JP3680416B2 - 自動倉庫用スタッカクレーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動倉庫用スタッカクレーンに係り、特に走行用エンコーダ及び昇降用エンコーダを用いてクレーンの走行位置及びキャリッジの昇降位置を検出するスタッカクレーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、物流コスト及び物流効率の改善を目的とした物流拠点の集約、ユーザニーズの多様化に伴う多品種少量生産の普及等を背景として自動倉庫が幅広く用いられるようになった。自動倉庫においては、収納物を倉庫ラックに入出庫するために図7に示されるようなスタッカクレーンが使用されている。スタッカクレーンの走行本体1は、直立した二本のマスト2及び3とこれらマストの下部及び上部をそれぞれ水平に連結する下部フレーム4及び上部フレーム5とからなっている。
【0003】
下部フレーム4には走行駆動装置6により駆動される図示しない駆動輪と従動輪とが設けられており、これら駆動輪及び従動輪が床上に配置された下部レール7の上に乗っている。一方、上部フレーム5には下部レール7の直上に配置された上部レール8に滑動自在に係合するガイドローラ9が設けられている。また、走行本体1には、昇降駆動装置10により回転駆動される巻き上げドラム11が設けられており、この巻き上げドラム11に巻回されたワイヤ12の一端にマスト2及び3に沿って昇降するキャリッジ13が吊設されている。
【0004】
走行駆動装置6は予め設定された減速制御の走行速度パターンに従って駆動輪を駆動し、これによって走行本体1は下部レール7及び上部レール8に沿って水平方向に走行する。図8に示されるように、従動輪14の軸には走行位置を検出するための走行用エンコーダ15が直結されており、この走行用エンコーダ15によって所定の減速制御が正常に行われているかどうかが監視される。
【0005】
同様に、昇降駆動装置10は予め設定された減速制御の昇降速度パターンに従って巻き上げドラム11を駆動し、これによりキャリッジ13がワイヤ12を介してマスト2及び3に沿って昇降するが、図9に示されるように、巻き上げドラム11の周縁部にはローラ16を介して巻き上げドラム11の回転位置を検出する昇降用エンコーダ17が設けられており、この昇降用エンコーダ17によって所定の減速制御が正常に行われているかどうかの監視が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来は、走行の減速制御を監視する走行用エンコーダ15が故障してしまうと、走行本体1が下部レール7及び上部レール8の終端に衝突して自動倉庫を破損する虞れがあり、また故障した走行用エンコーダ15を修復あるいは交換するために自動倉庫全体のシステムを長時間にわたって停止させなければならず、稼働率が低下するという問題があった。
【0007】
一方、昇降の減速制御を監視する昇降用エンコーダ17が故障してしまうと、キャリッジ13がマスト2及び3の端部に衝突して破損する虞れがあり、この場合にも、故障した昇降用エンコーダ17を修復あるいは交換するために自動倉庫全体のシステムを長時間にわたって停止させなければならなかった。
【0008】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、より安全に運転することができると共に稼働率の低下を防止することができる自動倉庫用スタッカクレーンを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る自動倉庫用スタッカクレーンは、走行駆動装置により床上を走行する自動倉庫用スタッカクレ−ンにおいて、それぞれクレーンの走行位置を検出する第1及び第2の走行用エンコーダと、第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値に基づいて走行駆動装置を制御する制御装置とを備え、制御装置が、第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値の差分に基づいてこれらエンコーダに異常が発生したか否かを判定し、異常の発生と判定した場合には走行駆動装置の駆動により規定区間を走行させてこのときの第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することによりいずれのエンコーダが異常であるかを判別すると共に他方の正常なエンコーダを用いて走行駆動装置により応急的に継続動作させるものである。
【0011】
また、この発明に係る他の自動倉庫用スタッカクレーンは、昇降駆動装置によりキャリッジを鉛直マストに沿って昇降させる自動倉庫用スタッカクレ−ンにおいて、それぞれキャリッジの昇降位置を検出する第1及び第2の昇降用エンコーダと、第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値に基づいて昇降駆動装置を制御する制御装置とを備え、制御装置が、第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値の差分に基づいてこれらエンコーダに異常が発生したか否かを判定し、異常の発生と判定した場合には昇降駆動装置の駆動により規定区間にわたってキャリッジを昇降させてこのときの第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することによりいずれのエンコーダが異常であるかを判別すると共に他方の正常なエンコーダを用いて昇降駆動装置により応急的に継続動作させるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の一実施形態に係る自動倉庫用スタッカクレーンは、図7に示した従来のスタッカクレーンと概ね同様の構成を有している。すなわち、直立した二本のマスト2及び3とこれらマストの下部及び上部をそれぞれ水平に連結する下部フレーム4及び上部フレーム5とからなる走行本体1を有し、下部フレーム4には走行駆動装置6により駆動される図示しない駆動輪と従動輪とが設けられていて下部レール7の上に乗っており、上部フレーム5には下部レール7の直上に配置された上部レール8に滑動自在に係合するガイドローラ9が設けられている。また、昇降駆動装置10により回転駆動される巻き上げドラム11にワイヤ12が巻回され、このワイヤ12の一端にマスト2及び3に沿って昇降するキャリッジ13が吊設されている。
【0014】
この実施形態に係るスタッカクレーンにおいては、図1に示されるように、従動輪14の軸に従動輪14の回転位置を検出するための第1及び第2の走行用エンコーダA及びBが互いに同軸に直結されている。これらのエンコーダA及びBは、図2に示されるように、それぞれ制御装置21に接続され、制御装置21が走行駆動装置6内のインバータ22を介して走行用モータ23に電気的に接続されている。走行用モータ23により図示しない駆動輪が回転される。
【0015】
次に、この実施形態に係るスタッカクレーンの走行動作について図3のフローチャートを参照して説明する。制御装置21は予め設定された減速制御の走行速度パターンに従って走行駆動装置6を制御し、これにより駆動輪を駆動して、走行本体1を下部レール7及び上部レール8に沿って水平方向に走行させる。この走行に際して、従動輪14の軸に直結された第1及び第2の走行用エンコーダA及びBによりそれぞれ従動輪14の回転位置が検出される。
【0016】
そこで、制御装置21は、ステップS1で第1の走行用エンコーダAのカウント値aと第2の走行用エンコーダBのカウント値bとの差分|a−b|を演算し、この差分と許容値Rとの比較を行う。第1及び第2の走行用エンコーダA及びBは共に従動輪14の軸に直結されているため、通常は双方のカウント値a及びbは互いに同じ値となる。許容値Rは、正常な第1及び第2の走行用エンコーダA及びBに発生し得る測定誤差よりわずかに大きな値に設定されており、カウント値a及びbの差分が測定誤差内であれば許容値Rを越えないようになっている。
【0017】
ここで、一方の走行用エンコーダが故障すると、そのカウント値と他方の正常な走行用エンコーダのカウント値との間に相違が生じるため、これらカウント値の差分が許容値Rを越えるようになる。そこで、ステップS1で差分|a−b|が許容値Rを越えたと判断された場合には、ステップS2に進み、スタッカクレーンに接続された図示しないクレーン制御盤等にエンコーダの異常を表示すると共にクレーンの走行を停止し、この状態でステップS3で復旧の指示を待つ。
【0018】
ステップS3で作業者によりクレーン制御盤から復旧する旨の指示を受けると、ステップS4で制御装置21は走行駆動装置6を制御してクレーンを予め定められている規定区間だけ低速で走行させる。規定区間は下部レール7上のいずれの区間でも構わないが、走行本体1の下部フレーム4には下部レール7に沿って床上に配列された走行ドグを検知する走行用センサが設けられているため、予め定められた二つの走行ドグ間を規定区間とし、走行用センサを用いてその走行ドグ間を低速で走行させればよい。また、その規定区間を走行させたときの正常な第1及び第2の走行用エンコーダA及びBのカウント値a0及びb0を予め測定しておくものとする。
【0019】
このようにしてステップS4で規定区間を走行させ、ステップS5でこのときの第1の走行用エンコーダAのカウント値a1と予め測定しておいた正常時のカウント値a0との差分|a1−a0|を演算し、この差分が判定値P以下であるか否かを判定する。差分|a1−a0|が判定値Pを越えていれば、第1の走行用エンコーダAが異常であると判断し、ステップS6に進んで、クレーン制御盤等にエンコーダAが異常である旨を表示する。
【0020】
同様に、ステップS7で規定区間を走行させたときの第2の走行用エンコーダBのカウント値b1と予め測定しておいた正常時のカウント値b0との差分|b1−b0|を演算し、この差分が判定値P以下であるか否かを判定する。差分|b1−b0|が判定値Pを越えていれば、第2の走行用エンコーダBが異常であると判断し、ステップS8に進んで、クレーン制御盤等にエンコーダBが異常である旨を表示する。
【0021】
なお、判定値Pは、上記の許容値Rと同様に、規定区間内の走行における測定誤差を見込んだ値に設定されており、カウント値の差分|a1−a0|あるいは|b1−b0|が測定誤差内であれば判定値Pを越えないようになっている。
【0022】
以上のようにして、エンコーダA及びBのそれぞれについて異常であるかどうかを認知することができる。そこで、続くステップS9では、第1及び第2の走行用エンコーダA及びBのうち一方のみが異常である場合に、他方の正常な走行用エンコーダを用いて走行駆動装置6により応急的にクレーンの動作を継続させる。
【0023】
このように第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値を比較することにより、エンコーダの異常を容易に監視することができる。また、異常が発生した場合に規定区間を走行させて双方のエンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することにより、いずれのエンコーダの異常かを判定することができ、正常のエンコーダを用いて応急的に継続動作させることが可能となる。このため、エンコーダの信頼性が向上し、自動倉庫システムを安全且つ効率よく動作させることができる。
【0024】
なお、二つの走行用エンコーダA及びBを従動輪14の軸に直結する代わりに、各走行用エンコーダの計測ローラを走行レールに直接接触させてクレーンの走行位置を検出することもでき、また各走行用エンコーダを走行用モータ23の軸あるいは走行用モータ23に連結された減速機の軸に取り付けてクレーンの走行位置を検出することもできる。
【0025】
上記の実施形態では、二つの走行用エンコーダA及びBを従動輪14の軸に直結してクレーンの走行に対する安全機能を向上させたが、図4に示されるように、巻き上げドラム11の周縁部に互いに同径のローラ24及び25を介して第1及び第2の昇降用エンコーダC及びDを設け、これらのエンコーダC及びDにより巻き上げドラム11の回転位置を検出することもできる。図5に示されるように、第1及び第2の昇降用エンコーダC及びDはそれぞれ制御装置26に接続され、制御装置26が昇降駆動装置10内のインバータ27を介して巻き上げドラム11を回転するための昇降用モータ28に電気的に接続されている。
【0026】
このような二つの昇降用エンコーダC及びDを用いて、上述したスタッカクレーンの走行動作と同様にしてキャリッジ13の昇降動作を行うことができる。この昇降動作を図6のフローチャートに示すが、図3に示した走行動作と同様である。すなわち、制御装置26は予め設定された減速制御の昇降速度パターンに従って昇降駆動装置10を制御し、これにより巻き上げドラム11を駆動して、キャリッジ13をマスト2及び3に沿って昇降させる。この昇降に際して、巻き上げドラム11の周縁部に配置された第1及び第2の昇降用エンコーダC及びDによりそれぞれ巻き上げドラム11の回転位置が検出される。
【0027】
そこで、制御装置26は、ステップS11で第1の昇降用エンコーダCのカウント値cと第2の昇降用エンコーダDのカウント値dとの差分|c−d|を演算し、この差分と許容値Rとの比較を行う。ここで、一方の昇降用エンコーダが故障すると、そのカウント値と他方の正常な昇降用エンコーダのカウント値との間に相違が生じるため、これらカウント値の差分が許容値Rを越えるようになる。そこで、ステップS11で差分|c−d|が許容値Rを越えたと判断された場合には、ステップS12に進み、クレーン制御盤に昇降用エンコーダの異常を表示すると共に巻き上げドラム11の回転を停止し、この状態でステップS13で復旧の指示を待つ。
【0028】
ステップS13で作業者によりクレーン制御盤から復旧する旨の指示を受けると、ステップS14で制御装置26は昇降駆動装置10を制御してキャリッジ13を予め定められている規定区間だけ低速で走行させ、ステップS15でこのときの第1の昇降用エンコーダCのカウント値c1と予め測定しておいた正常時のカウント値c0との差分|c1−c0|を演算し、この差分が判定値P以下であるか否かを判定する。差分|c1−c0|が判定値Pを越えていれば、第1の昇降用エンコーダCが異常であると判断し、ステップS16に進んで、クレーン制御盤にエンコーダCが異常である旨を表示する。
【0029】
同様に、ステップS17で規定区間を走行させたときの第2の昇降用エンコーダDのカウント値d1と予め測定しておいた正常時のカウント値d0との差分|d1−d0|を演算し、この差分が判定値P以下であるか否かを判定する。差分|d1−d0|が判定値Pを越えていれば、第2の昇降用エンコーダDが異常であると判断し、ステップS18に進んで、クレーン制御盤にエンコーダDが異常である旨を表示する。
【0030】
以上のようにして、エンコーダC及びDのそれぞれについて異常であるかどうかを認知することができる。そこで、続くステップS19では、第1及び第2の昇降用エンコーダC及びDのうち一方のみが異常である場合に、他方の正常な昇降用エンコーダを用いて昇降駆動装置10により応急的にキャリッジ13の昇降動作を継続させる。
【0031】
このように第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値を比較することにより、エンコーダの異常を容易に監視することができる。また、異常が発生した場合に規定区間を走行させて双方のエンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することにより、いずれのエンコーダの異常かを判定することができ、正常のエンコーダを用いて応急的に継続動作させることが可能となる。このため、エンコーダの信頼性が向上し、自動倉庫システムを安全且つ効率よく動作させることができる。
【0032】
なお、二つの昇降用エンコーダC及びDを巻き上げドラム11の周縁部に設ける代わりに、各昇降用エンコーダの計測ローラをマスト2あるいは3に直接接触させてキャリッジ13の昇降位置を検出することもでき、また各昇降用エンコーダを昇降用モータ28の軸あるいは昇降用モータ28に連結された減速機の軸に取り付けてキャリッジ13の昇降位置を検出することもできる。
【0033】
また、第1及び第2の走行用エンコーダを設けると共に第1及び第2の昇降用エンコーダを設けて走行動作と昇降動作とについてそれぞれ安全性を向上させ、自動倉庫システムの稼働率を向上させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動倉庫用スタッカクレーンの従動輪に設けられた走行用エンコーダを示す図である。
【図2】実施形態における走行駆動装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】他の実施形態に係る自動倉庫用スタッカクレーンの巻き上げドラムに設けられた昇降用エンコーダを示す図である。
【図5】他の実施形態における昇降駆動装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】他の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】自動倉庫用スタッカクレーンを示す斜視図である。
【図8】従来のスタッカクレーンの従動輪に設けられた走行用エンコーダを示す図である。
【図9】従来のスタッカクレーンの巻き上げドラムに設けられた昇降用エンコーダを示す図である。
【符号の説明】
1 走行本体
2,3 マスト
4 下部フレーム
5 上部フレーム
6 走行駆動装置
10 昇降駆動装置
11 巻き上げドラム
12 ワイヤ
13 キャリッジ
14 従動輪
21,26 制御装置
24,25 ローラ
A 第1の走行用エンコーダ
B 第2の走行用エンコーダ
C 第1の昇降用エンコーダ
D 第2の昇降用エンコーダ
Claims (2)
- 走行駆動装置により床上を走行する自動倉庫用スタッカクレ−ンにおいて、
それぞれクレーンの走行位置を検出する第1及び第2の走行用エンコーダと、
第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値に基づいて走行駆動装置を制御する制御装置と
を備え、前記制御装置は、第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値の差分に基づいてこれらエンコーダに異常が発生したか否かを判定し、異常の発生と判定した場合には走行駆動装置の駆動により規定区間を走行させてこのときの第1及び第2の走行用エンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することによりいずれのエンコーダが異常であるかを判別すると共に他方の正常なエンコーダを用いて走行駆動装置により応急的に継続動作させることを特徴とする自動倉庫用スタッカクレ−ン。 - 昇降駆動装置によりキャリッジを鉛直マストに沿って昇降させる自動倉庫用スタッカクレ−ンにおいて、
それぞれキャリッジの昇降位置を検出する第1及び第2の昇降用エンコーダと、
第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値に基づいて昇降駆動装置を制御する制御装置と
を備え、前記制御装置は、第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値の差分に基づいてこれらエンコーダに異常が発生したか否かを判定し、異常の発生と判定した場合には昇降駆動装置の駆動により規定区間にわたってキャリッジを昇降させてこのときの第1及び第2の昇降用エンコーダのカウント値を正常時のカウント値と比較することによりいずれのエンコーダが異常であるかを判別すると共に他方の正常なエンコーダを用いて昇降駆動装置により応急的に継続動作させることを特徴とする自動倉庫用スタッカクレ−ン。
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