JP3690747B2 - 高濃縮果実酢 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、濃縮程度が高いために多量の水で希釈しても味覚や滋養の面で有効に飲用できる高濃縮果実酢に関する。なお、ここに高濃縮とは、レシピ(味付け)が高濃縮であるために10倍(原液1に対し水10重量倍)にまで希釈しても調理用、飲料用となり得ることを言い、酢濃度や酢酸度、糖度等が特別に10倍にまで濃縮したという意味ではない。
【0002】
【従来の技術】
保健機能食品の制度がようやく確立し、清涼飲料水の分野でも特定保健用食品の認可を受けたもの(アミールS)や機能栄養食品の表示をするものも増えているが、従来から健康のために「酢」を飲む風習がある我が国では、酢を酢酸、クエン酸、アミノ酸などの補給の目的で、消費者にそれを訴える商品が増えている。この場合、法的には調味料として考えられているため、水分などの表示を義務付けられてはいないが、酢の場合は生のまま飲む人はまれで、大多数の消費者はなんらかの個人的な目安で薄めて飲んでいるので、薄めても水っぽくならない味に調整した5倍濃縮のものが多くなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の5倍濃縮型の飲料酢は、米酢、りんご酢が主な原料であり、それに甘味として蜂蜜、異性果糖を混入して薄めても飲みやすくしてある。従来、5倍濃縮を限度としていた理由については、それ以上に濃縮を過度に高めると、原料に由来する食物繊維が沈殿し、油分が浮くというように、商品として見た目に悪く成分の遊離現象が生じる不都合があったからである。また、特に濃縮程度が高い飲用酢では、成分中にフリーな水の存在がないことから、飲用に当たって希釈により真水が加わると、その水の中にムラとなって浮遊する現象が生じるために、飲む際の印象が悪いだけでなく口当たりも良くなかった。
【0004】
従来の5倍濃縮型がこのような事実もあって、これが濃縮の限度であるとの既成概念となっていたが、濃縮程度に不足があるという見方からすると、濃縮程度を高めることにより、流通のための包装や保管、輸送等の費用が削減できる有利な面があり、また、消費者においては冷蔵庫での保存に場所を取らなくなり、希釈の程度の選択巾が広がる等の利点が考えられる。
【0005】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、従来の5倍を超える濃縮であっても、食物繊維の沈殿が見られなく、水で割っておいしく飲用できる高濃縮果実酢を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明は、すだち果汁:13〜16%と、りんご酢:18〜22%と、果糖ぶどう糖:50〜53%とを主体とし、これに紅麹粉末を添加すると共に、紅麹粉末については、その粒径の10μm以下が90重量%以上を占めるように超微粉砕されていることを特徴とする果実酢であって、希釈することによって、調理用果実酢又は果実酢飲料として利用することができる高濃縮果実酢を提供するものである。
【0007】
ところで、仮に高濃縮果実酢を、単にりんご酢と果糖ぶどう糖とで果実酢を造ったとしたら、りんご酢の酸度と、果糖ぶどう糖の濃度をそれに見合うだけに高めることになるために、材料に由来する食物繊維の沈殿を避けることはできない。
【0008】
しかし、上記のように果実酢の濃縮について、すだち果汁を13〜16%混合したから、これにより酸度が補給されるだけでなく、希釈を補う性質の強い甘味、旨味、香り、風味がこのすだち果汁により付加されることから、希釈程度に応じて濃度を高める必要がなく、従来の5倍濃縮型の程度またはそれよりもやゝ高い程度の濃度で足りることになる。つまり、酸度と甘味料を5倍濃縮型程度に止めておいて、すだち果汁13〜16%の添加により食物繊維の沈殿がない10倍程度に高濃縮された果実酢とすることができた。したがって、消費者が自己の好みに応じて自ら希釈できる巾が5倍に対してその2倍に増え、また、それぞれの健康イメージで希釈度を決めることができる高濃縮果実酢を提供できる。
【0009】
希釈による調理、飲料としての適正については、従来は、酢酸が中心であったから酸味が強く感じられたが、本発明の高濃縮果実酢の場合、すだち果汁13〜16%の果実酢が中心となり、酢酸、クエン酸、すだち果実の持っている味、香りの総合した独特の風味あるまろやかな味わいが得られることになる。
【0010】
加えて、紅麹粉末が添加されているので、それによる相乗的な健康増進効果を期待することができる。紅麹粉末についてはその粒径が10μm以下の占める割合が90%重量以上になるように超微粉砕したものが使用される。これにより、繊維成分が沈殿したりしない品質を保持できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明による高濃縮果実酢は、すだち果汁13〜16%と、りんご酢18〜22%と、果糖ぶどう糖50〜53%とを主体とした果実酢であって、さらに紅麹粉末が添加してあり、加えて、紅麹粉末についてはその粒径が10μm以下の占める割合が90%重量以上になるように超微紛砕されており、希釈することによって、調理用果実酢又は果実酢飲料として利用することができるようにしたもので、5〜10倍の希釈を伴う様々な調合で、料理のソースから飲料まで用途に広く適用し得る。つまり、調合の自由度が高く、例えば、10倍希釈した時でバーモントドリンク(りんご酢と蜂蜜ドリンク)としてのイメージ(果汁の味)を持つようにレシピ設定され得る。また、10〜8〜6〜5といったように薄め方を順次少なくするいずれかの時点をとらえて、目的とする調理用、飲料用の適切な用途に合わせることができる。また、飲料としても濃い目、薄目の好みにも広く対応でき、その対応巾が極めて広くなる。
【0012】
すだち果汁は、柑橘類果汁の一種であり、柑橘類果汁としては、すだち、オレンジ、ゆず、グレープフルーツ、レモン、だいだい、夏みかん等、広くミカン科の果実が利用され、それを搾って得られる。これらの果汁は、果汁を含み適度に酸度(クエン酸)を有し、一種の酢であるが、良好な旨味、香り、風味と共にこれらを有し、希釈されても香りや風味が残りやすいために、これらが薄められた味覚を補う役目を有効に果たすことになる。したがって、次の合わせ酢としてのりんご酢の量は、従来の5倍濃縮型と同程度であっても、味覚に支障を生じることはなく、10倍に薄めても、5倍濃縮型を5倍に薄めた場合に比較して、却って旨味、風味等を増加させることができる。
【0013】
このように、すだち果汁は、10倍希釈しても所望の甘味、酸味、旨味が残っているように調合しやすく、柑橘類果汁の素材として最適である。この条件設定には、高濃縮果実酢において13〜16重量パーセントを占めていることが望ましい。それよりも少ないと希釈に対応できなく、多いと他の素材との風味等のバランスが取れなくなる。
【0014】
りんご酢は、果実酢であるが、合わせ酢の一種として使用する。合わせ酢は、調理用酢や飲用酢を広く使用できる。りんご酢、ふどう酢、かき酢、蜜柑酢等の果実酢の他に、米酢や玄米酢、黒酢等の醸造酢や合成酢を使用でき、これら果実酢以外であっても、柑橘類果汁により果実酢としての機能を保持する。また、その製造についても普通の飲用酢や果実酢と同様に様々となり、これらを破砕した果実搾汁液を原料として、アルコール発酵させた後、酢酸菌を接種して酢酸発酵をさせて得られるが、原料に醸造アルコールを添加して酢酸発酵させることもできる等、製法は様々となり、これにより、原料由来の有機酸類、アミノ酸類、ミネラル類、ビタミン類の等の滋養栄養成分が生成される。
【0015】
りんご酢はクセがなく飲みやすく、とくにすだち果汁と合わせるのに最適であるため、本発明においては合わせ酢としてりんご酢を採用した。その場合、りんご酢は全体の18〜22重量%であることが特に好ましい。これより少ないと、希釈により酸度が不足するし、これを越えると酸味が強くなりすぎる。
【0016】
果糖ぶどう糖(液糖)は甘味料であって、主に酸味を緩和する調整のために用いられる。これは、原則として、従来製品である5倍濃縮型の場合の2倍を必要とするところ、他の甘味料であるステビア、甘草の場合であると、従来の5倍濃縮型と同量程度で足り、それ以上は必要がないことが判明している。一方、果糖ぶどう糖はあっさりした甘味があり、すだち果汁やりんご酢との合わせにおいて最適であり、その場合、50〜53重量%程度が希釈されても旨味が保持され好ましい。
【0017】
健康志向に応じるために、さらに、紅麹成分を添加する。紅麹は、米、麦、大豆等に紅麹菌を接種し育成して得られる麹であって、血圧降下や汚血浄化、健胃等の機能を有することが知られている。これを粉末にして添加する。また、アルコール等で有効成分を抽出しエキスを添加しても良い。紅麹菌としては、モナスカス・ピロウサス、モナスカス・ピュープレウス等を挙げることができる。また、紅麹菌添加による生理活性物質モナコリンの産出と、アルコール発酵及び酢酸発酵とを同一系内で平行して行うことにより(特開平2−303477号公報)、本発明に係る高濃縮果実酢の製造期間を短縮することもできる。なお、紅麹成分も食物繊維成分であることが多い。そこで、その分散のために、繊維成分は90重量%以上を10μm以下の粒径に超微粉砕することが望ましい。
【0018】
高濃縮といっても、果実酢(りんご酢)や甘味料(果糖ぶどう糖)については、従来の5倍濃縮型に比べて余り変える必要はないが、柑橘類果汁(すだち果汁)の量が多くなっている。
【0019】
また、ニンニクやしょうが等の他の材料の微粉末を添加することもあり、このような場合にも食物繊維の処理が必要である。いずれにしても、添加される食物繊維の粒径を5〜10μm程度に超微粉砕したものが90重量%以上を占めると、1週間〜10日間は沈殿が見られなかった。また、1μm以下を90重量%にすると、6ヵ月間も沈殿することはなかった。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明は、5倍を超える濃縮であっても食物繊維の沈殿が見られなく、水で割っておいしく飲用できる高濃縮果実酢を提供することに成功したものであって、これによれば、従来の5倍濃縮型の場合と同量飲料のものを半分の包装で有利に提供できることはもちろん、流通過程における運送や保管、管理が容易且つ安価となり好都合でもあり、また、消費者においては、冷蔵庫等における保管に場所を取らなく、水で割る量的範囲が広くなり消費者が自分に合った調理や飲用に広く利用できるという優れた効果がある。
【0021】
【実施例】
この発明を実施した一例の10倍濃縮果実酢(原液)を仕込み材料別にその割合を示し、同時に一部材料について旨味・風味成分としてのアミノ酸窒素の100g中の量を示す。
【0022】
(仕込み材料) (重量%) (アミノ酸窒素/100g)
果糖ぶどう糖液糖(F−55)51.756
すだち果汁 14.490 6.05mg
紅麹もろみ粉末 0.100 0.49
りんご酢 20.180 1.33
蜂蜜 2.588 0.57
クエン酸 0.336
すだちフレーバーNAB 0.362
ビタミンミックス 0.010
ポリデキストロース
ライティスウルトラ 1.290
TSアスタキサンチン 0.005
ステビア 0.026
安息香酸Na 0.026
原料用水 残
100重量% 8.44mg
(注) 全体仕込み量 1600L(1932.16kg)
比重 1.2076
【0023】
上記から旨味成分としてのアミノ酸窒素の量については、すだち果汁とりんご酢に特に多く、これが希釈に耐えて旨味を保持することが分かる。つまり、10倍希釈により水分が多くなっても美味しく飲めることを意味している。しかし、次に記すように、糖度(Bx)および酸度は上記した原液のほゞ10分の1となる。これをすだち果汁が機能的に補うことになる。
【0024】
(原液) (高希釈)
pH 2.4±0.2 2.8
Bx(糖度) 45.5±1.0 4.5
酸度 2.26 0.225
比重 1.2076 変わらない
【0025】
糖度の減少は、果糖ぶどう糖(液糖)の他、蜂蜜、ステビアを加えることにより調整した。酸度の減少については、クエン酸を添加することにより補ったが、すだち果汁、りんご酢が総体の14〜20重量%もしくはそれ以上の量であると、7〜8倍の希釈または10倍の希釈に旨味等が耐え得ることが分かった。
【0026】
本製品は比重が1.2076となっており、水溶性の物質以外は下に沈殿する可能性もある。紅麹もろみ粉末は、上記したように超微粒子粉末であるため、どの素材よりも分布性が良好である。すだち果汁に混じっている食物繊維系物質は、自然果汁なのでどうしても存在するが、一番しぼりを使用したので、それはごく少量と考えられる。また、5μm以下の超々微粒となれば、6ヵ月間分布状態を続け沈殿を見ない。
【0027】
上記の仕込み材料のうち、次の材料について説明する。
(1)すだちフレーバーNAB
着香料であって、高濃縮果実酢を希釈した際の香りを補強する目的で添加される。
(2)ポリデキストロースライティスウルトラ
水溶性食物繊維である。不足しがちな繊維分の補給と、原液に粘土をつけ沈降しがちな成分を分離させにくくすることを目的とする。
(3)TSアスタキサンチン
抗酸化物質である。エビ・カニ、鮭等に主に存在する眼や脳内、皮膚等における抗酸化物質として機能する。
(4)ステビア
キク科の植物(ステビア)の葉より抽出された天然甘味料、甘さが砂糖の200倍あり、希釈された際の甘味の補助として用いた。
(5)また、クエン酸の添加については、従来の5倍濃縮型が酢酸の酸味を中心に味作りがなされているのに対して、クエン酸の爽やかな酸味を出すことに特徴を置いたことによる。
(6)安息香酸Naは、防菌用に入れてあり、これは濃縮液には必要であるからである。
【0028】
また、すだち果汁(ストレート果汁)およびりんご酢(市販穀物酢比1.2倍)については、他社からの支給品を用いた。
【0029】
上記高濃縮果実酢は、5〜10倍のいずれの希釈にも旨味、風味が健全であって、おいしく飲むことができた。
【0030】
試みに、すだち果汁を10%となし、クエン酸を増やしたものを作成した(その他は上記と同じ仕込み)。その結果は、7倍希釈までは大した差は感じられなかったが、8〜10倍にすると、著しく旨味、風味共に劣化していると認識した。これから、すだち果汁の量は重要であることが分かった。
Claims (1)
- すだち果汁:13〜16%と、りんご酢:18〜22%と、果糖ぶどう糖:50〜53%とを主体とし、これに紅麹成分を添加すると共に、繊維成分については、その繊維成分が10μm以下90%以上に超微粉砕されていることを特徴とする果実酢であって、希釈することによって、調理用果実酢又は果実酢飲料として利用することができる高濃縮果実酢。
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