JP3695416B2 - リン化硼素系半導体層、その製造方法、及びリン化硼素系半導体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶基板の表面上に、リン化硼素からなる緩衝層(リン化硼素緩衝層)と、硼素及びリンを構成元素とするリン化硼素系結晶層とを順次形成するリン化硼素系半導体層の製造方法に係り、特に画一な配向方位を有するリン化硼素系結晶層を気相成長させるための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、硼素(B)とリン(P)とを構成元素とするリン化硼素系半導体層は、種々の半導体素子を構成するために利用されている。例えば、リン化硼素系半導体として代表的な単量体のリン化硼素(BP)からなる半導体層は、npn型ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)のn形ベース(base)層を構成するに利用されている(J.Electrochem.Soc.,125(4)(1978)、633〜637頁参照)。また、青色のレーザダイオード(LD)にあって、接触抵抗の低いオーミック(Ohmic)電極を形成するためのコンタクト(contact)層として利用されている(特開平10−242567号公報参照)。また、近紫外或いは青色等の短波長の発光をもたらす発光ダイオード(LED)を構成するための緩衝層として用いられている(米国特許6,069,021号参照)。
【0003】
上記の如くの半導体素子を構成するためのリン化硼素系半導体層は、従来より、気相成長手段により形成されている。従来からの気相成長手段には、三塩化硼素(BCl3)や三塩化リン(PCl3)を出発原料とするハロゲン(halogen)気相成長法(「日本結晶成長学会誌」、Vol.24,No.2(1997)、150頁参照)、ボラン(BH3)またはジボラン(B2H6)とホスフィン(PH3)等を原料とするハイドライド(hydride)気相成長法(J.Crystal Growth,24/25(1974)、193〜196頁参照)、分子線エピタキシャル法(J.Solid State Chem.,133(1997)、269〜272頁参照)、及び有機金属化学的気相堆積(MOCVD)法(Inst.Phys.Conf.Ser.,No.129(IOPPublishing Ltd.(UK、1993)、157〜162頁参照)を例示できる。
【0004】
リン化硼素系半導体層を気相成長させるに際し、基板には半導体材料の単結晶を用いるのがもっぱらである。従来より、実用的な基板として、珪素(Si)単結晶(シリコン)(上記の▲1▼J.Electrochem.Soc.,125(1978)、及び▲2▼米国特許6,069,021号参照)、炭化珪素(SiC)(特開平10−242569号公報参照)、リン化ガリウム(GaP)(特開平10−242568号公報参照)や窒化ガリウム(GaN)(特開平10−247745号公報参照)等の単結晶が用いられている。しかし、例えば、珪素単結晶の格子定数は5.431Åであり、閃亜鉛鉱型のBPのそれは4.538Åである(寺本 巌著、「半導体デバイス概論」(1995年3月30日、(株)培風館発行初版)、28頁参照)。従って、格子ミスマッチ度は約16.5%と大きに達している(庄野 克房著、「半導体技術(上)」(1992年6月25日、(財)東京大学出版会発行9刷)、97〜98頁参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この様に格子ミスマッチ度を大とする結晶基板上では、リン化硼素系半導体層は、Volmer−Weber様の成長様式をもって島状の成長を起こす((社)応用物理学会薄膜・表面物理分科会編、「薄膜作製ハンドブック」(1991年3月25日、共立出版(株)発行初版第1刷)、59頁参照)。島状成長では、各成長島は、一定の結晶方位に沿って画一的に配向するとは限らない。このため、成長島を成長核として発達するリン化硼素系半導体層も、乱雑な配向性の結晶体から構成される不均質なものとなる欠点がある。或いは、Stranski−Krastanov様式状(上記の「薄膜作製ハンドブック」、59頁参照)の島状成長が誘因されるため、表面の平坦性に優れる連続性のあるリン化硼素系半導体層を安定して得るに支障を来している。
【0006】
画一的な配向性の結晶体をもってなるリン化硼素系半導体層を提供するに有効な気相成長手段が有れば、それを利用して、例えば、正常なpn接合特性を顕現でき、順方向電圧(所謂、Vf)の低いLED、また、閾値電圧(所謂、Vth)の低いLDを簡便に提供できる。本発明では、特に、格子ミスマッチ度を大とする結晶基板上に、画一的な結晶面方位を有する連続性のあるリン化硼素系結晶層を簡便に且つ安定してもたらすためのリン化硼素緩衝層の形成方法を提供する。また、その緩衝層並びにリン化硼素系結晶層を利用して構成したリン化硼素系半導体素子を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
(1)硼素(B)を含む化合物を硼素源とし、リン(P)を含む化合物をリン源とする気相成長法により、結晶基板の表面上に、リン化硼素からなる緩衝層(リン化硼素緩衝層)と、硼素及びリンを構成元素とするリン化硼素系結晶層とを順次形成するリン化硼素系半導体層の製造方法において、第1の温度T1(但し、250℃≦T1≦750℃)に保持された結晶基板の表面に硼素源を流通させて、硼素を主体とする被膜を結晶基板の表面に気相成長させる第1の工程と、その後、結晶基板の温度を第2の温度T2(但し、T1≦T2≦1200℃)として、リン源を含む雰囲気内で、前記硼素を主体とする被膜にリンを浸透させる第2の工程とを経由して、結晶基板の表面上にリン化硼素緩衝層を形成することを特徴とするリン化硼素系半導体層の製造方法。
(2)第2の工程の後、リン源を含む雰囲気内で、結晶基板の温度を第2の温度T2以上に維持し、リン化硼素緩衝層に熱処理を施す第3の工程を含むことを特徴とする上記(1)に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(3)硼素源及びリン源の双方を同時に流通して、リン化硼素緩衝層上にリン化硼素系結晶層を気相成長させる第4の工程を含むことを特徴とする上記(2)に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(4)第2、第3、第4の工程を、第1の工程において結晶基板の表面に硼素を主体とする被膜を気相成長させたのと同一の気相成長装置で行うことを特徴とする上記(3)に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(5)結晶基板の表面への硼素源の流通を停止して第1の工程を終了させると同時に、雰囲気へリン源の供給を開始し第2の工程を開始することを特徴とする上記(4)に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(6)硼素を主体とする被膜の膜厚が1nm以上100nm以下であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(7)リン源の体積比率を3%以上とする雰囲気中で第2の工程を行うことを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(8)第3の工程でリン化硼素緩衝層の熱処理を、5分間〜40分間行うことを特徴とする上記(2)ないし(5)のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
(9)結晶基板として、珪素(Si)単結晶を用いることを特徴とする上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
である。
【0008】
また、本発明は
(10)上記(1)ないし(9)のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法により製造したリン化硼素系半導体層。
(11)上記(10)に記載のリン化硼素系半導体層を備えてなるリン化硼素系半導体素子。
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のリン化硼素系半導体層の製造方法において、第1の工程は、硼素を含む化合物からなる硼素源を熱分解させて、硼素を主体とする被膜を結晶基板の表面に形成するための工程である。硼素源としては、三塩化硼素(BCl3)や三塩化臭素(BBr3)等のハロゲン化硼素化合物、ボラン(BH3)またはジボラン(B2H6)等の硼素水素化物、或いはトリエチル硼素((C2H5)3B)等の有機硼素化合物を例示できる。これらの硼素源を加熱された結晶基板の表面に向けて供給し、硼素源の熱分解により放出された硼素を結晶基板に被着させて硼素を主体とした被膜を形成する。被膜には、硼素源の熱分解に因り発生した硼素以外の元素或いは分解生成物が含まれる場合がある。例えば、(C2H5)3Bを硼素源として形成した被膜には、硼素以外に炭素(C)或いは水素(H)が含有される場合がある。硼素を主体とする被膜とは、硼素の重量含有量を80%以上とする被膜である。硼素を主体とする被膜の形成には、結晶基板の温度を250℃以上に保持するのが好適である。250℃未満の温度では硼素源の熱分解が充分に進行せず、硼素を主体とする被膜を安定して形成するには不都合である。また、750℃を超える高温では、被膜を構成する硼素の凝縮が顕著に起こり、硼素を主体とする半球状の被膜が島状に結晶基板の表面に散在する状態を招く。このため、結晶基板の表面を均一に硼素を主体とする被膜で被覆するに至らず、後述する第4の工程で連続性のあるリン化硼素系結晶層を得るに難を来す。即ち、硼素を主体とする被膜を形成する第1の工程にあって、好適な温度T1(℃)は、250℃≦T1≦750℃となる。
【0010】
第1の工程において、硼素を主体とする被膜は複数種の硼素源を利用して形成できるが、硼素源を単一とすれば簡便に被膜を形成できて利便である。室温で液体である(C2H5)3B等の硼素源は、水素等の発泡(バブリング)用気体に随伴させて被膜を形成するための気相成長装置内に供給できる。例えば、恒温に維持した(C2H5)3Bを一定の時間、気相成長装置内に供給して被膜を形成する場合、硼素源を発泡するための気体の流量を増加させれば、被膜の膜厚は増加させられる。(C2H5)3B等の硼素源の蒸気を随伴する気体を、更に、搬送(carrier)ガスと混合させて流通させれば、気相成長装置の内部により間断なく安定して硼素源を供給できる。搬送気体には、水素(H2)、窒素(N2)並びにアルゴン(Ar)等の単体ガスを利用できる。被膜の膜厚は1nm以上で100nm以下とするのが好ましい。1nm未満の極く薄膜では、硼素を主体とする被膜が結晶基板の表面を充分に一様に被覆するに至らず、第4の工程で結晶基板の表面を一様に被覆するリン化硼素系結晶層を得るに支障となる。また被膜の膜厚が100nmを超える厚膜では、表面の平坦性に劣るため、第4の工程において、表面を平坦とし層厚を均一とするリン化硼素系結晶層を得るに難を来す。また、膜厚を更に約200nmを超える厚膜とすると、結晶基板から硼素を主体とする被膜が剥離する不都合を生ずる場合がある。硼素を主体とする被膜のさらに好適な膜厚は、概して約5nm〜約50nmである。
【0011】
第2の工程は、第1の工程で結晶基板の表面上に形成した硼素を主体とする被膜をリン源を含む雰囲気内で加熱して、被膜の内部にリンを浸透させて、硼素を主体とする被膜をリン化硼素からなる緩衝層に転化させるための工程である。リン源としては、三塩化リン(PCl3)や三臭化リン(PBr3)等のハロゲン化リン化合物、ホスフィン(PH3)等のリン水素化物、或いは有機リン化合物を例示できる。酸素(O)を含むリン化合物は、被膜を主体的に構成する硼素、または被膜に浸透したリンに酸化作用を及ぼし、酸化物からなる析出物をもたらすため好ましいリン源とは成りかねる。リン源のみを流通させて雰囲気を構成することもできるが、例えば、リン源を上記の搬送ガスと共に流通すると、リン源の濃度が調節された雰囲気を創出できる。例えば、第1の工程において被膜を形成した気相成長装置の内部に、PH3と搬送ガスの水素の混合ガスを流通してリン源を含む雰囲気を構成する。この場合、第2の工程を行う温度を考慮すると、雰囲気の混合ガス中のリン源の体積比率を3%以上とすると、硼素を主体とする被膜にリンを効率的に浸透させられる。被膜中に存在するリンの量は、例えば、2次イオン質量分析(SIMS)法やオージェ電子分光法(AES)、電子線プローブ(probe)X線分析法等の元素分析法で定量できる。
【0012】
第2の工程における結晶基板の温度(第2の温度T2)は、第1の工程に於ける結晶基板の温度(第1の温度T1)より高温で、且つ、1200℃以下の温度とする。1200℃を超える高温では、例えば、菱面体結晶構造のB13P2等のリン化硼素多量体の発生を招き(J.Am.Ceramic Soc.,47(1)(1964)、44〜46頁参照)、上層として結晶性の揃ったリン化硼素系結晶層を得るに不都合となる。一方、T1(250℃≦T1≦750℃)以下の温度では、リン源の熱分解が充分に進行しないため、硼素を主体としてなる被膜に浸透させるリンを効率的に放出できなくなり不都合である。よって、第2の工程で好適となる第2の温度T2(℃)は、T1≦T2≦1200℃の範囲である。リン源としてPCl3等のハロゲン化リン化合物を使用した場合、熱分解で発生するハロゲン化物に因り、硼素を主体としてなる被膜が食刻(エッチング)される場合がある。食刻は高温である程、顕著となるため、ハロゲン化リン化合物をリン源とする際には、第2の工程に於ける第2の温度は、上記の好適な範囲内で比較的低温に設定するのが望ましい。即ち、概ね950℃以下とするのが好ましい。リン源に因る食刻が発生しない場合、第2の工程を終了した後に得られるリン化硼素層の層厚は、第1の工程で形成した硼素を主体とする被膜の膜厚と略同等となる。
【0013】
本発明の第1の実施形態の好例としては、第1の工程として、トリエチル硼素((C2H5)3B)を硼素源に用いて、第1の温度T1を450℃として、MOCVD成長装置内で、{111}結晶面を有する珪素単結晶基板({111}−珪素単結晶基板)の表面上に、膜厚を約20nmとする硼素からなる被膜を気相成長させ、その後第2の工程として、体積百分率にして6%のホスフィン(PH3)を含む水素雰囲気中で、基板の温度を450℃から第2の温度(=T2)である1050℃に昇温しつつ、上記の硼素からなる被膜にリンを浸透させる工程を経由して、リン化硼素層を形成する手法を挙げられる。第1及び第2の工程を経て形成されたリン化硼素層は、結晶基板との格子ミスマッチを緩和して結晶性に優れる上層をもたらすに有効な緩衝層として作用できる。この緩衝層は、従来の硼素源とリン源とを結晶基板の表面に併せて供給して気相成長させた低温緩衝層(上記の米国特許6,069,021号参照)よりも、更に表面の平坦性に優れたリン化硼素系結晶層をもたらせる緩衝層として作用する。また、画一的な結晶方位の結晶面からなるリン化硼素系結晶層を上層としてもたらす作用を発揮する。
【0014】
緩衝層として有効に作用するリン化硼素緩衝層を、上記の第1及び第2の工程を経由して形成した後、更に、リン源を含む雰囲気内で熱処理(anneal)を施すことにより、該リン化硼素緩衝層をリン組成の均一な、しかも、配向性の揃った緩衝層となすことができる。低温ではリン源の熱分解が充分に進行せず、また、高温ではリン化硼素多量体の発生を誘引するため、熱処理温度は、第2の温度T2(但し、T1≦T2≦1200℃)以上とするのが適する。雰囲気は、その熱処理を施す温度において、少なくとも、リン化硼素から解離するリン分子の圧力を超える分圧のリン源を含有している必要がある。リン化硼素の解離圧(P;単位hPa)は、温度をT(単位:K)として次記の関係式(1)より求められるとされる(J.Am.Chem.Soc.,82(1960)、1330〜1332頁参照)。
logP=−(13.7×103/T)+10.2 ・・・・・関係式(1)
熱処理に依る組成の均一化或いは配向性の画一化の効果は、当量的に見合わない化学量論的に不均衡な組成のリン化硼素についても達成され得る。
【0015】
本発明の第2の実施形態の好例として、第1及び第2の工程を経過して形成したリン化硼素からなる緩衝層に対して、第3の工程において、第2の工程の第2の温度と同じ950℃で、体積百分率にして10%のPH3を含むPH3とArの混合ガスからなる雰囲気中で、15分間に亘る熱処理を施す手法を挙げられる。熱処理に依る効果は、熱処理温度を第2の工程の第2の温度以上とすることに依り顕著に発現できる。但し、1200℃を超える高温での熱処理はB13P2等の多量体の発生を来たし、結局のところ結晶型を相違する不均質なリン化硼素緩衝層をもたらすため好ましくはない。第3の工程の熱処理時間としては、およそ5分間〜40分間とするのが好適である。第3の工程に係わる熱処理は、一定の温度に一定の時間に亘り保持する手段に限定されない。例えば、或る温度T2より別の温度へ昇温または降温しつつ、熱処理を施す手法もある。本発明の第2の実施形態の別の例として、例えば、第2の温度を900℃として第2の工程を終了した後、体積百分率にして8%のPH3を含むPH3とN2の混合ガスからなる雰囲気中で、リン化硼素緩衝層の温度を1100℃まで毎分20℃の速度で昇温して、10分間に亘り熱処理を施す手法を挙げられる。急激な速度での昇温または降温は、却って、緩衝層に熱的歪を導入することとなる。逆に、緩慢な速度での昇温または降温は緩衝層からのリンの揮発の機会を徒に増やし、リンの逸脱に因る緩衝層の表面の乱雑化を助長するに過ぎない。このような問題を排除するに好適となる昇温或いは降温速度は概して、毎分約10℃から毎分約50℃の範囲にある。
【0016】
上記の如く、第1及び第2の工程を経由して形成したリン化硼素層は、結晶基板との格子ミスマッチを緩和する緩衝層として有効に利用できる。従って、この緩衝層上には結晶欠陥の少ない結晶性を良好とするリン化硼素系結晶層を成長させられる。リン化硼素系結晶層とは、硼素とリンとを構成元素として含む、例えばBαAlβGaγIn1- α - β - γP1- δAsδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)、また例えば、BαAlβGaγIn1- α - β - γP1- δNδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)である。半導体素子を構成するための機能層として利用するためには、これらのリン化硼素系結晶層は化学量論的に均衡の取れているのが好適である。従って、第1の工程においてリン化硼素緩衝層を気相成長させる場合とは異なり、リン化硼素系結晶層は、硼素源及びリン源の双方を同時に流通してリン化硼素緩衝層上に形成する。本発明の第3の実施形態の一例として、リン化硼素(BP)緩衝層上に、第4の工程として、(C2H5)3Bとトリメチルガリウム((CH3)3Ga)とPH3とを並行して流通しつつ、MOCVD法に依り間接遷移型のBXGa1-XP(0≦X≦1)層を気相成長させる例を挙げられる。
【0017】
第1の工程で硼素を主体とする被膜の形成を硼素源の供給を停止して終了させた後、代替にリン源を供給して、同一の気相成長装置において、引き続き第2の工程を進行させることとすると、簡便にリン化硼素緩衝層を気相成長させられる。この手法に依れば、第1の工程を終了後、硼素を主体とする被膜を大気に曝すことなく第2の工程に移行できるので、例えば、硼素酸化物の形成に因り、被膜表面の平滑性を損なわれるのを防止できる。また、第2の工程に引き続き第3及び第4の工程を同一の気相成長装置で実施すれば、間断無く第2、第3及び第4の工程を簡易に遂行できる利点がある。また、第1から第4に至る工程に同一の硼素源とリン源を用れば尚更のこと、簡便にリン化硼素系半導体層を形成できる。本発明の第4の実施形態の好例として、ジボラン(B2H6)とホスフィン(PH3)とを共通の原料として、第1、第2、第3および第4の工程を同一のハイドライド気相成長装置内で実施する場合を挙げられる。
【0018】
第1の工程で硼素を主体とする被膜の形成に使用した硼素源の供給を停止して、直ちに、第2の工程のための第2の温度に昇温しつつ、併せて、リン源の供給を開始すると、結晶面方位を画一的とするリン化硼素系結晶層を与えるリン化硼素緩衝層を構成できる。特に、結晶基板表面の結晶面と同一の結晶面から画一的になる結晶層が得られる。例えば、{111}−珪素単結晶基板上に、{111}結晶面から画一的になるリン化硼素系結晶層をもたらせるリン化硼素緩衝層を提供できる。第1の工程に使用した硼素源の供給を停止した後、リン源の供給を開始する迄に約1分間を超える長時間の間隔を設けると、結晶面方位を相違する結晶が混在するリン化硼素系結晶層を時として与えるリン化硼素緩衝層が帰結される場合がある。これは、硼素源の供給を停止して暫時、被膜を搬送ガスのみの雰囲気内で放置した際に形成される多角形形状或いは球状の硼素体の発生に起因するものと思量される。この様な球状の硼素体の発生の状況は既に公開されている刊行物に見て取れる(J.Solid State Chem.,133(1997)、314〜321頁にあって、特に、316頁に掲載のFIG.2)。本発明の第5の実施形態の一例として、第1の工程で使用した(C2H5)3Bの硼素源の供給を停止すると同時に、PH3を第1の工程で利用したMOCVD気相成長装置内に供給して、第2の工程を直ちに開始する手法を挙げられる。
【0019】
本発明の第1及び第2の工程を経由して形成されたリン化硼素緩衝層上には、第4の工程に依り、結晶性に優れるリン化硼素系結晶層を設けることができる。この結晶性の良好なリン化硼素系結晶層を下地層とすれば、その上層も結晶性に優れたものとなる。これらの結晶性の良いリン化硼素系結晶層或いは上層を種々の機能層として活用すれば、特性に優れるリン化硼素系半導体素子を構成できる。本発明の第6の実施形態の一例として、珪素単結晶基板上に設けた次の(a)〜(e)に記載の各機能層を備えたエピタキシャル積層構造体からpn接合型リン化硼素系半導体LEDを構成する場合を挙げられる。
(a)第1の工程で形成した硼素被膜に、第2の工程でリンを浸透させた後、第3の工程で熱処理を施してリンを均一に分布させてなるリン化硼素緩衝層
(b)第4の工程で硼素源とリン源とを同時に供給する気相成長法に依り形成した、例えば、不純物を添加していない所謂、アンドープ(undope)のリン化硼素結晶層からなるp形下部クラッド層
(c)第1乃至第4の工程で使用したMOCVD成長装置を使用して、前項(b)に記載の下部クラッド層に接合させて気相成長させた窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)からなるn形発光層
(d)同じく同一のMOCVD成長装置を使用して、前項(c)の発光層に接合させて設けたアンドープでn形のリン化硼素からなる発光層からのインジウム(In)の揮発を抑制するための蒸発防止層
(e)同じく同一のMOCVD成長装置を使用して、前項(d)の蒸発防止層に接合させて設けたアンドープでn形のリン化硼素からなる上部クラッド層
さらに上記の(a)〜(e)に記載の各機能層を備えたエピタキシャル積層構造体の導電性の珪素単結晶基板の裏面と、この積層構造体の最表層の上部クラッド層に接して互いに極性を異にするオーミック電極を各々、設けてLEDを構成することができる。
【0020】
【作用】
本発明の第1の工程で形成された硼素を主体とする被膜は、後に、結晶基板の表面を一様に均一に被覆する、表面の平坦性に優れるリン化硼素緩衝層をもたらす作用を発揮する。
【0021】
本発明の第2の工程に於けるリン源を含む雰囲気は、硼素を主体とする被膜にリンを浸透させて、硼素を主体とする被膜をリン化硼素緩衝層に転化する作用を有する。
【0022】
【実施例】
(第1実施例)
珪素単結晶基板上に形成した硼素の被膜からリン化硼素層を形成する例を用いて、まず本発明の第1の工程および第2の工程を具体的に説明する。
【0023】
本第1実施例では、一般的なハロゲン気相成長装置(例えば、(社)電子通信学会「半導体・トランジスタ研究会資料/資料番号SSD74−89(1975−03)(1975年3月25日)参照)を利用して、p形{111}−Si単結晶基板の表面上に、第1の工程として硼素からなる被膜を形成した。Si単結晶基板の温度は350℃に維持した。硼素の被膜は、三塩化硼素(BCl3)を硼素源として形成した。BCl3は水素ガスで発泡させた後に気相成長装置に供給した。BCl3の温度は0℃に維持し、その蒸気を随伴する発泡用水素ガスの流量は毎分15ミリリットル(ml)に調整した。また、BCl3の蒸気を随伴する発泡用水素ガスは、毎分8リットル(l)の搬送用水素ガスに混合させて、8分間に亘り、上記のハロゲン気相成長装置に具備されている気相成長炉内に供給した。BCl3の蒸気を随伴する発泡用水素ガスの水素搬送ガスへの供給を停止し、硼素の被膜を形成する第1の工程を終了して、基板を室温近傍の温度に冷却した。その後、硼素の被膜を被着させたSi単結晶基板を気相成長炉から取出して、被膜の膜厚を測定した。特性X線元素分析装置を付帯する分析電子顕微鏡を利用した測定から、被膜の膜厚は約18nmと計測された。電子線回折技法から被膜は、非晶質を主体とする膜であるのが示された。また、被膜中には数10ppmと推定される微量の塩素(Cl)の存在が認められた。
【0024】
ハロゲン気相成長装置より一旦、外部へ取り出して膜厚を測定した後、硼素の被膜を被着したSi単結晶基板を常圧(略大気圧)型MOCVD気相成長装置に具備されたMOCVD成長炉の内部に載置した。その後、MOCVD成長炉内に毎分8リットル(l)の搬送用水素ガスを流通しつつ、Si単結晶基板の温度を室温からを450℃へと加熱した。Si単結晶基板の温度が450℃に到達した時点で、水素搬送ガスへホスフィン(PH3)の混合を開始した。PH3(濃度100%)の流量は毎分400mlに調整した。これより、PH3を体積百分率にして約4.8%(分圧にして約48.5hPa))を含むPH3とH2の混合雰囲気を創出した。然る後、Si単結晶基板の温度を450℃から1050℃へ毎分40℃の速度で昇温しつつ、被膜にリンを浸透させた。Si単結晶基板の温度が1050℃に達した直後に、基板の加温を停止して降温した。PH3は珪素単結晶基板の温度が450℃に降下する迄、上記の流量でMOCVD成長炉内に流通を継続した。基板の温度が450℃となった時点でPH3のMOCVD成長炉内への供給を停止し、水素搬送ガスのみから構成される雰囲気内で室温近傍の温度に降下する迄、待機した。冷却後、MOCVD成長炉からリン化処理を施した硼素被膜を電子線回折技法により解析したところ、硼素被膜はリン化硼素に転化されている結果が示された。層厚は硼素被膜と略同等の約16nm〜約18nmであり、亀裂の無い平坦で連続性のある緩衝層として充分に利用できるものとなった。
【0025】
次に硼素被膜をリンを含む雰囲気内でリン化した後、熱処理を施してリン化硼素緩衝層を形成する場合を例にして、本発明の第3の工程を具体的に説明する。
【0026】
前記の手段により、硼素被膜にPH3とH2の混合雰囲気内でリン化処理を施した後、同じ雰囲気内で1050℃において10分間に亘り基板を保持し、熱処理を施した。その後、基板を室温近傍の温度に冷却した。特性X線元素分析装置を付帯する分析電子顕微鏡を利用して、リン化処理した硼素被膜を有する基板の表面の元素分析を実施したところ、熱処理を行った基板の表面には、熱処理をしなかった場合と比較してより均一にリン(P)が分布しているのが確認された。また、2次イオン質量分析法(SIMS)測定からは、約15〜約17nmの硼素被膜の深さ方向にリンが略一様に浸透しているのが確認された。即ち、本発明に係わる熱処理は、硼素被膜に平面的にも深さ方向にも略均一にリンを浸透させるに有効であった。
【0027】
さらに、第1、第2、第3の工程を経由して形成したリン化硼素緩衝層上に、硼素源及びリン源の双方を流通して、リン化硼素系結晶層を気相成長させる場合を例にして本発明の第4の工程を具体的に説明する。
【0028】
上記の第3の工程での熱処理を施した後、基板の冷却操作を施さず、Si単結晶基板の温度を1050℃に維持したままで、MOCVD成長炉内でリン化硼素結晶層をリン化硼素緩衝層上に気相成長させた。リン化硼素結晶層は、毎分8lの流量の水素搬送ガスに、トリエチル硼素((C2H5)3B)の蒸気を随伴した発泡用水素ガスとPH3とを併せて、MOCVD成長炉内に流通させて形成した。25℃の恒温に保持された(C2H5)3Bを発泡させ、その蒸気を随伴する水素発泡ガスの流量は毎分45mlとした。PH3(濃度100%)の流量は毎分430mlに設定した。(C2H5)3Bの蒸気を随伴する水素ガス及びPH3を含む水素搬送ガスを8分間に亘り継続して流通して、リン化硼素緩衝層上にアンドープでp形のリン化硼素結晶層を得た。リン化硼素結晶層の層厚は約420nmであり、キャリア濃度は約2×1019cm-3であった。本発明のリン化硼素緩衝層を下地とすることに依り、亀裂も視認されない連続なリン化硼素結晶層の成膜が可能となった。
【0029】
(第2実施例)
本第2実施例では、第1の工程において硼素被膜を結晶基板上に形成させたのと同一のMOCVD気相成長装置で、第2、第3及び第4の工程を行う場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。
【0030】
先ず、常圧(略大気圧)型MOCVD気相成長装置を利用して、n形{111}−Si単結晶基板の表面上に、硼素からなる被膜を形成した。Si単結晶基板の温度は450℃に維持した。硼素被膜は、(C2H5)3Bを硼素源として形成した。(C2H5)3Bは水素ガスで発泡させた後に供給した。(C2H5)3Bの温度は25℃に維持し、その蒸気を随伴する発泡用水素ガスの流量は毎分10ミリリットル(ml)に調整した。また、(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスは、毎分12リットル(l)の搬送用水素ガスに混合させて、1.5分間に亘り、上記のMOCVD気相成長装置に具備されているMOCVD成長炉内に供給した。(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスの水素搬送ガスへの供給を停止し、硼素被膜を形成する第1の工程を終了した。第1の工程を終了した後、30秒間に亘り、搬送用水素ガスのみを流通し続け、MOCVD成長炉内に残存している上記の硼素源を炉外へ掃引することとした。
【0031】
その後、硼素被膜を被着させたのと同一のMOCVD成長炉内に、毎分12リットル(l)の搬送用水素ガスを流通しつつ、PH3の混合を開始した。PH3(濃度100%)の流量は毎分430mlに調整した。これより、PH3を体積百分率にして約3.5%(分圧にして約35.0hPaTorr)を含むPH3とH2の混合雰囲気を創出した。次に、Si単結晶基板の温度を450℃から850℃に加熱しつつ、硼素被膜にリンを浸透させて、リン化硼素緩衝層を形成する第2の工程を終了した。
【0032】
引き続き、上記のPH3とH2の混合雰囲気内で850℃に10分間に亘り基板を保持する第3の工程をもって、第2の工程に依るリン化硼素緩衝層にリンを均一に浸透させる熱処理を施した。第3の工程の終了時に於ける緩衝層の層厚は硼素被膜と略同等の約20nmであり、亀裂の無い平坦で連続層であった。また、オージェ(Auger)分光分析からは、緩衝層の表面に濃度的に略一様に、且つ、約20nmの層厚の深さ方向にリンが略一様に浸透しているのが確認された。
【0033】
次に、PH3(体積百分率≒3.5%)とH2の混合雰囲気内で珪素単結晶基板の温度を850℃に保持しつつ、上記の第1乃至第3の工程を実施したのと同一のMOCVD成長炉内に、(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスを供給した。上記の流量の水素搬送ガスに混合させた発泡用水素ガスの流量は毎分25mlとした。(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスとPH3とを含む搬送用水素ガスを12分間に亘り、MOCVD成長炉内に供給して、層厚を約32nmとするアンドープでn形のリン化硼素結晶層をリン化硼素緩衝層上に形成した。リン化硼素結晶層のキャリア濃度は約6×1018cm-3であった。第1乃至第3の工程を経由して形成したリン化硼素緩衝層を下地層とし、尚且、第1乃至第4の工程を同一の気相成長炉(MOCVD成長炉)を利用して実施したため、亀裂のない平坦なリン化硼素結晶層を簡便にもたらすに有効となった。また、工程を一貫して同一のMOCVD成長炉内で行うこととし、硼素被膜の外気への暴露を回避したため、第1の実施例の場合とは異なり、リン化硼素緩衝層の表面に、硼素或いはリンの酸化物からなる析出物は認められなかった。
【0034】
(第3実施例)
結晶基板表面への硼素源の流通を停止して第1の工程を終了した後、直ちにリン源を供給して第2の工程を実施する場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。
【0035】
第2実施例において、硼素源のMOCVD成長炉内への供給を停止してリン化硼素緩衝層の形成を終了した後、間断無く、PH3を水素搬送ガスに混合させて流通させた。即ち、第2実施例で設けた第1の工程の終了後の30秒間の間隔を、本第3実施例では設けずにPH3ガスを流通させ、第2の工程に移行した。その後、第2実施例と同一の条件で第3乃至第4の工程を実施し、リン化硼素緩衝層上にアンドープでn形のリン化硼素結晶層を形成した。リン化硼素結晶層の表面には、球状の突起物は認められず、平坦であった。一般的なX線回折法を利用した結晶構造の解析に依れば、図1のX線回折パターンに示す如く、リン化硼素結晶層は<111>結晶方向に画一的に配向した{111}結晶面からなる連続層であった。また、その層厚は第2実施例の場合と略同一であった。
【0036】
一方、リン化硼素緩衝層の層厚は約25nmとなっており、第2実施例の場合と比較して約5nm程、厚くなっていた。これは、水素搬送ガスのみからなる雰囲気内に暴露される期間を削除したため、水素と硼素被膜を構成する硼素との結合に因る揮発性の成分の発生が回避されたたためと思量された。例えば、含硼素有機高分子体(梶原 鳴雪著、「概説無機高分子」(昭和53年4月10日、(株)地人書館発行第1版第1刷)、53頁参照)と水素との結合に因る揮発性成分の形成が回避され、揮発に因る硼素の被膜からの逸脱が避けられたのが層厚を厚く保つ一因と推定された。
【0037】
(第4実施例)
本発明に係わるリン化硼素緩衝層及びリン化硼素結晶層を備えたエピタキシャル積層構造体からリン化硼素系LEDを構成する場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。
【0038】
図2に本第4実施例に係るLED1Bの平面模式図を示す。図3には、図2の破線X−X’に沿ったLED1Bの断面の構造を模式的に示す。
【0039】
エピタキシャル積層構造体1Aは、n形{111}−珪素単結晶基板101上に上記の第2実施例と同様にして形成したリン化硼素緩衝層102及びn形{111}−リン化硼素結晶層103と、該n形リン化硼素結晶層103上に設けた発光層104、蒸発防止層105及びp形リン化硼素結晶層106とから構成した。発光層104は、n形の窒化ガリウム・インジウム混晶(GaXIn1-XN)層から構成した。GaXIn1-XN層は、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)/トリメチルインジウム((CH3)3In)/アンモニア(NH3)/H2反応系を利用して850℃で形成した。また、GaXIn1-XNは、n形リン化硼素結晶層103を形成したMOCVD気相成長装置を使用して形成した。六方晶ウルツ鉱結晶型のGaXIn1-XNのインジウム組成比(=1−X)は、n形リン化硼素(BP)結晶層103の表面をなす{111}−BP結晶面に鉛直に交差する{110}−BP結晶面の間隔(≒3.21Å)に合致するa軸の格子定数となるように10%とした。
【0040】
(CH3)3Ga及び(CH3)3InのMOCVD成長炉内への供給を停止して発光層104の形成を終了した後、基板101を850℃に保持しつつ、NH3をPH3に切り換えた。並行して(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスを搬送用水素ガスに混合させて、発光層104を形成したMOCVD成長炉内に供給した。25℃の恒温に保持した(C2H5)3Bへの発泡用水素ガスの流量は毎分10mlとし、搬送用水素ガスの流量は毎分12リットル(l)とした。(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスを1分間に亘り流通して、膜厚を約15nmとするアンドープのn形リン化硼素層を発光層104に接合させて設けた。このn形リン化硼素層は発光層104を構成するGa0.90In0。10Nからのインジウム(In)の揮散を防止するための蒸発防止層105として設けた。
【0041】
然る後、一旦、(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスの水素搬送ガスへの添加を中止して、PH3とH2の混合雰囲気中で基板101を850℃から1050℃へ昇温した。基板101の温度が1050℃に到達した後、(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスの水素搬送ガスへの添加を再開して、アンドープでp形のリン化硼素結晶層106を形成した。p形リン化硼素結晶層106の層厚は約210nmとした。また、通常の電解C−V法に依り測定された同層106のキャリア濃度は約2×1019cm-3であった。(C2H5)3Bの蒸気を随伴する発泡用水素ガスの水素搬送ガスへの添加を停止して、p形リン化硼素結晶層106の形成を終了した後、PH3とH2の混合雰囲気中で積層構造体1Aの温度を約600℃に降温した。その後、MOCVD成長炉内へのPH3の供給を停止し、H2気流中で積層構造体1Aを室温近傍迄、冷却した。
【0042】
積層構造体1Aの表層をなすp形リン化硼素結晶層106の中央部には、同層106に接触する側に金・亜鉛(Au・Zn)合金からなるオーミック電極を配置したAu・Zn/ニッケル(Ni)/Auの3層重層構造からなる表面電極107を設けた。結線用の台座(pad)電極を兼ねる表面電極107は、直径を約120μmとする円形の電極とした。また、n形Si単結晶基板101の裏面の略全面には、裏面電極108としてアルミニウム(Al)からなるオーミック電極を配置した。Al蒸着膜の膜厚は約2μmとした。これより、n形発光層104をp形及びn形リン化硼素結晶層106、103で挟持したpn接合型DH構造のLED1Bを構成した。p形及びn形の双方のリン化硼素層106、103は何れも、室温での禁止帯幅として約3eVを有するため、発光層104に対するクラッド(clad)層として有効に利用できた。
【0043】
表面電極107と裏面電極108との間に順方向に20ミリアンペア(mA)の動作電流を通流したところ、LED1Bから波長を約440nmとする青紫帯光が発せられた。一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態での輝度は9ミリカンデラ(mcd)となり、高発光強度のLED1Bが提供された。また、n形発光層104とp形リン化硼素層106との何れも表面の平坦性に優れる連続膜からpn接合を構成したため、順方向電圧(但し、順方向電流=20mA)を約3Vとし、逆方向電圧(但し、逆方向電流=10μA)を5V以上とする良好な整流特性を有するリン化硼素系LEDが提供されることとなった。
【0044】
【発明の効果】
結晶基板の表面上に、硼素を含む化合物を硼素源とし、また、リンを含む化合物とをリン源とする気相成長法に依り、リン化硼素緩衝層と、リン化硼素緩衝層上に、硼素及びリンを構成元素とするリン化硼素系結晶層とを形成するリン化硼素系半導体層の製造方法において、リン化硼素緩衝層を、第1の温度T1(但し、250℃≦T1≦750℃)に保持された結晶基板の表面に、硼素源を流通させて、硼素を主体とする被膜を気相成長する第1の工程と、第2の温度T2(但し、T1≦T2≦1200℃)で、リン源を含む雰囲気内で、硼素を主体とする被膜にリンを浸透させる第2の工程と経由して形成することとしたので、連続性に優れるリン化硼素系結晶層を形成することが出来た。
【0045】
特に第2の工程の後、リン源を含む雰囲気内で、結晶基板の温度を第2の温度以上に維持し、第1及び第2の工程を経由して形成したリン化硼素緩衝層に、第3の工程として熱処理を施してリン化硼素緩衝層を形成すると、硼素を主体としてなる被膜へリンを平面的にも深さ方向へも一様に浸透させることができ、表面が平坦で連続なリン化硼素系半導体結晶層の形成するに効果を上げられる。
【0046】
また、第1、第2、第3の工程を経由して形成したリン化硼素緩衝層上に、硼素源及びリン源の双方を流通して、リン化硼素系結晶層を気相成長させる第4の工程を含む方法によって、リン化硼素系結晶層を形成すると、連続性のあるリン化硼素系結晶層を形成することができる。
【0047】
また、第2、第3及び第4の工程を、第1の工程で硼素を主体とする被膜を気相成長させたと同一の気相成長装置で行うこととしたので、緩衝層上に簡便にリン化硼素系結晶層を形成するに効果がある。
【0048】
また、結晶基板表面への硼素源の流通を停止して第1の工程を終了させると同時に、第2の工程を開始してリン化硼素緩衝層を形成すると、表面状態に優れるリン化硼素緩衝層を形成でき、しいては連続性に優れるリン化硼素系結晶層を形成するに効果を上げられる。
【0049】
また、本発明に係わるリン化硼素緩衝層及びリン化硼素系結晶層とを用いてリン化硼素系半導体素子を構成すると、例えばpn接合特性に優れる高輝度のLEDを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第3実施例に係るリン化硼素結晶層のX線回折パターンを示す図である。
【図2】 本発明の第4実施例に係るLEDの平面模式図である。
【図3】 図2に示すLEDの破線X−X’に沿った断面模式図である。
【符号の説明】
1A エピタキシャル積層構造体
1B LED
101 珪素単結晶基板
102 リン化硼素緩衝層
103 n形リン化硼素結晶層
104 発光層
105 蒸発防止層
106 p形リン化硼素結晶層
107 表面電極
108 裏面電極
Claims (11)
- 硼素(B)を含む化合物を硼素源とし、リン(P)を含む化合物をリン源とする気相成長法により、結晶基板の表面上に、リン化硼素からなる緩衝層(リン化硼素緩衝層)と、硼素及びリンを構成元素とするリン化硼素系結晶層とを順次形成するリン化硼素系半導体層の製造方法において、第1の温度T1(但し、250℃≦T1≦750℃)に保持された結晶基板の表面に硼素源を流通させて、硼素を主体とする被膜を結晶基板の表面に気相成長させる第1の工程と、その後、結晶基板の温度を第2の温度T2(但し、T1≦T2≦1200℃)として、リン源を含む雰囲気内で、前記硼素を主体とする被膜にリンを浸透させる第2の工程とを経由して、結晶基板の表面上にリン化硼素緩衝層を形成することを特徴とするリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 第2の工程の後、リン源を含む雰囲気内で、結晶基板の温度を第2の温度T2以上に維持し、リン化硼素緩衝層に熱処理を施す第3の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 硼素源及びリン源の双方を同時に流通して、リン化硼素緩衝層上にリン化硼素系結晶層を気相成長させる第4の工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 第2、第3、第4の工程を、第1の工程において結晶基板の表面に硼素を主体とする被膜を気相成長させたのと同一の気相成長装置で行うことを特徴とする請求項3に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 結晶基板の表面への硼素源の流通を停止して第1の工程を終了させると同時に、雰囲気へリン源の供給を開始し第2の工程を開始することを特徴とする請求項4に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 硼素を主体とする被膜の膜厚が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- リン源の体積比率を3%以上とする雰囲気中で第2の工程を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 第3の工程でリン化硼素緩衝層の熱処理を、5分間〜40分間行うことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 結晶基板として、珪素(Si)単結晶を用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法。
- 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のリン化硼素系半導体層の製造方法により製造したリン化硼素系半導体層。
- 請求項10に記載のリン化硼素系半導体層を備えてなるリン化硼素系半導体素子。
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