JP3684749B2 - ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリエステルフィルムの生産コストを下げるには、製膜速度を増速し、生産性を向上させることが有効である。そのためには、押出量を現行より増量する必要がある。しかし、押出量を増量すると、剪断発熱が発生し、ポリマが熱劣化・分解して、固有粘度の低下、ゲル、異物、オリゴマーが増大するなどの問題があった。
【0003】
一方、熱可塑性ポリマーに、液晶性ポリエステルを添加すると、溶融時の流動特性が改善されること(例えば特開昭56−115357号公報)、フィルムの機械特性に対しての補強効果があること(例えば特開昭63−75040号公報)は知られているが、実際に工業的にフィルム製造がなされたことはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶性ポリエステルをポリエステル原料中に分散し、含有させることによって、固有粘度の低いポリエステル原料はもちろん、固有粘度の高いポリエステル原料についても、溶融押出時、溶融粘度を大幅に低減させて、剪断発熱、押出トルクを大幅に低下させることにより、従来の製膜装置をなんら改造せずに、生産性向上をはかること、固有粘度の低下が小さいポリエステルフィルムを製膜することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
溶融粘度が0.1〜100Pa・秒の主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を固有粘度が0.6dl/g以上の非液晶性ポリエステル(A)中に平均分散径を10μm以下にして分散させたポリエステル原料を溶融押出成形機へ投入し製膜することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下さらに詳しく本発明について詳しく説明する。上記課題を解決するため、本発明者らは主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)の非液晶性ポリエステル(A)原料への添加方法、共重合ポリエステルの分散状態と溶融粘度低減効果、剪断発熱の関係について鋭意検討した。その結果、特定の方法を用いて共重合ポリエステル(B)を非液晶性ポリエステル(A)原料中に分散させておくと、溶融粘度低減効果を増大させ、剪断発熱を大幅に抑制できること、またその結果、生産性の向上が図れる、非液晶性ポリエステル(A)原料の固有粘度低下、オリゴマーの発生を抑制できることが分った。
【0007】
共重合ポリエステル(B)を非液晶性ポリエステル(A)原料中に分散させる方法としては、まず、非液晶性ポリエステル(A)チップと共重合ポリエステル(B)チップを混合し、窒素シールを行いながらベント式2軸混練押出機等を用いて溶融押出し、非液晶性ポリエステルに共重合ポリエステルを練り込む方法が好ましく行われ、この混練は複数回行うことが有効である。この時用いられるスクリュウとしては、BMタイプのものが練り混み強さの点から好ましい。
【0008】
また、共重合ポリエステルチップ(B)を非液晶性ポリエステル(A)チップに混合する前に粉砕し、分散径を小さくすることも好ましい。例えば、粉砕機中に、共重合ポリエステルチップとドライアイスを等量投入して、高速に回転させ粉砕を行い、分級して、分散径の小さな共重合ポリエステルを集め、非液晶性ポリエステルチップと混合し溶融押出を行いフィルムを製膜することも有効である。
【0009】
本発明の非液晶性ポリエステル(A)チップと共重合ポリエステル(B)チップの溶融粘度比(=非液晶性ポリエステルの溶融粘度η1 /共重合ポリエステルの溶融粘度η2 )の値は、特に限定されないが、2以上、好ましくは5以上さらに好ましくは10以上であることが好ましい。特に、溶融粘度比が2以上であると、非液晶性ポリエステル(A)に対する共重合ポリエステル(B)の分散性が良好となる。
【0010】
本発明の共重合ポリエステル(B)を分散させた非液晶性ポリエステル(A)原料中の共重合ポリエステルの平均分散径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。共重合ポリエステルの平均分散径が10μmより大きい非液晶性ポリエステル原料を用いた場合、溶融粘度低減効果が概して小さいため、剪断発熱、押出トルクを十分低下させることがむずかしい場合があるので注意が必要である。
【0011】
本発明のポリエステルフィルムの共重合ポリエステル(B)の形態は、製品としてのポリエステルフィルム中に分散していることが好ましく、本発明の場合は特に繊維状を呈した共重合ポリエステルが分散していることが好ましい。
【0012】
本発明のポリエステルフィルム中の共重合ポリエステル(B)の平均分散径(繊維の直径)としては、1μm以下、好ましくは、平均分散径が0.5μm以下、さらには、0.3μm以下であることが、溶融押出時の溶融粘度、剪断発熱の低減効果が高まるため好ましい。このときの繊維のアスペクト比(長径/分散径)は特に限定されないが10以上、好ましくは50以上である。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムの共重合ポリエステル(B)の含有量としては、0.2〜10重量%が好ましく、より好ましくは、0.3〜7重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。共重合ポリエステルの含有量が0.2重量%未満では、溶融押出時に剪断発熱を抑制する効果が小さくなり、固有粘度低下が大きくなるため、生産性、表面平坦性、低オリゴマーの観点から好ましくない。また、共重合ポリエステルの含有量が10重量%より大きくても、表面平坦性の点で好ましくない。
【0014】
本発明のポリエステルフィルム製造時における剪断発熱(押出温度上昇△T)は、特に限定されないが、好ましくは8℃以下、さらに好ましくは5℃以下である。押出温度上昇ΔTが8℃以上になると、固有粘度の低下が大きくなり、表面平坦性、低オリゴマーの観点から好ましくない。
【0015】
本発明で用いる主鎖にメソゲン基(液晶性の構造単位)を含有する共重合ポリエステル(B)は、溶融成形性のポリマーであり、液晶性ポリエステルであっても非液晶性ポリエステルであってもよい。具体的には、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる共重合ポリエステルなどである。
【0016】
本発明で用いる好ましい共重合ポリエステル(B)の例としては、下記(I)、(II)、(III )および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(III )および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(II)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステルから選ばれた1種以上であるものが用いられる。
【0017】
【化4】
(但し式中のR1 は、
【化5】
を示し、R2 は
【化6】
から選ばれた1種以上の基を示し、R3 は、
【化7】
から選ばれた1種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示し、構造単位[((II)+(III )]と構造単位(IV)は実質的に等モルである。)
【0018】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成したポリエステルの構造単位を、構造単位(II)は、4、4´−ジヒドロキシビフェニル、3、3´、5、5´−テトラメチル−4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2、6−ジヒドキシナフタレン、2、7−ジヒドキシナフタレン、2、2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4、4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III )はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4´−ジフェニルジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸、1、2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸および4、4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0019】
また、上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1 が
【化8】
であり、R2 が
【化9】
から選ばれた1種以上であり、R3 が
【化10】
から選ばれた1種以上であるものが好ましい。
【0020】
また、上記構造単位(I)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1 が
【化11】
であり、R3 が
【化12】
であるものが特に好ましい。
【0021】
また、上記構造単位(I)、(II)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1 が
【化13】
であり、R2 が
【化14】
であり、R3 が
【化15】
であるものが特に好ましい。
【0022】
本発明では、共重合量を、ポリマーを形成し得る繰返し構造単位のモル比から計算し、モル%で表す。上記好ましい共重合ポリエステル(B)の場合には、構造単位(I)、構造単位(II)+(IV)、構造単位(III )+(IV)がポリマーを形成し得る繰返し構造単位であり、これらの共重合モル比から共重合量が計算できる。構造単位(I)、(II)+(IV)、(III )+(IV)の共重合モル比は任意であるが、メソゲン基の共重合量は、5〜95モル%であると非液晶性ポリエステル(A)中で分散し、剪断発熱抑制効果が良好となる。メソゲン基である構造単位(I)、(II)+(IV)の共重合量が5モル%より低くなると、ポリマーの流動性改良による押出工程での剪断発熱抑制効果が得られにくく、異物が多くなり、表面粗さが大きくなる。また95モル%よりも高くなると分散性が低下し、フィルムを得ることが難しくなる。メソゲン基の共重合量が低くなると、異方性溶融相の形成能すなわち液晶性は弱まるが、非液晶性ポリエステル(A)との相溶性が高まるため、共重合ポリエステル(B)の分散性が高まりフィルムのが向上する。特にメソゲン基の共重合量が15モル%よりも低くなると、非液晶ポリエステル(A)と本発明の共重合ポリエステル(B)が相互に溶解、すなわち完全相溶化し、相分離構造が消失し易い。以上のことから、本発明の共重合ポリエステル(B)は次の共重合量であることが好ましい。
【0023】
上記構造単位(I)、(II)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位[(I)+(II)+(III )]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、15〜80%がより好ましい。また、構造単位[(I)+(II)+(III )]に対する(III )のモル分率は95〜5モル%が好ましく、85〜20モル%がより好ましい。また、構造単位(I)/(II)のモル比は流動性の点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III )]のトータルモル数と実質的に等しい。
【0024】
また、上記構造単位(I)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位(I)は[(I)+(III )]の5〜95モル%が好ましく、15〜80モル%がより好ましい。構造単位(IV)は構造単位(III ))と実質的に等モルである。
【0025】
さらに上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、単独ではなく、構造単位(I)、(II)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルまたは/および構造単位(I)、(III )および(IV)からなる共重合ポリエステルのブレンドポリマーとして用いることが好ましい。このブレンドポリマーの場合においても、前記同様に、構造単位[(I)+(II)+(III )]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、15〜80%がより好ましい。
【0026】
以上述べた説明中の「実質的に」とは、必要に応じてポリエステルの末端基をカルボキシル基末端あるいはヒドロキシル末端基のいずれかを多くすることができ、このような場合には構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III )]のトータルモル数と完全に等しくないからである。
【0027】
上記好ましい共重合ポリエステル(B)を重縮合する際には、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、3、3´−ジフェニルジカルボン酸、2、2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、pーアミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0028】
本発明における共重合ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、各種のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0029】
例えば、上記の好ましく用いられる共重合ポリエステルの製造法において、上記構造単位(III )を含まない場合は下記(1)および(2)、構造単位(III )を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましい。
【0030】
(1)p−アセトキシ安息香酸および4、4´−ジアセトキシビフェニル、4、4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0031】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0032】
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0033】
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましい場合もある。
【0034】
本発明の場合、p−ヒドロキシ安息香酸(以下PHBと略す)/エチレンテレフタレート共重合体、PHB/6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸共重合体、PHB/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、PHB/エチレンテレフタレート/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/テレフタル酸共重合体が最も好ましい。
【0035】
本発明の共重合ポリエステル(B)の溶融粘度は0.1〜100Pa・秒である。溶融粘度が0.1Pa・秒よりも小さくなると、非液晶性ポリエステル(A)の固有粘度を大きく低下させることがある。溶融粘度が100Pa・秒よりも大きくなると、非液晶性ポリエステル中に分散しにくくなり、剪断発熱抑制効果が小さくなる。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムを構成する非液晶性ポリエステル(A)としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とするポリエステルである。芳香族ジカルボン酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。また、ジオール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、ポリエステルにはトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の他の化合物を、ポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムには、特に限定されないが、非液晶性ポリエステル(A)と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)の他に、非液晶性ポリエステルと共重合ポリエステルの相溶化剤として、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)とPHBの共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下PENと略す)とPHBの共重合体、エポキシ系やオキサドリン系などの化合物等が、含有されていてもよい。PET/PHB共重合体、PEN/PHB共重合体のPETおよびPENの比率としては、特に限定されないが、相溶性の観点から、50モル%以上であることが好ましい。ポリエステルフィルム中の相溶化剤の含有量としては、特に限定されないが、共重合ポリエステルの含有量の10〜80%が好ましい。
【0038】
本発明に用いられる非液晶性ポリエステル(A)には必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤、あるいはポリシロキサン等の消泡剤を配合することができる。また、易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性を付与するためにクレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合したり、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子を含有せしめたり、界面活性剤を配合したりすることができる。
【0039】
本発明のポリエステルフィルムは未延伸・未配向フィルムでもよいが、各種の一軸あるいは二軸に延伸・熱処理した配向フィルムの方が弾性率、耐熱性などの点で好ましい。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムの製造工程において、ドラフト比は特に限定されないが、好ましくは3〜30、さらに好ましくは5から20である。ドラフト比が3より小さいあるいは30より大きいと、フィルム成形がむずかしい場合があるので注意が必要である。
【0041】
液晶性ポリエステルの平均分散径が10μmより大きいポリエステル原料を用いた場合、溶融粘度低減効果が概して小さいため、剪断発熱、押出トルクを十分低下させることがむずかしい場合があるので注意が必要である。
【0042】
本発明のポリエステルフィルムにおける押出時の固有粘度低下Δ[η]は特に限定されないが、好ましくは0.12以下、さらに好ましくは0.1以下である。固有粘度低下Δ[η]が0.12より大きくなると、低オリゴマーの観点から好ましくない場合がある。
【0043】
本発明のポリエステルフィルムは、特に限定されないが、表面粗大突起数H3が8個/100cm2 以下であることが好ましく、より好ましくは5個/100cm2 以下、特に好ましくは3個/100cm2 以下である。表面粗大突起数が10個/100cm2 を超えると、例えば、磁気記録用フィルムとしては用途の特性を大幅に低下させるので使用することが難しくなる。さらに異物の精度の高い評価法として最大突起高さの目安として2枚のフィルムを密着させ、異物によるフィルム間隔を測定するBASFが開発したニュートンリング光干渉を利用したBPM(BASF Protrusion Method)を用いて0.54μmのn次の高さの個数を検出する。5次以上、好ましくは3次以上の干渉がないことが好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルフィルムは単膜でもよいが、これに他のポリマー層、例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系ポリマー等を積層してもよい。
【0045】
本発明のポリエステルフィルムの厚さは、特に限定されないが、3〜500μmが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムは、特に限定されないが、磁気記録媒体用、写真用、コンデンサ用、電絶用、包装用、製図用、リボン用等に用いることができる。
【0047】
次に本発明のポリエステルフィルムの製造方法の好ましい例を示し説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
まず、非液晶性ポリエステルチップ(A)と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステルチップ(B)を混合し、窒素シールを行いながらベント式2軸混練押出機等を用いて溶融押出を行い、共重合ポリエステル(B)を分散させたポリエステルチップを作製する。
【0049】
次に、所定量の共重合ポリエステルを分散させたポリエステルチップを、加水分解を抑制するために、減圧下で180℃、10時間、充分乾燥したのち、溶融押出機に供給し、ポリエステルの分解を抑制するために脱気しながら押出を行い、ドラフト比10で、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。
【0050】
次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用い、長手方向の延伸を3段階以上に分けて、縦延伸温度75〜170℃、好ましくは85〜150℃、総縦延伸倍率3〜6倍、縦延伸速度5000〜50000%/分の範囲で行う。幅方向の延伸はテンターを用い、延伸温度80〜170℃、幅方向延伸倍率は3〜7倍、幅方向の延伸速度1000〜20000%/分の範囲で行う。さらに必要に応じて、再縦延伸、再横延伸を行う。その場合の延伸条件としては長手方向の延伸は90〜180℃、延伸倍率1.1〜2倍、幅方向は、延伸温度90〜180℃、幅方向延伸倍率は1.1〜2倍で行う。
【0051】
次にこの二軸配向フィルムを熱処理しワインダーにロール状に巻き取る。この場合の熱処理温度は170〜250℃で、時間は0. 5〜60秒の範囲で行う。
【0052】
【物性の測定方法ならびに効果の評価方法】
本発明の特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0053】
(1)固有粘度[η]
オルトクロロフェノール中、0.1g/ml濃度で、25℃で測定した。単位はdl/gである。
【0054】
Δ[η]=(ポリマーチップの固有粘度)−(ポリエステルフィルムの固有粘度)
【0055】
(2)オリゴマー含有量
ポリマー100mgをオルトクロロフェノール1mlに溶解し、ポリマーに対する割合(重量%)を、液体クロマト(モデル8500、VARIAN社製)で測定した。
【0056】
(3)溶融粘度
融点(Tm)+15℃の条件で、ずり速度1000(1/秒)の条件下でノズル径0.5mmφ、ノズル長さ10mmのノズルを用い、高下式フローテスターによって測定した値である。単位はPa・秒で表す。
【0057】
また、融点(Tm)とは、示差走査熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)のピークを指す。
【0058】
(3)表面粗大突起数H3
測定面(100cm2 )同士を2枚重ね合わせて静電気力(印加電圧5.4kV)で密着させた後、2枚のフィルム間で粗大突起部分の光の干渉によって生じるニュートン環から粗大突起の高さを判定し、3重環以上の粗大突起数をH3とした。なお、光源はハロゲンランプに564nmのバンドパスフィルターをかけて用いた。
【0059】
(4)共重合ポリエステルの平均分散径(繊維の直径)、アスペクト比
フィルムを液体窒素中に浸漬させ、十分冷却したのち、空気中でフィルムを割り、その断面を走査型電子顕微鏡で(SEM)にて観察し、場所を変えて10視野以上測定した。観察された視野中にある共重合ポリエステルの長径/短径のうち短径を分散径とし、その平均を平均分散径とした。単位はμmで表す。共重合ポリエステルの長径/短径(分散径)の比をアスペクト比とした。
【0060】
原料の場合も、フィルムの場合と同様にして平均分散径、アスペクト比を求めた。
【0061】
(5)生産性
同一の押出機を用い、剪断発熱を抑えて、押出を行ったときの吐出量で、生産性を、◎、○、△、×で評価した。
【0062】
(7)ドラフト比
口金リップポリマ流速/キャスティングドラム(CD)上フィルム(ポリマー)流速で表す。
【0063】
(8)剪断発熱(ΔT)
ΔT(℃)=押出時の温度−設定温度
押出時の温度は、押出機から押出された直後のポリエステルの温度、設定温度は、押出機先端のシリンダーの設定温度で表す。
【0064】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明の実施態様を説明する。
【0065】
実施例1
ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール70重量部、酢酸リチウム0.002重量部、酢酸マグネシウム0.06重量部及び三酸化アンチモン0.03重量部を加え、常法に従いエステル交換反応せしめた後に、リン酸トリメチル0.023重量部を添加した。その後、粒径が約0.6μmの炭酸カルシウムのエチレングリコールスラリーと粒径が約0.2μmのコロイダルシリカのエチレングリコールスラリーを添加し、次いで、徐々に昇温、減圧し、最終的に280℃、1mmHg以下で重縮合反応を行うことにより、[η]=0.65、炭酸カルシウム濃度0.01重量%、コロイダルシリカ濃度0.3重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを、直径約2mm、高さ約3mmのチップ形状として得た。
【0066】
得られたチップを乾燥後、1mmHg以下の減圧下、180℃で撹拌しながら2時間予備結晶化を行った。その後、さらに220℃に昇温して、20時間固相重合を続行し、[η]=0.8のPETチップを得た。
【0067】
p−ヒドロキシ安息香酸(80モル%)とポリエチレンテレフタレート(20モル%)とからなる共重合ポリエステル(B)(以下LCPと略す)(融点260℃、液晶開始温度240℃、溶融粘度 25Pa・秒)チップをベント式の2軸混練押出機を用いて非液晶性ポリエステル(A)(PETチップ、[η]=0.8)に練り込みLCP3重量%含有PETチップ([η]=0.73)を得た。
【0068】
このLCP含有PETチップを、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、脱気しながら295℃で溶融した。このポリマを30μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比9で、Tダイ口金から溶融シートを押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルム([η]=0.7)を作った。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0069】
この未延伸フィルムを温度97℃にて長手方向に3.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて105℃で幅方向に3.8倍延伸した。このフィルムを定長下で225℃にて7秒間熱処理し、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムをワインダーにて巻取った。このフィルム中のLCPの平均分散径は0.5μmであった。
【0070】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0071】
実施例2
実施例1における固相重合前の[η]=0.65のPETチップを用い、ベント式の2軸混練押出機で溶融押出しを行い、LCP1重量%含有PETチップ([η]=0.62)を得た。
【0072】
このLCP含有PETチップを180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら280℃で溶融した。これらのポリマを10μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比15で、Tダイ口金から溶融シートを押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルム([η]=0.61)を作った。この時、押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0073】
この未延伸フィルムを温度93℃にて長手方向に4.0倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて103℃で幅方向に3.9倍延伸した。さらに、テンターを用いて170℃で幅方向に1.25倍延伸した。このフィルムを定長下で230℃にて5秒間熱処理し、総厚さ10μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0074】
このフィルム中のLCPの平均分散径は0.9μmであった。
【0075】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0076】
実施例3
LCPチップをあらかじめ粉砕機にて粉砕し、平均分散径が1μm以下のLCPを分級した。このLCPとPETチップ([η]=1.0)を、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら297℃で溶融し、ポリマを30μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比12で、Tダイ口金から溶融シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、LCP 9重量%を含有した未延伸PETフィルム([η]=0.94)を作った。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0077】
この未延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.7倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて100℃で幅方向に3.9倍延伸した。このフィルムを定長下で210℃にて5秒間熱処理し、厚さ7μmの二軸配向PETフィルムをワインダーにて巻取った。このフィルム中のLCPの平均分散径は0.2μmであった。
【0078】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0079】
実施例4
実施例1と同様にして、LCPを0.5重量%含有したPETチップ([η]=0.80)を得た。このLCP含有PETチップを、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、脱気しながら290℃で溶融した。このポリマを20μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比10で、Tダイ口金から溶融シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルム([η]=0.75)を作った。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0080】
この未延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.6倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて110℃で幅方向に3.9倍延伸した。このフィルムを定長下で225℃にて7秒間熱処理し、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムをワインダーにて巻取った。このフィルム中のLCPの平均分散径は0.7μmであった。
【0081】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0082】
実施例5
実施例1と同様にして、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下PENと略称する)チップにLCPチップ練り込み、LCP含有PENチップ([η]=0.9)を得た。
【0083】
このLCP含有PENチップとLCPを含有していないPENチップ([η]=0.85)を適当量混合して、LCPを4重量%含有したPENチップ([η]=0.88 0.3μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.6重量%、0.8μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.05重量%含有)を得た。このLCP含有PENチップを、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら300℃で溶融した。このポリマを30μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比10で、Tダイ口金から溶融シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルム([η]=0.8)を作った。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0084】
この未延伸フィルムを温度137℃にて長手方向に4.2倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行なった。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて155℃で幅方向に4.5倍延伸した。このフィルムを定長下で230℃にて5秒間熱処理し、厚さ70μmの二軸配向PENフィルムをワインダーにて巻取った。このフィルム中のLCPの平均分散径は0.5μmであった。
【0085】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0086】
実施例6
実施例3と同様にして、LCP含有PENチップ([η]=1.4)を得た。
【0087】
このLCP含有PENチップとLCPを含有していないPENチップ([η]=1.45)を適当量混合して、LCPを9重量%含有したPENチップ([η]=1.3 0.3μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.5重量%、0.8μm径ポリジビニルベンゼン粒子0.05重量%含有)を得た。このLCP含有PENチップを、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら300℃で溶融した。このポリマを30μm以上の異物等を95%の確率で除去する濾過精度を有する高精度フィルターを用いて瀘過した後、ドラフト比11で、Tダイ口金から溶融シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルム([η]=1.2)を作った。押出機の吐出量を調節し総厚さを調節した。
【0088】
この未延伸フィルムを温度140℃にて長手方向に4.3倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で行った。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて158℃で幅方向に4.7倍延伸した。このフィルムを定長下で230℃にて5秒間熱処理し、厚さ70μmの二軸配向PENフィルムをワインダーにて巻取った。このフィルム中のLCPの平均分散径は0.7μmであった。
【0089】
この二軸配向PETフィルムの特性は表1、2に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0090】
実施例7
実施例1において、固相重合を90時間続行し、[η]=1.4のPETチップを用いたこと以外は、実施例1と同様の製膜方法で二軸配向フィルムを得た。
【0091】
この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0092】
実施例8
p−ヒドロキシ安息香酸(42.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(7.5モル%)、テレフタル酸(57.5モル%)からなる共重合ポリエステル(B)(融点210℃、溶融粘度 20Pa・秒)チップをベント式の2軸混練押出機を用いてPETチップ([η]=0.85)に練り込みLCP10重量%含有PETチップ([η]=0.8)を得た。このチップとPETチップ([η]=0.8)を、20/80(重量%)の割合で混合し、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、脱気しながら295℃で溶融した。あとは、実施例1と同様な製膜方法で二軸配向フィルムを得た。この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0093】
実施例9
p−ヒドロキシ安息香酸(72.5モル%)、エチレングリコール(20モル%)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(7.5モル%)、テレフタル酸(27.5モル%)からなる共重合ポリエステル(B)(融点265℃、溶融粘度1.5Pa・秒)チップをベント式の2軸混練押出機を用いてPETチップ([η]=1.4)に練り込みLCP2重量%含有PETチップ([η]=1.25)を得た。このチップとPETチップ([η]=1.25)を、25/75(重量%)の割合で混合し、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、脱気しながら295℃で溶融した。あとは、実施例1と同様な製膜方法で二軸配向フィルムを得た。この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0094】
実施例10
p−ヒドロキシ安息香酸(42.5モル%)、エチレングリコール(50モル%)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(7.5モル%)、テレフタル酸(57.5モル%)からなる共重合ポリエステル(融点205℃、溶融粘度1Pa・秒)チップをベント式の2軸混練押出機を用いてPETチップ([η]=1)に練り込みLCP2重量%含有PETチップ([η]=0.9)を得た。このチップとPETチップ([η]=0.9)を、20/80(重量%)の割合で混合し、180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、脱気しながら295℃で溶融した。あとは、実施例1と同様な製膜方法で二軸配向フィルムを得た。この二軸配向PETフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0095】
実施例11〜13
非液晶性ポリエステル(A)の種類、固有粘度、共重合ポリエステル(B)の溶融粘度、分散方法、組成、添加量を変更したポリエステルフィルムを製膜した。得られたフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱が抑制され、生産性が向上し、押出時の固有粘度の低下抑制に優れていた。
【0096】
比較例1
実施例1のようにLCPチップをPETチップに練り込まず、[η]=0.73のPETチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら280℃で溶融した。あとは実施例1と同様の製膜方法で、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が298℃に上昇していた(設定温度 280℃)。
【0097】
比較例2
実施例2のように、LCPチップをPETチップに練り込まず、[η]=0.62のPETチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら280℃で溶融した。あとは実施例2と同様の製膜方法で、厚さ10μmの二軸配向PETフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が293℃に上昇していた(設定温度 280℃)。
【0098】
比較例3
実施例3のように粉砕機を用いてLCPチップの粉砕を行わず、[η]=1.0のPETチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら溶融した。あとは実施例3と同様の製膜方法で、厚さ7μmの二軸配向PETフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が300℃に上昇していた(設定温度 280℃)。
【0099】
比較例4
実施例4のように、LCPチップをPETチップに練り込まず、[η]=0.8のPETチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら溶融した。あとは実施例4と同様の製膜方法で、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が295℃に上昇していた(設定温度 280℃)。
【0100】
比較例5
実施例5のように、LCPチップをPETチップに練り込まず、[η]=0.88のPETチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら溶融した。あとは実施例5と同様の製膜方法で、厚さ70μmの二軸配向PENフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が300℃に上昇していた(設定温度 285℃)。
【0101】
比較例6
実施例6のように粉砕機を用いてLCPチップの粉砕を行わず、[η]=1.2のPENチップとLCPチップをそれぞれ180℃で10時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し脱気しながら溶融した。あとは実施例6と同様の製膜方法で、厚さ70μmの二軸配向PENフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が310℃に上昇していた(設定温度 285℃)。
【0102】
比較例7
LCPを含有していないPETチップ([η]=1.0)を用いて、実施例3と同様の製膜方法で厚さ7μmの二軸配向PETフィルムを得た。実験開始1時間後、剪断発熱のために押出温度が330℃に上昇していた(設定温度 280℃)。
【0103】
比較例8〜13
共重合ポリエステル(B)を非液晶性ポリエステル(A)中に練り込まなかったり、共重合ポリエステル(B)を粉砕せず、ポリエステルフィルムを製膜した。得られたフィルムの特性は表に示したとおりであり、剪断発熱抑制が不十分で、押出時の非液晶性ポリエステルの固有粘度が低下していた。
【0104】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0105】
【発明の効果】
本発明は、メソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を非液晶性ポリエステル(A)中に分散させたポリエステル原料を溶融押出成形機へ投入し製膜することにより、押出時の剪断発熱を低減させ、生産性の向上を図るものであり、本発明の製造法により、固有粘度の低下が小さいフィルムを得ることができる。
Claims (8)
- 溶融粘度が0.1〜100Pa・秒の主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を固有粘度が0.6dl/g以上の非液晶性ポリエステル(A)中に平均分散径を10μm以下にして分散させたポリエステル原料を溶融押出成形機へ投入し製膜することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
- 溶融粘度が0.1〜100Pa・秒の主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を固有粘度が0.6dl/g以上の非液晶性ポリエステル(A)中に平均分散径を10μm以下にして分散させたポリエステル原料と非液晶性ポリエステル原料とを溶融押出成形機へ投入し製膜することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 溶融粘度が5〜100Pa・秒の主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を固有粘度が0.6dl/g以上の非液晶性ポリエステル(A)に分散させたポリエステル原料を溶融押出成形機へ投入し製膜することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)が分散され含有したポリエステルフィルムにおいて、該共重合ポリエステル(B)の平均分散径が1μm以下であり、かつ、固有粘度が0.68dl/g以上であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 共重合ポリエステル(B)の平均分散径が0.3μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリエステルフィルム。
- 共重合ポリエステル(B)を0.2〜10重量%含有することを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムが一軸または二軸に配向されたフィルムであることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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