JP6487637B2 - 食肉改質用処理液、及び該食肉改質用処理液を用いた加工肉又は食肉加工品の製造方法、並びに加工肉又は食肉加工品 - Google Patents

食肉改質用処理液、及び該食肉改質用処理液を用いた加工肉又は食肉加工品の製造方法、並びに加工肉又は食肉加工品 Download PDF

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本技術は、食肉の品質を改良するための改質用処理液に関する。より詳しくは、食肉本来の外観を保ったまま、食肉の軟質化が可能な食肉改質用処理液、及び該食肉改質用処理液を用いた加工肉又は食肉加工品の製造方法、並びに加工肉又は食肉加工品に関する。
従来、咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者、要介護者に対して、咀嚼や嚥下が容易な食品が各種知られており、例えば、流動食、刻み食、ゼリー食又は柔らかく加工された食品が挙げられる。これらの食品は、歯茎でつぶせる、舌でつぶせる、噛まなくても良いなどの状態にまで加工されている。加工の状態は、摂食者への配慮から、食事の区分提案として実施され、定着している(非特許文献1)。更に、近年では安全上の配慮等から、より厳格な運用がなされている(非特許文献2)。
しがしながら、上記のように柔らかく加工された食品は、咀嚼・嚥下困難者向けの食品として優れているが、食品(食材)本来の形状でないため、咀嚼・嚥下困難者にとって、味わいながらの食事とは言い難く、食事に対する楽しみが薄れ、食欲が低下してしまう等の弊害が挙げられる。従って、食事の美味しさと楽しみによる食欲を増大させる上で、食品(食材)の柔らかさのみを追求するのではなく、その食品(食材)が本来有する食品(食材)の形状を維持したまま、咀嚼・嚥下可能な柔らかい食品(食材)を提供することは重要である。
食肉の軟質化方法としての技術としては、例えば次のものが挙げられる。
食肉素材を酵素液に浸漬する方法(特許文献1)や食肉素材に酵素含有液を注入・分散させ、軟質化処理する方法(特許文献2)、テンダライズ処理した食品原料に、弱アルカリ性溶液を浸透される方法(特許文献3)、食肉素材を酵素含有液で処理した食肉の懸濁分散液をゲル状にする方法(特許文献4)、食品素材を酵素含有液に浸漬し、加圧処理によって食品素材内部に酵素を浸透させる方法(特許文献5)、食肉を酵素処理し、食肉の破砕、ミンチ、裏ごしなどの処理方法を組み合わせて成形した食肉加工品(特許文献6)、タンパク質分解酵素と澱粉及びカードランを含有する増粘剤とを用いて、動物性素材の形状を保持した状態で、動物性素材を軟らかくする軟質化方法(特許文献7)、食肉又は魚介類からなる動物性素材を酵素処理することにより軟質化する軟質化方法(特許文献8)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、タンパク質分解酵素液への浸漬によって肉を軟らかい食感にすることは可能であるが、ジューシー感等に問題があった。
特許文献4の技術では、酵素で処理したゲル状の食肉を溶液に分散させてクリーム状の食品やペースト状の食品を得るためのものであり、食材本来の形状の維持の点で問題であった。
特許文献5の技術では、高圧下で行う必要性があり、装置や操作性が複雑である問題があった。
特許文献6の技術では、高齢者及び咀嚼・嚥下困難者が咀嚼・嚥下可能な柔らかい食材を提供することは可能であるが、食肉素材が元来有する食材自体の形状ではなく、刻み食やペースト食、ムース食の分類に該当し、食肉本来の味や食感を味わうことができなかった。
特許文献7及び8の技術では、高齢者及び咀嚼・嚥下困難者が咀嚼・嚥下可能な柔らかい食材を提供することは可能であるが、当該技術は、冷凍製品を対象とするものであり、常温流通での製品設計には十分ではなかった。
特開平07−031421号公報 特開2008−125437号公報 特開2013−247928号公報 特開2001−327266号公報 特開2004−089181号公報 特開2005−151986号公報 特開2010−166904号公報 国際公開第2011/099354号パンフレット
日本介護食品協議会発行,「ユニバーサルデザインフード自主規格」,2003年 厚生省生活衛生局食品保険課新開発食品保険対策室室長通知「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて」の「高齢者用食品の試験方法」,衛新第15号,平成6年2月3日
食肉の軟質化方法は様々な開発が進んでおり、軟質化した食肉を用いた食品としても多数の食品が市販されている。しかしながら、前述の通り、見た目も美味しく味わいながらの食事を楽しめることと、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となる柔らかさとを、兼ね備えた食品を提供可能な技術は存在しなかった。
そこで、本技術では、食肉を、本来の形状を保持し、本来の外観を保ったまま、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化が可能な食肉加工技術を提供することを主目的とする。
本発明者らは、食肉の軟質化と形状維持という相反する目的を同時に達成するために、鋭意研究を行った結果、特定種のプロテアーゼを組み合わせ、かつ、食用油脂の乳化物又は分散物と組み合わせることにより、食肉本来の形状を維持しつつ、軟質化することに成功し、本技術を完成させるに至った。
すなわち、本技術は、まず、下記の成分;
A1成分:アルカリ性プロテアーゼ0.002〜0.2質量%、
A2成分:中性プロテアーゼ0.001〜0.1質量%、
B成分:食用油脂3〜30質量%、及び
水30〜97質量%、
を含有する食肉改質用処理液を提供する。
本技術に係る食肉改質用処理液は、食肉の品質の改良に用いられるが、具体的には、食肉の軟質化処理に用いることができる。
本技術に係る食肉改質用処理液には、更に、C成分:増粘剤0.5〜5.0質量%を含有させることができる。
本技術に係る食肉改質用処理液に用いる前記B成分としては、食用油脂10〜70質量%を含有する乳化油脂(B1成分)に由来する食用油脂、又は、食用油脂40〜80質量%を含有する粉末油脂(B2成分)に由来する食用油脂を用いることができる。
本技術では、次に、前記食肉改質用処理液を、0〜20℃の浸透温度で食肉に浸透させて加工肉を調製する工程を含む、加工肉の製造方法を提供する。
また、前記食肉改質用処理液を、0〜20℃の浸透温度で食肉に浸透させて加工肉を調製する工程、及び、
調製した加工肉を浸透温度より高い温度で加熱して食肉加工品を製造する工程、を含む、食肉加工品の製造方法を提供する。
この際、前記食肉加工品に含まれる加熱後の加工肉のかたさは、日本介護食品協議会によるユニバーサルデザインフード規格に基づいて測定されるかたさの値で5×10N/m以下とすることが出来る。
本技術では、更に、前記製造方法を用いて製造される加工肉、及び食肉加工品を提供する。
ここで、本技術に関わる技術用語を説明する。
本技術において「加工肉」とは、本技術に係る食肉改質用処理液を浸透させた食肉のことを意味する。即ち、本技術に係る食肉改質用処理液が少なくとも浸透・浸潤してさえいれば、改質前の食肉であっても、既に改質が進んでいる食肉であっても、いずれも含まれる概念である。
本技術において「食肉加工品」とは、前記加工肉を単独、若しくは、他の食品と共に加熱したものを意味する。
本技術において「形状保持性」とは、食肉本来の形状を維持する性質を意味する。即ち、別々のものを結合等させて成形体を作成する際の保型性とは異なる概念である。
本技術によれば、食肉本来の形状を保持し、食肉本来の外観及び風味を維持した状態で、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化が可能である。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
以下、本技術を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術が、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
<1.食肉改質用処理液>
本技術に係る食肉改質用処理液は、(1)A成分:プロテアーゼ、(2)B成分:食用油脂、(3)水、を少なくとも含有する。また、必要に応じて、(4)C成分:増粘剤、(5)その他成分を更に含有させることもできる。以下、各成分、食肉改質用処理液の調製方法、適用可能な食肉、及び改質処理方法について、詳細に説明する。
(1)A成分:プロテアーゼ
本技術に係る食肉改質用処理液には、アルカリ性プロテアーゼ(以下「A1成分」ともいう。)及び中性プロテアーゼ(以下「A2成分」ともいう。)を用いることを特徴とする。A1成分及びA2成分として用いるプロテアーゼは、いずれも、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどタンパク質をアミノ酸及びペプタイドに分解するプロテアーゼである。
[A1成分:アルカリ性プロテアーゼ]
本技術において、アルカリ性プロテアーゼとは、プロテアーゼ活性の最適pH値がアルカリ性領域(例えば、pH10.0〜11.0)にあるプロテアーゼを意味する。本技術において用いることができるアルカリ性プロテアーゼの種類は特に限定されず、公知のアルカリ性プロテアーゼを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、Bacillus licheniformisやBacillus subtilisなどのBacillus属生物などが産生するタンパク分解酵素が挙げられる。本技術では特に、苦み成分の増加を抑える観点から、アルカリ性プロテアーゼとしてエンド型プロテアーゼを選択することが好ましい。
本技術では、アルカリ性プロテアーゼを、食肉改質用処理液中に0.002〜0.2質量%含むことを特徴とする。本技術において、食肉改質用処理液中に含まれるアルカリ性プロテアーゼの含有量は、前記範囲であれば自由に設定することができるが、0.01〜0.1質量%に設定することが好ましい。食肉改質用処理液中のアルカリ性プロテアーゼの含有量を0.002質量%以上とすることで、軟質化効果を確実に得ることができる。また、食肉改質用処理液中のアルカリ性プロテアーゼの含有量を0.2質量%以下とすることで、過剰な軟質化を防ぎ、改質後の食肉の形状保持性を向上させることができる。
[A2成分:中性プロテアーゼ]
本技術において、中性プロテアーゼとは、プロテアーゼ活性の最適pH値が中性領域(例えば、pH5.0〜8.0)にあるプロテアーゼを意味する。本技術において用いることができる中性プロテアーゼの種類は特に限定されず、公知の中性プロテアーゼを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、パパイン等の植物由来のタンパク分解酵素、Aspergillus属生物やBacillus属生物などが産生する生物由来のタンパク分解酵素が挙げられる。本技術では特に、苦み成分の増加を抑える観点から、中性プロテアーゼとしてエンド型プロテアーゼを選択することが好ましい。
本技術では、中性プロテアーゼを、食肉改質用処理液中に0.001〜0.1質量%含むことを特徴とする。本技術において、食肉改質用処理液中に含まれる中性プロテアーゼの含有量は、前記範囲であれば自由に設定することができるが、0.005〜0.05質量%に設定することが好ましい。食肉改質用処理液中の中性プロテアーゼの含有量を0.001質量%以上とすることで、軟質化効果を確実に得ることができる。また、食肉改質用処理液中の中性プロテアーゼの含有量を0.1質量%以下とすることで、過剰な軟質化を防ぎ、改質後の食肉の形状保持性を向上させることができる。
本技術において、食肉改質用処理液中のアルカリ性プロテアーゼ(A1)/中性プロテアーゼ(A2)の比率は、それぞれの含有量が前記の範囲であれば特に限定されず、自由に設定することができる。本技術においては特に、食肉改質用処理液中のアルカリ性プロテアーゼ(A1)/中性プロテアーゼ(A2)の比率を0.02〜200に設定することが好ましく、0.2〜20に設定することがより好ましい。A1成分/A2成分の比率を0.02以上とすることで、軟質化効果をより向上させることができる。また、A1成分/A2成分の比率を200以下とすることで、過剰な軟質化を防ぎ、改質後の食肉の形状保持性を向上させることができる。
(2)B成分:食用油脂
本技術に係る食肉改質用処理液には、前記A1成分及び前記A2成分に加え、食用油脂(以下「B成分」ともいう。)を用いることを特徴とする。本技術に係る食肉改質用処理液には、前記A1成分、前記A2成分及びB成分である食用油脂を全て含むことにより、食肉本来の形状を保持し、食肉本来の外観及び風味を維持した状態のままで、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化させることに成功した。
本技術に用いることができる食用油脂としては、食品分野において用いることが可能な油脂であれば、特に限定されず、公知の食用油脂を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、牛脂、豚脂、馬脂、魚油等の動物性油脂;ナタネ油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、パーム油、パーム核油等の植物性油脂;などが挙げられる。また、これらの油脂を分別処理したもの、水素添加処理したもの、更にこれら動植物性油脂単独又は2種類以上を任意に組み合わせてエステル交換処理したものなどを用いることも可能である。なお、本技術において油脂組成物を用いる場合、その融点は、特に制限されない。
本技術では、食用油脂を、食肉改質用処理液中に3〜30質量%含むことを特徴とする。本技術において、食肉改質用処理液中に含まれる食用油脂の含有量は、前記範囲であれば自由に設定することができるが、10〜20質量%に設定することが好ましい。食肉改質用処理液中の食用油脂の含有量を3質量%以上とすることで、改質後の食肉の食感及び風味を食肉本来の状態で維持することができる。また、食肉改質用処理液中の食用油脂の含有量を30質量%以下とすることで、食肉改質用処理液そのものの安定性を高め、改質後の加工肉を加熱調理する際の肉汁(ドリップ)の流出を防止することができる。
本技術に用いる食用油脂は、食肉改質用処理液中に、乳化油脂又は水中粒子分散物の形態で配合することができる。食肉改質用処理液中に、乳化油脂又は水中粒子分散物の形態で食用油脂を配合することにより、食肉タンパク質の低分子化にプロテアーゼが作用するため、肉質がレバー状となったり、形状保持性や保水性が無くなったり、ジューシー感や風味が無くなったり、パサツキ感が残ったりするという問題を防止し、高齢者や嚥下・咀嚼困難者に対する良好な喫食性を向上させることができる。
[B1成分:乳化油脂]
本技術に用いる食用油脂は、食肉改質用処理液中に、乳化油脂の形態で配合することができる。乳化油脂の形態で配合することにより、食肉への浸透性を向上させることができ、例えば、比較的融点の高い牛脂、豚脂などを用いても、冷蔵下でも高い流動性を維持することができる。
本技術に係る食肉改質用処理液に乳化油脂を用いる場合、その状態は特に限定されないが、食用油脂10〜70質量%を含有する乳化油脂(水中油型乳化物)が好ましい。油相部と水相部の割合がこの範囲にあるものは、乳化状態が安定しており、しかも、食肉改質用処理液に配合した際に、食感改質効果において十分な油脂分を含有させることができ、ジューシーな食肉に改質することができる。
本技術に係る食肉改質用処理液に乳化油脂を用いる場合、食用油脂の含有量が前記範囲内であれば、その量は特に限定されないが、含有量として食肉改質用処理液中に6.7〜66.6質量%含有させることが好ましく、20〜40%含有させることがより好ましい。
[B2成分:粉末油脂]
本技術に用いる食用油脂は、食肉改質用処理液中に、粉末油脂を用いて水中粒子分散物の形態で配合することができる。粉末油脂は、保管や計量時の操作性が優れており、水に加え、攪拌するだけで、水に再分散し水中油型分散物を容易に調製することができる。また、食肉改質用処理液に配合した際に、食感改質効果において十分な油脂分を含有させることができ、ジューシーな食肉に改質することができる。
本技術に係る食肉改質用処理液に粉末油脂を用いる場合、その状態は特に限定されないが、食用油脂40〜80質量%、デキストリン、コーンシロップなどの糖類や乳タンパク等の粉末化基材(賦形剤)を20〜60質量%からなる粉末油脂を用いることが好ましい。
本技術に係る食肉改質用処理液に乳化油脂を用いる場合、食用油脂の含有量が前記範囲内であれば、その量は特に限定されないが、粉末油脂として、4.0〜40.0質量%含有させることが好ましく、10.0〜30.0質量%含有させることがより好ましい。
(3)水
本技術に係る食肉改質用処理液には、水を30〜97質量%含有させる。食肉改質用処理液中の水の含有量を30質量%以上とすることで、食肉への浸透性を向上させることができる。また、食肉改質用処理液中の水の含有量を97質量%以下とすることで、改質後の加工肉を加熱調理する際の肉汁(ドリップ)の流出を防止することができる。
(4)C成分:増粘剤
本技術に係る食肉改質用処理液には、増粘剤(以下「C成分」ともいう。)を用いることができる。本技術において、増粘剤は必須の成分ではないが、用いることで改質後の食肉の形状保持性、食感、風味をより向上させ、改質後の加工肉を加熱調理する際の肉汁(ドリップ)の流出をより確実に防止することができる。
本技術に係る食肉改質用処理液に増粘剤を用いる場合、その種類は特に限定されず、食品分野において用いることが可能な増粘剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、デンプンや水溶性多糖類を挙げることができる。
デンプンとしては、天然デンプンの他、エーテル化(例えば、ヒドロキシプロピル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシメチル化、ヒドロキシプロピルメチル化等のヒドロキシアルキル化など)、エステル化(例えば、アセチル化など)、有機エステル化を施したもの、また、これらを架橋、酸化、酵素転換、酸加水分解等を施した加工デンプンなどが挙げられる。
水溶性多糖類としては、寒天やカラギーナン等の海藻類由来の多糖類;ジェランガム、キサンタンガム、カードラン等の微生物由来の多糖類;ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ペクチン、グルコマンナン等の植物由来の多糖類などが挙げられる。
本技術においては特に、改質後の加工肉における保水性の観点からは加工デンプンが、加工肉中における離水の抑制や防止の観点からはカードラン及びキサンタンガムが好ましく挙げられ、併用することによって相乗的な効果が得られる。
本技術に係る食肉改質用処理液に増粘剤を用いる場合、その含有量は特に限定されず、本技術の効果を損なわない範囲において自由に設定することができる。本技術では特に、食肉改質用処理液中の増粘剤の含有量は、0.5〜5.0質量%に設定することが好ましく、1.0〜3.0質量%に設定することがより好ましい。食肉改質用処理液中の増粘剤の含有量を0.5質量%以上とすることで、改質後の食肉に、喫食に適した十分な食感を付与することができる。また、食肉改質用処理液中の増粘剤の含有量を5.0質量%以下とすることで、調合時の過度な粘度上昇を防止し、気泡の抜けを向上させて、品質の安定性を向上させることができる。
(5)その他成分
本技術に係る食肉改質用処理液には、本技術の効果を損なわない範囲において、食品分野で用いられる成分を適宜、配合することができる。例えば、食塩、アミノ酸などの各種調味料;クエン酸、炭酸ナトリウム、リン酸などのpH調整剤;安定剤;抗酸化剤など、食品分野で用いられる公知の成分を、自由に選択して用いることができる。
(6)食肉改質用処理液の調製
本技術に係る食肉改質用処理液は、前述した成分を配合することに特徴があって、その調製方法は特に限定されず、公知の食肉改質用処理液の調製方法を自由に選択して用いることができる。例えば、冷水(0〜20℃)に各プロテアーゼ、食用油脂の水中油型乳化物もしくは粉末油脂を、加えて攪拌することにより調製する方法が挙げられる。この際、攪拌方法も特に限定されず、公知の方法を自由に採用することができるが、例えば、攪拌機(ステファンミキサー、ホモミキサー等)によって攪拌する方法などが挙げられる。
(7)適用可能な食肉
本技術に係る食肉改質用処理液は、あらゆる食肉の改質に用いることが可能である。例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鹿肉等の畜肉;マグロ、サケ、アジ、サバ等の魚肉、アワビ、ホタテのような貝類の肉;タコ、イカのような頭足類の肉が挙げられる。本技術においては特に、牛肉、豚肉、鶏肉の改質に好適に用いることができる。
(8)改質処理方法
本技術に係る食肉改質用処理液を用いて、食肉を改質処理する方法は、特に限定されず、従来の食肉改質用処理液を用いた食肉の改質処理方法を自由に採用することができる。例えば、食肉に本技術に係る食肉改質用処理液を浸透させたり、本技術に係る食肉改質用処理液に食肉を浸漬させたり、又は本技術に係る食肉改質用処理液を食肉に注入させたりして、食肉に本技術に係る食肉改質用処理液を浸透・浸潤させ、食肉中でA1成分及びA2成分である各プロテアーゼを反応させ、酵素失活と殺菌処理とを兼ねた加熱処理を行う方法などが挙げられる。なお、食肉改質用処理液に食肉を浸漬する場合、浸透性を高めるために、テンダライズ処理や加圧処理を加えることも自由である。また、食肉に食肉改質用処理液を浸透させた後に、食肉改質用処理液の均一な分散のために、タンブリング処理を加えることも可能である。
<2.加工肉の製造方法、加工肉>
(1)加工肉の製造方法
本技術に係る加工肉の製造方法は、前述した本技術に係る食肉改質用処理液を、0〜20℃の浸透温度で食肉に浸透させて加工肉を調製する工程を少なくとも含む方法である。食肉改質用処理液の食肉への浸透方法は、特に限定されず、公知の浸透方法を自由に選択することができる。例えば、浸漬法、インジェクション法などを挙げることができる。中でもインジェクション法を採用することにより、ブロック肉のような厚みのある食肉素材に対して本技術に係る食肉改質用処理液を均一に浸透・浸潤させることができ、食肉内部に均一に食肉改質用処理液を分散させることができる。
本技術では、食肉改質用処理液の食肉への浸透温度を、0〜20℃とすることを特徴とする。本技術において、浸透温度は、前記範囲であれば自由に設定することができるが、0〜15℃に設定することが好ましい。浸透温度を0℃以上とすることで、食肉への浸透性を向上させることができる。また、浸透温度を20℃以下とすることで、浸透時に、食肉改質用処理液中の各プロテアーゼが過度に反応してしまうのを防止することができる。また、微生物汚染防止の観点からも、浸透温度は20℃以下とすることが好ましい。
本技術に係る加工肉の製造方法において、食肉への食肉改質用処理液の浸透量は、本技術の効果を損なわない範囲において自由に設定することができる。本技術では特に、食肉の質量に対して浸透量を10〜90質量%に設定することが好ましく、20〜60質量%に設定することがより好ましい。
本技術に係る加工肉の製造方法では、浸透処理を行った食肉を、食肉の形状が崩れない程度で、タンブリング工程を実施するのが好ましい。タンブリング工程により、食肉の全体に、より均一に食肉改質用処理液を分散させることができ、食肉の改質処理をより均一に行うことができる。
本技術に係る加工肉の製造方法では、食肉改質用処理液を浸透させた食肉を、所定温度にて所定時間静置することにより、改質処理することもできる。改質処理の温度は、食肉改質用処理液中の各プロテアーゼが活性可能な温度であれば特に限定されず、用いるプロテアーゼの種類に応じて自由に設定することができる。例えば、浸透温度を上記温度範囲で設定する場合、改質処理を行う時間は、1〜12時間程度であるのが好ましく、3〜10時間程度であるのがより好ましい。改質処理を行うことで、食肉素材の構成成分であるタンパク質やペプチド分子鎖などを分解し、軟質化などの改質を行うことができる。この際、本技術に係る食肉改質用処理液には、プロテアーゼの他に、食用油脂や増粘剤が含有されているため、食肉素材の形状、食感及び風味を維持しつつ、その全体にわたって均等に分解することができ、結果として、食肉素材の形状を維持した状態で、軟質化などの改質を行うことができる。
(2)加工肉
本技術に係る加工肉の製造方法を用いて製造された加工肉は、食肉改質用処理液を浸透させた状態でそのまま、又は更に改質処理を行った状態で、保存や流通させることができる。本技術においては、食肉内の各プロテアーゼが、保存中や流通過程において、過度に反応することを防止するために、冷凍処理を行うことが好ましい。冷凍処理方法は、特に限定されず、用いる食肉の種類に応じた冷凍可能な温度にて、公知の方法を用いて冷凍処理を行うことができる。
<3.食肉加工品の製造方法、食肉加工品>
(1)食肉加工品の製造方法
本技術に係る食肉加工品の製造方法は、前述した本技術に係る食肉改質用処理液を、0〜20℃の浸透温度で食肉に浸透させて加工肉を調製する工程、及び、調製した加工肉を浸透温度より高い温度で加熱して食肉加工品を製造する工程、を少なくとも含む方法である。加工肉を調製する工程は、前述した加工肉の製造方法と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
加熱処理は、食肉の改質処理、酵素失活処理及び殺菌処理を目的とする。即ち、加工肉調製工程において食肉の改質処理が行われていない場合や改質処理が十分でない場合には改質処理、酵素失活処理及び殺菌処理の全てを目的とし、加工肉調製工程において食肉の改質処理が十分に行われている場合には酵素失活処理及び殺菌処理を目的として行われる。これにより、改質後の加工肉が保存及び流通過程等において、さらにプロテアーゼ活性反応が進行して、例えば、食肉素材の型崩れを起こしたり、食肉素材の風味を損ねたりすることなどを防止することができる。
加熱処理は、加工肉単独で行っても良いが、加工肉と他の食材を合わせた状態で行うことも可能である。例えば、加工肉を所望の大きさにカットし、他の食材と一緒にレトルトパウチした状態で加熱処理を行うこともできる。
加熱処理の温度は、浸透温度より高い温度であれば特に限定されず、加熱の目的に応じて自由に設定することができる。例えば、改質処理を目的とする場合は20℃以上、酵素失活処理を目的とする場合は80℃以上、殺菌処理を目的とする場合は80℃以上に設定することができる。なお、加熱温度の上限はいずれも130℃以下で設定することができる。また、時間の経過毎に加熱温度を変化させ、各処理を段階的に継続して行うことも可能である。
(2)食肉加工品
本技術に係る食肉加工品の製造方法を用いて製造された食肉加工品は、食肉本来の形状を保持し、食肉本来の外観、食感、風味を保ったまま、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化されていることを特徴とする。本発明の食肉加工品の軟質化の程度は、物性としてかたさで表すことができる。かたさは、例えば、日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフード自主規格の方法あるいはそれに準ずる方法で測定することができる。日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフード自主規格に準ずる最大応力の測定方法は下記の通りである。
[ユニバーサルデザインフード自主規格に準ずる最大応力の測定方法]
試料(食肉加工品)を品温20±2℃になるように調温する。測定装置は、物質の圧縮応力を測定することが可能な装置(例えば、クリープメーター(RE2−33005S、株式会社山電製))等を用いる。試料に進入させるプランジャーは、区分1の食品を対象として測定する場合は、直径3mmの円柱状の樹脂製のものを用い、区分2又は区分3の食品を対象として測定する場合は、直径20mmの円柱状の樹脂製のものを用いる。測定台の上に試料をのせ、プランジャーを圧縮速度10mm/secで、測定台からプランジャーまでの距離が5mmになるまで試料に進入させる。進入させる箇所は、試料の中心部とし、試料1個に5箇所測定を行い、得られた5つのデータのうち、最大値と最小値を除いた3つのデータの平均値を求め、該当試料の測定値とする。
本技術に係る食肉加工品は、十分な軟質化処理が行われているので、ユニバーサルデザインフードとして利用することができる。ユニバーサルデザインフードとは、日本介護食品協議会により認定された高齢などの理由で咀嚼・嚥下が困難な者にも咀嚼・嚥下が容易な介護食品のことをいう。ユニバーサルデザインフードは、区分1から区分4に分かられ、区分1(かたさ上限値:5×10N/m)の食品は、容易にかめるものとされ、区分2(かたさ上限値:5×10N/m)の食品は、歯茎で潰せるものとされ、区分3(かたさ上限値:1×10N/m)の食品は、舌で潰せるものとされ、区分4(かたさ上限値:3×10N/m)の食品は噛まなくてもよいものとされる。すなわち、区分の番号が大きい食品程、咀嚼・嚥下のより困難な者に適した食品である。本発明の食肉加工品は、食肉改質用処理液中のプロテアーゼ濃度及び反応時間を調整することによって、区分1から区分3の食品用に使用できる。該当した最大応力とユニバーサルデザインフードの区分及び物性規格内の物性規格を照合し、該当する区分を選択できる。区分1のかたさを超えると、喫食時の食品の咀嚼・嚥下が容易でなくなるおそれがあるため、本技術では、最大応力の値が5×10N/m以下となるように、食肉改質用処理液中のプロテアーゼ濃度及び反応時間を調整することが好ましい。
本技術に係る食肉加工品の最大応力の値は、上限を5×10N/m以下とすることが好ましいが、下限は1×10N/m以上が好ましく、2×10〜3×10N/mの範囲に設定することがより好ましい。最大応力の値を2×10N/m以上とすることで、調理時や流通時の破損を防止したり、喫食時の取り扱い性を向上させることができる。
本技術に係る食肉加工品は、様々な食品に応用することができる。例えば、焼肉、ステーキ、トンカツ、カレー、シチュー、唐揚、焼豚、ハム、ベーコン等の肉塊をそのままあるいは比較的大きくスライス、カットして用いる製品等に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<実験例1>
実験例1では、本技術の効果を得るためのプロテアーゼの種類及び含有量、食用油脂の含有量について、検討を行った。
(1)食肉改質用処理液の調製
後述する表1及び表2に示す所定量の冷水(液温5℃以下)に所定量のプロテアーゼ、食用油脂の水中油型乳化物又は粉末油脂、及び増粘剤をステファンミキサー(ステファン社製 UM44型)に投入し、低速回転で5分間溶解して食肉改質用処理液を調製した。
(2)食肉改質用処理液の浸透処理
処理用の食肉素材にピックルインジェクター(株式会社ツカコム製 型番300−3H)を用いて、前記で調製した食肉改質用処理液を肉100質量部に対して40質量部を0〜15℃の条件で注入することにより浸透処理を行った後、タンブラーマシン(PYCMO社製 型番WM−200V)にて均一処理を行った。
(3)軟質化処理
浸透処理した食肉素材を、4〜15℃の調温室内に収納し、1〜18時間静置し、食肉素材を軟質化処理させた。その後、−40℃の急速冷凍庫にて、急速冷凍後、−20℃で1週間、保管した。
(4)加熱調理
前記の冷凍加工肉を1.5cmの厚さに切断したものを、レトルト用パウチに充填し、レトルト殺菌処理(123℃)で加熱調理を行い食肉加工品を得た。
(5)評価
浸透工程時における作業性の評価を行った。また、得られた食肉加工品について、日本介護食品協議会によるユニバーサルデザインフード規格に基づいた最大応力の測定及び各評価を行った。各評価方法とその基準は次の通りである。
[浸透工程時における作業性]
◎:問題なく、作業を実施できる
○:ほとんど問題なく、作業を実施できる
△:作業性は低下するものの、作業は実施できる
×:作業性が著しく低下する
[加熱調理後の軟らかさ]
◎:嚥下や咀嚼が困難な人が、十分に咀嚼・嚥下することが可能な軟らかさ
○:嚥下や咀嚼が困難な人が、咀嚼・嚥下可能な軟らかさ
△:嚥下や咀嚼が困難な人が、咀嚼・嚥下しにくい程度のかたさ
×:軟質化しすぎて形を維持することができない
[加熱調理後の形状保持性]
◎:本来の形状と同一のまま、維持することが可能
○:所定の形状に維持することが可能
△:若干、形が崩れてしまう
×:所定の形状を留めておくことができない
[加熱調理後の肉汁のドリップ量]
◎:肉汁(ドリップ)の流出が認められない
○:肉汁(ドリップ)の流出がほとんど認められない
△:若干の肉汁(ドリップ)の流出が認められる
×:著しく、肉汁(ドリップ)の流出が認められる
[食肉加工品の官能評価(食感)]
◎:食べやすく、非常に飲み込み易い
○:食べやすく、飲み込み易い
△:少し食べづらく、やや飲み込みにくい
×:軟らかすぎて、食べ難い
[食肉加工品の官能評価(風味)]
◎:非常にジューシー感があって美味しい
○:ジューシー感がある
△:若干、パサついた食感がある
×:著しくパサついた食感である
上記の表において、実験に使用した材料の略記した内容の詳細は、次の通りである(以下同様)。
・牛肉:オーストラリア産牛モモ肉
・豚肉:デンマーク産豚ロース肉
・鶏肉:ブラジル産鶏肉(むね肉)
・アルカリ性プロテアーゼ:アロアーゼXA−10(Bacillus licheniformis起源のアルカリ性プロテアーゼ、ヤクルト薬品工業株式会社製)
・中性プロテアーゼ:パパインW−40(Carica papaya L.起源の中性プロテアーゼ、天野エンザイム株式会社製)
・酸性プロテアーゼ:Pepsibio 1:10,000(豚の胃粘膜から抽出され、酸性域においてタンパク質を分解する酸性プロテアーゼ、日本バイオコン株式会社製)
・乳化油脂:PB−100(牛脂45%含有のO/W型乳化液、日油株式会社製)
・粉末油脂:ネオパウダーMOMO(牛脂75%含有の粉末油脂、日油株式会社製)
・増粘剤:ヒドロキシプロピルデンプン55.34%(イングレディオン・ジャパン株式会社製「ナショナル7」)、カードラン43.81%(MCフードスペシャリティーズ株式会社製「カードランNS」)、キサンタンガム0.85%(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「サンエース」)
(6)考察
表1の実施例1〜14から明らかなように、本技術に係る食肉改質用処理液で浸透処理した加工肉は、いずれも食肉本来の形状を維持したまま、目的の軟質化を達成することができ、その食感及び風味も良好であった。また、食用油脂は、乳化油脂であっても、粉末油脂であっても、食感や風味は良好であり、いずれの食用油脂も使用できることが明らかとなった。なお、本技術に係る食肉改質用処理液は、牛肉、豚肉、鶏肉の改質に好適であったが、羊肉、馬肉、鹿肉等のその他の畜肉や、魚介類等の食肉の改質においても同様の効果が発揮されると推測される。
一方、表2から明らかなように、比較例1では、アルカリ性及び中性プロテアーゼ、食用油脂を含んでいないため、すべての評価において好ましくなかった。
比較例2及び3のように、アルカリ性又は中性プロテアーゼのいずれか一方しか用いなかった場合、かたさの測定結果が5×10N/m以上であり、柔らかさも不十分であるにも関わらず、形状保持性も不良であった。また、食感や風味も低下して好ましくなかった。
比較例4のように、アルカリ性及び中性プロテアーゼを併用使用した場合、かたさの測定結果及び軟らかさは満足できる結果であったが、食用油脂を含まないことにより、浸透処理時の作業性が低下して好ましくなく、形状保持性及び肉汁ドリップも著しく低下し、更に食感及び風味も低下して好ましくなかった。
比較例5のように、プロテアーゼを使用せず食用油脂のみを用いた場合、風味のみは満足できる結果であったが、その他の評価は全て好ましくなかった。
比較例6のように、増粘剤のみ使用した場合、形状保持性及び肉汁ドリップについては満足できる結果であったが、その他の評価は全て好ましくなかった。
比較例7のように、食用油脂を含まなくても増粘剤を含むことにより、比較例4に比べて、浸透処理時の作業性、形状保持性、肉汁ドリップ、及び食感の評価は向上したが、風味の結果は依然として好ましくない結果であった。
比較例8や比較例9のように、アルカリ性又は中性プロテアーゼの量が本技術の範囲よりも少ない場合、かたさの測定結果が5×10N/m以上であり、柔らかさ及び食感の評価が低下して好ましくなかった。
比較例10や比較例11のように、アルカリ性又は中性プロテアーゼの量が本技術の範囲よりも多い場合、過剰軟化が起き、かたさ測定が不能であった。また、浸透処理時の作業性以外、全ての評価が好ましくない結果であった。
比較例12や比較例14のように、食用油脂の量が本技術の範囲よりも少ない場合、風味の評価が低下して好ましくなかった。
比較例13や比較例15のように、食用油脂の量が本技術の範囲よりも多い場合、浸透処理時の作業性が低下して好ましくなく、肉汁ドリップの評価が不良であった。
比較例16のように、プロテアーゼとして酸性プロテアーゼのみを使用した場合、かたさの測定結果が5×10N/m以上であり、形状保持性及び食感の評価が低下して好ましくなく、肉汁ドリップ及び風味の評価も不良であった。
以上の結果から、食肉本来の形状を保持し、食肉本来の外観及び風味を維持した状態で、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化するには、アルカリ性及び中性プロテアーゼ、及び食用油脂を全て併用し、その含有量は、アルカリ性プロテアーゼ:0.002〜0.2質量%、中性プロテアーゼ:0.001〜0.1質量%、食用油脂:3〜30質量%、に設定する必要があることが分かった。
<実験例2>
実験例2では、本技術に係る食肉改質用処理液に増粘剤を用いる場合、その好適な含有量について検討を行った。
(1)食肉加工品の製造
後述する表3に示す各成分を用いて、前記実験例1と同様の方法にて食肉改質用処理液を調製し、調製した食肉改質用処理液を用いて、前記実験例1と同様の方法にて食肉加工品の製造を行った。
(2)評価
浸透処理工程時における作業性の評価を行った。また、得られた食肉加工品について、日本介護食品協議会によるユニバーサルデザインフード規格に基づいた最大応力の測定及び下記の各評価を行った。各評価方法とその基準は実験例1と同様である。
(3)考察
表3の参考例19から明らかなように、食肉改質用処理液にアルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、及び食用油脂を用いることで、増粘剤を用いなくても、目的の軟質化を達成することができ、その食感及び風味も良好であった。形状保持性及び肉汁ドリップについても、増粘剤を0.5質量%以上用いた実施例15〜18に比べると若干劣るが、製品として十分に実施可能な食肉加工品を得ることができた。
実施例15〜18及び参考例19及び20の結果から、増粘剤を用いる場合、0.5質量%以上とすることで、形状保持性が確実に向上させ、肉汁ドリップも低減させることが可能であることが分かった。
なお、参考例21のように、増粘剤を用いる場合、その量が多すぎると、食肉改質用処理液の粘度が過度に増加し、注入による浸透処理ができなくなることも分かった。
以上の結果から、食肉改質用処理液にアルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、及び食用油脂を用いることで、製品として十分に実施可能な食肉加工品を得ることができるが、食肉加工品の形状保持性及び肉汁ドリップの低減化を確実に向上させるためには、増粘剤を用いることが好ましいことが分かった。また、食肉改質用処理液に増粘剤を用いる場合、その含有量は、0.5〜5.0質量%に設定することが好ましいことが分かった。
本技術によれば、食肉本来の形状を保持し、食肉本来の外観及び風味を維持した状態で、咀嚼・嚥下機能の低い者(高齢者や要介護者)にも喫食が容易となるかたさまで軟質化が可能である。そのため、咀嚼・嚥下機能の低い者にとって、安全かつ味わいながらの食事を実現させることができ、食事に対する楽しみを向上させ、食事の美味しさと楽しみによる食欲を増大させることにより、ひいては健康増進への貢献も期待することができる。

Claims (8)

  1. 下記の成分;
    A1成分:最適pH値がpH10.0〜11.0にあるBacillus属生物が産生するエンド型アルカリ性プロテアーゼ0.002〜0.2質量%、
    A2成分:最適pH値がpH5.0〜8.0にあるパパイン、及びAspergillus属生物又はBacillus属生物が産生するタンパク分解酵素から選ばれる1以上のエンド型中性プロテアーゼ0.001〜0.1質量%、
    B成分:食用油脂3〜30質量%、
    C成分:増粘剤0.5〜5.0質量%、及び
    水30〜97質量%、
    を含有し、
    前記食用油脂は、乳化油脂又は水中粒子分散物の形態で配合された、食肉改質用処理液を、食肉に浸透させて加工肉を調製する工程、及び、
    調製した加工肉を加熱して、日本介護食品協議会によるユニバーサルデザインフード規格に基づいて測定されるかたさの値で5×10 N/m 以下である加工肉を含む食肉加工品を製造する工程、を含む、食肉加工品の製造方法
  2. 前記加工肉の前記かたさの値が、2×10 N/m 以上である、請求項1に記載の食肉加工品の製造方法。
  3. 前記エンド型アルカリ性プロテアーゼが、Bacillus licheniformis起源のエンド型アルカリ性プロテアーゼである、請求項1又は2に記載の食肉加工品の製造方法
  4. 前記エンド型中性プロテアーゼが、Carica papaya L.起源のパパインである、請求項1から3のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法
  5. B成分が食用油脂10〜70質量%を含有する乳化油脂(B1成分)に由来する食用油脂である、請求項1から4のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法
  6. B成分が食用油脂40〜80質量%を含有する粉末油脂(B2成分)に由来する食用油脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法
  7. 前記加工肉を調製する工程では、前記食肉改質用処理液を、0〜20℃の浸透温度で食肉に浸透させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
  8. 前記食肉加工品を製造する工程では、調製した加工肉を浸透温度より高い温度で加熱する、請求項1から7のいずれか一項に記載の食肉加工品の製造方法。
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