JP3639276B2 - p形リン化硼素半導体層の製造方法、化合物半導体素子、ツェナーダイオード、及び発光ダイオード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低抵抗のp形リン化硼素半導体層の製造方法、及びこのp形リン化硼素半導体層を備えてなる化合物半導体素子、ツェナーダイオード、発光ダイオードに関する。
【0002】
【従来の技術】
III −V族化合物半導体の一つとして、単量体のリン化硼素(化学式:BP)が知られている(非特許文献1参照)。リン化硼素層は、従来より、ハロゲン(halogen)法(非特許文献2参照)、ハイドライド(hydride)法(非特許文献3参照)、有機金属化学的気相堆積(MOCVD)法(特許文献1参照)、及び化学的ビーム蒸着法(非特許文献4参照)などの気相成長手段によりもっぱら形成されている。例えば、ハイドライド法では、ジボラン(分子式:B2 H6 )を硼素原料とし、ホスフィン(分子式:PH3 )をリン原料としてリン化硼素層が気相成長されている(非特許文献3参照)。また、MOCVD法では、トリエチル硼素(分子式:(C2H5)3B)を硼素原料とし、ホスフィン(PH3)をリン原料として気相成長されている(特許文献1参照)。
【0003】
ハイドライド法に依るリン化硼素層の形成では、気相成長領域に供給する硼素原料に対するリン原料の濃度比率、所謂、V/III 比率を低比率に設定すれば、p形のリン化硼素層が形成されると言われている(非特許文献5参照)。また、リン化硼素結晶では、正孔(hole)の有効質量(effective mass)が電子より小さいことから、p形伝導層がn形伝導層よりも簡易に形成できると言われている(特許文献2参照)。従って、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)は、半導体pn接合構造を構成するに優位に利用できると想到される。例えば、n形導電層は簡易に形成され得るものの、アズ−グローン(as−grown)状態で低抵抗のp形導電層を容易には形成できないAlxGayInzN(0≦x、y、z≦1、x+y+z=1)等のIII 族窒化物半導体層に代替して、p形リン化硼素層とn形III 族窒化物半導体層とでpn接合構造を構成する例を挙げることができる。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第6,069,021号明細書
【特許文献2】
特開平2−288388号公報
【非特許文献1】
ピー・ポッパァ(P.POPPER)外、”Boron Phosphide, a III−V Compound of Zinc-Blende Structure”、ネイチャー(Nature),4569号、1957年5月25日,(英国)、p.1075
【非特許文献2】
ティー・エル・チュー(T.L.CHU)外、”Crystals and Epita xial Layers of Boron Phosphide", ジャーナル オブ アプライドフィジクス(Journal of Applied Physics)、第42巻、第1号、1971年1月、(米国)、p.420−424
【非特許文献3】
ケー・ショーノ(K.SHOHNO)外、”EPITAXIAL GROWTH OF BP COMPOUNDS ON Si SUBSTRATES USING THE B2H6-PH3-H2 SYSTEM”、ジャーナル オブ クリスタル グロース(Journal ofCrystal Growth)、第24/25巻、1974年、 (オランダ)、p.193−196
【非特許文献4】
ワイ・クマシロ外、”Preparation and Electrical Properties of B oron and Boron Phosphide Films Obtained by Gas Source Molecula r Beam Deposition”、ジャーナル オブ ソリッド ステート ケミストリィ(Journal of Solid State Chemistry)、第133巻、1997年、(米国)、p.269−272
【非特許文献5】
庄野 克房著、「半導体技術(上)」、9刷、1992年6月25日、(財)東京大学出版局、p.76−77
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、ハイドライド法でp形リン化硼素層を形成する従来技術では、V/III 比率を低比率に設定する必要があるため、半導体の性質を呈しない高抵抗のBXP(7≦X≦10)の如くの硼素多量体が形成されてしまう問題が指摘されている(非特許文献5参照)。
一方、MOCVD等の気相成長法では、一般に1000℃を超える高温でp形リン化硼素層が形成されている。このため、リン化硼素層を構成する硼素及びリンの高温での揮散が顕著となり、良好な表面状態のp形リン硼素層を得るに至っていない。また、硼素よりリンの揮散が激しく生ずると、p形の伝導性が失われ、表面状態の悪化した高抵抗のリン化硼素層が形成されてしまうといった欠点もある。
また、一般にAlxGayInzN(0≦x、y、z≦1、x+y+z=1)で表記されるIII 族窒化物半導体層は、約1000℃を超える高温では、窒素(元素記号:N)の蒸発に起因した表面状態の悪化、特に、表面の平坦性が損なわれてしまう問題がある。このため、例えばn形III 族窒化物半導体層とp形リン化硼素層とにより、接合界面を平坦とするpn接合構造が形成できていないのが現状である。
【0006】
本発明は、上記の従来技術の欠点を克服するためになされたもので、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を形成する際に、それを堆積するため結晶基板或いは結晶層等の被堆積層を長時間に亘り高温で保持することに起因する被堆積層の表面状態の劣化、及び表面の非平坦化を抑止し、しかも低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を形成し得る方法を提供するとともに、形成した低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を利用した化合物半導体素子を提供することを目的としている。
特に、被堆積層上へ非晶質層を気相成長法に依り堆積させ、次に、非晶質層に熱処理を施す手法を介して、低抵抗のp形リン化硼素層を形成する方法を提供する。また、形成されたp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を利用して構成された、例えば、pn接合構造を備えた化合物半導体素子、ツェナーダイオード、及び発光ダイオードを提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(1)では、硼素(B)を含む化合物からなる硼素原料と、リン(P)を含む化合物からなるリン原料とを気相成長領域に供給して、結晶基板上或いは結晶層上に、p形リン化硼素半導体層を形成する方法に於いて、結晶基板或いは結晶層を、気相成長領域に配置して、250℃以上で1000℃以下の温度に加熱して保持し、硼素原料に対するリン原料の気相成長領域に供給する濃度の比率(V/III 比率)を2以上で50以下となる第1の比率として、硼素とリンとを含む非晶質層を形成し、次いで、非晶質層を、1000℃を超え1200℃以下の温度でリンを含む化合物原料を流通させて構成する雰囲気内で熱処理を施し、その後、熱処理を施した非晶質層上に、750℃以上で1200℃以下の温度で、第1の比率より大きな第2の比率で、p形のリン化硼素半導体層を形成する、ことを特徴としている。
【0008】
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(2)では、上記の製造方法において、非晶質層の熱処理を、リン原料と不活性ガスとの双方を気相成長領域に流通させて構成する混合気体雰囲気内で行う、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(3)では、上記の製造方法において、非晶質層の熱処理を行う際に気相成長領域に供給するリン原料の供給量を、非晶質層を気相成長させる際に気相成長領域に供給したリン原料の供給量以下として、熱処理を行う、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(4)では、上記の製造方法において、非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を形成する際に、珪素を添加しつつ気相成長を行う、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(5)では、上記の製造方法において、上記第2の比率を、600以上で2000以下とする、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(6)では、上記の製造方法において、上記非晶質層の厚さを2nm以上で50nm以下とする、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(7)では、上記の製造方法において、非晶質層の熱処理を、該非晶質層の形成に用いた気相成長装置で行うことを特徴としている。
【0009】
本発明の化合物半導体素子(8)では、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法に依り形成したp形リン化硼素半導体層を備えている、ことを特徴としている。
また、本発明の化合物半導体素子(9)では、上記p形リン化硼素半導体層とのpn接合構造を備えている、ことを特徴としている。
また、本発明の化合物半導体素子(10)では、上記p形リン化硼素半導体層とn形III 族窒化物半導体層とのpn接合構造を備えている、ことを特徴としている。
【0010】
本発明のツェナーダイオード(11)では、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層を、pn接合におけるp層側とした、ことを特徴としている。
本発明の発光ダイオード(12)では、ダイオードのp層側に、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層が設けられ、該p形リン化硼素半導体層に、p形オーミック電極が接続されている、ことを特徴としている。
また、本発明の発光ダイオード(13)では、ダブルヘテロ接合構造を有してなり、上記p形リン化硼素半導体層が一方のクラッド層を構成している、ことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を、結晶基板上或いは結晶層上に形成する。すなわち、後述する単結晶等からなる結晶基板の上や、一般の基板上に形成した結晶層としての金属膜、または半導体層(半導体結晶層)等の上に堆積する。
結晶基板、または結晶層として具体的には、砒化ガリウム(化学式:GaAs)、リン化ガリウム(化学式:GaP)、窒化ガリウム(化学式:GaN)等のIII −V族化合物半導単結晶、サファイア(α−Al2O3単結晶)等の酸化物単結晶、珪素(Si)単結晶(シリコン)及び立方晶または六方晶の炭化珪素(化学式:SiC)等のIV族半導体単結晶等が挙げられる。また、気相成長手段や液相成長手段等に依り成長させた結晶層、例えば、窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム(Alx Gay Inz N:0≦X,Y,Z≦1、X+Y+Z=1)結晶層に堆積することもできる。
【0012】
結晶基板や結晶層の伝導形については、n形或いはp形の何れでも、また、パイ(π)形或いはミュー(ν)形の高抵抗(i形)(米津 宏雄著、「光通信素子光学−発光・受光素子−」、5版、平成7年5月20日、工業図書(株)、317頁参照)の結晶基板或いは結晶層であっても差し支えない。すなわち、良好な結晶性のリン化硼素層(リン化硼素半導体層)を得るためには、伝導形に拘わらずに基板及び結晶層を選択することができる。例えば、ガラス(glass)のような無定形(非晶質)材料も基板として使用できる。ただし、良好な結晶性のリン化硼素層(リン化硼素半導体層)を得るには、基板は単結晶であるのが望ましい。
【0013】
本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法では、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を結晶基板或いは結晶層上に形成するに際し、硼素とリンとを含む非晶質層を介在させて成長させる。硼素とリンとを含む非晶質層としては、単量体のリン化硼素(化学式:BP)、リン化硼素・ガリウム(組成式BxGa1−xP:0<x≦1)、リン化硼素・インジウム(組成式BxIn1−xP:0<x≦1)、リン化アルミニウム・硼素(組成式BxAl1−xP:0<x≦1)等によって構成することができる。なお、組成式B13P2 のような多量体リン化硼素は、菱面体構造の結晶型であるため、立方晶閃亜鉛鉱結晶型のリン化硼素層を成長させるための良好な下地層とは成り難い。
【0014】
非晶質層は、例えば、有機硼素化合物を硼素原料とし、リンの水素化合物をリン原料とする有機金属化学的気相堆積法(MOCVD法)、三塩化硼素(分子式:BCl3 )を硼素原料とし、三塩化リン(分子式:PCl3 )をリン原料とするハロゲン(halogen)法、ジボラン(分子式:B2 H6 )等の硼素の水素化合物を硼素原料とし、ホスフィン(分子式:PH3 )をリン原料とするハイドライド法等の気相成長法に依り成長させる。
【0015】
気相成長法に依り非晶質層を気相成長させる際には、まず、結晶基板または結晶層を、気相成長手段に依って気相成長を実施する領域(=気相成長領域)に配置する。
続いて、気相成長領域に配置した結晶基板或いは結晶層を加熱する。非晶質層の成長は、硼素原料及びリン原料の熱分解が充分に促進され、気相成長領域に放出された硼素原子及びリン原子により成膜が促進され得る温度以上で行う必要があるからである。結晶基板或いは結晶層を加熱して硼素とリンとを含む非晶質層を気相成長させる温度としては、結晶基板或いは結晶層の表面状態の劣化或いは表面の平坦性を悪化させない温度に留めておくのが好ましく、具体的には、250℃以上で1000℃以下の温度とする。
【0016】
非晶質層は、リン化硼素層を格子ミスマッチの大きな結晶基板または結晶層上に形成するに際して、この格子ミスマッチを緩和して良質のp形リン化硼素半導体層を形成するのに寄与する。例えば、珪素(Si)単結晶(格子定数=0.5431nm)基板上に設けたリン化硼素非晶質層は、約16%に及ぶ格子ミスマッチを緩和して良質のリン化硼素層を形成するのに効果がある。また、結晶基板或いは結晶層とリン化硼素層との熱膨張率の差異に起因して発生するp形リン化硼素層の剥離を抑制するのにも効果を有している。
【0017】
これらの効果を安定して発揮させるためには、非晶質層の層厚を2nm(ナノメータ)以上で50nm以下とするのが好ましい。2nm未満の極薄膜では、結晶基板或いは結晶層の被堆積面の表面を充分均等に被覆することができないため、熱膨張率の差異に起因する歪みを均等に緩和するに至らず、上記の効果を充分に得ることができないからである。特に、p形リン化硼素半導体層の剥離を抑止するのに不十分になる。また、50nmを超える層厚とすると、非晶質層の内部に単結晶粒が発生するか、あるいは多結晶層と成り易くなるため好ましくない。このような非晶質層の層厚については、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)に依って実測することができる。
【0018】
また、非晶質層は、気相成長時に気相成長領域に供給する硼素原料(第III 族原料)とリン原料(第V族原料)との濃度の比率(V/III 比率)、すなわち気相成長領域に供給する硼素原子の濃度に対するリン原子濃度の比率を低い比率として気相成長させることで、効率的に得られる。ここで、硼素原料に対するリン原料の比率は、上記したようにV/III 比率と一般に呼称される。硼素原子またはリン原子を唯一含む硼素原料またはリン原料にあっては、上記のV/III 比率は各原料の流量比率で表される
【0019】
非晶質層を定常的に形成するためには、上記のV/III 比率を2以上で50以下とするのが好ましく、したがって本発明では、ここでのV/III 比率、すなわち本発明における第1の比率を2以上で50以下の範囲とする。具体的には、ハロゲン気相成長法を採用する場合、気相成長領域に供給する三臭化硼素(化学式:BBr3 )に対する三塩化リン(化学式:PCl3 )の濃度比率を10として、リン化硼素非晶質層を堆積するといった例を示すことができる。
【0020】
このような非晶質層の上にp形リン化硼素半導体層を形成するためには、非晶質層として、リン原子に比較して硼素原子を化学量論組成的に富裕に含む層であるのが好ましい。しかし、V/III 比率が2未満であると、球状の硼素結晶体が集合した、表面の平坦性に欠ける層が形成されてしまい、表面の平坦性に劣るp形リン化硼素層が形成されてしまう。一方、V/III 比率が50を超える高比率となると、多結晶層が形成され易くなり、安定して非晶質層を得るには至らなくなってしまう。なお、非晶質層から得られる電子線回折或いはX線回折パターンは、ハロー(halo)なものとなる。
【0021】
本発明では、上記の好適な温度及びV/III 比率(第1の比率)の条件のもとで形成した非晶質層に対し、リンを含む化合物原料を流通させて構成する雰囲気内で熱処理(anneal)を施す。
p形リン化硼素半導体層を得るための下地層としては、以下の理由により、化学量量論にリン原子が不足している組成であるのが好ましい。
すなわち、リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)は、非晶質層の化学量論的な組成を受け継いで成長する傾向がある。当量比的にリン原子が不足する非晶質層は、化学量論的組成に於いてリン原子を不足とする。従って、この非晶質層はp形のリン化硼素半導体層を形成するのに良好な下地層となる。
【0022】
上記の非晶質層の熱処理は、非晶質層を構成するリン原子を揮散させることにより、リン原子が化学量論的に不足している非晶質層をもたらす作用を奏する。1000℃を超える高温で非晶質層を熱処理する程、リン原子を揮散させるためには有効となる。しかし、1200℃を超える高温で非晶質層に熱処理を施すと、逆に硼素が極端に富裕となってしまい、硼素結晶球が残存した非平坦な表面となることから好ましくない。したがって、本発明では、非晶質層の熱処理温度を1000℃以上で1200℃以下とする。1000℃未満では、非晶質層からリン原子を効率的に揮散させるに至らず、これにより硼素がリンに比べ富裕に含む非晶質層を安定して形成できず、したがってp形リン化硼素半導体層を形成するのが難しくなってしまう。なお、この熱処理時においては、気相成長領域に硼素原料を流通させる必要は無い。
【0023】
また、非晶質層の熱処理時における雰囲気については、非晶質層の表面状態の劣化を抑制しつつ、リン原子を効率的に揮散することができるような雰囲気とするのが好ましい。具体的には、リン原料(リンを含む化合物原料)の供給量を、非晶質層を気相成長させる際に気相成長領域に供給したリン原料の供給量以下とするのが好ましい。
例えば、気相成長領域に供給するホスフィン(PH3 )の単位時間(毎分)当たりの流量を48ccとし、V/III 比率を16として、600℃でMOCVD法に依りリン化硼素非晶質層を形成する。そして、このように形成したリン化硼素非晶質層に対し、PH3 の流量を24cc/分として、1025℃で熱処理を施す。
但し、過度なリンの揮散に因り、非晶質層の表面が極端に硼素を富裕となり、非平坦となるのを回避するため、熱処理時に於けるリン原料の供給量は0(零)とはしない。非晶質層からのリン原子の揮散は、熱処理温度を高くする程顕著となるため、熱処理温度を高くする程リン原料の供給量を大とするのが好ましい。
【0024】
非晶質層の熱処理は、リン原料のみから構成される雰囲気内で実施する必要は必ずしもない。非晶質層の表面状態を良好に保持しつつ、且つリン原子の揮散を促すためには、適量のリン原料を含む混合気体雰囲気内で実施するのが有効となる。
例えば、アルゴン(元素記号:Ar)やヘリウム(元素記号:He)等の不活性気体とリン原料との混合気体雰囲気内で熱処理するようにしてもよい。これらの不活性ガスは、熱処理時に於ける非晶質層の表面が乱雑となるのを回避するに効果が有るため、熱処理用雰囲気を構成する気体として好適である。また、水素(分子式:H2)とリン源との混合雰囲気を利用することもできるが、水素とリンとは化合性が強いことからリン原子を過度に揮散させてしまい、表面状態をより悪化させる場合がある。窒素(分子式:N2)は、非晶質層を構成し熱処理により揮散したリン原子と置換し、硼素原子に結合して禁止帯幅の高い絶縁性の硼素窒化物膜を形成するため、好ましくない。
【0025】
上記の不活性気体に混合させるリン原料の割合としては、非晶質層の表面状態の悪化を防止するのに効果を上げられる割合として、体積分率で0.5%以上とするのが好ましく、また、リン原子を適度な揮散を促せる割合として、20体積%以下とするのが好ましい。なお、混合雰囲気の体積分率については、それを構成する各々の気体の流量比率で表すことができる。
【0026】
非晶質層の熱処理については、これを気相成長させた装置とは別の装置を用いて行うことができる。例えば、ジボラン(B2 H6 )/ホスフィン(PH3 )/水素(H2 )系の原料を用いたハイドライド法で非晶質層を成長させ、その後、リン原料を流通しつつ、MOCVD気相成長装置を利用して熱処理を施すといった手法を採用することもできる。また、非晶質層を気相成長させた後、この気相成長に用いたと同一の気相成長装置を用いて熱処理を行えば、簡便に熱処理を施すことができ好ましい。
【0027】
このような熱処理については、1000℃〜1200℃での高温で約1時間を超える長時間行うと、非晶質層の表面状態を悪化させてしまう。このため、熱処理時間は30分以内、更に望ましくは15分以内とする。ただし、例え高温で熱処理するとは云え、例えば10秒間程度の短時間の熱処理では、非晶質層の表面からリン原子を充分に揮散させるに至らず、従って、化学量論的に硼素を富裕とする非晶質層を形成できず不都合となる。よって、この熱処理の時間としては、熱処理温度によっても異なるものの、例えば温度が1000℃の場合には5分以上、1200℃の場合に3分以上とするのが好ましい。
【0028】
非晶質層を構成する硼素とリンとの化学量論的な組成比率は、例えば、オージェ(Auger)電子分光法等に依る硼素元素とリン元素との定量分析値から求められる。化学量論的な組成では、硼素:リンの原子数の比率が1:1の等量となっている。これに対し、硼素を富裕に含む例えば、リン化硼素では、硼素の原子数はリンとの原子数に比較して例えば、0.5%或いは1.0%相対的に多量となっている。リン化硼素・インジウム(組成式BxIn1−xP:0<x≦1)等の硼素に加えて硼素以外の第III 族元素を含む非晶質層において、その化学量論的な組成比率とは、第III 族原子の総量に対するリン原子の濃度比率となる。
【0029】
非晶質層上には、非晶質層の化学量論的な組成を受け継いで、非晶質層と同様の化学量論的組成を有するリン化硼素層が形成される。従って、本発明においては、上記の熱処理により、硼素を富裕に含み、かつリンを量論的に不足とする組成に形成された非晶質層上に、p形のリン化硼素層(リン化硼素半導体層)を安定して形成することができる。
【0030】
リン化硼素層を気相成長させるときの温度については、750℃以上で1200℃以下とする。750℃未満では、V/III 比率が低い場合に安定して単結晶のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を形成することが困難になるからである。また、1200℃を超えると、B13P2 等の多量体のリン化硼素層の形成を招いてしまうためである。
また、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を形成するにあたっては、単結晶のリン化硼素結晶層を形成するため、V/III 比率(第2の比率)を、非晶質層時のV/III 比率(第1の比率)より大とする。リン化硼素層を気相成長させるのに好適なV/III 比率(第2の比率)は、600〜2000の範囲である。V/III 比率(第2の比率)をこのような好適な範囲の高比率とすれば、非晶質層の気相成長時より気相成長温度が低温であっても、単結晶のリン化硼素結晶層を良好に形成することができる。
【0031】
化学量論的に硼素を富裕とする非晶質層上には、同じく硼素を富裕とするリン化硼素層、即ちp形導電層を、不純物を故意に添加せずともアンドープ状態で形成することができる。例えば、トリエチル硼素((C2 H5 )3 B)/ホスフィン(PH3 )/水素(H2)系の原料を用いたMOCVD法に依れば、850℃で気相成長させることにより、キャリア(正孔)濃度を7.5×1019cm−3とし、抵抗率を1.1×10−3オーム・センチメートル(Ω・cm)とする低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を、非晶質層上にアンドープで形成することができる。
【0032】
更に好ましくは、気相成長時に珪素(Si)等のp形の伝導を与える不純物を添加してもよい。珪素のドーピング源としては、シラン(分子式:SiH4 )、ジシラン(分子式:Si2 H6 )、四塩化珪素(分子式:SiH4)等のハロゲン化珪素化合物を用いることができ、その場合に例えばSi2 H6 −H2混合ガスを利用することができる。珪素不純物は、リンを硼素に比較して富裕に含むリン化硼素層に対し、特にp形不純物として顕著に作用する。一方、硼素を富裕とするリン化硼素層に対しては、n形不純物として作用し、アクセプタ(acceptor)を電気的に補償(compensation)して高抵抗のリン化硼素層を与える不都合がある。
【0033】
本発明によって形成されるp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)は低抵抗であり、且つ表面状態に優れるため、種々の化合物半導体素子を構成するためのp形導電層として有効に利用することができる。特に、キャリア濃度が1×1019cm−3を超える低抵抗のp形リン化硼素層は、高いキャリア濃度のp形半導体結晶層との接合構造を利用するツェナーダイオード(Zener diode)等を構成するのに有効に利用することができる。
【0034】
また、本発明の方法に依り形成されたp形リン化硼素層は、積層欠陥(stacking fault)或いは双晶(twinning)を含むものの、内部にはミスフィット転位は殆ど存在しないため、例えば、耐圧特性に優れるpn接合構造の構成層として利用することができる。特に、アンドープ状態でも形成できることから、簡便に得られるn形のIII 族窒化物半導体層とのpn接合構造を利用すれば、整流性に優れる化合物半導体発光ダイオード(LED)や電流狭窄型のレーザダイオード(LD)を構成することができる。
また、室温で約3.0エレクトロンボルト(単位:eV)のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)と、ワイドバンドギャップのn形III 族窒化物半導体層とからなるpn接合構造は、短波長光を発するpn接合型ダブルヘテロ(DH)構造の発光部を構成するのに有効である。また、本発明に係わるp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)は、ミスフィット転位の密度が低いため、漏洩電流の少ないpn接合型太陽電池を構成するに有効となる。
【0035】
(作用)
結晶基板或いは結晶層上に気相成長させ、さらに熱処理を施して得られる、化学量論的に硼素をリンに対し富裕として含む非晶質層は、結晶基板または結晶層からの剥離を抑制して高キャリア濃度で且つ低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)をもたらす作用を有する。
【0036】
リンを含む化合物からなるリン原料と不活性ガスとの混合気体からなる雰囲気中で熱処理された非晶質層は、得られるp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)の表面状態を良好にする作用を有する。
【0037】
【実施例】
(第1実施例)
珪素(Si)単基板上にMOCVD法に依って気相成長させたp形リン化硼素(BP)層をpn接合構造の構成層として備えた、ツェナーダイオードを例にして、本発明の内容を具体的に説明する。図1に、本実施例に記載のSi/BP接合型ツェナーダイオードの断面構造を模式的に示す。
【0038】
ツェナーダイオード10を構成するための基板101には、リン(P)ドープn形{111}−珪素単結晶を用いた。基板101は、室温で常圧(略大気圧)MOCVD装置の気相成長炉内の気相成長領域に配置した。然る後、気相成長領域に水素(H2 )を通流しつつ、基板101の温度を450℃に加熱した。
次に、水素に加えて、硼素原料としてのトリエチル硼素((C2 H5 )3 B)とリン原料としてのホスフィン(PH3 )とを気相成長領域に流通させ、リン化硼素からなる非晶質層102を形成した。この非晶質層102の気相成長時のPH3 の流量は27cc/分とし、水素と双方の原料の合計の流量は16リットル(l)/分とした。また、気相成長領域に流通させた硼素原料とリン原料との濃度比率((C2 H5 )3 B/PH3 濃度比率)、すなわち本発明における第1の比率は8に設定した。さらに、非晶質層102の層厚は10nmとした。
そして、硼素原料の気相成長領域への供給を停止して、非晶質層102の気相成長を終了した。
【0039】
その後、気相成長領域への流通するガスをアルゴン(Ar)とホスフィンとして、基板101の温度を1025℃に昇温した。ホスフィンの流量は、アルゴンガスの流量3リットル/分に対し、27cc/分とした。その後、リン原料(=PH3 )を体積分率にして0.9%含む不活性ガスとの混合雰囲気内で、非晶質層102に熱処理を施した。熱処理時間は正確に5分間とした。
【0040】
非晶質層102の1025℃での保持、すなわち高温での保持を出来るだけ短時間に留めるため、熱処理を終了した後、直ちに基板101の温度を850℃に降温した。然る後、気相成長領域に再び水素と共に、上記の硼素原料とリン原料とを流通させて、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)103を気相成長させた。
気相成長時のV/III 比率、すなわち本発明における第2の比率は、非晶質層102の気相成長時のV/III 比率(第1の比率)を上回る1300とした。また、気相成長時には、ジシラン(10体積百万分率(vol.ppm))−水素混合ガスを使用して珪素(Si)をドーピングした。
【0041】
その後、気相成長領域への硼素原料及びリン原料の供給を停止して、熱処理を施した非晶質層102上へのリン化硼素層103の気相成長を終了させた。非晶質層102の気相成長、その熱処理、及び非晶質層上へのp形リン化硼素層103の気相成長を、同一のMOCVD気相成長装置を利用して実施した後、冷却して、基板101を気相成長領域から外部へ取り出した。
【0042】
非晶質層102を介してp形リン化硼素層103を気相成長させたため、p形リン化硼素層103の基板101からの剥離はなく、密着しているのが認められた。また、非晶質層102の熱処理時間を短時間に制限したため、p形リン化硼素層103は表面が平坦で亀裂も無い連続膜であった。
一般的なホール(Hall)効果法に依れば、p形リン化硼素層103の室温でのキャリア(正孔)濃度は6.5×1019cm−3であり、抵抗率は、2.3×10−3Ω・cmと測定された。また、断面TEM技法を利用した観察に依れば、p形リン化硼素層103の層厚は320nmと計測された。非晶質層102からの制限視野電子線回折像はハローなパターンであり、一方、p形リン化硼素層103からの回折パターンは{111}−結晶層からのものとなった。
また、明視野TEM像に依れば、p形リン化硼素層103の内部には、<111>−結晶方位に平行に双晶或いは積層欠陥の存在は認められるものの、ミスフィット転位は殆ど視認されなかった。さらに、電界放射型AES分析に依る硼素(B)とリン(P)イオンとの強度比率からp形リン化硼素層103の硼素原子濃度は、リン原子濃度に対し約0.7%過剰であると見積もられた。
【0043】
次に、p形リン化硼素層103の表面の中央部に、金・ベリリウム合金(Au99重量%・Be1重量%)からなるp形オーミック電極104を配置した。p形オーミック電極104は、直径を1.5×10−2cm(=150μm)とする円形の電極とした。なお、p形オーミック電極104の周囲はメサ(mesa)形状(周囲が急斜面で、天部は平坦な台地形状)に加工し、メサ部の天部は直径を1.8×10−2cm(=180μm)とする円形の平地とした。
一方、n形珪素単結晶基板101の裏面の全面には、アルミニウム・アンチモン(Al・Sb)合金からなるn形オーミック電極105を設けた。これより、n形Si/p形リン化硼素層のpn接合型ヘテロ(異種)構造のツェナーダイオード10を構成した。
【0044】
このようにして得られたツェナーダイオード10に対し、p形及びn形オーミック電極104、105の順(forward)、及び逆(reverse)の双方向に直流電流を通流した。得られた電流(I)−電圧(V)特性を図2に示す。
図2に示したように、順方向電流を10mAとしたときの順方向に於ける閾値は0.7Vであった。また、逆方向電流を0.2mAとしたときの逆方向耐圧は1.5Vとなった。したがって、得られたツェナーダイオード10は低閾値電圧で高耐圧のものとなった。
【0045】
(第2実施例)
p形リン化硼素層とn形III 族窒化物半導体層とのpn接合構造を備えた化合物半導体LEDを構成する場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。図3に、本実施例に記載のLED11の断面構造を模式的に示す。図1に記載したと同一の構成要素については同一の符号を付して図3に示す。
【0046】
まず、pn接合型二重異種(DH;ダブルヘテロ)構造のLED11を構成するため、p形{111}−珪素基板101上に、(C2 H5 )3 B/PH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法を用いて850℃で気相成長させ、アンドープでn形のリン化硼素層からなる下部クラッド層106を堆積形成した。キャリア(電子)濃度は1×1019cm−3とし、層厚は4.0×10−5cm(=4.0μm)とした。
次に、n形下部クラッド層106上に、トリメチルガリウム((CH3 )3 Ga)/トリメチルインジウム((CH3 )3 In)/NH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法に依り、n形Ga0.90In0.10Nからなる発光層107を850℃で気相成長させた。その層厚は70nmとし、キャリア(電子)濃度は約2×1018cm−3とした。
【0047】
次いで、発光層107上に、上記の(C2 H5 )3 B/PH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法により、リン化硼素からなる非晶質層102を850℃で気相成長させた。非晶質層102を気相成長させる際の気相成長領域へのPH3 の供給量は、毎分40ccとし、本発明における第1の比率としてのV/III 比率(=(C2 H5 )3 B/PH3 比率)を16とした。得られる非晶質層102の層厚は15nmとした。
そして、気相成長領域への硼素原料及び水素の供給を停止して非晶質層102の成長を終了させた後、PH3 とアルゴン(Ar)とを気相成長領域に流通させつつ、非晶質層102の温度を1025℃に上昇させた。このときのPH3 の気相成長領域への供給量は毎分30ccとした。PH3 とArとの混合雰囲気を構成するPH3 の体積分率は2%とし、Arの体積分率は98%とした。なお、この熱処理は非晶質層102を気相成長させたのと同一の気相成長装置を用い、非晶質層102を同温度に2分間保持するで行った。
【0048】
その後、PH3 とArとの混合雰囲気内で非晶質層102の温度を850℃に低下させた。然る後、混合雰囲気を構成するArをH2 に変更し、気相成長領域にはPH3 とH2 とを流通させた。そして、気相成長領域に再び硼素源の(C2 H5 )3 Bを供給して、非晶質層102上にp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を、上部クラッド層108として堆積した。
p形リン化硼素層(上部クラッド層108)を気相成長させる際の、リン原料としてのPH3 の気相成長領域への供給量は毎分432ccとし、本発明における第2の比率としてのV/III 比率は1300とした。また、上部クラッド層108の層厚は3.2×10−5cmとした。上部クラッド層108をなすp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)のキャリア(正孔)濃度は2×1019cm−3であり、抵抗率は2×10−2Ω・cmであった。
このようにしてp形リン化硼素層(上部クラッド層108)を気相成長させたら、硼素原料の気相成長領域への供給を停止し、さらに、珪素基板101の温度が約600℃に低下する迄PH3 を継続して流通させた。
その後、PH3 の流通も停止し、室温近傍の温度に自然に降温した。
【0049】
次に、p形上部クラッド層の表面の中央部に、金・ベリリウム合金(Au99重量%・Be1重量%)からなるp形オーミック電極104を配置した。一方、n形珪素単結晶基板101の裏面には、金・アンチモン(Au・Sb)合金からなるn形オーミック電極105を設けて、p形リン化硼素層を含むpn接合型DH構造のLEDl1を構成した。
【0050】
p形及びn形オーミック電極104、105間に順方向へ20ミリアンペア(mA)の動作電流を通流して、一辺を約3.0×10−2cm(=300μm)の正方形に裁断したLEDチップ11の発光特性を確認した。以下に得られた発光特性を纏める。
(1)発光色:青紫
(2)発光中心波長:約432(nm)
(3)輝度(チップ状態):約7(mcd)
(4)順方向電圧:約3.6(V)(但し、順方向電流を20mAとした場合)
(5)逆方向電圧:10V(但し、逆方向電流を10μAとした場合)
【0051】
低い抵抗率のp形リン化硼素層によって上部クラッド層108を構成できたため、動作電流をこの上部クラッド層108を介して、発光層107の広範囲に拡散することができた。このため、LED11の近視野発光像から、発光層107の略全面から発光がもたらされているのが確認された。
【0052】
【発明の効果】
本発明に依れば、気相成長させた硼素とリンとを含む非晶質層に改めて熱処理を施して、リンに対し硼素を富裕に含む非晶質層としたので、その上層としてp形の伝導を呈する低抵抗のリン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を良好に気相成長させることができる。
また、本発明に係わるp形リン化硼素半導体層はキャリア(正孔)濃度が高く、且つ低抵抗のものとなるので、これを利用することにより、高キャリア濃度のp形半導体層を必要とする、例えばツェナーダイオードやpn接合構造を具備するpn接合型DH構造の発光素子(発光ダイオード)等の、化合物半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例に記載のヘテロ接合型ツェナーダイオードの断面模式図である。
【図2】 第1実施例に記載のツェナーダイオードの電流−電圧特性を示す図である。
【図3】 第2実施例に記載のLEDの断面模式図である。
【符号の説明】
10 Si/BPヘテロ接合型ツェナーダイオード、
11 pn接合型DH構造LED、101 結晶基板、102 非晶質層、
103 p形リン化硼素半導体層、104 p形オーミック電極、
105 n形オーミック電極、106 下部クラッド層、107 発光層、
108 上部クラッド層
Claims (13)
- 硼素を含む化合物からなる硼素原料と、リンを含む化合物からなるリン原料とを気相成長領域に供給して、結晶基板上或いは結晶層上に、p形リン化硼素半導体層を形成する方法に於いて、
結晶基板或いは結晶層を、気相成長領域に配置して、250℃以上で1000℃以下の温度に加熱して保持し、硼素原料に対するリン原料の気相成長領域に供給する濃度の比率を2以上で50以下となる第1の比率として、硼素とリンとを含む非晶質層を形成し、
次いで、非晶質層を、1000℃を超え1200℃以下の温度でリンを含む化合物原料を流通させて構成する雰囲気内で熱処理を施し、
その後、熱処理を施した非晶質層上に、750℃以上で1200℃以下の温度で、第1の比率より大きな第2の比率で、p形のリン化硼素半導体層を形成する、ことを特徴とするp形リン化硼素半導体層の製造方法。 - 非晶質層の熱処理を、リン原料と不活性ガスとの双方を気相成長領域に流通させて構成する混合気体雰囲気内で行う、ことを特徴とする請求項1に記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 非晶質層の熱処理を行う際に気相成長領域に供給するリン原料の供給量を、非晶質層を気相成長させる際に気相成長領域に供給したリン原料の供給量以下として、熱処理を行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を形成する際に、珪素を添加しつつ気相成長を行う、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 上記第2の比率を、600以上で2000以下とする、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 上記非晶質層の厚さを2nm以上で50nm以下とする、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 非晶質層の熱処理を、該非晶質層の形成に用いた気相成長装置で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法に依り形成したp形リン化硼素半導体層を備えている、ことを特徴とする化合物半導体素子。
- 上記p形リン化硼素半導体層とのpn接合構造を備えている、ことを特徴とする請求項8に記載の化合物半導体素子。
- 上記p形リン化硼素半導体層とn形III 族窒化物半導体層とのpn接合構造を備えている、ことを特徴とする請求項9に記載の化合物半導体素子。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層を、pn接合におけるp層側とした、ことを特徴とするツェナーダイオード。
- ダイオードのp層側に、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層が設けられ、該p形リン化硼素半導体層に、p形オーミック電極が接続されている、ことを特徴とする発光ダイオード。
- ダブルヘテロ接合構造を有してなり、上記p形リン化硼素半導体層が一方のクラッド層を構成している、ことを特徴とする請求項12記載の発光ダイオード。
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