JP2004014809A - リン化硼素系半導体発光素子、その製造方法およびledランプ - Google Patents

リン化硼素系半導体発光素子、その製造方法およびledランプ Download PDF

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宇田川 隆
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Abstract

【課題】リン化硼素系半導体層からなる障壁層とIII族窒化物半導体層からなる発光層とを具備したリン化硼素系半導体発光素子において、平坦なpn接合界面を顕現するに充分な表面の平坦性に優れるリン化硼素系半導体層から障壁層を形成する。
【解決手段】障壁層を非晶質のリン化硼素(BP)系半導体層から構成する。有機金属熱分解(MOCVD)法により、250℃〜1200℃の温度でV/III比率を0.2以上40以下として、結晶基板上に非晶質のリン化硼素系半導体層を気相成長させる。
【選択図】図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子に係り、特にリン化硼素(BP)系半導体層からなる障壁層とIII族窒化物半導体層からなる発光層とを具備したリン化硼素系半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、硼素(B)とリン(P)とを構成元素として含むリン化硼素系半導体層は、種々の半導体素子を構成するために利用されている。例えば、リン化硼素系半導体として代表的な単量体のリン化硼素からなる結晶層は、npn型ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)のn形ベース(base)層を構成するに利用されている(J.Electrochem.Soc.,125(4)(1978)、633〜637頁参照)。また、青色のレーザダイオード(LD)にあって、接触抵抗の低いオーミック(Ohmic)電極を形成するためのコンタクト(contact)層として利用されている(特開平10−242567号公報参照)。また、近紫外或いは青色等の短波長の発光をもたらす発光ダイオード(LED)を構成するための緩衝層として用いられている(米国特許6,069,021号参照)。
【0003】
室温での禁止帯幅(band gap)を約3エレクトロンボルト(eV)とするリン化硼素結晶層は従来より、pn接合型ダブルヘテロ(double hetero:DH)接合構造のLEDの障壁(clad)層を構成するに利用されている(特願2001−158282号参照)。障壁層をなすリン化硼素結晶層は、従来から、珪素(Si)単結晶(シリコン)(上記の▲1▼J.Electrochem.Soc.,125(1978)、及び▲2▼米国特許6,069,021号参照)等の単結晶材料を基板として形成されている。しかし、例えば珪素単結晶の格子定数は5.431Åであり、閃亜鉛鉱型のBPのそれは4.538Åである(寺本 巌著、「半導体デバイス概論」(1995年3月30日、(株)培風館発行初版)、28頁参照)。従って、格子ミスマッチ度は約16.5%と大きい(庄野 克房著、「半導体技術(上)」(1992年6月25日、(財)東京大学出版会発行9刷)、97〜98頁参照)。
【0004】
リン化硼素結晶層は、従来より、三臭化硼素(BBr)を硼素源とするハロゲン(halogen)法(J.Crystal Growth,13/14(1972)、346〜349頁参照)、トリエチル硼素((CB)等を原料とする有機金属熱分解(MOCVD)法等の気相成長手段により形成されている(米国特許6,069,021号参照)。しかしながら、単結晶のリン化硼素結晶層が得られる温度は、1025℃〜1075℃の狭い範囲に限定されるのが知れている(西永 頌、「応用物理」(第45巻第9号(1976)、891〜897頁参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
単結晶のリン化硼素層を気相成長手段に依り、例えば、珪素単結晶基板上に下部障壁層として堆積させる際の従来技術の第1の問題点は、基板結晶との格子ミスマッチを充分に緩和できず、表面の平坦性に優れるリン化硼素結晶層からなる障壁層を得られないことにある。また、第2の問題点は、単結晶層が得られる成長温度の範囲は上記の如く狭いため、障壁層を単結晶のリン化硼素層から構成しようとすると、リン化硼素単結晶層からなる下部障壁層或いは上部障壁層を安定して獲得できないことにある。障壁層と発光層との間で正常なpn接合特性を顕現し、順方向電圧(所謂、V)の低いLED、また、閾値電圧(所謂、Vth)の低いLDを提供するには、平坦なpn接合界面を顕現するに充分な表面の平坦性に優れるリン化硼素系半導体層から障壁層を構成する必要がある。そこで本発明は、リン化硼素系半導体層からなる障壁層とIII族窒化物半導体層からなる発光層とを具備したリン化硼素系半導体発光素子において、平坦なpn接合界面を顕現するに充分な表面の平坦性に優れるリン化硼素系半導体層から障壁層を形成することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1)結晶基板と、該結晶基板上に設けられた下部障壁層と、該下部障壁層上に設けられた発光層とを備えたリン化硼素系半導体発光素子に於いて、下部障壁層が非晶質のリン化硼素(BP)系半導体層からなり、発光層が非晶質のIII族窒化物半導体層からなることを特徴とするリン化硼素系半導体発光素子。
(2)下部障壁層が、リンに比較して硼素を富裕に含有する非晶質のリン化硼素半導体層からなることを特徴とする上記(1)に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
(3)発光層がインジウム(In)を含有する非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層からなることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
(4)発光層がリンを含むことを特徴とする上記(3)に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
(5)発光層上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層が設けられていることを特徴とする上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
(6)結晶基板が珪素(Si)単結晶からなることを特徴とする上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
(7)上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子を用いて作製したLEDランプ。
(8)結晶基板上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる下部障壁層と、非晶質のIII族窒化物半導体層からなる発光層とを順次形成するリン化硼素系半導体発光素子の製造方法に於いて、有機金属熱分解(MOCVD)法により、250℃〜1200℃の温度でV/III比率を0.2以上40以下として、結晶基板上に非晶質のリン化硼素系半導体層を気相成長させて、下部障壁層を形成することを特徴とするリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
(9)非晶質のGaIn1−XN(0≦X≦1)からなる発光層を、MOCVD法により500℃〜700℃の温度で、下部障壁層上に気相成長することを特徴とする上記(8)に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
(10)発光層上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層を設けることを特徴とする上記(8)または(9)に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
(11)結晶基板が珪素単結晶からなることを特徴とする上記(8)乃至(10)の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に於けるリン化硼素系半導体とは、硼素(B)とリン(P)とを構成元素として含む、例えばBαAlβGaγIn1− α β γ1− δAsδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)、或いは、BαAlβGaγIn1− α β γ1− δδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)で表わされる化合物半導体である。非晶質(amorphous)のリン化硼素系半導体層とは、例えば単量体のリン化硼素(BP)やリン化硼素・ガリウム(BαGaγP:0<α≦1、0≦γ<1、α+γ=1)、窒化リン化硼素(BP1− δδ:0≦δ<1)等の混晶からなる非晶質の半導体層である。非晶質のリン化硼素系半導体層は、サファイア(α−Al単結晶)等の酸化物結晶やGaP等のIII−V族化合物半導体結晶を基板として気相成長させることが出来る。本発明では、特に珪素(Si)単結晶を基板として利用するのが好ましい。珪素単結晶は、耐熱性に同じく優れる六方晶或いは立方晶の炭化珪素(SiC)に比較して、低転位密度で大口径の単結晶を基板と利用できるからである。珪素単結晶基板の表面は、{100}面、{110}面或いは{111}面等やそれらのオフカット(off−cut)結晶面でも差支えはない。
【0008】
本発明では、結晶基板上に形成した非晶質のリン化硼素系半導体層から下部障壁層を構成する。下部障壁層とは、発光層と結晶基板との中間に配置する障壁層である。非晶質のリン化硼素系半導体層は、三塩化硼素(BCl)及び三塩化リン(PCl)等を原料とするハロゲン法、ジボラン(B)及びホスフィン(PH)等を原料とするハイドライド(hydride)法、またはMOCVD法等の気相成長手段に依り成長できる。結晶基板上に非晶質のリン化硼素系半導体層を気相成長させるためには、気相成長時に於ける硼素源に対するリン源の供給量の比率を比較的低くするのが肝要である。所謂、V/III比率を低比率側に設定するのが望ましい。例えば、(111)面或いは(100)面を有する珪素単結晶基板上に、非晶質のリン化硼素層を、トリエチル硼素((CB)とホスフィン(PH)とを原料とするMOCVD手段で気相成長させるには、V/III比率を0.2以上で40以下とするのが適する。V/III比率とは、硼素原子等のIII族元素の供給量(モル/単位時間)に対するリン等のV族元素の供給量(モル/単位時間)の比率である。得られたリン化硼素層の結晶形態は、例えば、一般的なX線回折法または電子線回折法等の結晶解析技法から知ることができる。
【0009】
非晶質のリン化硼素系半導体層を気相成長させる温度は、250℃〜1200℃が適する。1200℃を超える高温は、B13等の多量体のリン化硼素(J.Am.Ceramic Soc.,47(1)(1964)、44〜46頁参照)を含む多結晶層が帰結され易くなり、非晶質層を得るに不都合となる。逆に250℃未満の低温では、硼素源及びリン源の熱分解が効率的に進行せず、リン化硼素系半導体層の成膜を安定して達成できず不都合である。珪素単結晶を基板とする場合、酸素雰囲気内ではなく、非酸化性の雰囲気中で加熱するのが好適である。また、窒素(N)を含まない雰囲気で加熱するのが適する。非晶質のリン化硼素系半導体層の気相成長を妨害(マスクング:masking)する珪素単結晶表面での酸化珪素(SiO)膜または窒化珪素(SiN)膜の形成を避けるためである。水素(H)雰囲気或いはアルゴン(Ar)等の単原子不活性ガスからなる雰囲気内で加熱すれば、珪素単結晶基板表面の部分的な領域でのマスク被膜の形成を回避でき、連続性のある平坦な非晶質のリン化硼素半導体層を気相成長させるに効果を奏する。
【0010】
非晶質のリン化硼素系半導体層は、上記の如く広い温度範囲で気相成長させることができる。従って、従来の単結晶層ではなく、本発明の非晶質のリン化硼素系半導体層からは、障壁層を簡便に安定に形成できる利点がある。例えば、pn接合型DH構造の発光部を備えたLED等の発光素子を構成する場合、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる下部障壁層上には、非晶質の発光層を都合良く構成できる。非晶質のリン化硼素系半導体層の表面は、多結晶或いは単結晶のリン化硼素系半導体層に比較して良好な平坦性を有する。このため、非晶質からなるリン化硼素系半導体層からなる障壁層は、発光層との間で平坦な接合界面を形成できる。
【0011】
非晶質のリン化硼素系半導体層の表面の平坦性は、リン化硼素系半導体層がV族構成元素のリンに比較してIII族構成元素の硼素を富裕に含有すると、より向上する。例えば、硼素とリンとからなる非晶質のリン化硼素半導体層にあって、硼素が富裕な状態とは、化学量論的に硼素がリンより多量に含有されている状態である。非化学量論的な組成を有するリン化硼素を組成式Bαβ(0<α、0<β)で表記すると、硼素が富裕なリン化硼素とはα>βを満たす組成であることを云う。リン化硼素中の硼素及びリンの化学量論的組成は、例えばオージェ(Auger)分光分析法等の原子濃度分析手段で定量された硼素とリンの原子濃度の相対的な比較から推定できる。また、硼素を富裕とする非晶質のリン化硼素層は、結晶基板との格子のミスマッチ(mismatch)を緩和して、ミスフィット(misfit)転位等の少ない結晶性により優れる発光層をもたらす作用を有する。
【0012】
本発明の発光層は、結晶粒界を介しての素子動作電流の短絡的流通を抑制するために、非晶質のIII族窒化物半導体層から構成するのが好ましい。例えば、非晶質の窒化ガリウム・インジウム(GaIn1−XN:0≦X≦1)や窒化リン化ガリウム(GaN1−Y:0≦Y<1)等から構成するのが好ましい。また、発光層を構成するIII族窒化物半導体層は、特にインジウムを含むIII族窒化物半導体層(含インジウムIII族窒化物半導体層)から構成するのが好ましい。インジウムを含むIII族窒化物半導体は、約2eVから約3eVの禁止帯幅(bandgap)を有している。このため、近紫外、或いは可視光を発するための発光層の構成材料として好適に利用できる。非晶質のGaIn1−XN(0≦X≦1)は、例えば、MOCVD手段に依り成膜温度を約500℃〜約700℃の低温として気相成長できる。非晶質のGaIn1−XN(0≦X≦1)では、単結晶の場合に比較して転位密度が低くまた結晶粒界が少ないため、層内での局所的なインジウムの偏析が発生し難い。従って、インジウム組成の均一なGaIn1−XN(0≦X≦1)が得られ、均一な波長の発光を呈するリン化硼素系半導体発光素子を提供する効果を上げられる。発光層をなす含インジウムIII族窒化物半導体層の結晶形態は、例えば一般的なX線回折法等の結晶解析技法から知ることができる。
【0013】
インジウム含有III族窒化物半導体層からなる発光層は、リンを含ませると発光波長をより簡便に長波長とできる。従って、従来技術の如くインジウムの組成を増加させ、結晶性の悪化したインジウム含有III族窒化物半導体層を敢えて発光層として利用することなく、比較的長波長の可視光を発する発光層を構成できる。発光層として利用するリンを含むIII族窒化物半導体層にあって、リンの組成は、概ね10%以下とするのが望ましい。リン組成を余りに大とすると、バンドの曲折(bowing)に因り(Appl.Phys.Lett,60(20)(1992)、2540〜2542頁参照)禁止帯幅は極端に縮小するため、可視光発光用途の発光層として利用できなくなる。発光層をなすリンを含有するインジウム含有III族窒化物半導体層には、窒化リン化ガリウム・インジウム混晶(GaIn1−X1−Y:0≦X<1、0<Y≦0.1)や窒化リン化アルミニウム・インジウム混晶(AlIn1−X1−Y:0≦X<1、0<Y≦0.1)を例示できる。
【0014】
非晶質の発光層は、その上に非晶質のリン化硼素系半導体層を簡便に気相成長させる作用を有する。即ち、発光層を非晶質層とすれば、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層を好都合に構成できる。また、発光層を非晶質層とすることで平坦な表面の発光層を得ることができる。このため、下部障壁層と発光層との平坦な接合界面と同様に、非晶質の発光層と上部障壁層とでも平坦な接合界面を帰結できるため、接合界面の平坦性に富に優れるDH接合構造の発光部を構成できる。従って、優れたpn接合特性が発現され、順方向電圧(所謂、V)等の電気的特性に優れるLED等の発光素子を得るに効果が奏される。上部障壁層は導電性に優れる低抵抗層であるのが望ましく、このため、キャリア濃度としては約1×1018〜約5×1019cm−3であるのが適する。上部障壁層の層厚としては、オーミック電極の接触抵抗を低減するに優位となる約100ナノメーター(nm)以上で約300nm以下とするのが好適である。約300nmを超える厚膜では、発光層との密着性が低下するために好ましくなくなる。
【0015】
DH接合構造或いはシングルヘテロ(Single Hetero:SH)接合構造の発光部に拘わらず、本発明に係わるLED或いはLDは、上記の非晶質層からなる発光部を備えた積層構造体に、p形およびn形のオーミック(Ohmic)電極を配置すれば構成できる。良好な伝導性を有するSi結晶を基板に利用すれば、一方の極性のオーミック電極を基板に敷設できるため、簡便に発光素子を構成出来得て利便である。また本発明に係わる上部障壁層は、表面の平坦性に優れる非晶質のリン化硼素系半導体層から構成しているため、その上に設ける他方のオーミック電極を密着性に優れるものとすることができる。さらに上部障壁層上に低抵抗のコンタクト(contact)層を介してオーミック電極を設けることとすれば、Vの低いLEDを提供できる。また、このようにして作製したLEDをリード上にマウントし樹脂に封入することにより、寿命特性に優れたLEDランプを作成することができる。
【0016】
【作用】
硼素とリンとを含む非晶質のリン化硼素系半導体層から構成した下部障壁層は、平坦性に優れる発光層との接合界面をもたらし、また、非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層からなる発光層は、表面の平坦性に優れるため上部障壁層との間に平坦な界面接合構造をもたらす作用を有する。
【0017】
リンに対して硼素を富裕に含有する非晶質のリン化硼素半導体層から構成した、表面の平坦性に優れた下部障壁層は、インジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層との接合界面を平坦性に優れたものにする作用を有する。また、結晶基板との格子ミスマッチを緩和して、結晶性に優れる発光層をもたらす作用を有する。
【0018】
リンを含有する非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層から構成した発光層は、インジウムの凝縮、偏析等に因る発光層の結晶性の劣化を招くことなく、長波長の発光をもたらす作用を有する。
【0019】
【実施例】
(第1実施例)
リン化硼素からなる障壁層と窒化ガリウム・インジウムからなる発光層とから構成された発光部を備えた積層構造体を用いて、リン化硼素系発光ダイオード(LED)を構成する場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。図1に本第1実施例に係わるLED1Aの平面模式図を示す。また、図2には、図1の破線X−X’に沿ったLED1Aの断面の構造を模式的に示す。
【0020】
本第1実施例では、一般的な常圧(略大気圧)MOCVD成長手段を利用して、p形の{111}面を有する珪素単結晶基板の表面上に、非晶質のリン化硼素からなる障壁層と非晶質の窒化ガリウム・インジウム混晶からなる発光層を備えた積層構造体1Bを形成した。下部障壁層102は、珪素単結晶基板101の温度を1025℃として形成したアンドープでp形の非晶質のリン化硼素から構成した。硼素源にはトリエチル硼素((CB)を、リン源にはホスフィン(PH)を各々使用した。トリエチル硼素はキャリアガスの水素を中で発泡させて、MOCVD成長装置に供給した。MOCVD成長装置へ供給する(CBに対するPHの供給量の比率、すなわちV/III比率は約16に設定した。下部障壁層102の層厚は、MOCVD成長装置への上記の硼素源の供給時間を調整することに依り、約320nmとした。
【0021】
硼素源の供給を停止して下部障壁層102の気相成長を終了した後、リン源とキャリアガスとして使用した水素(H)をMOCVD成長装置に供給しつつ、珪素単結晶基板101の温度を1025℃から650℃に低下させた。次に、同温度で、トリメチルガリウム((CHGa)/トリメチルインジウム((CHIn)/アンモニア(NH)/水素(H)系常圧MOCVD成長手段に依り、非晶質の窒化ガリウム・インジウム(Ga0.95In0.05N)層からなる発光層103を下部障壁層102上に堆積した。n形発光層103のキャリア濃度は約9×1017cm−3と見積もられた。層厚は約100nmとした。
【0022】
次に、珪素単結晶基板101の温度を650℃に保持しつつ、n形発光層103上に、アンドープのn形リン化硼素からなる上部障壁層104を積層させた。n形の上部障壁層104は、p形の下部障壁層102の場合と同じく、上記の(CB/PH/H系常圧MOCVD成長手段により成長させた。(CBに対するPHの供給量の比率、すなわちV/III比率は約5に設定した。ハロー(halo)な電子線回折パターンから上部障壁層104のリン化硼素は非晶質であることが確認された。非晶質のn形リン化硼素層の層厚は約320nmとした。n形上部障壁層104のキャリア濃度は約1×1019cm−3とした。
【0023】
積層構造体1Bの表層をなすn形上部障壁層104の中央部には、同層104に接触する側を金・ゲルマニウム(Au・Ge)合金層としたAu・Ge/ニッケル(Ni)/Auの3層重層構造からなるn形オーミック電極105を設けた。結線用の台座(pad)電極を兼ねるn形オーミック電極105は、直径を約120μmとする円形の電極とした。また、p形珪素単結晶基板101の裏面の略全面には、アルミニウム(Al)からなるp形オーミック電極106を配置した。Al蒸着膜の膜厚は約2μmとした。これより、n形発光層103を非晶質のp形及びn形リン化硼素からなる障壁層102、104で挟持したpn接合型DH構造のLED1Aを構成した。下部及び上部障壁層102、104は何れも、室温で約3eVの禁止帯幅を有する非晶質のリン化硼素から構成したため、発光層103に対する障壁(clad)層として有効に利用できた。
【0024】
n形オーミック電極105とp形オーミック電極106を介してLED1Aに20ミリアンペア(mA)の順方向電流を通流したところ、LED1Aからは波長を約420nmとする青紫帯光が発せられた。一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態でのLEDの輝度は5ミリカンデラ(mcd)となった。また本発明では、何れも表面の平坦性に優れる非晶質層のp形障壁層102、n形発光層103およびn形障壁層104からpn接合部を形成したため、順方向電圧(但し、順方向電流を20mAとした場合)を約3Vとし、逆方向電圧(但し、逆方向電流を10μAとした場合)を5V以上とする良好な整流特性を有するリン化硼素系LEDが提供されることとなった。
【0025】
(第2実施例)
本第2実施例では、非晶質のリン化硼素層からなる障壁層と、リンを含む非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層からなる発光層とを備えた積層構造体からリン化硼素系LEDを構成する場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。
【0026】
図3に本第2実施例のLED2Aの断面模式図を示す。図3のLEDで上記の第1実施例のLEDと同一の構成要素には、図1及び図2と同一の記号を付してある。
【0027】
積層構造体2Bは、n形で{100}面を有する珪素単結晶を基板101として用いた。基板101上には、アンドープでn形の非晶質のリン化硼素層を下部障壁層102として堆積した。下部障壁層102は、(CB/PH/H系常圧MOCVD成長手段により950℃で成長させた。(CBに対するPHの供給量の比率(=V/III比率)は、リンに比べ硼素を当量的に富裕に含む、アンドープでn形の非晶質層を得るため、約20に設定した。n形下部障壁層102の層厚は、約100nmとし、キャリア濃度は約7×1017cm−3とした。
【0028】
n形下部障壁層102上には、(CHGa/(CHIn/NH/PH/窒素(N)系常圧MOCVD成長手段に依り、600℃でアンドープの窒化リン化ガリウム・インジウム(Ga0.95In0.050.970.03)からなるn形の発光層103を積層した。リンの組成比率は、2次イオン質量分析(SIMS)に依り定量した窒素原子とリン原子の各濃度を基に算出した。発光層103の層厚は約50nmとした。電解C−V(容量−電圧)法により、発光層103のキャリア濃度は約5×1017cm−3と見積もられた。また透過型電子顕微鏡(TEM)を利用した結晶構造の観察では、発光層103は非晶質を主体として構成されてされているものの、内部に単結晶の微粒が散在すると判別された。
【0029】
発光層103上には、600℃でアンドープでn形の非晶質のリン化硼素からなる薄膜層を、発光層103からのインジウムの揮散を抑制するための表面保護層(cap層)107として積層した。キャップ層107は、(CB/PH/H系常圧MOCVD成長手段により成長させた。キャップ層107の膜厚は約10nmとした。
【0030】
キャップ層107の成長を終了した後、PHを含む窒素気流中で珪素単結晶基板101の温度を600℃から1050℃に約2分間で昇温した。1050℃に到達後、直ちに、(CB/PH/H系常圧MOCVD成長手段により、アンドープでp形の非晶質のリン化硼素層をキャップ層107上に積層した。(CBに対するPHの供給量の比率(=V/III比率)は、硼素を化学当量的に富裕に含む、アンドープでp形の非晶質のリン化硼素層を得るために約20に設定した。p形上部障壁層104として利用した上記の非晶質のリン化硼素層の層厚は、約100nmとし、キャリア濃度は約2×1019cm−3とした。
【0031】
積層構造体2Bの表層をなすp形上部障壁層104の中央部には、同層104に接触する側を金・亜鉛(Au・Zn)合金層としたAu・Zn/Ni/Auの3層重層構造からなるp形オーミック電極106を設けた。結線用の台座(pad)電極を兼ねるp形オーミック電極106は、直径を約120μmとする円形の電極とした。また、n形珪素単結晶基板101の裏面の略全面には、アルミニウム(Al)からなるn形オーミック電極105を配置した。Al蒸着膜の膜厚は約2μmとした。これより、n形発光層103をn形リン化硼素からなる下部障壁層102およびp形リン化硼素からなる上部障壁層104で挟持したpn接合型DH構造のLED2Aを構成した。下部障壁層102及び上部障壁層104は何れも、室温で約3eVの禁止帯幅を有する非晶質のリン化硼素から構成したため、発光層103に対する障壁(clad)層として有効に利用できた。
【0032】
n形オーミック電極105とp形オーミック電極106を介してLED2Aに20ミリアンペア(mA)の順方向電流を通流したところ、LED2Aからは上記の第1実施例に記載のLED1Aの場合に比較し、より長波長の中心波長を約440nmとする青紫帯光が発せられた。また、一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態でのLEDの輝度は6ミリカンデラ(mcd)となった。また本発明では、何れも表面の平坦性に優れる非晶質層のn形障壁層102、n形発光層103およびp形障壁層104からpn接合部を形成したため、順方向電圧(但し、順方向電流を20mAとした場合)を約3Vとし、逆方向電圧(但し、逆方向電流を10μAとした場合)を5V以上とする良好な整流特性が顕現されたリン化硼素系LEDが提供されることとなった。
【0033】
【発明の効果】
結晶基板上に設けられたリン化硼素系半導体層からなる下部障壁層と、当該下部障壁層上に設けられた発光層とを備えたリン化硼素系半導体発光素子に於いて、本発明に依れば、障壁層を、広範囲の温度で形成できる硼素とリンとを含み、表面の平坦性に優れる非晶質のリン化硼素系半導体層から構成し、且つ、発光層を非晶質のIII族窒化物半導体層から構成することとしたので、平坦な接合界面のpn接合構造を構成できるため、良好な整流特性を有するリン化硼素系半導体発光素子を安定して提供するに効果を上げられる。
【0034】
また本発明に依れば、下部障壁層を、リンに対して硼素を富裕に含有する非晶質のリン化硼素半導体層から構成し、発光層を非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層から構成することとしたので、特に、下部障壁層と発光層との間で接合界面の平坦性に優れるpn接合部を構成でき、逆方向耐圧に優れるリン化硼素系半導体発光素子を提供できる。
【0035】
また、本発明に依れば、発光層を、リンを含む非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体から構成したので、従来技術の如く、インジウム組成を増加させることに依り結晶性の劣化した含インジウムIII族窒化物半導体層を利用せずとも、長波長の発光をもたらせる発光層を簡便に好都合に構成できる。
【0036】
また、本発明では、非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体からなる発光層上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層を設ける構成としたので、下部障壁層と併せてpn接合型DH構造の発光部を形成でき、従って、高発光強度のリン化硼素系半導体発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係るLEDの平面模式図である。
【図2】図1に示すLEDの破線X−X’に沿った断面模式図である。
【図3】第2実施例に係るLEDの断面模式図である。
【符号の説明】
1A、2A LED
1B、2B 積層構造体
101 単結晶基板
102 下部障壁層
103 発光層
104 上部障壁層
105 n形オーミック電極
106 p形オーミック電極
107 キャップ層

Claims (11)

  1. 結晶基板と、該結晶基板上に設けられた下部障壁層と、該下部障壁層上に設けられた発光層とを備えたリン化硼素系半導体発光素子に於いて、下部障壁層が非晶質のリン化硼素(BP)系半導体層からなり、発光層が非晶質のIII族窒化物半導体層からなることを特徴とするリン化硼素系半導体発光素子。
  2. 下部障壁層が、リンに比較して硼素を富裕に含有する非晶質のリン化硼素半導体層からなることを特徴とする請求項1に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
  3. 発光層がインジウム(In)を含有する非晶質の含インジウムIII族窒化物半導体層からなることを特徴とする請求項1または2に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
  4. 発光層がリンを含むことを特徴とする請求項3に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
  5. 発光層上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
  6. 結晶基板が珪素(Si)単結晶からなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子を用いて作製したLEDランプ。
  8. 結晶基板上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる下部障壁層と、非晶質のIII族窒化物半導体層からなる発光層とを順次形成するリン化硼素系半導体発光素子の製造方法に於いて、有機金属熱分解(MOCVD)法により、250℃〜1200℃の温度でV/III比率を0.2以上40以下として、結晶基板上に非晶質のリン化硼素系半導体層を気相成長させて、下部障壁層を形成することを特徴とするリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
  9. 非晶質のGaIn1−XN(0≦X≦1)からなる発光層を、MOCVD法により500℃〜700℃の温度で、下部障壁層上に気相成長することを特徴とする請求項8に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
  10. 発光層上に、非晶質のリン化硼素系半導体層からなる上部障壁層を設けることを特徴とする請求項8または9に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
  11. 結晶基板が珪素単結晶からなることを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載のリン化硼素系半導体発光素子の製造方法。
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