JP3684879B2 - 食肉加工用水中油滴型乳化液、該乳化液を注入した食肉加工製品及びその製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は加工後の食感および加熱調理歩留に優れた食肉加工製品を製造する食肉加工用水中油滴型乳化液に関するものである。また、当該食肉加工用水中油滴型乳化液を使用したピックル液を用いて製造した食肉加工製品およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
適度な水分と適度な油脂分を保持した、牛や豚等の畜肉、鶏や鴨などの鳥肉などはその後の適当な流通形態、調理方法によりジューシーな食感を楽しむことができる。しかし、同じ肉でも、生育環境、部位、精肉後の流通状態により、肉の状態は変化する。特に、もともと硬く筋っぽい部位や、冷凍などの過酷な流通形態およびその後の加熱調理時に生じるドリップなどにより肉本来のジューシーさが損なわれ商品価値が落ちてしまうものもある。
従って、肉の部位、流通形態、生育環境などによらず、肉のおいしさを十分堪能できるような改良が望まれる。
【0003】
従来、このような食肉加工品の改良、加工方法には各種のものがあった。たとえば、ブロック肉に、蛋白質、多糖類、澱粉、プロテアーゼなどの酵素類、界面活性剤等のうち1種類もしくは2種類以上を組み合わせて添加した、いわゆるピックル液と呼ばれるものを用いたり、脂肪分の少ない食肉に対しては粉末油脂や液状油、固形脂等を直接添加したり、水中油型、油中水型、さらには水中油中水型エマルションを注入することにより風味、食感、加熱ドリップなどが改善されてきた。
【0004】
例えば、特開昭59−162853号公報では熱凝固性蛋白溶液を注入する方法、特開平1−144961号公報では加熱した蛋白質に蛋白凝固剤を添加する方法、特開平8−107760号公報では大豆蛋白と油脂の乳化物に親油性澱粉もしくはワキシーコーンスターチを添加したものが記載されている。
しかし、肉以外の異種蛋白を注入する方法は良好な加熱歩留が得られるが、ピックル液調整時にダマになって液に分散しにくく、さらにピックル液の粘度が高くなり気泡を抱いてしまう。よって均一なピックル液を得るために消泡工程をとらねばならず、生産効率が落ちる一因となる。また、蛋白素材は硬いゲルを形成するが、肉とは異なったジューシー感のないぱさついた食感になってしまう。更に蛋白素材は食肉加工品とは異なる風味をもつため食味を低下させるという欠点があった。
【0005】
また特開平5−260927号公報ではカードランと糊料の併用、特開平8−128404号公報ではゲル形成性澱粉分解物とゲル非形成糖質を併用した加工生肉、特開平10−99051号公報では澱粉とデキストリンを併用した加工生肉に関して記載されている。
しかし、カードランなどの多糖類を添加した場合、蛋白のような異味はないが、ゲル強度を高めるような濃度ではピックルの粘性が極めて高くなるためインジェクターに負担がかかり、かつ高い粘性のために生じるピックル液中の泡が肉中に残存し、最終製品に空洞が生ずる等の操作性に問題があった。また、食感は硬くなるがジューシーさを出すことはできない。
また、澱粉や澱粉分解物のみを添加したピックル液を使用すると、良好な加熱歩留が得られ、それ自体風味を持たないため、食肉加工品の風味を損なうことはないが、これもジューシーさを出すには及ばない。
【0006】
そのため粉末油脂や液状油、固形脂等を直接ピックル液に添加して、食肉にある程度のジューシー感を与えることが知られている。例えば油脂を加熱溶解してピックル液として直接注入する方法(特開昭60−41467号公報)、油中水滴型乳化液をピックル液として注入する方法(特開昭59−162853号公報)、HLB3以下のショ糖不飽和脂肪酸エステルを含む油中水型乳化物に関するもの(特開平6−253782号公報)が知られている。
しかし、油中水滴型乳化液をピックル液として注入する方法によれば、ある程度のジューシー感は得られるが注入した油脂が加熱調理後にほとんど溶出するため食感改良効果としては不十分である。また、融点の高い油脂を用いる場合、油脂の融点以上の温度で加熱して用いなければならないため、衛生上の問題があった。
【0007】
また、水中油滴型乳化液をピックル液として注入する方法(特開昭58−89161号)や、水中油滴型乳化液を熱凝固性蛋白質とともに食肉へ打ち込み、加熱調理によって固定化し、霜降り状組織をもつハム製品を製造する方法に関するもの(特開平4−341159号)、大豆蛋白などの熱凝固性蛋白を含むエマルジョンを食肉中に含ませた後、低温保持により解乳化させて得られる食肉加工品の製造方法(特開平9−266769号公報)についても提案されている。
しかし、水中油滴型乳化液をそのままピックル液として注入する方法は、ジューシー感はある程度改善されるが、加熱調理時の歩留がよくない等の問題点があった。更に、水中油滴型乳化液を熱凝固性蛋白質とともにピックル液として注入する方法によると、油滴が熱凝固性蛋白質とともに肉中で固定化されて、油脂の添加濃度にしてはジューシー感を付与するには不十分であった。また、蛋白の異味が肉の風味を損なう等の問題点があった。
【0008】
本発明者は先に食肉の食感改良を目的として加工澱粉と糊料の併用(特開平7−271721号公報)および限定分解された冷水可溶性澱粉とβ澱粉を併用したピックル(特開平9−308462号公報)の食肉加工品への利用について提案している。これらの発明は、作業性に優れ、経済的に柔らかい肉質を得られる効果があったが、肉本来のジューシーさを補うには改良すべき点もあった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、繊維分が多く脂肪分が少ないため硬くてジューシーさに欠ける食肉を柔らかくジューシーに改良するために鋭意研究を重ねた結果、油相部とα化澱粉を含む澱粉混合物を懸濁させた水相部を乳化剤によって乳化させた水中油型乳化液をピックル液として注入することにより、加熱調理時に食肉本来のジューシーさをもつ食肉加工製品を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は食肉中に食用油脂とある一定の膨潤度をもったα化澱粉およびβ澱粉を分散安定化させた水懸濁液を親油性澱粉のような乳化剤で乳化した食肉加工用水中油滴型乳化液に関するものであり、また、当該食肉加工用水中油滴型乳化液を使用したピックル液および当該水中油滴型ピックル液を用いて製造した食肉加工品およびその製造方法に関するものである。
【0011】
本発明による水中油滴型乳化液が、食肉にジューシー感を与える作用機構は定かではないが、以下のごとく推測される。肉を食したときにジューシーと感じるのは、肉の油分もしくは油溶性の香味、うまみ物質を感じていると思われる。その場合、乳化している油滴の大きさがジューシーであるか否かに大きく影響している。一般的に乳化が安定なときは油滴の大きさは小さく、経時的な変化が少ない。このような安定な乳化液は作業性に優れているが、添加した油の量にしてはジューシーな食感を得ることができなかった。通常肉中の油脂はこのような乳化液の状態では存在していない。
そこで、肉本来のジューシーな食感を得るためには、喫食するときに乳化状態が壊れて油脂が非乳化状態で存在することが重要である。具体的には油径が100μ以上で存在することがジューシーな食肉には求められる。
【0012】
一方乳化液の中にある程度の分子量を持った冷水可溶性澱粉分子(ヨウ素で染色される程度の大きさ)を添加すると、保水能力に優れた冷水可溶性澱粉分子は水分子を分子内に保持する。ここでいったん乳化が安定すると考えられるが、いったん可溶化した冷水可溶性澱粉分子はその後の冷凍もしくは冷蔵により老化が始まり、保持していた水を放出する。これにより乳化液中の水と油のバランスが崩れ、また、老化澱粉分子の集合に伴い油滴の集合も加速されるのである。更に加熱によって油と澱粉懸濁液の分離は促進されるため、本発明の乳化液で処理した食肉を喫食するときは乳化が不安定な状態になりそのために食肉にジューシー感が得られると考えられる。
【0013】
本発明において使用可能な食肉の種類は牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉などの畜肉、鶏肉、アヒル肉、七面鳥肉、ガチョウ肉等の家禽肉などである。使用可能な部位は特に問わないが、牛肉、豚肉ではそとももや肩など、家禽肉では胸肉など繊維質で脂肪分が少なく、加熱調理により縮んだりぱさついたりしがちな部位に適用すると、よりジューシー感を付与することができる。
【0014】
本発明における食肉加工用の意味するところは、加工時の食肉の形態によらず、食肉の食感もしくは歩留まり向上の目的で食肉と共に用いられる副原料すべての形態を含む。例えば、大きな肉塊に対しては本乳化液をピックル液としてインジェクターなどを使用して強制的に打ち込むインジェクション法や本乳化液を肉塊を浸すカバー法(湿塩浸法)を用いることができるし、これらの肉塊をチョッパーやグラインダーなどでミンチ状にし、通常のミキサー、バキュームミキサーもしくは、サイレントカッターなどで本乳化液と混合、整形して使用することもできる。
【0015】
本乳化液を用いて製造した食肉加工製品とは、ピックル液として用いた場合は比較的大きな肉塊をそのまま用いた製品、例えば、ハム、焼豚、ローストビーフなど、もしくはこれらの肉塊をスライス、ミンチなどにして加工、調理したもの、例えば、焼き肉、焼き鳥、ステーキ、トンカツ、ビーフカツ、カレー、シチュー、唐揚げ、酢豚、八宝菜、肉野菜炒めなどを指す。
また本乳化液をミンチ状にした肉と混合整形した食肉加工製品としては、ハンバーグ、ソーセージ、餃子、焼売、ミートボール、メンチカツ、コロッケなどの挽き肉製品が挙げられる。この場合、ミンチ肉の原料は先に挙げた食肉をそのまま用いても良いが、当乳化液をピックルとして打ち込んだ加工肉を原料にすると一層ジューシーさが付与される。
【0016】
また、本発明において水相に分散または溶解させる澱粉の添加割合は5〜20重量%が好ましい。更に添加する澱粉は、α化澱粉とβ澱粉を組み合わせることが必須であり、その配合比は1:9〜5:5の範囲、望ましくは3:7〜4:6の範囲がよい。α化澱粉の比率が多いとピックル液が増粘し、肉中への分散性が悪くなったり、加熱調理時のドリップが多く、ともすれば油っぽい食感になってしまう。β澱粉の比率が多いと冷蔵もしくは冷凍保存時に老化による積極的な乳化の破壊が起こらず加熱調理時に乳化状態のまま肉中に固定化してしまうので、ジューシーな食感が得られない。
【0017】
また、本発明に用いられるα化澱粉の製造には従来から知られているようなジェットクッカー処理、ドラムドライヤー処理、エクストルーダー処理などが用いられる。また、原料となる澱粉種、加工法は特に問わないが望ましくは絶乾物10%水溶液または水分散液のB型粘度が200cps以下のα化澱粉がよい。このようなα化澱粉はピックル液への添加により増粘せず都合がよい。また、低温保存により老化しやすいため、油脂と共に乳化液として食肉に注入した場合、老化による乳化の不安定化が進みやすいと考えられる。B型粘度が200cpsより大きいとピックル粘度が上昇し、作業性に問題を生じる可能性がある。
【0018】
本発明においてβ澱粉はアミロースもしくはアミロペクチンの結晶構造を有する澱粉粒と定義され、加熱調理時に膨潤、ゲル化し、加熱時のドリップを抑える目的で添加されるため通常の食肉製品の加熱条件(達温75℃以上)で糊化を開始する澱粉であれば特に澱粉種、加工法を問わず使用できる。例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコンスターチ、米澱粉等である。この様なβ澱粉をさらにエステル化、エーテル化、架橋化、またはこれらの方法を組み合わせて得られる加工澱粉を用いることができる。
【0019】
本発明において使用する油脂も食用として用いられているものならば特に限定されないが融点が40℃以下であることが望ましい。例えば、菜種油、大豆油、ひまわり油、綿実油、落花生油、とうもろこし油、サフラワー油、オリーブ油、胡麻油、ぶどう種子油、やし油、パームなどの食用に供される植物性油脂もしくはこれらを分別し、または水素添加したもの、およびそれらの混合物を用いることも可能である。そのなかでもパーム油を多段分画したパームスーパーオレインやパームダブルオレインが望ましい。
必要に応じて油溶性着色料、油溶性香料、油溶性ビタミン、シーズニングオイルを油脂に混ぜたものも使用することができる。融点が40℃を超える油脂、例えば牛脂(融点45℃)などは、α澱粉の老化に抗して、乳化状態が安定なため加熱調理後の食感がジューシーになりにくい。このような融点の高い油脂は融点の低い他種の油脂と混合することにより使用できる。
【0020】
油脂の割合は水中油脂乳化が安定に行われるように本発明の水中油滴型乳化液に対し10〜50重量%が好ましい。10重量%より少ないと油脂の添加効果が乏しく、50重量%を越えると乳化安定性が悪くなるからである。
水中油滴型乳化液は水溶性成分を水に溶解した水層部を攪拌しながら油溶性成分を食用油脂に溶解した油相部を徐々に添加して乳化することより製造される。乳化液の製造方法は特に限定されず、ホモミキサー、ホモジェナイザー、コロイドミル等の公知の水中油滴型乳化物製造器を用いて製造できる。
【0021】
乳化剤および乳化安定剤としては、例えばカゼインナトリウム、大豆蛋白質、卵黄、卵白、乳蛋白質などの蛋白類、キサンタンガム、アラビアガム、結晶セルロース、親油性澱粉等の多糖類、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の界面活性剤を用いることができるが、望ましくは本発明におけるピックルの特性に合うような親油性澱粉、更に望ましくはこれらの親油性澱粉を乳化性を失わない程度に加水分解したものや糊化したものが適している。
ここに挙げる親油性澱粉とは、乳化能をもつように加工された澱粉で、具体的にはオクテニルコハク酸エステル化澱粉が知られている。親油性澱粉の乳化液中の割合は通常0.5%〜10%望ましくは1%〜5%程がよい。0.5%以下だとピックル液調整時の乳化安定性に乏しく、10%より多く添加すると、ピックル粘度が上昇し、作業性に問題を生じる可能性がある。
【0022】
【実施例】
以下に本発明の実施例、比較例をあげ本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。尚、例中の「%」は特記しない限り重量基準である。
【0023】
【実施例1】
表1の組成配合で以下の方法により水中油滴型乳化液を調製した。20℃の水にβ澱粉としてアクトボディTP−2、35g、α化澱粉としてジェルコールAH−F(いずれもホーネンコーポレーション製)15g、乳化剤として親油性澱粉(オクテニルコハク酸エステル化澱粉)0.5gを順次加え、よく分散させた。
その後30℃に保った油脂HOP100SO(パームスーパーオレイン、ホーネンコーポレーション製)100gを徐々に加え、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を用いて5000rpmで攪拌させた。最後に、食塩および砂糖をそれぞれ10g加え、全体を500gに調製し、水中油滴型乳化液を得た。
【0024】
【比較例1】
乳化剤を使用せずに実施例1の条件と同様にピックル液の調製を試みた。しかし、調整後まもなく油相と水層が分離し、安定な水中油滴型乳化液を作成することができなかった。そのため以下の実施例、比較例ではいずれも親油性澱粉を乳化剤として使用することとする。
【0025】
【比較例2】
比較例2としてHOP100SOの配合量をすべて水に置き換えてピックル液を調製した。
【0026】
【比較例3】
比較例3としてジェルコールAH−Fの全量を水に置き換え、ピックル液を作成した。
【0027】
【比較例4】
比較例4としてアクトボディTP−2の全量を水に置き換え、水中油滴型乳化液を作成した。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1及び比較例2〜4で調製した水中油滴型乳化液およびピックル液500gを、皮を除去し、50〜60gに切断した鶏胸肉1kgとともにロータリータンブラー(大道産業製)にいれ、600mmHgまで吸気した後、12rpm、10℃で1時間タンブリングを行った。つぎに、タンブリングを行った鶏胸肉は一晩5℃の冷蔵庫で保存した後、小麦粉にまぶし、170−180℃に熱した植物油で5分加熱し唐揚げを作成した。
これらの唐揚げは、−18℃の冷凍庫で一晩保存した後、電子レンジで再加熱し、10名のパネラーで風味試験評価した。官能試験評価はジューシー感と風味を7段階評価(−1〜5)し、その平均値を表1に示した。その結果、ピックル液中にα化澱粉とβ澱粉を加え、油と共に乳化させたピックル液はそのいずれかを欠いた比較例に比べてジューシーであることがわかる。
【0030】
【実施例2】
表2の組成配合で実施例1の方法にならい水中油滴型乳化液を調製した。β澱粉としてジェルコールW−7、α化澱粉としてジェルコールW−α(いずれもホーネンコーポレーション製)、油脂としてエクストラバージンオリーブオイル(融点3℃、ホーネンコーポレーション製)を使用したものを本発明品とした。ホワイトペッパー、グルタミン酸Na、ポリリジン系制菌剤は食塩と共に、乳化液調整後最後に添加溶解させた。
【0031】
【実施例3】
実施例2においてエクストラバージンオリーブオイルを使う代わりにコーン油(融点―10℃、)を使用して同様に水中油滴型乳化液を調製した。
【0032】
【実施例4】
実施例2においてエクストラバージンオリーブオイルを使う代わりに牛脂(融点45℃)を使用して同様に水中油滴型乳化液を調製した。
【0033】
【実施例5】
実施例2において親油性澱粉を使う代わりにカゼインNaを使用して同様に水中油滴型乳化液を調製した。
【0034】
【実施例6】
実施例1においてジェルコールW−α(α化澱粉)とジェルコールW−7(β澱粉)の配合比を変更し、同様に水中油滴型乳化液を調製した。
【0035】
【比較例5】
比較例としてエクストラバージンオリーブオイルの配合量をすべて水に置き換えてピックル液を調製した。
【0036】
【表2】
【0037】
【実施例6】
実施例2〜6で調製した水中油滴型乳化液を使用して一晩流水解凍した冷凍豚ロース肉(食肉加工業者より入手)2kgにインジェクター(トーニチ製スーパーインジェクターTN−SP18)を用いて130%(肉重量の30%のピックル液を加える)インジェクションした。その後ロータリータンブラー(大道産業製)にいれ、600mmHgまで吸気した後、12rpm、10℃で90分タンブリングを行った。タンブリングが終わったロース肉は、ケースに入れ−18℃で一晩冷凍し、再び0℃まで解凍した後、ハムスライサー(花木製作所製)で厚さ1cm、重量80gに整形した。
このように整形されたポーション肉は−18℃の冷凍庫で一晩保存した後、小麦粉、液卵、パン粉をつけ170℃の大豆油で6分フライし、トンカツを作成した。これらのトンカツは、10名のパネラーでジューシー感と風味を7段階評価(−1〜5)し、その平均値を表2に示した。また、フライ前後の重量変化を測定し、加熱歩留とした。
さらに加熱したトンカツを十分さまし、衣を剥がして肉の硬さをテクスチュロメーター(General Electric社製)で測定した。測定条件は、肉の中心部を2cm四方に切り取り円形アルミ製のプランジャーで2回咀嚼試験を行い、硬さを求め、それぞれの値を表2に示した。
その結果、実施例2〜6のピックル液で調製したトンカツはいずれも、比較例5のピックル液で調製したトンカツより歩留、食感のジューシーさとも優れていた。特に実施例2のピックル液で作成したトンカツは、歩留、食感および風味に優れていることが分かる。
【0038】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように、本発明の水中油滴型乳化液は食肉製品にピックル液として用いた場合、α化澱粉が乳化状態の油脂に作用し、且つ加熱による油脂のドリップをβ澱粉が抑えるため、よりジューシーな食感を付与することができる。
Claims (7)
- 油脂分10〜50重量%およびα化澱粉とβ澱粉の混合物を5〜20重量%および乳化剤を含むことを特徴とする食肉加工用水中油滴型乳化液。
- α化澱粉が絶乾物10%水溶液または水分散液のB型粘度が200cps以下のα化澱粉であることを特徴とする請求項1記載の食肉加工用水中油滴型乳化液。
- 乳化剤が親油性澱粉であることを特徴とする請求項1または2記載の食肉加工用水中油滴型乳化液。
- α化澱粉とβ澱粉の配合比が1:9〜5:5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の食肉加工用水中油滴型乳化液。
- 油脂として融点が−20℃〜40℃の食用油脂を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の食肉加工用水中油滴型乳化液。
- 請求項1〜5記載の水中油滴型乳化液を注入して得られる食肉加工製品。
- 請求項1〜5記載の水中油滴型乳化液を注入することを特徴とする食肉加工製品の製造方法。
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