JP5119597B2 - 多成分ポリイミドからなるポリイミド非対称膜、ガス分離膜、及びガス分離方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、脂肪族系の多孔質ポリイミド支持層と、フッ素原子含有ポリイミドからなる薄膜とを積層した気体用複合分離膜が開示されている。
しかし、このような複合膜では多孔質層の上に均一な薄膜を積層する必要があるが、多孔質層の上に均一な薄膜を形成するのは容易ではなく、これらの文献で示された方法によって高性能ガス分離膜を得るのは容易ではなかった。
(工程1)ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとを、NAとNBとが下記数式を満たす組合せで混合して多成分ポリイミドの混合溶液を調製する
本発明において、重合イミド化反応物の重合度はそこに含まれるポリイミドの繰返し単位数によるものとした。すなわち、モノマーの重合度は1であり、ポリマーの重合度は>1である。一方、ポリイミドの原料成分の重合度は、繰返し単位を持たないので、0.5と定義した。数平均重合度は前記のように定義した重合度から算出される。
ポリイミド成分Aは、ポリイミドAの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなる。そして、ポリイミド成分Bは、ポリイミドBの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなる。
ポリイミドAの原料成分としては、得られるポリイミドAが高いガス透過速度と高いガス選択性を有するものが好適に用いられる。特に、均一なフィルムで測定したときに、80℃でヘリウムガス透過係数(PHe)が5×10−10cm3 (STP)・cm/cm2 ・sec・cmHg以上且つヘリウムガスと窒素ガスの透過係数比(PHe/PN2)が20以上、好ましくは80℃でPHeが2.5×10−9cm3 (STP)・cm/cm2 ・sec・cmHg以上且つPHe/PN2が20以上、更に好ましくは80℃でPHeが3×10−9cm3 (STP)・cm/cm2 ・sec・cmHg以上且つPHe/PN2が30以上となるものが好適である。このポリイミドAはフッ素原子を含有しているために、フッ素原子を含有していないものに比較して、通常相転換法に用いられる各種溶媒に対する溶解性が高く且つ表面自由エネルギーが小さい。
PHeが上記の範囲より低いか、又はPHe/PN2が上記の範囲より低いと、得られる非対称ガス分離膜のガス選択透過性(分離度)とガス透過速度が十分でなくなるので、上記の範囲が適当である。
ポリイミドAをなすフッ素原子を含有したジアミン成分としては、特に限定するものではないが、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2−トリフルオロメチル−p−フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
これらのフッ素原子を含有した原料成分は単独でもよいが、異なる2種の混合物でもよく、フッ素原子を含有しないモノマー成分と組合せても構わない。また、ポリイミドAをなす原料成分は、テトラカルボン酸成分又はジアミン成分のいずれかがフッ素原子を含有する原料成分を主成分(50モル%以上通常55モル%以上)とすることが好適である。
化学構造にフッ素原子を含むポリイミドは比較的に機械的強度が低いことから、ポリイミドBをなすモノマー成分においては、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分のいずれにも少なくとも主成分としてはフッ素原子を含まないこと、好ましくはフッ素原子を全く含まないことが好適である。
これらのテトラカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、異なる2種類以上の混合物を用いてもよく、更にその混合物にはフッ素原子含有テトラカルボン酸成分を少量含んでも構わない。例えば、s−BPDA1モル部に対して0.3モル部以下の6FDAを組合せて用いても構わない。
ポリイミドBのジアミン成分としては、前記ポリイミドAをなす原料成分の説明において、例示したジアミンを好適に用いることができる。
工程1では、数式1を満たす数平均重合度NAとNBとをそれぞれが有する、化学構造にフッ素原子を含むポリイミドAの原料成分及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなるポリイミド成分Aと、ポリイミドBの原料成分及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなるポリイミド成分Bとを混合して多成分ポリイミドの混合溶液を調製する。数式1を満たすNAとNBとの組合せの範囲を図4のグラフに斜線領域として示す。なお、ポリイミドの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)の重合度を0.5と定義したから、NA及びNBは当然0.5以上である。
次いで、工程2では、この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに重合イミド化反応させる。この結果、前記ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとがさらに重合イミド化反応した混合物であって、少なくともポリイミド成分Aからなる重合体と、ポリイミド成分Bからなる重合体に加えて、ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとが互いの末端で結合したジ又はマルチブロック共重合体を含有し且つ適当な重合度を持った多成分ポリイミドの混合液を得ることができる。
ここで、ジブロック共重合体とは、ポリイミド成分Aからなるブロックとポリイミド成分Bからなるブロックの各1個が互いの末端で結合した共重合体をいい、マルチブロック共重合体は前記ジブロック共重合体の末端に前記2種のブロックが更に1個以上結合した共重合体をいう。ジ又はマルチブロック共重合体には、ポリイミド成分Aからなるブロックが連続して結合した部分やポリイミド成分Bからなるブロックが連続して結合した部分も存在し得る。
工程1で図4のA領域のNAとNBとの組合せからなる多成分ポリイミドの混合溶液を調製し、工程2でさらに重合イミド化反応すると、生成ポリマーを平均して見たときに、ポリイミド成分Aのみからなるブロックやポリイミド成分Bのみからなるブロックが形成されず、ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bが平均化されたランダム性が極めて高い共重合体しか得ることができない。
工程1で図4のB領域のNAとNBとの組合せからなる多成分ポリイミドの混合溶液を調製し、工程2でさらに重合イミド化反応すると、ブロック共重合体を含む多成分ポリイミドの混合液を得ることができるかも知れないが、その重合度が大きくなるために、各ポリイミド間の反発的相互作用が大きくてマクロ相分離が容易に生じる。このため、図4のA領域及びB領域のNAとNBとの組合せでは本発明の非対称膜を得ることはできない。
例えば、テトラカルボン酸成分として6FDAを用い、ジアミン成分としてTSNを用いた場合、6FDA1モル部に対してTSNを1.02モル部となる組成で190℃にて30時間脱水閉環反応を行った場合、数平均分子量が15000〜25000程度(数平均重合度が20〜40程度)のポリイミドを合成することができる。また6FDA1モル部に対してTSNを1.005モル部となる組成で190℃にて30時間脱水閉環反応を行った場合、数平均分子量が30000〜40000程度(数平均重合度が40〜60程度)のポリイミドを合成することができる。
例えば、テトラカルボン酸成分として6FDAを用い、ジアミン成分としてDABAを用いた場合、6FDA1モル部に対してDABAを1.02モル部となる組成で190℃にて30時間脱水閉環反応を生じせしめた場合、数平均分子量が15000〜25000程度(数平均重合度が25〜45程度)のポリイミドを合成することができる。また6FDA1モル部に対してDABAを1.005モル部となる組成で190℃にて30時間脱水閉環反応を生じせしめた場合、数平均分子量40000〜50000程度(数平均重合度が70〜90程度)のポリイミドを合成することができる。
多成分ポリイミドの調製後に、外観上明らかに濁りを生じるような溶媒を用いると、本発明で製造される高いガス処理能力を有するガス分離膜を得ることができない。
このような極性溶媒として、特に限定はないが、フェノール、クレゾール、キシレノール等のようなフェノール類、2個の水酸基をベンゼン環に有するカテコール類、3−クロルフェノール、4−クロルフェノール(以下、PCPと略記することもある)、4−ブロムフェノール、2−クロル−5−ヒドロキシトルエンなどのハロゲン化フェノール類などのフェノール系溶媒、または、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、あるいはそれらの混合物が好適である。
ノズルから吐出させる多成分ポリイミドの混合溶液の溶液粘度は、前述のとおり、吐出温度(例えば100℃)で20〜17000ポイズ、好ましくは100〜15000ポイズ、特に200〜10000ポイズとなるようなポリイミド溶液が中空糸状などの吐出後の形状を安定に得ることができるので好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状などの膜の形状が保持できる程度に凝固した後、案内ロールに巻き取られ、次いで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固した膜の乾燥は炭化水素などの溶媒を用いて凝固液と置換した後乾燥する方法が効率的である。加熱処理は用いられている多成分のポリイミドの各成分ポリマーの軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施されることが好ましい。
この混合溶液が相転換法による製膜工程で相分離するときに、ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとが互いの末端で結合したジ又はマルチブロック共重合体が互いに非相溶なポリイミド成分Aからなる重合体とポリイミド成分Bからなる重合体との一種の界面活性剤的な機能をすることで、あるいは別の表現をすれば、ポリイミド成分Aからなるドメインとポリイミド成分Bからなるドメインとの界面に前記ジ又はマルチブロック共重合体が分布することで、異種ドメイン間の反発的相互作用を遮蔽して、マクロ相分離を抑制し、望ましいミクロ相分離を生じさせることができる。
一方、通常の重合法によって得られたポリイミドドープを、ガラス板上に流延し乾燥させて得た均一なフィルムについての同様の分析結果を図6に示す。ここでは、表面付近のフッ素濃度分布に大きな傾斜構造は観察されない。
中空糸としての引張破断伸びが15%未満では、中空糸膜を加工してモジュール化するときに容易に破断や破損するので、工業的にモジュール化できないから実用的ではない。中空糸としての引張破断伸びが15%以上では、工業的にモジュール化するのが容易になるから実用的である。また中空糸としての引張破断伸びが15%未満では、使用中(特に高圧ガスを供給したりする場合)に中空糸の切断が起こり易くなり、使用条件が限定されるから実用的ではない。
また、本発明のガス分離膜は、通常の方法でモジュール化して好適に用いることができる。中空糸ガス分離膜の分離膜モジュールは、例えば、適当な長さの中空糸膜100〜200000本程度を束ね、その中空糸束の両端部を中空糸の端部が開口状態を保持した状態で熱硬化性樹脂などからなる管板で固着し、得られた中空糸束と管板などからなる中空糸膜エレメントを、少なくとも混合ガス導入口と透過ガス排出口と非透過ガス排出口とを備える容器内に、中空糸膜の内側に通じる空間と中空糸膜の外側へ通じる空間とが隔絶するように収納し取り付けることによって得られる。このようなガス分離膜モジュールでは、混合ガスが混合ガス導入口から中空糸膜の内側あるいは外側に接する空間へ供給され、中空糸膜に接して流れる間に混合ガス中の特定成分が選択的に膜を透過し、透過ガスが透過ガス排出口から、膜を透過しなかった非透過ガスが非透過ガス排出口からそれぞれ排出されることによって、ガス分離が行われる。
本発明においてGPC測定は以下のようにして行った。日本分光工業株式会社製800シリーズHPLCシステムを用い、カラムはShodex KD−806Mを1本、カラム部温度は40℃、検出器は未知試料用としてインテリジェント紫外可視分光検出器(吸収波長350nm)、標準物質用として示差屈折計(標準物質はポリエチレングリコール)を使用した。溶媒は塩化リチウム及びリン酸を各々0.05モル/L含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を使用し、溶媒の流速は0.5mL/分、サンプルの濃度は約0.1%とした。データの取り込み及びデータ処理はJASCO−JMBS/BORWINを用い行なった。データの取り込みは2回/秒行ない、試料のクロマトグラムを得た。一方、標準物質として分子量82,250、28,700、6,450、1,900のポリエチレングリコールを使用し、これらのクロマトグラムからピークを検出し、保持時間と分子量の関係を示す校正曲線を得た。未知試料の分子量解析は、校正曲線から各保持時間における分子量Miを各々求め、また、各保持時間におけるクロマトグラムの高さhiの合計に対する分率Wi=hi/Σhiを求め、それらをもとに数平均分子量Mnは1/{Σ(Wi/Mi)}から、重量平均分子量MwはΣ(Wi・Mi)から求めた。
数平均重合度Nは、重合時の仕込み割合に応じて平均化したモノマー単位分子量<m>で数平均分子量Mnを除して求めた。
ここで、特定元素jの原子濃度φjは、ポリイミドに含まれる検出可能な(水素原子とヘリウム原子は検出できない)各元素の原子数をNi(下付きの添え字は元素の種類を表す)とし、特定の元素jの原子数をNjとして、下記数式で表されるものである。
また、光電子の運動エネルギーEkから電子の物質原子中における束縛エネルギーEbが、下記数式で求められる。
この束縛エネルギーの値は、元素と電子軌道によりほぼ決まった値をとるので、照射X線のエネルギーを適当に選択すれば、原理的には全元素の検出が可能なはずである。しかしながら、各軌道の電子がX線によって励起される確率(光イオン化断面積)が小さい水素とヘリウムに関しては、実際には観測できない。
ポリイミドに含まれる特定の元素jのl軌道からX線照射によって放出された光電子の強度Ijは下記数式で示される。
光イオン化断面積σj l、非弾性散乱平均自由行程λj lの値は公知である。Aj lは装置と測定条件から決まる値である。Rの値はサンプルによって異なるが、強度比を取ると消える値であるため、後述する原子濃度の算出には必要ない。
なお、相対感度Sjは原子濃度が既知である基準物質等を用いて別途決定することができる。相対感度Sjとして、XPSの装置メーカーなどから提供されている相対感度S’jを便宜的に用いることがあるが、本発明においては、単一組成からなる、換言すれば1種類のテトラカルボン酸成分と1種類のジアミン成分からなるホモポリイミド(原子濃度が既知)を用いて相対感度を決定した。
すなわち、単一組成のポリイミド(1種類のテトラカルボン酸成分と1種類のジアミン成分からなるホモポリイミド)からなるサンプルについては、表面原子濃度φs,jの値と該ポリイミドにおける平均の原子濃度の値fjがほぼ一致することが期待されるが、表面原子濃度φs,jを求める際に用いる相対感度Sjとして、XPSの装置メーカーなどから提供されている相対感度係数を装置関数で補正した相対感度S’jをそのまま用いた場合、φs,jとfjの間にしばしばズレが生じる。これは前記相対感度S’jが、ポリイミド以外の他の標準物質を用いて実験的に決められた値であることによる。このためポリイミド材料の表面原子濃度を求める際の相対感度Sjは、単一組成のホモポリイミドからなるサンプルを用いたときの表面原子濃度φs,jと平均の原子濃度fjが一致するように、S’jを補正した値を用いた。すなわち、本発明の相対感度Sjは、下記数式で示される。
本発明においては前記補正係数を元素ごとに測定して求め、その補正係数で補正した相対感度Sjを用いた。
本発明において、光電子の強度Ijは、XPS測定の結果得られる光電子スペクトルについて、光電子ピークの面積から求めた。光電子ピークのうち、比較的に光イオン化断面積の大きい遷移に関するものが好適に利用される。通常は光イオン化断面積の値が炭素1s軌道の値の10%より高い遷移に関する光電子ピークが好適に利用される。本発明では、フッ素に関しては1s軌道からの光電子ピークを好適に利用でき、例えば炭素に関しては1s軌道、窒素に関しては1s軌道、酸素に関しては1s軌道、硫黄に関しては2p軌道から放出された光電子ピークを好適に利用できた。
また、光電子スペクトルは、光電子が試料から真空中へ脱出する過程で非弾性散乱を起こすことにより生じたバックグラウンドを含んでいる。このため、原子濃度の決定に利用する各光電子ピークについて、前記のバックグラウンドを差し引いた後に求めた残りの面積をIjとした。
また、光電子の放出によりポリイミド表面が帯電するため、電子線照射などによる試料表面電荷の中和が好適に採用された。
XPSの測定においては、試料表面から測った光電子の取り出し角度(エミッション角)θに応じて、XPSで測定される厚みが変化する。XPSで検出される光電子の95%は試料表面から測った厚み3λj lsinθの範囲から放出されたものである。θの値には、測定が可能な範囲であれば特に制限はないが、45°などが好適に利用される。分析される厚みとしては試料表面から数nmの厚みの範囲となる。このためXPSで測定された原子濃度は表面から数nmの厚みの範囲における表面原子濃度φs,jである。
本発明において、膜全体における平均のフッ素原子濃度(f)は、前記数式に基づいて算出されたものである。
(ポリイミドフィルムの作製)
ポリイミド溶液は、溶液粘度が100℃で50〜1000ポイズになるように調製し、400メッシュ金網を用いて濾過し、引き続き100℃で静置により脱泡した。このポリイミド溶液を50℃でガラス板上に0.5mmまたは0.2mmのドクターナイフを用いて流延し、オーブン中100℃で3時間加熱し溶媒を蒸発させ、更にオーブン中300℃で1時間加熱処理をおこないヘリウムガス透過係数の測定サンプルとなるポリイミドフィルムを得た。
(ヘリウムガス透過係数(PHe)、窒素ガス透過係数(PN2)、及びヘリウムガスと窒素ガスの透過係数比(PHe/PN2)の測定方法)
ヘリウムガス透過係数の測定は高真空タイムラグ法によりおこなった。即ち、前記ポリイミドフィルムを透過セルに装着し80℃にした後、真空ポンプにて10−5torrの高真空とし、その後フィルムの1次側にヘリウムガスで2.5kgf/cm2Gの圧力をかけ、透過したガスによる2次側圧力上昇の時間に対する変化を求め、フィルムの厚さ、有効面積、2次側体積、1次圧等からポリイミドフィルムのヘリウムガス透過係数(PHe)を算出した。窒素ガス透過係数(PN2)も同一のポリイミドフィルムを用い、同様の方法によってヘリウムガスの代わりに窒素ガスを用いて測定した。ヘリウムガスと窒素ガスの透過係数比(PHe/PN2)は、前記方法で求めたヘリウムガス透過係数(PHe)と窒素ガス透過係数(PN2)から算出した。
15本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が10cmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。それに一定圧力のヘリウムガスを供給して透過流量を測定した。測定した透過ヘリウムガス量と供給圧力及び有効膜面積からヘリウムガスの透過速度を算出した。窒素ガスの透過速度も同様にして測定した。尚、これらの測定は80℃でおこなった。
引張試験機を用いて有効長20mm、引張速度10mm/分で測定した。測定は23℃でおこなった。中空糸断面積は中空糸の断面を光学顕微鏡で観察し、光学顕微鏡像から寸法を測定して算出した。
ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec−1)を用い温度100℃で測定した。
X線光電子分光はPHI社製Quantum2000走査型X線光電子分光装置を用いて行った。照射X線として単色化したAlKα線を用いた。測定には照射径20μmφのX線を用いた。エミッション角は45°とし、試料表面の帯電を抑えるために電子中和銃を使用した。炭素1s軌道、窒素1s軌道、酸素1s軌道、フッ素1s軌道、硫黄2p軌道からの光電子ピークについて、バックグランドを除去した後にピーク面積を測定した。ピーク面積から原子濃度を求めるに当り、前記光電子ピークの処理や、原子濃度の算出にはPHI社製ソフトウェアMultipak version 6.1A(1999)を用いた。各光電子ピークについて、PHI社から提供された相対感度係数ASFjに、前記装置の装置関数(分光器の透過関数)による補正を行った相対感度S’jの値を下記表1に示す。なお、表中のS’jの値はフッ素1sに対する値を1として表示したものである。
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、6FDAと略記することもある)12.44gと、ジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド(以下、TSNと略記することもある)4.92gと3,5−ジアミノ安息香酸(以下、DABAと略記することもある)1.64gを、溶媒のパラクロロフェノール(以下、PCPと略記することもある)102gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で31時間重合イミド化し、回転粘度が446ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。
このポリイミド溶液から得られたポリイミドフィルムのヘリウムガスの透過係数(PHe)は1.1×10−8cm3(STP)・cm/cm2・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は37であった。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)12.36gと、TSN11.35gを、溶媒のPCP165gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で25時間重合イミド化し、回転粘度が600ポイズ、ポリマー濃度が11.8重量%のポリイミド溶液を得た。
このポリイミド溶液から得られたポリイミドフィルムのヘリウムガスの透過係数(PHe)は2.2×10−9cm3(STP)・cm/cm2・sec・cmHgで、ヘリウムガスと窒素ガスとの透過係数比(PHe/PN2)は110であった。またこのポリイミドフィルムの引張破断強度は260MPa、ヤング率5925MPa、破断伸び24%であった。
以下の例で用いた非対称中空糸膜の製造方法は、乾湿式紡糸法によっておこなった。具体的には、ポリイミド溶液、又はポリイミド混合溶液を、400メッシュの金網で濾過したあと、温度71℃で中空糸紡糸ノズル(円形開口部外径1000μm、円形開口部スリット幅200μm、芯部開口部外径400μm)から吐出させ、吐出した中空糸状体を窒素雰囲気中に通した後、0℃の75重量%エタノール水溶液からなる凝固液に浸漬し湿潤糸とした。これを50℃のエタノール中に2時間浸漬し脱溶媒処理を完了し、更に、70℃のイソオクタン中に3時間浸漬洗浄して溶媒を置換後、100℃絶乾状態で30分間乾燥し、その後300℃〜320℃の温度で1時間の熱処理を行った。更に、中空糸膜の表面の滑りを整えるためにシリコンオイルでオイリング処理を施し中空糸膜を製造した。得られた中空糸膜はいずれも、大略、外径寸法400μm、内径寸法200μm、膜厚100μmのものであった。
s−BPDA12.36gとTSN11.35g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが0.985モル部、B/A=0.985)を、溶媒のPCP165gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で22時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.8重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、74であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとTSN5.21gとDABA1.73g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.085モル部)を溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で8時間重合イミド化し、回転粘度が2046ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、41であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA12.36gとTSN11.35gを、溶媒のPCP169gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.6重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、75であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとTSN4.17gと3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、MASNと略記することもある)3.77gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で8時間重合イミド化し、回転粘度が1693ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、41であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA12.71gと6FDA12.79gとTSN16.20gとMASN3.67g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.025モル部)を、溶媒のPCP195gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で54時間重合イミド化し、回転粘度が1097ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。
このポリイミド溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
この例は原料組成が実施例2とほぼ同じであるが、Φs/fが1.02であり、引張破断伸びは7%と低いものであった。
s−BPDA6.36gと6FDA12.79gとTSN8.10gとMASN3.67gとDABA1.12gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15.0重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、31であった。このポリイミド溶液へs−BPDA6.36gとTSN6.07gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1246ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分のポリイミド溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、46であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA12.36gとTSN11.35gを、溶媒のPCP165gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.8重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、76であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとTSN2.08gとMASN3.77gとDABA1.16gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で30時間重合イミド化し、回転粘度が911ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA12.71gとTSN12.15gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が12.0重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、79であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.79gとTSN2.02gとMASN3.67gとDABA1.12gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で10時間重合イミド化し、回転粘度が1767ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、73であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA6.36gとTSN6.07gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が6.4重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、57であった。このポリイミド溶液へs−BPDA6.36gと6FDA12.79gとTSN8.10gとMASN3.67gとDABA1.12gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1507ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、50であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA12.71gと6FDA12.79gとTSN14.17gとMASN3.67gとDABA1.12gを、溶媒のPCP191gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で73時間重合イミド化し、回転粘度が1190ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、49であった。
このポリイミド溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
この例は原料組成が実施例6とほぼ同じであるが、Φs/fが1.04であり、引張破断伸びは7%と低いものであった。
6FDA12.44gとDABA4.37gを、溶媒のPCP155gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度120℃で2時間反応し、ポリマー濃度が9.8重量%のポリイミドA溶液を得た。この反応溶液の数平均重合度を求めるため、反応液の一部をスライドグラス上に流延しエタノールへ浸漬凝固させ、更に十分溶媒置換してPCPを除去し、室温にて真空乾燥を5時間行ない、FT−IR分析の試料とした。イミド化率の測定は上記の方法で行ない、0.63であった。更にこの値から数平均重合度NAを計算すると、2.7であった。
次に、この反応溶液へs−BPDA12.36gとTSN11.81gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに重合温度190℃で30時間重合し、回転粘度が1265ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、72であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
6FDA12.44gとDABA4.37gを、溶媒のPCP155gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度120℃で1時間反応し、ポリマー濃度が9.8重量%のポリイミドA溶液を得た。この反応溶液の数平均重合度を求めるため、反応液の一部をスライドグラス上に流延しエタノールへ浸漬凝固させ、更に十分溶媒置換してPCPを除去し、室温にて真空乾燥を5時間行ない、FT−IR分析の試料とした。イミド化率の測定は上記の方法で行ない、0.52であった。更にこの値から数平均重合度NAを計算すると、2.1であった。
次に、この反応溶液へs−BPDA12.36gとTSN11.81gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに重合温度190℃で30時間重合し、回転粘度が1469ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、78であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
6FDA23.10gとTSN3.66gとMASN6.62gとDABA2.03gを溶媒のPCP153gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で6時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、4.9であった。
s−BPDA21.18gとTSN20.25gを、溶媒のPCP177gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で6時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、51であった。
次に前記ポリイミドA溶液88g及び前記ポリイミドB溶液110gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で13時間重合イミド化し、回転粘度が2232ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、62であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA21.18gとTSN20.25gを、溶媒のPCP177gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で0.5時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、6.0であった。
次に前記ポリイミドB溶液110g及び実施例9で得られた数平均重合度4.9のポリイミドA溶液88gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1376ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、57であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
6FDA23.10gとTSN3.66gとMASN6.62gとDABA2.03gを溶媒のPCP153gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で29時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、22であった。
s−BPDA21.18gとTSN20.25gを、溶媒のPCP177gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で0.25時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、4.5であった。
次に前記ポリイミド溶液A88g及び前記ポリイミド溶液B110gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で29時間重合イミド化し、回転粘度が1172ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
6FDA23.10gとTSN3.66gとMASN6.62gとDABA2.03gを溶媒のPCP153gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で0.5時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、2.76であった。
s−BPDA21.18gとTSN20.25gを、溶媒のPCP177gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で0.2時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、3.1であった。
次に前記ポリイミド溶液A88g及び前記ポリイミド溶液B110gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1618ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、78であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
s−BPDA6.36gとTSN6.07gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で5時間重合イミド化し、ポリマー濃度が6.4重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、7.4であった。このポリイミド溶液へs−BPDA6.36gと6FDA12.79gとTSN8.10gとMASN3.67gとDABA1.12gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で23時間重合イミド化し、回転粘度が1079ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、49であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
この例はNAとNBが数式1を満たすNAとNBの組合せ範囲外(図4のA領域)にあるものであり、Φs/fが1.07であり、引張破断伸びは8%と低いものであった。
s−BPDA12.36gとTSN11.35gを、溶媒のPCP158gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で30時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.8重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、75であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとMASN3.77gとMPD1.64gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で6時間重合イミド化し、回転粘度が1432ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、101であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
6FDA21.32gとTSN8.44gとDABA2.81gを溶媒のPCP129gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で40時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19.3重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、26であった。
s−BPDA27.41gとTSN22.22gとDADE1.80gを、溶媒のPCP210gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で40時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18.7重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、47であった。
次に前記ポリイミドA溶液90g及び前記ポリイミドB溶液100gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1711ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、52であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
この例はNAとNBが数式1を満たすNAとNBの組合せ範囲外(図4のB領域)にあるものであり、Φs/fが1.82であり、水素ガス透過速度(P’H2)と窒素ガス透過速度(P’N2)との比(P’H2/P’N2)が11であった。
6FDA26.65gとTSN10.49gとDABA3.49gを溶媒のPCP161gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で40時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19.3重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度NAを前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。
s−BPDA52.66gとTSN46.00gとDADE3.73gを、溶媒のPCP419gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で25時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18.7重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度NBを前記GPC測定方法によって測定したところ、66であった。
次に前記ポリイミドA溶液90g及び前記ポリイミドB溶液100gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに温度130℃で3時間攪拌混合し、回転粘度が2753ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、56であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて非対称膜を製造し、得られた非対称膜の特性を測定した。その結果を表3に示した。
この例はNAとNBが数式1を満たすNAとNBの組合せ範囲外(図4のB領域)にあり、且つ2種のポリイミド溶液を単に混合し重合イミド化反応は実質的に行わなかったものである。Φs/fが2.06であり、水素ガス透過速度(P’H2)と窒素ガス透過速度(P’N2)との比(P’H2/P’N2)が3であった。
このようなポリイミド非対称膜は、水素ガスとメタンガスなどの炭化水素ガスとの分離、水素ガスと窒素ガスとの分離、ヘリウムガスと窒素ガスとの分離、炭酸ガスとメタンガスなどの炭化水素ガスとの分離、酸素ガスと窒素ガスとの分離などを好適に行うことができる実用的な高性能ガス分離膜として好適である。
Claims (7)
- 緻密層と多孔質層とを有するポリイミド非対称膜であって、フッ素原子含有ポリイミドおよびフッ素原子を含まないポリイミドからなる多成分ポリイミドで形成され、且つX線光電子分光(XPS)で測定した緻密層のフッ素原子濃度(ΦS)と膜全体における平均のフッ素原子濃度(f)との比(ΦS/f)が1.1〜1.8であり、かつマクロ相分離を生じていないことを特徴とするポリイミド非対称膜。
- 請求項1に記載のポリイミド非対称膜からなるガス分離膜。
- 中空糸であって、水素ガス透過速度(P’H2)が4.0×10−4cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg以上、水素ガス透過速度(P’H2)と窒素ガス透過速度(P’N2)との比(P’H2/P’N2)が20以上、且つ中空糸としての引張破断伸びが15%以上である請求項2に記載のガス分離膜。
- 中空糸であって、ヘリウムガス透過速度(P’He)が4.0×10−4cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg以上、ヘリウムガス透過速度(P’He)と窒素ガス透過速度(P’N2)との比(P’He/P’N2)が20以上、且つ中空糸としての引張破断伸びが15%以上である請求項2に記載のガス分離膜。
- 請求項2に記載のガス分離膜の供給側に混合ガスを供給し、前記ガス分離膜の透過側へ混合ガスの少なくとも一種のガスを選択的に透過させることを特徴とする、混合ガスから前記少なくとも一種のガスを選択的に分離回収する方法。
- 請求項2に記載のガス分離膜の供給側に、水素ガスを含む混合ガスを供給し、前記ガス分離膜の透過側へ水素ガスを選択的に透過させることを特徴とする、水素ガスを含む混合ガスから水素ガスを選択的に分離回収する方法。
- 請求項2に記載のガス分離膜の供給側に、ヘリウムガスを含む混合ガスを供給し、前記ガス分離膜の透過側へヘリウムガスを選択的に透過させることを特徴とする、ヘリウムガスを含む混合ガスからヘリウムガスを選択的に分離回収する方法。
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