JP3895189B2 - ポリエステル組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル組成物に関し、更に詳しくはフィルムとしたときに滑剤粒子の凝集が起こりにくく、また触媒金属に起因する析出粒子数が極めて少ない、特に磁気記録媒体のベースフィルムとして有用なポリエステル組成物、それを用いた二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルは、優れた物理的または化学的特性を有することから、磁気記録媒体用ベースフィルムなどのフィルムに好適に用いられている。特に、蒸着ビデオ用テープに代表される高密度磁気記録用ベースフィルムとする場合、ポリエステルフィルム表面には、粗大突起のない極めて高い平坦性が要求される。
【0003】
フィルム表面に粗大突起が形成される原因としては、第一にフィルムを得る製膜工程やその後の加工工程でのフィルムの取扱い性を高めるためにポリエステル中に添加している不活性粒子が凝集し、粗大凝集粒子を形成することが挙げられる。また、第二にポリエステルの製造時に添加する触媒が、得られるポリエステル中で析出し、その析出によって粒径の大きな粗大析出粒子を形成することも挙げられる。特に後者の粗大析出粒子は、他の触媒に比べ、重合速度が速く、優れた熱安定性を有するポリエステルが得られることから汎用されているアンチモン化合物で発生しやすい。これらの粗大凝集粒子や粗大析出粒子といった粗大粒子が例えば磁気テープ用のベースフィルム中に存在すると、得られる磁気テープの重要なフィルム品質(例えば電磁変換特性やドロップアウト)を損なうことになる。そのため、添加した不活性粒子の凝集と触媒の析出とを同時に具備するポリエステルが強く望まれてきていた。
【0004】
ところで、不活性粒子の凝集を抑制する方法としては、凝集しにくい不活性粒子の採用、例えば特定の比表面積および細孔容積を持つ多孔質シリカの採用(特許第2056014号公報)や粒子表面ゼータ電位をもつ不活性微粒子の採用(特開2001−48969号公報)、または、添加する不活性粒子中の粗大粒子を減らす方法、例えば不活性粒子をスラリーに分散し、スラリー中の存在する粗大粒子を減らしてから、ポリエステルに添加する方法(特開平2−185522号公報)などが提案されている。また、触媒の析出を抑制する方法としては、例えばカルシウム化合物、マグネシウム化合物、アンチモン化合物およびリン化合物を触媒および安定剤として用い、その含有量および比率を特定の範囲とすること(特開平6−340734号公報)などが提案されている。これらの方法によれば、従来のポリエステル組成物に比べ、粗大突起数の比較的少ないフィルムを得られる。
【0005】
しかしながら、不活性粒子の凝集の抑制は、使用する不活性粒子が限られたり、添加した後に生じる凝集が解消されてない、また、触媒の析出は抑制できても添加した不活性粒子の凝集は解消されていないなどの問題は潜在していた。そして、ここ数年の磁気テープの記録密度の高密度化によって、従来問題とならなかったフィルム表面の突起がドロップアウトや電磁変換特性の低下を惹起することから、さらなるベースフィルムの表面の平坦性が求められてきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、触媒の析出を抑えつつ、ポリエステルフィルム中での不活性粒子の分散性を向上させた、表面の平坦なフィルムが得られる、ポリエステル組成物、それを用いた二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を行なった結果、主触媒としてポリエステルに可溶なチタン化合物を触媒とすることで触媒の析出を抑制することができ、さらに該ポリエステルに可溶なチタン化合物を極めて少量にすれば、リン化合物などのポリエステルの酸化防止剤を添加しなくても十分な熱安定性を得られるポリエステル組成物に付与することができ、しかも、酸化防止剤の添加量をポリエステル組成物の重量を基準として、高々5ppmとすることで、不活性粒子の分散性が向上できるという従来からは予測できない効果が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
かくして本発明の目的は、本発明によれば、全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレート成分であるポリエステル、平均粒径が0.5μm以下の不活性粒子およびポリエステルに可溶なチタン化合物からなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物の重量を基準として、該不活性粒子を0.01〜5重量%、該チタン化合物をチタン元素換算で5〜20ppmおよびポリエステルの酸化防止剤を高々3ppm以下の範囲で含有することを特徴とするポリエステル組成物によって達成される。
【0010】
【数2】
d=D70/D30 (I)
(式中、D70は積算粒子数70%の粒子径を、D30は積算粒子数30%の粒子径を示す。)
で表される粒度分布dが1.0〜2.0の範囲にあるポリエステル組成物も包含する。
【0011】
また、本発明によれば、上述のポリエステル組成物からなり、粒子径1μm以上の凝集粒子の個数が100個/mm2以下である二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
【0012】
さらにまた、本発明によれば、上述のポリエステル組成物を溶融状態でシート状に押出し、得られたシート状物を直交する2方向に延伸する、または上述のポリエステル組成物と他のポリエステル組成物とを溶融状態で混練してからシート状に押出し、得られたシート状物を直交する2方向に延伸する二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法も提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルである。このポリエステルは実質的に線状で、フィルム形成性を有するものであれば特に制限はされないが、溶融成形によるフィルム形成性を有するものが好ましい。ポリエステルを形成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸などを挙げることができ、これらの中でもテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また、ポリエステルを形成する脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールなどの炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどを挙げることができ、これらの中でもエチレングリコールが好ましい。
【0014】
本発明で使用する具体的なポリエステルとしては、全繰返し成分の80モル%以上がエチレンテレフタレート成分からなるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称することがある。)または全繰返し成分の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレート成分からなるポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、PENと称することがある。)を特に好ましく挙げることができる。PETおよびPENが共重合体である場合、表面平坦性や乾熱劣化性を損なわない範囲、例えば全繰返し成分の20モル%以下をエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレート以外の成分に置き換えてもよい。具体的にはテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸の一部を、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸としてもよい。また、エチレングリコールの一部をハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの脂肪族ジオール、1,4−ジヒドロキシジメチルベンゼンなどの芳香環を有する脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)などとしてもよい。さらにまた、繰返し単位であるエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートの一部を、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシ酸またはω−ヒドロキシカプロン酸などの脂肪族オキシ酸などのオキシカルボン酸に由来する成分としてもよい。さらに、本発明におけるポリエステルは、分子鎖が実質的に線状であるかぎり、全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸やポリヒドロキシ化合物(例えばトリメリット酸やペンタエリスリトールなど)を共重合したものであってもよい。
【0015】
また、本発明で使用するポリエステルは、ο−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が約0.5〜0.8のものが好ましく、さらに0.55〜0.75、特に0.60〜0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.50未満であるとフィルムの耐衝撃性が不足しやすい。他方、固有粘度が0.80を超えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げなくてはならず、製造工程が煩雑になりやすい。
【0016】
本発明のポリエステル組成物は、前述のポリエステルのほかに平均粒径0.5μm以下の不活性粒子を0.01〜5重量%、該ポリエステル組成物の重量を基準として、含有することが必要である。不活性粒子の含有量が下限未満だと、フィルムの滑り性が乏しいことから、フィルムの製膜工程あるいはその後のフィルムの加工工程での取り扱い性が極めて悪くなる。一方、不活性粒子の含有量が上限を超えると、フィルム表面が荒れ過ぎ、電磁変換特性などの品質が低下する。また、不活性粒子の平均粒径が上限を超えると、フィルム表面が荒れ過ぎ、電磁変換特性などの品質が低下する。不活性粒子の平均粒径の上限は、好ましくは0.3μm以下である。一方、不活性粒子の平均粒径の下限は特に制限されないが、平均粒径が小さくなると不活性粒子が凝集しやすくなるので、0.01μm以上、特に0.03μm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明で使用する不活性粒子は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、カオリナイト、タルクなどの無機粒子、または架橋ポリスチレン、架橋アクリルポリマー、架橋ポリエステルなどの架橋高分子の有機粒子などを挙げることができる。これらの中で、その表面にポリマー親和性がある水酸基を持つ不活性無機粒子、例えば、シリカ、チタニア、アルミナなどが好ましい。また、不活性粒子の形状は、得られるフィルム表面をより平坦にかつ均一にできることから、真球状の球状無機粒子、特に真球状シリカ粒子であることが好ましい。なお、本発明において、ポリエステル組成物中に含有される不活性粒子は、1種類に限られず、2種類以上であっても良い。ポリエステル組成物中に含有される不活性粒子が2種類以上の場合、不活性粒子の平均粒径はそれぞれ前述の平均粒径の上限以下であり、合計の不活性粒子量が前述の不活性粒子の含有量を満足する。
【0018】
本発明の特徴は、第一に、ポリエステル製造時の触媒として、少量でも高い重合活性を有し、かつポリエステルに可溶なチタン化合物を使用することにある。ここでポリエステルに可溶なチタン化合物とは、有機チタン化合物を意味し、具体的にはチタニウムテトラブトシキシド、トリメリット酸チタン、テトラエトキシチタン、硫酸チタン、塩化チタン等を好ましく例示することができる。これらの中でも、チタニウムテトラブトシキシドおよびトリメリット酸チタンが好ましい。かかるチタン化合物は、エステル交換法では、エステル交換反応開始前に添加しても、エステル交換反応中、エステル交換反応終了後、重縮合反応の直前に添加してもかまわない。また、エステル化法では、エステル化反応終了後に添加しても、重縮合反応の直前に添加してもかまわない。
【0019】
本発明の特徴は、第二に、ポリエステルに含まれるチタン化合物量を、ポリエステル組成物の重量を基準として、チタン元素換算で5〜20ppmの範囲、好ましくは7〜18ppmの範囲、特に好ましくは8〜17ppmの範囲にしたことにある。チタン化合物量が5ppmより少ないと、ポリエステル製造時の生産性が遅延し、一方20ppmを超えると、後述のポリエステルの酸化防止剤を添加しないと、フィルムの製膜時などに必要なポリマーの耐熱劣化性が得られない。すなわち、本発明の第二の特徴は、触媒量を重合反応を維持できる範囲で、極微量にしたことにある。なお、チタン化合物以外の触媒化合物、例えばアンチモン化合物,ゲルマニウム化合物等をチタン化合物と併用してもよいが、触媒の析出による粗大粒子が発生しやすくなることから、極力避けるべきである。ポリエステルに可溶なチタン化合物以外の触媒を併用する場合は、その含有量を、ポリエステル組成物の重量を基準として、5ppm以下とすることが好ましい。
【0020】
本発明の第3の特徴は、ポリエステルの酸化防止剤の割合を、ポリエステル組成物の重量を基準として、高々5ppmとしたことにある。なお、ここでいうポリエステルの酸化防止剤とは、ポリエステルの酸化による劣化の抑制作用を有する剤を意味し、リン元素、錫元素、硫黄元素およびニッケル元素を有する化合物が挙げられる。また、ここでいうポリエステル組成物中の酸化防止剤の割合は、ポリエステル組成物の重量を基準として、ポリエステル組成物に含まれるリン元素、錫元素、硫黄元素およびニッケル元素の割合を意味する。酸化防止剤の含有量が5ppmを超えると、触媒と該酸化防止剤との反応により粒子が析出したり、不活性粒子の凝集が起こりやすくなり不適である。もっとも好ましいのは、ポリエステル組成物中の酸化防止剤を含まないものである。このように酸化防止剤をポリエステル組成物中に含有させなくても、本発明のポリエステル組成物は、触媒量が極めて少量であるため、フィルムの製造に必要な耐熱劣化性を有する。なお、本発明のポリエステル組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、紫外線吸収剤などその使用に応じて、各種機能を付与するための剤などを含有していてもよい。
【0021】
本発明におけるポリエステル組成物は、それ自体公知のポリエステルを製造する方法で製造できる。例えば、ナフタレンジカルボン酸エステル(またはテレフタル酸エステル)とエチレングリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合反応を行う方法、または、ナフタレンジカルボン酸(またはテレフタル酸)とエチレングリコールとを脱水反応、いわゆる直接エステル化反応させた後、重縮合反応を行う方法を採用すればよい。
【0022】
本発明におけるチタン化合物の添加時期は、製造するポリマーの固有粘度が0.2dl/gに到達するまでの間であり、エステル交換反応を経由して重縮合反応を行なうエステル交換法では、エステル交換反応の開始前に、エステル交換反応触媒として添加してもよい。なお、エステル交換反応触媒としてチタン化合物を添加する場合は、反応を加圧下で行うことが、チタン化合物の添加量を少なくすることができることから好ましい。また、酸化防止剤を添加する場合、その添加時期は、エステル交換反応またはエステル化反応が実質的に終了した後であればいつでもよく、例えば、重縮合反応を開始する以前の大気圧下でも、重縮合反応を開始した後の減圧下でも、重縮合反応の末期でもまた、重縮合反応の終了後、すなわちポリマーを得た後に添加してもよい。なお、チタン化合物は重縮合反応触媒としても機能し、その機能を酸化防止剤が失活させる点からも、酸化防止剤は含まないことが好ましい。
【0023】
つぎに、その他の本発明の二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法について、詳述する。
【0024】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の本発明のポリエステル組成物からなる層を少なくとも一方の表面に有するものである。具体的には、前述の本発明のポリアルキレンナフタレート組成物からなる単層のフィルム、一方の表面が前述の本発明のポリエステル組成物からなるようにそれとは異なる他の熱可塑性樹脂組成物を積層した2層以上の積層フィルム、または、両方の表面が前述の本発明のポリアルキレンナフタレート組成物からなるようにそれとは異なる他の熱可塑性樹脂組成物からなる層を積層した3層以上の積層フィルなどが挙げられる。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の粗大粒子の少ないポリエステル組成物で少なくとも一方の表面が形成されていることから、少なくとも片面の表面は極めて平坦、すなわち、粒子径1μm以上の凝集粒子が1mm2あたりに100個以下である。したがって、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ベースフィルムに特に平坦な表面を要求する磁気記録媒体に好適に使用できる。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は特に制限されないが、例えば、以下の方法で製造できる。まず、乾燥したポリエステル組成物を、(Tm)〜(Tm+65)℃(Tmはポリエステルの融点(℃)である)の温度範囲でシート状に回転冷却ドラム上に溶融押出し、急冷固化して未延伸フィルム(シート)を得る。次いで、該未延伸フィルムを縦方向(フィルムの製膜方向)に延伸した後、横方向(フィルムの製膜方向および厚み方向に直交する方向で、フィルムの巾方向と称することもある。)に延伸する、いわゆる、縦・横逐次二軸延伸法(縦方向と横方向の延伸の順序は逆でもよく、また、さらに縦方向または横方向に再度延伸するものでもよい。)、または、縦方向と横方向に同時に延伸する、いわゆる、同時二軸延伸法で延伸する。この際の延伸温度は70〜180℃の範囲が好ましく、また、延伸倍率は面積延伸倍率で9〜35倍の範囲が好ましい。
【0027】
また、乾燥したポリエステル組成物を、(Tm)〜(Tm+65)℃の温度範囲でシート状に回転冷却ドラム上に溶融押出しする際に、ポリエステル組成物を、本発明のポリエステル組成物と他のポリエステル組成物との混合物としても良い。これにより、不活性粒子の含有量が異なる二軸配向ポリエステルフィルムを製造する際に、不活性粒子の含有量を変えたポリエステル組成物をそれぞれ二軸配向ポリエステルフィルムに合わせて用意しなくて良くなる。なお、本発明のポリエステル組成物と混ぜ合わせる他のポリエステル組成物は、不活性粒子の凝集を抑えやすいことから、酸化防止剤の含有量が少ない本発明のポリエステル組成物または不活性粒子を含有しないポリエステル組成物であることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「ppm」、「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準であり、本発明における物性値および特性は、それぞれ以下の方法で測定または定義される。
(1)ポリエステルの固有粘度([η])
オルトクロロフェノール中、35℃で測定する。
(2)ポリエステル組成物中の元素量
フィルムサンプルを240℃に加熱溶融して、円形ディスクを作成し、理学工業株式会社製蛍光X線装置3270型を用いて触媒金属元素および酸化防止剤を構成する元素の濃度を定量した。
(3)ジエチレングリコール量
フィルムをCDCl3/CF3COOD混合溶媒にて溶解し、1H−NMR(株式会社日立製作所製 R−1900 90MHz)にて測定した。
(4)粒子の平均粒径
株式会社島津製作所製、商品名「SACP−4L型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal ParticleSize Analyser)」を用い測定した。得られた遠心沈降曲線を基に計算した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径とした(単行本「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247参照)。
(5)フィルム中の凝集粒子数
フィルムを走査型電子務徴鏡用試料台に固定し、エイコーエンジニアリング(株)製スパッターリング装置(1B−2型イオンコーター装置)を用いてフィルム表面に下記条件にてイオンエッチング処理を施す。条件は、シリンダージャー内に試料を設置し、約6.65Pa(5×10-2Torr)の真空状態まで真空度を上げ、電圧0.45kV、電流5mAにて約15分間イオンエッチングを実施する。更に同装置にてフィルム表面に金スパッターを施し、走査型電子縮微鏡(株式会社日立製作所製 S3100)にて5000倍における視野範囲を観察し、面積から求めた円換算の粒径が1μm以上の凝集粒子数をカウントする。
【0029】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(以下、NDCと称することがある。)100部、エチレングリコール(以下、EGと称する。)60部、チタン化合物(トリメリット酸チタンを表1に示す元素量となるように添加)および平均粒径が0.05μmでD70/D30が1.3の真球状シリカを表1に示す量となるようにSUS製容器に仕込み、140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、反応混合物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下にて重縮合反応させ、固有粘度0.65のポリエチレンナフタレートを得た。なお、トリメチルホスフェート添加から重縮合での減圧開始までの時間は20分間で、この間の温度は240℃〜265℃で行った。
【0030】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物は、ペレットの状態で180℃の温度で充分に真空乾燥した。乾燥したペレットを280℃で溶融状態とし、回転しているキャスティングドラムに溶融状態のポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物を押出して、シート状物を得た。なお、キャスティングドラムは溶融物がキャストされる直前の表面温度が30℃で、その後表面温度は徐々に40℃まで上がっており、また、キャスティングドラムに溶融物がキャストされた直後に、シート状物のキャスティングドラムとは異なる側の位置に、ワイヤー状の電極があり、該電極によってシート状物を静電印加させ、キャスティングドラムに密着させている。このシート状物を135℃で縦方向に3.6倍、155℃で横方向に3.9倍に延伸し、その後230℃で5秒間熱固定処理して二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを得た。
【0031】
得られたポリエチレンー2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0032】
[実施例2、3]
真球状シリカ粒子として、D70/D30が表1に示すものに変更したのと、チタン化合物の含有量を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返して、ポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを得た。
【0033】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0034】
[参考例1]
テレフタル酸(以下、TAと称することがある。)90部、EG60部、チタン化合物(トリメリット酸チタンを表1に示す元素量となるように添加)および平均粒径が0.05μmでD70/D30が1.3の真球状シリカを表1に示す量となるようにSUS製容器に仕込み、140℃から240℃に昇温しながらエステル化反応させた後、反応混合物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下にて重縮合反応させ、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0035】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、ペレットの状態で180℃の温度で充分に真空乾燥した。乾燥したペレットを280℃で溶融状態とし、回転しているキャスティングドラムに溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を押出して、シート状物を得た。なお、キャスティングドラムは溶融物がキャストされる直前の表面温度が30℃で、その後表面温度は徐々に40℃まで上がっており、また、キャスティングドラムに溶融物がキャストされた直後に、シート状物のキャスティングドラムとは異なる側の位置に、ワイヤー状の電極があり、該電極によってシート状物を静電印加させ、キャスティングドラムに密着させている。このシート状物を100℃で縦方向に3.6倍、110℃で横方向に3.9倍に延伸し、その後220℃で5秒間熱固定処理して二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0036】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物および二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0037】
[参考例2]
テレフタル酸ジメチルエステル(以下、DMTと称することがある。)100部、EG70部、チタン化合物(トリメリット酸チタンを表1に示す元素量となるように添加)および平均粒径が0.05μmでD70/D30が1.0の真球状シリカを表一に示す量となるようにSUS製容器に仕込み、140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、酸化防止剤としてリン化合物(トリメチルホスフェートを表1に示すリン元素量となるように添加)を添加した。その後、反応混合物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下にて重縮合反応させ、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート組成物を得た。
【0038】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、参考例1と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムとした。
【0039】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物および二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0040】
[実施例6〜8]
酸化防止剤をリン化合物からニッケル化合物(酢酸ニッケル)、錫化合物(ジメチルスズ)、硫黄化合物(ジステアリル、3−3‘−チオジプロピオネート)をそれぞれ表1に示す金属元素量となるように変更した以外は、実施例2と同様な操作を繰り返して、ポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを得た。
【0041】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
エステル交換反応終了後に、酸化防止剤としてリン化合物(トリメチルホスフェートを表1に示すリン元素量となるように添加)を添加した以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。
【0043】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
エステル交換反応終了後に、酸化防止剤としてリン化合物(トリメチルホスフェートを表1に示すリン元素量となるように添加)を添加し、チタン化合物の含有量を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
【0045】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0046】
[比較例3]
酸化防止剤をリン化合物から硫黄化合物(ジステアリル、3−3‘−チオジプロピオネートを表1に示す硫黄元素量となるように添加)に変更した以外は、比較例3と同様な操作を繰り返した。
【0047】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
[比較例4]
チタン化合物をゲルマニウム化合物(二酸化ゲルマニウムを表1に示すゲルマニウム元素量となるように添加)に変更し、リン化合物の添加量を表1に示すとおり変更した以外は、比較例1と同様な操作を繰り返した。
【0049】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0050】
[比較例5]
チタン化合物をアンチモン化合物(三酸化二アンチモンを表1に示すアンチモン元素量となるように添加)に変更し、リン化合物の添加量を表1に示すとおり変更した以外は、比較例1と同様な操作を繰り返した。
【0051】
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物および二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0052】
[比較例6]
チタン化合物の添加量を表1に示すとおり変更し、エステル化反応終了後に酸化防止剤としてニッケル化合物(酢酸ニッケルを表1に示すニッケル元素量となるように添加)を添加した以外は参考例1と同様な操作を繰り返した。
【0053】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物および二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0054】
[比較例7]
チタン化合物をアンチモン化合物(三酸化二アンチモンを表1に示すアンチモン元素量となるように添加)に変更し、ニッケル化合物の添加量を表1に示すとおり変更した以外は比較例6と同様な操作を繰り返した。
【0055】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物および二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの特性を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
ここで、表1中の記号は、以下の化合物または元素を意味する。
【0058】
TA :テレフタル酸
NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル
DEG:ジエチレングリコール
TMT:トリメリット酸チタン
TBT:テトラブトキシチタン
GeO2:二酸化ゲルマニウム
Sb2O3:三酸化二アンチモン
Ti :ポリマーに可溶な触媒として使用されたチタン触媒の金属元素
Sb :ポリエステル中に残存するアンチモン触媒の金属元素
Ge :ポリエステル中に残存するゲルマニウム触媒の金属元素
P :酸化防止剤としてポリエステル中に残存するリン元素
Ni :酸化防止剤としてポリエステル中に残存するニッケル元素
S :酸化防止剤としてポリエステル中に残存する硫黄元素
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒の析出を抑えつつ、二軸配向ポリエステルフィルムとしたときに不活性粒子の分散性が向上できるポリエステル組成物が得られ、該ポリエステル組成物を用いた二軸配向ポリエステルフィルムは、極めて表面の平坦なフィルムとなり、磁気記録媒体、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして極めて有用である。
Claims (4)
- 全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレート成分であるポリエステル、平均粒径が0.5μm以下の不活性粒子およびポリエステルに可溶なチタン化合物からなるポリエステル組成物であって、該ポリエステル組成物の重量を基準として、該不活性粒子を0.01〜5重量%、該チタン化合物をチタン元素換算で5〜20ppmおよびポリエステルの酸化防止剤を高々3ppm以下の範囲で含有することを特徴とするポリエステル組成物。
- 請求項1に記載のポリエステル組成物からなり、粒子径1μm以上の凝集粒子の個数が100個/mm2以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
- 請求項1に記載のポリエステル組成物を溶融状態でシート状に押出し、得られたシート状物を直交する2方向に延伸することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1に記載のポリエステル組成物と他のポリエステル組成物とを溶融状態で混練してからシート状に押出し、得られたシート状物を直交する2方向に延伸することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
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