JP3695615B2 - エネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の共振子や発振子等に用いられるエネルギー閉じ込め型圧電共振子に関し、より詳細には、厚み縦振動モードの高調波を利用したエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電共振子は、圧電発振子や圧電フィルタなどの種々の圧電共振部品に用いられており、この種の圧電共振子としては、使用周波数に応じて種々の圧電振動モードを利用したものが知られている。
【0003】
特開平1−117409号公報には、厚み縦振動モードの2倍波を利用したエネルギー閉じ込め型圧電共振子が開示されている。この圧電共振子を、図20及び図21を参照して説明する。
【0004】
上記圧電共振子は、図20に分解斜視図で示すように、圧電材料よりなるセラミックグリーンシート51,52を積層し、一体焼成することにより得られている。セラミックグリーンシート51上には、中央に円形の励振電極53が形成されており、該励振電極53は、引き出し電極54によりセラミックグリーンシート51の端縁に引き出されている。また、セラミックグリーンシート52の上面には、中央に円形の励振電極55が形成されており、励振電極55は引き出し電極56によりセラミックグリーンシート52の端縁に引き出されている。また、セラミックグリーンシート52の下面には、下方に投影して示すように、励振電極57が形成されており、励振電極57は引き出し電極58によりセラミックグリーンシート52の端縁に引き出されている。
【0005】
上記セラミックグリーンシート51,52を積層し、厚み方向に加圧した後焼成することにより、焼結体を得、該焼結体を分極処理することにより、図21に示す圧電共振子60が得られる。
【0006】
圧電共振子60では、圧電体層61,62が図示の矢印方向に、すなわち焼結体が厚み方向に一様に分極処理されている。
駆動に際しては、励振電極53,57を共通接続し、励振電極53,57と、励振電極55との間に交流電圧を印加することにより、圧電共振子60を共振させることができる。この場合、振動エネルギーは、励振電極53,55,57が重なり合っている領域、すなわち共振部Aに閉じ込められる。
【0007】
従来の厚み縦振動モードの高調波を利用した圧電共振子60は、上記のようにエネルギー閉じ込め型圧電共振子として構成されており、従って、共振部Aの周囲に振動を減衰させるための振動減衰部を必要としていた。すなわち、共振部の面積に比べて大きな振動減衰部を必要としていた。従って、圧電共振子60では小型化を進めることが困難であった。
【0008】
他方、特開平2−235422号公報には、共振部の周囲に余分な圧電基板部分をあまり必要としない、ストリップ型の圧電セラミックスを用いたエネルギー閉じ込め型圧電共振子が開示されている。
【0009】
ここでは、図22に示すように、細長い圧電基板71の上面に励振電極72aが、下面に励振電極72bが形成されている。励振電極72a,72bは、それぞれ、圧電基板71の一対の長辺に至るように、すなわち全幅に至るように形成されており、かつ圧電基板71の長さ方向中央において表裏対向されて共振部を構成している。また、これらの励振電極72a,72bは、それぞれ、圧電基板71の長さ方向端部71a,71bに至るように延ばされている。
【0010】
圧電共振子70では、厚み縦振動モードを励振した場合、圧電基板71の幅Wと厚みTの寸法関係に起因する不要振動が発生する。そこで、特開平2−235422号公報では、基本波を利用する場合には、共振周波数16MHzにおいてW/T=5.33付近とすれば、また、3倍波を利用する場合には、共振周波数約16MHzにおいてW/T=2.87付近とすれば、共振周波数−反共振周波数間における不要スプリアスを低減し得るとされている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、厚み縦振動モードの2倍波を利用した特開平1−117409号公報に開示されているエネルギー閉じ込め型圧電共振子では、共振部の周囲に大きな振動減衰部を構成する必要があるため、小型化が困難であるという問題があった。
【0012】
また、特開平2−235422号公報に開示されているエネルギー閉じ込め型圧電共振子では、共振部の側方に振動減衰部を必要としないため、小型化を果たし得るものの、実際に厚み縦振動モードの高調波を利用しようとした場合には、良好な共振特性が必ずしも得られないという問題があった。また、共振周波数−反共振周波数間に様々な不要スプリアスが現れ、有効な共振特性を得られないことがあった。
【0013】
よって、本発明の目的は、厚み縦振動モードの高調波を利用したエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子であって、小型化を進めることができ、かつ良好な共振特性を有するエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、さらに、所望でない不要スプリアスを効果的に抑圧し得るエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、共振部の両側に振動減衰部を有し、厚み縦振動モードのn次の高調波を利用したエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子であって、矩形板状の圧電体と、前記圧電体の両面に形成されて圧電体を介して対向されており、両側の振動減衰部を結ぶ方向を第1の方向としたときに、第1の方向と直交する方向において、圧電体の端部または端部近傍まで至るように形成された第1,第2の励振電極と、前記圧電体内に配置されており、圧電体層を介して第1,第2の励振電極と少なくとも部分的に対向された少なくとも1層の内部電極とを備え、前記圧電体の第1の方向に沿う長さをL、厚みをtとし、d=t/nとしたときに、L/d≧14とされていることを特徴とする。
【0017】
しかも、第1,第2の励振電極の重なり合っている部分の第1の方向に沿う長さをLとしたときに、比l/d≦6とされ、より好ましくは、請求項2に記載のように、比l/dが3〜6の範囲とされる。さらに好ましくは、比l/dは4.5〜5.5の範囲とされ、それによって比帯域幅の拡大を図り得る。
【0018】
また、好ましくは、請求項3に記載のように、上記圧電体は細長いストリップ型の圧電体により構成される。なお、請求項4に記載の発明は、前記第1または第2の励振電極が形成されている面に、圧電共振子の振動を妨げないための空間を隔てて貼り合わされたコンデンサをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の非限定的な実施例につき説明する。
(第1の実施例)
図1は、本発明の第1の実施例に係る厚み縦圧電共振子を示す斜視図であり、図2はその断面図である。
【0020】
厚み縦圧電共振子1は、細長いストリップ状の圧電体2を用いて構成されている。圧電体2は、チタン酸鉛系セラミックスのような圧電セラミックスで構成されている。
【0021】
圧電体2は、図示の矢印で示すように、厚み方向に一様に分極処理されている。圧電体2の上面には、第1の励振電極3が形成されており、下面には第2の励振電極4が形成されている。励振電極3,4は、圧電体2の一方端面2a側から圧電体2の上面及び下面において他方端面2b側に向かって延ばされている。
【0022】
他方、励振電極3,4は、圧電体2の端面2aに形成された接続電極5により共通接続されている。
また、圧電体2の中間高さ位置には、内部電極6が形成されている。内部電極6は、圧電体2の端面2bに引き出されており、端面2bに形成された端子電極7に電気的に接続されている。
【0023】
駆動に際しては、第1,第2の励振電極3,4と、内部電極6との間に交流電圧を印加することにより、厚み縦振動モードの2倍波が強く励振される。従って、厚み縦圧電共振子1は、2倍波を利用した圧電共振子として動作させることができる。
【0024】
第1,第2の励振電極3,4と、内部電極6とは、圧電体2の長さ方向中央部分において圧電体層を介して重なり合うように形成されている。従って、第1,第2の励振電極3,4と内部電極6とが重なり合っている部分において、エネルギー閉じ込め型の共振部が構成され、この共振部が振動した場合のエネルギーは、共振部と端面2a,2bとの間の圧電体部分で減衰される。
【0025】
言い換えれば、上記共振部を中心として考えると、圧電体2の長さ方向(第1の方向)のみに振動減衰部が両側に設けられており、第1,第2の励振電極は、長さ方向と直交する方向において、圧電板の端縁、すなわち長手方向に延びる端縁に至るように形成されている。
【0026】
この場合、第1,第2の励振電極3,4及び内部電極6は、共振部においてのみ、圧電体2の全幅に至るように形成されておればよく、共振部外では、同じ幅に形成されている必要は必ずしもない。例えば、励振電極3を例にとると、共振部においてのみ、励振電極3は圧電体2の全幅に至るように形成されておればよく、励振電極3の共振部より端面2a側の部分は、単に励振電極を接続電極5に電気的に接続する部分であるため、より細い幅で形成されていてもよい。
【0027】
本実施例の特徴は、圧電体の上記共振部の両側の振動減衰部を結ぶ方向、すなわち圧電体2の長さ方向を第1の方向としたときに、圧電体の第1の方向に沿う長さをL、圧電体の厚みをtとし、d=t/nとしたときに、L/d≧14とされていることにある。すなわち、エネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子1では、上記比L/dが14以上とされており、それによって従来のストリップ型厚み縦圧電共振子と異なり、良好な共振特性を得ることができる。これを、図3〜図6を参照して説明する。
【0028】
すなわち、本願発明者は、ストリップ型圧電共振子における圧電体の長さ寸法が小さいと、圧電共振子を機械的に保持した後にQmが低下することに鑑み、圧電体の長さを種々の角度から検討したところ、上記比L/dを特定の範囲に選択すれば、保持による影響を余り受けず、良好な共振特性が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
【0029】
図4及び図5は、それぞれ、L/d=10及び16とした場合の厚み縦振動の2倍波(TE2)で振動している場合の有限要素法で解析された変位分布を示す図である。
【0030】
なお、図4及び図5は、図3に示すように、ストリップ型厚み縦圧電共振子1の縦断面の半分、すなわち長さ方向に沿って厚み縦圧電共振子を厚み方向に切断した面の半分の変位状態を模式的に示す図である。
【0031】
図4に示す変位分布は、チタン酸鉛系圧電セラミックスからなる圧電体の長さをL=1.5mm、d=0.15、L/d=10とした場合の変位分布を示し、図5は、チタン酸鉛系圧電セラミックスからなる圧電体を用い、L=2.4mm、d=0.15、L/d=16とした場合の変位分布を示す。
【0032】
図4と図5とを比較すれば明らかなように、図4では、中央部分が上方に変位している場合、圧電体の長さ方向端部も同じく上方に変位していることがわかる。これに対して、図5に示す変位分布では、圧電体2の中央部分が大きく上方に変位しているのに対し、圧電体2の長さ方向端部がほとんど厚み方向に変位していないことがわかる。
【0033】
従って、図4及び図5を比較すると、比L/dを10から16に変更することにより、厚み縦振動モードの2倍波を励振させた場合、端部を機械的に保持したとしても、保持部分がほとんど変位しないため、良好な共振特性の得られることがわかる。
【0034】
そこで、図4及び図5の結果に基づき、種々実験をしたところ、前述したとおり、比L/dを14以上となるように厚み縦圧電共振子1を構成すれば、保持による影響をほとんど受けず、良好な共振特性の得られることを見出した。
【0035】
そこで、圧電体1として、チタン酸鉛系圧電セラミックスからなり、比L/dを種々変化させ、比L/dによる共振特性の変化を調べた。結果を図6に示す。
図6は、比L/dが変化した場合の圧電体の長さ方向端部の相対変位量の変化を示す。なお、相対変位量とは、長さ方向中央における変位量に対する、長さ方向端部の変位量の割合を示す。例えば、図4に示す変位分布において、圧電体の長さ方向中央部が初期状態から上方に変位した場合の変位量をX、長さ方向端部が初期状態から上方に変位した量をaとした場合に、a/Xで表される。この場合、長さ方向端部が長さ方向中央とは逆方向、すなわち下方に変位した場合には、相対変位量は負の値となる。
【0036】
図6から明らかなように、比L/dを14以上とすることにより、相対変位量を±0.1以内とすることができ、良好な共振特性の得られることがわかる。
特に、L/dを16±0.5、21±0.5、23±0.5、25±0.5、または27.5±0.5の範囲とすることにより相対変位量をほぼ0とすることができ、共振エネルギーを共振部により一層効果的に閉じ込めることができ、良好な共振特性の得られることがわかる。
【0037】
また、本願発明者は、厚み縦圧電共振子1において、比L/dを上記特定の範囲とし、さらに、第1,第2の励振電極の圧電体1の長さ方向に沿う重なり寸法をlとしたときに、比l/dを6以下とすれば、より一層良好な共振特性の得られることを見出した。
【0038】
すなわち、図23に示した矢印Bで示す波形分割の原因について種々検討したところ、上記波形分割が、インハーモニック・オーバートーンと称されているスプリアス振動に大きく影響されることを見出し、かつ該インハーモニック・オーバートーンの影響は、比l/dを調整することより抑圧し得ることを見出した。
【0039】
図7及び図8は、それぞれ、厚み縦振動の2倍波(TE2)及びインハーモニック・オーバートーン(S1モード)で振動している場合の有限要素法で解析された変位分布を示す図である。なお、図7及び図8は、図3に示すように、ストリップ型厚み縦圧電共振子1の縦断面の半分、すなわち長さ方向に沿って厚み縦圧電共振子を厚み方向に切断した面の半分の変位状態を模式的に示す図である。
【0040】
図8から明らかなように、インハーモニック・オーバートーンでは、厚み縦圧電共振子の共振部において、圧電体が厚み方向に大きく変位していることがわかる。従って、このようなインハーモニック・オーバートーンが大きく発生すると、図7に示す厚み縦振動モードの2倍波の振動に大きく影響することがわかる。
【0041】
そこで、本願発明者は、上記インハーモニック・オーバートーンS1に起因するスプリアスを抑制すべく種々実験したところ、前述した通り、第1,第2の励振電極の圧電体1の長さ方向に沿う重なり寸法をl、圧電体2の厚みをtとし、d=t/nとすると、比l/dを6以下とすれば、インハーモニック・オーバートーンの応答を小さくすることができ、厚み縦振動モードの2倍波TE2のみを大きく励振させ得ることを見出した。
【0042】
図9及び図10は、それぞれ、比l/d=5.0及び3.0とした場合の厚み縦圧電共振子1のインピーダンス−周波数特性を示す。
図9から明らかなように、比l/d=5.0の場合には、共振点Frと反共振点Faとの間の通過帯域近傍に大きなスプリアス振動が発生しておらず、従って上記インハーモニック・オーバートーンによるスプリアスを効果的に抑制し得ることがわかる。
【0043】
また、図10から明らかなように、比l/d=3.0の場合にも、図23に示したような反共振点近傍における波形分割が生じておらず、従ってインハーモニック・オーバートーンによるスプリアスを抑制し得ることがわかる。
【0044】
また、図9に示す特性と、図10に示す特性とを比較すれば、l/d=5.0の場合に、l/d=3.0の場合よりもスプリアスの応答をより効果的に抑制し得ることがわかる。
【0045】
そこで、圧電体1として、長さL=3.0mm、幅W=0.5mm、厚みt=0.3mmのチタン酸鉛系圧電セラミックスからなるものを用い、第1,第2の励振電極の長さ方向に沿う重なり寸法lを種々変化させ、比l/dによる共振特性の変化を調べた。結果を図11及び図12に示す。
【0046】
図11は、比l/dが変化した場合の周波数定数F・dの変化を示す図である。ここで、周波数定数F・dとは、共振点Frもしくは反共振点Faの周波数と、上記dとの積で表される値である。
【0047】
また、図11において、▲は厚み縦振動モードの2倍波(TE2)の共振点Frを、●は厚み縦振動モードの2倍波(TE2)の反共振点Faであり、△はインハーモニック・オーバートーン(S1)の共振点Frであり、○はインハーモニック・オーバートーン(S1)の反共振点Faの位置を示す。
【0048】
図11から明らかなように、l/d=6を超えると、インハーモニック・オーバートーンS1の共振点Fr及び反共振点Faが厚み縦振動の2倍波TE2の反共振点Fa近傍に現れ、かつ比l/dが8以上の場合には、厚み縦振動の2倍波TE2の共振点Frと反共振点Faとの間の帯域内に発生することがわかる。これに対して、l/dが6以下の場合には、インハーモニック・オーバートーンが現れないことがわかる。
【0049】
また、比l/dが6以下の場合、インハーモニック・オーバートーンの発生を抑圧し得るものの、比l/dが小さくなる程、厚み縦振動モードの2倍波TE2における通過帯域、すなわち共振点Frと反共振点Faとの間の帯域幅が狭くなることがわかる。
【0050】
そこで、比l/dを変化させた場合の比帯域幅を有限要素法により確かめたところ、図12に示す結果が得られた。
なお、比帯域幅とは、共振周波数Fr、反共振周波数Faとしたときに、(Fa−Fr)×100/Fa(%)で得られる値である。
【0051】
図12から明らかなように、比l/dを変化させると比帯域幅が変化し、l/dが3〜6の範囲では、比帯域幅が6%以上と大きくなり、特に、4.5〜5.5の範囲で、比帯域幅が約7%と大きくなることがわかる。
【0052】
よって、比l/dを、好ましくは3〜6、より好ましくは4.5〜5.5とすれば、インハーモニック・オーバートーンによるスプリアスを抑圧し得るだけでなく、比帯域幅が大きな、良好な共振特性を有するエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子1とし得ることがわかる。
【0053】
本実施例の厚み縦圧電共振子1では、上記のように、L/dが14以上とされているので、長さ方向端部で機械的に保持したとしても良好な共振特性が得られ、かつ比l/dを6以下としているので、厚み縦振動モードの2倍波TE2を利用したエネルギー閉じ込め型圧電共振子を構成した場合、インハーモニック・オーバートーンによる不要スプリアスを効果的に抑制することができる。
【0054】
(第2の実施例)
第1の実施例に係る厚み縦圧電共振子1では、圧電体2が厚み方向に一様に分極処理されており、各層に加える印加電界が逆方向とされるパラレル接続タイプの圧電共振子を示したが、本発明は、複数の圧電体層を厚み方向に交互に逆方向に分極処理してなるシリーズ接続型の圧電共振子としてもよい。このようなシリーズ型の厚み縦圧電共振子を、図13に示す。
【0055】
図13に示す厚み縦圧電共振子11は、細長い矩形板状のストリップ型圧電体12を用いて構成されている。圧電体12の上面には、第1の励振電極13が形成されており、下面には第2の励振電極14が形成されている。第1,第2の励振電極13,14は圧電体12を用いて表裏対向されている。また、第1,第2の励振電極13,14は、圧電体12の長さ方向中央部分において対向しており、この第1,第2の励振電極13,14が対向している部分がエネルギー閉じ込め型の共振部とされている。
【0056】
本実施例においても、第1,第2の励振電極13,14は、それぞれ、圧電体12の端面12aまたは端面12bに引き出されているが、共振部以外の部分は圧電体12の全幅に至るように形成されておらずともよい。
【0057】
励振電極13,14についても、見方を変えれば、圧電体12の長さ方向(第1の方向)に振動減衰部を有するエネルギー閉じ込め型の共振部を構成するために、該長さ方向と直交する方向において第1,第2の励振電極13,14が圧電体12の長さ方向端縁に至るように形成されていることになる。
【0058】
圧電体12の中間高さ位置には、内部電極16が形成されている。この内部電極16は、圧電体12を分極処理するために設けられている。すなわち、分極に際しては、内部電極16に相対的に高い電圧を、励振電極13,14には相対的に低い電圧を与えることにより、圧電体層12c,12dが図示の矢印で示すように厚み方向に逆方向に分極処理される。
【0059】
駆動に際しては、第1,第2の励振電極13,14間に交流電圧を印加することにより、すなわち内部電極16を用いることなく駆動することにより、厚み縦振動モードの2倍波TE2 を励振させることができる。
【0060】
第2の実施例に係る厚み縦圧電共振子11においても、比L/dが14以上とされているので、長さ方向端部で保持したとしても、良好な共振特性が得られる。また、さらに、比l/dを6以下とすることにより、第1の実施例の厚み縦圧電共振子1と同様に、インハーモニック・オーバートーンに基づく不要スプリアスを効果的に抑制することができ、一層良好な共振特性を得ることができる。
【0061】
(変形例)
第1,第2の実施例は、何れも厚み縦振動モードの2倍波を利用した圧電共振子1,11であるが、本発明に係る圧電共振子は、厚み縦振動モードの2倍波以外の高調波を利用したものであってもよい。図14〜図17は、これらの他の高調波を利用した圧電共振子を説明するための断面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。
【0062】
図14は、厚み縦振動モードの3倍波を利用したパラレル接続型厚み縦圧電共振子21を示す。すなわち、圧電体2内に2枚の内部電極22,23を配置し、矢印で示すように圧電体2を厚み方向に一様に分極処理することにより、厚み縦振動モードの3倍波を利用した圧電共振子21を構成することができる。
【0063】
また、図15に示す厚み縦圧電共振子24は、厚み縦振動モードの4倍波を利用したパラレル接続型圧電共振子24を示す断面図である。厚み縦圧電共振子24では、圧電体2が厚み方向に一様に分極処理されており、内部に3枚の内部電極25〜27が厚み方向に等間隔を隔てて配置されており、それによって厚み縦振動モードの4倍波が効果的に励振される。
【0064】
図16は、厚み縦振動モードの3倍波を利用したシリーズ接続型の厚み縦圧電共振子28を示す断面図である。厚み縦圧電共振子28では、圧電体12内に2枚の内部電極29,30が配置されており、圧電体12内が3層の圧電体層12e〜12gに分割されており、これらの内部電極29,30を用いて分極処理することにより、厚み方向において隣合う圧電体層が逆方向となるように分極処理されている。従って、第1,第2の励振電極13,14に交流電圧を印加することにより、厚み縦振動モードの3倍波を励振することができる。
【0065】
同様に、図17は、厚み縦振動モードの4倍波を利用したシリーズ接続型圧電共振子31を示す断面図である。ここでは、圧電体12内に、3枚の内部電極32〜34が配置されており、これらの内部電極32〜34を用いて分極処理することにより、図示のように隣接する圧電体層が相互に逆方向になるように厚み方向に分極処理されている。
【0066】
従って、第1,第2の励振電極13,14から交流電圧を印加することにより、厚み縦振動の4倍波を利用した圧電共振子として動作させ得る。
図14〜図17に示した各厚み縦圧電共振子においても、L/dが14以上とされているので、長さ方向端部で機械的に保持したとしても良好な共振特性が得られ、さらに比l/dを6以下すれば、第1,第2の実施例の厚み縦圧電共振子と同様に厚み縦振動の高調波を利用し、かつインハーモニック・オーバートーンのレスポンスによる不要スプリアスを効果的に抑制することが可能となる。
【0067】
(第3の実施例)
図18は、本発明の第3の実施例に係る厚み縦圧電共振子を説明するための斜視図であり、図19はその等価回路を示す図である。図18に示す圧電共振子41は、第1の実施例に係る厚み縦圧電共振子1にコンデンサ42を結合した構造を有する。すなわち、厚み縦圧電共振子1の下面に、導電性接着剤43,44を介してコンデンサ42が接合されている。
【0068】
コンデンサ42では、誘電体基板42aの上面において、所定のギャップを隔てて容量電極42b,42cが形成されている。また、誘電体基板42aの下面には、容量電極42b,42cと誘電体基板42aを介して表裏対向するように共通電極42dが形成されている。
【0069】
他方、導電性接着剤43は、上記容量電極42bと端子電極7とを接合しており、導電性接着剤44は、容量電極42cと端子電極5とを接合している。
従って、圧電共振子41は、図19に示すように、共振子に2個のコンデンサユニットを組み合わせた容量内蔵型圧電発振子として用いることができるものである。
【0070】
よって、厚み縦圧電共振子1が厚み縦振動の2倍波を利用した圧電共振子であって、L/dが14以上とされているので、長さ方向端部で機械的に保持したとしても良好な共振特性が得られ、かつインハーモニック・オーバートーンに起因するスプリアスを効果的に抑制することが可能とされているので、良好な周波数特性を有する圧電発振子を提供することが可能となる。
【0071】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、矩形板状の圧電体と、圧電体の両面に形成された第1,第2の励振電極と、圧電体内に配置されており、第1,第2の励振電極と少なくとも部分的に対向された少なくとも1層の内部電極とを備えるエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子において、比L/dが14以上とされているため、長さ方向端部を機械的に保持したとしても良好な共振特性を有することができる。すなわち、上記比L/dを14以上とすることにより、内部電極を有するエネルギー閉じ込め型の上記厚み縦圧電共振子において、機械的保持部の影響を受けることなく、良好な共振特性を得ることが可能となる。
【0073】
しかも、上記比l/dが6以下とされているためインハーモニック・オーバートーンや利用する高調波以外の他の高調波に起因する不要スプリアスを効果的に抑制することができる。よって、共振特性の良好なエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子を提供することができる。
【0074】
請求項2に記載の発明によれば、比l/dが3〜6の範囲とされているので、インハーモニック・オーバートーンによるスプリアスを抑制し得るだけでなく、比帯域幅が広い、より共振特性の良好なエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子を実現することができる。
【0075】
また、請求項3に記載のように、圧電体として、細長いストリップ型の圧電体を用いた場合には、厚み縦圧電共振子の小型化を進めることができる。そして、請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかに記載の厚み縦圧電共振子に、さらに共振子の振動を妨げないための空間を隔ててコンデンサが貼り合わされているので、共振特性の良好な圧電共振子を用いて、容量内蔵型の圧電発振子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る厚み縦圧電共振子を示す斜視図。
【図2】第1の実施例に係る厚み縦圧電共振子の断面図。
【図3】図4及び図5に示す変位分布が表されている部分に相当する部分の圧電共振子の断面図。
【図4】L/d=10とした場合の厚み縦振動の2倍波で振動している場合の図1に示した厚み縦圧電共振子の変位分布を示す図。
【図5】L/d=16とした場合の厚み縦振動の2倍波で振動している場合の図1に示した厚み縦圧電共振子の変位分布を示す図。
【図6】比L/dが変化した場合の圧電体の長さ方向端部の相対変位量の変化を示す図。
【図7】厚み縦振動モードの2倍波(TE2)で振動している圧電体の有限要素法による解析された変位分布を示す図。
【図8】インハーモニック・オーバートーン(S1)で振動している圧電体の有限要素法による解析された変位分布を示す図。
【図9】比l/d=5.0の場合の有限要素法により解析したインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図10】比l/d=3.0の場合の有限要素法により解析された図1に示した厚み縦圧電共振子のインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図11】比l/dと厚み縦振動の2倍波TE2及びインハーニック・オーバートーンS1の周波数定数との関係を示す図。
【図12】比l/dと比帯域幅との関係を示す図。
【図13】本発明の第2の実施例に係る厚み縦圧電共振子を説明するための斜視図。
【図14】本発明に係る厚み縦圧電共振子の第1の変形例を示す断面図。
【図15】本発明に係る厚み縦圧電共振子の第2の変形例を示す断面図。
【図16】本発明に係る厚み縦圧電共振子の第3の変形例を示す断面図。
【図17】本発明に係る厚み縦圧電共振子の第4の変形例を示す断面図。
【図18】本発明の第3の実施例に係る圧電共振子であって、コンデンサ内蔵型圧電共振子を示す斜視図。
【図19】図18に示した圧電共振子の回路構成を示す図。
【図20】従来の厚み縦圧電共振子の一例を説明するための分解斜視図。
【図21】図20に示した厚み縦圧電共振子の断面図。
【図22】従来の厚み縦圧電共振子の他の例を説明するための斜視図。
【図23】従来の厚み縦圧電共振子のインピーダンス周波数特性を示す図。
【符号の説明】
1…厚み縦圧電共振子
2…圧電体
3,4…第1,第2の励振電極
6…内部電極
11…厚み縦圧電共振子
12…圧電体
13,14…第1,第2の励振電極
16…内部電極
21…厚み縦圧電共振子
22,23…内部電極
24…厚み縦圧電共振子
25〜27…内部電極
28…厚み縦圧電共振子
29,30…内部電極
31…厚み縦圧電共振子
32〜34…内部電極
41…圧電共振子
42…コンデンサ
45…厚み縦圧電共振子
46…圧電体
47,48…第1,第2の励振電極
50…内部電極
Claims (4)
- 共振部の両側に振動減衰部を有し、厚み縦振動モードのn次の高調波を利用したエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子であって、
矩形板状の圧電体と、
前記圧電体の両面に形成されて圧電体を介して対向されており、両側の振動減衰部を結ぶ方向を第1の方向としたときに、第1の方向と直交する方向において、圧電体の端部または端部近傍まで至るように形成された第1,第2の励振電極と、
前記圧電体内に配置されており、圧電体層を介して第1,第2の励振電極と少なくとも部分的に対向された少なくとも1層の内部電極とを備え、
前記圧電体の第1の方向に沿う長さをL、厚みをtとし、d=t/nとしたときに、L/d≧14とされているとともに、前記第1,第2の励振電極の重なり合っている部分の第1の方向に沿う長さをlとしたときに、l/d≦6とされていることを特徴とする、エネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子。 - 前記比l/dが3〜6の範囲とされている、請求項1に記載のエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子。
- 前記圧電体が細長いストリップ型の圧電体により構成されている、請求項1または2に記載のエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子。
- 前記第1または第2の励振電極が形成されている面に、圧電共振子の振動を妨げないための空間を隔てて貼り合わされたコンデンサをさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のエネルギー閉じ込め型厚み縦圧電共振子。
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