JP3673619B2 - ガラス積層体およびガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスとフッ素樹脂シートとの積層体、およびその積層体を得るためのガラスに接着性を有するフッ素樹脂シートに関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
ガラス板は、透明性、強度を有する材料であるが耐衝撃性が弱く、それを補う方法として、プラスチックシートを貼り合わせた安全ガラスが一般に用いられている。しかし、一般のプラスチックシートでは、ガラスが割れたときの破片の飛散を防止することができるが、火災時にはプラスチックシートが燃焼するので、難燃性を満足させることはできない。そこで、防火・防炎性を有し、かつ通常時に割れても破片飛散防止性を有するガラスとして、ガラス板にフッ素樹脂シートを接着した防火安全ガラスが提案されている。
【0003】
しかしフッ素樹脂シートはガラスなどの他材料との接着性に乏しいので、強固な接着を達成しようとすると、接着剤を用いるこのが必要となるが、ガラスの持つ高度の透明性を損なわずに強固な接着を達成することは困難であった。
【0004】
従来、合わせガラスを製造するための中間膜として、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが用いられているが、これらの材料をフッ素樹脂シートとガラスとの接着に適用しても、透明性良好でしかも強固な接着を達成することはできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガラスとフッ素樹脂シートとが強固に接着され、しかも高透明性を維持した積層体を提供するものである。また、そのような積層体を得るための貼り合わせ用フッ素樹脂シートを提供するものである。
【0006】
すなわち本発明の要旨は、ガラスとフッ素樹脂シートとを、モノマー成分としてフッ化ビニリデンを50〜100重量%含有するフッ素樹脂成分90〜99重量%と、アミノ系シランカップリング剤10〜1重量%とを含む接着剤により接着したことを特徴とするガラス積層体にある。
【0007】
また、別の発明の要旨は、フッ素樹脂シートの少なくとも片面に、モノマー成分としてフッ化ビニリデンを50〜100重量%含有するフッ素樹脂成分90〜99重量%と、アミノ系シランカップリング剤10〜1重量%とを含む接着性被膜を設けたことを特徴とするガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シートにある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明におけるフッ素樹脂シートは、モノマー成分が、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの含フッ素系モノマーの単独重合体または共重合体、あるいは前記含フッ素系モノマーに、エチレン、アルキルビニルエーテルなどのビニルモノマーなどが併用された共重合体、あるいはこれらの混合物からなるものである。そしてシート状に成形できるもの、すなわち熱溶融成形可能なものであればよく、テトラフルオロエチレンの単独重合体(PTFE)以外のフッ素樹脂は特に制限なく使用することができる。
【0009】
具体的には、テトラフルオロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライドなどが挙げられる。
そして防火ガラスを得ようとするときは、難燃性を確保するためにフッ素の含有量が55重量%以上、好ましくは60重量%以上のものを選定するのが好ましい。
【0010】
このフッ素樹脂シートとしては、後述の理由により成分としてフッ化ビニリデンを含むものが好ましい。特に好ましいフッ素樹脂シートとしては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの3元共重合体が挙げられる。この3元共重合体の好ましい共重合比は、フッ化ビニリデン20〜40重量%、テトラフルオロエチレン20〜60重量%、ヘキサフルオロプロピレン5〜20重量%の範囲である。
この共重合体のシートは、結晶性が低く透明性が良好で、柔軟で耐衝撃性に優れ、また融点が比較的低いのでガラスとの熱融着に適している。
【0011】
フッ素樹脂シートの厚さは特に制限されないが、ガラスと積層したときの耐衝撃性に及ぼす影響などを考慮すると、50〜2000μmの範囲が好ましい。
フッ素樹脂シートの成形は一般に知られている方法によればよく、例えば、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解して、剥離性基材の上に均一に塗布した後、有機溶剤を乾燥除去して基材から剥がしてシート化する方法、フッ素樹脂の水系デイスパージョンを剥離性の基材上に均一に塗布した後、水を乾燥する方法、あるいは、押出法、カレンダー法などの熱可塑成形によりシート化する方法などが可能である。
【0012】
このフッ素樹脂シートには、各種添加剤をフッ素樹脂シートの特性、特に透明性を損なわない範囲内で添加することができる。
このフッ素樹脂シートをガラスと接着するための接着性被膜は、フッ素樹脂シートの少なくとも片面、好適には両面に設けられる。またガラス面に形成してもよい。
【0013】
接着性被膜を形成する接着剤は、フッ素樹脂成分90〜99重量%と、アミノ系シランカップリング剤10〜1重量%とを含むものである。フッ素樹脂成分が90重量%未満では接着剤の相溶性が悪化してガラスと貼り合わせたものの透明性が損なわれたり、接着剤の反応性が大きいことによりガラス貼り合わせ用シートとしての経時的な安定性が損なわれ、またフッ素樹脂成分が99重量%を越えるものでは、ガラスとの接着性が損なわれる。
【0014】
接着剤のフッ素樹脂成分としては、上記のフッ素樹脂シートと同様にモノマー成分としてフッ化ビニリデンを主体とするものが用いられる。具体的には、フッ化ビニリデン50〜100重量%、テトラフルオロエチレン0〜40重量%およびヘキサフルオロプロピレン0〜30重量%を含むものが好適である。
一方、アミノ系シランカップリング剤はω−アミノアルキルシランが用いられ、具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)・γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
ここで、接着剤のフッ素樹脂成分として、フッ素樹脂シートと同一成分を含んでいるものではフッ素樹脂シートとの接着性が良好になるという利点がある。またモノマー成分としてフッ化ビニリデンを主体とするものを用いると、有機溶剤に対する溶解性が良好であり、適当な塗布厚みでの塗布作業が容易となり、さらにはシランカップリング剤を反応させずに穏やかな条件で接着剤中に分散できるという利点がある。
【0015】
接着性被膜の形成は、上述のフッ素樹脂成分とアミノ系シランカップリング剤を含む接着剤を有機溶剤に溶解させ、ガラスまたはフッ素樹脂シートの表面に均一に塗布してその後加熱して乾燥さて、直接被膜を形成する方法や、接着剤溶液を剥離性の基材上に均一に塗布し乾燥させ、その後フッ素樹脂シートとの熱融着により転写して形成する方法などが可能である。
【0016】
なお、この溶液中には、第3成分として紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、界面活性剤、衝撃改良剤などを接着性、透明性を損なわない範囲で添加することが可能である。
【0017】
フッ素樹脂シートに接着性被膜を形成する場合、フッ素樹脂シートの表面にしわが入るおそれがある場合は、剥離性の基材をフッ素樹脂シートの背面に積層して「腰」を持たせ、接着性被膜を形成したのち、剥離性の基材を剥離させる方法もあり、フッ素樹脂シートの形成の際に剥離性の基材を使用すれば、それがそのまま利用できる。
【0018】
本発明のガラス積層体を得るには、ガラスの表面に前記接着性被膜を形成し、フッ素樹脂シートと加熱圧着して融着させる方法、またはフッ素樹脂シート表面に前記接着性被膜を形成し、これをガラスに加熱圧着して融着させる方法によることができる。そして得られるガラス積層体は、透明性、接着強度に優れ、また高度の難燃性を持った積層体も製造可能となる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0020】
(実施例1)
フッ化ビニリデン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%、テトラフルオロエチレン40重量%からなる共重合フッ素樹脂を押出機により押出して、厚さ200μmのフッ素樹脂シートを得た。
【0021】
そして接着剤として、フッ化ビニリデン61重量%、テトラフルオロエチレン24重量%、ヘキサフルオロプロピレン15重量%からなるフッ素樹脂と、γ−アミノプロピルトリエトキシシランとを95:5の重量比で混合したものを用い、この接着剤原料を溶剤(2−ブタノン)に溶解させ、フッ素樹脂シート上にコーターで塗布した。ついで、80℃の加熱炉で30秒間加熱して溶剤を乾燥除去しフッ素樹脂シート片面に厚さが1μmの接着性被膜を形成し、ガラス貼り合わせ用シートを得た。
このシートを用い下記に示す(a)接着性と(b)透明性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0022】
(a)接着強度
1)試料の作製
厚さ3mm(150mm×50mm)のソーダガラスと、フッ素樹脂シートとを、接着性被膜がガラス面に向くように重ねて熱プレス機で140℃、2Kg/cm2 の条件で5分間加圧・加熱を行って貼り合わせた。
【0023】
2)常態強度
貼り合わされたフッ素樹脂シートの表面に18mmの間隔で2本のノッチを入れて、そのノッチ間のフッ素樹脂シートをノッチ方向に平行に、23℃において180°の角度で速度5mm/分で剥がし、その時の接着強度(gf/18mm)を常態強度とした。
【0024】
3)ボイル強度
上記の条件で貼り合わせた後、100℃の沸騰水中に2時間漬けて取り出し、同様に測定した接着力をボイル強度とした。
【0025】
(b)透明性
(a)の条件で貼り合わせた物を目視で観察し、透明性のレベルを3段階で評価した。
【0026】
○ : 透明
△ : わずかに曇る。
【0027】
× : 曇る。
【0028】
(実施例2)
フッ素樹脂シート、及び接着剤のフッ素樹脂として、フッ化ビニリデン20重量%、テトラフルオロエチレン60重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%の共重合フッ素樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0029】
(比較例1)
接着性被膜を設けないフッ素樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0030】
(比較例2)
接着剤としてフッ化ビニリデン40重量%、テトラフルオロエチレン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%からなるフッ素樹脂と、γ−アミノプロピルトリエトキシシランとを99.5:0.5の重量比で混合したものを用い、それ以外は実施例1と同様にして評価を行った。
【0031】
(比較例3)
接着剤としてフッ化ビニリデン40重量%、テトラフルオロエチレン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%からなるフッ素樹脂と、γ−アミノプロピルトリエトキシシランとを85:15の重量比で混合したものを用い、それ以外は実施例1と同様にして評価を行った。
なお、この接着剤は接着性被膜を塗工する際に塗布時間の後半になって接着剤溶液が粘度アップを起こし、塗工が不可能となった。
【0032】
(比較例4)
接着剤としてフッ化ビニリデン40重量%、テトラフルオロエチレン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%からなるフッ素樹脂とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを重量比で95:5で混合したものを用い、それ以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示す結果から明らかなように、フッ素樹脂とアミノ系シランカップリング剤とを本発明の範囲で含む接着剤を使用した実施例においては透明性、接着強度に優れた積層体が得られた。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスとフッ素樹脂シートとを強固に、かつ高透明性を維持して積層することができ、得られる積層体は難燃性を有するものとすることができる。
Claims (2)
- ガラスとフッ素樹脂シートとを、モノマー成分としてフッ化ビニリデンを50〜100重量%含有するフッ素樹脂成分90〜99重量%と、アミノ系シランカップリング剤10〜1重量%とを含む接着剤により接着したことを特徴とするガラス積層体。
- フッ素樹脂シートの少なくとも片面に、モノマー成分としてフッ化ビニリデンを50〜100重量%含有するフッ素樹脂成分90〜99重量%と、アミノ系シランカップリング剤10〜1重量%とを含む接着性被膜を設けたことを特徴とするガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シート。
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