JP3691613B2 - 水なし平版印刷原版及び水なし平版印刷版の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザー光によるヒートモード記録によって湿し水を必要としない印刷ができる水なし平版印刷原版に関し、さらに、該水なし平版印刷原版から水なし平版印刷版を形成するための方法に関する。
なお、本明細書中では、水なし平版印刷原版(もしくは水なし原版)とはインク受容部と非インク受容部の画像パターンが形成されていない状態の画像記録する前の版材を意味し、水なし平版印刷版(もしくは水なし平版)とはインク受容部と非インク受容部の画像パターンが形成されており、そのまま印刷にかけられる版材を意味する。
【0002】
【従来の技術】
印刷を行うための印刷版の手法には、活版印刷、グラビア印刷および平版オフセット印刷などが伝統的な手法として知られている。近年、特殊な分野を除いては平版を用いる印刷が増加している。この平版オフセット印刷においては、プレート表面の親水性、親油性の画像パターンを形成し湿し水を用いる水あり平版と、プレート表面にインキ反発性、インキ受容性の画像パターンを形成し湿し水を用いない水なし平版とが知られている。このうち水なし平版は、湿し水を用いないために印刷作業に熟練を要しないこと、インキ濃度が印刷初期から安定し損紙が少なく少部数の印刷を行う場合にも経済的であるなど水あり平版に対して有利な特徴を持っている。
【0003】
一方、コンピューター技術の進展により、従来手作業で行われていた印刷の前工程である製版工程がデジタル化され、印刷の画像がデジタルデーター化されてきている。また、イメージセッター、レーザープリンターなどの出力システムの急激な進歩により、このデジタルデーターからリスフイルムを介さず直接印刷版材料を形成する技術(コンピューター・トウ ・プレート、コンピューター・トウ ・シリンダー等の技術)が近年進展してきている。しかし、これらの技術は、従来の湿し水を用いて印刷する平版印刷版に関するものは多く提供されているが、水なし平版に関しては、ほとんど知られていないのが実状である。
【0004】
レーザー書き込みによる水なし平版の形成に関しては、特公昭42−21879号公報にその最も古い開示がある。これにはインキ反発性のシリコーン層をレーザー照射により一部除去してインク付着性とし水なし印刷することが記載されている。しかし、レーザー照射部のシリコーンが版面全体に飛散し印刷時に不都合を起こしたり、レーザー照射だけではシリコーン層が十分除去されないため、印刷が進むに従ってインキ付着部の面積が増大する(ドットゲインする)などの問題があった。
さらに、特開昭50−158405号公報には、シリコーンゴム表面層を有する印刷原版に赤外光レーザーであるYAGレーザーを照射し、溶剤(ナフサ)処理によりレーザー照射部を除去して水なし平版を形成する方法が開示されている。
また、EP−0573091Bには、シリコーンゴム表面層を有する版材にYAGレーザーを照射した後、無溶媒のドライ条件下で照射部を擦りとるか、シリコーンゴムを膨潤させない溶剤を与えながら擦りにより除去して水なし平版を形成する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、レーザー露光部シリコーンゴム除去の際の擦りにより、非画像部シリコーンゴムに傷が入る虞がある。さらに、露光部から除去したシリコーンゴムを版面から完全に除去することが困難である。このため、これらの方法により形成した水なし平版を用いて、印刷を行った場合、非画像部の傷汚れ、画像部のすぬけ等の不都合を生じるという問題がある。
【0005】
さらに、WO−9401280には、シリコーン層上にカバーシートを設けた印刷原版を、レーザー照射することよりシリコーン層がカバーシートに転写し、その後、カバーシートを剥離除去することで水なし平版を形成する方法が記載されている。この方法において、カバーシートの剥離工程のみによってシリコーン層を十分に除去するためには、シリコーン層とカバーシートとの間に、天然ゴムとアルファテルペン樹脂とから成る接着層を設ける必要があることが記載されている。しかし、一般的に、天然ゴム系、合成ゴム系あるいはアクリル系接着剤は、シリコーンゴムに対する接着力が弱いため、例示された接着層では実際にはレーザー露光部シリコーン層はうまく除去できなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、レーザーにより水なし平版を形成する方法は、従来いくつか提案されているが、露光部シリコーン層除去の確実性と印刷性能上の問題をいまだに十分満足させていない。しかしながら、レーザー露光後に、インク反発性層上に設けた層を剥離除去することで、確実にレーザー露光部のインク反発性層を除去することができれば、レーザー露光部インク反発性層除去の際に、非画像部インク反発性層に傷が入ったり、さらに、露光部から除去したインク反発性層(現像カス)が版面に再付着することがなく有利な水なし平版の形成方法となる。したがって、それらを可能とする技術が求められる。
【0007】
即ち、本発明の目的は、レーザー記録でき、レーザー露光後に、カバーフィルムを剥離除去することにより、露光部のインク反発性層除去が確実に行われ、さらに、印刷性能を満足する水なし平版印刷原版及び水なし平版の形成方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、レーザー露光後にカバーフィルムを剥離除去するまでの水なし平版印刷原版の取り扱い時において、インキ反発性層表面が、保護された水なし平版印刷原版及び水なし平版の形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、レーザー書き込みできる水なし原版及び水なし平版の作成方法について鋭意検討を行った結果、上記の目的は、下記の水なし原版及び水なし平版の形成方法により達成された。
【0009】
即ち、本発明の第1の水なし平版印刷原版は、支持体上に、レーザー光を熱に変換しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層である第1層、インキ反発性の表面を有する層である第2層、及び該インキ反発性第2層の表面に対して30〜2000g/cmの密着力を有する層であるシリコーン系粘着剤からなる第3層をこの順に積層してなることを特徴とする。
この水なし平版印刷原版は、密着力を有する第3層を内側にしてロール状にしたものが、保存や、実際の使用時に、好都合である。
また、本発明の第2の水なし平版印刷原版は、支持体上に、レーザー光を熱に変換しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層である第1層、インキ反発性の表面を有する層である第2層、該インキ反発性第2層の表面に対して30〜2000g/cmの密着力を有する層であるシリコーン系粘着剤からなる第3層、及びカバーフィルム層をこの順に積層してなることを特徴とする。つまり、前記の第1の水なし平版印刷原版に対して、カバーフィルム層を更に設けたものである。
本発明の水なし平版印刷版の形成方法は、前記第1の水なし平版印刷原版に対して、第1層が吸収可能なレーザー光を照射し画像露光する工程、レーザー露光の前あるいは後に、第3層表面にカバーフィルム層を設ける工程、及び、前記二工程の後にカバーフィルム層を剥離し、第3層及びレーザー照射部の第2層を除去する工程を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の水なし原版は、基本的には、支持体上に、レーザー光を熱に変換しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層(第1層)、インキ反発性の表面を有する層(第2層)、インキ反発性第2層の表面に対して30〜2000g/cmの密着力を有するシリコーン系粘着剤からなる層(第3層)をこの順に積層してなる形態である(第1の水なし平版印刷原版)。
該水なし原版に、第1層が吸収可能なレーザー光が照射されると、第1層でレーザーエネルギーが吸収され、光を熱に変換する第1層はレーザー照射と同時に急速に昇温し、第1層の一部もしくは全体の燃焼、融解、分解、気化、爆発等の化学反応や物理変化により、結果として支持体とインク反発性の第2層の間のいずれかの部分で密着性が低下し、第2層が剥離可能となる。そして、レーザーによる画像露光の前あるいは後表面にカバーフィルム層が設けられた後、カバーフィルムを剥離除去することにより水なし平版の形成を行うことで、レーザー露光部のインク反発性第2層の除去が行え、印刷時に問題となるインキ反発性第2層の現像カスの版面への付着や、製版時の非画像部インキ反発性第2層への傷を防止することができる。
これらを確実にするために、本発明では、第2層と第3層間の密着力は、30〜2000g/cmとされ、この点が本発明の重要な特徴である。この値は、レーザー未照射部のカバーフィルムを、剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で剥離除去する際に、第2層と第3層間の剥離に要する剥離強度により表したものである。
また、各層で使用する材料によっても異なるが、第2層と第3層間の密着力は、好ましくは50〜2000g/cm、さらに好ましくは75〜1000g/cmである。
本発明の水なし原版において、インキ反発性第2層と第3層間の密着力は、レーザー未照射部の第1層と第2層間の密着力及び支持体と第1層間の密着力より小さく、カバーフィルムと第3層間の密着力より小さく、レーザー照射により密着力の低下したレーザー照射部の第1層と第2層の密着力より大きくなる。このため、本発明の水なし原版をレーザー露光した後に、カバーフィルムを剥離除去すると、カバーフィルムと共に、第3層及びレーザー照射部のインク反発性第2層を選択的に除去することができ、水なし平版を形成することができる。
【0011】
上記のように、第2層と第3層間の密着力を、30〜2000g/cmに設定するには、第3層の材料を適切に選定することによって行うのが好都合である。従って、以下、本発明の水なし原版の材料などについて、第3層から詳細に説明する。
[第3層]
本発明における第3層は、インク反発性の第2層表面に対し30〜2000g/cmの密着力を有する層であり、シリコーン系粘着剤からなる層である。
第3層として利用できるそのシリコーン系粘着剤とは、ポリジオルガノシロキサン及びシリコーンMQ樹脂を主成分とする混合物であり、感圧接着性を示すものである。シリコーンMQ樹脂とは、トリオルガノシロキサン(M)単位とシリケート(Q)単位から成る樹脂であり、粘着付与成分である。
これら主成分に加え、適宜、溶媒及び、任意に粘度安定剤、充填剤、密着助剤のような公知の添加剤が配合される。
また、前記成分に加え、シリコーン系粘着剤の種々の特性を最適化するために、何らかの硬化手段(例えば、光反応的手段、熱的手段及び/又は触媒的手段)が提供され、これらポリオルガノシロキサン組成物は、硬化して使用される。例えば、硬化は、パーオキサイド化合物触媒によるラジカル架橋反応又は、有機金属化合物又はカルボン酸金属塩等の触媒によるシラノール基及び/又は加水分解性基含有シリル基(例えば、アルコキシシリル基、アセチルオキシシリル基等)の縮合反応、あるいは、ヒドロシリル基とアルケニル基の付加(ハイドロシリレーション)反応を用いて行うことができ、各々の硬化反応に適した官能基を含有するシリコーンMQ樹脂及びポリジオルガノシロキサン、硬化触媒が使用される。
この様なシリコーン系粘着剤は、耐熱性、耐溶剤性の用途にすでに現用もされている。これら公知のシリコーン系粘着剤の例としては、特開昭51−127132、特開昭57−168974、特開昭61−108681、特開平5−214316、特開平6−228526、特開平7−53942、特開平7−197008、特開平8−12960、特開昭57−85872、特開平3−17178、特開平5−98238、特開平5−98240、特開平5−345889、特開平7−53941、特開平7−304957、特開昭63−22886、特開昭64−33176、特開平2−866678、特開平4−81487、特開平5−194930、特開昭62−288676、特開平3−128937、特開昭47−32047、特開昭59−145269、特開昭63−291971号等に記載のシリコーン系粘着剤が挙げられる。
第3層として用いることができる市販品としては、例えば、東芝シリコーン製、商品名TSR1510,TSR1511,TSR1515,TSR1520、東レダウコーニングシリコーン製、商品名SH4280,SD4560,SD4570,SD4580等を乾燥、硬化したシリコーン系粘着剤が挙げられる。
インク反発性第2層上に第3層を設ける方法としては、次のような方法が挙げられる。
上記のシリコーン系粘着剤を、適宜、溶剤と混合して、第2層上に塗布し、乾燥、硬化して形成する方法。また、シリコーン系粘着剤に対し可剥離性の樹脂フィルム(例えば、フッ素系樹脂フィルム等)上に、シリコーン系粘着剤を同様に塗布し、乾燥、硬化し、シリコーン系粘着剤層を第2層表面に圧着した後、樹脂フィルムのみを剥離除去する方法。さらに、以下に記載する本発明に使用するカバーフィルム上に、予め、シリコーン系粘着剤を同様に塗布し、乾燥、硬化し、シリコーン系粘着剤層を第2層表面に圧着して、第3層及びカバーフィルムを同時に形成する方法。この方法が特に好ましい。
第3層の膜厚としては、1μm〜200μmが好ましく、より好ましくは、5μm〜100μmであり、さらに好ましくは、8μm〜50μmである。
以下、支持体、第1層、第2層、カバーフィルム、水なし平板の形成方法の順で、それらについて説明する。
[支持体]
本発明において支持体としては、通常オフセット印刷に用いられる公知の金属、プラスチックフイルム、紙およびこれらの複合化された形態のすべての支持体が使用できる。用いる印刷条件下で必要とされる機械的強度、耐伸び特性などの物理適性能を満たす必要があることは当然である。例としてはアルミニウムのような金属支持体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートなどのプラスチック支持体、紙もしくは紙にポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチクフイルムがラミネートされた複合シートなどを例示することができる。
支持体の膜厚は25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
これらの支持体は、支持体上に形成される第1層など隣接する層との密着性向上、印刷特性向上または高感度化のために、支持体にコロナ処理等の表面処理を施したり、プライマー層を設けることができる。このプライマー層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを感光性樹脂層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、更に特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチンまたはカゼインを硬膜させたものも有効である。更に、前記のプライマー層中に、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン/ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル/ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース、ハロゲン化ポリヒドロキシスチレン、塩化ゴム等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけでプライマー層を形成しても良い。また、これらのプライマー層には接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤やアルミニウムカップリング剤)や染料等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。
プライマー層はインク反発性第2層除去部のインキ受容層としても有用であり、支持体として金属支持体のような非インキ受容性の場合、特に有用である。また、プライマー層は印刷時のインク反発性第2層への圧力緩和のためのクッション層としての役割も有している。
一般に、プライマー層の塗布量は乾燥重量で0.05〜10g/m2 の範囲が適当であり、好ましくは0.1〜8g/m2 であり、より好ましくは0.2〜5g/m2 である。
【0012】
[第1層]
本発明における第1層は書き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層であり、この機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。
光熱変換材料としては、従来、レーザー光源を赤外線レーザーとした場合、赤外線吸収色素、赤外線吸収顔料、赤外線吸収性金属、赤外線吸収金属酸化物など書き込みのレーザーに使用する波長の光を吸収する各種の有機および無機材料が使用可能であることが知られており、本発明でもそれらを使用可能である。
これらの材料は単独膜の形態で、もしくはバインダー、添加剤など他の成分との混合膜の形態で使用される。
単独膜の場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属および合金や金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ハロゲン化物、有機色素などを蒸着法およびスパッタリング法等により支持体上に形成させることができる。また、混合膜の場合には、光熱変換材料を溶解もしくは分散して他の成分と共に塗布法により形成することができる。
(光熱変換材料)
本発明における第1層に使用される光熱変換材料は、有機顔料としては酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラックなど各種カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾もしくは表面コートされた各種カーボンブラック、ニグロシン類、有機色素としては「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press ,New York,NY(1990))、US4833124,EP−321923、US−4772583,US−4942141、US−4948776、US−4948777、US−4948778、US−4950639、US−4912083、US−4952552、US−5023229等の明細書に記載の各種化合物、金属もしくは金属酸化物としてはアルミニウム、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化チタン等、この他にポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなども使用可能である。
(バインダー)
第1層を混合膜として形成する場合に使用されるバインダーとしては、光熱変換材料を溶解もしくは分散する公知のバインダーが使用される。これらの例としてはニトロセルロース、エチルセルロースなどのセルロース、セルロース誘導体類、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの単独重合体および共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体。イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル類の単独重合体および酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーおよび、「J. Imaging Sci.,P59-64 ,30(2), (1986) (Frechet ら)」や「Polymers in Electronics(Symposium Series,P11, 242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson )」、「Microelectronic Engineering,P3-10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が使用可能である。
(添加剤)
第1層を混合膜として形成する場合には、光熱変換剤とバインダー以外に添加剤を用いることが出来る。これらの添加剤は、第1層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の分散物の分散性を向上させたり、支持体やプライマー層などの隣接する層に対する密着性を向上させるなど種々の目的に応じて添加される。
例えば、第1層の機械的強度を向上させるために第1 層を架橋する手段が考えられ、この場合には各種の架橋剤が添加される。
レーザー記録感度を向上させるために加熱により分解しガスを発生する公知の化合物を添加することが考えられる、この場合には第1層の急激な体積膨張によりレーザー記録感度が向上できる。(これらの添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等を使用することが出来る)
また、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することが出来る。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、第1層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。(これらの添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルフォニウム塩、フォスフォニウムトシレート、オキシムスルフォネート、ジカルボジイミドスルフォネート、トリアジンなどを使用することが出来る)
光熱変換剤にカーボンブラックなどの顔料を用いた場合には、顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあり、各種の顔料分散剤を添加剤として使用される。
接着性を向上させるために公知の密着改良剤(例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等)を添加しても良い。
この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤など必要に応じて各種の添加剤が使用される。
(膜厚)
第1層が単独膜の場合には蒸着法およびスパッタリング法等にて薄膜が形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。混合膜は主に塗布により形成される。この場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。第1層の膜厚は厚すぎるとレーザー記録感度の低下など好ましくない結果を与える。
【0013】
[第2層]
本発明における第2層はインク反発性の表面を有する層である。従来公知のインク反発性表面を有するものが使用できる。
従来公知のインク反発性表面には、低表面エネルギーを有する物質としてフッ素あるいはシリコーン化合物が良く知られている。特にシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)が水なし平版のインク反発層に好適に用いられる。
シリコーンゴムは大別して、(i)縮合型シリコーンゴム、(ii)付加型シリコーンゴム、(iii)放射線硬化型シリコーンゴムの3種に分類されるが、本発明における水なし平版の第2層のシリコーンゴムとしては、これら全ての従来公知の各種のシリコーンゴムが使用できる。
(i) 縮合型シリコーンゴム層は、代表的には、下記組成物Aを硬化して形成した皮膜である。
組成物A
(a)ジオルガノポリシロキサン 100重量部
(b)縮合型架橋剤 3〜70重量部
(c)触媒 0.01〜40重量部
前記成分(a)のジオルガノポリシロキサンは、下記一般式で示されるような繰り返し単位を有するポリマーで、R1 およびR2 は炭素数1〜10アルキル基、ビニル基、アリール基であり、またその他の適当な置換基を有していても良い。一般的にはR1 およびR2 の60%以上がメチル基、あるいはハロゲン化ビニル基、ハロゲン化フェニル基などであるものが好ましい。
【0014】
【化1】
このようなジオルガノポリシロキサンは両末端に水酸基を有するものを用いるのが好ましい。
また、前記成分(a)は、数平均分子量が3,000〜100,000であり、より好ましくは、10,000〜70,000である。
成分(b)は縮合型のものであればいずれであってもよいが、次の一般式で示されるようなものが好ましい。
R1 m ・Si・Xn
(m+n=4、nは2以上)
ここでR1 は先に説明したR1 と同じ意味であり、Xは次に示すような置換基である。
Cl、Br、Iなどのハロゲン、
【0015】
【化2】
などの有機置換基。
[ここでR3 は炭素数1〜10のアルキル基および炭素数6〜20のアリール基、R4 、 R5 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。]
成分(c)は錫、亜鉛、鉛、カルシウム、マンガンなどの金属カルボン酸塩、
例えば、ラウリン酸ジブチル、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛など、あるいは塩化白金酸等のような公知の触媒があげられる。
(ii)付加型シリコーンゴム層は、代表的には、下記組成物Bを硬化して形成した皮膜である。
組成物B
(d)付加反応性官能基を有するジオルガノポリシロキサン 100重量部
(e)オルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜25重量部
(f)付加触媒 0.00001〜1重量部
上記成分(d)の付加反応性官能基を有するジオルガノポリシロキサンとは、1分子中にケイ素原子に直接結合したアルケニル基(より好ましくはビニル基)を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンで、アルケニル基は分子量末端、中間いずれにあってもよく、アルケニル基以外にこのジオルガノポリシロキサンに含まれてよい有機基としては、置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基、アリール基である。また、成分(d)には水酸基を微量有することも任意である。
成分(d)は、数平均分子量が3,000〜100,000であり、より好ましくは、10,000〜70,000である。
成分(e)としては、両末端水素基のポリジメチルシロキサン、α、ω−ジメチルポリシロキサン、両末端メチル基の(メチルシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、環状ポリメチルシロキサン、両末端トリメチルシリル基のポリメチルシロキサン、両末端トリメチルシリル基のジメチルシロキサン)(メチルシロキサン)共重合体などが例示される。
成分(f)としては、公知のものの中から任意に選ばれるが、特に白金系の化合物が望ましく、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金などが例示される。これらの組成物の硬化速度を制御する目的で、テトラシクロ(メチルビニル)シロキサンなどのビニル基含有のオルガノポリシロキサン、炭素−炭素三重結合含有のアルコ−ル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノ−ル、エタノ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルなどの架橋抑制剤を添加することも可能である。
(iii)放射線硬化型シリコーンゴム層は、放射線照射により重合可能な官能基を有するシリコーンベースポリマーの放射線による架橋反応により硬化して形成した皮膜であり、ベースポリマーを開始剤と共に溶解した液をコーティング液とし、塗布後に、全面放射線露光することで形成される。通常、アクリル系の官能基を有するベースポリマーを使用し紫外線照射により架橋を生成する。これらのシリコーンゴムについては、「R&DレポートNo.22 シリコーンの最新応用技術」(CMC発行、1982年)、特公昭56−23150、特開平3−15553、特公平5−1934号公報などに詳しく記載されている。
上記のシリコーンゴム層は、第1層の上に直接もしくは間に他の層を介して塗設される。なお、シリコーンゴム層には必要に応じて、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機物の微粉末、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤やアルミニウム系カップリング剤などの接着助剤や光重合開始剤を添加しても良い。
第2層として好適なシリコーンゴム層は、厚さが小さいとインキ反撥性が低下し、傷が入りやすい等の問題点があり、厚さが大きい場合、現像性が悪くなるという点から、厚みとしては、0. 3〜10μmであり、0. 5〜5μmが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。ここに説明した水無し平版において、シリコーンゴム層の上に更に種々のシリコーンゴム層を塗工しても良い。
【0016】
[カバーフィルム]
本発明において使用するカバーフィルムとしては、レーザー照射を受けた第2層の転写を受けることができるフィルムならば任意の材料が使用でき、従って、公知の各種フィルムが使用できる。その材料として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、セロファン等が挙げられ、それらをラミネートしたり、ポリマーのコーティングを施し、第3層上に設けることができる。または、予め、本発明に使用するカバーフィルム上に、第3層を設けた後、第3層を第2層表面に圧着して、第3層及びカバーフィルムを同時に形成することもできる。この場合、カバーフィルムと第3層の密着力向上の目的で、カバーフィルムに、コロナ処理等の表面処理を施したり、プライマー層を設けることができる。本発明に用いられ得るプライマー層としては、例えば、特開昭52−29831に開示されているようなシリコーン系粘着剤を基材に好適に接着するための公知の各種プライマーを使用できる。さらに、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤やアルミニウムカップリング剤等の接着助剤を第3層中に含有させることもできる。
また、樹脂フィルム上にシリコーン系粘着剤層が設けられた粘着シートが、例えば、住友スリーエム製、商品名スコッチテープ#851A,スコッチテープ#5413,スコッチテープ#9396,スコッチテープ#9393,スコッチテープ#5490、ソニーケミカルズ製、商品名ソニーボンドテープT4080、Beiersdorf製、商品名tesaテープ#4428,tesaテープ#4350−1,tesaテープ#4142,tesaテープ#4331,tesaテープ#4310、Permacel製、商品名P−366,P−377,P−904,P904HD等として市販されており、本発明に使用することができる。
また、表面にマット加工を施しても良いが、マット加工の無いものの方が本発明では好ましい。
カバーフィルムの膜厚は5μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm、さらに好ましくは10μm〜50μmである。
また、本発明において、第3層のカバーフィルムに対する密着力は、インク反発性第2層に対する密着力よりも高い必要がある。
【0017】
[水なし平版の形成方法]
本発明において、水なし原版は、第1層が吸収可能なレーザー光により画像露光される。このとき、本発明の水なし原版の第1層において、レーザー光が吸収されて熱エネルギーに変換され、第1層の化学的あるいは物理的変化により、レーザー露光部のインク反発性第2層と下層の間の密着性が低下する。
【0018】
本発明において、水なし原版を露光するのに使用されるレーザーは、第2層が剥離除去されるのに十分な密着力の低下が起きるのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーのごときガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、そして半導体レーザーなどが使用できる。通常出力が100mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格などの実用的な面からは、半導体レーザーおよび半導体励起の固体レーザー(YAGレーザーなど)が好適に使用される。
これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。
レーザー照射は、第3層側(カバーフィルムがある場合は、カバーフィルム側)あるいは、支持体側の任意の側から照射することができるが、第3層(カバーフィルムがある場合は、カバーフィルム及び第3層)が、照射レーザー光に対し透明な場合は、第3層側(カバーフィルムがある場合は、カバーフィルム側)から照射し、支持体が、照射レーザー光に対し透明な場合は、支持体側から照射することが好ましい。
また、特開平6−186750号公報に記載されているイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0019】
本発明の水なし原版は、レーザー光による画像露光、及びレーザー露光前あるいは後におけるカバーフィルム層の上設に次いで、カバーフィルムの剥離除去がなされる。このとき、本発明の水なし原版のインキ反発性第2層と第3層間の密着力は、前記したように設定されているので、レーザー露光部のインク反発性第2層の除去が確実に行え、印刷時に問題となるインキ反発性第2層の現像カスの版面への付着や、製版時の非画像部インキ反発性第2層への傷を確実に防止することができる。
【0020】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(支持体)
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上にプライマー層として、乾燥膜厚0.2μmとなるようにゼラチン下塗り層を形成した。
(カーボンブラック分散液の作成)
下記の混合液をペイントシェーカーにて30分間分散した後、ガラスビーズをろ別してカーボンブラック分散液を作成した。
(第1層の形成)
前記のゼラチン下塗りポリエチレンテレフタレート上に、下記の塗布液を乾燥膜厚2μmとなるように塗布し第1層を形成した。
・上記のカーボンブラック分散液 55g
・ニトロセルロース
(2−プロパノール30%含有、重合度80、ナカライテスク製)4.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 45g
(第2層の形成)
下記の塗布液を上記第1層上に塗布し、加熱(110℃、2分)、乾燥することにより、乾燥膜厚2μmの第2層を形成した。
(第3層及びカバーフィルム層の形成)
次いで、形成した第2層の表面に、住友3M製シリコーン系粘着シート(商品名:スコッチテープ#9393)を圧着し、粘着性第3層及びカバーフィルム層を形成して、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、150g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた本発明の水なし原版に、カバーフィルム側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、カバーフィルム側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は8μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例2
実施例1のシリコーン系粘着シートを住友3M製粘着シート(商品名:スコッチテープ#851A)に替える以外は全く同様にして、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、950g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた本発明の水なし原版に、支持体側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、支持体側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は8μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
比較例1
実施例1のシリコーン系粘着シートを住友3M製アクリル系粘着シート(商品名:スコッチテープ#9390)に替える以外は全く同様にして、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、3g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた水なし原版に、カバーフィルム側から、実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザーおよび半導体レーザーにて、各々、書き込みを行った後、実施例1と同様に、カバーフィルムを剥離した。第3層は、カバーフィルムと共に除去されたが、第3層と第2層の間の密着力が弱いために、レーザー露光部の第2層であるシリコーン層の大部分は、カバーフィルムと共に除去されずに残存し、(現像不良となり、)シリコーン画像が形成できなかった。
実施例3
(支持体及び第1層の形成)
片面にコロナ処理を施した厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート支持体(商品名:E5101、東洋紡製)上に、蒸着真空度5×10-5Torrの条件下に、Tiを抵抗加熱により蒸着し、第1層を形成した。この時の第1層の厚みは、200Åであり、光学濃度は、0.6であった。
(第2層の形成)
下記の塗布液を作成し、上記第1層上に塗布し、加熱(110℃、1分)、乾燥することにより、乾燥膜厚2μmのシリコーンゴム層(第2層)を形成した。
(第3層及びカバーフィルム層の形成)
次いで、形成した第2層の表面に、住友3M製シリコーン系粘着シート(商品名:スコッチテープ#9396)を圧着し、粘着性第3層及びカバーフィルム層を形成して、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、1100g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた本発明の水なし原版に、カバーフィルム側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、カバーフィルム側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例4
実施例3のシリコーン系粘着シートをソニーケミカルズ製シリコーン系粘着シート(商品名:ソニーボンドテープT4080)に替える以外は全く同様にして、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、630g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた本発明の水なし原版に、支持体側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、支持体側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例5
実施例3と全く同様に、第2層まで形成した後、下記組成の塗布液を第2層上に塗布し、加熱(120℃、2分)、乾燥することにより、乾燥膜厚15μmの第3層を形成した。
次いで、カバーフィルムとして、6μmのポリエチレンテレフタレートを圧着して、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、55g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた本発明の水なし原版に、カバーフィルム側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、カバーフィルム側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例6
実施例5と全く同様に、第3層まで形成し水なし原版を得た。
得られた本発明の水なし原版に、第3層側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。
次いで、カバーフィルムとして、6μmのポリエチレンテレフタレートを第3層上に圧着した。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、第3層側から、書き込みを行った後、同様にカバーフィルムを圧着し、カバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
比較例2
実施例3のシリコーン系粘着シートを住友3M製合成ゴム系粘着シート(商品名:スコッチテープ#854)に替える以外は全く同様にして、水なし原版を得た。この水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度は、5g/cmであった。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
得られた水なし原版に、支持体側から、実施例3と全く同様に、半導体励起YAGレーザーおよび半導体レーザーにて、各々、書き込みを行った後、実施例3と同様に、カバーフィルムを剥離した。第3層は、カバーフィルムと共に除去されたが、第3層と第2層の間の密着力が弱いために、レーザー露光部の第2層であるシリコーン層の大部分は、カバーフィルムと共に除去されずに残存し、(現像不良となり、)シリコーン画像が形成できなかった。
実施例7〜12、比較例3
(支持体)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に、下記組成の塗布液を塗布し、加熱(100℃、1分)、乾燥することにより、乾燥膜厚0.2μmのプライマー層を形成した。
・塩素化ポリエチレン 1.0g
−(−C2 H4-y Cly −)n− y=1.7,n=200
・メチルエチルケトン 10g
・シクロヘキサン 100g
(第1層の形成)
前記の塩素化ポリエチレン下塗りポリエチレンテレフタレート上に、蒸着真空度5×10- 5Torrの条件下に、SnとSnSとを別の蒸発源を用い、Snは抵抗加熱で、SnSは電子ビームにより同時に蒸着を行い第1層を形成した。
両者の混合率の制限は、各々の蒸発源に対して水晶振動型の膜厚モニターを配置し、それにより蒸発速度を制御することにより行った。この時の第1層の厚みは、400Åであり、SnSの組成比は、体積パーセントで25%に調整した。
(第2層の形成)
下記の塗布液を作成し、上記第1層上に塗布し、加熱(110℃、1分)、乾燥することにより、乾燥膜厚2μmのシリコーンゴム層(第2層)を形成した。
(第3層及びカバーフィルム層の形成)
下記組成(ロ)、(ハ)の塗布液を片面にコロナ処理を施した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(商品名:E5101、東洋紡製)のカバーフィルム上に、塗布膜厚を表1に示したように変えて、コロナ処理面に、各々塗布し、乾燥することで、粘着シートを得た。次いで、形成した第2層の表面に、得られた粘着シートを圧着し、粘着性第3層及びカバーフィルム層を形成して、実施例6〜11及び比較例3の水なし原版を得た。各々の水なし原版のカバーフィルムを剥離角度180度、剥離スピード10cm/秒で、剥離したときの剥離強度を表1に示した。(このときの剥離は、第2層と第3層の間の剥離であった。)
シリコーン系粘着剤塗布液(ロ)
【0021】
【表1】
実施例7〜12で得られた本発明の水なし原版に、各々、カバーフィルム側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2) の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、カバーフィルムを剥離することにより、第3層及びレーザー露光部の第2層であるシリコーン層がカバーフィルムと共に容易に除去された。一方、レーザー未露光部のシリコーン層は除去されずに第1層上に保持され、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
また、各々の水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2) の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、カバーフィルム側から、書き込みを行った後、同様のカバーフィルムの剥離を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版印刷版が形成された。この記録条件および同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水無し平版印刷版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例7〜12と全く同様にして、比較例3の水なし原版に、カバーフィルム側から、半導体励起YAGレーザーおよび半導体レーザーにて、各々、書き込みを行った後、実施例7〜12と同様に、カバーフィルムを剥離した。第3層は、カバーフィルムと共に除去されたが、第3層と第2層の間の密着力が弱いために、レーザー露光部の第2層であるシリコーン層の大部分は、カバーフィルムと共に除去されずに残存し、(現像不良となり、)シリコーン画像が形成できなかった。
比較例4〜6
第2層上に、第3層及びカバーフィルム層を設けないこと以外は、実施例1、3及び6と全く同様にして得られた3種の水なし原版を準備した。
次いで、これらの水なし原版各々に、第2層側から、実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザーおよび半導体レーザーにて、各々、書き込みを行った後、レーザー露光部のインク反発性第2層が完全に除去されるまで、液体を用いずに、現像用パッドで、第2層表面を擦って現像処理を行い、水なし平版を得た。
しかし、得られた水なし平版は、非画像部のシリコーン層に傷が付いており、さらに、レーザー露光部より除去したインク反発性第2層のカスが、非画像部のインク反発性第2層、あるいは、第2層が除去された画像部上に付着した。レーザー露光部から除去されたシリコーンゴムが、版上に付着していた。
これらの水なし平版を各々、印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インクが着肉し汚れとなった。さらに、画像部に付着したシリコーンゴムの部分で、インクが着肉せず、すぬけとなった。
【0022】
【発明の効果】
以上のごとく本発明により、レーザー露光ができ、露光部の第2層の除去が確実に行え、さらに、露光部から除去した第2層の現像カスが版面に再付着することがなくなり、高度な印刷性能を満足する水なし原版、及び水なし平版の形成方法が実現できた。
Claims (3)
- 支持体上に、レーザー光を熱に変換しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層である第1層、インキ反発性の表面を有する層である第2層、及び該インキ反発性第2層の表面に対して30〜2000g/cmの密着力を有する層であるシリコーン系粘着剤からなる第3層をこの順に積層してなることを特徴とする水なし平版印刷原版。
- 支持体上に、レーザー光を熱に変換しその熱により支持体から上層の剥離を可能とする層である第1層、インキ反発性の表面を有する層である第2層、該インキ反発性第2層の表面に対して30〜2000g/cmの密着力を有する層であるシリコーン系粘着剤からなる第3層、及びカバーフィルム層をこの順に積層してなることを特徴とする水なし平版印刷原版。
- 請求項1の水なし平版印刷原版に対して、第1層が吸収可能なレーザー光を照射し画像露光する工程、レーザー露光の前あるいは後に、第3層表面にカバーフィルム層を設ける工程、及び、前記二工程の後にカバーフィルム層を剥離し、第3層及びレーザー照射部の第2層を除去する工程を有することを特徴とする水なし平版印刷版の形成方法。
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