JP3681574B2 - ポリアルキレンナフタレート組成物、その製造方法及びフイルム - Google Patents

ポリアルキレンナフタレート組成物、その製造方法及びフイルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフイルム用ポリアルキレンナフタレート組成物、フイルムおよびそれらの製造方法に関し、さらに詳しくは、フイルム用ポリアルキレンナフタレート組成物を製造するに際し、アンチモン化合物およびエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分を特定割合含有したポリアルキレンナフタレート組成物、それからなるフイルムおよびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリアルキレンナフタレート、中でもポリエチレンナフタレートは優れた物理的、化学的性質を有することから、繊維、フイルム、樹脂等に利用されている。中でもポリエチレンナフタレートフイルムは、強度、耐熱性、耐薬品性等の諸特性とコストを両立させるポリマーとして、写真用フイルム、磁気テープ用フイルムのベースフイルムなどに使用されている。
【0003】
ポリエチレンナフタレートフイルムはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフイルムと同様の方法により製膜製造される。
【0004】
ポリエステルフイルムは通常、押出し口金より溶融押出しされたフイルム状ポリエステル溶融物を回転冷却ドラム表面で急冷した後、縦、横方向に延伸して製造される。この場合フイルムの表面欠点を無くし厚みの均一性を高める為には、溶融押出しされたフイルム状ポリエステルと回転冷却ドラムの表面との密着性を高める必要がある。その方法として、押出し口金と回転冷却ドラムの表面との間にワイヤー状の金属電極(以下、静電ワイヤーという)を設けて該フイルム状溶融物の表面に静電荷を印加させる方法(以下、静電キャスト法という)が知られている。
【0005】
フイルム製膜において生産性を高めて製造コストを低減することは、フイルム品質の向上とともに重要な課題であるが、そのためには前記回転冷却ドラムの周速を速くして製膜速度を向上させる事が最も効果的な方法である。しかし、前記静電キャスト法において回転冷却ドラムの周速を速めていくとフイルム状物表面への単位面積静電荷量が少なくなり回転冷却ドラムとの密着性が低下し、フイルム表面上の表面欠点を生じさせたり、フイルム厚みが不均一になったりするなどの問題が生じる。この密着性を高めるべく前記電極に印加する電圧を高めて溶融ポリエステル上に析出させる静電荷量を多くする方法を講じることもできるが、印加電圧を高めすぎると電極と回転冷却ドラムとの間にアーク放電が生じ、冷却ドラム面上のフイルム状物が破壊され、冷却ドラム表面にも損傷を与える事がある。したがって、電極に印加する電圧はある程度以上に高める事は実質上不可能である。
【0006】
このような静電キャスト法の限界を克服し、製膜速度を向上させて高効率でポリエステルフイルムを製造する方法として、溶融ポリエステルの比抵抗を下げる方法が種々提案されている。
【0007】
例えば、二官能性カルボン酸成分に対し0.1〜45ミリモル%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を重合鎖体中に含有し溶融フイルムの交流体積抵抗率の値が6.5×108Ωcm以下のポリエステルを使用する方法(特公平7−5675号公報)等が提案されている。
【0008】
また、一般にポリエステルの製造では通常触媒が用いられるが、特にアンチモン化合物は重合速度が速く、得られるポリエステルの熱安定性、末端カルボキシル基量、軟化点等の諸特性に優れ、広く用いられているが、アンチモン化合物はポリマー及びフイルムの製造過程で析出する事が多く、析出粒子がフイルム表面に小さい突起を形成する欠点を有する事が知られている(特開平8−53541号公報)。
【0009】
一方ポリエチレンナフタレートフイルムの製造において、触媒成分の析出によるフイルム表面の微細な凹凸の発生を抑制し、表面平坦性に優れたフイルムを得る事、および製膜時の静電密着性に優れたフイルムを得る事を目的として、ポリエチレンナルタレート中にカルシウム化合物、マグネシウム化合物、リン化合物およびアンチモン化合物を特定量および特定比率で添加する方法が、特開平8−104744号公報に記載されている。
【0010】
しかしながら、前記提案の触媒成分の選択およびその添加割合の適正化技術によっても、触媒成分の析出による微小突起の存在およびそれに基づく障害を十分に防ぐことは困難であることが判った。
【0011】
特にフイルムの平坦性及び均一性が要求される蒸着ビデオ用テープに代表される高密度磁気記録媒体用フイルムにおいては、このような微小突起が存在するとエラーの原因となるなど好ましくない。
【0012】
またフイルムの製膜時において、生産性向上を目的として製膜速度を上昇させた場合に、特開平8−104744号公報提案の条件では、静電密着性が不十分であり、工業的に安定し製膜することが困難であることが判った。
【0013】
一方で、そのような形成品を得る成形工程あるいは製品自体を取り扱う際に滑り性不良による作業性、生産性の悪化、製品価値の低下といったトラブルが生じることが知られている。
【0014】
このような問題に対して、熱可塑性樹脂中に微粒子を存在せしめて成形品の表面に適度の凹凸を付与し、易滑性を向上させる方法が提案され、微粒子として例えば、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、カオリナイトなどの無機粒子や、架橋ポリスチレン等の架橋高分子粒子などの有機微粒子が採用されている。
中でもシリカは、価格、粒度、ハンドリング等の点で好ましい無機粒子の一つである。
【0015】
シリカをはじめ微粒子を添加する場合には、目的のフイルム品質を得る為に、種々の性質の粒子、例えば形状、ポリマー親和性、細孔容積等を考慮し添加しなければならない。
【0016】
特にフイルムの超平坦性及び均一性が要求される蒸着ビデオ用テープに代表される高密度磁気記録媒体用フイルムにおいては、フイルムの超平坦性および表面の均一性を達成する為に、特定の不活性微粒子を均一に分散させ、同時に不活性微粒子以外の粒子の析出を抑制し、表面を超平坦かつ均一にし、滑り性、走行耐久性を併せ持たせる必要があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、アンチモン化合物を触媒として使用してポリアルキレンナフタレートフイルムを製造する場合、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を添加すると、その濃度に比例してフイルム中の還元アンチモンと考えられる微小析出粒子が増大することを見出した。
【0018】
かくしてアンチモン化合物およびエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩の濃度および両者の割合を適正化することにより得られたポリアルキレンナフタレートを用いることにより、静電キャスト法によりフイルムを製造する場合の冷却ドラム上への密着性に優れ、高速の巻取り速度が達成され、しかも安定した製膜生産性が得られることが見出された。しかも得られたフイルムは、表面の平坦性均一性に優れ、高密度磁気記録媒体用に適したフイルムであることを見出し、本発明に到達した。
【0019】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリアルキレンナフタレ−ト及び平均粒径0.01〜0.5μmの不活性微粒子からなる組成物であり、該不活性微粒子の含有量は、ポリアルキレンナフタレートに対し0.01〜10重量%であり、かつ該ポリアルキレンナフタレートは、アンチモン化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分を各々下記式(1)、(2)
1≦Sb≦80 (1)
0.001≦S/Sb≦0.4 (2)
(上式中、Sb,Sは各々、アンチモン化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)を満足する量を含有することを特徴とするフイルム用ポリアルキレンナフタレート組成物である。
【0020】
また本発明は、ポリアルキレンナフタレ−ト及び平均粒径0.01〜0.5μmの不活性微粒子からなる組成物の製造方法であって、ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸とし、そのエステル形成性誘導体と、脂肪族グリコールを主たるグリコールとするグリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで重縮合反応せしめポリアルキレンナフタレ−トを製造する際に、該重縮合反応開始前に、アンチモン化合物およびエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分を添加することを特徴とするフイルム用ポリアルキレンナフタレート組成物の製造方法である。
【0021】
また本発明は上記のポリアルキレンナフタレート組成物から形成された二軸配向フイルム、高密度磁気記録媒体を包含する。
【0022】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明におけるポリアルキレンナフタレートは、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。ここで、主たるとは、ポリエステルを構成する全繰り返し単位の少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%がアルキレンナフタレート単位であることを意味する。
【0023】
かかるポリアルキレンナフタレートは実質的に線状であり、フイルム形成性、特に溶融形成による優れたフイルム形成性を有する。
【0024】
ここでナフタレンジカルボン酸としては、直接エステル化法による場合、好適には2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等が例示でき、エステル交換法によって本ポリマーを製造する場合には、これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルを原料として用いる事ができる。
【0025】
これらの低級アルキルエステルとしては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等を挙げることができ、中でも工業的に容易に入手できる2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルは好ましいものの一つである。
【0026】
また、本発明において脂肪族グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の如き炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができ、中でもエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、エチレングリコールが最も好ましい。
【0027】
ポリアルキレンナフタレートは、その特徴が損なわれない範囲で、少量の共重合成分が共重合したコポリマーであってもかまわない。
【0028】
この第三成分としては、グリコール成分として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを挙げることができ、中でも好ましいのは、ジエチレングリコールである。
【0029】
ジエチレングリコール単位の好ましい含有量は、ポリアルキレンナフタレート重量に対して0.4〜3重量%である。ジエチレングリコールが0.4重量%未満の場合は、ポリマーの結晶化が抑制されず、溶融エネルギーが大きくなるため、フイルム形成時未溶融ポリマーが残留し、フイルム表面に粗大突起を形成するので好ましくない。一方3重量%を超えると、フイルム形成後の強度、例えばヤング率が低下し、耐久性に劣ったものとなるので好ましくない。
【0030】
また本発明において、第三成分としてのジカルボン酸成分に、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体などが例示できる。これらの中で好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらのエステル形成性誘導体(例えば、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチルなど)である。テレフタル酸、イソフタル酸成分は、全ジカルボン酸成分の20モル%以下とすることが本発明の効果を損ねないため好ましい。特に好ましくは、10モル%以下である。
【0031】
また本発明におけるポリアルキレンナフタレートには本発明の効果を損なわない限り、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を含んでいてもかまわない。
【0032】
本発明のポリアルキレンナフタレートはその全繰り返し単位の少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%がエチレン−2,6−ナフタレートまたはエチレン−2,7−ナフタレートであるのが特に有利である。
【0033】
さらに、本発明におけるポリアルキレンナフタレートには、表面平坦性、乾熱劣化性などの物性を損なわない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、遮光剤等の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0034】
本発明におけるポリアルキレンナフタレートはそれ自体公知の方法で製造することができる。好ましい製造法として、例えば、ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体及び脂肪族グリコールをエステル交換触媒の存在下、加熱しエステル交換反応を行い、次いで重縮合触媒存在下に重縮合反応を行い製造する方法が挙げられる。
【0035】
上記ポリエステルとしては、o−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が約0.4〜約0.9のものが好ましく、0.45〜0.75のものが特に好ましい(以降特に断らない限り、固有粘度はo−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた値とする)。
【0036】
本発明において、ポリアルキレンナフタレート中のアンチモン化合物の量は、下記式(1)を満たす事が必要がある。
1≦Sb≦80 (1)
(上式中、Sbアンチモン化合物の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)
【0037】
より好ましいSb量としては、5〜70ミリモル%、特に好ましくは10〜60ミリモル%である。この量が、80ミリモル%を超えると、アンチモン起因の黒色異物が発生しやすくなり、フイルムとしたときの表面平坦性が悪化し好ましくない。また、Sb量があまりに少ないと重合反応が進まないため好ましくない。
【0038】
本発明において、使用する事のできるアンチモン化合物としては特に限定はないが、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等を例示することができる。その中でも、三酸化アンチモンが特に好ましい。
【0039】
本発明において、アンチモン化合物はエステル交換反応開始前に添加しても、エステル交換反応中でも、エステル化反応終了後、重縮合反応の直前に添加してもかまわない。
【0040】
本発明において、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分は、次式(2)を満たす必要がある。
0.001≦S/Sb≦0.4 (2)
(上式中、Sb,Sは各々、アンチモン化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)
【0041】
より好ましいS/Sbの比は0.001〜3であり、特に好ましくは、0.01〜2の範囲である。この比が、0.4を超える場合には、アンチモン起因の黒色異物が発生しやすくなり、フイルムとしたときの表面平坦性が悪化し好ましくない。また、0.001未満の場合には、静電密着性が悪くなり、製膜生産性が悪化してしまう。
【0042】
本発明において用いることのできるエステル形成性官能基を有するスルホン酸ホスホニウム塩としては、例えば下記式
【0043】
【化1】
Figure 0003681574
【0044】
(ここで、Aは炭素数6〜18の芳香環を含む基であり、Y1及びY2は同一もしくは異なり、水素原子またはエステル形成性官能基であり(ただし、Y1及びY2が同時に水素原子である事はない)、そしてnは1または2であり、そしてR1、R2、R3およびR4は同一もしくは異なり、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基または炭素数6〜12のアリール基である)で表わされる化合物が好ましく挙げられる。
【0045】
上記式において、Aは炭素数6〜18の芳香環を含む基であり、例えばベンゼン骨格、ナフタレン骨格あるいはビフェニル骨格を含む基が、好ましい基として挙げられる。かかる芳香環は、Y1、Y2及びスルホン酸4級ホスホニウム塩基のほかに、例えば炭素数1〜12のアルキル基等で芳香核水素が置換されいてもよい。
【0046】
1及びY2は水素原子またはエステル形成性官能基であるが、同時に水素原子である事はない。エステル形成性官能基としては、例えば−COOH、−COOR’、−OCOR’、−(CH2nOH、−(OCH2nOH等を挙げることができる。これらの基中、R’は炭素数1〜4の低級アルキル基またはフェニル基であり、nは1〜10の整数である。R’としてはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル等を好ましいものとして挙げることができる。
【0047】
また、スルホン酸4級ホスホニウム塩の塩基部分P+1234を構成する R1、R2、R3およびR4は、同一もしくは互いに異なり、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、ステアリルなどを挙げることができる。また炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル等を挙げることができる。
【0048】
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の好ましい具体例としては、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ビスフェノールA-3,3-ジ(スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩)、2,6-ジカルボキシナフタレン-4-スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等を挙げることができる。上記スルホン酸4級ホスホニウム塩は一種のみを単独で用いても二種以上併用してもよい。
【0049】
本発明のポリアルキレンナフタレートにおいて、溶融時の交流体積抵抗率が2.0×108Ωcm以下となるように上記スルホン酸4級ホスホニウム塩をポリアルキレンナフタレート中に含有させることが好ましい。溶融時の交流体積抵抗率が2.0×108Ωcm以下のポリアルキレンナフタレートであれば、比較的速く回転する冷却ドラム上にも密着するに十分な電荷量を付与でき、本発明のひとつの目的である製膜速度の向上を達成することができる。
【0050】
また本発明において、上記スルホン酸4級ホスホニウム塩は、ポリアルキレンナフタレート主鎖中にまたは末端に含有、つまり、共重合されていても、または、単にポリマー中に混合されているだけでもかまわない。どちらの状態で含有されていたとしても、製膜速度の向上は達成することができる。
【0051】
本発明において、かかるポリアルキレンナフタレートは、溶融時の交流体積抵抗率の値が2.0×108〜6.0×106Ωcmの範囲にあることが好ましい。
【0052】
本発明において、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩をポリアルキレンナフタレートに含有させる方法としては、従来から知られている方法又は当業界に蓄積されている方法で効率よく製造できる方法であればよく、前述したポリアルキレンナフタレートの合成が終了する迄の任意の段階で、添加することできる。好ましくは、ポリアルキレンナフタレートの重合における重縮合反応開始前に添加することである。
【0053】
また、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を前記割合よりも高濃度で含有するポリアルキレンナフタレートを一旦製造し、フイルムの製造段階において、スルホン酸4級ホスホニウム塩成分を含有しないポリアルキレンナフタレートとブレンドし、所定の割合の含有量に調整した後にフイルム溶融成形する方法も採用することもできる。
【0054】
本発明において、カルシウム化合物、マグネシウム化合物及びリン化合物の使用量は、下記式(3)〜(5)を同時に満たす事が好ましい。
【0055】
【数1】
10≦(Mg+Ca)≦120 (3)
0.5≦Mg/Ca≦10 (4)
0.5≦(Mg+Ca)/P≦10 (5)
(上式中、Mg、Ca、Pは各々、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を含む全リン成分の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)
【0056】
本発明において、使用できるカルシウム化合物及びマグネシウム化合物としては、Ca及びMgの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく、特に酢酸塩すなわち酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムが好ましい。
【0057】
本発明において、カルシウム化合物及びマグネシウム化合物の添加時期はポリエステル製造工程のどの段階で添加してもかまわない。
【0058】
カルシウム化合物及びマグネシウム化合物は、本発明中のポリアルキレンナンフタレートにおいて、ポリマー溶融時の比抵抗を低下させる効果を有するが、製造段階において、ナフタレンジカルボン酸ジメチルと脂肪族グリコールを用いるエステル交換反応を採用する場合にはエステル交換反応触媒としても用いることができる。
【0059】
そのために、エステル交換反応触媒としても用いるときは、エステル交換反応開始前に添加することになる。
【0060】
エステル交換触媒として機能させる必要が無ければ、特に限定されないが、カルシウム化合物、マグネシウム化合物の添加時期は反応ポリマーの固有粘度が0.2に到達する迄に行うことが、該化合物をポリマー中に均一に分散させる事が容易であるために、好ましい方法として例示できる。なお、添加順序は両化合物を同時添加または別々に時間をずらして添加してもかまわない。
【0061】
本発明においてカルシウム化合物、マグネシウム化合物の添加量は、例えばエステル交換法でポリアルキレンナフタレートを得る場合、全ジカルボン酸成分に対しカルシウム及びマグネシウムの含有量(Mg+Ca)が、合計10〜120ミリモル%、好ましくは20〜110ミリモル%、特に好ましくは30〜100ミリモル%となるよう反応系に可溶なマグネシウム化合物及びカルシウム化合物をエステル交換触媒として添加する。以下ミリモル%とは、全ジカルボン酸成分に対する各元素のミリモル%単位の量を示す。
【0062】
この量が120ミリモル%を超えると触媒残査による析出粒子の影響でフイルムに成形したときに表面平坦性が悪化し好ましくなく、他方10ミリモル%未満ではエステル交換反応が不十分となるばかりか、その後の重合反応も遅く好ましくない。
【0063】
また、カルシウムに対するマグネシウムのモル比(Mg/Ca)は、0.5〜10.0がより好ましい。特に好ましくは2.0〜8.0である。この比が0.5以下では、触媒残査による析出粒子の影響でフイルムに成形した場合に表面平坦性が悪化してしまう。
また、10.0を超える場合には、フイルムとした際の処特性が悪化してしまい好ましくない。
【0064】
さらに、エステル交換反応触媒の一部を失活させる為にリン化合物を添加するが、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分を含めた全リン元素添加量に対する、エステル交換反応触媒すなわちカルシウム及びマグネシウム添加量の合計のモル比((Mg+Ca)/P)は、0.5〜10が好ましく、1.0〜7.0がより好ましい。特に好ましくは2.0〜7.0である。
【0065】
この添加量の比が、上限を超えると触媒残査による析出粒子の影響でフイルムに形成した場合に表面平坦性が悪化し好ましくなく、他方下限未満ではエステル交換反応触媒に対し過剰量のリン化合物により、重合触媒のアンチモンが失活されてしまい、実質、重合反応が長くなり生産性が低下するので好ましくない。
【0066】
本発明において、上記のリン化合物の添加時期は、エステル交換反応またはエステル化反応が実質的に終了した後、添加する事が好ましい。添加に際しては、一括または2回以上に分割して添加しても良い。
【0067】
本発明において、使用する事のできるリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、リン酸などが好ましくあげられる。さらに好ましくはトリメチルホスフェートである。
【0068】
また、本発明において、本発明の効果を妨げない範囲で、微量の他の金属が含まれていてもよく、例えば、Zn、Co、Mn、K、Na等の元素を含んでいてもよい。
【0069】
本発明において使用される不活性微粒子は、平均粒径が0.01〜0.5μmである事が必要である。より好ましくは0.03〜0.2μmである。平均粒径が0.01μm未満ではフイルムとしたときに、滑り性や耐摩耗性が不十分となってしまう。また平均粒径が0.5μm以上の場合には表面粗度が大きすぎ、フイルム平坦性を損ねてしまい、高密度記録用磁気フイルムに必要とされる超平坦性が得られなくなってしまう。
【0070】
この時、使用する不活性粒子は1種類のみでも2種類以上用いてもかまわない。2種類以上用いる場合には、異なる種類の不活性微粒子を用いても、異なる粒径の粒子を用いても、あるいは種類も粒径も異なる不活性粒子の組み合わせであってもかまわない。
【0071】
また、本発明において不活性微粒子のポリアルキレンナフタレートに対する添加量は0.01〜10重量%が必要であり、好ましくは0.01〜5重量%である。この量が10重量%を超えると十分な分散性が得られない。
逆に0.01重量%未満であると、粒子添加の効果が十分に発現しない。
【0072】
本発明において使用できる不活性微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、カオリナイト、タルクなどの無機粒子、また有機微粒子としては、架橋ポリスチレンなどの架橋高分子粒子などをあげることができる。
【0073】
さらには、その表面にポリマー親和性がある水酸基を持つ不活性無機粒子、例えば、シリカ、チタニア、アルミナなどは好ましい。
【0074】
これらの粒子に関し、粒子形状等特に限定はないが、フイルム表面をより平坦にかつ均一にする為には、単分散の球状無機粒子を用いることが、特に好ましい。
【0075】
また、単分散の球状無機粒子を用いる場合には、下記式(6)で定義される、体積球状係数φが0.30〜π/6の範囲にあるものであることが好ましい。
【0076】
【数2】
φ=V/d3 (6)
(ここで、Vは粒子の体積(μm3)、dは投影面における最大径(μm))
【0077】
また、単分散の球状無機粒子を使用する際には、細孔容積が1.0ml/g以下であることが好ましい。細孔容積が1.0ml/gを超える場合には、粒子が解砕しやすくなってしまい、製膜工程での解砕や、製品とした際の走行耐久性などが悪化してしまうため、好ましくない。
【0078】
また、単分散の球状無機粒子を使用する際には、比表面積は100m2/g以下であることが好ましい。比表面積が100m2/gを超える場合には、粒子間相互作用が増大してしまう為、粒子間凝集がおきやすくなってしまい、粒子分散性が悪化してしまう。
【0079】
本発明において、粒径、形状、細孔容積及び比表面積が前述の条件を満たす球状シリカ粒子を用いる場合には特に効果的であり好ましい。
【0080】
さらに、得られたポリアルキレンフタレート組成物中の不活性微粒子は、均一に分散しており、従って、該組成物を延伸フイルムにした場合には、フイルム中での粒子の解砕の少なく、均一な凹凸表面が得られ、易滑性、耐耗性に優れたフイルムが得られる。
【0081】
本発明で得られるポリアルキレンナフタレート組成物は、触媒に起因するポリマー不溶物の量が無いか極めて少なく、粒子分散性も良く、しかもフイルム製膜性に優れる、特に高密度磁気記録媒体用フイルムの成形用原料として有用である。
【0082】
本発明のポリアルキレンナフタレート組成物をフイルムに成形する手段としては公知の方法を用いることができる。例えば乾燥したポリアルキレンナフタレートを、[Tm]〜[Tm+65]℃(Tmはポリアルキレンナフタレートの融点℃である)の温度範囲でシート状に溶融押出し、急冷固化して未延伸フイルム(シート)を得る。次いで該未延伸フイルムを縦方向に延伸した後、横方向に延伸する、いわゆる縦・横逐次二軸延伸法あるいは、この順序を逆にして延伸する方法などにより延伸する。この延伸温度、延伸倍率等はそれ自体公知の手段および条件から選ぶことができる。
【0083】
本発明によれば表面平坦性に優れたフイルムを得ることができ、さらにはその静電密着性が良好なことから、フイルム成形が容易で、早い巻取り速度で安定に成形でき、従って生産性の高いポリアルキレンナフタレートを得ることができる。
【0084】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における種々の物性および特性の測定方法、定義は以下の通りである。
【0085】
(1)平坦性
フイルム小片の表面にアルミスパッターを施し、光学顕微鏡にて微分干渉光を照射しつつ倍率200倍で3mm×3mmの範囲を観察する。そして突起と認識できる粒子をカウントし、フイルムの平坦性を評価する。
その際不活性粒子に基づく突起はカウントから除外する。すなわち不活性微粒子を含む場合の突起のカウントは下記方法にしたがって求めた値である。
突起と認識できる粒子をマーキングしカウントした。
【0086】
その後、フイルム表面のアルミニウムを水酸化ナトリウム水溶液にて除外し、さらにエイコーエンジニアリング(株)製スパッターリング装置(1B−2型イオンコーター装置)にて、フイルム表面を段階的にイオンエッチングしていく。各段階ごとにカーボン蒸着を施し、走査型電子顕微鏡にてマーキングした粒子を観察し、不活性微粒子が関与する粒子かどうかを確認し、不活性微粒子因の粒子(例えば不活性微粒子の凝集粒子等)である場合には、上記カウントから除いた値で平坦性を評価する。
<4段階判定>
◎ 突起数が20個/mm2以下
○ 突起数が21〜40個/mm2
× 突起数が41〜99個/mm2
×× 突起数が100個/mm2以上
【0091】
(3)静電密着性
ポリマーを180℃で乾燥した後305℃で溶融押出し、40℃に保持したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸フイルムを巻き取る際、静電ピンニング法にてフイルム厚みむらが小さく、安定して巻き取れる速度により、静電密着性を評価する。
○ 巻取り速度40m/分超
△ 巻取り速度30〜40m/分
× 巻取り速度30m/分未満
【0092】
(4)分散性
試料フイルム小片を走査型電子務徴鏡用試料台に固定し、エイコーエンジニアリング(株)製スバッターリング装置(1B−2型イオンコーター装置)を用いてフイルム表面に下記条件にてイオンエッチング処理を施す。
条件は、シリンダージャー内に試料を設置し、約5×10^(-2)To r rの真空状態まで其空度を上げ、電圧0.9OkV、電流5mAにて約5分間イオンエッチングを実施する。更に同装置にてフイルム表面に金スパッターを施し、走査型電子縮微鏡にて5000倍で、5μm×10μmの範囲を観察し、粒子の凝集状態を観察し評価する。
○ 測定面積内全粒子中の15%以下が凝集粒子として存在
△ 測定面積内全粒子中の15〜30%が凝集粒子として存在
× 測定面積内全粒子中の30%を超える粒子が凝集粒子として存在
【0093】
(5)粒子の平均粒径
粒子の粒径の測定は、次の手法にて行う。
【0094】
不活性無機粒子粒子を媒体に分散させた分散液に、水を加えて低濃度の溶液とした後、島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(CAPA−500)を用いて、平均粒径を測定した。
【0095】
(6)製膜生産安定性
フイルム巻取り速度50m/分でフイルム厚み5μmのフイルムを製造した場合の、厚みむらを評価することによって製膜生産安定性の目安とした。すなわち、得られたフイルムを幅方向に2mのサンプルフイルム片を切り出し、アンリツ製電子マイクロメーターで厚みを測定し、厚みの変化および平均値を求め下記3段階の評価で、製膜生産安定性を評価した。
<3段階評価>
◎平均厚みと最大もしくは最小の厚みの差が、0.3μm未満
○平均厚みと最大もしくは最小の厚みの差が、0.3μm以上0.5μm未満
×平均厚みと最大もしくは最小の厚みの差が、0.5μm以上
【0096】
(7)大突起数
アルミニウムを0.5μm厚みに蒸着したフイルムの表面を、株式会社ニコン(NIKON CORP.)製の光学顕微鏡、商品名「OPTIPHOT」を用いて、微分干渉法により倍率200倍にて1cm×5cmの範囲を観察し、長径が10μm以上の大きさの突起を単位1cm2当たりの個数でカウントし、評価する。
<3段階判定>
◎ 大突起数が10個/cm2未満
○ 大突起数が10〜20個/cm2
× 大突起数が20個/cm2
【0097】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル100部とエチレングリコール60部、酢酸マグネシウム4水塩0.045部及び酢酸カルシウム1水塩0.009部をエステル交換反応触媒として用いて、さらにこの時、ポリマー中のジエチレングリコールの含有量が0.7重量%となるように添加した。
【0098】
常法にしたがってエステル交換反応させ、その後トリメチルホスフェート0.011部を添加し、実質的にエステル交換反応を終了させた。
【0099】
次いで三酸化アンチモン0.023部、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.002部を加えた。更に平均粒径0.06μmの球状シリカをポリマー中の濃度が0.05重量%となるように添加した。その後、該混合物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し26.7Pa以下の高真空下にて常法通り重縮合反応を行って固有粘度0.61のポリエステルを得た。このポリエステルの290℃における交流体積抵抗率の値は3.1×107Ωcmであった。
【0100】
このポリエチレンナフタレートのペレットを170℃で3時間乾燥後、押出し機ホッパーに供給し、溶融温度290℃で1mmのスリット状ダイを通して200μmに溶融押出しし、線状電極を用いて表面仕上げ0.3s程度、表面温度20℃の回転冷却ドラム上に密着固化した。この時、冷却ドラムの速度を徐々に高めて、密着不良因に起因するフイルムの表面欠点を生じることなく、安定に冷却フイルムが製造できる最高のキャスティング速度は50m/分であった。次いで、この未延伸フイルムを75℃にて余熱し、低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒータ1本にて加熱して3.6倍に延伸し、つづいてステンターに供給し、105℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸延伸フイルムを230℃の温度で5秒間熱固定処理し、厚み14μmの熱固定二軸延伸フイルムを得た。
このフイルムの特性を表1、2、3に示す。
【0101】
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸のビス-β-ヒドロキシエチルエステル120部と2,6−ナフタレンジカルボン酸85部にエチレングリコール30部と3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.01部の混合物を加え、さらに、ジエチレングリコールのポリマー中の含有量が1.0重量%となるように添加し、210〜230℃の温度でエステル化反応を行った。反応により生成する水の量が13部となった時点で反応終了とし、酢酸マグネシウム4水塩0.045部及び酢酸カルシウム1水塩0.009部およびトリメチルホスフェート0.02部を添加して10分間撹拌した後、および三酸化アンチモン0.046部を添加した。更に平均粒径0.06μmの球状シリカをポリマー中の濃度が0.05重量%となるように添加した。その後、反応生成物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し26.7Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って固有粘度0.61のポリエステルを得た。このポリエステルの290℃における交流体積抵抗率の値は3.1×107Ωcmであった。
【0102】
得られたポリエチレンナフタレートを実施例1と同様に製膜を行い、ポリエチレンナフタレートフイルムを得た。
このフイルムの特性を表1、2、3に示す。
【0103】
[実施例3]
実施例1において、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル91部、イソフタル酸ジメチルエステル9部、エチレングリコール60部を、とする以外は実施例1と同様に行い、ポリエチレンナフタレートフイルムを得た。このフイルムの特性を表1、2、3に示す。
【0104】
[実施例4〜10]
実施例1において3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムリン酸トリメチルの量、三酸化アンチモン、添加する滑剤の種類と添加量及び平均粒径を表1に示す様に変更する以外は実施例1と同様に行い、ポリエチレンナフタレートフイルムを得た。このフイルムの特性を表1、2、3に示す。
【0105】
[実施例11、12]
実施例3において、ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分とその量及び滑剤の平均粒径を表1に示す様に変更する以外は実施例3と同様に行い、ポリエチレンナフタレートフイルムを得た。このフイルムの特性を表1、2、3に示す
[比較例1〜6]
実施例1において3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、酢酸マグネシウムリン酸トリメチル、ジエチレングリコール、三酸化アンチモンの量、添加する滑剤の種類、平均粒径及び添加量を表1に示す様に変更する以外は実施例1と同様に行い、ポリエチレンナフタレートフイルムを得た。このフイルムの特性を表1、2、3に示す。
【0106】
【表1】
Figure 0003681574
【0107】
【表2】
Figure 0003681574
【0108】
【表3】
Figure 0003681574
【0109】
表1、表2及び表3の結果から明らかなように、本発明の効果は優れたものであった。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、静電密着性に優れ、磁気記録媒体、特に高密度磁気記録媒体用フイルムの成形に有用なポリアルキレンナフタレートを効率よく製造することができる。

Claims (13)

  1. ナフタレンジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とし脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリアルキレンナフタレ−ト及び平均粒径0.01〜0.5μmの不活性微粒子からなる組成物であり、該不活性微粒子の含有量は、ポリアルキレンナフタレートに対し0.01〜10重量%であり、かつ該ポリアルキレンナフタレートは、アンチモン化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分を各々下記式(1)、(2)
    1≦Sb≦80 (1)
    0.001≦S/Sb≦0.4 (2)
    (上式中、Sb,Sは各々、アンチモン化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩成分の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)を満足する量を含有することを特徴とするフイルム用ポリアルキレンナフタレート組成物。
  2. 不活性微粒子が、無機微粒子である請求項1に記載の組成物。
  3. 不活性微粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ微粒子である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 不活性微粒子が、細孔容積が1.0ml/g以下、比表面積が100m/g以下、かつ単分散の球状無機微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 不活性微粒子が、単分散の球状シリカ微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. マグネシウム化合物、カルシウム化合物及びリン化合物を各々、下記式(3)〜(5)
    10≦(Mg+Ca)≦120 (3)
    0.5≦Mg/Ca≦10 (4)
    0.5≦(Mg+Ca)/P≦10 (5)
    (上式中、Mg、Ca、Pは各々、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、エステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を含む全リン成分の、ポリアルキレンナフタレートを形成する全ジカルボン酸成分当たりのモル比を示し、単位はミリモル%)
    を満足する量を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
  7. 脂肪族グリコール成分が、エチレングリコール成分、プロピレングリコール成分及びブチレングリコール成分よりなる群より選ばれた少なくとも一種のグリコール成分である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. ポリアルキレンナフタレートが、ポリエチレンナフタレートである請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
  9. テレフタル酸及び/又はイソフタル酸の含有量が、全ジカルボン酸成分に対し20モル%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
  10. 該ポリアルキレンナフタレートにおいて、ジエチレングリコール単位を0.4〜3重量%含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかの項に記載の組成物から形成された二軸配向フイルム。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の組成物から形成されたフイルムであり、フイルム表面上に存在する、微分干渉法による長径10μm以上の大突起の数が10個/cm以下であることを特徴とする二軸配向フイルム。
  13. 請求項1〜10のいずれかの項に記載の組成物から形成された二軸配向フイルムをベースフイルムとする高密度磁気記録媒体。
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