JP3698078B2 - 非対称中空糸ガス分離膜の製造方法 - Google Patents

非対称中空糸ガス分離膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー混合溶液を用い乾湿式紡糸法によって非対称中空糸分離膜を製造する方法に関し、特に、水蒸気透過速度が極めて高く且つ実用に供するのに十分な機械的強度を有する非対称中空糸分離膜を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス分離膜は種々のガス分離に利用されている。これらの多くは、ガス選択性が高いガラス状ポリマーで形成されたガス分離膜である。概して、ガラス状ポリマーはガス選択性(分離度)は高いけれども、ガス透過性(透過係数)が小さいという短所がある。このため、ガラス状ポリマーからなるガス分離膜は、多孔質層(支持層)とスキン層(分離層)からなり且つガスの透過抵抗が生じるスキン層を極めて薄くした非対称構造にして、ガス透過速度が小さくなり過ぎないようにして用いられている。
【0003】
また、ガス分離膜は、通常、中空糸の多数本(例えば、百本から数十万本)を集束して中空糸束とし、その中空糸束の少なくとも一方の端部をエポキシ樹脂のような硬化性樹脂やホットメルト型熱可塑性樹脂などで中空糸端部が開口状態となるように固着して中空糸分離膜エレメントを構成し、更に、単数又は複数の前記中空糸分離膜エレメントを少なくとも混合ガス導入口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口を備える容器内に、中空糸膜の内側へ通じる空間と中空糸膜の外側へ通じる空間とが隔絶するように装着されて構成された中空糸分離膜モジュールとして用いられている。
中空糸分離膜モジュールにおいては、混合ガスは混合ガス導入口から中空糸膜の内側又は外側に接する空間へ供給され、中空糸膜に接して流れる間に混合ガス中の特定成分(膜を透過し易い成分)が選択的に膜を透過して透過ガス排出口から回収され、特定成分(膜を透過し易い成分)が選択的に除かれたガスは非透過ガス排出口から回収されることによって、ガス分離がおこなわれる。
【0004】
ポリマー混合物からなるガス分離膜に関しては既に報告がある。米国特許第5055116号公報は、特定構造を持つ2種以上のポリイミド混合物からなるガス分離膜を開示し、ポリイミドのブレンド比に対し酸素や窒素ガスの透過係数は直線的な加成性があることを示している。
また、米国特許第5248319号公報は、フェニルインダン残基を含有するポリイミドと特定のポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドとの混合物からなるガス分離膜を開示している。
また、米国特許第5608014号公報は、特定のポリエーテルスルホンと特定の芳香族ポリイミドと特定の芳香族ポリイミド又はポリアミド又はポリアミドイミドとの混合物からなるガス分離膜を開示している。
また、米国特許第5917137号公報は、特定のポリエーテルスルホンと特定の芳香族ポリイミドとの混合物からなるガス分離膜を開示している。
しかしながら、これらの公報では、水蒸気透過速度及び得られる中空糸の機械的強度について言及していない。即ち、極めて高い水蒸気透過速度を持ちしかも非対称中空糸膜として工業的にモジュール化して実際に用いることができるレベルの機械的強度を併せ持った中空糸分離膜を製造する方法については言及されていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
非対称ガス分離膜では、ガスが膜を透過する透過速度の律速過程は、ガスが膜のスキン層を透過する過程である。ガスが膜の多孔質層を透過する過程は透過抵抗が比較的小さいので、膜全体の透過速度への影響は小さい。このため、ガスが非対称膜を透過するときの透過速度に対する、ガスが多孔質層を透過する過程の影響は、多くの場合事実上無視できた。
【0006】
ところが、水蒸気のように膜を極めて速く透過するガスを分離する場合には、非対称膜を透過する水蒸気透過速度に対して、水蒸気が分離層を透過する過程に加えて水蒸気が多孔質層を透過する過程も無視できない影響を与える。すなわち、水蒸気透過速度が大きな非対称膜を得ようとすれば、分離層に加えて多孔質層での水蒸気の透過抵抗を小さくする必要があった。そのために、多孔質層の多孔性を高めて多孔質層の水蒸気の透過抵抗を下げることが考えられる。しかしながら、多孔質層の多孔性を高めると、多孔質層の機械的強度が低下してしまい、支持機能の役割を果たさなくなるという問題があった。具体的には、透過速度を高めた中空糸分離膜は機械的強度が小さくなるために、それをエレメント化し更にモジュール化して実用に供することができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、水蒸気透過速度が極めて高く、且つ、中空糸分離膜として実用に供するのに十分な機械的強度を併せ持つ非対称中空糸分離膜を製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリマー混合溶液を用いて非対称中空糸分離膜を製造する方法に関するものであり、
第一ポリマー成分は、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上で、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上であるポリマーであり、
第二ポリマー成分は、乾湿式紡糸法によって得られる非対称中空糸の引張り破断伸度が20%以上であるポリイミドであり、
前記第一ポリマー成分と前記第二ポリマー成分とを主たるポリマー成分とするポリマー混合溶液を用いて、乾湿式紡糸法によって、非対称中空糸分離膜を製造する方法に関する。
また、第一ポリマー成分が50〜95重量%であり、第二ポリマー成分が50〜5重量%であるポリマー混合物からなるポリマー混合溶液を用いること、ポリマー混合溶液のポリマー濃度が8〜25重量%であること、第一ポリマー成分が、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上で、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上であるポリイミドであること、第二ポリマー成分であるポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類からなるテトラカルビン酸成分をテトラカルボン酸成分中に30〜100モル%含んだポリイミドであることに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、分離特性が優れる第一ポリマー成分と機械的強度の優れた第二ポリマー成分とのポリマー混合溶液を用い、乾湿式紡糸法によって、非対称中空糸分離膜を製造する方法である。
乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶媒を蒸発させて薄い緻密層(分離層)を形成し、更に、凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層(支持層)を形成させる方法(相転換法)であり、ロエブらが提案(例えば、米国特許3133132号)したものである。例えば、高分子新素材 One Point 6 「高機能分離膜」 高分子学会編集 共立出版 1988年発行 P4〜P15に説明がある。
この方法を紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に適用して非対称中空糸膜を製造する方法が乾湿式紡糸法である。例えば、「膜(MEMBRANE)」,Vol.21 No.5(1996)P276〜P282、Marcel Mulder著「膜技術」第2版 吉川正和ら監修・訳(株式会社アイピーシ1997年発行)P61〜P137などに説明されている。
【0010】
本発明の乾湿式紡糸法によって非対称中空糸分離膜を製造する方法は、より詳しくは、第一ポリマー成分と第二ポリマー成分とを含むポリマー混合溶液を調整し、これをノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー混合液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、更に必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。
【0011】
ポリマー混合液が凝固液に浸漬される凝固過程では、ポリマー混合溶液中の溶媒と凝固液(ポリマーに対し貧溶媒)とが置換してポリマー相と溶液相とに相分離が進行する。ポリマー相は凝固析出し、溶液相を孔として多孔質構造を形成する。本発明のような特性の異なるポリマー混合溶液の場合は、混合ポリマー間で分子鎖レベル又はそれ以上の大きさの不均一化又は相分離も起っていると思われる。推定ではあるが、この結果により多孔質層の多孔性はより高められて多孔質層をガスが透過するときの抵抗を極めて小さくする(それによって、膜の水蒸気透過速度P’H2Oを大きくする)ことが可能になると考えられる。しかも、第一ポリマー成分により優れたガス選択性(分離度)を、第二成分ポリマーにより実用に供するに十分な機械的強度を持たせることができる。
このようにして製造された中空糸分離膜は、第一ポリマー成分によってガス選択性(分離度)が高められ、更に、発達した多孔質構造(ガス透過抵抗が小さい)によって水蒸気透過速度が高められている。しかも、機械的強度は第二ポリマー成分の組成比率から加成性を前提に推定される以上に高められている。
【0012】
中空糸分離膜において、実用に供するのに十分な機械的強度とは、エレメント化やモジュール化の工程で中空糸分離膜が容易に破損や破断することがなく、また、ガス分離工程で使用中(ガス流によって中空糸分離膜に変形応力が加えられる)でも容易に破損や破断しない程度の機械的強度のことである。通常、引張強度が2.5kgf/mm以上且つ引張り破断伸度が10%以上、より好ましくは引張強度が3.0kgf/mm以上且つ引張り破断伸度が20%以上の中空糸分離膜は、実用に供するのに十分な機械的強度を有する。引張強度が2.5kgf/mm未満又は引張り破断伸度が10%未満の中空糸分離膜は、エレメントやモジュールへの組立加工工程で破損や破断を容易に発生し易いし、中空糸分離膜モジュールとして耐圧性が低くなって使用条件が限定されたり使用中に中空糸の内側や外側を流れるガスの流量、流速、圧力、温度、及びそれらの変動によって受ける連続的又は断続的変形応力によって容易に破損や破断が発生して問題を生じ易いので実用に供することが難しい。
【0013】
本発明の第一ポリマー成分は、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上で、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上のポリマーである。第一ポリマー成分は非対称中空糸膜の水蒸気透過速度を高め且つ十分な(空気に対する水蒸気の)分離度を持たせる役割を持つ成分である。ヘリウムガスと水蒸気の透過速度は通常比例関係を示し、ヘリウムガス透過速度が高いポリマーは水蒸気透過速度も高く、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が大きいポリマーは水蒸気と空気との透過係数比が大きい。第一ポリマー成分のヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上特に好ましくは40以上の場合には、得られる非対称中空糸膜の水蒸気透過速度及び空気に対する水蒸気の分離度が十分高い高性能除湿膜又は加湿膜を得ることができるので好適である。逆に、第一ポリマー成分のヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg未満、及び/又は、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35未満の場合には、得られる非対称中空糸膜の水蒸気透過速度及び/又は空気に対する水蒸気の分離度が十分でなく、高性能除湿膜又は高性能加湿膜を得ることが難しい。
【0014】
第一ポリマー成分としては、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上であり、且つ、第二ポリマー成分と均一なポリマー混合溶液を得ることができるものであればよい。例えばポリイミド、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリスルホンなどのガラス状ポリマーが好ましい。第一ポリマー成分としてポリイミドを用いることは、水蒸気透過速度と空気に対する水蒸気の分離度が十分に高く、更に、耐熱性や耐薬品性などが優れた非対称中空糸分離膜を得ることができるので特に好ましい。
【0015】
本発明の第二ポリマー成分は、そのポリマーだけを用いて乾湿式紡糸法によって本発明の製造方法を実施するときとほぼ同一の条件下で、ほぼ同一の寸法形状を持つように製造した非対称中空糸の引張り破断伸度が20%以上、特に好ましくは30%以上であり、且つ、第一ポリマー成分と均一なポリマー混合溶液を得ることができるポリイミドである。
第二ポリマー成分のポリイミドが、テトラカルボン酸成分中に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類からなるテトラカルボン酸成分を30〜100モル%含んだポリイミドである場合には、得られる中空糸分離膜の機械的強度が極めて優れたものになるので、特に好適である。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類とは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、その二無水物又はその低級アルコールエステル化物、及び、それらの芳香族環に置換基を有するものである。
【0016】
本発明のポリマー混合溶液において、第一ポリマー成分は50〜95重量%、特に60〜90重量%が好ましく、第二ポリマー成分は50〜5重量%、特に40〜10重量%が好ましい。ポリマー混合液中の第一ポリマー成分が50重量%未満では水蒸気分離性能が十分に高い中空糸分離膜を得ることが難しいし、95重量%を越えると得られた中空糸分離膜の機械的強度が低くなって実用に供することが困難になる。また、ポリマー混合液中の第二ポリマー成分が50重量%を越えると水蒸気分離性能が十分に高い中空糸分離膜を得ることが難しいし、5重量%未満では中空糸分離膜の機械的強度が低くなって実用に供することが困難になる。
【0017】
本発明のポリマー混合溶液において、第一ポリマー成分及び第二ポリマー成分とも、必ずしも一種類のポリマーである必要はない。第一ポリマー成分及び/又は第二ポリマー成分が複数の種類のポリマー混合物であっても、それらが各ポリマー成分に要求される条件を満たすものである限り構わない。
また、第一ポリマー成分及び第二ポリマー成分以外のポリマー成分が少量加えられても構わないが、その場合の加える量は概ね10重量%以下である。
【0018】
本発明のポリマー混合溶液は、それぞれのポリマーが均一に溶解したものでなければならない。ここで均一に溶解するとは、溶液が外観上明らかな濁りがない状態を言う。分子鎖レベルで均一になることを必要とはしない。外観上明らかに不均一なポリマー混合溶液を用いると、本発明で製造される中空糸分離膜を得ることができない。本発明のポリマー混合溶液に用いられる溶媒は、第一ポリマー成分と第二ポリマー成分とを均一に溶解するものであれば、特に限定はないが、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールのようなフェノール類、2個の水酸基をベンゼン環に有するカテコール類、3−クロルフェノール、4−クロルフェノール(PCP)、4−ブロムフェノール、2−クロル−5−ヒドロキシトルエンなどのハロゲン化フェノール類などのフェノール系溶媒、または、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、あるいはそれらの混合物を好適に用いることができる。
【0019】
本発明のポリマー混合溶液のポリマー濃度は8〜25重量%、特に9〜20重量%であるのが好ましい。ポリマー濃度が8重量%未満では膜に欠陥が生じやすく水蒸気と空気との分離性能が不良となりやすいので好ましくなく、ポリマー濃度が25重量%を越えるとスキン層が厚くなったり多孔質層の多孔性が低くなって水蒸気透過速度(P’H2O)が小さくなるので好ましくない。
また、溶液粘度(回転粘度)は紡糸時のノズルからの吐出温度で、50ポイズ以上特に100ポイズ以上、15000ポイズ以下特に10000ポイズ以下であることが好ましい。溶液粘度が50ポイズ未満では目的形状の中空糸膜を得るのが難しくなるので好ましくなく、15000ポイズを越えると得られた中空糸膜の分離性能が安定しなくなるので好ましくない。
ポリマー混合溶液の調製は、特に限定はなく、溶媒中に第一ポリマー成分と第二ポリマー成分とをそれぞれ溶解してもよいし、第一ポリマー成分溶液と第二ポリマー成分溶液とを別々に重合又は溶解によって調製し、それらの溶液を混合してポリマー混合溶液としても構わない。
【0020】
本発明の方法で用いられる紡糸ノズルは、ポリマー溶液を中空糸状体に押し出すものであればよく、チューブ・イン・オリフィス型ノズルなどが好適である。通常、押し出す際のポリマー溶液の温度範囲は約20℃〜150℃、特に30℃〜120℃が好適である。また、ノズルから押し出される中空糸状体の内部へ気体または液体を供給しながら紡糸がおこなわれる。
本発明の方法の凝固液は、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー溶液の溶媒と相溶性があるものである。特に限定するものではないが、水や、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどの低級アルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキル基を有するケトン化合物など、あるいは、それらの混合物が好適に用いられる。
本発明の方法の凝固工程は、ノズルから中空糸形状に吐出されたポリマー混合溶液がその形状を保持できる程度に凝固させる一次凝固液に浸漬され、次いで、完全に凝固させるための二次凝固液に浸漬されるのが好ましい。凝固した中空糸分離膜は炭化水素などの溶媒を用いて凝固液と溶媒置換させたあとで乾燥させることが好適である。加熱処理は、分離性能を高め安定化させるために必要に応じておこなわれ、用いられたポリマーの軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施することが好ましい。
【0021】
本発明の方法で製造される非対称中空糸分離膜は、スキン層の厚さが10〜200nmであり、多孔質層の厚さは20〜200μmであることが好ましい。スキン層の厚さが10nm未満は製造することが困難であり、200nmを越えると水蒸気透過速度が小さくなって好ましくない。また、多孔質層が20μm未満では機械的強度が小さくなって支持機能が果たせなくなり、200μmを越えると多孔質のガス透過速度が小さくなるので好ましくない。また、中空糸の内径は30〜500μmが好ましい。
【0022】
本発明の方法で製造される非対称中空糸分離膜は、その多孔質層のヘリウムガスの透過速度(P’He)が2.5×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、特に3.0×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上と極めてガス透過抵抗が小さい。
このため、本発明の方法で製造される非対称中空糸分離膜は、水蒸気と窒素ガスの透過速度比(P’H2O/P’N2)が50以上で水蒸気透過速度(P’H2O)を2.0×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、より好ましくは2.5×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上と極めて大きくすることができ、且つ、中空糸分離膜での引張強度が2.5kgf/mm以上で引張り破断伸度が10%以上、より好ましくは引張強度が3.0kgf/mm以上で引張り破断伸度が20%以上と実用に供することができる機械的強度を有する。
更に、本発明の方法を用いることにより、100℃の熱水中で50時間熱水処理した後でも中空糸分離膜の引張り破断伸度が熱水処理前の80%以上を保持するだけの優れた耐熱水性を持つ非対称中空糸分離膜の製造も可能である。
すなわち、本発明の方法によって、高性能の除湿膜又は加湿膜を製造することが可能である。
【0023】
以下、本発明での各種測定方法について説明する。これらの測定に用いた中空糸は、以下の実施例の(非対称中空糸膜を製造する方法(乾湿式紡糸法))によって製造したものである。
(ポリマーのヘリウムガス透過係数(PHe)の測定方法)
ポリマー溶液は、溶液粘度が温度100℃で50〜200ポイズになるように調製し、400メッシュ金網を用いて濾過し、引き続き温度100℃で静置により脱泡した。このポリマー溶液を温度50℃でガラス板上に0.5mmまたは0.2mmのドクターナイフを用いて流延し、オーブン中温度100℃で3時間加熱し溶媒を蒸発させ、更にオーブン中温度300℃で1時間加熱処理をおこないヘリウムガス透過係数の測定サンプルとなるポリマーフィルムを得た。
ヘリウムガス透過係数の測定は高真空タイムラグ法によりおこなった。即ち、ポリマーフィルムを透過セルに装着し温度35℃にした後、真空ポンプにて10−5torrの高真空とし、その後フィルムの1次側にヘリウムガスで2.5kgf/cmGの圧力をかけ、透過したガスによる2次側圧上昇の時間に対する変化を求め、フィルムの厚さ、有効面積、2次側体積、1次側圧力等からポリマーのヘリウムガス透過係数(PHe)を算出した。
(中空糸膜の水蒸気透過性能の測定方法)
10本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が20mmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。このペンシルモジュールの中空糸の外側へ1500ppmの水蒸気を含む窒素ガスを一定量供給し、透過側へは一定量のキャリアガス(Arガス)を流しながら水蒸気分離をおこない、非透過ガス及び透過ガスの水蒸気量を鏡面式の露点計で検出した。測定した水蒸気量と供給ガス量及び有効膜面積から膜の水蒸気透過速度を算出した。測定は温度50℃でおこなった。
【0024】
(中空糸膜の窒素ガス透過性能の測定方法)
15本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が10cmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。それに一定圧力の窒素ガスを供給して透過流量を測定した。測定した透過窒素ガス量と供給圧力及び有効膜面積から窒素ガスの透過速度を算出した。これらの測定は温度50℃でおこなった。
(中空糸膜の多孔質層のヘリウムガス透過性能の測定方法)
プラズマ処理装置に多数本の中空糸膜を均一にひろげて設置し、印加電圧20Vで酸素プラズマ処理をおこなった。酸素プラズマ処理を5分間おこなう毎に中空糸の一部(数本)を取り出して、プラスマ処理時間の異なった中空糸膜を得た。これらの中空糸膜を用いて前記と同様の方法でガス透過測定用ペンシルモジュール(有効長10mm)を作成し、これに窒素ガスあるいはヘリウムガスを一定量一定圧力で供給してそれぞれの透過流量を測定し、測定した透過流量と供給圧力及び有効膜面積から窒素ガスあるいはヘリウムガスの透過速度を算出した。20分間以上プラズマ処理した中空糸膜のこれらの値の比即ちP’He/P’N2は1.2以下になったので、20分間処理した中空糸膜のヘリウムガスの透過速度(P’He)を、本発明で用いる膜の多孔質層のヘリウムガスの透過速度とした。これらの測定は温度50℃でおこなった。
尚、本発明において、中空糸膜の多孔質層のヘリウムガス透過速度(P’He)は、多孔質層のガス透過抵抗の指標となるものであり、P’Heが大きな値のときはガス透過抵抗が小さいこと、P’Heが小さな値のときはガス透過抵抗が大きいことを示す。
(中空糸膜の引張強度と破断伸度の測定)
引張試験機を用いて有効長20mm、引張速度10mm/分で測定した。測定は温度23℃でおこなった。中空糸断面積は断面を光学顕微鏡を用いて寸法を測定して算出した。引張り破断伸度は、元の中空糸の長さL0、引張り破断時の長さLとしたとき、((L−L)/L)×100(単位:%)で示している。
(回転粘度の測定方法)
ポリマー溶液の回転粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75/sec)を用い温度100℃で測定した。
(中空糸膜の耐水性及び耐熱水性の測定)
破断伸度が既知の中空糸膜を試料として、ステンレス容器内にイオン交換水と前記中空糸膜を入れて密封し、前記容器を温度100℃のオーブン中に入れ50時間保持して中空糸膜を熱水処理した。熱水処理後の中空糸膜は容器から取り出し温度100℃のオーブン中で乾燥した。乾燥後の中空糸膜は前記の引張試験方法に従って破断伸度を測定した。耐水性及び耐熱水性は、破断伸度の保持率(単位:%)を指標として表わした。
【0025】
【実施例】
次に、本発明の非対称中空糸分離膜を製造する方法について、実施例により具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(ポリイミドA溶液の調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)29.422gと、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、6FDAと略記することもある)44.202gと、ジメチル−3,7−ジアミノ−ジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(以下、TSNと略記することもある)54.868gを、溶媒の4−クロルフェノール(以下、PCPと略記することもある)889.42gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度180℃で4時間重合し、回転粘度が1500ポイズ、ポリマー濃度が12重量%のポリイミドA溶液を得た。
ポリイミドAのヘリウムガスの透過係数(PHe)は5.80×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は40であった。
(ポリイミドB溶液の調製)
s−BPDA28.245gと、TSN24.691gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADEと略記することもある)2.002gを、溶媒のPCP343.54gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度180℃で4時間重合し、回転粘度が1500ポイズ、ポリマー濃度が13重量%のポリイミドB溶液を得た。
ポリイミドBのヘリウムガスの透過係数(PHe)は1.09×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は158であった。
(ポリイミドC溶液の調製)
s−BPDA19.124gと、6FDA15.315gと、TSN26.611gとDADE0.601gとを、溶媒のPCP413.88gと共にセパラブルフラスコ中に加えて、180℃で攪拌しながら4時間重合し、回転粘度1300ポイズ、ポリマー濃度12.3重量%のポリイミドC溶液を得た。このポリイミドCのモノマー成分の組成はポリイミドAとポリイミドBを7:3で混合した混合物のモノマー成分の組成とほぼ同一のものである。
ポリイミドCのヘリウムガスの透過係数(PHe)は4.33×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は43であった。
【0027】
(ポリイミドD溶液の調製)
s−BPDA29.422gと、6FDA44.424gと、DADE16.179gと、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPEQと略記することもある)35.432gとを、溶媒のPCP726.44gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度180℃で17時間重合し、回転粘度が1750ポイズ、ポリマー濃度が14重量%のポリイミドD溶液を得た。
ポリイミドDのヘリウムガスの透過係数(PHe)は1.92×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は63であった。
(ポリイミドE溶液の調製)
s−BPDA88.266gと、DADE60.973gとを、溶媒のPCP850.41gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度180℃で10時間重合し、回転粘度1730ポイズ、ポリマー濃度14重量%のポリイミドE溶液を得た。
ポリイミドEのヘリウムガスの透過係数(PHe)は1.14×10−10cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は435であった。
(ポリイミドF溶液の調製)
s−BPDA44.133gと、6FDA66.636gと、DADE60.432gとを、溶媒のPCP985.32gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度180℃で12時間重合し、回転粘度1670ポイズ、ポリマー濃度14重量%のポリイミドF溶液を得た。
ポリイミドFのヘリウムガスの透過係数(PHe)は1.75×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は67であった。
【0028】
調製したポリイミドA〜Fのヘリウムガスの透過係数(PHe)とヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)を表1に示す。
【表1】
Figure 0003698078
【0029】
(非対称中空糸膜を製造する方法(乾湿式紡糸法))
ポリイミド溶液、または、ポリイミド混合溶液を、400メッシュの金網で濾過したあと、温度70℃で中空糸紡糸ノズル(円形開口部外径1000μm、円形開口部スリット幅200μm、芯部開口部外径400μm)から吐出させ、吐出した中空糸状体を窒素雰囲気中に通した後、0℃の72重量%エタノール水溶液からなる凝固液に浸漬し湿潤糸とした。これを50℃のエタノール中に2時間浸漬し脱溶媒処理を完了し、更に、70℃のイソオクタン中に3時間浸漬洗浄して溶媒を置換後、100℃絶乾状態で30分間乾燥し、その後250℃で1時間の熱処理を行った。更に、中空糸膜の表面の滑りを整えるためにシリコンオイルでオイリング処理を施し中空糸膜を製造した。得られた中空糸膜はいずれも、大略、外径寸法470μm、内径寸法320μm、膜厚75μmのものであった。
【0030】
〔実施例1〕
前記ポリイミドA溶液400gと前記ポリイミドB溶液400gとを、セパラブルフラスコにて130℃で3時間攪拌してポリイミド混合溶液を調製した。この混合物溶液のポリマー濃度は12.5重量%であり、回転粘度は1500ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表2のとおりであった。
〔実施例2〕
前記ポリイミドA溶液の583.3gと、前記ポリイミド溶液Bの250gとを、実施例1と同様の混合方法に従って混合し、混合溶液を調整した。このポリマー混合溶液のポリマー濃度は12.3重量%であり、回転粘度は1500ポイズであった。このポリイミド混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表2のとおりであった。
〔比較例1〕
前記ポリイミドA溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表2のとおりであった。
〔比較例2〕
前記ポリイミドB溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表2のとおりであった。
〔比較例3〕
前記のポリイミドC溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表2のとおりであった。
【0031】
〔実施例3〕
前記ポリイミドD溶液280gと、前記ポリイミドE溶液120gとを、セパラブルフラスコにて温度130℃で3時間攪拌してポリイミド混合物溶液を得た。この混合物溶液のポリマー濃度は14重量%であり、回転粘度は1790ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔実施例4〕
前記ポリイミドD溶液360gと、前記ポリイミドE溶液40gとを、セパラブルフラスコにて温度130℃で3時間攪拌してポリイミド混合物溶液を得た。この混合物溶液のポリマー濃度は14重量%であり、回転粘度は1800ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜の製造方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔比較例4〕
前記ポリイミドD溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的強度を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔比較例5〕
前記ポリイミドE溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的強度を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔実施例5〕
前記ポリイミドF溶液240gと、前記ポリイミドE溶液160gとを、セパラブルフラスコにて温度130℃で3時間攪拌してポリイミド混合物溶液を得た。この混合物溶液のポリマー濃度は14重量%であり、回転粘度は1750ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜の製造方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔実施例6〕
前記ポリイミドF溶液280gと、前記ポリイミドE溶液120gとを、セパラブルフラスコにて温度130℃で3時間攪拌してポリイミド混合物溶液を得た。この混合物溶液のポリマー濃度は14重量%であり、回転粘度は1790ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
〔実施例7〕
前記ポリイミドF溶液360gと、前記ポリイミドE溶液40gとを、セパラブルフラスコにて温度130℃で3時間攪拌してポリイミド混合物溶液を得た。この混合物溶液のポリマー濃度は14重量%であり、回転粘度は1690ポイズであった。このポリイミド混合物溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。結果は表3のとおりであった。
【0032】
表2、表3から以下のことが明らかである。
比較例1、比較例3、比較例4の非対称中空糸膜は、引張り強度及び/又は引張り破断伸度が小さく実用に供することが難しい。比較例2、比較例5の非対称中空糸膜は、P’H2Oが小さく高性能の除湿膜又は加湿膜ではない。
一方、本発明の方法による実施例1〜実施例7の非対称中空糸膜は、いずれも、水蒸気と窒素ガスの透過速度比(P’H2O/P’N2)が50以上及び水蒸気透過速度(P’H2O)が2.5×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上と高い水蒸気分離性能を有しており、且つ、中空糸分離膜での引張強度が2.5kgf/mm以上で引張り破断伸度が10%以上と実用に供することができる機械的強度を有している。これらの中空糸膜の多孔質層は、ヘリウム透過速度(P’He)が3.0×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上であり、ガス透過抵抗が小さいものである。また、実施例3〜実施例7の非対称中空糸膜は、耐熱水性が極めて良好なものである。
【0033】
【表2】
Figure 0003698078
【表3】
Figure 0003698078
【0034】
【発明の効果】
本発明は、以上のようなものであるから、以下のような効果を奏する。
即ち、本発明によって、水蒸気と窒素ガスの透過速度比(P’H2O/P’N2)が50以上で水蒸気透過速度(P’H2O)を2.0×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、より好ましくは2.5×10−3cm(STP)/cm・sec・cmHg以上と極めて大きくすることができ、且つ、中空糸分離膜での引張り強度が2.5kgf/mm以上で引張り破断伸度が10%以上、より好ましくは引張り強度が3.0kgf/mm以上で引張り破断伸度が20%以上と実用に供することができる機械的強度を有する非対称中空糸分離膜を製造することができる。
本発明の方法によって得られる非対称中空糸分離膜は、極めて高い水蒸気分離性能を持ち且つ実用的な機械的強度を有するので、除湿膜又は加湿膜として好適である。

Claims (5)

  1. 第一ポリマー成分は、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上で、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上であるガラス状ポリマーであり、第二ポリマー成分は、乾湿式紡糸法によって得られる非対称中空糸の引張り破断伸度が20%以上であるポリイミドであり、前記第一ポリマー成分と前記第二ポリマー成分とを主たるポリマー成分とするポリマー混合溶液を用いて、乾湿式紡糸法によって、非対称中空糸分離膜を製造する方法。
  2. 第一ポリマー成分が50〜95重量%であり、第二ポリマー成分が50〜5重量%であるポリマー混合物からなるポリマー混合溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載の非対称中空糸分離膜を製造する方法。
  3. ポリマー混合溶液のポリマー濃度が8〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の非対称中空糸分離膜を製造する方法。
  4. 第一ポリマー成分が、ヘリウムガスの透過係数(PHe)が1.5×10−9cm(STP)・cm/cm・sec・cmHg以上で、且つ、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)が35以上であるポリイミドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非対称中空糸分離膜を製造する方法。
  5. 第二ポリマー成分であるポリイミドが、テトラカルボン酸成分中に30〜100モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類からなるテトラカルボン酸成分を含んだポリイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非対称中空糸分離膜を製造する方法。
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