JP2023080667A - ポリエステルフィルムロール及びポリエステルフィルムロールの製造方法 - Google Patents

ポリエステルフィルムロール及びポリエステルフィルムロールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸形状が精密に制御された、高い平滑性を有し、また、原料切替によるロスが低減でき、長時間連続生産が可能で、生産性を向上できる、ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を新たに提案することにある。【解決手段】ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を満足する、ポリエステルフィルムロール。(1)平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。(2)最大山高さ(Sp)が300nm以下であること。(3)凹凸の平均間隔(RSm)が0.016mm以下であること。【選択図】図1

Description

本発明は、積層セラミックコンデンサーの製造工程において使用される工程用離型フィルムの支持体に好適なポリエステルフィルムロールに関する。
近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、積層セラミックコンデンサー(Multi-Layered-Ceramic-Capacitor;MLCC)の小型化及び高容量化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。
その後、焼成炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、積層セラミックコンデンサーが製造される。
MLCCの小型及び高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。セラミックグリーンシートの薄膜化が0.5μm(乾燥後の厚み)以下と更に進行するとキャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、更に高度な表面平滑性が求められている。
従来、この種の離型フィルムの支持体として、特許文献1には、第1の面と第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられた平滑化層と、前記平滑化層の前記基材と反対の面側に設けられた剥離剤層とを有し、前記平滑化層は、重量平均分子量が950以下の熱硬化性化合物を含む平滑化層形成用組成物を加熱して硬化させることにより形成されており、前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRaが8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の外表面の最大突起高さRpが50nm以下であることを特徴とするグリーンシート製造用剥離フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15~35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。
また、特許文献3には、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムに存在するスラック欠点が、100mあたり5個未満である、ポリエステルフィルムロールが開示されている。
特開2014-177093号公報 特開2013-7054号公報 特開2018-90803号公報
しかしながら、本発明者の検討結果より、ポリエステルフィルム製造工程において、溶融押出工程のポリエステル樹脂中の粒子が凝集する場合があった。特に有機粒子を用いた場合、粒子の凝集傾向が顕著に見られ、溶融押出工程前のポリエステル原料の粒子の分散状態を維持しないことがわかった。更に、従来、フィルム表面設計においては、使用する粒子の種類、平均粒径、添加量を調整することでフィルム表面の微細な凹凸形成を制御していたが、セラミックグリーンシートの薄肉化に伴い、更に精密に制御が要求されている。
そのため、精密なフィルム表面の凹凸設計が可能であり、かつ、原料切替ロスが少なく、長時間連続生産が可能で、生産性向上に貢献できるポリエステルフィルムが必要とされている。
そこで、本発明の目的は、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸形状が精密に制御された、高い平滑性を有し、また、原料切替によるロスが低減でき、長時間連続生産が可能で、生産性を向上できる、ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を新たに提案することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムロールを用いれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供するものである。
[1]ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を満足する、ポリエステルフィルムロール。
(1)平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が300nm以下であること。
(3)凹凸の平均間隔(RSm)が0.016mm以下であること。
[2]前記ポリエステルフィルムが3層構成のポリエステルフィルムである、[1]に記載のポリエステルフィルムロール。
[3]前記ポリエステルフィルムの一方の表面層Aが、前記粒子を含有する、[1]又は[2]に記載のポリエステルフィルムロール。
[4]前記ポリエステルフィルムの中間層が、再生ポリエステル原料を50質量%以上含有する、[2]又は[3]に記載のポリエステルフィルムロール。
[5]前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に離型層を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[6]積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[7]自動車セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[8]ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールの製造方法であって、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムが3層構成のポリエステルフィルムであり、前記ポリエステルフィルムの表面層(A)の押出条件において、スクリュー回転数Nrpmに対する前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qkg/hの比Q/Nが、下記式(A)を満足する、ポリエステルフィルムロールの製造方法。
2.5≦Q/N≦3.0・・・(A)
[9]前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qが180kg/h以上である、[8]に記載のポリエステルフィルムロールの製造方法。
本発明によれば、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸形状が精密に制御された、高い平滑性を有し、また、原料切替によるロスが低減でき、長時間連続生産が可能で、生産性を向上できる、ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムロールは、極めて優れた表面平滑性を有することから、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いることで、本発明のポリエステルフィルムロール表面の微細な凹凸によってセラミックグリーンシートに欠陥が生じるおそれが少ないという利点を有する。
また、本発明のポリエステルフィルムロールの製造方法は、従来の製造方法と異なり、製造条件を調整することによって、フィルム表面の凹凸形状を精密に制御することができることを見出した。
特に多層構成のポリエステルフィルムの場合、溶出押出工程において、表面層Aを構成するポリエステル原料の吐出量を増加させることにより、溶融押出工程中のポリエステル原料が押出機内を移動するのに要する時間(滞留時間)を短縮することで、ポリエステル原料中の粒子の凝集を抑制できることを見出した。
また、ポリエステル原料中の粒子の種類により、ポリエステルフィルム表面の凹凸形状の形成の傾向が異なり、例えば、従来の無機粒子を用いた場合は、ポリエステル樹脂の吐出量の増加に伴い、ポリエステルフィルム表面の最大山高さ(Sp)が大きくなる傾向があった。
一方で、本発明者の検討により、特定の粒径を有する有機粒子を用いることで、ポリエステル原料の吐出量を増加ことにより逆に、フィルム表面のSp値が小さくなるという、従来とは全く異なる挙動を示すことがわかった。
そのため、本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、多層構成のポリエステルフィルムを製造する場合において、溶融押出工程における表面層を構成するポリエステル原料の吐出量調整を、フィルム表面の微細な凹凸形状を制御する、新たな要素技術として組み合わせることで、1)特別な工夫を施した粒子を含むポリエステル原料を用いる必要がなくなること、2)フィルム表面の微細な凹凸形状を調整する前に、予め、粒子の平均粒径、粒子添加量を調整した、複数のポリエステル原料を用いる必要がなくなること等、の優れた利点を有する。
特に製造工程における、原料の種類が異なることに伴う、切替ロスの低減により、さらなる連続生産が可能となり、生産性向上への寄与が大きい。
以上のように、本発明のポリエステルフィルムロール及びポリエステルフィルムロールの製造方法は、ポリエステルフィルム表面形状の制御において、従来のようなポリエステル原料等、材料面からのアプローチだけではなく、溶融押出工程における表面層を構成するポリエステル原料の吐出量調整という、新たな要素技術を組み合わせることで、より精密なフィルム表面の凹凸形状の制御が可能となる。特に、積層セラミックコンデンサーの製造において、厚み(乾燥後)が0.5μm以下の薄膜グリーンシート成形が必要となる場面においても、対応可能な、微細でありながら、それでいて精密な凹凸形状を有するフィルム及びその製造方法を提案するものである。
ポリエステルの極限粘度(IV)から算出したせん断応力とせん断速度との関係をグラフに示す。 ポリエステル樹脂中における、粒子分散メカニズム(推定)のイメージ図を示す。 実施例2で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。 比較例1で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。 比較例2で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
[ポリエステルフィルムロール]
本発明のポリエステルフィルムロールは、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を満足することを特徴としている。
(1)平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が300nm以下であること。
(3)凹凸の平均間隔(RSm)が0.016mm以下であること。
本発明のポリエステルフィルムロールにおける、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)とは、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いる際に、セラミックグリーンシートを積層する面側のことをいう。ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、上記(1)~(3)を同時に満たすことにより、積層コンデンサーを好適な状態で製造することができる。また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面は、セラミックグリーンシートの支持体として用いる観点から、後述の離型層を設ける表面として好適である。
本発明のポリエステルフィルムロール(以下「本ロール」とも称する)は、ポリエステルフィルム(以下「本フィルム」とも称する)を巻き取ってなるものである。
本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたポリエステルフィルムロールであり、幅0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることが特に好ましく、1.5m以上であることが最も好ましい。フィルムの幅の上限は、特に限定されないが、取り扱い性の観点から好ましくは2.3m以下であり、より好ましくは2.0m以下である。
また、本ロールに巻き取られる本フィルムの長さは、特に限定されないが、好ましくは1000m以上、より好ましくは6000m以上、更に好ましくは12000m以上である。
更に、本フィルムの厚さは、好ましくは19μm以上38μm以下、より好ましくは25μm以上32μm以下である。
<ポリエステルフィルム>
(表面特性)
本発明において、ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を満足することが必要である。
(1)平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)最大山高さ(Sp)が300nm以下であること。
(3)凹凸の平均間隔(RSm)が0.016mm以下であること。
(1)フィルム表面の平均表面粗さ(Sa)
本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の平均表面粗さ(Sa)は、5~20nmであることを要する。
ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の平均表面粗さ(Sa)が20nmより大きくなると、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸によってピンホール等の欠陥が生じやすくなる。一方で、平均表面粗さ(Sa)が5nmより小さくなると、フィルム表面が極端に平坦化しすぎて、フィルムの滑り性が低下し、傷がつきやすくなる。
本発明においてポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面平均粗さ(Sa)は、積層セラミックコンデンサー等の製造時のセラミック層の薄肉化対応、ピンホールの発生の抑制及びフィルムの滑り性の低下の抑制の観点から、7~18nmが好ましく、9~16nmがより好ましく、10~14nmが更に好ましい。
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(1)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下の式(1)のように表される。
Figure 2023080667000002
(2)フィルム表面の最大山高さ(Sp)
本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の最大山高さ(Sp)は、300nm以下であることを要する。ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の最大山高さ(Sp)が300nmより大きくなると、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸によってピンホール等の欠陥が生じやすくなる。
本発明においてポリエステルフィルムの一方の表面(A)の最大山高さ(Sp)は、ピンホールの発生の抑制の観点から、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。また、最大山高さ(Sp)の下限については特に制限はされないが、ポリエステルフィルムの巻取り性を向上させる観点から、50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましく、120nm以上がより更に好ましい。
最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(2)のように表される。
Figure 2023080667000003
また、本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係Sp/Saは、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が更に好ましい。
平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係Sp/Saが20以下であることにより、平均表面粗さ(Sa)を高い状態で、最大山高さ(Sp)を比較的低いバランスで調整し、薄膜グリーンシートが成形し易い。
また、平均表面粗さ(Sa)と最大山高さ(Sp)との関係Sp/Saの下限については特に限定されないが、高Saかつ低Spのバランスで調整する観点から、5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
(3)フィルム表面の凹凸の平均間隔(RSm)
本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の凹凸の平均間隔(RSm)は0.016mm以下であることを要する。本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の凹凸の平均間隔(RSm)は0.016mm以下であることにより、凹凸の再現性良好なフィルム表面を得ることができる。
本発明において、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の凹凸の平均間隔(RSm)は、0.015mm以下が好ましく、0.014mm以下がより好ましい。また、凹凸の平均間隔(RSm)の下限については特に制限されないが、薄膜のグリーンシート成形加工に対応可能とする観点から、0.010mm以上が好ましく、0.012mm以上がより好ましく、0.013nm以上が更に好ましい。
なお、本発明において、凹凸の平均間隔(RSm)は、JIS B0601:2013に準拠して測定され、以下の式(3)のように、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXsの平均として表される。
Figure 2023080667000004
上記の本発明におけるポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面特性は、例えばフィルム表面を構成するポリエステル層中に粒子を含有させ、その粒子の平均粒径、粒子種及び含有量を調節し、更に、ポリエステルフィルムロールの製造時において表面層のポリエステル原料の吐出量を制御することで、調整することができる。
(ポリエステルフィルムに含有される有機粒子)
本発明においてポリエステルフィルムは、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有することを要する。平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含むことにより、本発明のポリエステルフィルムロールを用いて、セラミックグリーンシート等を製造する際に、セラミックグリーンシートの表面平滑性を確保することが可能となる。
有機粒子の平均粒径は、セラミックグリーンシートを製造する際に、セラミックグリーンシートの表面平滑性を確保する観点から、0.1~0.4μmが好ましく、0.15~0.35μmがより好ましく、0.2~0.3μmが更に好ましい。
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
有機粒子としては、例えば、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。
有機粒子の具体例としては、架橋高分子粒子が挙げられ、架橋高分子粒子について、組成として例示すると、ジビニルベンゼン重合体、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレングリコールジメタクリレート重合体、スチレン-エチレングリコールジメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ジビニルベンゼン共重合体等の架橋高分子粒子が挙げられる。また、架橋高分子粒子は3成分以上の系から構成されるものを用いてもよい。
また、有機粒子としては、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)有機粒子を用いることが好ましい。
単分散性の有機粒子を含有することにより、ポリエステルフィルムロールのハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の平均表面粗さ(Sa)は高く(適度に粗面化していて)、それでいて、最大山高さ(Sp)が小さい特徴を有する、ポリエステルフィルムを得ることができる。
上記粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する有機粒子としては、粒度分布において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下となる粒子が好ましく、0.2以下となる粒子が特に好ましい。
係る関係式(D90-D10)/D50は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示すものであり、(D90-D10)/D50が0.4以下の粒子は、D90とD10との差が小さいシャープな粒度分布を有するものであり、本フィルムに対して、優れたハンドリング性を維持しながら、極めて高い平滑性を付与することができる。
前記粒子の粒度分布は、レーザー回折式測定装置によって測定される。
本発明において、ポリエステルフィルム中の有機粒子含有量は、ハンドリングを向上させる観点から、質量割合で、900ppm以上が好ましく、2000ppm以上10000ppm以下がより好ましく、2500ppm以上9500ppm以下が更に好ましく、3000ppm以上9000ppm以下がより更に好ましい。
(ポリエステル)
本発明においてポリエステルとは、ポリエステルフィルムの原料となるポリエステルのことをいい、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいう。本発明においてポリエステルは、ホモポリエステルであってもよく、共重合ポリエステルであってもよく、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。
なお、本発明においては、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
上記ポリエステルがホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸等の一種又は二種以上を挙げることができる。
共重合ポリエステルのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を挙げることができる。
また、上記ポリエステルとしては、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートや、エチレン-2,6-ナフタレート単位であるポリエチレン-2,6-ナフタレート等が好ましい。
≪ポリエステル重縮合触媒≫
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ポリエステルフィルムは、チタン化合物を含むことがより好ましい。
前記チタン化合物を使用することで、フィルム中に当該チタン化合物に由来する金属含有凝集体、いわゆる粗大異物の個数を低減化することができ、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい本フィルムを得ることができる。
本フィルムの最外層(「表面層」ともいう、例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用することが好ましい。
当該最外層中に当該チタン化合物に由来するチタン元素含有量が3ppm以上40ppm以下であることが好ましく、4ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下させることなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
また、ポリエステルフィルムが積層構成のポリエステルフィルムの場合、生産性の観点から、後述の中間層を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用しないことが好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの最外層中のアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。
例えば、後述する表面層Aは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、表面層Aにおけるアンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。この際、表面層Aはアンチモン化合物を含有しなくてもよい。
≪ポリエステルの極限粘度(IV)≫
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.50dl/g以上であることが好ましく、0.55dl/g以上であることがより好ましく、0.60dl/g以上であることが更に好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとして極限粘度(IV)が0.50dl/g以上のポリエステルを使用することで、ポリエステルを混練中のせん断応力が増大し、ポリエステル樹脂中の粒子が高分散し易く、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面特性を、上記の範囲にし易くすることができる。また、ポリエステルの極限粘度(IV)の上限は、粒子の流動性の観点から、1.00dl/g以下が好ましく、0.85dl/g以下がより好ましく、0.75dL/g以下が更に好ましい。
また、上記と同様の観点から、本発明のポリエステルフィルムが積層構造の場合、表面層、具体的には本フィルムの最外層(例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.50dl/g以上であることが好ましく、0.55dl/g以上であることがより好ましく、0.60dl/g以上であることが更に好ましい。また、表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)の上限は、粒子の流動性の観点からから、1.00dl/g以下が好ましく、0.85dl/g以下がより好ましく、0.75dl/g以下が更に好ましい。
なお、「本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)」とは、極限粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合樹脂の極限粘度(IV)を意味するものとする。
(ポリエステルフィルムの構成)
本発明においてポリエステルフィルムは、単層のポリエステルフィルムでもよく、2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムでもよい。
本発明においてポリエステルフィルムは、一方の表面(A)の表面特性を上記範囲に制御し易い観点から、2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムが好ましく、3層構成のポリエステルフィルムがより好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムが2以上の層を有する積層構成のポリエステルフィルムの場合、一方の表面層Aが、上記の有機粒子を含有することが好ましい。ここで、前記一方の表面層Aは、本発明におけるポリエステルフィルムの一方の表面(A)を形成する表面層であり、積層構成のポリエステルフィルムにおいて、一方の表面層Aが上記粒子を含有することにより、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面特性を、上記範囲に制御し易い。また、本フィルムは、両方の面が粒子を含有する表面層Aであってもよいし、一方の面が表面層Aで、他方の面が後述する表面層Cであってもよい。表面層Cは、粒子を含有することが好ましい。
≪ポリエステルフィルムの積層構成≫
本発明において、ポリエステルフィルムが2以上の層を有する積層構成のポリエステルの場合、中間層Bと表面層A及び表面層Cから構成されるA/B/C構成又は中間層Bと表面層Aから構成されるA/B/A構成の3層構成が好ましく、A/B/A構成の3層構成がより好ましい。
なお、ポリエステルフィルムがA/B/C構成の3層構成の場合、表面層Cは、表面層Aよりも、平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが同等以下であることが好ましく、表面層Cの平均表面粗さ(Sa)が5nm以上又は最大山高さ(Sp)が220nm以下であることが好ましい。この場合、表面層Cの平均表面粗さ(Sa)は20nm以下程度であってもよい。
係る積層構成を採用することにより、表面層Cには取扱い性を向上させるために必要な粗面を具備することができ、表面層Aには肉薄なセラミック層を付与させるために必要な平滑性を具備することができる。
上記A/B/C及び上記A/B/Aの3層構造において、表面層A及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために粒子を含有することが好ましい。
また、上記A/B/C及びA/B/Aの3層構造において、表面層A、中間層B及び表面層Cそれぞれに用いられる粒子としては、上述のポリエステルフィルムに含有される有機粒子と同様の物を好適に用いることができ、平均粒径及び粒度分布等の好ましい範囲についても同様である。
前記表面層Aにおける前記粒子の含有量は、積層セラミックコンデンサー等の製造時のセラミック層の薄肉化対応、ピンホールの発生の抑制及びフィルムの滑り性の低下の抑制の観点から、質量割合で、900ppm以上6000ppm以下が好ましく、900ppm以上4000ppm以下がより好ましく、900ppm以上3000ppm以下が更に好ましい。
また、前記表面層Cにおける前記粒子の含有量は、ポリエステルフィルムロールの取り扱い性を向上させる観点から、質量割合で、5000ppm未満が好ましく、2000ppm以上4000ppm以下がより好ましい。
前記中間層Bは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、或いは、少なくとも表面層Aよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。
表面層Aと表面層Cとは異なる層であるが、具体的には、粒子の種類、平均粒径及び配合量が異なる形態の他、層厚みが異なる形態を例示することができる。
本発明において、ポリエステルフィルムの中間層Bは、再生ポリエステル原料を、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。中間層Bが再生ポリエステル原料を上記範囲で含有することにより、例えばCO排出量を削減することができ、環境への負荷低減に寄与することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムロールにおいて、ポリエステルフィルムは次の(X)及び(Y)に示した表面層A及び/又は表面層Cを備える構成が特に好ましい。
係る構成を採用することで、ポリエステルフィルムが、優れたハンドリング性と表面平滑性を具備することができる。
(X)特に好ましい実施形態1
(1)前記A/B/Cの構成において、表面層Aが有機粒子及びチタン化合物を含み、表面層Aが平均粒径0.05μm~0.4μmの有機粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Cが有機粒子を含む形態
(3)前記(1)、(2)の何れかにおいて、表面層Cが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(4)前記(1)~(3)の何れかにおいて、前記粒子は、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である形態
(5)前記(4)において、前記有機粒子は、ジビニルベンゼンースチレン系粒子である形態。
上記(X)では、表面層A及び表面層Cそれぞれにおいて、チタン化合物を触媒として重縮合されたポリエステルを使用することで触媒起因の異物を低減化することができ、高い表面平滑性を具備させることができる。
(Y)特に好ましい実施形態2
(1)前記A/B/Aの構成において、表面層Aは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Aが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(3)前記(1)又は(2)において、前記表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.55dl/g以上、好ましくは0.60dl/g以上の形態
(4)前記(1)~(3)の何れかにおいて、前記粒子は、有機粒子である形態
上記(Y)では、表面層Aが略均一な平均粒径を有する粒子、より詳しくは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含むことでハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい本フィルムを得ることができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
以下、本フィルムの製造方法の一例を示す。
まず、公知の方法により、原料、例えばポリエステルチップを押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは4.5倍以上であり、より好ましくは4.5~5.0倍である。
そして、引き続き180~220℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。この熱固定処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱固定処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
本発明において、ポリエステルフィルムが上述の3層構成のポリエステルフィルムである場合、表面層(A)に用いる押出機は、シリンダーに原料供給口とベント開口部を有するベント式二軸押出機であって、少なくとも一つ以上の減圧されたベント部を有するものであることが好ましい。本発明で用いる二軸押出機の口径(シリンダー内径)Dmmは特に限定されない。本発明で用いる二軸押出機の長さLmmは、好ましくは20×D~50×D、更に好ましくは25×D~45×Dである。二軸押出機の長さLが50D以下であると、二軸押出機中での原料のポリエステルの滞留時間が長くなりすぎることがなく、原料のポリエステルの熱劣化が抑制し易い。また、Lが20D以上であると、原料のポリエステルの可塑化が十分となり、安定な溶融押出が可能となる。
また、本発明において、ポリエステルフィルムが上述の3層構成のポリエステルフィルムである場合、本発明のポリエステルフィルムロールの製造方法において、前記ポリエステルフィルムが、上述の平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムが上述の3層構成のポリエステルフィルムである場合、前記ポリエステルフィルムの表面層(A)の押出条件においてスクリュー回転数Nrpmに対する前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qkg/hの比Q/Nが、下記式(A)を満足することを特徴としている。
2.5≦Q/N≦3.0 ・・・(A)
上記式(A)の範囲を満足することによって、スクリュー回転数をポリエステル樹脂の押出量に対して適切な範囲とすることができ、真空下での溶融樹脂表面の更新度が適度に行われ、十分な脱気が行えることにより、所望するポリエステルフィルムの成形が可能となる。上記と同様の観点から、スクリュー回転数Nrpmに対する前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qkg/hの比Q/Nは下記式(B)を満足することがより好ましい。
2.8≦Q/N≦3.0 ・・・(B)
また、ポリエステルフィルムを形成する際、ポリエステル原料を溶融押出する工程において、上記式(A)又は式(B)を満足した上で、意図的に、表面層(A)の吐出量Qを増加させることにより、溶融押出工程におけるポリエステル原料の滞留時間を低減することができる。
そのため、表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qは、180kg/h以上が好ましく、200kg/h以上がより好ましく、220kg/h以上が更に好ましく、240kg/h以上がより更に好ましい。
表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qが180kg/h以上であることにより、ポリエステル原料中における粒子の凝集を抑制することができ、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面特性を所望の範囲とし易くできる。
また、表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qの上限としては、粒子分散性制御の観点から、300kg/h以下が好ましく、280kg/h以下がより好ましい。
ここで、本発明において、ポリエステル原料を溶融押出工程におけるポリエステル原料中の粒子の分散メカニズムについては以下のように推察される。
本発明者は図1に示す通り、ポリエステルの極限粘度(IV)から算出したせん断応力とせん断速度との関係に着目した。その結果、せん断速度の増加に伴い、せん断応力が増加する傾向にあることがわかった。
次に、溶融押出工程における粒子分散性について考察した。まず、ポリエステル樹脂は、半溶融状態で押出機のスクリューによりせん断応力が加えられ、そして更に、ポリエステル原料の吐出量が増加することに伴い、せん断速度が大きくなる。その結果、ポリエステル樹脂中の粒子に、より大きなせん断応力を加えることができるため、図2に示すように、ポリエステル樹脂(マトリックス樹脂)中に粒子が分散をし、溶融押出工程における粒子の凝集を防止し、良好な分散状態を維持したまま、口金から押し出されるものと推察される。
本発明のポリエステルフィルムロールの製造方法において、表面層(A)を構成するポリエステル原料の押出条件を、上記のようにすることにより、平均表面粗さ(Sa)を一定にした状態で、最大山高さ(Sp)を従来では到達困難であった、より小さい値とすることができる。
(離型層)
本発明のポリエステルフィルムロールは、少なくとも片面に離型層を有する形態で使用することが可能である。
当該離型層は、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の面側に積層されることが好ましい。
すなわち、本発明のポリエステルフィルムロールにおいて、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に離型層を有することが好ましい。
したがって、例えばA/B/C構成の場合には、表面層A側の表面に離型層が積層され、離型層/A/B/Cの構成となる。また、A/B/A構成の場合には、一方の表面層(A)側の表面に離型層が積層され、離型層/A/B/Aの構成となる。
ポリエステルフィルムの一方の表面(A)側に離型層を積層することで、離型層上に超薄層セラミック層を積層してグリーンシートを成型する際にピンホール等の発生が起こりにくく好ましい。
前記離型層は、直接又は他の層を介してポリエステルフィルムに積層される。
他の層としては、例えば、本フィルムへの密着性を改良するための易接着コート層の他、帯電防止層やブロッキング防止層等を挙げることができる。
前記離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、或いはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
前記硬化型シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用しても良い。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであっても良い。
前記離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
離型層の形成は、本フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、或いは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
本フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒間以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m、好ましくは0.005~1g/m、更に好ましくは0.005~0.1g/mの範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。
一方、5g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
(用途)
本発明のポリエステルフィルムロールは、各種の離型用途に好適に用いることができる。
例えばドライフィルムレジスト(DFR)用、多層回路基板用、積層セラミックコンデンサーのセラミックグリーンシート製造用等の各種離型・工程用途として使用できる。本フィルムは、離型用途、工程用途では、例えば支持体として使用され、例えば支持体上にセラミックスラリー等の様々な材料が塗布、積層等されるとよい。
とりわけ、本発明のポリエステルフィルムロールは、前述したように、平滑性に優れている一方、それでいて、生産性向上に貢献できることから、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
また、今後、電装化が進む自動車向け積層セラミックコンデンサーにおいては、とりわけ、当該コンデンサーの小型化・高容量化に伴い、使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が進行していくと予測される。
したがって、とりわけ、本発明のポリエステルフィルムロールは、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリエステルの製造>
(1)ポリエステルAの製造
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール65質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル交換反応槽に仕込み、150℃に加熱してジメチルテレフタレートを溶融させた。
次いで、得られるポリエステルに対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を添加した。
その後、常圧下で3時間かけて225℃まで昇温させ、更に225℃で1時間15分間攪拌保持すると共にメタノールを留去しながらエステル交換反応を行ない、実質的にエステル交換反応を終了してポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
次いで、前記オリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送した。
得られるポリエステル樹脂分に対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、移送後のオリゴマーに添加した。
その後、得られるポリエステルに対するリン酸の添加量が0.017質量%となるように、熱安定剤としてリン酸のエチレングリコール溶液を添加した。
次いで、得られるポリエステルに対してチタン原子として4.5質量ppmとなるように、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、前記オリゴマーに添加した。
その後、101.3kPaから0.4kPaまで85分間で減圧し0.4kPaに保持するとともに、225℃から280℃まで2時間かけて昇温させ280℃で1.5時間保持して溶融重縮合反応を行い、極限粘度(IV)が0.63dl/gのポリエステルAを得た。
(2)ポリエステルBの製造
上記ポリエステルAを固相重合し、極限粘度(IV)が0.70dl/gのポリエステルBを得た。
(3)ポリエステルCの製造
上記ポリエステルAでテトラブチルチタネートを添加する代わりに、得られるポリエステル樹脂分に対してアンチモン原子として300質量ppmとなるように、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加すること以外はポリエステルAと同様にして、極限粘度(IV)が0.63dl/gのポリエステルCを得た。
(4)ポリエステルDの製造
上記ポリエステルAで、得られるポリエステルに対してチタン原子として210質量ppmとなるようにテトラブチルチタネートを添加すること以外はポリエステルAと同様にして、極限粘度(IV)が0.63dl/gのポリエステルDを得た。
(5)ポリエステルEの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.5μmの単分散球状シリカを1.0質量%((D90-D10)/D50=0.27)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルEを得た。
(6)ポリエステルFの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.05μmのアルミナ粒子を0.75質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルFを得た。
(7)ポリエステルGの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.7μmの炭酸カルシウム粒子を2.0質量%し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルGを得た。
(8)ポリエステルHの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.3μmの有機粒子((D90-D10)/D50=0.46:ジビニルベンゼン・エチルスチレン・メタクリル酸・スチレン共重合物)を1.0質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルHを得た。
(9)ポリエステルIの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径2μmの有機粒子(ジビニルベンゼン・エチルスチレン・メタクリル酸・スチレン共重合物)を0.5質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルIを得た。
[実施例1]
ポリエステルDを70%、ポリエステルHを30%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルDが100%の原料を中間層Bの原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、表面層Aの原料を二分配して最外層(表面層)、中間層Bを中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=2/27/2となるよう共押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して無定形フィルムを得た。この時溶融押出におけるA層のポリエステル原料の押出条件を、吐出量:200kg/h、スクリュー回転数:71rpmとした。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に、すなわちMD方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向、すなわちTD方向に120℃で4.6倍延伸し、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4において、それぞれ215℃、205℃、150℃、110℃で熱処理を行った後、フィルムを6インチのプラスチック芯にロール状に巻き上げ、厚さ31μmのポリエステルフィルムロールを得た。
[実施例2]
実施例1において、各層厚みを変更し、溶融押出における表面層Aのポリエステル原料の押出条件を、吐出量:250kg/h、スクリュー回転数:90rpmとした以外は、実施例1と同様に製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例1]
実施例1において、各層厚みを変更し、溶融押出における表面層Aのポリエステル原料の押出条件を、吐出量:160kg/h、スクリュー回転数:57rpmとした以外は、実施例1と同様に製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例2]
実施例1において、ポリエステルBを75%、ポリエステルEを25%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルCが100%の原料を中間層Bの原料として、ベント付き押出機に供給し、溶融押出における表面層Aのポリエステル原料の押出条件を、吐出量:160kg/h、スクリュー回転数:56rpmとし、厚み構成比がA/B/A=1/29/1となるよう共押出する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例3]
比較例2において、溶融押出における表面層Aのポリエステル原料の吐出量を320kg/h、スクリュー回転数110rpmに設定する以外は、実施例1と同様に製造し、ポリエステルフィルムロールを得た。
[比較例4]
実施例1において、ポリエステルAを87%、ポリエステルFを13%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルDが100%の原料を中間層Bの原料とし、ポリエステルCを28%、ポリエステルGを22%、ポリエステルHを50%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料としベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、表面層A及び表面層Cを最外層(表面層)、中間層Bを中間層とする3種三層(A/B/C)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/C=4/25/2となるよう共押出する以外は比較例2と同様にしてポリエステルフィルムロールを得た。
得られた各フィルムロールの特性を下記表1に示す。
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例で用いた測定法及び評価方法を次のとおりである。測定及び評価結果は、表1にまとめた。
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置(離合社製「VMS-022UPC・F10」)を用いて、30℃で測定した。
(2)粒子の平均粒径及び粒度分布
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、実施例及び比較例のポリエステルフィルムの表面層A側の表面より、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均一次粒径とした。
また、粒子にフェノール/テトラクロロエタン=2/3の混合溶剤を添加した固形分0.03g/mLの分散液を調製し、当該分散液について、マイクロトラックベル社製「MT3300EXII」を用いてレーザー回折散乱法により、累積個数が10%となる粒子径D10、累積個数が50%となる粒子径D50及び累積個数が90%となる粒子径D90を測定し、(D90-D10)/D50を算出した。
(3)平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)及び凹凸の平均間隔RSm
表面粗さ測定器(アメテック株式会社、「NewView」(登録商標))を用いて実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールの表面層Aの表面を測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)及び凹凸の平均間隔(RSm)を求めた。
(4)突起個数の測定
白色干渉計(Contour)を用いて、下記測定条件により実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールの表面層Aの表面を測定し、突起高さが50nm未満の突起個数、50nm以上100nm未満の突起個数及び100nm以上の突起個数を測定した。
(測定条件)
・測定モード:VXIモード
・対物レンズ:20倍
・内部レンズ:0.55倍
・視野面積:586μm×460μm
(4)傷つき防止性
フィルム表面のキズ欠陥に関して、実施例及び比較例のポリエステルロールをA4サイズの試料フィルムとし、「室内三波長蛍光灯下の透過光」及び「暗室でのハロゲンランプの反射光」で傷(微細な傷、傷状欠陥、ツブ状模様等)が目視で認識できるかを確認した。傷が確認できた場合は、その個数を求め、下記評価基準により判定を行った。
<評価基準>
A:室内三波長蛍光灯下の透過光又はハロゲンランプの反射光で確認できる深さ0.3μm以上のキズが0~4個。
B:室内三波長蛍光灯下の透過光又はハロゲンランプの反射光で確認できる深さ0.3μm以上のキズが5個以上。
(5)グリーンシートの薄膜化対応
実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールの表面層Aの表面の最大山高さ(Sp)が200nm以下の場合を良好「A」、最大山高さ(Sp)が200nmを超える場合を不良「B」と判定した。
例えば、厚みが0.5μm以下の薄膜グリーンシートの成形加工において、最大山高さ(Sp)が200nmを超える場合に存在する高い突起により、ピンホールの発生等のリスクが高くなる傾向にある。
(6)ポリエステルフィルムロールの長尺化対応
実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールをロール状に12000m巻きにした際、シワ等が発生せず、長尺化対応可能な場合を良好「A」、シワ等が発生して、長尺化対応が困難な場合を不良「B」と判定した。
Figure 2023080667000005
実施例1のポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、微細な有機粒子を用いて、平均表面粗さ(Ra)を維持した状態で、最大山高さ(Sp)を従来(比較例1)より、更に低くすることができており、比較的やわらかい有機粒子を用いているにも関わらず、傷つき防止が良好であった。
また、実施例1及び2の結果により、表面層Aの表面が高Saかつ低Spを得るための調整には、表面層に用いる粒子の平均粒径は、表面層Aでは0.05~0.4μmであることが必要であること、表面層Aに用いる粒子は有機粒子が必要であることがわかった。
更に、表面層Aがアンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましいこと、表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.55dl/g以上であることが好ましいことが分かった。
また、実施例1及び2の表面層Aの表面の突起個数をみると、突起の大きさが大きくなるにつれて減少する傾向があることが分かる。また、実施例1及び2と、Q/N及びQが本発明の範囲を満たさない比較例1との突起個数を比較すると、50nm未満の突起個数、50nm以上100nm未満の突起個数及び100nm以上の突起個数のいずれにおいても、比較例1の方が大きいことが確認された。また、実施例1及び2よりも、比較例1の方が、最大山高さ(Sp)が高いことが確認された。
このことから、ポリエステルフィルムの表面層に用いるポリエステル原料の吐出量を大きくすることにより、粒子の凝集を抑制することができ、ポリエステルフィルム表面の平滑性を高くすることが可能であることが確認された。
一方、無機粒子を用いている比較例2及び比較例3の突起個数を比較すると、表面層におけるポリエステル原料の吐出量が大きい比較例3の方が、いずれの大きさの突起個数も多いことが確認できた。また、比較例2より比較例3の方が、最大山高さ(Sp)が大きくなることが確認された。すなわち、有機粒子を用いた場合は、無機粒子を用いた場合と傾向が異なり、上述の効果は有機粒子を用いた際の固有の現象であることがわかった。
また、平均粒径が0.05nmであるアルミナを用いた実施例4は、ポリエステルフィルム表面の平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)を、十分な大きさにすることができず、取り扱い性に難があり、シワが入りやすく、長尺化対応が困難であるため、生産効率を向上させることができないものであった。
本発明のポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、生産性向上に伴い、ポリエステルフィルムロールの長尺化に対応可能となる利点を有する。更に、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な薄膜の誘電体層を形成することができる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、
    前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、
    前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を満足する、ポリエステルフィルムロール。
    (1)平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
    (2)最大山高さ(Sp)が300nm以下であること。
    (3)凹凸の平均間隔(RSm)が0.016mm以下であること。
  2. 前記ポリエステルフィルムが3層構成のポリエステルフィルムである、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
  3. 前記ポリエステルフィルムの一方の表面層Aが、前記粒子を含有する、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルムロール。
  4. 前記ポリエステルフィルムの中間層が、再生ポリエステル原料を50質量%以上含有する、請求項2又は3に記載のポリエステルフィルムロール。
  5. 前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に離型層を有する、請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  6. 積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~5のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  7. 自動車セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
  8. ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールの製造方法であって、
    前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05~0.4μmの有機粒子を含有し、
    前記ポリエステルフィルムが3層構成のポリエステルフィルムであり、
    前記ポリエステルフィルムの表面層(A)の押出条件において、スクリュー回転数Nrpmに対する前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qkg/hの比Q/Nが、下記式(A)を満足する、ポリエステルフィルムロールの製造方法。
    2.5≦Q/N≦3.0・・・(A)
  9. 前記表面層(A)を構成するポリエステル原料の吐出量Qが180kg/h以上である、請求項8に記載のポリエステルフィルムロールの製造方法。
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