JP3790419B2 - ポリエステル樹脂組成物、それを用いたフィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物、それを用いたフィルムおよびポリエステル樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエステルワックスを含むポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれからなるポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、高密度磁気記録媒体のベースフィルムに有用なポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれからなるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成せしめた金属薄膜型磁気記録媒体、また、メタル粉や酸化鉄粉などの針状磁性粉体を2μm以下に塗布した薄層塗膜型磁気記録媒体の開発実用化が進められている。
【0003】
前者の例としては、特開昭54−147010号公報には、非磁性材よりなる基材上に付着された第1のCo薄膜磁性層上に、非磁性材層を介して前記第1のCo薄膜磁性層の厚みより大なる厚みの第2のCo薄膜磁性層を形成した磁気記録媒体が開示されており、また特開昭52−134706号公報には、Co−Cr合金からなる垂直磁気記録媒体が開示されている。また、後者の例としては、電子通信学会技術報告MR94−78(1995−02)には、極薄層塗布型磁気記録媒体による高密度磁気記録が開示れている。
【0004】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は記録密度が低くて記録波長も長いため、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚いものであった、これに対して、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜は、厚みが0.2μm以下と非常に薄い。また、近年では、塗布型でも極薄層塗布型といって、非磁性の下地層を設けるものの該下地層を除いた塗布層、すなわち、磁性層自体の厚みが0.13μmのものが提供され、非常に薄くなってきている。
【0005】
このため、上記の高密度磁気記録媒体においては、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に大きな影響を及ぼし、特に金属薄膜型の磁気記録媒体の場合には、非磁性支持体の表面状態がそのまま磁性層(磁気記録層)表面の凹凸として発現してしまう。
【0006】
さらに金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、実際に使用されるときの重大な問題点として、金属薄膜面の走行性がある。磁性体粉体を有機高分子バインダー中に混入させてベースフィルムに塗布してなる塗布型磁気記録媒体の場合には、該バインダー中に潤滑剤を分散させて磁性層面の走行性を向上させることができるが、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、このような対策をとることができない。そのため、金属薄膜型磁気記録媒体の場合は、走行性を安定して保つのは非常に難しく、特に高温高湿条件下の走行性が劣るなどの欠点を有している。さらに、このような走行性の欠点は、繰り返し使用時の出力低下が、従来の塗布型磁気記録媒体と比べて大きいという欠点も引起す場合がある。
【0007】
ところで、非磁性支持体(ベースフィルム)の製膜、加工工程での搬送・傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルム表面が平滑すぎると、フィルム−フィルム間の相互の滑り性が悪化して、ブロッキング現象の発生やロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)の悪化を引起し、ひいては製品歩留りの低下や製品の製造コストの上昇といった不具合を生ずる。従って、生産性という観点では、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面はできるだけ粗いことが好ましい。
【0008】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性の観点から平滑であることが要求され、反面、ハンドリング性、フィルムコストの観点からは粗いことが要求される。そこで、優れた品質の高密度磁気記録媒体を製造するには、上記二律背反する性質を同時に満足させることが必要とされる。
【0009】
これらの特性を満足するため、ポリエステル中に不活性粒子を添加する提案(特開平4−351655号公報、特開平4−1224号公報、特開平5−239200号公報)及び、ポリエステル中にエステルワックスを含有させることにより、フィルム表面に潤滑効果を与え、摩擦係数を低減させる提案(特開昭58−206664号公報、特公昭63−4571号公報)がなされている。また、分散常態にあるエステルワックスの平均分散径を2μm未満と均一に且つ良く混錬することで、表面に局部的に析出するオリゴマ−を抑制し、磁気記録テープとしたときの走行耐久性を維持しつつ、ドロップアウトなどの問題をなくすことが特開平11−262992号公報で提案されている。しかし、これらの公報で提案されているように、エステルワックスおよび不活性粒子をポリエステルに含有させて、エステルワックスおよび不活性粒子をポリエステル中に均一に分散させようと高温で混錬させると、得られるポリエステル樹脂組成物の力学特性や白度といった品質が劣化する問題および不活性粒子が凝集して粗大な突起を形成する問題が潜在していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の課題は、上記のエステルワックスおよび不活性粒子をポリエステルに含有させて、エステルワックスおよび不活性粒子をポリエステル中に均一に分散させようと高温で混錬させると、得られるポリエステル樹脂組成物の力学特性や白度といった品質が劣化する問題および不活性粒子が凝集して粗大な突起を形成する問題を解決し、エステルワックスおよび不活性粒子をポリエステル中に均一に分散させながらも、品質の劣化が抑制されたポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び該ポリエステル樹脂組成物からなるフィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エステルワックスおよび不活性粒子をポリエステルに含有させて、これらをポリエステル中に均一に分散させようと高温で混錬すると、得られるポリエステル樹脂組成物の力学特性や白度といった品質が劣化する問題および不活性粒子が凝集して粗大な突起を形成する問題を解決しようと鋭意研究した。その結果、ポリエステル中に含有させるエステルワックスの熱減量率が、300℃に加熱した際にに20重量%以下であるとき、得られるポリエステル樹脂組成物の品質の劣化を抑制でき、しかも、不活性粒子をポリエステル中に均一に分散できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
かくして本発明によれば、300℃に加熱した際の熱減量率が20重量%以下のエステルワックスを0.01〜10重量%含有し、且つ、不活性粒子を0.01〜10重量%含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物が提供される。
【0013】
さらに本発明によれば、上述のポリエステル樹脂組成物に、エステルワックスが多価アルコールと炭素数8以上の脂肪族モノカルボンからなること、エステルワックスが含有アルカリ金属量800ppm以下であることまたは不活性粒子の平均粒径が、0.01〜1μmの範囲で、かつ、不活性粒子の長径を不活性粒子の短径で割った粒径比が、1.2以下であることを具備させたポリエステル樹脂組成物も提供される。
【0014】
さらにまた、本発明によれば、ポリエステル樹脂に、不活性粒子および300℃に加熱した際の熱減量率が20重量%以下であるエステルワックスを、ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、それぞれ0.01〜10重量%の範囲で含有させ、溶融状態で混錬することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法や、上述の樹脂組成物からなるポリエステル層(A)が少なくとも片面に位置するポリエステルフィルム、特にポリエステル層(A)の露出面の水との接触角が70〜90°の範囲であるポリエステルフィルムも提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルで、その中でもアルキレンテレフタレートまたはアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましい。かかるポリエステルは実質的に線状であり、フィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有するものである。
【0016】
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,イソフタル酸,ジフェニルケトンジカルボン酸,アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコール,ペンタメチレングリコール,ヘキサメチレングリコール,デカメチレングリコール等の如き炭素数2〜10のアルキレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールの如き脂肪族ジオール等を挙げることができる。
【0017】
具体的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートのホモポリマー、または、全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸で、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合体が好ましい。
【0018】
なお、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合体を用いる場合は、表面平坦性、乾熱劣化性を損なわないことが必要である。好ましい共重合の酸成分としては、テレフタル酸及びまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の前述の芳香族ジカルボン酸のほか、アジピン酸,セバチン酸,シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。次に好ましい共重合のグリコール成分としては、エチレングリコール以外の前述のグリコールのほか、ハイドロキノン,レゾルシン,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの脂肪族ジオール,1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等も挙げられる。また、本発明の効果を損なわないかぎり、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸,ω−ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合させたものでも良い。さらにまた、実質的に線状である範囲の量で、かつ、本発明の効果を損なわなければ、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸,ペンタエルスリトール等を共重合したものでもよい。
【0019】
本発明におけるエステルワックスについて、以下に詳述する
本発明におけるエステルワックスは、300℃加熱時の熱減量率が20重量%以下であることが必要であり、10重量%以下であることが好ましい。この熱減量率が20重量%を超えると、ポリエステル中での熱安定性が悪く、ポリエステル製造工程では分解を起こし易い問題が生じ、またフィルム化した際は耐ブロッキング効果が減少する等の問題が発生する。なお、本発明におけるエステルワックスとは、ポリエステルに含有させてフィルムとした際に、耐ブロッキング性及び巻き取り性をフィルムに付与できるものであれば特に限定はされない。
【0020】
エステルワックスの合成に用いる多価アルコールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものが好ましく、特に耐熱性の観点から分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。分子中に2個の水酸基を有する好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、分子中に3個の水酸基を有する好ましい多価アルコールとしては、グリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどが挙げられる。また、エステルワックスの合成に用いる脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数が8個以上のものが好ましく、特に炭素数8〜34個のものが好ましい。炭素数が8個未満であると、得られたエステル生成物の耐熱性が不充分になり易い。炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸としては、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む混合物などが挙げられる。さらにまた、上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。これらの中、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリステアレート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0021】
上記、脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスは、脂肪族ジカルボン酸を多価アルコールで触媒の存在下、加熱しながら生成した水を除くことにより、エステル化反応を進め製造することが出来る。また、エステルワックスはその構造中に金属元素を含んでも良く、例えば脂肪族ジカルボン酸を多価アルコールで部分エステル化した後、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。かかるエステルワックスは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ところで、エステルワックスの300℃に加熱した際の熱減量率を20重量%以下にする方法は、例えば、エステルワックス中のアルカリ金属含有量を800ppm以下とすることが好ましい。該アルカリ金属含有量が800ppmを超えるとエステルワックスの耐熱性が不十分なものとなり易い。特に好ましいのは該アルカリ金属含有量が300ppm以下のエステルワックスである。このようなアルカリ金属含有量が800ppm以下のエステルワックスは、前述の多価アルコールまたは脂肪族モノカルボン酸として、原料中のアルカリ金属含有量の少ないものを用いたり、エステルワックス製造時の脱アルカリ金属処理(例えばイオン交換及び吸着処理)またはエステルワックス製造後の洗浄ろ過及び再析出処理等を行うことで製造することができる。
【0023】
また、上記アルカリ金属含有量を800ppm以下とする以外にも、例えば、多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸をエステル化触媒の存在下、脱水エステル化させる際に、エステルワックス生成後の残留未反応物を低減することも好ましい。具体的には、脱水エステル化反応時の脱水を減圧脱水とすることが好ましい。また、ソルビタンエステルを合成する場合では、エステル化触媒としてはアルカリ金属化合物、なかでもナトリウム金属化合物を用いるのもエステルワックス生成後の残留未反応物を低減できるので好ましい。エステルワックスの残留未反応物量の指標としては、それぞれの分子構造によって異なる。例えば、エステルワックスがソルビタントリステアレートの場合では、酸価が14KOHmg/g以下、水酸基価が80KOHmg/g以下であることが好ましい。なお、ソルビタントリステアレートの酸価または水酸基価の下限は、酸化が10KOHmg/g以上、水酸基価が66KOHmg/g以上であることが好ましい。エステルワックスがグリセリントリステアレートの場合では、酸価が3KOHmg/g以下、水酸基価が42KOHmg/g以下であることが好ましい。なお、グリセリントリステアレートの酸価または水酸基価の下限は、酸化が0.5KOHmg/g以上、水酸基価が30KOHmg/g以上であることが好ましい。また、エステルワックスがペンタエリスリトールジステアレートの場合では酸価が8KOHmg/g以下、水酸基価が166KOHmg/g以下が好ましい。なお、ペンタエリスリトールジステアレートの酸価または水酸基価の下限は、酸化が0.5KOHmg/g以上、水酸基価が30KOHmg/g以上であることが好ましい。これらアルカリ金属量と残留未反応物量は、それぞれ単独でも良いが、両方を同時に満足させるのが特に好ましい。
【0024】
エステルワックスのポリエステル樹脂組成物製造時の含有量は0.01〜10重量%であり、好ましくは0.05〜3重量%である。この含有量が0.01重量%未満ではマスターポリマーとして生産性が低く非効率である。一方、10重量%を超えると混練機の混練部分でエステルワックスによる滑りが良すぎるため、ポリエステルペレットの噛み込み不良が発生しやすくなり、混練機または製膜する際の溶融押出機での安定運転が困難となる。
【0025】
本発明における不活性粒子について、以下に詳述する
本発明で使用する不活性粒子は、フィルムとした際に滑り性を向上できるものなら特に限定されず、例えば、(1)シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどの耐熱性ポリマーからなる粒子、(2)三二酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物からなる粒子、(3)炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの金属の炭酸塩からなる粒子、(4)硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどからなる金属の硫酸塩からなる粒子、(5)カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなどの炭素からなる粒子、および、(6)カオリン、クレー、ベントナイトなどの粘土鉱物からなる粒子など、有機化合物および無機化合物からなる粒子が挙げられる。これらのうち、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、合成炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ダイアモンドまたはカオリンからなる粒子が好ましい。さらに好ましくは、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、または炭酸カルシウムからなる粒子である。上記、不活性粒子は1種または2種以上のものを混合して使用してもよい。不活性粒子として2種以上の粒子を併用する場合は、上記不活性粒子よりも平均粒径が小さい不活性粒子(不活性微粒子)を、第2または第3の粒子(微粒子)として、添加するのが好ましい。好ましい不活性微粒子としては、例えば、コロイダルシリカやα、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどが挙げられる。
【0026】
本発明で使用する不活性粒子は、フィルムとした際の走行性及び耐ブロッキング性を向上させながらも表面平坦性を維持し易いことから、不活性粒子の長径を不活性粒子の短径で割った形状の粒径比が1.2以下の不活性粒子(球状不活性粒子)であることが好ましく、更に1.1以下の不活性粒子であることが好ましい。更に球状不活性粒子の粒径の下記式で示される相対標準偏差は0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.3以下である。この相対標準偏差が0.5より大きいと、フィルムにした際の突起均一性が不十分となり好ましくない。
【0027】
【数1】
Figure 0003790419
【0028】
本発明における不活性粒子の平均粒径は0.01〜1μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.02〜0.5μm、特に好ましくは0.05〜0.3μmの範囲である。この平均粒径が0.01μm未満では走行性や耐ブロッキング性の向上効果が得られ難く、一方、1μm以上ではフィルムの表面平坦性が得られ難いため好ましくない。不活性粒子のポリエステル樹脂組成物製造時の含有量は0.01〜10重量%であり、好ましくは0.03〜3重量%である。この含有量が0.01重量%未満ではポリマーとして生産性が低く非効率である。一方、10重量%を超えると、ポリエステル中ので分散が不十分となる。
【0029】
本発明のエステルワックスおよび不活性粒子を含有するポリエステル樹脂組成物を製造する方法について、以下に説明する。
本発明において、ポリエステル樹脂にエステルワックスおよび不活性粒子を添加する時期は、ポリエステル樹脂の重合段階またはエステルワックスまたは不活性粒子を含有しないポリエステル樹脂を重合してから製膜するまでの段階のいずれでも良く、エステルワックスと不活性粒子は同時でもそれぞれ別々に添加しても良い。但し、ポリエステル樹脂中のエステルワックスおよび不活性粒子の分散状態を均一なものにする上から、エステルワックスおよび不活性粒子を含有した状態のポリエステル樹脂組成物を少なくとも一度は溶融状態で混錬することが必要であり、本発明は、この溶融状態で混錬の際にポリエステル樹脂が劣化を抑制し、且つ、不活性粒子の分散性を向上させたものである。
【0030】
好ましいエステルワックスの添加時期は、エステルワックスに重合段階での熱的処理が加わらないことから、エステルワックスを含有しないポリエステル樹脂を重合してから製膜するまでの段階である。なお、重合されたエステルワックスを含有しないポリエステル樹脂へエステルワックスを添加させる方法としては、それ自体公知の混錬機を用い、混錬機にポリエステル樹脂が供給されるまでもしくは供給されると同時にポリエステル樹脂にエステルワックスを添加する方法、または、混錬機中で溶融状態になったポリエステル樹脂にエステルワックスを添加する方法が挙げられる。なお、混錬後のポリエステル樹脂組成物の品質劣化を抑制し易いことから、混錬機にポリエステル樹脂が供給されるまでもしくは供給されると同時にポリエステル樹脂にエステルワックスを添加した後、ポリエステル樹脂を溶融状態にして混錬する、すなわち、エステルワックスとエステルワックスを含まないポリエステル樹脂を混練機に供給する時期は、混錬機中の混錬部分よりも前が好ましい。これは、混錬機中の混錬部分よりも前にエステルワックスを供給することで、エステルワックスの潤滑作用により、混練部分での該ペレットが溶融する際の剪断発熱を抑制することが出来、ポリエステル樹脂自体の品質劣化を低減することができるからである。また、エステルワックスとエステルワックスを含まないポリエステル樹脂ペレットを混練機に供給して混錬する場合は、エステルワックスを粉末または溶融させた液滴状態で混合または配合すればよく、該ペレットの平均粒径で粉末または液状のエステルワックスの平均粒径を割った比は、混じりやすいことから1〜0.001の範囲が好ましい。
【0031】
また、混錬機としては、均一な混錬常態が形成しやすいことから2軸混練機好ましく、2軸混練機としては製造工程が不連続なバッチ式では生産性が落ちてしまうため、連続混練機が好ましい。2軸連続混練機としては特に制限はないが、例えばニーディングディスク及び逆ねじの混練用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式2軸混練押出機、及び/またはロータ型2軸連続混練機(例えば「合成樹脂」Vol.41(7)P.9.7(1995)に記載)が好ましい。具体的なローター型2軸混練機としては、図1に示すようなロータがホッパーから供給された材料をチャンバ2送るスクリュウ部7と材料を粉砕、溶融、混錬する混錬翼部8からなり、且つ、材料の充満度を調節しチャンバー外部へ吐出する絞り機構6からなる1段2軸混錬タイプと、ロータが第1段目の混錬翼部のあとに溶融された材料を送る第2段目のスクリュウ部と、さらに混錬する第2段目の混錬翼部を有し、第1段目と第2段目の間に絞りゲート機構を有し、最後に吐出オリフィスから構成された2段2軸混錬タイプがある。また、具体的なベント式2軸混練押出機としては、例えば図2に示すように、ニーディングディスクまたはロータ型の混練用エレメントを配したスクリュー構造を有することが好ましく、さらには滞留時間を著しく長くしない範囲で逆ねじのエレメントを配することが好ましく、粒子の分散性の確保に効果的である。シリンダー温度、軸回転速度などの混練条件は、ポリエステル種、吐出量が決定されたのち、微粒子の分散状態によって選定するとよい。なお、図3は、図1のロータの断面の一例である。
【0032】
また、不活性粒子を添加する方法は、前述の通り、エステルワックスと同時でも良いし、エステルワックスとは別に、ポリエステルの重合段階、不活性粒子を含有しないポリエステル樹脂を重合してから製膜するまでの段階、または、これらの両方の段階で添加するものでもよい。例えば、不活性粒子を含有しないポリエステル樹脂を重合してから製膜するまでの混練の段階で添加する方法では、不活性粒子(粉体)及び/または不活性粒子の分散液として添加するのが好ましい。この際の混錬に用いる混錬機としては、ベント孔を有し脱気が可能なベント式2軸混練押出機が分散液の状態で添加できることから好ましい。分散液の媒体としては、例えば水および/又は沸点が該ポリエステル樹脂の融点未満の有機物化合物を使用する事ができる。中でも、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が経済面、取り扱い性の上から好ましく、特に水は安全性の面から最も好ましい媒体である。本発明においてベント式2軸混練押出機に不活性粒子を含む分散液を供給する方法は、効率よく、安全で、定量性があり、かつ分散性に影響を与えなければ特に限定はされないが、水および/又は沸点が該ポリエステル樹脂の融点未満の有機化合物を除去するため、ベント孔の少なくとも一つは減圧下に保持する必要がある。この際のベント孔の減圧度は133Pa以下に保持する事が好ましく、66Pa以下がより好ましく、40Pa以下が更に好ましい。なお、この際のベント孔の減圧度の下限は、高々10Paであることが好ましい。また、事前にポリエステル樹脂(ペレット)に不活性粒子を含有させる場合は、それ自体公知の技術が使用可能であり、例えばエステル交換反応における任意の時点で、エチレングリコールスラリーとして添加する方法などが好適である。
なお、不活性粒子はフィルムとした際の特性を満足するため、粒度調整及び粗大粒子除去のため、例えば乾式粉砕及び乾式分級処理をすることが好ましい。また事前にポリエステル樹脂(ペレット)に含有させる方法では、不活性粒子を分散液として湿式粉砕、湿式分級及びろ過処理することが好ましい。
【0033】
ところで、エステルワックスの添加時期を、混錬機にポリエステル樹脂が供給されるまでもしくは供給されると同時にすると、混錬機中での不活性粒子の分散性も向上させることができる。これは、混錬機中の混錬部分よりも前にエステルワックスを供給することで、エステルワックスの潤滑作用により混練部分での該ポリエステル樹脂のペレットが溶融する際の剪断発熱を抑制することが出来、ポリエステル樹脂自体の溶融粘度の低下を抑制できるからである。なお、この際の不活性粒子の添加時期は、ポリエステルの重合段階からポリエステルが混錬機を通過するまで間ならいつでもよく、少なくとも混錬機の混錬部分の一部で、ポリエステル樹脂、エステルワックスおよび不活性粒子の3者が共存するようにすればよい。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルムへ成形する方法は、それ自体特に制限されるものではないが、エステルワックスによる滑り性を発現させる観点から、得られるポリエステルフィルムの少なくとも片面は、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる層であることが必要である。以下に本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルムへ成形する方法を詳述する。
【0035】
本発明におけるポリエステルフィルムは、上述のポリエステル樹脂組成物またはそれを他のポリエステル樹脂と混合したものを溶融押出し、急冷して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムを2軸方向に延伸し、熱固定し必要であれば弛緩熱処理することによって製造できる。また、熱固定の際または熱固定の後、必要であれば弛緩熱処理を施しても良い。そして、フィルムへ成形する際の延伸条件などの製造条件は、目的とするフィルムの表面特性、密度、熱収縮率等の物性に応じて、適宜選択すればよい。例えば、前出の未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に[Tg−10]〜[Tg+60]℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移点温度)で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg〜[Tg+70]℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸させるのが好ましい。更に必要に応じて縦方向およびまたは横方向に再度延伸してもよい。縦方向と横方向の延伸倍率を掛けた面積延伸倍率は、9倍以上が好ましく、12〜35倍が更に好ましく、15〜30倍が特に好ましい。さらにまた熱固定は、[Tg+70]〜[Tm−10]℃の温度(但し、Tm:ポリエステルの融点)、例えば180〜250℃の温度で行うのが好ましく、その際の熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムは、エステルワックスのほかに、本発明の目的を阻害しない範囲で酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤を添加物として含有してもよい。
【0037】
本発明におけるポリエステルフィルムは単層フィルムでもよいが、2層以上の積層フィルムであることが好ましい。この場合、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステル層(A)が最外層の少なくとも一方を構成することが、エステルワックスの滑り性を発現させる上で好ましい。本発明におけるポリエステルフィルムの(総)厚みは、単層フィルムでも積層フィルムでも、3〜25μm、特に4〜20μmが好ましい。
【0038】
積層フィルムとする場合は、全てのポリエステル層にエステルワックスを含有させても良いが、磁性層を設ける側のポリエステル層には、エステルワックスを含有させない方がドロップアウトを抑制できるので好ましい。また該ポリエステル樹脂組成物を含有させたフィルム層は水との接触角が70〜90°の範囲であることが好ましく、70°未満では耐ブロッキング性(剥離性)が不足し、90°を超えるとバックコート層を塗布する工程で塗布斑などが発生し易い。
【0039】
特に好ましい積層フィルムは、最外層に磁性層を設ける側のフィルム層の三次元中心面平均粗さA(SRa)が15nm以下、更に好ましくは5nm以下のもので、また、その反対面にあたる最外層のフィルム層の三次元中心面平均粗さB(SRa)が30nm以下、更に好ましくは10nm以下の平坦な積層フィルムで効果がより顕著であり、その三次元中心面平均粗さ(SRa)の比が0.05〜0.8(三次元中心面平均粗さA/三次元中心面平均粗さB)の範囲にあるものが好ましい。
【0040】
本発明におけるポリエステル層(A)中でのエステルワックスの含有量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲である。このエステルワックスの含有量が0.001重量%未満であると、巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、エステルワックスの含有量が1重量%を超えると、フィルムの製造工程でロール状に巻き上げたときに、ポリエステル層(A)中のエステルワックス成分がポリエステル層(A)に接する反対側の面に多量に転写され、金属蒸着層を設ける際の接着性が損なわれるなどの問題を惹起する。また、本発明におけるポリエステル層(A)中での不活性粒子の含有量は、0.01〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.8重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲である。この不活性粒子の含有量が0.01重量%未満であると、巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、不活性粒子の含有量が2重量%を超えると、フィルムの製造工程でロール状に巻き上げたときに、ポリエステル層(A)の表面が荒れ、その形状がポリエステル層(A)に接する反対側の面に転写され、金属蒸着層を設ける際の表面平坦性が損なわれるなどの問題を惹起する。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物が、エステルワックスの300℃に加熱した際の熱減量率を20重量%以下にすることで、ポリエステル樹脂の品質劣化を抑えながら、エステルワックスおよび不活性粒子を均一に分散させることができる理由は明確ではないが、エステルワックス自体の熱劣化がポリエステル樹脂の熱劣化を助長していて、ポリエステル樹脂組成物の熱劣化を助長するエステルワックスの熱劣化が抑制されたためと考えられる。この観点から、エステルワックスの耐熱性とポリエステル樹脂組成物の耐熱性および不活性粒子の分散性とは有機的に結合していると言える。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルム化した際の耐ブロッキング性向上に関しては、エステルワックスがフィルム表面にブリードアウトすることにより、フィルム間の剥離性及び帯電性が変化してブロッキングを抑制するものと思われ、また、巻き取り性向上に関しては、機構は不明であるが、前出の剥離性及び帯電性の変化が寄与しているものと思われる。
【0043】
【実施例】
以下の実施例にて本発明を詳述する。なお、本発明における物性値及び特性は、以下の如くして測定または定義される。
(1)エステルワックスの熱減量率
TGA(Rigaku製、TAS200)にてAir雰囲気、Rate=20℃/minで測定し、300℃昇温時の熱減量率を求めた。
【0044】
(2)エステルワックスの水酸基価測定
試料を精秤し、過剰の無水フタル酸ピリジン溶液を加え、水浴(98±2℃)で2時間処理する。試料の溶解を確認した後、放冷し指示薬として1%フェノールフタレン−ピリジン液を用い、N/2水酸化カリウム標準溶液で滴定を行い、変色(淡紅色)する点を終点とする。尚、本試験と並行して空試験を行い、以下の一般式に従って求める。
【0045】
【数2】
Figure 0003790419
式中、A:本試験のN/2水酸化カリウム標準溶液の使用量(ml)
B:空試験のN/2水酸化カリウム標準溶液の使用量(ml)
F:N/2水酸化カリウム標準溶液の力価使用量(KOHmg/ml)
S:試料採取量(g)
【0046】
(3)エステルワックスの酸価測定
試料を精秤し、約50mlの中性溶剤を入れて溶解する。(固形のものは湯煎で加温溶解)次にフェノールフタレイン指示薬を数滴加え、0.1mol/Lまたは0.5mol/L水酸化カリウムメチルアルコール標準溶液で滴定し、指示薬の色が変色(淡紅色)になった時点を終点とする。尚、酸価は以下の一般式に従って求める。
【0047】
【数3】
Figure 0003790419
式中のAは0.5mol/L(または1.0mol/L) 水酸化カリウムメチルアルコール標準溶液の使用量(ml)、Fは0.5mol/L(または1.0mol/L) 水酸化カリウムメチルアルコール標準溶液の力価(KOHmg/ml)およびSは試料採取量(g)を示す。
【0048】
(4)固有粘度
オルソクロロフェノール溶液中35℃で測定した値から求める。
【0049】
(5)不活性粒子の平均粒径
株式会社島津製作所製、商品名「SACP−4L型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyser)」を用い測定する。得られる遠心沈降曲線を基に計算した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径とする(単行本「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247参照)。
【0050】
(6)フィルムの三次元中心面平均粗さ(SRa)
三次元粗さ測定機(小坂研究所製SE−3CK)を用いて、針径2μmR、針圧30mg、測定長1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大率2万倍、横方向拡大率200倍、走査本数100本の条件にてフィルム表面の三次元表面プロファイルをイメージさせる。得られたプロファイルから中心面上に面積SMの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心面上に直交座標軸、X軸、Y軸を置き、中心面に直交する軸をZ軸として以下の数式により与えられる値をSRaとする。
【0051】
【数4】
Figure 0003790419
ここでSM=LX × Lyである。
【0052】
(7)接触角
協和科学(株)製、接触角測定装置を用いて測定した。フィルムサンプルを温度25℃、湿度50%の環境下に24時間置いた後、フィルム上に蒸留水を5mg滴下し、水平の方向から20分後の写真を撮影した。フィルムと水滴の接線が形成する角度を接触角(°)とした。
【0053】
(8)ブロッキング剥離力
ロール状フィルムの長手方向に100mm、幅方向に200mmの長方形にサンプリングし、室温20℃±2℃、湿度40±5%の環境下でコロナ処理を施した。コロナ処理は春日電気株式会社製、商品名「CG−102」型の高周波電源を用いて、以下の条件で行った。
電流 :4.5A
電極間距離:1.0mm
処理時間 :1.2m/分の速度で電極間を通過させて処理する。
【0054】
フィルムの処理した面を、直ちに処理した面と反対側の面に接触させ、100Kg/cm2の圧力にて温度60℃、湿度80%の環境下で17時間エイジングさせた後、東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、幅100mm当たりの剥離力(N/100mm)を求めた。
【0055】
(9)巻き取り性
速度130m/分、サイズ幅600mm×長さ12000mの条件で、30個のフィルムロールをスリット加工した後、フィルムロールのフィルム表面を目視にて観察し、フィルム表面にブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準で巻き取り性を評価した。
◎ :良品ロールの本数が28本以上
○ :良品ロールの本数が25〜27本
× :良品ロールの本数が16〜24本
××:良品ロールの本数が15本以下
【0056】
(10)エステルワックス中のアルカリ金属量の測定
試料5gを精秤し灰化した後、水に溶解、定容した後、原子吸光分析装置(日立製作所製(株)、商品名「Z−6100型 Polarized Zeeman Atomic Absorption Spectrophotometer」)で測定し、エステルワックス中のアルカリ金属量を求める。
【0057】
(11)不活性粒子の粒径比
不活性粒子を分散し、走査型電子顕微鏡にて粒子50個を1000〜30000倍で観察し、長径/短径の比を求めその平均値で表わす。
【0058】
(12)混錬後の樹脂組成物中の凝集粒子数
不活性粒子を含有するポリエステル樹脂組成物のペレットを、ホットプレート上で溶融した後、ステンレス製の抑え板で厚み1〜2mmの平板状の試料とする。次にプラズマリアクター(ヤマト科学製PR−31)で平板状試料の表面を灰化して表面に不活性粒子を露出させ、金蒸着をおこなった後、試料面積0.25cm2につき電子顕微鏡で500〜10000倍で観察を行い、添加した不活性粒子の平均粒径の10倍以上の大きさ有する凝集粒子をカウントする。この数値をもってポリエステル中の不活性粒子の分散性評価とする。
【0059】
[参考例1]
原料としてジメチルテレフタレートとエチレングリコールを、エステル交換触媒として酢酸マグネシウムと酢酸カルシウムを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜リン酸を用い、エステルワックスを含まないポリエステル樹脂として固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.65のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
【0060】
[参考例2]
原料としてジメチルテレフタレートとエチレングリコールを、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、微粒子として酸化アルミニウム粒子(平均粒径0.27μm、結晶形態θ型)を、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜リン酸を用い、不活性粒子を含有するマスターポリエステル樹脂組成物として固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.60、不活性粒子(酸化アルミニウム粒子)含有量1.0重量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
【0061】
[参考例3]
原料としてジメチルテレフタレートとエチレングリコールを、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、微粒子として球状シリコーン樹脂粒子(平均粒径0.3μm)を、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜リン酸を用い、不活性粒子(球状シリコーン樹脂粒子、含有量0.6重量%)を含有するマスターポリエステル樹脂組成物として、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.60のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
【0062】
[参考例4]
原料としてジメチルナフタレートとエチレングリコールを、エステル交換触媒として酢酸マグネシウムと酢酸カルシウムを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜リン酸を用い、エステルワックスを含まないポリエステル樹脂として固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.65のポリエステル(ポリエチレンナフタレート)を得た。
【0063】
[参考例5]
原料としてジメチルナフタレートとエチレングリコールを、エステル交換触媒として酢酸マグネシウムと酢酸カルシウムを、微粒子として酸化アルミニウム粒子(平均粒径0.27μm、結晶形態θ型)を、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜リン酸を用い、不活性粒子を含有するマスターポリエステル樹脂組成物として固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.60、不活性粒子(酸化アルミニウム粒子)含有量1.0重量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
【0064】
[実施例1]
図2において、ニーディングディスクパドルを混練エレメントとして配したベント式2軸混練押出機の上流にある供給口9より、参考例1で製造した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートペレットをスクリュー式定量フィーダーを用いて19.4Kg/Hrの割合で供給する。同時にポリエチレンテレフタレートペレットを供給したのと同じ供給口9よりエステルワックスおよび不活性粒子(球状シリコーン樹脂、平均粒径0.6μm、粒径比1.1、相対標準偏差0.25)を振動式定量フィーダーを用いてそれぞれ0.3Kg/Hrで供給する。シリンダ温度260℃、ベント口11および12の真空度133.3Pa(1.0mmHg)、軸回転数250rpmに設定して押出して、エステルワックス1.5重量%および球状シリコーン樹脂粒子1.5重量%含有のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。なお、エステルワックスは、炭酸ナトリウムを触媒としてソルビットとステアリン酸とを、水酸基価=69KOHmg/g、酸価=12KOHmg/gおよびアルカリ金属量=290ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節して得たソルビタントリステアレート(粉末状)であり、300℃での熱減量率は7%であった。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0065】
また、このエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物のペレットと参考例1および参考例2のポリエステル樹脂組成物のペレットとを、球状シリコーン樹脂粒子が0.06重量%、酸化アルミニウムが0.2重量%、ソルビタントリステアレートが0.06重量%となるように混合した。この混合状態のペレットとこれとは別に参考例1のポリエステルとを、それぞれ別々に170℃で3時間乾燥した後、それぞれ別々の押出し機に供給し、溶融温度300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターでそれぞれ高精度濾過した後、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、一方の面が参考例1のポリエステル樹脂のみからなる層、他方の面がエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物からなる層となるように、これら2層を積層した状態で押し出した。なお、磁気記録媒体として用いる場合は、磁性層を設ける側のフィルム層(以下、磁性層面と略することがある。)は参考例1のポリエステル樹脂のみからなる層とし、磁性層を設けるのとは逆の側(以下、走行面と称することがある。)のフィルム層はエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物からなる層とする。このようにして押し出された2層からなるポリエステル樹脂組成物は、表面温度20℃の回転冷却ドラム上で急冷され、厚さ89μmの未延伸フィルムとされる。この未延伸フィルムを余熱し、更に低速、高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸した後急冷し、続いてステンターで110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを220℃の温度で5秒間熱固定し、フィルム全厚み6.4μmで走行面に位置するポリエステル層の厚み1.0μmの熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。なお、それぞれのポリエステル層の厚みは2台の押出機の吐出量にて調整した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0066】
[実施例2]
実施例1のエステルワックスの合成において、水酸基価=79KOHmg/g、酸価=13KOHmg/gおよびアルカリ金属量=450ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
[実施例3]
実施例1で使用する参考例1のポリエステル樹脂を参考例4のポリエステル樹脂に変更する以外は、同様にしてエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0068】
また、この得られたポリエステル樹脂組成物のペレットと参考例4および参考例5のポリエステル樹脂組成物のペレットとを、球状シリコーン樹脂粒子が0.06重量%、酸化アルミニウムが0.2重量%、ソルビタントリステアレートが0.13重量%となるように混合した。この混合状態のペレットとこれとは別に参考例4のポリエステルとをそれぞれ別々に170℃で6時間乾燥した後、それぞれ別々の押出し機に供給し、溶融温度310℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターでそれぞれ高精度濾過した後、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、一方の面が参考例4のポリエステル樹脂のみからなる層、他方の面が上述のエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物からなる層となるように、これら2層を積層した状態で押し出した。なお、磁気記録媒体として用いる場合は、磁性層面は参考例4のポリエステル樹脂のみからなる層とし、走行面はエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物からなる層とする。このようにして押し出された2層からなるポリエステル樹脂組成物は、表面温度20℃の回転冷却ドラム上で急冷され、厚さ89μmの未延伸フィルムとされる。この未延伸フィルムを余熱し、更に低速、高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.6倍に延伸した後急冷し、続いてステンターで155℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを200℃の温度で4秒間熱固定し、フィルム全厚み4.4μmで走行面に位置するポリエステル層の厚み0.6μmの熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。なお、それぞれのポリエステル層の厚みは2台の押出機の吐出量にて調整した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
参考例1のポリエステル樹脂のペレット98重量部とエステルワックス2重量部(ソルビタントリステアレート、粉末、300℃での熱減量率=12%、水酸基価=79KOHmg/g)をブレンダーで混合し、スクリュー式定量フィーダーを用いて50Kg/Hrの割合でホッパー部に供給する。オリフィスゲート開度50%、ロータ回転数700rpmの条件で図1及び図3のロータ型2軸連続混練機で混練し、得られた混練物を連続して強制押し込み装置付きの単軸押出機で成形してペレット化した。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0070】
また、エステルワックスを含有するマスターポリエステル樹脂組成物として上述のロータ型2軸連続混練機を用いたものを使用すること、磁性層面のポリエステル層を構成するポリエステル樹脂組成物として参考例1、参考例2および参考例3の樹脂を、球状シリコーン樹脂粒子0.02重量%および酸化アルミニウム0.1重量%となるように混合したものを使用すること、並びに、走行面のポリエステル層を構成するポリエステル樹脂組成物として球状シリコーン樹脂粒子0.2重量%、酸化アルミニウム0.25重量%およびソルビタントリステアレート0.12重量%となるようにエステルワックスを含有するマスターポリエステル樹脂組成物と参考例1、参考例2および参考例3の樹脂を混合したものを使用すること以外は、実施例1と同様にして熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
実施例1のエステルワックスを、水酸基価=36KOHmg/g、酸価=1KOHmg/gおよびアルカリ金属量=300ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節して得たグリセリントリステアレート(粉末状)に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
[実施例6]
実施例1のエステルワックスを、水酸基価=160KOHmg/g、酸価=5KOHmg/gおよびアルカリ金属量=400ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節して得たペンタエリスリトールジステアレート(粉末状)に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表1に示す。
【0073】
[実施例7]
実施例1において、ベント式2軸混練押出機に供給するポリエチレンテレフタレートペレットを、参考例1の不活性粒子を含有しないペレットから参考例2の不活性粒子として酸化アルミニウムを含有するペレットに変更する以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
[実施例8]
実施例1において、シリコーン樹脂粒子を球状シリカ粒子に変更し、その添加量を表1に示すように変更する以外は同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表1に示す。
【0075】
【表1】
Figure 0003790419
【0076】
[比較例1]
実施例1において、ポリエステル樹脂組成物を製造する際のエステルワックスの添加量を13重量%へ変更する以外は、同様な操作を繰り返した。その結果、ベント式2軸混練押出機の混練部分において、ポリエステル樹脂のペレットの噛み込み不良が発生し、均一な混合状態でエステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物は得られなかった。そのため、これ以降のフィルムなどの評価は中止とした。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0077】
[比較例2]
実施例1において、ポリエステル樹脂組成物を製造する際のシリコーン樹脂粒子の添加量を12重量%へ変更する以外は、同様な操作を繰り返した。その結果、ベント式2軸混練押出機の混練部分におけるポリエステル樹脂の固有粘度の低下が著しく、また、ポリエステル樹脂中のシリコーン樹脂粒子の分散状態も非常に不均一であるため、これ以降のフィルムなどの評価は中止とした。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0078】
[比較例3]
実施例1のエステルワックスの合成において、水酸基価=95KOHmg/g、酸価=17KOHmg/gおよびアルカリ金属量=330ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物は、製造時の固有粘度の劣化幅が大きく、また、それを用いたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうものであった。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0079】
[比較例4]
実施例3のエステルワックスの合成において、水酸基価=95KOHmg/g、酸価=17KOHmg/gおよびアルカリ金属量=330ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物は、製造時の固有粘度の劣化幅が大きく、また、それを用いたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうものであった。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0080】
[比較例5]
エステルワックスを添加しない以外は実施例1と同様にして熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうもので、フィルム巻き取り性も劣るものであった。
【0081】
[比較例6]
実施例4のエステルワックスの合成において、水酸基価=78KOHmg/g、酸価=14KOHmg/gおよびアルカリ金属量=850ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節する以外は、実施例4と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物は、製造時の固有粘度の劣化幅が大きく、また、それを用いたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうものであった。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0082】
[比較例7]
実施例1において、エステルワックスを水酸基価=80KOHmg/g、酸価=7KOHmg/gおよびアルカリ金属量=330ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節して得たソルビタンモノアセテート(粉末状)に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物は、製造時の固有粘度の劣化幅が大きく、また、それを用いたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうものであった。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0083】
[比較例8]
実施例7において、エステルワックスを水酸基価=95KOHmg/g、酸価=17KOHmg/gおよびアルカリ金属量=330ppmとなるように反応時間や脱水条件を調節して得たソルビタントリステアレート(粉末状)に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物及び熱固定二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物は、製造時の固有粘度の劣化幅が大きく、また、それを用いたポリエステルフィルムはブロッキング剥離力の測定でフィルムが密着し、無理やり剥がそうとすると破れてしまうものであった。得られたポリエステル樹脂組成物及びフィルムの特性を表2に示す。
【0084】
[比較例9]
実施例1において、フィルムに製膜する際の走行面側に位置する層のエステルワックスの添加量を0.0007重量%となるように変更した以外は、同様な操作を繰り返した。得られたポリエステルフィルムは、ブロッキング剥離力が大きく、フィルムの捲取性も劣るものであった。得られたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0085】
【表2】
Figure 0003790419
【0086】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、300℃に加熱した際の熱減量率が20%以下という特定のエステルワックスを用いることによって、エステルワックスを含有するポリエステル樹脂組成物を製造する際のポリエステル樹脂自体の品質劣化が抑制でき、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物の品質をほとんど損なうことなく、耐ブロッキング性や巻き取り性を向上したポリエステルフィルムが提供される。しかも、ポリエステル樹脂自体の固有粘度の低下も小さいことから、ポリエステル樹脂組成物中の不活性粒子の分散状態もより均一化することができ、粗大な突起のないポリエステルフィルムも提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するロータ型2軸混錬機の概略断面図である。
【図2】本発明で使用するベント式2軸混錬押出機の概略断面図である。
【図3】本発明で使用する混錬押出機のロータ断面図である。
【符号の説明】
(ロータ型2軸混錬機)
1 ロータ
2 チャンバ
3、4 ベアリング
6 絞り機構(オリフィスゲート)
7 ロータスクリュウ部
8 ロータ混錬翼部
(ベント式2軸混錬押出機)
9、10 供給口
11、12 ベント口
13 定量フィーダ
14 シリンダおよびスクリュウ
(ロータ断面)
15 スクリュウ
16 シリンダ

Claims (7)

  1. 300℃に加熱した際の熱減量率が20%重量以下であるエステルワックスを0.01〜10重量%含有し、かつ、不活性粒子を0.01〜10重量%含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
  2. エステルワックスが、多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル生成物である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. エステルワックス中のアルカリ金属含有量が800ppm以下である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 不活性粒子の平均粒径が、0.01〜1μmの範囲で、かつ、不活性粒子の長径を不活性粒子の短径で割った粒径比が、1.2以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. ポリエステル樹脂に、不活性粒子および300℃に加熱した際の熱減量率が20重量%以下であるエステルワックスを、ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、それぞれ0.01〜10重量%の範囲で含有させ、溶融状態で混錬することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物からなるポリエステル層(A)が少なくとも片面に位置することを特徴とするポリエステルフィルム。
  7. ポリエステル層(A)の露出面が、水との接触角が70〜90°の範囲である請求項6記載のポリエステルフィルム。
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