JP5114912B2 - Si原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜、ガス分離膜、及びガス分離方法 - Google Patents

Si原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜、ガス分離膜、及びガス分離方法 Download PDF

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Description

本発明は、Si原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜に関し、さらに前記非対称膜からなるガス分離膜と該ガス分離膜を用いたガス分離方法に関する。
シロキサン骨格を含むポリイミドは、一般的にガス透過速度が大きくなり、特定のガス種に対して優れた分離性能を示すことが知られている。
非特許文献1には、シロキサン骨格を含むポリイミドからなる緻密膜は、水蒸気に対するアルコール蒸気の選択透過性を示すことが開示されている。
特許文献1には、多孔質支持体層とシロキサン骨格含有ポリイミド重合体薄膜層よりなる物質分離用複合膜が記載されている。また、特許文献2には、気体分離複合膜を得るに当り、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリイミドを、水面上で薄膜化させ、当該ポリイミドを多孔質支持体上に積層することを特徴とする気体分離層の膜厚の均一性を向上させる方法が開示されている。これらの複合膜では、酸素と窒素の分離が可能であることが報告されている。
Journal of Membrane Science 241(2004)55-64 特開平5−7750号公報 特開2005−193224号公報
シロキサン含有ポリイミドの緻密膜やシロキサン含有ポリイミドの薄層を多孔質支持体層に積層した複合膜は公知であり、それらの膜がガス分離性能を有していることが報告されているが、シロキサン含有ポリイミドのようなSi原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜に関しては知られていなかった。
本発明は、Si原子含有ポリイミドによって形成された新規な非対称膜を提供することである。このSi原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜はガス分離膜として好適に用いることができる。
本発明は、下記化学式(1)で示される反復単位構造からなるポリイミドによって形成された非対称膜に関する。
Figure 0005114912
化学式(1)において、Bはポリイミドのテトラカルボン酸成分からカルボキシル基を除いた残基である4価の基であり、Aはポリイミドのジアミン成分からアミノ基を除いた残基である2価の基であって、Aの3〜28モル%が下記化学式(2)で示される2価の基であり、Aの97〜72モル%がSi原子を含有しない2価の基である。
Figure 0005114912
化学式(2)において、Xはエーテル基又はフェニレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜5のアルキレン基又はフェニレン基であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、nは1〜5の整数好ましくは1〜3の整数より好ましくは1である。なお、前記フェニレン基及びフェニル基は低級アルキル基などの置換基を有しても構わない。
また、本発明は、Bが芳香族環又は脂肪族環を含むポリイミドのテトラカルボン酸成分からカルボキシル基を除いた残基である4価の基であり、且つAの97〜72モル%がSi原子を含有しない芳香族環又は脂肪族環を含むポリイミドのジアミン成分からアミノ基を除いた残基である2価の基である前記非対称膜に関する。
また、本発明は、前記非対称膜からなるガス分離膜、特に水蒸気透過速度(P’H2O)が8.0×10−4cm(STP)/cm・sec・cmHg以上のガス分離膜に関する。
さらに、本発明は、前記ガス分離膜の供給側に複数のガス成分を含む混合ガスを接触させ且つ前記非対称ガス分離膜の透過側へ前記複数のガス成分のうちの少なくとも一つのガス成分を選択的に透過させることを特徴とする複数のガス成分を含む混合ガスから前記複数のガス成分のうちの少なくとも一つのガス成分を選択的に分離回収する方法、特に、前記ガス分離膜の供給側に水蒸気を含む混合ガスを接触させ且つ前記非対称ガス分離膜の透過側へ水蒸気を選択的に透過させることを特徴とする水蒸気を含む混合ガスから水蒸気を選択的に分離回収する方法に関する。
本発明によれば、Si原子含有ポリイミドによって形成された新規な非対称膜を得ることができる。このSi原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜は、ガス分離膜特に水蒸気分離用ガス分離膜として好適に用いることができる。
本発明の非対称膜は、緻密層と多孔質層とからなり、それらの2層はいずれも前記化学式(1)で示される反復単位構造からなるポリイミドによって形成されている。
前記化学式(1)のポリイミドのBを構成する基になるテトラカルボン酸成分としては、ポリイミドのテトラカルボン酸成分として通常用いられるテトラカルボン酸、その低級アルコールのエステル化物又は二無水物を好適に用いることができる。なかでも、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−(2,2−イソプロピリデン)ジフタル酸、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、ナフタレンテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などの、芳香族環を含むテトラカルボン酸、その低級アルコールのエステル化物又は二無水物を好適に用いることができる。また、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの、脂肪族環を含むテトラカルボン酸、その低級アルコールのエステル化物又は二無水物を好適に用いることができる。
これらのテトラカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、異なる2種類以上の混合物を用いてもよい。
前記化学式(1)のポリイミドのAを構成する基になるジアミン成分は、その3〜28モル%好ましくは3〜25モル%より好ましくは10〜25モル%が、下記化学式(3)のジアミンである。
Figure 0005114912
化学式(3)において、Xはエーテル基又はフェニレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜5のアルキレン基又はフェニレン基であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、nは1〜5の整数好ましくは1〜3の整数より好ましくは1である。なお、前記フェニレン基及びフェニル基は炭素数が1〜5の低級アルキル基などの置換基を有しても構わない。
また、化学式(3)において、Xがフェニレン基の場合には得られる非対称膜のガス分離特性がより優れるのでより好適である。
前記化学式(3)のジアミンの具体例としては、限定されるものではないが、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、或いは前記化合物のエーテル基がフェニレン基に置き換わった化合物を挙げることができる。特に好適なn=1の例としては、1,3−ビス(2−アミノエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(2−アミノエチルジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニルジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジフェニルシリル)ベンゼン1,4−ビス(4−アミノブチルジメチルシリル)ベンゼン、などを挙げることができる。
また、前記化学式(1)のポリイミドのAを構成する基になるジアミン成分は、その97〜72モル%好ましくは97〜75モル%より好ましくは90〜75モル%がSi原子を含有しないジアミンである。
Si原子を含有しないジアミンとしては、ポリイミドのジアミン成分として通常用いられるSi原子を含有しないジアミンを好適に用いることができる。なかでも、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジアミノナフタレン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族環を含むジアミンを好適に挙げることができる。
これらのジアミンのなかでもジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド(以下、TSNと略記することもある)と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとは相分離させて非対称膜を容易に形成できるので特に好適である。他のジアミンでは重合・イミド化反応すると溶液がゲル化したり、流動性がなくなってしまったりして、相分離が起こらず非対称膜を得ることが困難になり易い。なお、通常のTSNは、2,8−ジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドを主成分とし、メチル基の位置が異なる異性体2,6−ジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、4,6−ジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドなどを含む混合物である。
Si原子を含有しないジアミンとしては、また、イソホロンジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂肪族環を含むジアミンを好適に用いることができる。
これらのジアミン成分は、単独で用いてもよいし、異なる2種類以上の混合物を用いてもよい。
前記化学式(1)のポリイミドは、前記テトラカルボン酸成分と前記ジアミン成分との略等モルを、有機溶媒中で重合・イミド化反応させて、ポリイミド溶液として得ることができる。
重合・イミド化反応は、有機溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、室温程度の低温で重合反応させてポリアミド酸を生成し次いで100〜250℃好ましくは130〜200℃程度に加熱して加熱イミド化するか又はピリジンや無水酢酸などを加えて化学イミド化する2段法、または、有機溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、100〜250℃好ましくは130〜200℃程度の高温で重合・イミド化反応させる1段法によって好適に行われる。加熱によってイミド化反応を行うときは脱離する水またはアルコールを除去しながら行うことが好適である。有機溶媒に対するテトラカルボン酸成分とジアミン成分の使用量は、溶媒中のポリイミドの濃度が5〜50重量%程度好ましくは5〜40重量%にするのが好適である。
重合・イミド化反応で得られたポリイミド溶液は、そのまま用いることもできる。また、例えば得られたポリイミド溶液をポリイミドに対し非溶解性の溶媒中に投入してポリイミドを析出させて単離後、改めて有機溶媒に所定濃度になるように溶解させてポリイミド溶液を調製し、それを用いることもできる。
前記化学式(1)のポリイミドは、Aが化学式(2)である反復単位構造とAがSi原子を含まない反復単位構造とがランダム重合したものであってもよいが、それらが適度にブロック性を持って重合したものの方が、得られる非対称膜の水蒸気透過速度(P’H2O)が大きくなり且つ機械的強度が優れるので好適である。
ポリイミドがブロック性を有する場合、ポリイミド膜の内部にはポリイミドの各ブロック成分からなるミクロドメインが、夫々のブロックのサイズに応じて形成される。すなわち、ブロック性を有するポリイミドのドープ溶液から溶媒を蒸発・乾燥させて膜を形成すると、膜の表面には表面張力の小さいブロックからなるミクロドメインが、膜表面に沿って層状に形成される。このような層状のミクロドメインの有無は、膜表面の元素分析を行って平均組成から期待される元素濃度からのずれを調べることによって把握でき、ブロック性を有するポリイミドほど前記平均組成からのずれが大きくなる。本発明においては、Aが化学式(2)である反復単位構造からなるポリイミドブロックは、AがSi原子を含まない反復単位構造からなるポリイミドブロックより、表面張力が小さい。このため、前記のブロック性を持ったポリイミドからなる膜は、平均組成から期待されるSi元素濃度(βとする)と、X線光電子分光(XPS)測定などの手法により測定した膜表面のSi元素濃度(αとする)との比[α/β]が大きくなっている。本発明においては、ポリイミドがSi原子を含む反復単位構造とSi原子を含まない反復単位構造とが適度にブロック性を持った方が、特にX線光電子分光(XPS)測定により測定した膜表面のSi元素濃度(αとする)との比[α/β]が1.5以上好ましくは2.5以上のブロック性を持った方が、前記ブロック性による膜表面のミクロドメイン構造の形成によって、得られる非対称膜の水蒸気透過速度(P’H2O)が大きくなり且つ機械的強度が優れたものになるので好ましい。
ランダム重合した化学式(1)のポリイミドは、全てのテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを有機溶媒中で同時に反応させることによって、ランダム重合した化学式(1)のポリイミドの溶液として容易に得ることができる。
一方、適度にブロック性を持たせて重合した化学式(1)のポリイミドは、以下の方法によって好適に調製される。
すなわち、Aが化学式(2)である反復単位構造を主構造(全構造単位の80モル%以上好ましくは100モル%)とするポリイミドをポリイミドXとし、ポリイミドXを構成するポリイミド成分をポリイミド成分X、その数平均重合度をNとし、AがSi原子を含まない反復単位構造を主構造(全構造単位の80モル%以上好ましくは100モル%)とするポリイミドをポリイミドYとし、ポリイミドYを構成するポリイミド成分をポリイミド成分Y、その数平均重合度をNとして、
(工程1)有機溶媒中に、ポリイミド成分Xとポリイミド成分Yとを、5<N+N<200好ましくは10<N+N<100を満たす組合せで混合してポリイミド溶液を調製し、
(工程2)前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化反応させる、
ことによって、ブロック性を持たせて重合した化学式(1)のポリイミド溶液として得ることができる。
ここで、前記「ポリイミド成分」とは、ポリイミドの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン)及び/又は前記原料成分の重合・イミド化反応物のことであり、例えば未反応のモノマー原料とイミドオリゴマーとの混合物や、イミドオリゴマーとポリイミドとの混合物であってもよい。また、数平均重合度は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との各1分子が重合イミド化したものを重合度が1とし、未反応のテトラカルボン酸成分及び未反応ジアミン成分の重合度はそれぞれ0.5として算出したものである。
すなわち、ポリイミド成分Xとポリイミド成分Yとを、それぞれ適当な数平均重合度まで重合・イミド化しておいて、それらを混合してポリイミド溶液を調製し、次いで前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化してもよい。また、有機溶媒中でポリイミド成分Xとポリイミド成分Yのうちのいずれか一方を適当な数平均重合度まで重合・イミド化しておいて、そのポリイミド溶液に、残りのポリイミド成分を未反応の原料成分として加えてポリイミド溶液調製し、次いで前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化してもよい。
工程2の重合・イミド化反応は、工程1で得られたポリイミド溶液をさらに重合・イミド化反応することに特徴があり、前述の重合・イミド化反応の方法を好適に採用できる。特に限定しないが通常は工程1で得られたポリイミド溶液のポリイミド成分の平均重合度の1.2倍以上好ましくは2倍以上になる程度まで重合・イミド化すればよい。工程2の重合イミド化反応によって得られるポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は、好ましくは10〜500より好ましくは15〜200が、相転換を行う上で好適である。なお、数平均重合度は、反応温度や反応時間の調整のみならず、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との組成比をずらすことによって好適に行うこともできる。その時のモル比は、(ジアミン成分の総モル数)/(テトラカルボン酸成分の総モル数)が0.95〜0.99又は1.01〜1.05程度が好適である。
本発明で用いられる有機溶媒としては、得られる芳香族ポリイミドを好適に溶解できるものであれば限定されるものではないが、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールのようなフェノール類、2個の水酸基をベンゼン環に直接有するカテコール、レゾルシンのようなカテコール類、3−クロルフェノール、4−クロルフェノール(後述のパラクロロフェノールに同じ)、3−ブロムフェノール、4−ブロムフェノール、2−クロル−5−ヒドロキシトルエンなどのハロゲン化フェノール類などからなるフェノール系溶媒、又はN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド類からなるアミド系溶媒、あるいはそれらの混合溶媒などを好適に挙げることができる。
本発明の非対称膜は、化学式(1)のポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液を用いて、相転換法によって得ることができる。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法である。本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に採用される。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶媒を蒸発させて薄い緻密層を形成し、次いで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる相転換法であり、Loebらが提案(例えば、米国特許3133132号)したものである。
本発明の非対称膜は、乾湿式紡糸法を採用することによって、中空糸膜として好適に得ることができる。乾湿式紡糸法は、乾湿式法を紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に適用して非対称中空糸膜を製造する方法である。より詳しくは、ポリマー溶液をノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー混合液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、更に必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。紡糸ノズルは、ポリイミド溶液を中空糸状体として押し出すものであればよく、チューブ・イン・オリフィス型ノズルなどが好適である。通常、押し出す際のポリイミド溶液の温度範囲は約20℃〜150℃、特に30℃〜120℃が好適である。また、ノズルから押し出される中空糸状体の内部へ気体または液体を供給しながら紡糸がおこなわれる。
本発明においては、ノズルから吐出させるポリイミド溶液は、ポリイミドの濃度が5〜40重量%更には8〜25重量%になるようにするのが好ましく、溶液粘度(回転粘度)は100℃で100〜15000ポイズ好ましくは200〜10000ポイズ特に300〜5000ポイズであることが好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状などの膜の形状が保持できる程度に凝固した後、案内ロールに巻き取られ、次いで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固液は、特に限定するものではないが、水や、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどの低級アルコール類や、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキル基を有するケトン類など、あるいは、それらの混合物が好適に用いられる。凝固した膜の乾燥は炭化水素などの溶媒を用いて凝固液と置換した後乾燥する方法が効率的である。加熱処理は用いられている多成分のポリイミドの各成分ポリマーの軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施されることが好ましい。
本発明の非対称膜は緻密層と多孔質層とを有する。緻密層はガス種によって透過速度が実質的に異なる(例えば、50℃においてヘリウムガスと窒素ガスとの透過速度比が1.2倍以上)程度の緻密さを有し、ガス種による分離機能を持つ。一方、多孔質層は実質的なガス分離機能を持たない程度に多孔性を有する層であって、必ずしも孔径は一定でなく、大きな孔から順次細かい孔となり更に連続的に緻密層を形成したものであっても構わない。本発明によって得られるポリイミド非対称膜は、形態、厚み、寸法等に特に限定はなく、例えば、平膜であっても中空糸であっても構わない。ただし、本発明によって得られる非対称膜をガス分離膜として用いる場合には、緻密層の厚さは1〜1000nm好ましくは20〜200nm程度、多孔質層の厚さは10〜2000μm好ましくは10〜500μm程度が好適であり、とりわけ中空糸ガス分離膜としては、内径が10〜3000μm好ましくは20〜900μm程度、外径が30〜7000μm好ましくは50〜1200μm程度であり、中空糸膜としては、外側に緻密層を有する中空糸非対称膜が好適である。
本発明の非対称膜は、種々のガス種に対して分離性能を有する。例えば、窒素ガスに対して水蒸気やエタノール蒸気を選択的に透過することができるので、窒素ガスとエタノール蒸気との混合ガスを本発明の非対称膜からなるガス分離膜に接触させてエタノール蒸気を選択的に透過させることで、窒素ガスとエタノール蒸気との混合ガスからエタノール蒸気を選択的に分離回収することができ、また、窒素ガスと水蒸気との混合ガスを本発明の非対称膜からなるガス分離膜に接触させて水蒸気を選択的に透過させることで、窒素ガスと水蒸気との混合ガスから水蒸気を選択的に分離回収することができる。また、エタノール蒸気に対して水蒸気を選択的に透過することができるので、水蒸気とエタノール蒸気との混合ガスを本発明の非対称膜からなるガス分離膜に接触させて水蒸気を選択的に透過させることで、水蒸気とエタノール蒸気との混合ガスから水蒸気を選択的に分離回収することができる。
本発明のガス分離膜は、水蒸気透過速度(P’H2O)が8.0×10−4cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、好ましくは10.0×10−4cm(STP)/cm・sec・cmHg以上であり、窒素ガスとの透過速度の比(分離度)も極めて高い。さらに、本発明のガス分離膜は、中空糸膜として引張破断伸びが15%以上、好ましくは30%以上である。このような良好な機械的強度を有するので、工業的に容易にモジュール化ができるし、使用時のも容易に破断しないから高圧の混合ガスを供給しても用いることが可能になる。
なお、本発明のガス分離膜は、通常の方法でモジュール化して好適に用いることができる。例えば中空糸膜のモジュールの場合には、適当な長さの中空糸膜100〜200000本程度を束ね、その中空糸束の両端部を、中空糸の少なくとも一方の端が開口状態を保持した状態で熱硬化性樹脂などからなる管板で固着し、得られた中空糸束と管板などからなる中空糸膜エレメントを、少なくとも混合ガス導入口と透過ガス排出口と非透過ガス排出口とを備える容器内に、中空糸膜の内側に通じる空間と中空糸膜の外側へ通じる空間とが隔絶するように収納し取り付けることによって得られる。このようなガス分離膜モジュールでは、混合ガスが混合ガス導入口から中空糸膜の内側あるいは外側に接する空間へ供給され、中空糸膜に接して流れる間に混合ガス中の特定成分が選択的に膜を透過し、透過ガスが透過ガス排出口から、膜を透過しなかった非透過ガスが非透過ガス排出口からそれぞれ排出されることによって、ガス分離が行われる。
以下、本発明の非対称膜について、実施例によって具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(溶液粘度の測定)
ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec−1)を用い温度100℃で測定した。
(数平均重合度の測定)
ポリイミドの平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって測定した。GPC測定は以下のようにして行った。
日本分光工業株式会社製800シリーズHPLCシステムを用い、カラムはShodex KD−806Mを1本、カラム部温度は40℃、検出器は未知試料用としてインテリジェント紫外可視分光検出器(吸収波長350nm)、標準物質用として示差屈折計(標準物質はポリエチレングリコール)を使用した。溶媒は塩化リチウム及びリン酸を各々0.05モル/L含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を使用し、溶媒の流速は0.5mL/分、サンプルの濃度は約0.1%とした。データの取り込み及びデータ処理はJASCO−JMBS/BORWINを用い行なった。データの取り込みは2回/秒行ない、試料のクロマトグラムを得た。一方、標準物質として分子量82,250、28,700、6,450、1,900のポリエチレングリコールを使用し、これらのクロマトグラムからピークを検出し、保持時間と分子量の関係を示す校正曲線を得た。未知試料の分子量解析は、校正曲線から各保持時間における分子量Mを各々求め、また、各保持時間におけるクロマトグラムの高さhの合計に対する分率W=h/Σhを求め、それらをもとに数平均分子量Mnは1/{Σ(W/M)}から、重量平均分子量MwはΣ(W・M)から求めた。
数平均重合度Nは、重合時の仕込み割合に応じて平均化したモノマー単位分子量<m>で数平均分子量Mnを除して求めた。
Figure 0005114912
なお、モノマー単位分子量<m>は下記のとおり求めた。すなわち、複数種のテトラカルボン酸成分(分子量m1,i、仕込みモル比R1,i、但し、ΣR1,i=1、i=1,2,3,・・・,n)、複数種のジアミン成分(分子量m2,j、仕込みモル比R2,j、但し、ΣR2,j=1、j=1,2,3,・・・,n)を仕込んだ場合のモノマー単位分子量<m>は下記の式に従って求めた。
Figure 0005114912
(中空糸非対称膜を製造する方法)
以下の例で用いた中空糸非対称膜の製造方法は、乾湿式紡糸法によっておこなった。具体的には、ポリイミド溶液又はポリイミド混合溶液を、400メッシュの金網で濾過したあと、温度71℃で中空糸紡糸ノズル(円形開口部外径1000μm、円形開口部スリット幅200μm、芯部開口部外径400μm)から吐出させ、吐出した中空糸状体を窒素雰囲気中に通した後、0℃の75重量%エタノール水溶液からなる凝固液に浸漬し湿潤糸とした。これを50℃のエタノール中に2時間浸漬し脱溶媒処理を完了し、更に70℃のイソオクタン中に3時間浸漬洗浄して溶媒を置換後、100℃絶乾状態で30分間乾燥し、その後250℃で1時間の熱処理を行った。得られた中空糸膜はいずれも、大略、外径寸法400μm、内径寸法200μm、膜厚100μmのものであった。
(中空糸膜の水蒸気、エタノール蒸気及び窒素ガスの透過性能の測定方法)
15本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が10cmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。それに一定圧力の水蒸気を供給して透過流量を測定した。測定した透過水蒸気量と供給圧力及び有効膜面積から水蒸気の透過速度を算出した。窒素ガスの透過速度も同様にして測定した。なお、水蒸気及びエタノール蒸気の透過速度の測定は温度120℃、窒素ガスの透過性能の測定は50℃でおこなった。
(中空糸膜の引張強度と破断伸度の測定)
引張試験機を用いて有効長20mm、引張速度10mm/分で測定した。測定は23℃でおこなった。中空糸断面積は中空糸の断面を光学顕微鏡で観察し、光学顕微鏡像から寸法を測定して算出した。
以下の実施例で用いた略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TSN:ジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド
DADM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
ADB:1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン
ATD:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
PSX(n=9):α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(但し、繰返し単位−Si−O−が9)
PCP:パラクロロフェノール
〔参考例1〕
s−BPDA17.65gとTSN15.64gとADB0.94g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるADBが5モル%)を、溶媒のPCP156.6gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度170℃で15時間重合イミド化し、溶液粘度が874ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度を測定したところ52.5であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔実施例2〕
s−BPDA17.65gとTSN13.43gとADB3.78g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるADBが20モル%)を、溶媒のPCP159.7gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度170℃で20時間重合イミド化し、回転粘度が781ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度を測定したところ25.4であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔比較例4〕
s−BPDA17.65gとTSN13.43gとATD3.18g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるATDが20モル%)を、溶媒のPCP156.8gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度170℃で20時間重合イミド化し、回転粘度が837ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、16.6であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔参考例2〕
s−BPDA14.71gとDADM7.93gとADB3.15g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるADBが20モル%)を、溶媒のPCP117.1gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度170℃で20時間重合イミド化し、回転粘度が530ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔実施例5〕
s−BPDA14.12gとTSN13.43g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部)を、溶媒のPCP126.1gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は57であった。このポリイミド溶液へs−BPDA3.53gとADB3.78g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部)を溶媒のPCP33.6gと共に添加した。このポリイミド溶液を、さらに反応温度160℃で10時間重合イミド化し、回転粘度が930ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は32.2であった。また、全ジアミン成分中、Si含有ジアミンであるADBの割合は20モル%である。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔実施例6〕
s−BPDA14.12gとTSN13.43gを溶媒のPCP126.1gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液(A)を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は57であった。
s−BPDA3.53gとADB3.78gを、溶媒のPCP33.6gと共に別のセパラブルフラスコ中にて反応温度170℃で10時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液(B)を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は16であった。
次に、前記ポリイミド溶液(A)40.5g及び前記ポリイミド溶液(B)151.9gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに温度170℃で5時間攪拌混合し、回転粘度が986ポイズ、ポリマー濃度が17重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は18.6であった。また、全ジアミン成分中、Si含有ジアミンであるADBの割合は20モル%である。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔実施例7〕
s−BPDA14.12gとTSN13.43g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部)を、溶媒のPCP126.1gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は57であった。このポリイミド溶液へs−BPDA3.53gとATD3.18g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部)を溶媒のPCP30.7gと共に添加した。このポリイミド溶液を、さらに反応温度170℃で10時間重合イミド化し、回転粘度が856ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は19.6であった。また、全ジアミン成分中、Si含有ジアミンであるATDの割合は20モル%である。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔実施例8〕
s−BPDA14.12gとTSN13.43gを溶媒のPCP126.1gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液(C)を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は57であった。
s−BPDA3.53gとATD3.18gを、溶媒のPCP30.7gと共に別のセパラブルフラスコ中にて反応温度170℃で10時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液(D)を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は2であった。
次に、前記ポリイミド溶液(C)37.0g及び前記ポリイミド溶液(D)151.9gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。このポリイミド溶液を、さらに温度170℃で5時間攪拌混合し、回転粘度が837ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度は17.2であった。また、全ジアミン成分中、Si含有ジアミンであるATDの割合は20モル%である。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔比較例1〕
s−BPDA17.65gとTSN16.79g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部)を、溶媒のPCP157.6gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で16時間重合イミド化し、回転粘度が1100ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液のポリイミド成分の数平均重合度を測定したところ52.5であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表1に示した。
〔比較例2〕
s−BPDA17.65gとTSN11.75gとADB5.67g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるADBが30モル%)を、溶媒のPCP160.7gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度170℃で20時間重合イミド化し、回転粘度が37ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、25.2であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜の製造を試みたが、低粘度のため中空糸非対称膜を得ることが出来なかった。
〔比較例3〕
s−BPDA17.65gとTSN13.43gとPSX(n=9)11.02g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.02モル部、ジアミン成分中Si含有ジアミンであるPSXが20モル%)を、溶媒のPCP195gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度170℃で20時間重合イミド化し、回転粘度が30ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、21.1であった。
このポリイミド溶液を用いて中空糸非対称膜の製造を試みたが、低粘度のため中空糸非対称膜を得ることが出来なかった。
Figure 0005114912
以上の実施例のうち平均組成が同じである実施例2、5、6について、組成から算出されるSi元素濃度(β)と、PHI社製Quantum2000走査型X線光電子分光装置を用いて測定した膜表面のSi元素濃度(α)の比[α/β]は、それぞれ2.8、6.6、3.7となり、ブロック性が高くなる順(比[α/β]が大きくなる順)、すなわち実施例2、6、5の順に、水蒸気透過速度(P’H2O)が向上している。また平均組成が同じである実施例3、7、8について、同様に比[α/β]を求めると、それぞれ1.6、4.1、5.4となり、ブロック性が高くなる順(比[α/β]が大きくなる順)、すなわち実施例3、7、8の順に、水蒸気透過速度(P’H2O)が向上している。
本発明によれば、Si原子含有ポリイミドによって形成された新規な非対称膜を得ることができる。このSi原子含有ポリイミドによって形成された非対称膜は、ガス分離膜特に水蒸気分離用ガス分離膜として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 下記化学式(1)で示される反復単位構造からなるポリイミドによって形成され、組成から算出されるSi元素濃度(β)とX線光電子分光(XPS)測定により測定した膜表面のSi元素濃度(α)との比[α/β]が2.5以上であることを特徴とする非対称膜。
    Figure 0005114912
    化学式(1)において、Bは芳香族環を含む4価の基であり、Aの3〜28モル%が下記化学式(2)で示される2価の基であり、Aの97〜72モル%がSi原子を含有しない芳香族環又は脂肪族環を含む2価の基である。
    Figure 0005114912
    化学式(2)において、Xはフェニレン基であり、R及びRは炭素数が1〜5のアルキレン基又はフェニレン基であり、R〜Rは炭素数が1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、nは1〜5の整数である。なお、前記フェニレン基及びフェニル基は置換基を有しても構わない。
  2. 請求項1に記載の非対称膜からなるガス分離膜。
  3. 水蒸気透過速度(P’H2O)が10.0×10−4cm(STP)/cm・sec・cmHg以上であることを特徴とする請求項2に記載のガス分離膜。
  4. 請求項2に記載のガス分離膜の供給側に、複数のガス成分を含む混合ガスを接触させ、前記非対称ガス分離膜の透過側へ前記複数のガス成分のうちの少なくとも一つのガス成分を選択的に透過させることを特徴とする、複数のガス成分を含む混合ガスから前記複数のガス成分のうちの少なくとも一つのガス成分を選択的に分離回収する方法。
  5. 請求項3に記載のガス分離膜の供給側に、水蒸気を含む混合ガスを接触させ、前記非対称ガス分離膜の透過側へ水蒸気を選択的に透過させることを特徴とする、水蒸気を含む混合ガスから水蒸気を選択的に分離回収する方法。
  6. 上記化学式(1)で示される反復単位構造からなるポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液を用いて、相転換法によって得ることを特徴とする請求項1に記載の非対称膜の製造方法。
  7. 上記化学式(1)で示される反復単位構造からなるポリイミドによって形成された非対称膜の製造方法において、
    上記Aが上記化学式(2)である2価の基であるポリイミドをポリイミドXとし、ポリイミドXを構成するポリイミド成分をポリイミド成分X、その数平均重合度をNとし、
    AがSi原子を含まない2価の基であるポリイミドをポリイミドYとし、ポリイミドYを構成するポリイミド成分をポリイミド成分Y、その数平均重合度をNとして、
    (工程1)有機溶媒中に、ポリイミド成分Xとポリイミド成分Yとを、5<N+N<200を満たす組合せで混合してポリイミド溶液を調製し、
    (工程2)前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化反応させる
    ことによって得られたポリイミドを用いること
    を特徴とする請求項6に記載の非対称膜の製造方法。
  8. 上記ポリイミド成分Xと上記ポリイミド成分Yとを、5<N+N<200を満たす数平均重合度まで重合・イミド化を行い、
    前記ポリイミド成分Xと前記ポリイミド成分Yとを混合してポリイミド溶液を調製し、
    前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化すること
    を特徴とする請求項7に記載の非対称膜の製造方法。
  9. 上記ポリイミド成分X、または、上記ポリイミド成分Yを、5<N+N<200を満たす数平均重合度まで重合・イミド化を行い、
    残りのポリイミド成分を未反応の原料成分として加えてポリイミド溶液を調製し、
    前記ポリイミド溶液をさらに重合・イミド化すること
    を特徴とする請求項7に記載の非対称膜の製造方法。
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