JP3696883B2 - 3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法に関する。
背景技術
3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する方法として、下記の2つの方法が知られている。
特開昭63−88157号公報に実施例12として記載された方法では、2,4,5−トリフルオロ安息香酸を濃硫酸と濃硝酸の存在下でニトロ化して2,4,5−トリフルオロ−3−ニトロ安息香酸を得る。得られた2,4,5−トリフルオロ−3−ニトロ安息香酸をラネーニッケルの存在下、加圧された水素で還元することにより、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する。しかし、この方法は、操作が煩雑であり、収率が低いと言う問題点を有している。
もう1つの方法では、出発原料として3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを用いて次の2段階工程で製造する。
▲1▼3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルをアミノ化して、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを製造する第1段工程。
▲2▼得られた4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルに対して、特開昭64−58号公報に記載されている、酸の存在下で加熱して加水分解反応と脱炭酸反応を同時に行う方法を適用して、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する第2段工程。
3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを出発原料とする上記方法では、第1段工程のアミノ化反応において、異性体である3−アミノ−4,5,6−トリフルオロフタロニトリルが多量に生成するため、出発原料から3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸までの収率が低い。また、異性体が多量に発生するため、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを単離精製する必要がある。単離精製する工程が必須である場合には、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルから3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸をワンポットで製造することは、反応操作、反応収率および製品純度の観点から種々の問題点を生じる。さらに、第2段工程においては、加水分解反応と脱炭酸反応を同時に行うので、発泡の制御や反応熱の制御が困難であるという問題点を有する。
発明の開示
発明の目的
本発明が解決しようとする課題は、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸(アミノ基がN−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基等のN−置換アミノ基の場合も含める)を、安価に、高収率で、しかも純度よく製造できる簡易な製造方法を提供することである。
発明の概要
本発明の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と、下記一般式(I):
NHR1R2 …(I)
(一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物(I)とを反応させて、下記一般式(II):
(一般式(II)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を含む反応液を得るアミノ化反応工程と、前記4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を加熱して脱炭酸することによって、下記一般式(III):
(一般式(III)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を得る脱炭酸反応工程とを含む。
前記アミノ化反応工程は、水性媒体中100〜250℃の温度で反応させる工程である。そして、前記脱炭酸反応工程は、pHを酸性域に調整し100〜230℃の温度で加熱して脱炭酸する工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の重炭酸塩およびアルカリ土類金属の重炭酸塩からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.01〜2モル含む反応工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、pHを4以下に調整して反応させる工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、硫酸を使用してpHを酸性域に調整し、加熱して脱炭酸する工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.01〜2モル含む反応工程であると好ましい。
前記一般式(I)、(II)および(III)中のR1およびR2がともに水素原子であると好ましい。
本発明の化合物は、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸である。
発明の詳細な説明
〔3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法〕
本発明の製造方法は、実質的に、次の各反応工程を経て進行する。
ステップ1:アミノ化反応工程(このアミノ化反応には、アミノ基の導入以外に、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基等の導入も含める。)
ステップ2:脱炭酸反応工程
前記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する)としては、アンモニア(R1およびR2がともに水素原子)、アルキルアミン(R1およびR2の一方が水素原子で他方がアルキル基)、ジアルキルアミン(R1およびR2がともにアルキル基)、アリールアミン(R1およびR2の一方が水素原子で他方がアリール基)等が挙げられる。アンモニアを用いた場合は3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、アルキルアミンを用いた場合は3−(N−アルキルアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、ジアルキルアミンを用いた場合は3−(N,N−ジアルキルアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、アリールアミンを用いた場合は3−(N−アリールアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、それぞれ3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸として得られる。前記アルキルアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン等の炭素原子数1〜12個のアルキル基を有するもの等が挙げられる。前記ジアルキルアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の炭素原子数1〜4個のアルキル基を有するもの等が挙げられる。前記アリールアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、ハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基を有するもの等が挙げられる。
前記アミノ化反応工程では、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を化合物(I)と反応させて、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸が得られる。
前記アミノ化反応工程では、通常、多量の化合物(I)を使用し、加熱条件下で行うので、なるべくは、耐圧性コンデンサーが設置された耐圧性の反応容器中で行うのが良い。
前記アミノ化反応工程では、化合物(I)自身を反応媒体として使用することもできるが、芳香族炭化水素類等の有機媒体または水性媒体の使用が好ましい。その際の化合物(I)の比率としては、必要に応じて添加する後述のアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の量によっても異なるが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり化合物(I)が3モル以上となるようにするのが好ましく、5〜18モルとするのが特に好ましい。アミノ化反応工程において化合物(I)の比率が低すぎると、反応速度が低下し、生産性が悪くなる。また、アミノ化反応工程において化合物(I)の比率が高すぎると、反応系の圧力が高まることにより高価な高耐圧性の容器が必要となるので、経済性の点で好ましくない。
前記アミノ化反応工程において、化合物(I)を反応容器に一括投入してもよく、化合物(I)を反応容器に徐々に加えてもよい。
本発明の製造方法で出発原料として使用される3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸は、例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解することによって得られる。この方法で得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸化合物の粗製物には、使用した硫酸や、副反応物として生成した硫酸アンモニウムが含まれているが、本発明では、このような粗製物をそのまま用いてアミノ化反応を行わせることができる。
本発明のアミノ化反応工程における、反応系への3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の仕込み濃度としては、10〜35重量%程度が生産性の点で望ましい。反応媒体としては水性媒体を用いることが特に好ましい。水性媒体は、水のみであってもよいが、場合によっては、水に対し、これに可溶の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどのグリコール類、ジメチルホルムアミドなどを加えて用いてもよい。
前記アミノ化反応工程における反応温度としては100〜250℃の範囲が好ましく、140〜200℃の範囲がより好ましい。反応温度が低すぎると、反応速度が低下し、生産性が悪くなる。また、反応温度が高すぎると、反応系の圧力が高まることにより高価な高耐圧性の容器が必要となって経済性の点で好ましくなく、また副反応が起こり易くもなるので、この面でも好ましくない。アミノ化反応における圧力としては、25kg/cm2以下が好ましく、17kg/cm2以下がより好ましい。
前記アミノ化反応工程においては、脱炭酸反応も一部進行し、目的物質である3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が少量生成するが、このことは何ら支障がない。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を添加して実行することが好ましい。特に、アルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。この場合に使用することのできるアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、特に限定する訳ではないが、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等がある。より具体的には、例えば、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸ストロンチウム、重炭酸バリウム等が挙げられる。
前記アミノ化反応工程で、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物(以下、アルカリ金属とアルカリ土類金属を「アルカリ(土類)金属」と総称する)を添加すると、反応時に、これらが、原料たる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩を生成する。また、中間生成物たる4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩をも生成する。同時に生成することがある3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩を生成することもある。遊離の化合物(I)も上記原料や中間生成物等と反応して塩を生成することができるが、反応系にアルカリ(土類)金属化合物が添加されると、アルカリ(土類)金属の塩の生成が優先するので、遊離の化合物(I)からの塩の生成が抑制され、遊離の化合物(I)が主にアミノ化反応に作用できることになる。そのため、アミノ化反応工程を実行する際にアルカリ(土類)金属化合物を添加すると、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸のアミノ化に必要な遊離の化合物(I)の比率を下げることができるようになり、化合物(I)による反応系の圧力を低下できるので、圧力釜の耐圧性を下げることができ、容器の設備費を安くすることができる。
アルカリ(土類)金属化合物の中では、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムが好ましく用いられる。水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを添加すると、アミノ化反応によって生成する化合物(I)のフッ化物をフッ化カルシウムとして沈澱させることができ、脱炭酸反応の前あるいは後に濾過などによりフッ素イオンを反応系から容易に分離することができるからである。
前記アミノ化反応工程でアルカリ(土類)金属化合物を添加したときには、系中に、例えば、下記のような化合物が生成する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ナトリウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カリウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸マグネシウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カルシウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ストロンチウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸バリウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸ナトリウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸カリウム塩、4−置換3,5,6−トリフルオロフタル酸マグネシウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸カルシウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸ストロンチウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸バリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ナトリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸カリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸マグネシウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸カルシウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ストロンチウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸バリウム塩。なお、これらの塩は、酸およびアルカリ(土類)金属化合物の種類によって、正塩、酸性塩または塩基性塩の形態となる。また、3−置換とは、3−アミノ;3−(N−メチルアミノ)、3−(N−エチルアミノ)等の3−(N−アルキルアミノ);3−(N,N−ジメチルアミノ)等の3−(N,N−ジアルキルアミノ);3−(N−フェニルアミノ)等の3−(N−アリールアミノ)等を表す。4−置換に関しても3−置換の場合と同様のものを表す。さらに、反応系中には化合物(I)が存在するので、これと上記塩との反応物である化合物(I)の炭酸塩、化合物(I)の重炭酸塩等も生成する。
前記アミノ化反応工程でアルカリ(土類)金属化合物を添加、存在させる場合の量は、特に限定する訳ではない。しかし、例えば、アルカリ(土類)金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩よりなる群から選ばれたものを存在させる場合は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり(但し反応生成物はすべて出発原料3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に換算する)、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の各々における総計で0.01〜2モルの範囲で存在させるのが好ましく、0.1〜1モルの範囲で存在させるのがより好ましい。アルカリ(土類)金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩よりなる群から選ばれたものの比率が多すぎると、ヒドロキシル化反応による副反応が起こりやすくなる。逆に少なすぎると、前述したような、化合物(I)の比率を下げる効果、または、フッ素イオンを反応系から容易に分離することができる効果が小さくなる。
前記アミノ化反応工程では、一般的に用いられる銅系触媒を添加して行うこともできる。その際用いられる銅系触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、金属銅、酸化第一銅、酸化第二銅、水酸化第一銅、水酸化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、硝酸第一銅、硝酸第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、炭酸第一銅、炭酸第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅等が挙げられる。これらの中でも、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅が好ましく、特に塩化第一銅が好ましい。銅系触媒は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり(但し反応生成物はすべて出発原料3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に換算する)、銅として総計で0.1〜20モルの範囲で存在させることが好ましく、2〜5モルの範囲がより好ましい。銅系触媒は、不活性担体上で使用することもできる。なお、銅系触媒は、次工程の脱炭酸反応工程にそのまま用いることができる。
アミノ化反応工程終了後、前述のアルカリ(土類)金属化合物の添加を行うことができる。アルカリ(土類)金属化合物の中では、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムが好ましく用いられる。水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを添加すると、アミノ化反応工程に添加した方法と同様に、アミノ化反応によって生成する化合物(I)のフッ化物をフッ化カルシウムとして沈殿させることができ、脱炭酸反応の前または後にろ過等によりフッ素イオンを反応系から容易に分離することができる。
本発明の製造方法において、脱炭酸反応工程は、前記アミノ化反応工程後、反応液のpHを酸性域に調整しておいて行うのが好ましい。反応液のpHを酸性域に調整する手法としては、特に限定はされないが、例えば、▲1▼反応系中に残存する遊離の化合物(I)を反応系から除去する方法、または、▲2▼反応系中に残存する化合物(I)を酸性物質で中和する方法、が好ましい。遊離の化合物(I)の除去方法としては、例えば、化合物(I)がアンモニアの場合、その圧力が適度に生じるだけの高温下、好ましくは100〜250℃の温度下において、反応系中からアンモニアガスを徐々に抜く方法である。この場合、バブリングする等の方法で窒素などの不活性ガスに同伴させて抜くこともできる。中和方法の場合は、例えば、硫酸水溶液などの酸性物質により遊離の化合物(I)を中和して化合物(I)の硫酸塩等とする方法がある。
前記脱炭酸反応工程では、アミノ化反応に用いた過剰の化合物(I)を除去するか中和することにより、pHを酸性域、特に4以下に調整し反応させるのが好ましい。このpH調整により、アミノ化反応工程後の中間生成物である前記4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸の一部または全てが遊離のカルボン酸として存在する。
前記脱炭酸反応工程は、必要に応じ適当な触媒存在下において、好ましくは100〜230℃の温度で反応液を加熱して行う。より好ましくは130℃〜190℃の温度で加熱して行う。その際に発生する炭酸ガスは、例えば、背圧弁などを用いて耐圧コンデンサーから逐次系外に抜くことができる。このことによって反応圧力を好ましくは15kg/cm2以下、より好ましくは10kg/cm2以下にすることができる。しかし、本発明では炭酸ガスを系内に封じ込めたまま反応を行っても構わない。
前記脱炭酸反応工程における、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸の反応液中における濃度は、特に限定する訳ではないが、10〜35重量%程度が生産性の点で望ましい。
前記脱炭酸反応工程を実行する際にも、やはり、前述のアルカリ(土類)金属化合物およびアンモニウム化合物の添加を行うことができる。この添加によっても、アミノ化反応工程におけると同様の各種化合物が生成する。ここで添加したアルカリ(土類)金属化合物、この添加により脱炭酸反応工程で生成した前述の化合物、または前述のアミノ化反応工程やpH調整工程で添加・生成した化合物は、脱炭酸反応の触媒として有効に作用する。例えば、硫酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、アルカリ(土類)金属の疏酸塩およびアルカリ(土類)金属のフッ化物が挙げられる。なお、この脱炭酸反応工程では助触媒を使用することもできる。助触媒としては、例えば、銅粉、酸化第一銅および酸化亜鉛などの一般的に脱炭酸反応に用いるものならばあらゆるものが使用できる。また、前述した、アミノ化反応で必要に応じて用いられる銅系触媒をそのまま助触媒として用いることもできる。
脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物およびアルカリ(土類)金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。特に、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび重炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程で、アンモニウム塩化合物およびアルカリ(土類)金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を添加、存在させる場合の量は、特に限定する訳ではないが、出発原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり総計で0.01〜2モルの範囲で存在させるのが好ましく、0.1〜1モルの範囲で存在させるのがより好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、次のように行うこともできる。アミノ化反応工程終了後、水酸化カルシウム、フッ化カルシウムをろ過し、反応液に適当量の硫酸を加えた後、加熱して脱炭酸する。脱炭酸反応時の硫酸濃度は、5〜75重量%で行うことができ、生産性の観点からは、30〜50重量%で行うのが好ましい。また、反応温度は、硫酸濃度により異なるが、100〜170℃で行うことができる。反応時間は、通常1〜24時間である。
脱炭酸反応終了後は、例えば、触媒としてアルカリ(土類)金属化合物を用いた場合、硫酸水溶液等の酸性物質で中和してアルカリ(土類)金属化合物をすべて該アルカリ(土類)金属と上記酸性物質との塩に変え、次いで、必要に応じて、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が溶解する温度以上で熱時濾過して上記塩を除去する。その後、室温まで冷却すると、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の沈澱物が得られる。この沈殿物は、例えば、一般的な方法である濾過などの手段によって水性媒体中から取り出すことができる。得られたケーキ中には水溶性無機化合物も僅かに残存しているので、これを精製除去する必要がある。この精製除去方法は単に水で洗浄すると言う方法であっても良い。この場合、濾液および洗浄水には3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が含まれているが、これは次回のアミノ化反応工程に再使用すると良い。この再使用によって3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が収率良く製造できる。さらに別の方法としては、例えば、硫酸などの酸性物質で中和後、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどの有機酸エステル類などの有機溶媒で水性媒体中から−3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を抽出する方法がある。抽出後、溶媒を蒸発乾固によって除去すると、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を取り出すことができる。
本発明の製造方法は、前記アミノ化反応工程で3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と化合物(I)とを反応させてアミノ化反応を行った後、前記脱炭酸反応工程で反応系を加熱して脱炭酸を行うと、アミノ化反応工程において異性体の副生がほとんどないため、このアミノ化反応で得られる4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を単離することなく次の脱炭酸反応工程を行うことが可能になり、いわゆるワンポットで3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造することが可能になる。しかも、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率かつ高純度で製造することが可能になる。
本発明で得られるの3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸は、高分子材料、農薬、医薬品等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料として特に有用である。
〔4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸〕
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、新規な化合物である。本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、前述の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法のアミノ化反応工程において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸とアンモニアとを反応させることによって、簡易な操作で工業的に安価に、しかも高収率で純度よく得ることができる。
前記アミノ化反応工程後の反応液から4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を単離・精製する方法は、特に限定されないが、例えば、硫酸等の無機酸を加え析出させ、ろ過し乾燥する方法;硫酸等を加えた後、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等の有機酸エステル類などを用いて抽出した後、蒸発乾固する方法等がある。
また、本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を製造する別の方法としては、例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを水難溶性の有機溶媒に溶解し、得られた有機層とアンモニア水との2層反応によりアミノ化して4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを得た後、さらに、硫酸水溶液等で加水分解することにより4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を得る方法がある。
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する際の中間体として有用である。さらに、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、高分子材料、農薬、医薬品等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「%」は、「重量%」を示す。
−実施例1−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.28g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去した。冷却後過剰量のアンモニアを硫酸水溶液で中和し、酢酸エチルを用いて有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発除去し、後に残った固形物を乾燥してから、カラム精製を行って、化合物A(17.2g)および化合物B(1.8g)が得られた。
化合物Aについて、以下に示すように、19F−NMR、元素分析および赤外線吸収スペクトルを測定した。
19 F−NMR
化合物Aをアセトン−d6に溶かし、CF3COOHを内部標準物質として使用して測定した。−63.3ppm、−64.5ppmおよび−79.4ppmにピークを観測し、以下のようにピークを帰属した。
元素分析
化合物Aについて元素分析を行い、以下の結果が得られた。
元素分析値:C8H4F3NO4
赤外線吸収スペクトル
化合物AをKBr錠剤にして測定した。3482cm-1、3382cm-1、3006cm-1および1716cm-1に吸収ピークを観測し、以下のように帰属した。第1図に赤外線吸収スペクトル図を示す。
3482cm-1、3382cm-1(アミノ基、ν−N−H)
3006cm-1(ヒドロキシ基、ν−O−H)
1716cm-1(カルボニル基、>C=O)
以上の19F−NMR、元素分析および赤外線吸収スペクトルから、化合物Aは4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸であることが確認された。
同様の分析方法によって、化合物Bは3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸であると確認された。なお、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する両化合物の収率は98.3モル%であった。
−実施例2−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)およびアンモニア14g(0.82モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、168〜172℃で12時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は15〜16kg/cm2であった。室温に冷却した後、反応物を取り出し、これに、pHが2になるまで硫酸水溶液を加え、その後、液体クロマトグラフィで反応生成物の分析を行った。その結果、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸が16.8gおよび3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が2.1g(両化合物の対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率98.2モル%)得られていることが判明した。なお、異性体である3−アミノ−4,5,6−トリフルオロフタル酸は、反応生成物中1%以下であることが19F−NMRから判明した。
−実施例3−
実施例2と同様にしてアミノ化反応を行い、引き続いて7gのアンモニアガスを徐々に抜き、さらに30%の硫酸水溶液12gを加えてpHを4.0に調整した。なお、pH調整後の反応溶液中には、有機酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム、フッ化アンモニウムが存在する。それらの存在下、156〜158℃で12時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて8kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、30%の硫酸水溶液27gを加えて反応生成物を中和し、その後、酢酸エチルを用い、有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発除去し、後に残った固形物を乾燥することにより、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸15.1g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率94.1モル%、純度98.8%)を得た。
−実施例4−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、さらに30%硫酸水溶液6.9gを加えてpHを2.5に調整した。その後、このpH調整で得られた有機酸アンモニウム(0.041モル)、硫酸アンモニウム、2.8g(0.021モル)およびフッ化カルシウム3.2g(0.041モル)存在下、148〜152℃で24時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて6kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、30%硫酸水溶液を加えて中和し、その後、熱時濾過により、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムなどの固形物を除去した。冷却後、析出した3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸をを濾過、水洗、乾燥することにより、白色の3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.5g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率84.1モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例5−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム6.28g(0.084モル)およびアンモニア7.2g(0.42モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜160℃で20時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は6〜7kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス4.8g(0.28モル)を徐々に抜き、さらに30%硫酸水溶液19.6gを加えてpHを2.0に調整した。その後、pH調整で得られた有機酸カルシウム(0.041モル)、硫酸カルシウム5.7g(0.042モル)硫酸アンモニウム、2.4g(0.018モル)およびフッ化カルシウム3.2g(0.041モル)存在下、158〜165℃で20時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて6kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、30%硫酸水溶液を加えて中和し、その後、熱時濾過により、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムなどの固形物を除去した。冷却後、析出した3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を濾過、水洗、乾燥することにより、白色の3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.2g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率88.5モル%、純度99.5%)を得た。なお、濾液中には3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が1.4g含有されていることが判明した。これは、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する収率分として8.7モル%に相当する。
−実施例6−
実施例5において、水酸化カルシウム6.28g(0.084モル)の代わりに水酸化カルシウム3.28g(0.043モル)および水酸化ナトリウム1.78g(0.042モル)を仕込んだ以外は実施例5と同様の条件でアミノ化反応および脱炭酸反応を行った。その結果、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.6g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率84.8モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例7−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸40gを加え、115℃で5時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥しして、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.0g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率87.2モル%、純度99.2%)を得た。
−実施例8−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.8g(0.46モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸60gを加え、125℃で3時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥しして、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.8g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率86.0モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例9−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーおよび滴下装置が設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液60gを仕込み、150〜152℃に加熱した。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)およびアンモニア2.9g(0.17モル)を含有する水溶液40gを滴下装置に入れ、オートクレーブ内に20時間かけて滴下した。滴下終了後、圧力10〜12kg/cm2でさらに4時間アミノ化反応を行った。引き続いて、アンモニアガス7.8g(0.46モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸60gを加え、125℃で5時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥してて、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.2g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率88.0モル%、純度99.1%)を得た。
産業上の利用可能性
本発明によれば、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率で、純度良く、しかも工業的に簡易かつ安価な方法で製造することができる。これは、本発明の方法では、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を化合物(I)と反応させてアミノ化した後、引き続き脱炭酸することにより、アミノ化された中間体を単離することなく、ワンポットで、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が得ることができるからである。また、この方法によれば、異性体などの副生成物ができにくいために、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率でかつ純度良く製造できるからでもある。
この方法で得られる3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸は、高分子材料、農薬、医薬等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料に使用される。
また、本発明によれば、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を合成するのに適した中間体であり、新規な化合物である、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を得ることができる。
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、高分子材料、農薬、医薬等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料に使用される。
本発明は、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法に関する。
背景技術
3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する方法として、下記の2つの方法が知られている。
特開昭63−88157号公報に実施例12として記載された方法では、2,4,5−トリフルオロ安息香酸を濃硫酸と濃硝酸の存在下でニトロ化して2,4,5−トリフルオロ−3−ニトロ安息香酸を得る。得られた2,4,5−トリフルオロ−3−ニトロ安息香酸をラネーニッケルの存在下、加圧された水素で還元することにより、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する。しかし、この方法は、操作が煩雑であり、収率が低いと言う問題点を有している。
もう1つの方法では、出発原料として3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを用いて次の2段階工程で製造する。
▲1▼3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルをアミノ化して、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを製造する第1段工程。
▲2▼得られた4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルに対して、特開昭64−58号公報に記載されている、酸の存在下で加熱して加水分解反応と脱炭酸反応を同時に行う方法を適用して、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する第2段工程。
3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを出発原料とする上記方法では、第1段工程のアミノ化反応において、異性体である3−アミノ−4,5,6−トリフルオロフタロニトリルが多量に生成するため、出発原料から3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸までの収率が低い。また、異性体が多量に発生するため、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを単離精製する必要がある。単離精製する工程が必須である場合には、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルから3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸をワンポットで製造することは、反応操作、反応収率および製品純度の観点から種々の問題点を生じる。さらに、第2段工程においては、加水分解反応と脱炭酸反応を同時に行うので、発泡の制御や反応熱の制御が困難であるという問題点を有する。
発明の開示
発明の目的
本発明が解決しようとする課題は、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸(アミノ基がN−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基等のN−置換アミノ基の場合も含める)を、安価に、高収率で、しかも純度よく製造できる簡易な製造方法を提供することである。
発明の概要
本発明の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と、下記一般式(I):
NHR1R2 …(I)
(一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物(I)とを反応させて、下記一般式(II):
(一般式(II)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を含む反応液を得るアミノ化反応工程と、前記4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を加熱して脱炭酸することによって、下記一般式(III):
(一般式(III)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を得る脱炭酸反応工程とを含む。
前記アミノ化反応工程は、水性媒体中100〜250℃の温度で反応させる工程である。そして、前記脱炭酸反応工程は、pHを酸性域に調整し100〜230℃の温度で加熱して脱炭酸する工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の重炭酸塩およびアルカリ土類金属の重炭酸塩からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.01〜2モル含む反応工程であると好ましい。
前記アミノ化反応工程は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、pHを4以下に調整して反応させる工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、硫酸を使用してpHを酸性域に調整し、加熱して脱炭酸する工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.01〜2モル含む反応工程であると好ましい。
前記一般式(I)、(II)および(III)中のR1およびR2がともに水素原子であると好ましい。
本発明の化合物は、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸である。
発明の詳細な説明
〔3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法〕
本発明の製造方法は、実質的に、次の各反応工程を経て進行する。
ステップ1:アミノ化反応工程(このアミノ化反応には、アミノ基の導入以外に、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基等の導入も含める。)
ステップ2:脱炭酸反応工程
前記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する)としては、アンモニア(R1およびR2がともに水素原子)、アルキルアミン(R1およびR2の一方が水素原子で他方がアルキル基)、ジアルキルアミン(R1およびR2がともにアルキル基)、アリールアミン(R1およびR2の一方が水素原子で他方がアリール基)等が挙げられる。アンモニアを用いた場合は3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、アルキルアミンを用いた場合は3−(N−アルキルアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、ジアルキルアミンを用いた場合は3−(N,N−ジアルキルアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、アリールアミンを用いた場合は3−(N−アリールアミノ)−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が、それぞれ3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸として得られる。前記アルキルアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン等の炭素原子数1〜12個のアルキル基を有するもの等が挙げられる。前記ジアルキルアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の炭素原子数1〜4個のアルキル基を有するもの等が挙げられる。前記アリールアミンとしては、特に限定はされないが、たとえば、ハロゲン原子、アルキル基等の置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基を有するもの等が挙げられる。
前記アミノ化反応工程では、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を化合物(I)と反応させて、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸が得られる。
前記アミノ化反応工程では、通常、多量の化合物(I)を使用し、加熱条件下で行うので、なるべくは、耐圧性コンデンサーが設置された耐圧性の反応容器中で行うのが良い。
前記アミノ化反応工程では、化合物(I)自身を反応媒体として使用することもできるが、芳香族炭化水素類等の有機媒体または水性媒体の使用が好ましい。その際の化合物(I)の比率としては、必要に応じて添加する後述のアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の量によっても異なるが、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり化合物(I)が3モル以上となるようにするのが好ましく、5〜18モルとするのが特に好ましい。アミノ化反応工程において化合物(I)の比率が低すぎると、反応速度が低下し、生産性が悪くなる。また、アミノ化反応工程において化合物(I)の比率が高すぎると、反応系の圧力が高まることにより高価な高耐圧性の容器が必要となるので、経済性の点で好ましくない。
前記アミノ化反応工程において、化合物(I)を反応容器に一括投入してもよく、化合物(I)を反応容器に徐々に加えてもよい。
本発明の製造方法で出発原料として使用される3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸は、例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを硫酸水溶液中で加水分解することによって得られる。この方法で得られる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸化合物の粗製物には、使用した硫酸や、副反応物として生成した硫酸アンモニウムが含まれているが、本発明では、このような粗製物をそのまま用いてアミノ化反応を行わせることができる。
本発明のアミノ化反応工程における、反応系への3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸の仕込み濃度としては、10〜35重量%程度が生産性の点で望ましい。反応媒体としては水性媒体を用いることが特に好ましい。水性媒体は、水のみであってもよいが、場合によっては、水に対し、これに可溶の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどのグリコール類、ジメチルホルムアミドなどを加えて用いてもよい。
前記アミノ化反応工程における反応温度としては100〜250℃の範囲が好ましく、140〜200℃の範囲がより好ましい。反応温度が低すぎると、反応速度が低下し、生産性が悪くなる。また、反応温度が高すぎると、反応系の圧力が高まることにより高価な高耐圧性の容器が必要となって経済性の点で好ましくなく、また副反応が起こり易くもなるので、この面でも好ましくない。アミノ化反応における圧力としては、25kg/cm2以下が好ましく、17kg/cm2以下がより好ましい。
前記アミノ化反応工程においては、脱炭酸反応も一部進行し、目的物質である3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が少量生成するが、このことは何ら支障がない。
前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を添加して実行することが好ましい。特に、アルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。この場合に使用することのできるアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、特に限定する訳ではないが、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等がある。より具体的には、例えば、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸ストロンチウム、重炭酸バリウム等が挙げられる。
前記アミノ化反応工程で、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物(以下、アルカリ金属とアルカリ土類金属を「アルカリ(土類)金属」と総称する)を添加すると、反応時に、これらが、原料たる3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩を生成する。また、中間生成物たる4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩をも生成する。同時に生成することがある3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸と反応して、そのアルカリ(土類)金属塩を生成することもある。遊離の化合物(I)も上記原料や中間生成物等と反応して塩を生成することができるが、反応系にアルカリ(土類)金属化合物が添加されると、アルカリ(土類)金属の塩の生成が優先するので、遊離の化合物(I)からの塩の生成が抑制され、遊離の化合物(I)が主にアミノ化反応に作用できることになる。そのため、アミノ化反応工程を実行する際にアルカリ(土類)金属化合物を添加すると、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸のアミノ化に必要な遊離の化合物(I)の比率を下げることができるようになり、化合物(I)による反応系の圧力を低下できるので、圧力釜の耐圧性を下げることができ、容器の設備費を安くすることができる。
アルカリ(土類)金属化合物の中では、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムが好ましく用いられる。水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを添加すると、アミノ化反応によって生成する化合物(I)のフッ化物をフッ化カルシウムとして沈澱させることができ、脱炭酸反応の前あるいは後に濾過などによりフッ素イオンを反応系から容易に分離することができるからである。
前記アミノ化反応工程でアルカリ(土類)金属化合物を添加したときには、系中に、例えば、下記のような化合物が生成する。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ナトリウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カリウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸マグネシウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸カルシウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸ストロンチウム塩、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸バリウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸ナトリウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸カリウム塩、4−置換3,5,6−トリフルオロフタル酸マグネシウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸カルシウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸ストロンチウム塩、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸バリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ナトリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸カリウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸マグネシウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸カルシウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸ストロンチウム塩、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸バリウム塩。なお、これらの塩は、酸およびアルカリ(土類)金属化合物の種類によって、正塩、酸性塩または塩基性塩の形態となる。また、3−置換とは、3−アミノ;3−(N−メチルアミノ)、3−(N−エチルアミノ)等の3−(N−アルキルアミノ);3−(N,N−ジメチルアミノ)等の3−(N,N−ジアルキルアミノ);3−(N−フェニルアミノ)等の3−(N−アリールアミノ)等を表す。4−置換に関しても3−置換の場合と同様のものを表す。さらに、反応系中には化合物(I)が存在するので、これと上記塩との反応物である化合物(I)の炭酸塩、化合物(I)の重炭酸塩等も生成する。
前記アミノ化反応工程でアルカリ(土類)金属化合物を添加、存在させる場合の量は、特に限定する訳ではない。しかし、例えば、アルカリ(土類)金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩よりなる群から選ばれたものを存在させる場合は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり(但し反応生成物はすべて出発原料3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に換算する)、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の各々における総計で0.01〜2モルの範囲で存在させるのが好ましく、0.1〜1モルの範囲で存在させるのがより好ましい。アルカリ(土類)金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩よりなる群から選ばれたものの比率が多すぎると、ヒドロキシル化反応による副反応が起こりやすくなる。逆に少なすぎると、前述したような、化合物(I)の比率を下げる効果、または、フッ素イオンを反応系から容易に分離することができる効果が小さくなる。
前記アミノ化反応工程では、一般的に用いられる銅系触媒を添加して行うこともできる。その際用いられる銅系触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、金属銅、酸化第一銅、酸化第二銅、水酸化第一銅、水酸化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、硝酸第一銅、硝酸第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、炭酸第一銅、炭酸第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅等が挙げられる。これらの中でも、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅が好ましく、特に塩化第一銅が好ましい。銅系触媒は、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり(但し反応生成物はすべて出発原料3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に換算する)、銅として総計で0.1〜20モルの範囲で存在させることが好ましく、2〜5モルの範囲がより好ましい。銅系触媒は、不活性担体上で使用することもできる。なお、銅系触媒は、次工程の脱炭酸反応工程にそのまま用いることができる。
アミノ化反応工程終了後、前述のアルカリ(土類)金属化合物の添加を行うことができる。アルカリ(土類)金属化合物の中では、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムが好ましく用いられる。水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを添加すると、アミノ化反応工程に添加した方法と同様に、アミノ化反応によって生成する化合物(I)のフッ化物をフッ化カルシウムとして沈殿させることができ、脱炭酸反応の前または後にろ過等によりフッ素イオンを反応系から容易に分離することができる。
本発明の製造方法において、脱炭酸反応工程は、前記アミノ化反応工程後、反応液のpHを酸性域に調整しておいて行うのが好ましい。反応液のpHを酸性域に調整する手法としては、特に限定はされないが、例えば、▲1▼反応系中に残存する遊離の化合物(I)を反応系から除去する方法、または、▲2▼反応系中に残存する化合物(I)を酸性物質で中和する方法、が好ましい。遊離の化合物(I)の除去方法としては、例えば、化合物(I)がアンモニアの場合、その圧力が適度に生じるだけの高温下、好ましくは100〜250℃の温度下において、反応系中からアンモニアガスを徐々に抜く方法である。この場合、バブリングする等の方法で窒素などの不活性ガスに同伴させて抜くこともできる。中和方法の場合は、例えば、硫酸水溶液などの酸性物質により遊離の化合物(I)を中和して化合物(I)の硫酸塩等とする方法がある。
前記脱炭酸反応工程では、アミノ化反応に用いた過剰の化合物(I)を除去するか中和することにより、pHを酸性域、特に4以下に調整し反応させるのが好ましい。このpH調整により、アミノ化反応工程後の中間生成物である前記4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸の一部または全てが遊離のカルボン酸として存在する。
前記脱炭酸反応工程は、必要に応じ適当な触媒存在下において、好ましくは100〜230℃の温度で反応液を加熱して行う。より好ましくは130℃〜190℃の温度で加熱して行う。その際に発生する炭酸ガスは、例えば、背圧弁などを用いて耐圧コンデンサーから逐次系外に抜くことができる。このことによって反応圧力を好ましくは15kg/cm2以下、より好ましくは10kg/cm2以下にすることができる。しかし、本発明では炭酸ガスを系内に封じ込めたまま反応を行っても構わない。
前記脱炭酸反応工程における、4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸の反応液中における濃度は、特に限定する訳ではないが、10〜35重量%程度が生産性の点で望ましい。
前記脱炭酸反応工程を実行する際にも、やはり、前述のアルカリ(土類)金属化合物およびアンモニウム化合物の添加を行うことができる。この添加によっても、アミノ化反応工程におけると同様の各種化合物が生成する。ここで添加したアルカリ(土類)金属化合物、この添加により脱炭酸反応工程で生成した前述の化合物、または前述のアミノ化反応工程やpH調整工程で添加・生成した化合物は、脱炭酸反応の触媒として有効に作用する。例えば、硫酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、アルカリ(土類)金属の疏酸塩およびアルカリ(土類)金属のフッ化物が挙げられる。なお、この脱炭酸反応工程では助触媒を使用することもできる。助触媒としては、例えば、銅粉、酸化第一銅および酸化亜鉛などの一般的に脱炭酸反応に用いるものならばあらゆるものが使用できる。また、前述した、アミノ化反応で必要に応じて用いられる銅系触媒をそのまま助触媒として用いることもできる。
脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物およびアルカリ(土類)金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。特に、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび重炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程であると好ましい。
前記脱炭酸反応工程で、アンモニウム塩化合物およびアルカリ(土類)金属化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を添加、存在させる場合の量は、特に限定する訳ではないが、出発原料の3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モル当たり総計で0.01〜2モルの範囲で存在させるのが好ましく、0.1〜1モルの範囲で存在させるのがより好ましい。
前記脱炭酸反応工程は、次のように行うこともできる。アミノ化反応工程終了後、水酸化カルシウム、フッ化カルシウムをろ過し、反応液に適当量の硫酸を加えた後、加熱して脱炭酸する。脱炭酸反応時の硫酸濃度は、5〜75重量%で行うことができ、生産性の観点からは、30〜50重量%で行うのが好ましい。また、反応温度は、硫酸濃度により異なるが、100〜170℃で行うことができる。反応時間は、通常1〜24時間である。
脱炭酸反応終了後は、例えば、触媒としてアルカリ(土類)金属化合物を用いた場合、硫酸水溶液等の酸性物質で中和してアルカリ(土類)金属化合物をすべて該アルカリ(土類)金属と上記酸性物質との塩に変え、次いで、必要に応じて、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が溶解する温度以上で熱時濾過して上記塩を除去する。その後、室温まで冷却すると、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の沈澱物が得られる。この沈殿物は、例えば、一般的な方法である濾過などの手段によって水性媒体中から取り出すことができる。得られたケーキ中には水溶性無機化合物も僅かに残存しているので、これを精製除去する必要がある。この精製除去方法は単に水で洗浄すると言う方法であっても良い。この場合、濾液および洗浄水には3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が含まれているが、これは次回のアミノ化反応工程に再使用すると良い。この再使用によって3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が収率良く製造できる。さらに別の方法としては、例えば、硫酸などの酸性物質で中和後、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどの有機酸エステル類などの有機溶媒で水性媒体中から−3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を抽出する方法がある。抽出後、溶媒を蒸発乾固によって除去すると、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を取り出すことができる。
本発明の製造方法は、前記アミノ化反応工程で3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と化合物(I)とを反応させてアミノ化反応を行った後、前記脱炭酸反応工程で反応系を加熱して脱炭酸を行うと、アミノ化反応工程において異性体の副生がほとんどないため、このアミノ化反応で得られる4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を単離することなく次の脱炭酸反応工程を行うことが可能になり、いわゆるワンポットで3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造することが可能になる。しかも、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率かつ高純度で製造することが可能になる。
本発明で得られるの3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸は、高分子材料、農薬、医薬品等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料として特に有用である。
〔4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸〕
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、新規な化合物である。本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、前述の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法のアミノ化反応工程において、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸とアンモニアとを反応させることによって、簡易な操作で工業的に安価に、しかも高収率で純度よく得ることができる。
前記アミノ化反応工程後の反応液から4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を単離・精製する方法は、特に限定されないが、例えば、硫酸等の無機酸を加え析出させ、ろ過し乾燥する方法;硫酸等を加えた後、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等の有機酸エステル類などを用いて抽出した後、蒸発乾固する方法等がある。
また、本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を製造する別の方法としては、例えば、3,4,5,6−テトラフルオロフタロニトリルを水難溶性の有機溶媒に溶解し、得られた有機層とアンモニア水との2層反応によりアミノ化して4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを得た後、さらに、硫酸水溶液等で加水分解することにより4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を得る方法がある。
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を製造する際の中間体として有用である。さらに、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、高分子材料、農薬、医薬品等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「%」は、「重量%」を示す。
−実施例1−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.28g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去した。冷却後過剰量のアンモニアを硫酸水溶液で中和し、酢酸エチルを用いて有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発除去し、後に残った固形物を乾燥してから、カラム精製を行って、化合物A(17.2g)および化合物B(1.8g)が得られた。
化合物Aについて、以下に示すように、19F−NMR、元素分析および赤外線吸収スペクトルを測定した。
19 F−NMR
化合物Aをアセトン−d6に溶かし、CF3COOHを内部標準物質として使用して測定した。−63.3ppm、−64.5ppmおよび−79.4ppmにピークを観測し、以下のようにピークを帰属した。
元素分析
化合物Aについて元素分析を行い、以下の結果が得られた。
元素分析値:C8H4F3NO4
赤外線吸収スペクトル
化合物AをKBr錠剤にして測定した。3482cm-1、3382cm-1、3006cm-1および1716cm-1に吸収ピークを観測し、以下のように帰属した。第1図に赤外線吸収スペクトル図を示す。
3482cm-1、3382cm-1(アミノ基、ν−N−H)
3006cm-1(ヒドロキシ基、ν−O−H)
1716cm-1(カルボニル基、>C=O)
以上の19F−NMR、元素分析および赤外線吸収スペクトルから、化合物Aは4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸であることが確認された。
同様の分析方法によって、化合物Bは3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸であると確認された。なお、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する両化合物の収率は98.3モル%であった。
−実施例2−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)およびアンモニア14g(0.82モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、168〜172℃で12時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は15〜16kg/cm2であった。室温に冷却した後、反応物を取り出し、これに、pHが2になるまで硫酸水溶液を加え、その後、液体クロマトグラフィで反応生成物の分析を行った。その結果、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸が16.8gおよび3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が2.1g(両化合物の対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率98.2モル%)得られていることが判明した。なお、異性体である3−アミノ−4,5,6−トリフルオロフタル酸は、反応生成物中1%以下であることが19F−NMRから判明した。
−実施例3−
実施例2と同様にしてアミノ化反応を行い、引き続いて7gのアンモニアガスを徐々に抜き、さらに30%の硫酸水溶液12gを加えてpHを4.0に調整した。なお、pH調整後の反応溶液中には、有機酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム、フッ化アンモニウムが存在する。それらの存在下、156〜158℃で12時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて8kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、30%の硫酸水溶液27gを加えて反応生成物を中和し、その後、酢酸エチルを用い、有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発除去し、後に残った固形物を乾燥することにより、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸15.1g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率94.1モル%、純度98.8%)を得た。
−実施例4−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、さらに30%硫酸水溶液6.9gを加えてpHを2.5に調整した。その後、このpH調整で得られた有機酸アンモニウム(0.041モル)、硫酸アンモニウム、2.8g(0.021モル)およびフッ化カルシウム3.2g(0.041モル)存在下、148〜152℃で24時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて6kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、30%硫酸水溶液を加えて中和し、その後、熱時濾過により、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムなどの固形物を除去した。冷却後、析出した3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸をを濾過、水洗、乾燥することにより、白色の3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.5g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率84.1モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例5−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム6.28g(0.084モル)およびアンモニア7.2g(0.42モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜160℃で20時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は6〜7kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス4.8g(0.28モル)を徐々に抜き、さらに30%硫酸水溶液19.6gを加えてpHを2.0に調整した。その後、pH調整で得られた有機酸カルシウム(0.041モル)、硫酸カルシウム5.7g(0.042モル)硫酸アンモニウム、2.4g(0.018モル)およびフッ化カルシウム3.2g(0.041モル)存在下、158〜165℃で20時間脱炭酸反応を行った。反応時の圧力は、生成する炭酸ガスを抜いて6kg/cm2になるように調整して行った。反応終了後、反応液を70℃まで冷却し、30%硫酸水溶液を加えて中和し、その後、熱時濾過により、硫酸カルシウム、フッ化カルシウムなどの固形物を除去した。冷却後、析出した3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を濾過、水洗、乾燥することにより、白色の3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.2g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率88.5モル%、純度99.5%)を得た。なお、濾液中には3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が1.4g含有されていることが判明した。これは、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸に対する収率分として8.7モル%に相当する。
−実施例6−
実施例5において、水酸化カルシウム6.28g(0.084モル)の代わりに水酸化カルシウム3.28g(0.043モル)および水酸化ナトリウム1.78g(0.042モル)を仕込んだ以外は実施例5と同様の条件でアミノ化反応および脱炭酸反応を行った。その結果、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.6g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率84.8モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例7−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.5g(0.44モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸40gを加え、115℃で5時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥しして、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.0g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率87.2モル%、純度99.2%)を得た。
−実施例8−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーが設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液80gを仕込み、150〜152℃で24時間アミノ化反応を行った。反応時の圧力は9〜10kg/cm2であった。引き続いて、アンモニアガス7.8g(0.46モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸60gを加え、125℃で3時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥しして、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸13.8g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率86.0モル%、純度99.3%)を得た。
−実施例9−
背圧弁付きの耐圧コンデンサーおよび滴下装置が設置されたオートクレーブ(容積:300ml)中で、水酸化カルシウム3.2g(0.043モル)およびアンモニア12.6g(0.74モル)(遊離アンモニアとして)を含有する水溶液60gを仕込み、150〜152℃に加熱した。3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸20g(0.084モル)およびアンモニア2.9g(0.17モル)を含有する水溶液40gを滴下装置に入れ、オートクレーブ内に20時間かけて滴下した。滴下終了後、圧力10〜12kg/cm2でさらに4時間アミノ化反応を行った。引き続いて、アンモニアガス7.8g(0.46モル)を徐々に抜き、室温まで冷却後、水酸化カルシウムおよびフッ化カルシウムをろ過により除去して反応溶液を得た。冷却装置、温度計および攪拌装置を備えた300mlナスフラスコに、上記反応溶液と98%硫酸60gを加え、125℃で5時間脱炭酸反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルで有機物質を有機層に抽出した。有機層を水洗した後、溶媒を蒸発留去し、後に残った固形物を乾燥してて、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸14.2g(対3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸収率88.0モル%、純度99.1%)を得た。
産業上の利用可能性
本発明によれば、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率で、純度良く、しかも工業的に簡易かつ安価な方法で製造することができる。これは、本発明の方法では、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸を化合物(I)と反応させてアミノ化した後、引き続き脱炭酸することにより、アミノ化された中間体を単離することなく、ワンポットで、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸が得ることができるからである。また、この方法によれば、異性体などの副生成物ができにくいために、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を高収率でかつ純度良く製造できるからでもある。
この方法で得られる3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸は、高分子材料、農薬、医薬等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料に使用される。
また、本発明によれば、3−アミノ−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を合成するのに適した中間体であり、新規な化合物である、4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸を得ることができる。
本発明の4−アミノ−3,5,6−トリフルオロフタル酸は、高分子材料、農薬、医薬等の製造原料として有用であり、キノリンカルボン酸系抗菌剤の製造原料に使用される。
Claims (10)
- 3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸と、下記一般式(I):
NHR1R2 …(I)
(一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物(I)とを反応させて、下記一般式(II):
(一般式(II)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を含む反応液を得るアミノ化反応工程と、
前記4−置換−3,5,6−トリフルオロフタル酸を加熱して脱炭酸することによって、下記一般式(III):
(一般式(III)中、R1およびR2は前記一般式(I)中のものと同一である。)で表される、3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸を得る脱炭酸反応工程と、
を含み、
前記アミノ化反応工程は、水性媒体中100〜250℃の温度で反応させる工程である、
3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。 - 前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程である、請求項1に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記アミノ化反応工程は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の重炭酸塩およびアルカリ土類金属の重炭酸塩からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.01〜2モル含む反応工程である、請求項2に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記アミノ化反応工程は、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程である、請求項2に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記脱炭酸反応工程は、pHを酸性域に調整し100〜230℃の温度で加熱して脱炭酸する工程である、請求項1から4までのいずれかに記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記脱炭酸反応工程は、硫酸を使用してpHを酸性域に調整し、加熱して脱炭酸する工程である、請求項5に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記脱炭酸反応工程は、pHを4以下に調整して反応させる工程である、請求項5または6に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を含む反応工程である、請求項1から7までのいずれかに記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記脱炭酸反応工程は、アンモニウム塩化合物、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を、前記3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸1モルに対して0.012〜モル含む反応工程である、請求項8に記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
- 前記一般式(I)、(II)および(III)中のR1およびR2がともに水素原子である、請求項1から9までのいずれかに記載の3−置換−2,4,5−トリフルオロ安息香酸の製造方法。
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