み用農薬パック剤は、商品形態に包装し加圧テストを行った後でも、固化することがなく、水田に施用すると、水溶性フィルムの溶解に伴って、製造直後と全く同じように、粉末製剤又は粒剤が水面で拡散し、農薬活性成分も、粉末製剤又は粒剤の拡散に伴って、田面水中に均一に分散・溶解する。又、本発明の水田投げ込み用農薬パック剤は、水溶性フィルムに穴があいているため、水田に投げ込まれた際、パックの内部にも水が浸透し、水溶性フィルムの溶解時間が短くなる。このことは、水田に投げ込まれたパック剤から水田中への農薬粉末製剤又は粒剤の拡散ひいては有効成分の均一化が、風の影響を受けることなく速やかに行われることを意味し、実用場面において好ましい結果を与える。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の水田投げ込み用農薬パック剤について更に詳細に説明する。
【0013】
本発明の「水面で浮遊し、拡展する性質を有し、発泡剤を含有しない農薬粉末製剤又は粒剤」とは、水中に投入した場合に、発泡剤の浮力に頼ることなく水面に浮遊し、水面に広範囲に拡散する性質を有する農薬粉末製剤又は粒剤を意味する。
【0014】
粉末製剤又は粒剤が粉末製剤の場合、粒度は特に問わず、見かけ上粉末であればよい。粒剤の場合、その粒径は、例えば0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、更に好ましくは0.5〜2mmであり、粉末原料から造粒したものの場合、水中に投じたときに、崩壊分散するものでも、非崩壊性のものでもよい。又、農薬有効成分を、場合によっては、水面拡展剤、分散剤、湿潤剤、増量剤、安定剤、粉砕助剤等と共に粉砕した粉末プレミックスを水中で浮遊する粒核に、適当な結合剤を用いて被覆するか、或は農薬原体を、必要なら適当な溶媒に溶解させ、更に必要なら、適当な分散剤、湿潤剤、安定剤のようなその他の助剤を加えたものを水中で浮遊する粒核に吸収させたような粒剤であってもかまわない。
【0015】
農薬粉末製剤又は粒剤には、農薬有効成分のほかに水面浮遊剤、水面拡展剤、崩壊・分散剤、湿潤剤、造粒性改良剤、結合剤、安定剤、乳化剤、溶剤、その他の増量剤等を含有することができる。
【0016】
農薬有効成分は、水面施用で有効な化合物であれば、液体でも固体でも特に限定はない。
【0017】
殺虫剤では、例えば、イソキサチオン、ダイアジノン、ダイスルフォトン、プロパホス、トリクロルフォン、ホルモチオン、ジメトエート、モノクロトフォス、アセフェート、カルボフラン、カルボスルファン、チオシクラム、カルタップ、ベンスルタップ、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、カルバリル、ブプロフェジン、フェノブカルブ、メトールカルブ、プロポクシュア、メソミル、イミダクロプリド、ニッテンピラム、アセタミプリド等の浸透移行性殺虫剤;及び、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のイネミズゾウムシやイネドロオイムシのような水中又は水面近くに生息する害虫に有効な合成ピレスロイド等を挙げることができる。
【0018】
殺菌剤では、例えば、プロベナゾール、イソプロチオラン、イプロベンフォス、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、アゾキシストロビン、7−フルオロ−1,2,5,6−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3.2.1−i.j]キノリン−4−オン等のイモチ剤;フルトラニル、メプロニル、チフルザミド、フラメトピル、2−(4−フルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−3−トリメチルシリル−プロパン−2−オール等の紋枯剤;テクロフタラム;及び、ベノミル等を挙げることができる。
【0019】
除草剤では、例えば、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ブロモブチド、ブタミホス、メフェナセット、ベンスルフロンメチル、アニロホス、ブタクロール、プレチラクロール、チオベンカルブ、クロルニトロフェン、クロメトキシフェン、ダイムロン、ビフェノックス、ナプロアニリド、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ベンタゾン、モリネート、ピペロフォス、ジメピペレート、エスプロカルブ、ジチオピル、イマゾスルフロン、ベンフレセート、キノクラミン、シンメチリン、MCPA及びそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩及びエステル、2,4−D及びそのナトリウム、カリウム塩等の塩並びにエステル、MCPB、キンクロラック、ピラゾスルフロンエチル、ペントキサゾン、テニルクロール、クミルロン、シノスルフロン、シメトリン、ジメタメトリン、シハロホップブチル、エトベンザニド、カフェンストロール、エトキシスルフロン、アジムスルフロン、シクロスルファムロン、エポプロダン(インダノファン)、ピリミノバック−メチル、オキサジクロメホン、4−(2−クロロフェニル)−N−シクロヘキシル−4,5−ジヒドロ−N−エチル−5−オキソ−1H−テトラゾール−1−カルボキシアミド(NBA061)、[3−(2−クロロ−4−メチルスルフォニルベンゾイル)−4−フェニルチオ]ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2オン(SB500)、メチル N−[4−(ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−メチルフェニル]カルバマート、メチル N−[4−(ベンゾオキサゾール−2−イルメトキシ)−2−メチルフェニル]カルバマート等の水田除草剤を挙げることができる。
【0020】
植物調節剤では、例えば、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、トリアペンテノール等を挙げることができる。
【0021】
水面浮遊剤は、粉末製剤又は粒剤を水面に浮かせるために用いるものであり、例えば、発泡シラス、発泡パーライト、発泡軽石、焼成バーミキュライトのような鉱物質;粉末状或は粒状に調製したコルク、木粉、セルロースのような植物質;発泡スチロールのような発泡合成樹脂;塩ビ粉末のような合成樹脂粉末、プラスチックの中空体(例えばマツモトマイクロスフェアーF30E);及び、合成樹脂の粒状物等を用いることができ、好適には、コルク、木粉、焼成バーミキュライト、発泡シラス、発泡軽石、発泡パーライト、発泡合成樹脂、合成樹脂粉末及びプラスチック中空体であり、更に好適には、コルク、焼成バーミキュライト、発泡パーライト、発泡シラス及びプラスチック中空体である。
【0022】
これらの粉末製剤又は粒剤中の配合量は、浮遊剤の種類や剤型、粉末製剤又は粒剤の粒度等により異なるが、粉末製剤又は粒剤を水面に浮かせるに十分な量であればよく、一般的には、0.01〜90%、好ましくは、0.1〜70%、更に好ましくは、0.5〜60%である。
【0023】
水面拡展剤は、粉末製剤又は粒剤を水面で広範囲に拡散させるために配合するものであり、水面拡展剤としては、アクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸の(共)重合物やそれらにスチレンスルホン酸、ビニル基等を共重合させたもののナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩のようなポリカルボン酸型のポリソープ、オレイン酸ナトリウムやステアリン酸カリウムのような石鹸類、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のようなアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンのアルキルエステル等のノニオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、プルロニックタイプの界面活性剤等の種々のノニオン界面活性剤、更にこれらノニオン界面活性剤をリン酸又は硫酸のエステルとし、場合によっては、それらを適当なアルカリで中和した界面活性剤、分子構造中にフッ素原子を含有する界面活性剤、流動パラフィンやナフテン系高沸点溶媒、低粘度のポリブテン、シリコンオイル、マシン油等の鉱物油類、種々の植物油、松脂等種々の樹脂類、樟脳白油、αピネン、樟脳、ナフタレン等が使用でき、好適には、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が挙げられ、更に好適には、アセチレン系界面活性剤である。なお、これらの水面拡展剤の中には、崩壊・分散剤、結合剤、造粒性向上剤又は乳化剤として用いられるものもある。
【0024】
アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンアルコール、アセチレンジオール及びこれらにアルキレンオキサイドを付加した界面活性剤を包含する。
【0025】
アセチレンアルコールは、下式
HOC(R1)(R2)−C≡CH
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数が1及至8個のアルキル基を示す。)で表される一連の化合物で、R1がメチル基かつR2がイソブチル基のものがサーフィノール61、R1及びR2がメチル基のものがオルフィンB、R1がメチル基かつR2がエチル基のものがオルフィンPの商品名で市販されている。
【0026】
アセチレンジオールは、下式
HOC(R1)(R2)−C≡C−C(R1)(R2)OH
(R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数が1及至8個のアルキル基を示す。)で表される一連の化合物で、R1がメチル基かつR2がエチル基のものがサーフィノール82、R1がメチル基かつR2がイソブチル基のものがサーフィノール104、R1及びR2がメチル基のものがオルフィンYの商品名で市販されている。
【0027】
又、これらアセチレンアルコール及びアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した界面活性剤は、例えば、上記アセチレンアルコール及びアセチレンジオールにエチレンオキサイド又は/及びプロピレンオキサイド等を付加した界面活性剤である。アルキレンオキサイドを付加したものとしては、サーフィノール104にエチレンオキサイドを付加したものが商品名サーフィノール400シリーズとして市販されている。又、サーフィノール104Sは、サーフィノール104(ワックス状)と無晶形二酸化珪素を40:60の重量比率で混合粉砕した、粉末状のプレミックスである。これらは、それぞれエアプロダクツ社が製造し、我が国では日信化学(株)が総代理店となって販売している。
【0028】
シリコーン系界面活性剤は、メチルポリシロキサンの末端及び/又は側鎖のメチル基の一部に、ポリエチレンオキサイド及び/又はポリプロピレンオキサイドを導入し、場合によっては、末端のOH基をエーテルまたはエステル化した、ポリエーテル変性シリコーンオイルを主成分とするノニオン界面活性剤で、シルガードシリーズ(ダウコーニングシリコン(株)製)、シルウェットシリーズ(ユニカー(株)製)、シリコーンオイルKFシリーズ(信越化学(株)製)、カイネチック(ヘレナケミカル(株)製)等の商品名で市販されている。
【0029】
フッ素系界面活性剤は、通常のアニオン、カチオン、ノニオン及び両性イオン系界面活性剤の水素原子をフッ素原子で置換した界面活性剤で、表面張力低下力に優れることで知られており、我が国では、ユニダインシリーズ(ダイキン工業(株)製)、メガファックシリーズ(大日本インキ化学工業(株)製)、フタージェントシリーズ((株)ネオス製)、サーフロンシリーズ(旭硝子(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ(株)製)等の商品名で販売されている。
【0030】
これらの水面拡展剤の配合量は、有効成分の種類と含有量、水面拡展剤の種類とその添加方法、その他成分の種類と配合量等製剤処方や剤型によって異なるが、通常0.1〜10%、好ましくは0.3〜5%、更に好ましくは0.5〜3%である。
【0031】
崩壊・分散剤は、粒を水中で崩壊させ、有効成分を水中に懸濁分散させるために用いるものであり、多くの場合、アニオン界面活性剤が好適であり、更に好適には、リグニンスルホン酸塩、(アルキル)ナフタレンスルホン酸塩及びその縮合物、フェノールスルホン酸塩及びその縮合物、スチレンスルホン酸塩の縮合物、マレイン酸とスチレンスルホン酸との縮合物の塩、アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸縮合物の塩、ポリアクリル酸塩、アクリル酸とマレイン酸共重合体の塩、無水マレイン酸とメチルビニルエーテル共重合体の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ラウリルサルフェートの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル、及びこれら硫酸エステルやリン酸エステルを適当なカチオンで中和した塩等のアニオン界面活性剤やトリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩を挙げることができる。これらの崩壊・分散剤は、湿潤剤としても有用な場合が多い。崩壊・分散剤及び湿潤剤はこれらに限らず、ノニオン性、カチオン性又は両性イオン性の界面活性剤であっても適当なものを使用できる。又、澱粉、カルボキシメチルセルロースやカルボキシメチル化澱粉及びこれらの塩、ポリビニルピロリドンの架橋体、微結晶セルロース、高吸水性樹脂等の水を吸収して膨張する性質を有するものも崩壊・分散剤として有用である。
【0032】
使用される崩壊・分散剤及び湿潤剤の配合量は、一般的には0.01〜30%、好ましくは0.03〜20%、更に好ましくは0.05〜10%である。
【0033】
結合剤は、粉末原料を造粒して粒剤を調製する場合に粒に硬度を付与したり、粒核の表面に有効成分を被覆するために用いる。
【0034】
前者の目的で用いる結合剤としては、例えば、比較的低分子量のデキストリン、α化澱粉のような水溶性澱粉誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロースの塩、比較的低分子量で鹸化率の低いポリビニルアルコール、リグニンスルホン酸の塩、アラビアゴム等の水溶性高分子物質;及び、ベントナイト等のモンモリロナイト系の鉱物質微粉等を挙げることができ、用いる結合剤の配合量は、処方構成や造粒方法、粒の大きさ等によって異なるが、通常0.1〜30%、好適には0.5〜20%である。
【0035】
後者の目的で用いる結合剤は、被覆後蒸発させてもよく、又、揮散しにくい液状の(又は液状化した)結合剤を用いて被覆し、製品中にこれら結合剤を残してもよい。製品中に結合剤を残す方法は、乾燥工程を省略できるので、有利な方法である。
【0036】
結合剤を被覆後蒸発させる場合には、上記のような固体の結合剤を水或は適当な揮発性の溶剤に溶かして用いる。
【0037】
製品中に結合剤を残す場合には、有効成分に粒子成長、分解等の悪影響を与えず、水面浮遊性の粒核の表面に有効成分を均一に被覆できる性質を有するものが好ましく、一般には、高沸点、低毒性で引火性が低く、低粘度で、比重が1より小さく、有効成分に対して溶解力の低い溶媒がよく、このような液状結合剤の例としては、例えば、低粘度の流動パラフィン、塩素化パラフィン、イソパラフィン、マシン油、ポリブテン、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の各種高沸点溶媒等の鉱物油;ヤシ油、大豆油、菜種油等の植物油;鯨油、鰯油等の動物油;シリコンオイル及びその誘導体;オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、アジピン酸等のモノ−又はジ−カルボン酸の種々のエステル;トリブチルホスフェートやトリクロルエチルホスフェート等のりん酸の種々のエステル等の可塑剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類及びそれらの種々のエステル及び(又は)エーテル類;ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;N−アルキルピロリドン;及び、種々の液状界面活性剤等を挙げることができ、中でも流動パラフィン、マシン油、ポリブテン、カルボン酸エステル等は比較的安価で有効成分に悪影響を与えない物が多く、それら自身も安定で、かつ揮散性の低いものが多いので好適である。もちろんこれら油状の結合剤は、2種以上を混ぜ合わせて使用することもできる。
【0038】
この目的で用いる油状結合剤の配合量は、水面浮遊性粒剤の種類や組成、油状結合剤の種類、有効成分の種類や物理性及びその他補助剤の種類や配合量等処方によって異なるが、通常は3〜50%、好ましくは10〜40%である。
【0039】
増量剤としては、一般に農薬のキャリアーとして用いられるベントナイト、クレー、炭酸カルシウム、珪藻土、無晶形二酸化珪素、タルク等の他に、でんぷん、木粉、オガクズ、コーヒー豆粉末、タブ粉、セルロース粉末、微結晶セルロース、籾殻粉末、米糠、ふすま、ヤシ殻粉末等の植物質粉末等を用いることができる。
【0040】
これら増量剤の配合量は、通常、農薬粉末製剤又は粒剤中に0.1〜80%である。
【0041】
造粒性向上剤は、農薬粒剤の造粒性向上剤として一般的に用いられる各種の界面活性剤や、組成物に可塑性を付与するような粘性を有するものが有用であり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアリールアリールエーテルのようなノニオン界面活性剤;及び、ジアルキルスルホサクシネートのナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩等のアニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
農薬粒剤中に配合する造粒性向上剤の配合量は、用いるものによっても異なるが、界面活性剤の場合、通常0.02〜3%である。
【0043】
溶剤は、液状原体を稀釈したり、低融点原体を液状にする場合に、必要に応じて配合するので、原体に対して溶解力があり、原体の安定性に影響を与えず、高沸点低毒性で、引火性の低い物を選択して用い、例えば、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系の高沸点溶媒;可塑剤として用いられるオレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ヤシ油等種々の動植物油より得られる脂肪酸、フタル酸、アジピン酸、リン酸等のエステル類;ヤシ油、ナタネ油等の植物油;及び、鯨油、鰯油等の動物油等を用いることができる。一般に、農薬の原体は比重が1以上のものが多い。このような場合、乳化粒子をできるだけ長時間水中に留め、水田に広く拡散させるためには、比重が1より小さく低粘度の溶剤を用いることが多い。この意味で、流動パラフィンや低分子量のポリブテンは特に好ましい。
【0044】
溶剤の配合量は、有効成分の種類や物理性により異なり、粉末製剤又は粒剤の経時安定性や物理性に影響を与えない限りできるだけ少ない方がよい。その配合量は、通常、溶かそうとする有効成分1部に対して、0.1〜30部、好ましくは0.2〜10部である。
【0045】
乳化剤は、液状原体又は原体の溶液を水中に乳化させるために用いる。原体や溶剤に応じて乳剤の乳化剤を選択するのと同様にして選択して用いる。一般の乳剤の場合と異なり、使用時に人為的に攪拌することはないので、できるだけ自己乳化性がよく、微細な乳化をする界面活性剤を選択する。
【0046】
乳化剤の配合量は、通常乳化させるべき液体1部に対し、0.01〜10部、好ましくは0.03〜3部である。
【0047】
本発明の水面で浮遊し拡展する性質を有する農薬粉末製剤又は粒剤は、以下の方法により調製することができる。
【0048】
固体の有効成分の場合は、粒度が粗いと、水田の投入地点に有効成分が濃厚に沈降する原因となる。有効成分は水田に投入後、早いうちに田面水中に溶解拡散し、効力を発揮する必要がある。長期間にわたり有効成分が局在すると、効力不足や薬害などの不都合を生じることはいうまでもない。従って、たとえ水に対する溶解度が高いものであっても、固体の場合、ある程度微粉砕しておく必要がある。水に対する溶解度が低いものでは特に微粉砕が必要となる。このため、ハンマーミル、ジェットミル等による乾式粉砕や、サンドミル又はアトライターによる湿式粉砕を行う。
【0049】
湿式粉砕した有効成分は、噴霧乾燥等の方法により乾燥した後粉砕するか、無晶形二酸化珪素、珪藻土、珪酸カルシウム、高吸油性樹脂等適当な吸油性の高いキャリヤーに吸収させ、必要があれば乾燥粉砕して、乾式粉砕した有効成分と同様に取り扱う。或は、本発明の農薬粒剤を湿式造粒する際に、練合水とともに湿式粉砕したスラリーを注加して練りこみ造粒することもできる。
【0050】
液状原体や低融点化合物の場合は、必要なら適当な溶剤や乳化剤に溶解し、水浮遊性キャリアーや水浮遊性粒核それ自身に吸収させて、製品としてもよいし、上記のような吸油性の高いキャリヤーや高吸油性デキストリン、高吸油性樹脂等に吸収させるか、又は該液状原体と相溶性のある樹脂や化学物質又は他の固体有効成分と固溶体を形成し、これを粉砕すれば、固体の有効成分と同様に取り扱うことができる。
【0051】
これらの農薬有効成分は、その他の助剤とともに、混合、粉砕、練合、造粒、乾燥、整粒、被覆、吸収等の工程を経て、粉末製剤又は粒剤とする。
【0052】
粉末製剤にする場合は、有効成分及びその他の助剤を混合するか、必要により適当な粉砕機を用いて粉砕して製品とする。
【0053】
又、粒剤に製剤する場合には、原料粉末を適当な造粒機を用いて造粒するか、予め調製した浮遊性の粒核に適当な結合剤を用いて有効成分を被覆するか、又は、有効成分を適当な溶剤に溶解させ、これを予め調製した浮遊性の粒状キャリヤーに吸収させるかして目的とする浮遊性の粒剤とする。
【0054】
造粒法による場合は、予め農薬有効成分を含有する濃厚プレミックスを調製し、これをその他の成分と混合し、造粒・乾燥・整粒すればよい。
【0055】
造粒は、横押し又はバスケットタイプの押し出し造粒機、混合造粒機、転動造粒機、流動層造粒機、噴霧乾燥機等の造粒機を用いる。発泡シラスや発泡パーライトは、強く加圧すると、バルーンが潰れ浮力が低下する。又、コルクも強く加圧すると、浮力が低下するので、強い圧力やせん断力がかからない造粒機を用いるのが好ましい。
【0056】
得られた浮遊性粒剤の粒度は、細かすぎると穴を開けた水溶性フィルムから粒がこぼれてしまう恐れが生じ、又、大きすぎると粒の乾燥が難しくなり、更に粒剤は水面で風の影響を受け易くなるため、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.3〜3mm、更により好ましくは0.5〜2mmである。粒の形状は、円柱状でも、球状でも、不定形でもかまわない。又、浮遊性粒剤の見かけ比重は、0.15〜0.35であることが好ましい。
【0057】
被覆法を用いる場合は、予め調製した浮遊性粒核を、攪拌混合機に仕込み、必要があれば、液状の結合剤を加えて粒剤の表面を湿らせた後、上記の有効成分の濃厚プレミックスを加えて更に攪拌し、粒の表面に被覆することができる。プレミックス中には、必要に応じて、水面浮遊剤、水面拡展剤、崩壊・分散剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、溶剤、その他の増量剤等を配合することができる。
【0058】
吸収法を用いる場合は、予め調製した浮遊性粒核を上記の攪拌混合機に仕込み、攪拌下、液状又は液状化した有効成分又はその濃厚プレミックスを加えて吸収させる方法が一般的である。プレッミクス中には、必要に応じて、水面拡展剤、安定剤、乳化剤、溶剤等を配合することができる。
【0059】
被覆法や吸収法で水面浮遊性の粒剤を調製する場合、水面拡展剤は最外層に存在する方がその効果をより有効に発揮する。従って、水面拡展剤は、有効成分やその他の助剤を被覆又は吸収させた後、最後に添加するのが望ましい。このように、被覆或は吸収の工程は、2段階以上に分けて行なってもかまわない。又、有効成分の一部を練り込み造粒して浮遊性の粒核を得、これに残部の有効成分を被覆したり、或は被覆法と吸収法を同一の製剤に適用したりすることも可能である。
【0060】
被覆法や吸収法において、上記造粒法の粒剤を調製するのと同様の方法で、場合によっては、原料の一部を除いた粒を調製し、これを粒核として用いてもよく、又、予め適当な粒度に調整したコルク、発泡シラス、焼成バーミキュライト、発泡パーライト、発泡軽石、発泡合成樹脂等の水に浮く物質をそのまま粒核として用いてもよい。
【0061】
使用する攪拌混合機は、ナウタミキサー、リボンブレンダー、ロータリーブレンダー、V型混合機等の低速で混合する粒の破砕の少ない機種を選択するのが望ましい。
【0062】
かくして得られた本発明の農薬粉末製剤又は粒剤は、高濃度の有効成分を含有するので、水面に拡展した後は、速やかに有効成分が水中に分散・溶解し、拡散しなければならない。未だ高濃度有効成分を含有する粒剤が沈降するようだと、沈降した地点に有効成分の偏析が生じる。又、粒剤より有効成分が遊離せず長時間水面に漂っていると風による吹き寄せが起こる。
【0063】
本発明の農薬粉末製剤又は粒剤は、穴をあけた適当な水溶性フィルムに分包とする。水溶性フィルムとは、水の中で溶解又は分散するような性質を有するフィルムを意味する。水溶性フィルムの材質として、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、プルランフィルム、ポリエチレンオキサイド及びその誘導体等を挙げることができ、好適には、ポリビニルアルコール及びカルボン酸と一部共重合させたポリビニルアルコールである。
【0064】
水溶性フィルムにあける穴の大きさは、好適には直径が0.09mm以下であり、更に好適には0.05〜0.9mmであり、より更に好適には0.1〜0.9mmであり、特に好適には、0.3〜0.9mmである。小さすぎる穴を少数あけたのでは、粉末製剤又は粒剤が経時的に固化する恐れがあり、穴をあけた効果が十分に期待できなくなる。穴が大きすぎると、穴から農薬が漏れたり輸送中にその部分から破袋したりする。この程度の穴を粉末製剤又は粒剤の粒度に合せてあければ、農薬粉末製剤又は粒剤が漏れることなく、強度的にも支障とならない。
【0065】
穴の形状は、丸でも、三角でも、四角でも、あるいは多角形でもよい。穴の数は、袋の大きさにもよるが、手のひらにのる大きさ(約10×10cm)の袋の場合、好適には1個乃至10個である。又、穴は袋の片面だけでもよいが、両面に穴があいていても支障はない。
【0066】
穴のあけかたは、まず水溶性フィルムに農薬粉末製剤又は粒剤を分包した後で穴をあけてもよいし、予め穴をあけたフィルムをまず調製し、これに農薬粉末製剤又は粒剤を分包してもどちらでもよい。
【0067】
本発明の水面で浮遊拡展性を有するように調整した農薬粉末製剤又は粒剤は、拡展性を有しない水溶性フィルムに分包とした場合、水溶性フィルムが農薬粉末製剤又は粒剤の拡展を阻害してしまうことがあり、この場合、十分に粉末製剤又は粒剤が拡散しない間に、水面拡展剤が水に溶け出してしまい、拡展力を失うため、分包とせずに水面に処理した状態から期待できる水面拡展性は見られなくなる。このため有効成分は投下点近傍の狭い範囲に局在してしまい、好ましい結果を得ることはできない。従って、本発明においては、拡展性水溶紙を用いることが望ましい。
【0068】
拡展性水溶紙とは、それ自体、水中で容易に分散または溶解し、当該農薬粒剤を水面に拡展させる性質を有するフィルム又はシートである。このような拡展性水溶紙としては、例えば、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体よりなるフィルム(以下、PVAフィルムと略す)を挙げることができる。
【0069】
PVAフィルムは重合度1000〜2000、ケン化度85〜95%のポリビニルアルコールを少量の可塑剤、安定化剤と共にフィルム化したもので、重合体の中に少量のカルボン酸等の共重合物を含有するフィルムをも包含する。フィルムは機械強度、耐寒強度が大きく水溶性であることが必要であり、その意味で原料となるポリビニルアルコールの重合度が高すぎたり、ケン化度が高すぎたりすると冷水に溶けにくくなるので好ましくない。フィルムの厚さは、好適には25〜70μmであり、フィルム強度及び溶解時間を考慮すれば、より好適には、30〜50μmである。
【0070】
水溶性フィルムの端部は糊で封じてもよいが、作業性に問題があるうえ、糊付けした部分が溶解しにくくなることが多い。この点でヒートシールできるものが好都合である。
【0071】
分包にする場合の1パックの重量は、通常10〜200g、好ましくは20〜100g、更に好ましくは、25〜60gが投込み易い。この程度の重さであれば、子供、女性、高齢者でも容易に15m以内の目標とした地点に投げ込むことが可能である。これ以上重いと、投げ込むのが苦痛となり、広い面積を処理するのは容易ではなく、又、これ以下では風の影響を受けて目標とした地点に到達し得ない。
【0072】
本発明の農薬粉末製剤又は粒剤は、水面で広範囲に拡展し、有効成分の拡散も広範囲に達するから、通常の水田では無理に遠くまで投げ入れる必要はなく、畦畔から2〜3m先の水面に落とす程度で十分である。
【0073】
水田に投げ込む分包の個数は、多すぎると投げ込むのが面倒になり省力にならないし、経済的にも不利であり、又、少なすぎると農薬粉末製剤又は粒剤の拡展が不十分となることがあり、通常10a当たり1個乃至30個、好ましくは2個乃至20個である。
【0074】
分包は、紙、樹脂、又はこれらにアルミ箔を貼りあわせたりアルミやシリカを蒸着したもの、金属、木等よりなる袋や箱に外装する。
【0075】
本発明の農薬粉末製剤又は粒剤は、物理性の点では、吸湿に対して経時的に安定である。従って、発泡剤を含有する製剤ほど吸湿に対して注意を払う必要はないが、水溶性フィルムは水がかかると破れてしまうので、適当な防水加工を施した外装を用いることが望ましい。
【0076】
以下に、実施例、比較例及び試験例を掲げて本発明の実施の態様をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【実施例】
【0078】
【実施例1〜7】
カフェンストロール原体14部、ダイムロン原体30部、ベンスルフロンメチル原体1.2部、バニレックスN(日本製紙(株)製)6部及びニューコール291PG(日本乳化剤(株)製)0.8部を水48部に懸濁させ、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて粉砕し、3種類の有効成分を含有するスラリーを得た。粒状コルク(0.2〜0.5mm区分)14部、ベントナイト(豊順鉱業(株)製、穂高印)25部、セロゲン7A(第一工業製薬(株)製)10部、木粉(ネオライト興産(株)製)20部及びサーフィノール104S(日信化学(株)製)5部をニーダー中で混合し、先に得られたスラリー50部を水で希釈して加えて練合し、バスケット型造粒機L−5型((株)菊水制作所製)を用いて1.5mmのスクリ−ンを通して押出し造粒した。得られた湿粒を流動層乾燥機を用いて100℃で乾燥し、4.76〜1.20mmの篩いでふるい分け、カフェンストロール7%、ダイムロン15%及びベンスルフロンメチル0.6%を含有する水面浮遊性崩壊型粒剤を得た。得られた粒剤を、下記表1の穴をあけたPVAフィルムに各30gずつ小分けした。
【0079】
【表1】
Figure 0003701493
【0080】
【実施例8〜12】
ピロキロン原体24部、タルク(局方)3部及びカープレックス#80(塩野義製薬(株)製)1部を混合し、サンプルミル(不二パウダル(株)製、ハンマーミル)にて粉砕し、ピロキロンプレミックスを得た。ヒルコンS−1号(ヒルイシ化学工業(株)製、焼成バーミキュライト 3〜0.5mm区分)35部をリボンブレンダーに入れ、スーパーオイルC(日本石油(株)製、粗製流動パラフィン)35部を加えて混合し、先のピロキロン粉砕品28部及びサーフィノール104S2部を加えてバーミキュライトの表面に被覆し、ピロキロン24%を含有する水面浮遊性非崩壊型粒剤を得た。得られた粒剤を、下記表2の穴をあけたPVAフィルムに各50gずつ小分けした。
【0081】
【表2】
Figure 0003701493
【0082】
【実施例13】
発泡シラス(0.3〜1.0mm)42部をナウタミキサー(ホソカワミクロン(株)製)に入れ、混合しながらスーパーオイルC28部を加えて、粒の表面を湿らせた。ついで、実施例8のピロキロンプレミックス28部を加えて混合し、粒の表面を被覆した。更に、ポリ(2モル)オキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテルのリン酸エステルナトリウム塩2部を加えて混合し、ピロキロン24%を含有する水面浮遊拡展性の粒剤を得た。得られた粒剤を、下記表3の穴をあけたPVAフィルムに各50gずつ小分けした。
【0083】
【表3】
Figure 0003701493
【0084】
【実施例14】
発泡シラス(0.03〜0.15mm)47.5部及び塩ビ粉末25部をレーデイゲミキサー(松阪貿易(株)製)に入れ、混合しながら、プレチラクロール原体25部及びシルガード309(ダウコーニングシリコン(株)製、ポリエーテル変性シリコーンオイル)2.5部を加えて混合し、プレチラクロール25%を含有する粉末製剤を得た。得られた製剤を、下記表4の穴をあけたPVAフィルムに30gずつ小分けした。
【0085】
【表4】
Figure 0003701493
【0086】
【比較例1〜8】
実施例で得られた製剤を、下記表5に示したように、それぞれ対応するフィルムに同量ずつ小分けした。フィルムには穴をあけなかった。
【0087】
【表5】
Figure 0003701493
【0088】
【試験例1】
実施例及び比較例の各PVA分包を、アルミ箔貼り合せ紙袋にそれぞれ10パックずつ入れてヒートシールし、各袋に20kgの荷重をかけて室温で静置した。2週間後にそれぞれの袋を開封し、各パックの厚みを測定した。結果を下記表6に下記試験例2の結果とあわせて示した。
【0089】
【試験例2】
試験例1で測定した各パックを、水深3cmの水田に投げ込み、投げ込んだあとの様子を観察した。結果を下記表6に試験例1の結果とあわせて示した。
【0090】
【表6】
Figure 0003701493
Figure 0003701493
表6に示したごとく、農薬粉末製剤又は粒剤を穴をあけた水溶性フィルムに分包とした場合、製品形態として加圧保存した後でも、各パックは殆ど固化することがなく、わずかに硬化したものも、袋から出すと直ちに内部の製剤が流動性を取り戻した。又、水深3cmの水田に投入すると、保存前の状態と同様に拡散した。一方、穴をあけない水溶性フィルムに分包した場合、製品形態として加圧保存すると、各パックは殆ど固化し、外袋から出しても、内部の製剤が流動性を取り戻すには、パックを手でよくもみほぐす必要があった。又、水深3cmの水田に投入すると、10パック中2〜5パックの底部が土壌表面と接触して、十分な拡散を示さなくなった。このような状態では、見栄えの問題ばかりではなく、薬害や効果の均一性の点でも不安がある。このように、フイルムに穴をあけた効果は歴然である。
【0091】
【発明の効果】
本発明の農薬パック剤を水田に投込むと、有効成分の水田中での均一性がよいので、生物効果の変動や薬害の懸念を従来の投込み製剤に比べて格段に軽減でき、水田農業に寄与するところが極めて大きい。

Claims (17)

  1. 水面で浮遊し、拡展する性質を有し、発泡剤を含有しない、粒径0.1〜5 mm の粒剤である農薬粉末製剤又は粒剤を、該農薬粉末製剤又は粒剤が漏れない程度の穴を1個又は2個以上あけた水溶性フィルムであって当該穴の直径が0.9mm以下であるものに分包とし、経時的に固化することを防止した水田投げ込み用農薬パック剤。
  2. 穴の直径が、0.05〜0.9mmである、請求項1に記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  3. 穴の直径が、0.1〜0.9mmである、請求項1に記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  4. 穴の直径が、0.3〜0.9mmである、請求項1に記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  5. 農薬粉末製剤又は粒剤が、更に水面拡展剤を含有する、請求項1及至4のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  6. 水面拡展剤が、アセチレン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤である、請求項5に記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  7. 農薬粉末製剤又は粒剤が、更に水面浮遊剤を含有する、請求項1及至6のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  8. 水面浮遊剤が、コルク、焼成バーミキュライト、発泡シラス、発泡軽石、発泡パーライト、発泡合成樹脂、合成樹脂粉末及びプラスチック中空体からなる群から選ばれる1種又は2種以上の物質である、請求項7に記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  9. 農薬粉末製剤又は粒剤が、粒径0.3〜3mmの粒剤である請求項1乃至8のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  10. 農薬粉末製剤又は粒剤が、粒径0.5〜2mmの粒剤である請求項1乃至8のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  11. 農薬粉末製剤又は粒剤が、水面で崩壊・分散する粒剤である、請求項1乃至10のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  12. 農薬粉末製剤又は粒剤が、水面で非崩壊の粒剤である、請求項1乃至10のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  13. 水溶性フイルムの材質が、ポリビニルアルコール又はカルボン酸と一部共重合させたポリビニルアルコールである、請求項1乃至12のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  14. 分包の重量が、1パック当たり10〜200gである、請求項1及至13のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  15. 分包の重量が、1パック当たり20〜100gである、請求項1及至13のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  16. 分包の重量が、1パック当たり25〜60gである、請求項1乃至13のいずれかに記載の水田投げ込み用農薬パック剤。
  17. 請求項1乃至16記載の水田投げ込み用農薬パック剤の分包を、10a当たり1〜30個の割合で、水田に投げ込み処理し、水田に発生する有害生物を駆除する方法。
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