JP3789569B2 - 湿し水不要平版印刷版の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザー光によるヒートモード記録によって、湿し水を必要としない印刷ができる湿し水不要平版印刷版(以下、水なし平版という)を形成するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
伝統的な印刷手法としては、活版印刷、グラビア印刷及び平版オフセット印刷等が知られているが、近年、特殊な分野を除いては平版オフセット印刷が増加している。この平版オフセット印刷においては、プレート表面に親水性部及び親油性部から構成された画像パターンが形成され湿し水を用いる水あり平版と、プレート表面にインキ反撥性部及びインキ受容性から構成された画像パターンが形成され湿し水を用いない水なし平版とが知られている。このうち水なし平版は、湿し水を用いないために印刷作業に熟練を要しないこと、インキ濃度が印刷初期から安定し損紙が少なく少部数の印刷を行う場合にも経済的である等水あり平版に対して有利な特徴を持っている。
【0003】
一方、コンピューター技術の進展により、従来手作業で行われていた印刷の前工程である製版工程がデジタル化され、印刷の画像がデジタルデータ化されてきている。このデジタルデータからリスフィルムを介さず直接平版を形成する技術(コンピューター・ツ−・プレート技術)が近年進展してきている。しかし、これらの技術は、水あり平版を形成するものであることが多く、水なし平版を形成できるものはほとんど知られていないのが実状である。
【0004】
レーザー書き込みにより水なし平版を形成できる例としては、特公昭42−21879号公報にその最も古い開示がある。これには最外層であるインキ反撥性のシリコーン層をレーザー照射により画像状に除去して除去した部分をインキ付着性として水なし平版を形成することが記載されている。しかし、レーザー照射部のシリコーンが版面全体に飛散し印刷時に不都合を起こしたり、レーザー照射時に十分除去されなかったレーザ照射部のシリコーン層が印刷が進むに従って剥離されて、インキ付着部の面積が増大する(ドットゲインする)等の問題があった。
【0005】
また、特開昭50−158405号公報には、シリコーンゴム表面層を有する湿し水不要平版印刷原版(以下、水なし原版という)に赤外光レーザーであるYAGレーザーを照射し、溶剤(ナフサ)処理によりレーザー照射部のシリコーン層を除去して水なし平版を形成する方法が開示されている。
【0006】
さらに、EP−0573091号には、シリコーンゴム表面層を有する版材にYAGレーザーを照射した後、無溶媒のドライ条件下でシリコーンゴム表面層の一部を擦りとったり、シリコーンゴムを膨潤させない溶剤を与えながらシリコーンゴム表面層の一部を擦ることにより水なし平版を形成する方法が開示されている。
【0007】
しかし、これらの方法は、レーザー露光部のシリコーンゴム除去の際の擦りにより、非画像部のシリコーンゴムに傷が入るおそれがある。また、露光部から除去したシリコーンゴムを版面から完全に除去することが困難である。このため、これらの方法により形成した水なし平版を用いて、印刷を行った場合、非画像部の傷汚れ、画像部のすぬけ等の不都合を生じるという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、レーザーにより水なし平版を形成する方法においては、露光部のシリコーン層の除去性能(現像性)と印刷性能上の問題を両立するには至っていない。
【0009】
本発明の目的は、レーザー記録でき、露光部のインキ反撥性層の除去性能と印刷性能を満足する水なし平版の形成方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、露光部のインキ反撥性層を除去して画像を形成する際に、印刷時に問題となる非画像部の汚れの原因となる非画像部の傷や画像部のすぬけの原因となるインキ反撥性層のカスの再付着が発生しない水なし平版の形成方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、レーザー書き込みできる水なし平版の作成方法について鋭意検討を行った結果、上記の目的は、支持体上にレーザー光を熱に変換する光熱変換層を備え、該光熱変換層上にインキをはじくインキ反撥性層を備えた湿し水不要平版印刷原版に、画像状にレーザー光を照射する照射工程と、液体を使用することなく前記インキ反撥性層の表面を擦することによりレーザー光照射部の前記インキ反撥性層の少なくとも一部を除去する第1の擦り工程と、第1の擦り工程において版面に付着したインキ反撥性層のカス及び第1の擦り工程において除去されずに残存したレーザー光照射部のインキ反撥性層を版面上から除去するように、液体を用いて版面を擦ることで、画像状のインキ反撥性層を形成する第2の擦り工程と、を備えた湿し水不要平版印刷版の形成方法により、達成された。
【0012】
なお、本明細書中では、湿し水不要平版印刷原版(又は水なし原版)とはインキ受容部と非インキ受容部とから構成された画像パターンが形成されていない状態の版材を意味し、湿し水不要平版印刷版(又は水なし平版)とは、画像パターンが形成され、そのまま印刷に供される版材を意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(水なし平版の形成方法)
本発明において使用される水なし原版は、支持体上にレーザー光を熱に変換する光熱変換層を備え、該光熱変換層上にインキをはじくインキ反撥性層を備える。
【0014】
この水なし原版に光熱変換層が吸収可能なレーザー光を照射すると、光熱変換層はレーザー光エネルギーを吸収して、レーザー光照射と同時に急速に昇温し、これによって光熱変換層の一部若しくは全体で燃焼、融解、分解、気化、爆発(アブレーション)等の化学反応や物理変化が起き、結果として支持体とインキ反撥性層との間の密着性が低下し、インキ反撥性層が支持体から剥離されやすくなる。このような密着性の低下はレーザー光を照射した区域のみで生じるため、インキ反撥性層を選択的に除去できる。
【0015】
本発明においては水なし原版を露光するのに使用されるレーザーは、インキ反撥性層を破損、飛散することなく、支持体から剥離除去するのに十分な密着力の低下を起こすのに必要な露光量を与えるものであれば特に制限はなく、Arレーザー、炭酸ガスレーザーの如きガスレーザー、YAGレーザーのような固体レーザー、及び半導体レーザー等が使用できる。通常出力が100mWクラス以上のレーザーが必要となる。保守性、価格等の実用的な面からは、半導体レーザー及び半導体励起の固体レーザー(YAGレーザー等)が好適に使用される。
【0016】
これらのレーザーの記録波長は赤外線の波長領域であり、800nmから1100nmの発振波長を利用することが多い。
【0017】
レーザー照射を、水なし原版のインキ反撥性層側から照射することが好ましいが、支持体が透明な場合には、支持体側から照射することもできる。
【0018】
また、特開平6−186750号公報に記載されているイメージング装置を用いて露光することも可能である。
【0019】
本発明では、レーザー露光部の支持体とインキ反撥性層との間の密着性の低下を利用して、レーザー露光部のインキ反撥性層を選択的に除去することにより、インキ受容性部である支持体を露出させ水なし平版を形成する。本発明におけるレーザー露光部のインキ反撥性層の除去は、液体を用いずインキ反撥性層を擦る第1の擦り工程と、液体を用いてインキ反撥性層を擦る第2の擦り工程との2つの工程で達成される。
【0020】
インキ反撥性層の表面を擦ることによってレーザー露光部のインキ反撥性層を除去する場合、まず、インキ反撥性層に亀裂が生じ、そこから剥離が始まるが、液体を使用するとインキ反撥性層表面とブラシのような擦り部材とが互いにすべりひっかかり難いので剥離が生じにくく、圧力、回数等の条件を強化するため強く擦ったり、何度も擦る必要がある。
【0021】
一方、液体を使用しないドライ擦りの場合は、両者のひっかかりがよいのでインキ反撥性層が剥離し易く、温和な条件で擦るだけでよい。しかしながら、液体を使用しないでインキ反撥性層表面を擦ると、露光部から除去されたインキ反撥性層のカスが、露光されていない非画像部やインキ反撥性層が除去された画像部上に付着し易い。
【0022】
本発明の第1の擦り工程は、液体を用いずに、現像用パッド及び/又はブラシで、インキ反撥性層表面を擦ることにより、レーザー露光部のインキ反撥性層の大部分を効率的に除去することができる。
【0023】
しかしながら、第1の擦り工程においては、露光部から除去したインキ反撥性層のカスが、非画像部及び/又はインキ反撥性層が除去された画像部上に付着し、版面上から、これらのカスを完全に除去することが困難である。また、非画像部のインキ反撥性層に傷が付かない程度に、第1の擦り工程を行うと、レーザー露光部のインキ反撥性層の一部が除去されず残存する場合がある。
【0024】
そこで、第1の擦り工程に次いで、液体を用いて、インキ反撥性層表面を擦る第2の擦り工程を行うことで、版面上に付着したインキ反撥性層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のインキ反撥性層を版面上から完全に除去することができる。擦り方法は、例えば、液体を含む現像用パッドで版面を擦ったり、液体を版面に注いだ後に、ブラシで擦る等、公知の方法で行うことができる。使用する液体の温度は任意であるが、好ましくは10℃〜50℃である。
【0025】
本発明において、第2の擦り工程で使用される液体としては、水なし平版の現像液として公知のもの、例えば、炭化水素類、極性溶媒、水及びこれらの組み合わせ等が使用できるが、安全性の観点から、水又は水を主成分とする水溶性有機溶剤の水溶液が好ましく、安全性及び引火性等を考慮すると水溶性溶剤の濃度は40重量%未満が望ましい。
【0026】
用い得る炭化水素類としては、脂肪族炭化水素類[具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ガソリン、灯油、市販の溶剤である”アイソパーE、H、G”(エッソ化学社製)等]、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、及びハロゲン化炭化水素(トリクレン等)等が挙げられる。また、極性溶媒としては、アルコール類(具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート等)、その他、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等が挙げられる。また、水としては、水道水、純水、蒸留水等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
さらに、上記炭化水素類や極性溶媒のうち水に対する親和性の低いものについては界面活性剤等を添加して水に対する溶解性を向上させてもよい。また、界面活性剤とともにアルカリ剤(例えば、炭酸ナトリウム、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム等)を添加することもできる。
【0028】
上記のように、レーザー照射後に、液体を用いずインキ反撥性層表面を擦る第1の擦り工程及び液体を用いてインキ反撥性層表面を擦る第2の擦り工程を行うことで、レーザー露光部のインキ反撥性層の除去を確実に行うことができ、印刷性能に問題となる版面上の付着カスを取り除くことができる。
(水なし原版)
本発明に使用される水なし原版は以下のように製造される。
【0029】
本発明において支持体としては、通常オフセット印刷に用いられる公知の金属支持体、プラスチックフィルム、紙シート及びこれらの組み合わせが使用できる。これらの支持体は、用いる印刷条件下で必要とされる機械的強度、耐伸び特性等の物理的性能を満たす必要がある。具体例としては、アルミニウムのような金属支持体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のプラスチック支持体、紙、紙にポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムがラミネートされた複合シート等を例示することができる。
【0030】
支持体の膜厚は25μmから3mm、好ましくは75μmから500μmが適当であるが、用いる支持体の種類と印刷条件により最適な厚さは変動する。一般には100μmから300μmが最も好ましい。
【0031】
これらの支持体には、支持体に隣接する層に対する密着性向上、印刷特性向上又は高感度化のために、コロナ処理等の表面処理を施したり、プライマー層を設けることができる。
【0032】
本発明に使用可能なプライマー層としては、例えば、特開昭60−22903号公報に開示されているような種々の感光性ポリマーを光熱変換層を積層する前に露光して硬化せしめたもの、特開昭62−50760号公報に開示されているエポキシ樹脂を熱硬化せしめたもの、特開昭63−133151号公報に開示されているゼラチンを硬膜せしめたもの、さらに特開平3−200965号公報に開示されているウレタン樹脂とシランカップリング剤を用いたものや特開平3−273248号公報に開示されているウレタン樹脂を用いたもの等を挙げることができる。この他、ゼラチン又はカゼインを硬膜させたものも有効である。さらに、前記のプライマー層中に、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシ変性スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、アクリレートゴム、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース、ハロゲン化ポリヒドロキシスチレン、塩化ゴム等のポリマーを添加しても良い。その添加割合は任意であり、フィルム層を形成できる範囲内であれば、添加剤だけでプライマー層を形成しても良い。また、これらのプライマー層には接着助剤(例えば、重合性モノマー、ジアゾ樹脂、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤やアルミニウムカップリング剤)や染料等の添加物を含有させることもできる。また、塗布後、露光によって硬化させることもできる。
【0033】
プライマー層はインキ受容層としても有用であり、支持体が金属支持体のような非インキ受容性の場合、特に有用である。また、プライマー層は印刷時のインキ反撥性の表面を有する層への圧力緩和のためのクッション層としての役割も有している。
【0034】
一般に、プライマー層の塗布量は乾燥重量で0.05〜10g/m2 の範囲が適当であり、好ましくは0.1〜8g/m2 であり、より好ましくは0.2〜5g/m2 である。
【0035】
本発明における光熱変換層は書き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層であり、これらの機能を有する公知の光熱変換層が使用可能である。
【0036】
この光熱変換層に用いられる光熱変換剤としては、光吸収領域が書き込みに使用されるレーザー光の波長に合った各種の有機及び無機材料、例えば、有機色素、有機顔料、金属及び金属酸化物等が使用可能であることが従来より知られている。レーザー光源が赤外線レーザー光源である場合の有機色素の例としては、「赤外増感色素」(松岡著 Plenum Press ,New York,NY(1990))、US4833124,EP−321923、US−4772583,US−4942141、US−4948776、US−4948777、US−4948778、US−4950639、US−4912083、US−4952552、及びUS−5023229等の明細書に記載の各種化合物等が挙げられる。また、レーザー光源が赤外線レーザー光源である場合の有機顔料の例としては、酸性カーボンブラック、塩基性カーボンブラック、中性カーボンブラック、分散性改良等のために表面修飾又は表面コートされた各種カーボンブラック、及びニグロシン類等が挙げられる。レーザー光源が赤外線レーザー光源である場合の金属の例としては、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛及びこれらの合金等が挙げられ、レーザー光源が赤外線レーザー光源である場合の金属酸化物の例としては、インジウムスズ酸化物、酸化タングステン、酸化マンガン、及び酸化チタン等が挙げられる。この他に、前記金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びフッ化物、並びにポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマー等も使用可能である。これらの材料は単独膜の形態で、又はバインダーや添加剤等他の成分との混合膜の形態で使用される。
【0037】
光熱変換層が単独膜である場合には、アルミニウム、チタン、テルル、クロム、錫、インジウム、ビスマス、亜鉛、鉛等の金属、これらの合金、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属フッ化物及び有機色素等の少なくとも一種以上を含有する膜を蒸着法又はスパッタリング法等により支持体上に形成させることができる。
【0038】
また、光熱変換層が混合膜である場合には、光熱変換剤をバインダーに溶解又は分散して他の成分と共に塗布法により形成することができる。前記バインダーには光熱変換剤を溶解又は分散する公知のバインダーが使用され、その例としては、セルロース、ニトロセルロース及びエチルセルロース等のセルロース誘導体類、アクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体、ポリメチルメタクリレート及びポリブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルの単独重合体及び共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体及び共重合体、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等の各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニル等のビニルエステル類の単独重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等のビニルエステル含有の共重合体、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル及びポリカーボネート等の縮合系各種ポリマー、並びに「J. Imaging Sci.,P59-64 ,30(2), (1986) (Frechet ら)」や「Polymers in Electronics(Symposium Series,P11, 242, T.Davidson,Ed., ACS Washington,DC(1984)(Ito,Willson )」、「Microelectronic Engineering,P3-10,13(1991)(E. Reichmanis,L.F.Thompson)」に記載のいわゆる「化学増幅系」に使用されるバインダー等が挙げられる。
【0039】
光熱変換層を混合膜として形成する場合には、光熱変換層の機械的強度を向上させたり、レーザー記録感度を向上させたり、光熱変換層中の光熱変換剤等の分散性を向上させたり、支持体やプライマー層等のような光熱変換層に隣接する層に対する密着性を向上させる等種々の目的に応じて光熱変換層に各種の添加剤を添加することができる。
【0040】
例えば、光熱変換層の機械的強度を向上させるための添加剤としては、光熱変換層を架橋する各種の架橋剤が使用される。
【0041】
また、レーザー記録感度を向上させるための添加剤としては、照射されたレーザー光エネルギーから変換された熱によって分解してガスを発生させ、これにより光熱変換層の体積を急激に膨張させて後述するインキ反撥性の表面を有する層の剥離を容易にする公知の化合物が使用される。このような添加剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4、4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジアミドベンゼン等が挙げられる。
【0042】
さらに、加熱により分解し酸性化合物を生成する公知の化合物を添加剤として使用することができる。これらを化学増幅系のバインダーと併用することにより、光熱変換層の構成物質の分解温度を大きく低下させ、結果としてレーザー記録感度を向上させることが可能である。このような添加剤の例としては、各種のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムトシレート、オキシムスルホネート、ジカルボジイミドスルホネート、トリアジン等が挙げられる。
【0043】
光熱変換剤にカーボンブラック等の有機顔料を用いた場合には、該有機顔料の分散度がレーザー記録感度に影響を与えることがあり、該有機顔料の分散度を上げてレーザー記録感度を向上させるために、各種の顔料分散剤を添加剤として使用することができる。
【0044】
また、接着性を向上させるために公知の密着改良剤、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を添加剤として使用しても良い。この他にも、塗布性を改良するための界面活性剤等必要に応じて各種の添加剤を使用することができる。
【0045】
光熱変換層の薄膜は、単独膜の場合には蒸着法又はスパッタリング法等にて形成できる。この場合の膜厚は50Åから1000Å、好ましくは100Åから800Åである。また、混合膜は塗布により形成される。この場合の膜厚は0.05μmから10μm、好ましくは0.1μmから5μmである。光熱変換層の膜厚は厚すぎるとレーザー記録感度を低下させる等の好ましくない結果を与える。
【0046】
本発明におけるインキ反撥性層には、従来公知のインキ反撥性を有する材料が使用できる。
【0047】
従来公知のインキ反撥性を有する材料としては、低表面エネルギーを有する物質としてフッ素又はシリコーン化合物が良く知られている。特にシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)が水なし原版のインキ反撥性層に好適に用いられる。
【0048】
シリコーンゴムは大別して、縮合型シリコーンゴム、付加型シリコーンゴム、放射線硬化型シリコーンゴムの3種に分類されるが、本発明における水なし原版のインキ反撥性層には、これら全ての従来公知の各種のシリコーンゴムが使用できる。
【0049】
縮合型シリコーンゴムを用いる場合には、(a)ジオルガノポリシロキサン100重量部に対して、(b)縮合型架橋剤を3〜70重量部、(c)触媒0.01〜40重量部を加えた組成物を用いるのが好適である。
【0050】
前記成分(a)のジオルガノポリシロキサンは、下記一般式で示されるような繰り返し単位を有するポリマーである。R1 及びR2 は炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、アリール基であり、またその他の適当な置換基を有していても良い。一般的にはR1 及びR2 の60%以上がメチル基、ハロゲン化ビニル基、ハロゲン化フェニル基等であるものが好ましい。
【0051】
【化1】
【0052】
このようなジオルガノポリシロキサンは両末端に水酸基を有するものを用いるのが好ましい。
【0053】
また、前記成分(a)は、数平均分子量が3,000〜100,000であり、より好ましくは、10,000〜70,000である。
【0054】
成分(b)の架橋剤は縮合型のものであればいずれであってもよいが、次の一般式で示されるようなものが好ましい。
【0055】
【化2】
【0056】
ここでR1 は先に説明したR1 と同じ意味であり、Xは、Cl、Br、I等のハロゲン原子、水素原子、水酸基、又は以下に示す如き有機置換基を表す。
【0057】
【化3】
【0058】
式中、R3 は炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数6〜20のアリール基、R4 及びR5 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0059】
成分(c)としては、錫、亜鉛、鉛、カルシウム、マンガン等の金属カルボン酸塩、例えば、ラウリン酸ジブチル、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛等、又は塩化白金酸等のような公知の触媒が挙げられる。
【0060】
付加型シリコーンを用いる場合には、(d)付加反応性官能基を有するジオルガノポリシロキサン100重量部に対して、(e)オルガノハイドロジェンポリシロキサン0.1〜25重量部及び(f)付加触媒0.00001〜1重量部を添加した組成物を用いることが好ましい。
【0061】
上記成分(d)の付加反応性官能基を有するジオルガノポリシロキサンとは、1分子中にケイ素原子に直接結合したアルケニル基(より好ましくはビニル基)を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンで、アルケニル基は分子の末端、中間いずれにあってもよく、アルケニル基以外の有機基として、置換若しくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基、アリール基を有していてもよい。また、成分(d)は水酸基を微量有することも任意である。成分(d)は、数平均分子量が3,000〜100,000であり、より好ましくは、10,000〜70,000である。
【0062】
成分(e)としては、両末端に水素基を有するポリジメチルシロキサン、α、ω−ジメチルポリシロキサン、両末端にメチル基を有するメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、環状ポリメチルシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルシロキサン、両末端にトリメチルシリル基を有するジメチルシロキサン−メチルシロキサン共重合体等が例示される。
【0063】
成分(f)としては、公知の重合触媒の中から任意に選ばれるが、特に白金系の化合物が望ましく、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金等が例示される。
【0064】
これらの組成物においてシリコーンの硬化速度を制御する目的で、テトラシクロ(メチルビニル)シロキサン等のビニル基含有のオルガノポリシロキサン、炭素−炭素三重結合含有のアルコ−ル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノ−ル、エタノ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル等の架橋抑制剤を添加することも可能である。
【0065】
また、放射線硬化型シリコーンは、放射線照射により重合可能な官能基を有するシリコーンベースポリマーを放射線で架橋、硬化させて形成され、ベースポリマーを開始剤と共に溶解した液をコーティング液とし、塗布後に、塗布面全面に放射線を露光することで形成される。通常、アクリル系の官能基を有するベースポリマーを使用し、これを紫外線照射により架橋させる。
【0066】
これらのシリコーンゴムについては、「R&DレポートNo.22 シリコーンの最新応用技術」(CMC発行、1982年)、特公昭56−23150号公報、特開平3−15553号公報、特公平5−1934号公報等に詳しく記載されている。
【0067】
上記のインキ反撥性の表面を有する層は、光熱変換層の上に直接又は他の層を介して塗設される。
【0068】
なお、インキ反撥性の表面を有する層には必要に応じて、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機物の微粉末、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等の接着助剤や光重合開始剤を添加しても良い。
【0069】
インキ反撥性の表面を有する層がシリコーンゴム層である場合は、厚さが小さいとインキ反撥性が低下し、傷が入りやすい等の問題点があり、厚さが大きい場合、現像性が悪くなるという点から、厚みとしては、乾燥膜厚として0.3〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmであり、より好ましくは1〜3μmである。
【0070】
ここに説明した水なし平版において、インキ反撥性の表面を有する層の上にさらに種々のシリコーンゴム層を塗工しても良い。
【0071】
また、インキ反撥性の表面を有する層の表面保護のために、インキ反撥性の表面を有する層上に透明なフィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、セロファン等をラミネートしたり、ポリマーのコーティングを施しても良い。これらのフィルムは延伸して用いても良い。また、表面にマット加工を施しても良いが、マット加工のないものの方が本発明では好ましい。
【0072】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(支持体)
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にプライマー層として、乾燥膜厚0.2μmとなるようにゼラチン下塗り層を形成した。
(カーボンブラック分散液の作成)
下記の混合液をペイントシェーカーにて30分間分散した後、ガラスビーズをろ別してカーボンブラック分散液を作成した。
【0073】
(光熱変換層の形成)
前記のゼラチン下塗りポリエチレンテレフタレート上に、下記の塗布液を乾燥膜厚2μmとなるように塗布し、光熱変換層を形成した。
【0074】
(シリコーンゴム層の形成)
下記の塗布液を前記光熱変換層上に塗布し、110℃で2分間加熱し、乾燥させることにより、乾燥膜厚2μmの付加型シリコーンゴム層を形成しレーザー記録用水なし原版を得た。
【0075】
[シリコーンゴム層塗布液組成]
α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(重合度約700) 9.00g
(CH3)3-Si-O-(SiH(CH3)-O)8-Si(CH3)3 0.60g
ポリジメチルシロキサン(重合度約8000) 0.50g
オレフィン−塩化白金酸 0.08g
抑制剤[HC≡C-C(CH3)2-O-Si(CH3)3] 0.07g
アイソパーG(エッソ化学(株)製) 55g
上記のようにして得られた本発明の水なし原版に、シリコーンゴム層側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2 )の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、液体を用いずに、現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0076】
しかしながら、レーザー露光部から除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0077】
次いで、下記組成の水溶液を含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。
(水溶液の組成)
その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0078】
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2 )の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、シリコーンゴム層側から、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は8μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例2
実施例1で作成した水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザーを用いて書き込みを行った。その後、液体を用いずに、現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0079】
しかしながら、レーザー露光部から除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0080】
次いで、トリプロピレングリコールを含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0081】
また、水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体レーザーを用いて、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は8μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例3
実施例1で作成した水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザーを用いて書き込みを行った。その後、液体を用いずに、現像用ブラシで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0082】
しかしながら、レーザー露光部より除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0083】
次いで、DN−3C(商品名;富士写真フイルム(株)製)の10倍希釈水溶液を含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0084】
また、水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体レーザーを用いて、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は8μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
比較例1
実施例1で作成した水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、実施例1と全く同様の水溶液を含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
比較例2
実施例1で作成した水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、トリプロピレングリコールを含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
比較例3
実施例1で作成した水なし原版を実施例1と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、DN−3C(商品名;富士写真フイルム(株)製)の10倍希釈水溶液を含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
実施例4
(支持体)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に、下記組成の塗布液を塗布し、100℃で1分間加熱し、乾燥させることにより、乾燥膜厚0.2μmのプライマー層を形成した。
【0085】
[プライマー層塗布液組成]
塩素化ポリエチレン 1.0g
【0086】
【化4】
【0087】
メチルエチルケトン 10g
シクロヘキサン 100g
(光熱変換層の形成)
前記の塩素化ポリエチレン下塗りポリエチレンテレフタレート上に、蒸着真空度5×10-5Torrの条件下に、Tiを抵抗加熱により蒸着し、光熱変換層を形成した。この時の光熱変換層の厚みは、200Åであり、光学濃度は、0.6であった。
(シリコーンゴム層の形成)
下記の塗布液を作成し、上記光熱変換層上に塗布し、110℃で1分間加熱し、乾燥させることにより、乾燥膜厚2μmのシリコーンゴム層を形成した。
【0088】
上記のようにして得られたシリコーンゴム層の表面に6μmのポリエチレンテレフタレート(カバーフィルム)をラミネートした。
【0089】
得られた本発明の水なし原版のカバーフィルムを剥離した後に、シリコーンゴム層側から、波長1064nm、ビーム径40μm(1/e2 )の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは450mJ/cm2 とした。その後、液体を用いずに、現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0090】
しかしながら、レーザー露光部から除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0091】
次いで、水を含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0092】
また、水なし原版を出力110mW、波長830nm、ビーム径10μm(1/e2 )の半導体レーザーを用いて、主走査速度5m/秒にて、シリコーンゴム層側から、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例5
実施例4で作成した水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体励起YAGレーザーを用いて書き込みを行った。その後、液体を用いずに、現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0093】
しかしながら、レーザー露光部から除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0094】
次いで、イソプロピルアルコールを含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0095】
また、水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体レーザーを用いて、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
実施例6
実施例4で作成した水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体励起YAGレーザーを用いて書き込みを行った。その後、液体を用いずに、現像用ブラシで、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦り、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分を除去した。
【0096】
しかしながら、レーザー露光部から除去したシリコーンゴム層のカスが、非画像部及び/又はシリコーンゴム層が除去された画像部上に付着した。さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層の一部が除去されず残存した。
【0097】
次いで、アイソパーG(エッソ化学(株)製)を含ませた現像用パッドで、シリコーンゴム層表面を擦った。その結果、版面上に付着したシリコーンゴム層のカス及び除去されずに残存したレーザー露光部のシリコーンゴム層を版面上から完全に除去することができ、シャープなエッジのシリコーン画像が形成できた。
【0098】
また、水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体レーザーを用いて、書き込みを行った後、同様の現像処理を行ったところ、解像力は7μmでシャープなエッジの水なし平版が形成された。この記録条件及び同様の現像処理にて、200線の網点形成を行ったところ網点面積率2%から98%までのシリコーン画像が版上に形成できた。このようにして形成された水なし平版を、印刷機を用いて印刷したところ2万枚の非画像部の汚れ及び画像部のすぬけのない良好な印刷物が得られた。
比較例4
実施例4で作成した水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、水を含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
比較例5
実施例4で作成した水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、イソプロピルアルコールを含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
比較例6
実施例4で作成した水なし原版を実施例4と全く同様に、半導体励起YAGレーザー及び半導体レーザーにて書き込みを行った後、アイソパーG(エッソ化学(株)製)を含ませた現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を、非画像部のシリコーンゴム層に傷が付かない程度に擦った。すると、レーザー露光部のシリコーンゴム層の大部分が除去されずに残存し、現像不良となった。そこで、さらに、レーザー露光部のシリコーンゴム層を完全に除去するまで、上記現像用パッドを用いて、シリコーンゴム層表面を擦ったところ、非画像部のシリコーンゴム層表面に傷が付いた。このようにして得られた水なし平版を印刷機を用いて印刷したところ、非画像部の傷の部分に、インキが着肉し汚れとなった。
【0099】
【発明の効果】
以上のごとく本発明により、レーザー露光ができ、インキ反撥性の表面を有する層の露光部の除去が確実に行え、且つ印刷性能を満足する画像を得ることができる。
Claims (1)
- 支持体上にレーザー光を熱に変換する光熱変換層を備え、該光熱変換層上にインキをはじくインキ反撥性層を備えた湿し水不要平版印刷原版に、画像状にレーザー光を照射する照射工程と、
液体を使用することなく前記インキ反撥性層の表面を擦することによりレーザー光照射部の前記インキ反撥性層の少なくとも一部を除去する第1の擦り工程と、
第1の擦り工程において版面に付着したインキ反撥性層のカス及び第1の擦り工程において除去されずに残存したレーザー光照射部のインキ反撥性層を版面上から除去するように、液体を用いて版面を擦ることで、画像状のインキ反撥性層を形成する第2の擦り工程と、
を備えた湿し水不要平版印刷版の形成方法。
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