JP3681515B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動機の動力を操舵系に作用させて運転者の操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置に係り、詳しくは、電動機ならびに電動機駆動部の過熱を防止できるようにした電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は電動パワーステアリング装置の一例を示す模式構造図である。電動パワーステアリング装置1は、ステアリング系に電動機10を備え、電動機10から供給する動力を制御装置20を用いて制御することによって、運転者の操舵力を軽減している。
【0003】
ステアリングホイール(操向ハンドル)2に一体的に設けられたステアリング軸3は、自在継ぎ手4a,4bを有する連結軸4を介してラック&ピニオン機構5のピニオン6へ連結される。ラック軸7はピニオン6と噛合するラック歯7aを備える。ラック&ピニオン機構5は、ピニオン6の回動をラック7軸の方向への往復運動へ変換する。ラック軸7の両端にタイロッド8を介して転動輪としての左右の前輪9が連結される。ステアリングホイール2を操舵すると、ラック&ピニオン機構5ならびにタイロッド8を介して前輪(操向車輪)9が揺動される。これにより車両の向きを変えることができる。
【0004】
操舵力を軽減するために、操舵補助トルク(アシストトルク)を供給する電動機10をラック軸7と同軸的に配置し、ラック軸7にほぼ平行に設けられたボールねじ機構11を介して電動機10の回動出力を推力に変換して、ラック軸7に作用させている。電動機10のロータには、駆動側ヘリカルギア10aが一体的に設けられている。ボールねじ機構11のねじ軸11aの軸端に一体的に設けられたヘリカルギア11bと駆動側ヘリカルギア10aとを噛合させている。ボールねじ機構11のナット11cはラック軸7に連結されている。
【0005】
ステアリングボックス(図示しない)に設けられた操舵トルク検出器(操舵トルクセンサ)12によってピニオン6に作用する手動操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じた操舵トルク信号Tpを制御装置20へ供給している。制御装置20は、操舵トルク信号Tpを主信号として電動機10の運転を行い、電動機10の出力パワー(操舵補助トルク)を制御する。
【0006】
図2は従来の制御装置の一例を示すブロック構成図である。従来の制御装置20Aは、電動機駆動制御部30と、電動機駆動部40とからなる。符号BATはバッテリ電源、符号25は電動機10に流れる電流を検出して電動機電流信号(以下、電動機電流と記す)IMを出力する電動機電流検出器である。
【0007】
電動機駆動制御部30は、操舵トルク検出器12から出力される操舵トルク信号Tpに基づいて、操舵トルクに応じた操舵補助トルクを電動機10から発生させるために電動機10に供給すべき基本電流値を求めるとともに、図示しない車速センサによって検出された車速に応じて基本電流値を補正し、補正して得た電動機に供給すべき電流に係る信号を電動機駆動制御信号(目標電流信号)ITとして出力する。電動機駆動制御信号(目標電流信号)ITは電動機駆動部40へ供給される。
【0008】
電動機駆動部40は、偏差演算部41と、PID制御部42と、PWM信号生成部43と、ゲート駆動回路部44と、4個の電力用電界効果トランジスタをH型ブリッジ接続した電動機駆動回路45とを備える。
【0009】
偏差演算部41は、電動機駆動制御信号(目標電流信号)ITと電動機電流検出器25で検出した電動機電流IMとの偏差を求め偏差信号41aを出力する。偏差信号41aはPID制御部42へ供給される。
【0010】
PID制御部42は、偏差信号41aに対して比例、積分、微分等の処理を施して偏差がゼロに近づくように電動機10に供給する電流を制御するための駆動制御信号42aを生成して出力する。駆動制御信号42aはPWM信号生成部43へ供給される。
【0011】
PWM信号生成部43は、駆動制御信号42aに基づいて電動機10をPWM運転するためのPWM(パルス幅変調)信号43aを生成して出力する。PWM信号43aは、ゲート駆動回路部44へ供給される。ゲート駆動回路部44は、PWM信号43aに基づいて各電界効果トランジスタのゲートを駆動して各電界効果トランジスタをスイッチング駆動する。
【0012】
以上の構成であるから従来の制御装置20Aは、操舵トルク検出部12によって検出された操舵トルクTpに基づいてバッテリ電源BATから電動機10へ供給する電力をPWM制御し、電動機10の出力パワー(操舵補助トルク)を制御する。
【0013】
ところが、このような電動パワーステアリング装置にあっては、電動機10に比較的大きな電流が通電されるため、この電動機10および電動機10へ電流を通電する電動機駆動回路45の発熱量が大きく、電動機10および電動機駆動回路45が高温になることがある。
【0014】
そこで、従来、このような高温度環境下における機器の保護を目的とする電動機式動力舵取装置(電動パワーステアリング装置)が、実開昭61−91465号公報で提案されている。実開昭61−91465号公報に記載された電動機式動力舵取装置は、操舵状態で操舵力を補助する電動機の温度を検出し、所定温度を越える過熱状態となったときに、電動機の駆動電流値を正常時に比較して制限するようにしている。これにより、雰囲気温度に影響されず正確な電動機温度を検出して電動機の過熱による焼損を防止するとともに、電動機の容量を不必要に大きな安全率で設定する必要をなくしている。
【0015】
また、本出願人は特開昭63−263167号公報で、操舵補助力発生用の電動機へ通電される電流値の所定時間における平均値を算出し、この平均値に応じて電動機へ通電される電流の最大値を制限することにより、電動機を過熱から保護するようにした電動機式動力舵取装置(電動パワーステアリング装置)を提案している。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実開昭61−91465号公報に記載された電動機式動力舵取装置では、電動機が所定温度を越える過熱状態になったときに電動機の駆動電流値を正常時に比較して制限する構成であるため、電動機が一時的に過熱状態となる虞れがある。
【0017】
本出願人が特開昭63−263167号公報で提案した電動機式動力舵取装置では、電動機の周囲温度が比較的高温の状態を想定して、電動機へ通電される電流値の所定時間における平均値に応じて電動機へ通電される電流の最大値を制限するようにしているために、電動機の周囲温度が比較的低温の状態で電動機が過熱するに至らない状態であっても、電動機へ通電される電流の最大値が制限されてしまい、電動機から所望の操舵補助力が供給できなくなることがある。
【0018】
また、電動機だけでなく電動機に電流を供給する電動機駆動部においても過熱防止を図るのが望ましい。特に、電動機駆動回路を構成する電界効果トランジスタ等の電力用半導体素子は、過熱よって素子特性の劣化が生ずることがあるので、過熱状態になる前に電力用半導体素子に供給する電流を制限するのが望ましい。
【0019】
この発明はこのような課題を解決するためなされたもので、電動機の周囲温度と電動機に通電する電流による発熱量とに基づいて電動機の温度上昇を推定して、電動機が過熱状態になる前に電動機に供給する電流を制限できるようにした電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、この発明は、電動機へ電流を通電する電動機駆動部の周囲温度と電動機駆動部に通電する電流による発熱量とに基づいて電動機駆動部の温度上昇を推定して、電動機駆動部が過熱状態になる前に電動機駆動部に通電する電流を制限できるようにした電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング系に操舵補助力を付加する電動機と、ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、少なくとも操舵トルク検出器からの信号に基づいて電動機を駆動するための電動機駆動制御信号を生成して出力する電動機駆動制御部と、電動機駆動制御信号に基づいて電動機を駆動する電動機駆動部と、からなる電動パワーステアリング装置において、電動機の周辺温度を検出する電動機周囲温度検出器と、電動機駆動制御信号に基づいて電動機の発熱量を推定する電動機発熱量推定部と、電動機周囲温度検出器によって検出された電動機の周辺温度と電動機発熱量推定部によって推定された電動機の発熱量とに基づいて、電動機の温度上昇を予測し、この予測温度が予め設定した電動機許容温度を越える場合は、この電動機許容温度を越えない範囲で電動機電流制限値を出力する電動機発熱量制限部と、電動機発熱量制限部から電動機電流制限値が供給された場合は、電動機駆動制御部から供給される電動機駆動制御信号と電動機電流制限値とを比較し、電動機駆動制御信号が電動機電流制限値を越えているときは、電動機電流制限値を補正電動機駆動制御信号として電動機駆動部へ供給する電流制限部と、を設けたことを特徴とする。
【0022】
また、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング系に操舵補助力を付加する電動機と、ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、少なくとも操舵トルク検出器からの信号に基づいて電動機を駆動するための電動機駆動制御信号を生成して出力する電動機駆動制御部と、電動機駆動制御信号に基づいて電動機を駆動する電動機駆動部と、からなる電動パワーステアリング装置において、電動機駆動部の周辺温度を検出する電動機駆動部周囲温度検出器と、電動機駆動制御信号に基づいて電動機駆動部の発熱量を推定する電動機駆動部発熱量推定部と、電動機駆動部周囲温度検出器によって検出された電動機駆動部の周辺温度と電動機駆動部発熱量推定部によって推定された電動機駆動部の発熱量とに基づいて、電動機駆動回路の温度上昇を予測し、この予測温度が予め設定した駆動部許容温度を越える場合は、この駆動部許容温度を越えない範囲で電動機駆動部電流制限値を出力する電動機駆動部発熱量制限部と、電動機駆動部発熱量制限部から電動機駆動部電流制限値が供給された場合は、電動機駆動制御部から供給される電動機駆動制御信号と電動機駆動部電流制限値とを比較し、電動機駆動制御信号が電動機駆動部電流制限値を越えているときは、電動機駆動部電流制限値を補正電動機駆動制御信号として電動機駆動部へ供給する電流制限部と、を設けたことを特徴とする。
【0023】
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、電動機周囲温度検出器によって検出された電動機の周辺温度と電動機発熱量推定部によって推定された電動機の発熱量とに基づいて電動機の温度変化を予測し、電動機が過熱状態になる前に電動機に供給する電流を制限する。よって、電動機の過熱を防止できる。
【0024】
また、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、電動機駆動部周囲温度検出器によって検出された電動機駆動部の周辺温度と電動機駆動部発熱量推定部によって推定された電動機駆動部の発熱量とに基づいて電動機駆動部の温度変化を予測し、電動機駆動部は電動機が過熱状態になる前に電動機駆動部から電動機へ供給する電流を制限する。よって、電動機駆動部の過熱を防止できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。電動パワーステアリング装置の構造は、図1に示したものと基本的に同じであり、その構造ならびに動作については前述した通りである。
【0026】
図3はこの発明に係る電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック構成図である。図3に示す制御装置20Bは、電動機駆動制御部30と、過熱防止部50と、電動機駆動部40とからなる。符号BATはバッテリ電源、符号25は電動機10に流れる電流を検出して電動機電流信号(以下、電動機電流と記す)IMを出力する電動機電流検出器である。
【0027】
電動機10の近傍に電動機10の周辺温度を検出する電動機周囲温度検出器26を設けている。電動機周囲温度検出器26で検出された電動機周囲温度に係る信号(以下、電動機周囲温度と記す)TMは、過熱防止部50内の電動機発熱量制限部52へ供給される。
【0028】
電動機駆動回路45の近傍に電動機駆動回路45の周辺温度を検出する電動機駆動部周囲温度検出器27を設けている。電動機駆動部周囲温度検出器27で検出された電動機駆動部周囲温度に係る信号(以下、電動機駆動部周囲温度と記す)TDは、過熱防止部50内の電動機駆動部発熱量制限部53へ供給される。
【0029】
電動機駆動制御部30は、操舵トルク検出器12から出力される操舵トルク信号Tpに基づいて、操舵トルクに応じた操舵補助トルクを電動機10から発生させるために電動機10に供給すべき基本電流値を求めるとともに、図示しない車速センサによって検出された車速に応じて基本電流値を補正し、補正して得た電動機10に供給すべき電流に係る信号を電動機駆動制御信号(目標電流信号)ITとして出力する。電動機駆動制御信号(目標電流信号)ITは、過熱防止部50を介して電動機駆動部40へ供給される。
【0030】
過熱防止部50は、電流制限部51と、電動機発熱量制限部52と、電動機駆動部発熱量制限部53と、電動機発熱量推定部54と、電動機駆動部発熱量推定部55とを備える。電流制限部51と電動機発熱量制限部52とで請求項1に記載した発熱量制限部と構成している。電流制限部51と電動機駆動部発熱量制限部53とで請求項2に記載した発熱量制限部を構成している。
【0031】
電動機発熱量推定部54は、電動機電流検出器25で検出された電動機電流IMに基づいて電動機10の発熱量を推定し、推定した電動機発熱量54aを電動機発熱量制限部52へ供給する。電動機発熱量推定部54は、所定時間の電動機電流IMの平均値を求め、求めた所定時間の電動機電流IMの平均値に基づいて電動機10の発熱量を推定する。電動機発熱量推定部54は、予め登録した電動機発熱量演算式に基づいて発熱量を求める構成としている。なお、電動機発熱量推定部54は、所定時間の電動機電流IMの平均値と発熱量との関係を予め登録した電動機電流IM−電動機発熱量変換テーブルを備える構成としてもよい。また、電動機発熱量推定部54は、所定時間の電動機電流IMの積分値に基づいて電動機10の発熱量を推定する構成としてもよい。
【0032】
電動機発熱量制限部52は、電動機発熱量推定部54から供給される電動機発熱量54aと電動機周囲温度TMとに基づいて、電動機10の温度上昇を予測する。電動機発熱量制限部52は、電動機10の温度が予め設定した電動機許容温度を越える場合は、その許容温度を越えない範囲で電動機10に供給することのできる電流値を電動機電流制限値52aとして出力する。この電動機電流制限値52aは電流制限部51へ供給される。
【0033】
電動機駆動部発熱量推定部55は、電動機電流検出器25で検出された電動機電流IMに基づいて電動機駆動回路45の発熱量を推定し、推定した電動機駆動部発熱量55aを電動機駆動部発熱量制限部53へ供給する。電動機駆動部発熱量推定部55は、所定時間の電動機電流IMの平均値を求め、求めた所定時間の電動機電流IMの平均値に基づいて電動機駆動回路45の発熱量を推定する。電動機駆動部発熱量推定部55は、予め登録した電動機駆動部発熱量演算式に基づいて発熱量を求める構成としている。なお、電動機駆動部発熱量推定部55は、所定時間の電動機電流IMの平均値と発熱量との関係を予め登録した電動機電流IM−電動機駆動部発熱量変換テーブルを備える構成としてもよい。また、電動機駆動部発熱量推定部55は、所定時間の電動機電流IMの積分値に基づいて電動機駆動回路45の発熱量を推定する構成としてもよい。
【0034】
電動機駆動部発熱量制限部53は、電動機駆動部発熱量推定部55から供給される電動機駆動部発熱量55aと電動機駆動部周囲温度TDとに基づいて、電動機駆動回路45の温度上昇を予測する。電動機駆動部発熱量制限部53は、電動機駆動回路45の温度が予め設定した駆動部許容温度を越える場合は、その許容温度を越えない範囲で電動機駆動回路45に供給することのできる電流値を電動機駆動部電流制限値53aとして出力する。この電動機駆動部電流制限値53aは電流制限部51へ供給される。
【0035】
電流制限部51は、電動機電流制限値52aならびに電動機駆動部電流制限値53aのいずれもが供給されていない状態では、電動機駆動制御部30から供給される電動機駆動制御信号(目標電流)ITをそのまま電動機駆動部40へ供給する。
【0036】
電流制限部51は、電動機電流制限値52aが供給された場合、電動機駆動制御部30から供給される電動機駆動制御信号(目標電流)ITと電動機電流制限値52aとを比較し、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが電動機電流制限値52aを越えていないときは、電動機駆動制御信号(目標電流)ITをそのまま電動機駆動部40へ供給し、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが電動機電流制限値52aを越えているときは、電動機電流制限値52aを補正電動機駆動制御信号(補正目標電流)ITHとして電動機駆動部40へ供給する。
【0037】
電流制限部51は、電動機駆動部電流制限値53aが供給された場合、電動機駆動制御部30から供給される電動機駆動制御信号(目標電流)ITと電動機駆動部電流制限値53aとを比較し、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが電動機電流制限値53aを越えていないときは、電動機駆動制御信号(目標電流)ITをそのまま電動機駆動部40へ供給し、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが電動機駆動部電流制限値53aを越えているときは、電動機駆動部電流制限値53aを補正電動機駆動制御信号(補正目標電流)ITHとして電動機駆動部40へ供給する。
【0038】
電流制限部51は、電動機電流制限値52aと電動機駆動部電流制限値53aとが共に供給されている場合、電動機電流制限値52aと電動機駆動部電流制限値53aとの大小関係を比較し、電流制限値の小さい方の値を制限値とする。電流制限部51は、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが上記制限値を越えていないときは、電動機駆動制御信号(目標電流)ITをそのまま電動機駆動部40へ供給し、電動機駆動制御信号(目標電流)ITが上記制限値を越えているときは、上記制限値を補正電動機駆動制御信号(補正目標電流)ITHとして電動機駆動部40へ供給する。
【0039】
電動機駆動部40は、偏差演算部41と、PID制御部42と、PWM信号生成部43と、ゲート駆動回路部44と、4個の電力用電界効果トランジスタをH型ブリッジ接続した電動機駆動回路45とを備える。
【0040】
偏差演算部41は、補正目標電流ITHと電動機電流検出器25で検出した電動機電流IMとの偏差を求め偏差信号41aを出力する。偏差信号41aはPID制御部42へ供給される。
【0041】
PID制御部42は、偏差信号31aに対して比例、積分、微分等の処理を施して偏差がゼロに近づくように電動機10に供給する電流を制御するための駆動制御信号42aを生成して出力する。駆動制御信号42aはPWM信号生成部43へ供給される。
【0042】
PWM信号生成部43は、駆動制御信号42aに基づいて電動機10をPWM運転するためのPWM(パルス幅変調)信号43aを生成して出力する。PWM信号43aは、ゲート駆動回路部44へ供給される。ゲート駆動回路部44は、PWM信号43aに基づいて各電界効果トランジスタのゲートを駆動して各電界効果トランジスタをスイッチング駆動する。
【0043】
以上の構成であるから図3に示した制御装置20Bは、操舵トルク検出部12によって検出された操舵トルクTpに基づいてバッテリ電源BATから電動機10へ供給する電力をPWM制御し、電動機10の出力パワー(操舵補助トルク)を制御するとともに、過熱防止部50によって電動機10ならびに電動機駆動部40が許容温度以上に過熱する可能性があることが検出されると、電動機駆動部40へ供給する補正目標電流ITHを減少させることで、電動機10ならびに電動機駆動部40に通電する電流を減少させ、電動機10ならびに電動機駆動部40の過熱を防止する。
【0044】
過熱防止部50内の電動機発熱量制限部52は、電動機周囲温度TMと電動機発熱量54aとに基づいて電動機10の温度上昇を予測する構成であるから、電動機周囲温度TMが低い場合は、電動機10に大きな電流を長時間に亘って継続的に供給させることができる。同様に、過熱防止部50内の電動機駆動部発熱量制限部53は、電動機駆動部周囲温度TDと電動機駆動部発熱量55aとに基づいて電動機駆動回路45の温度上昇を予測する構成であるから、電動機駆動回路45の周囲温度TDが低い場合は、電動機駆動回路45に大きな電流を長時間に亘って継続的に供給させることができる。
【0045】
なお、電動機発熱量制限部52は、電動機10の温度が電動機周囲温度TMに対して電動機発熱量54aに対応した温度分だけ上昇するものとして、電動機10の温度上昇を予測する構成としてもよいが、電動機10の温度と電動機周囲温度TMとの温度差による放熱を考慮して電動機10の温度上昇を予測する構成にすることで、電動機10に通電する電流を極力制限しないようにしてもよい。同様に、電動機駆動部発熱量制限部53は、電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の温度が電動機駆動部周囲温度TDに対して電動機駆動部発熱量55aに対応した温度分だけ上昇するものとして、電動機駆動回路45の温度上昇を予測する構成としてもよいが、電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の温度と電動機駆動部周囲温度TDとの温度差による放熱を考慮して電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の温度上昇を予測する構成にすることで、電動機駆動回路45に通電する電流を極力制限しないようにしてもよい。
【0046】
なお、図3において、電動機発熱量推定部54ならびに電動機駆動部発熱量推定部55は、電動機10に実際に供給された電動機電流IMに基づいて電動機発熱量54aならびに電動機駆動部発熱量55aを推定する構成を示したが、電動機発熱量推定部54ならびに電動機駆動部発熱量推定部55は、電動機駆動制御信号(目標電流)ITに基づいて電動機発熱量54aならびに電動機駆動部発熱量55aを推定する構成としてもよい。
【0047】
また、電動機発熱量制限部52は電動機10に供給できる最大電流を制限する電動機電流制限値52aを出力し、電流制限部51は電動機電流制限値52aに基づいて電動機10に通電する最大電流を制限する構成を示したが、電動機発熱量制限部52は、電動機10の温度が予め設定した電動機許容温度を越える場合には、1よりも小さい電流制限係数を出力し、電流制限部51は電動機駆動制御信号(目標電流)ITに電流制限係数を乗算することで補正電動機駆動制御信号(補正目標電流)ITHを生成・出力することで、電動機10に供給する電流を減少させ、電動機10の過熱を防止する構成としてもよい。さらに、電動機10の温度が予め設定した電動機許容温度を越える度合が大きい程、電流制限係数の値をより小さくして、電動機10に供給する電流をより減少させるようにしてもよい。
【0048】
同様に、電動機駆動部発熱量制限部53は電動機駆動回路45に供給できる最大電流を制限する電動機駆動部電流制限値53aを出力し、電流制限部51は電動機駆動部電流制限値53aに基づいて電動機駆動回路45に通電する最大電流を制限する構成を示したが、電動機駆動部発熱量制限部53は、電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の温度が予め設定した電動機駆動部許容温度を越える場合には、1よりも小さい電流制限係数を出力し、電流制限部51は電動機駆動制御信号(目標電流)ITに電流制限係数を乗算することで補正電動機駆動制御信号(補正目標電流)ITHを生成・出力することで、電動機駆動回路45に通電する電流を減少させ、電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の過熱を防止する構成としてもよい。さらに、電動機駆動回路45内の電力用半導体素子等の温度が予め設定した電動機駆動部許容温度を越える度合が大きい程、電流制限係数の値をより小さくして、電動機駆動回路45に通電する電流をより減少させるようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明に係る電動パワーステアリング装置は、電動機周囲温度検出器によって検出された電動機の周辺温度と電動機発熱量推定部によって推定された電動機の発熱量とに基づいて電動機の温度変化を予測し、電動機が過熱状態になる前に電動機に供給する電流を制限する構成としたので、電動機の過熱を防止できる。
【0050】
また、この発明に係る電動パワーステアリング装置は、電動機駆動部周囲温度検出器によって検出された電動機駆動部の周辺温度と電動機駆動部発熱量推定部によって推定された電動機駆動部の発熱量とに基づいて電動機駆動部の温度変化を予測し、電動機駆動部が電動機が過熱状態になる前に電動機駆動部から電動機へ供給する電流を制限する構成としたので、電動機駆動部の過熱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電動パワーステアリング装置の模式構造図である。
【図2】 従来の制御装置のブロック構成図である。
【図3】 この発明に係る制御装置のブロック構成図である。
【符号の説明】
1…電動パワーステアリング装置、10…電動機、12…操舵トルク検出器、20,20A,20B…制御装置、25…電動機電流検出器、26…電動機周囲温度検出器、27…電動機駆動部周囲温度検出器、30…電動機駆動制御部、40…電動機駆動部、45…電動機駆動回路、50…過熱防止部、51…電流制限部、52…電動機発熱量制限部、53…電動機駆動部発熱量制限部、54…電動機発熱量推定部、55…電動機駆動部発熱量推定部。
Claims (2)
- ステアリング系に操舵補助力を付加する電動機と、
前記ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、
少なくとも前記操舵トルク検出器からの信号に基づいて前記電動機を駆動するための電動機駆動制御信号を生成して出力する電動機駆動制御部と、
前記電動機駆動制御信号に基づいて前記電動機を駆動する電動機駆動部と、
からなる電動パワーステアリング装置において、
前記電動機の周辺温度を検出する電動機周囲温度検出器と、
前記電動機駆動制御信号に基づいて前記電動機の発熱量を推定する電動機発熱量推定部と、
前記電動機周囲温度検出器によって検出された前記電動機の周辺温度と前記電動機発熱量推定部によって推定された前記電動機の発熱量とに基づいて、前記電動機の温度上昇を予測し、この予測温度が予め設定した電動機許容温度を越える場合は、この電動機許容温度を越えない範囲で電動機電流制限値を出力する電動機発熱量制限部と、
前記電動機発熱量制限部から前記電動機電流制限値が供給された場合は、前記電動機駆動制御部から供給される前記電動機駆動制御信号と前記電動機電流制限値とを比較し、前記電動機駆動制御信号が前記電動機電流制限値を越えているときは、前記電動機電流制限値を補正電動機駆動制御信号として電動機駆動部へ供給する電流制限部と、を設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - ステアリング系に操舵補助力を付加する電動機と、
前記ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、
少なくとも前記操舵トルク検出器からの信号に基づいて前記電動機を駆動するための電動機駆動制御信号を生成して出力する電動機駆動制御部と、
前記電動機駆動制御信号に基づいて前記電動機を駆動する電動機駆動部と、
からなる電動パワーステアリング装置において、
前記電動機駆動部の周辺温度を検出する電動機駆動部周囲温度検出器と、
前記電動機駆動制御信号に基づいて前記電動機駆動部の発熱量を推定する電動機駆動部発熱量推定部と、
前記電動機駆動部周囲温度検出器によって検出された前記電動機駆動部の周辺温度と前記電動機駆動部発熱量推定部によって推定された前記電動機駆動部の発熱量とに基づいて、前記電動機駆動回路の温度上昇を予測し、この予測温度が予め設定した駆動部許容温度を越える場合は、この駆動部許容温度を越えない範囲で電動機駆動部電流制限値を出力する電動機駆動部発熱量制限部と、
前記電動機駆動部発熱量制限部から前記電動機駆動部電流制限値が供給された場合は、
前記電動機駆動制御部から供給される前記電動機駆動制御信号と前記電動機駆動部電流制限値とを比較し、前記電動機駆動制御信号が前記電動機駆動部電流制限値を越えているときは、前記電動機駆動部電流制限値を補正電動機駆動制御信号として前記電動機駆動部へ供給する電流制限部と、を設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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