JP3683651B2 - ジエン系ゴムの相溶化剤、該相溶化剤の製造方法、該相溶化剤を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なブロック共重合体からなるジエン系ゴムの相溶化剤、該相溶化剤を含有するゴム組成物、及びこれらの製造方法に関する。本発明の相溶化剤は、互いに非相溶性のジエン系ゴム同士を相溶化させることができ、しかも、ジエン系ゴムに当該相溶化剤を配合することにより、加硫活性を低下させずに、引張強度や耐摩耗性などが改善されたゴム組成物を得ることができる。本発明の相溶化剤及びゴム組成物は、タイヤ用ゴムなどの分野に好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車などのタイヤ用ゴムには、例えば、強度、耐摩耗性、低発熱性、高反発弾性、ウエットスキッド抵抗性など各種の性能を有することが求められている。しかし、これらの要求性能を一種類のゴムにより満足させることが困難であるため、例えば、天然ゴムとスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とのブレンドなど、一般に、複数のジエン系ゴムをブレンドして用いることにより、各種性能のバランスと改善を図っている。ところが、ジエン系ゴム同士であっても、異種のゴムであるため、必ずしも相溶性が十分ではなく、非相溶性の場合もある。特に、ジエン系ゴム同士が非相溶性である場合、均一に混練しても、十分な加硫物性を得ることが難しい。
【0003】
そこで、近年、非相溶性のジエン系ゴム同士を相溶化させるために、種々の方法が提案されている。例えば、特開平7−188510号公報には、結合スチレン量が30重量%以下でブタジエン部分のビニル結合量が40モル%以下のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)ブロックと、結合スチレン量が30重量%以下でブタジエン部分のビニル結合量が70モル%以上のSBRブロックからなるブロック共重合体を一種の相溶化剤として用いる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、例えば、天然ゴムとSBRとを相溶化させることができるものの、加硫速度が遅くなり、しかも耐摩耗性、引張強度等の加硫特性の改善も十分でないという欠点を有している。
【0004】
特開昭64−81811号公報には、1,4−シス結合量が65モル%以上のポリイソプレンブロックと、結合スチレン量が5〜40重量%でブタジエン部分のビニル結合量が55モル%以上のSBRブロックとからなるブロック共重合体が報告されている。しかしながら、このブロック共重合体は、天然ゴムとSBRとの相溶化剤として用いた場合、耐摩耗性や引張強度等について、十分な改善効果を得ることができない。本発明者らの研究によれば、該ブロック共重合体は、示差走査熱量計(DSC)による分析で1つの転移点しか現れず、そのことが、異種ゴム同士の十分な相溶化作用を発揮できない原因であると推定された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、相溶性が不十分なジエン系ゴム同士を相溶化させることができ、しかも加硫速度を遅延させることがなく、さらには、耐摩耗性や引張強度なども改善することができる新規なポリマー相溶化剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、加硫速度が良好で、耐摩耗性や引張強度に優れるゴム組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックと、共役ジエンと芳香族ビニルとの共重合体ブロックとを含み、示差走査熱量計で測定される転移点が、−150〜+150℃の範囲内で少なくとも2つ存在する新規なブロック共重合体が、異種のジエン系ゴム同士の相溶性改善に顕著な効果を示すことを見いだした。このブロック共重合体からなる相溶化剤を2種以上のジエン系ゴムに配合したゴム組成物は、加硫速度が良好で、耐摩耗性や引張強度の特性も改善される。また、該ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を狭くすることにより、耐摩耗性をさらに改善することができる。該ブロック共重合体の製造方法やゴム組成物の調製方法に工夫を加えることにより、前記の如き特徴点をさらに際立たせることができる。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、(1)2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックA、及び共役ジエンと芳香族ビニルとのランダム共重合体ブロックBを含み、(2)重合体ブロックAと共重合体ブロックBとの重量比(A:B)が5:95〜95:5で、(3)共重合体ブロックB中の結合芳香族ビニル量が1〜50重量%で、(4)共重合体ブロックB中のビニル結合量が10〜50モル%で、(5)重量平均分子量(Mw)が100,000〜5,000,000であり、かつ、(6)示差走査熱量計で測定される転移点が、−150〜+150℃の範囲内で少なくとも2つ存在するブロック共重合体からなる2種以上のジエン系ゴムの相溶化剤が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、炭化水素系溶媒中で、有機活性金属を開始剤として、先ず、(1)2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する重合体ブロックAの存在下で、共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させる工程(a)、または、先ず、(1)共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する共重合体ブロックBの存在下で、2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させる工程(b)を含む、ブロック共重合体からなる2種以上のジエン系ゴムの相溶化剤の製造方法が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、前記相溶化剤と、2種以上のジエン系ゴムとを含有することを特徴とするゴム組成物、及びその製造方法が提供される。ジエン系ゴムとしては、当該ブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(X)と、共重合体ブロックBと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(Y)とを含むものを好適に用いることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
ブロック共重合体 ( 相溶化剤 )
本発明の相溶化剤であるブロック共重合体は、2−メチル−1,3−ブタジエンからなる重合体ブロックAと、共役ジエンと芳香族ビニルとのランダム共重合体ブロックBとを含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される転移点が、−150〜+150℃の範囲内で少なくとも2つ現れるものである。転移点の数は、好ましくは2つである。DSCにより測定される転移点が1つしかない場合は、相溶性が不十分な、あるいは非相溶性のジエン系ゴム同士の相溶化効果を十分に発現することができない。
【0010】
ブロック共重合体の製造に用いる共役ジエンとしては、格別な制限はなく、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(すなわち、イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどが好ましい。これらの共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
ブロック共重合体の製造に用いる芳香族ビニルとしては、格別な制限はなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン等を挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
重合体ブロックAは、実質的に2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックであるため、加硫速度、耐摩耗性、引張強度が高度にバランスされて好適である。重合体ブロックAに例えば芳香族ビニル等のオレフィン系単量体が有意量で結合すると、得られたブロック共重合体を2種以上のジエン系ゴムの相溶化剤として用いた場合に、加硫速度が遅くなり、耐摩耗性や引張強度等の改良効果も得られなくなる。
重合体ブロックA部分のミクロ構造には、格別な制限はなく、例えば、ビニル結合量(1,2−ビニル結合量+3,4−ビニル結合量)は、通常1〜80モル%の範囲である。このビニル結合量は、好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜30モル%の時に、加硫速度がより良好で、しかも耐摩耗性や引張強度等が高度に改善される傾向を示す。ビニル結合量は、しばしば3〜15モル%であることが特に好ましい。ビニル結合以外の残部は、1,4−結合であり、その中のシス−1,4−結合及びトランス−1,4−結合の割合は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0013】
共重合体ブロックB中の結合芳香族ビニル(S)量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜50重量%、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%である。結合芳香族ビニル量がこれらの範囲内にあることによって、ゴム組成物の引張強度が良好となり好適である。
共重合体ブロックB中の共役ジエン部分のミクロ構造としては、ビニル結合(V)量(1,2−ビニル結合量または1,2−ビニル結合量+3,4−ビニル結合量)が、共重合体ブロックB中の結合共役ジエン単位の10〜50モル%である。ビニル結合量がこの範囲にある時に、ゴム組成物の加硫特性や摩耗性が改良される。共役ジエン部分のビニル結合以外は、1,4−結合であり、その中のシス−1,4−結合及びトランス−1,4−結合の割合は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0014】
共重合体ブロックB中のS量とV量が、上記範囲内であって、かつ、V<2S+17の関係式が成立するときに、非相溶性のジエン系ゴム同士の相溶化効果が高く、特に、耐摩耗性と引張強度とを高度に改善できるので好ましい。
また、重合体ブロックA中の1,4−結合量(A−1,4)と共重合体B中の共役ジエン部分の1,4−結合量(B−1,4)との比率には、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択されるが、(A−1,4):(B−1,4)のモル比で、通常1:9〜9:1、好ましくは3:7〜7:3、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。両者の比率がこの範囲である時に、加硫速度がより良好で、引張強度や耐摩耗性等の改善効果も高く好適である。
【0015】
共重合体ブロックB中の芳香族ビニル単位の連鎖分布は、使用目的に応じて適宜選択されるが、オゾン分解法で測定される芳香族ビニルが1個結合した独立鎖(以下、S1鎖と略記)は、全結合芳香族ビニル量の通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。また、オゾン分解法で測定される芳香族ビニルが8個以上結合した長連鎖(以下、S8連鎖と略記)は、全結合芳香族ビニル量の通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。S1鎖及びS8連鎖がこの範囲にある時に、発熱性に特に優れ好適である。
重合体ブロックAと共重合体ブロックBとの重量比(A:B)は、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜70:30、より好ましくは20:80〜50:50の範囲である。重合体ブロックAと共重合体ブロックBとの割合がこの範囲であるときに、加硫速度が充分に改善され好適である。
【0016】
本発明のブロック共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算値として測定される重量平均分子量(Mw)で、100,000〜5,000,000、好ましくは300,000〜3,000,000、より好ましくは500,000〜1,500,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、相溶化の効果を十分に発現することが困難であり、耐摩耗性や引張強度などの改善効果も劣り、逆に、過度に大きいと、加工性が低下するため、いずれも好ましくない。
本発明のブロック共重合体の分子量分布は、格別な制限はないが、上記GPC法により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下であるときに相溶化の効果が高く好適である。
【0017】
本発明の相溶化剤であるブロック共重合体の製造方法は、格別限定されるものではないが、例えば、炭化水素系溶媒中で、有機活性金属を開始剤として、先ず、(1)2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する重合体ブロックAの存在下で、共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させる方法(a法)により、あるいは、炭化水素系溶媒中で、有機活性金属を開始剤として、先ず、(1)共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する共重合体ブロックBの存在下で、2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させる方法(b法)により、製造することができる。重合操作の容易さや得られるブロック共重合体の物性などの観点から、a法が特に好ましい。
特に、分子量分布(Mw/Mn)の狭いブロック共重合体は、例えば、反応系に、炭化水素系溶媒、ルイス塩基、及び2−メチル−1,3−ブタジエンを仕込んだ後、有機活性金属を添加して重合反応を開始させ、2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体Aを生成させた後、共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を添加して更に重合する方法などによって得ることができる。
【0018】
有機活性金属としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などのアニオン重合可能な有機活性金属化合物が挙げられる。これらの中でも、重合反応性、経済性などの観点から、有機アルカリ金属化合物が特に好ましい。
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどのモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、有機リチウム化合物が好ましく、モノ有機リチウム化合物が特に好ましい。
【0019】
有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。
有機ランタノイド系列希土類金属化合物としては、例えば、特公昭63−64444号公報に記載されているようなバーサチック酸ネオジウム/トリエチルアルミニウムハイドライド/エチルアルミニウムセスキクロライドからなる複合触媒などが挙げられる。
これらの有機活性金属は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。有機活性金属の使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択され、全単量体100g当り、通常0.01〜20ミリモル、好ましくは0.05〜15ミリモル、より好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲である。
【0020】
ルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;等の化合物を挙げることができる。これらの中でも、エーテル類や第3級アミン化合物などのが好ましい。
これらのルイス塩基は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ルイス塩基の使用量は、有機活性金属1モルに対して、通常0〜200モル、好ましくは0.01〜100モル、より好ましくは0.1〜50モル、最も好ましくは0.3〜20モルの範囲である。
【0021】
重合反応は、等温反応、断熱反応のいずれでもよく、通常は0〜150℃、好ましくは20〜120℃の重合温度範囲で行われる。重合反応終了後は、常法により、例えば、停止剤としてメタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を添加して重合反応を停止し、酸化防止剤(安定剤)やクラム化剤を加えた後、直接乾燥やスチームストリッピングなどの方法で溶媒を除去し、生成重合体を回収することができる。
【0022】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、少なくとも一種のジエン系ゴムと上記ブロック共重合体とを必須成分として含有するものである。
ジエン系ゴムとしては、本発明のブロック共重合体の相溶化作用を発現させるために、互いに非相溶性ないしは相溶性の悪い二種以上のジエン系ゴムを組み合わせて使用することが好ましい。より具体的には、ジエン系ゴムとして、通常、ブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(X)と、共重合体ブロックBと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(Y)とを含むものを使用する。これらのジエン系ゴム(X)及び(Y)の組み合わせとしては、例えば、タイヤトレッド用ゴム成分として使用されている各種ゴムの組み合わせを挙げることができる。
【0023】
あるジエン系ゴムが、本発明のブロック共重合体中の重合体ブロックAまたは共重合体ブロックBと相溶化するか否かは、ブレンド物のDSC分析により判定することができる。すなわち、
(1)DSCによりブロック共重合体の転移点の測定を行い、重合体ブロックAに基づく転移点(TA)と共重合体ブロックBに基づく転移点(TB)とを求める。
(2)ジエン系ゴムCについて、DSCにより転移点(TC)を求める。
(3)ブロック共重合体とジエン系ゴムCとを混練し(通常40〜100℃で5〜15分間)、その混練物をDSCで測定し、
▲1▼3つの転移点(TA、TB、TC)が測定されたとき、ジエン系ゴムCは、重合体ブロックA及び共重合体ブロックBともに非相溶性である判定する。
▲2▼TA及びTCの転移点が消失し、TAとTCとの間に新たな転移点Tが生じた時に、ジエン系ゴムCは、重合体ブロックAと相溶化するジエン系ゴム(X)であると判定することができる。
▲3▼TB及びTCの転移点が消失し、TBとTCとの間に新たに転移点Tが生じた時に、ジエン系ゴムCは、共重合体ブロックBと相溶化するジエン系ゴム(Y)であると判定することができる。
【0024】
より具体的に、上記判定法に基づいて、本発明のブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化するジエン系ゴム(X)の好ましい例としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、イソプレンーブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、天然ゴム、1,4−結合量が70モル%以上のポリイソプレンゴム、イソプレン含有量が50重量%以上でかつ1,4−結合量が70モル%以上のブタジエンーイソプレンゴムが好ましい。これらのジエン系ゴム(X)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明のブロック共重合体中の共重合体ブロック(B)と相溶化するジエン系ゴム(Y)の好ましい具体例としては、例えば、スチレンーブタジエンゴム、スチレンーイソプレンゴム、スチレンーイソプレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム、低アクリロニトリルーブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン含有量が35重量%以下で共役ジエン部分のビニル結合量(1,2−結合量または1,2−結合量+3,4−結合量)が17〜70モル%のスチレンーブタジエンゴムやスチレンーイソプレンーブタジエンゴムなどが好ましく、結合スチレン量が10〜30重量%で共役ジエン部分のビニル結合量が30〜65モル%のスチレンーブタジエンゴム、結合イソプレン量が1〜10重量%であるスチレンーイソプレンーブタジエンゴムがより好ましい。
【0026】
これらのジエン系ゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。ジエン系ゴム(X)とジエン系ゴム(Y)との割合は、使用目的に応じて適宜選択され、X:Yの重量比で、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜70:30の範囲である。
各ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常10〜250、好ましくは30〜200、より好ましくは40〜150の範囲である。
ジエン系ゴム成分に配合するブロック共重合体の割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、ジエン系ゴム成分(合計量)100重量部に対して、通常0.1〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜25重量部の範囲である。ブロック共重合体の配合割合がこの範囲にある時に、相溶化効果及び加硫特性に優れ好適である。
【0027】
本発明のゴム組成物には、通常、補強剤が配合される。補強剤としては、例えば、カーボンブラックやシリカなどを挙げることができる。カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEF等の種々のグレードのものが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に制限はないが、通常5〜200m2/g、好ましくは50〜150m2/g、より好ましくは80〜130m2/gの範囲である。また、カーボンブラックのDBP吸着量は、特に制限はないが、通常、5〜300ml/100g、好ましくは50〜200ml/100g、より好ましくは80〜160ml/100gの範囲である。
【0028】
カーボンブラックとして、特開平5−230290号公報に開示されているセチルトリメチルアンモニウムブロマイドの吸着(CTAB)比表面積が110〜170m2/gで24,000psiの圧力で4回繰り返し圧縮を加えた後のDBP(24M4DBP)吸油量が110〜130ml/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを用いることにより、耐摩耗性を改善できる。
シリカとしては、特に制限はないが、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、及び特開昭62−62838号公報に開示されている沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが特に好ましい。シリカの比表面積は、特に制限はされないが、窒素吸着比表面積(BET法)で、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜250m2/g、よい好ましくは120〜190m2/gの範囲である時に、発熱性、引張強度、加工性等の改善が十分に達成され、好適である。ここで窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じBET法で測定される値である。
【0029】
これらの補強剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。補強剤の配合割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、ジエン系ゴム成分(合計量)100重量部に対して、通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは30〜120重量部である。
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、ゴム工業で一般に用いられるその他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、活性剤、可塑剤、滑剤、充填剤などを挙げることができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0030】
本発明のゴム組成物は、常法に従って上記各成分を混合(混練)することにより得ることができる。例えば、少なくとも一種のジエン系ゴム、ブロック共重合体、及び加硫剤と加硫促進剤を除く配合剤とを混合後、その混合物に加硫剤と加硫促進剤を混合してゴム組成物を得ることができる。
特に、ブロック共重合体と混合するジエン系ゴムが、ブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化するジエン系ゴム(X)と、共重合体ブロックBと相溶化するジエン系ゴム(Y)である場合は、ジエン系ゴム(X)と(Y)のいずれか一方とブロック共重合体とを混合した後、残りの一方のジエン系ゴムと混合すると、引張強度や耐摩耗性等の特性が一層改善され好適である。
ジエン系ゴム、ブロック共重合体、及び加硫剤と加硫促進剤と除く配合剤の混練温度は、通常、室温〜250℃、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜180℃であり、混練時間は、通常30秒間以上、好ましくは1〜30分間である。加硫剤と加硫促進剤の混合は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃まで冷却後に行われ、その後、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度でプレス加硫する。
【0031】
【実施例】
以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の例中の部及び%は、特に断わりのない限り重量基準である。
各種の物性の測定法は、下記とおりである。
(1)結合スチレン量
ブロック共重合体中の結合スチレン量は、JIS K6383(屈折率法)に準じて測定した。
(2)ビニル結合量
ブロック共重合体中の共役ジエン部分のビニル結合量は、赤外分光法(ハンプトン法)により測定した。
(3)分子量及び分子量分布
ブロック共重合体の分子量及び分子量分布は、GPCで測定し、それぞれ標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を求めた。カラムとして、東ソー製GMH−HR−Hを2本用いた。
(4)ムーニー粘度
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6301に準じて測定した。
【0032】
(5)転移点
ブロック共重合体、ゴム、及びこれらの混合物の転移点は、各試料から10±5mgを秤量し、示差走査熱分析器(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度80℃/分で−150℃から+150℃まで昇温して示差走査熱量を測定し、得られた吸熱曲線を微分して変極点を求めた。この変極点を転移点とした。
(6)引張強度
引張強度は、JIS K6301に準じて測定した。
(7)耐摩耗性
耐摩耗性は、ASTM D2228に従って、ピコ摩耗試験機を用いて測定した。耐摩耗性は、比較例の一つを100とする指数(耐摩耗指数)で表示した。この指数は、大きいほど好ましい。
(8)加硫速度
加硫速度は、加硫密度比を測定して判定した。加硫密度比は、島津製作所製オシレーティングディスクレオメーター(ODR)を用いて、170℃で最小トルクと10分の時のトルクの差を測定し、比較例の一つを100として指数表示した。加硫速度が遅いほど長い加硫時間が必要となり、10分の時に高い(指数が大きい)ほど加硫速度が速いことを示している。
【0033】
[製造例1](ブロック共重合体1の製造例)
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.1mmol、及びイソプレン600g入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を1.8ml添加して重合を開始した。約15分間の後、転化率が約100%になったところで、TMEDAを4.3mmol添加し、次いで、スチレン280gと1,3―ブタジエン1120gの混合モノマー〔スチレン:ブタジエン=20:80(重量比)〕を約50分間にわたって連続的に添加した。添加終了後、約10分間を経過してから10mmolの1,3―ブタジエンを添加して、さらに10分間反応させた。重合転化率は約100%であった。イソプロピルアルコールを10mmol添加して重合を停止し、次いで、フェノール系老化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス1520)を2g添加してからスチームストリッピング法により脱溶媒した後、真空乾燥してブロック共重合体1を得た。ブロック共重合体1の物性データーを測定し、表1に示した。
【0034】
[製造例2](ブロック共重合体2の製造例)
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、及びスチレンとブタジエンとの20:80(重量比)の混合モノマー600gを入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を1.8ml添加して重合を開始した。転化率が約100%になったところで、温度を40℃に下げてから、TMEDAを4.3mmol添加し、次いで、スチレンとブタジエンとの12:88(重量比)の混合モノマー1400gを60分間にわたって添加した。重合反応の終了後は、製造例1と同様に処理してブロック共重合体2を得た。ブロック共重合体2の物性データを測定し、表1に示した。
【0035】
[製造例3](ブロック共重合体3の製造例)
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、及びイソプレン1000g入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を7ml添加して重合を開始した。転化率が約100%になったところで、温度を40℃に下げてから、TMEDAを12mmol添加し、次いで、スチレンとブタジエンとの17:83(重量比)の混合モノマー1000gを60分間にわたって添加した。重合反応終了後は、製造例1と同様に処理してブロック共重合体3を得た。ブロック共重合体3の物性データを測定し、表1に示した。
【0036】
【表1】
(脚注)
(A−1,4):(B−1,4)は、重合体ブロックAの共役ジエン部分の1,4−結合量と共重合体ブロックBの共役ジエン部分の1,4−結合量との比であり、下式により算出した。
[A×(1−VA)]:[B×(1−S)×(1−VB)]
A:重合体ブロックAの重量%
B:重合体ブロックBの重量%
VA:重合体ブロックAの共役ジエン部分のビニル結合量(モル%)
VB:重合体ブロックBの共役ジエン部分のビニル結合量(モル%)
S:重合体ブロックBの結合スチレン量
【0037】
[実施例1](ゴム組成物;一括混練法)
0.25リットルのバンバリーミキサーに、表3に示すゴム成分(SBR及びIR)とブロック共重合体1とを入れ、80℃で30秒間混錬した。次いで、表2に示すカーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸、及びナフテンオイルを入れて3分間混錬し、さらに、老化防止剤を加えてから1分間混錬した。内容物を取り出して50℃以下の温度に冷却してから、50℃のロールで加硫促進剤及び硫黄を添加して混錬した。このようにして得られたゴム組成物を170℃で12分間加硫した。各物性の測定結果を表3に示した。
【0038】
[実施例2〜4、比較例1〜2](ゴム組成物;分割混練法)
0.25リットルのバンバリーミキサーに、表3に示すSBRと各ブロック共重合体とを入れ、80℃で30秒間混錬した。次いで、表3に示すIRと表2に示すカーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸、及びナフテンオイルを入れて3分間混錬し、さらに、老化防止剤を加えてから1分間混錬した。内容物を取り出して50℃以下に冷却してから、50℃のロールで加硫促進剤及び硫黄を添加して混錬した。このようにして得られたゴム組成物を170℃で12分間加硫した。各物性の測定結果を表3に示した。
【0039】
【表2】
(*1)N399(窒素吸着比表面積=93m2/g、吸油量=119ml/100g;東海カーボン社製シーストKH)
(*2)サンセン410(日本石油製)
(*3)ノクラック6C(大内新興社製)
(*4)ノクセラーCZ(大内新興社製)
【0040】
【表3】
(*1)溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(結合スチレン量=20%、ビニル結合量=65モル%、ムーニー粘度=50)
(*2)溶液重合ポリイソプレンゴム(1,4−シス結合量=98%、ムーニー粘度=90)
(*3)いずれの物性も、比較例1を100とする指数で示した。
【0041】
表3の結果より、本発明のブロック共重合体1を用いると、加硫速度が良好であり、引張強度や耐摩耗性などの特性にも優れたゴム組成物の得られることが判る(実施例1〜4)。また、2種類の非相溶なゴム(SBRとIR)とブロック共重合体1とを混合するときに、一方のゴム(SBRまたはIR)とブロック共重合体1とを混練してから、その混合物と他方のゴムとを混練する分割混練法の方が、2種類のゴムとブロック共重合体とを一括して混合する一括混練法よりも、引張強度や耐摩耗性の改善効果が高いことが判る(実施例1と2の比較)。分割混練法によれば、ブロック共重合体1の配合量は、僅かでも充分な改善効果が発揮される(実施例4)。一方、転移点が一つのブロック共重合体3を用いた場合(比較例2)では、加硫速度が遅く、引張強度や耐摩耗性等の改善も充分でないことがわかる。
【0042】
[製造例4](ブロック共重合体4の製造例)
n−ブチルリチウムを製造例1の1.5倍量用いる以外は、製造例1と同様に行い分子量の小さいブロック共重合体4を得た。ブロック共重合体の物性データを表4に示す。
【0043】
[製造例5](ブロック共重合体5の製造例)
初期のTMEDAを添加せず、イソプレンと混合モノマー(スチレン/1,3―ブタジエン)との重量比を40:60とする以外は、製造例1と同様に行いブロック共重合体5を得た。物性データを表4に示す。
【0044】
[製造例6](ブロック共重合体6の製造例)
二段目の混合モノマー添加前にTMEDAを追加せず、イソプレンと混合モノマー(スチレン/1,3―ブタジエン)との重量比を50:50とする以外は、製造例1と同様に行いブロック共重合体6を得た。物性データを表4に示す。
【0045】
[製造例7](ブロック共重合体7の製造例)
二段目の混合モノマー添加前にTMEDAを追加しない以外は、製造例1と同様に行いブロック共重合体7を得た。物性データを表4に示す。
【0046】
[製造例8](ブロック共重合体8の製造例)
イソプレンと混合モノマー(スチレン/1,3―ブタジエン)との重量比を50:50とする以外は製造例1と同様に行い、ブロック共重合体8を得た。物性データを表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
[実施例5〜11、比較例3]
実施例2で用いたSBRを表6に示す複数種類のSBRに代え、ブロック共重合体を表6に示すものに代え、配合処方を表5に示すものに代えた以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を加硫して、加硫物性を測定した。それらの結果を表6に示した。
【0049】
【表5】
(*1)シースト9H(窒素吸着比表面積=144m2/g、吸油量=129ml/100g;東海カーボン社製)
(*2)ノクラック6C(大内新興社製)
(*3)ノクセラーCZ(大内新興社製)
【0050】
【表6】
(*1)乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(結合スチレン量=23.5%、アロマ油40PHR油展、ムーニー粘度=50);なお、表6に表示した配合量の28部中、アロマ油成分を除くゴム成分の配合量は20部である。
(*2)溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(結合スチレン量=20%、ビニル結合量=65モル%、ムーニー粘度=50)
(*3)乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(結合スチレン量=45%、ムーニー粘度=50)
(*4)天然ゴム(SMR−CV60、ムーニー粘度=60)
(*5)いずれの物性も、比較例3を100とする指数で示した。
【0051】
表6の結果より、本発明の各ブロック共重合体を用いたゴム組成物は、加硫速度の速いゴムの組み合わせ(比較例3)と較べても加硫速度が充分に速く、引張強度及び耐摩耗性にも優れていることが判る(実施例5〜11)。また、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の大きい方が加硫速度が良好で、引張強度や耐摩耗性にも優れること(実施例5と6の比較)、分子量分布の狭い方が引張強度や耐摩耗性の特性がさらに優れていること(実施例5と7の比較)、ブロックAとブロックBの1,4−結合量(重量)の比が異なると特性が変化しており、該比が50:50に近いほど、引張強度と耐摩耗性の特性に優れること(実施例5、9、及び10との比較)、及びブロックAとブロックBの1,4−結合量(重量)の比が50:50から離れても、分子量分布を狭くすることで引張強度と耐摩耗性が改善できること(実施例7と9の比較)などが判る。
【0052】
[製造例9](ブロック共重合体9の製造例)
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、TMEDA 0.6mmol、及びイソプレン1000g入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を3.5ml添加して重合を開始した。転化率が約100%になったところで、TMEDA 8mmolを添加し、次いで、スチレンと1,3―ブタジエンとの20:80(重量比)の混合モノマー1000gを約60分間にわたって連続的に添加した。重合反応終了後は、製造例1と同様に処理してブロック共重合体9を得た。ブロック共重合体9の物性データを測定し、表7に示した。
【0053】
[製造例10](ブロック共重合体10の製造例)
攪拌器とジャケット付きの20リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、TMEDA 0.6mmol、及び1,3−ブタジエン300g入れて、70℃に昇温してから、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65mmol/ml)を3.1ml添加して重合を開始した。転化率が約100%になったところで、温度を35℃に下げてから、TMEDA 10mmolを添加し、次いで、スチレンと1,3―ブタジエンとの14:86(重量比)の混合モノマー1700gを約60分間にわたって連続的に添加した。重合反応終了後は、製造例1と同様に処理してブロック共重合体10を得た。ブロック共重合体10の物性データを測定し、表7に示した。
【0054】
【表7】
【0055】
[実施例12及び比較例4]
実施例2で用いたジエン系ゴムを表9に示すSBRと天然ゴムに代え、ブロック共重合体を表9に示すものに代え、配合処方を表8に示すものに代えた以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を加硫して、加硫物性を測定した。それらの結果を表9に示した。
【0056】
【表8】
(*1)シースト9H(窒素吸着比表面積=144m2/g、吸油量=129ml/100g;東海カーボン社製)
(*2)ノクラック6C(大内新興社製)
(*3)ノクセラーCZ(大内新興社製)
【0057】
【表9】
(*1)乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム(結合スチレン量=25%、ビニル結合量=55モル%、アロマ油50PHR油展、ムーニー粘度=60)
(*2)天然ゴム(SMR−CV60、ムーニー粘度=60)
(*3)この場合、いずれの物性も比較例4を100とする指数で示した。
【0058】
表9の結果より、重合体ブロックAがイソプレンの重合体ブロックであるときに(実施例12)に、1,3−ブタジエンの重合体ブロックであるとき(比較例4)と比較して、加硫速度、引張強度、耐摩耗性等のいずれの特性もさらに改善されていることがわかる。
加硫速度は、タイヤを作製する場合、多くの部材があるため、加硫時間の整合性がないと、一方の部材が過加硫になって耐久性能や強度特性に大きく影響を与えるので、本発明のゴム組成物は、実用上からも優れた特性を持っていることが明らかである。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、非相溶性ないしは相溶性の悪い2種以上のジエン系ゴムを相溶化させることができ、しかも加硫速度を遅延させることがなく、さらには、引張強度や耐摩耗性などの諸特性を改善することができる新規なブロック共重合体からなる相溶化剤が提供される。本発明のブロック共重合体からなる相溶化剤は、特にタイヤトレッドなどのゴム成分に相溶化剤としてブレンドすることにより、加硫特性や諸物性に優れたゴム組成物を与えることができる。
Claims (8)
- (1)2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックA、及び共役ジエンと芳香族ビニルとのランダム共重合体ブロックBを含み、(2)重合体ブロックAと共重合体ブロックBとの重量比(A:B)が5:95〜95:5で、(3)共重合体ブロックB中の結合芳香族ビニル量が1〜50重量%で、(4)共重合体ブロックB中のビニル結合量が10〜50モル%で、(5)重量平均分子量(Mw)が100,000〜5,000,000であり、かつ、(6)示差走査熱量計で測定される転移点が、−150〜+150℃の範囲内で少なくとも2つ存在するブロック共重合体からなる2種以上のジエン系ゴムの相溶化剤。
- ブロック共重合体が、共重合体ブロックB中の結合芳香族ビニル量(S量;重量%)とビニル結合量(V量;モル%)との間に、関係式
V<2S+17
が成立するものである請求項1記載の相溶化剤。 - ブロック共重合体が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mn/Mw)が2.5以下であるものである請求項1または2記載の相溶化剤。
- 炭化水素系溶媒中で、有機活性金属を開始剤として、先ず、(1)2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する重合体ブロックAの存在下で、共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させる工程(a)、または、先ず、(1)共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を重合してランダム共重合ブロックBを生成させ、次いで、(2)活性末端を有する共重合体ブロックBの存在下で、2−メチル−1,3−ブタジエンを重合して2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させる工程(b)を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブロック共重合体からなる2種以上のジエン系ゴムの相溶化剤の製造方法。
- 工程(a)において、炭化水素系溶媒、ルイス塩基、及び2−メチル−1,3−ブタジエンを含む混合物を調製した後、有機活性金属を添加して重合反応を開始させて、2−メチル−1,3−ブタジエンの重合体ブロックAを生成させ、次いで、共役ジエンと芳香族ビニルとの混合物を添加して更に重合する請求項4記載の相溶化剤の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の相溶化剤と、2種以上のジエン系ゴムとを含有することを特徴とするゴム組成物。
- ジエン系ゴムが、前記ブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(X)と、共重合体ブロックBと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(Y)とを含むものである請求項6記載のゴム組成物。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の相溶化剤と、2種以上のジエン系ゴムとを混合してゴム組成物を製造するに際し、ジエン系ゴムとして、ブロック共重合体中の重合体ブロックAと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(X)と、共重合体ブロックBと相溶化する少なくとも一種のジエン系ゴム(Y)とを用い、先ず、該相溶化剤と、ジエン系ゴム中のジエン系ゴム(X)成分及びジエン系ゴム(Y)成分のいずれか一方と混合した後、他方と混合することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
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