JP3961051B2 - ガラス積層体および貼り合わせ用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスと貼り合わせたときの外観が良い貼り合わせ用フッ素樹脂シート、およびガラスとフッ素樹脂シートとを貼り合わせた積層体に関し、さらに詳しくは、フッ素樹脂シートとガラスを貼り合わせても透明なガラスの特徴を損なわない難燃性の貼り合わせ用シートおよびガラス積層体を提供するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
ガラス板は、透明性、強度を有する材料であるが耐衝撃性が弱く、それを補う方法として、プラスチックシートと貼り合わせた安全ガラスが一般に用いられている。しかし、一般のプラスチックシートでは、ガラスが割れたときの破片の飛散を防止することができるが、火災時にはプラスチックシートが燃焼するので、難燃性を満足させることはできない。そこで、防火・防炎性を有し、かつ通常時に割れても破片飛散防止性を有するガラスとして、ガラス板にフッ素樹脂シートを接着した防火安全ガラスが提案されている。
【0003】
難燃性確保のためには、フッ素樹脂シートとしてフッ素含有量が55重量%以上、好ましく60重量%以上のものを用いる必要があるが、このようなフッ素樹脂シートはガラスなどの他材料との接着性に乏しいので、強固な接着を達成しようとすると、接着剤を用いることが必要となる。
【0004】
その場合、ガラスの持つ高度の透明性を損なわないような接着を行う必要があるが、従来難燃性を維持しながらガラスとの高透明性貼り合わせが可能な貼り合わせ用シートは提案されていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、難燃性と高透明性を併せ持った合わせガラスの製造を可能にする貼り合わせ用シート、およびガラス積層体を提供するものであって、その要旨は、ガラスとフッ素含有量が55重量%以上のフッ素樹脂シートとが接着性被膜により貼り合わされたガラス積層体であって、フッ素樹脂シートの全光線透過率Tb(%)が90以上、接着性被膜の厚さDa(μm)が0.003〜10、接着性被膜の屈折率をNa、フッ素樹脂シートの屈折率をNbで表したとき、(Na−Nb)の絶対値、|Na−Nb|が0.13以下であることを特徴とするガラス積層体にある。
【0006】
また別の発明の要旨は、
フッ素含有量が55重量%以上のフッ素樹脂シートの表面に接着性被膜を設けたガラスとの貼り合わせ用シートであって、フッ素樹脂シートの全光線透過率Tb(%)が90以上、接着性被膜の厚さDa(μm)が0.003〜10、接着性被膜の屈折率をNa、フッ素樹脂シートの屈折率をNbで表したとき、(Na−Nb)の絶対値、|Na−Nb|が0.13以下であることを特徴とする貼り合わせ用シートにある。
【0007】
この貼り合わせ用シートにおいては、Da(μm)が0.01以上であり、かつ、Da×|Na−Nb| ≦ 0.1 であることが好ましい。さらには、
Da(μm)が0.05〜0.5の範囲にあり、かつ、
Da×|Na−Nb| ≦ 0.03 であることが特に好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明における使用するフッ素樹脂シートは、モノマ−成分が、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの含フッ素系モノマ−の単独重合体または共重合体、あるいは前記含フッ素系モノマ−に、エチレン、アキキルビニルエーテルなどのビニルモノマ−などが併用された共重合体、あるいはこれらの混合物からなるものであり、難燃性を確保するためにフッ素の含有量が55重量%以上、好ましくは60重量%以上のものを選定する。
【0009】
そして、シート状に成形可能な熱溶融性を有するものであればよく、テトラフルオロエチレンの単独重合体(PTFE)以外のフッ素樹脂を使用することができる。
【0010】
具体的には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられる。
【0011】
このフッ素樹脂シートは、全光線透過率Tb(%)が90%以上であることが必要である。90%未満の場合は、ガラスと貼り合わせた時に透明感を損なうことになる。フッ素樹脂シートの全光線透過率Tbは、フッ素樹脂の組成、シートの厚さ、シートに成形する時の条件、添加剤の種類および量などにより調整することができる。
【0012】
フッ素樹脂シートの厚さは特に制限されないが、上記の全光線透過率の条件を満たし、またガラスと積層したときの耐衝撃性に及ぼす影響を考慮すると、50〜2000μmの範囲が好ましい。
【0013】
フッ素樹脂シートの成形は一般に知られている方法によればよく、例えば、フッ素樹脂を有機溶剤に溶解して、剥離性基材の上に均一に塗布した後、有機溶剤を乾燥除去して基材から剥がしてシート化する方法、フッ素樹脂の水系ディスパージョンを剥離性の基材上に均一に塗布した後、水を乾燥する方法、あるいは、押出法、カレンダ−法などの熱可塑成形によりシート化する方法などが可能である。
【0014】
このフッ素樹脂シートには、各種添加剤をフッ素樹脂シートの特性、特に透明性を損なわない範囲内で添加することができる。
接着性被膜は、フッ素樹脂シートの少なくとも片面、好適には両面に設けられる。
この接着性被膜は、厚さ(フッ素樹脂シートの両面に設けた場合は片面の厚さ)をDa(μm)、接着性被膜の屈折率をNa、フッ素樹脂シートの屈折率をNbで表した時、
0.003≦ Da ≦ 10
|Na−Nb| ≦ 0.13
であることが必要である。
【0015】
ここで、接着性被膜の厚さDaが0.003μm未満ではガラスとフッ素樹脂シートとの間に十分な接着力が得られず、また10μmを越えると、ガラスと積層したときに透明感を損なうことになる。
【0016】
また、フッ素樹脂シートと接着性被膜との関係では、フッ素樹脂シートの屈折率をNb、接着性被膜の屈折率をNaで表した場合に、(Na−Nb)の絶対値、|Na−Nb|が0.13以下のものであることが必要である。|Na−Nb|が0.13を越える場合は、ガラスに接着した場合は、屈折率の相違によって、曇り感が増す。
【0017】
そして好適には、Daが0.01μm以上であり、かつDaと|Na−Nb|との積、Da×|Na−Nb|が0.1以下であることが望ましい。
【0018】
この範囲内であれば、ガラスとフッ素樹脂シートとの接着力が確保され、またその積層体の透明性が維持される。Da×|Na−Nb|が0.1を越えるにつれて、次第に積層体の透明性が低下していく。
【0019】
特に好ましいのは、Da(μm)が0.05〜0.5の範囲にあり、かつ
Da×|Na−Nb| ≦ 0.03
の場合である。
【0020】
接着性被膜の材質としては、上記の条件を満たすものであれば特には制限されない。例えば、シランカプリング剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、シリコ−ン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルエ−テル系接着剤などを単独あるいは2種以上の混合体として用いることが可能である。
【0021】
接着性被膜は、後にガラスと加熱接着されるので、熱可塑性もしくは加熱によって重合・硬化が進行する潜在熱硬化性であるのが望ましい。
【0022】
フッ素樹脂シートに接着性被膜を形成する方法は一般に知られている方法が適用でき、特に制限されない。例えば、剥離性基材上に接着性材料を均一に塗布し、乾燥させて接着性被膜を形成させた後に、フッ素樹脂シートに加熱転写する方法、フッ素樹脂シートに直接接着性材料を均一に塗布し乾燥させて接着性被膜を直接形成する方法などが可能である。被膜を造るための接着剤は薄い被膜を得るという面からは低粘度の形態であるのが好ましく、溶液系、溶媒系、エマルジョン系、反応性モノマ−希釈系などが用いられる。
【0023】
またガラス側に接着性被膜を形成する場合にも一般に知られている方法が適用でき、特に制限されない。
接着性被膜には、上述の接着性被膜の特性を損なわない範囲で各種添加剤を添加可能である。
【0024】
フッ素樹脂シートの表面に接着性被膜を形成するにあたっては、フッ素樹脂と接着性被膜の接着性を向上する目的で、フッ素樹脂シートの表面を予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、ナトリウム−アンモニア処理などの方法によりエッチング、あるいは酸化させることも可能である。
【0025】
本発明においては、上記特性を有する接着性被膜を設けたフッ素樹脂シートの表面に、エンボスを付与するのが好ましい。エンボスによりガラスとの接着時にガラスと接着性被膜との間の空気が逃げて、気泡の残存が少なくなる。
【0026】
以上説明したような貼り合わせ用シートを、透明な2枚以上のガラス板の間に挟み、加熱加圧することにより、透明度が高く、難燃性に優れた合わせガラスを得ることができる。また同様に、ガラス面に接着性被膜を形成し、間にフッ素樹脂シートを挟んで加熱加圧しても同様の合わせガラスが得られる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお各特性の試験評価は次の方法により行った。
(a)フッ素含有量
フッ素樹脂のモノマ−組成から、フッ素原子全重量のフッ素樹脂構成原子全重量に対する重量%を算出した。
(b)フッ素樹脂シートの全光線透過率(Tb)
JIS K 7105に準じて測定した。
【0028】
(c)屈折率Nb、Na
アッベの屈折率計を用いて、NaのD線を光源として測定した。
【0029】
フッ素樹脂シートの屈折率Nbはそのまま測定し、一方、接着性被膜のNaは別途ポリテトラフルオロエチレンの100μmのシート上に接着剤を塗布し乾燥した後、上記シートを剥がして、接着剤単体のフイルムとして測定した。
【0030】
(d)接着性被膜の厚さDa
貼り合わせ用シートの断面(実施例6ではガラスの断面)を走査型電子顕微鏡で観察し、接着性被膜の厚さを測定した。
【0031】
(e)合わせガラスの透明性
貼り合わせ用シートを、2枚の厚さ3mmのソ−ダガラス板(50mm×150mm)の間に挟み、温度130℃、圧力5kg/cm2 の条件で10分間押圧して貼り合わせを行ない、得られた積層体の透明性を目視で4段階評価した。
【0032】
◎ 透明
○ ほぼ透明
△ わずかに曇る
× 曇る
(f)合わせガラスの接着強度
厚さ3mm(50mm×150mm)のソ−ダガラス/貼り合わせ用シート/ポリテトラフルオロエチレンの100μmのフイルムの順番で積層し、温度140℃、圧力2kg/cm2 で5分間圧着して積層後、ポリテトラフルオロエチレンフイルムを剥がして、ガラス/貼り合わせ用シートの積層体を得た。そして貼り合わせ用シートに18mmの間隔で2本のノッチを入れ、23℃において、5mm/分の速度で、ノッチ間のシートをノッチ方向に平行に180゜の角度で剥離し、その時の剥離強度をもとめた(常態強度)。
【0033】
また、貼り合わせ後、100℃の沸騰水に2時間漬けて取り出して、同様の条件で剥離試験を行った。その時の強度をボイル強度とした。単位はgf/18mmである。
【0034】
(実施例1)
フッ化ビニリデン40重量%、テトラフルオロエチレン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%からなる共重合フッ素樹脂を押出機により180℃で押出して、厚さ200μmのフッ素樹脂シートを得た。
【0035】
そのフッ素樹脂シートの両面に、接着剤として、フッ化ビニリデンを主成分としたフッ素樹脂、およびメチルメタクリレ−トを主成分としたアクリル樹脂の混合体からなる溶液(商品名ノバフッソPF−250 C−2:大日本色材工業(株)製)を直接塗布し、乾燥して0.4μm厚さの接着性被膜を設けた。
【0036】
得られた貼り合わせ用シートのフッ素樹脂シートについてフッ素含有量、全光線透過率Tbおよび屈折率Nbを測定し、また接着性被膜単独の屈折率Naおよび接着性被膜の厚さDaを測定した。また、貼り合わせ用シートを用いて合わせガラスを製造し、その透明性と接着強度を評価した。
【0037】
(実施例2)
接着性被膜の厚さを0.1μmとした以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0038】
(実施例3)
使用する接着剤として、メチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂の溶液(商品名アクリディックBZ−1161:大日本インキ工業(株)製)を用いた以外は実施例2と同様のテストを行った。
【0039】
参考例1)接着性被膜の厚さを1.0μmとした以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0040】
(実施例)接着性被膜の厚さを0.03μmとした以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0041】
参考例2)2枚のガラスに接着性被膜としてシランカプリング剤層(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)を0.005μm厚さに形成し、間に実施例1のフッ素樹脂シート(接着性被膜なし)を挟んで貼り合わせ、以下実施例1と同様のテストを行った。
【0042】
参考例3)接着性被膜の厚さを6μmとした以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0043】
参考例4)実施例3で用いた接着剤で厚さ2μmの接着性被膜を形成した以外は実施例3と同様のテストを行った。
【0044】
(比較例1)
使用する接着剤として、ポリ塩化ビニルとポリメチルメタクリレートの等重量混合体の溶液を用いた以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0045】
(比較例2)
接着性被膜の厚さを12μmとした以外は実施例1と同様のテストを行った。(比較例3)
フッ素樹脂シートとして、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のシートを用いた以外は実施例1と同様のテストを行った。
【0046】
以上の結果を、表1、2に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003961051
【0048】
【表2】
Figure 0003961051
【0049】
表1、2に示す結果から明らかなように、本発明の規定範囲内のものは、総合評価△以上で優れている。特に実施例1〜3は、透明性、接着強度ともに高水準にあり、極めて優れていた。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、難燃性と高透明性、および強固な接着強度を有するガラス積層体、およびそのための貼り合わせ用シートが得られる。

Claims (3)

  1. ガラスとフッ素含有量が55重量%以上のフッ素樹脂シートとが接着性被膜により貼り合わされたガラス積層体であって、フッ素樹脂シートの全光線透過率Tb(%)が90以上、接着性被膜の厚さDa(μm)が0.03〜0.4であり、接着性被膜の屈折率をNa、フッ素樹脂シートの屈折率をNbで表したとき、(Na−Nb)の絶対値、|Na−Nb|が0.13以下であることを特徴とするガラス積層体。
  2. フッ素含有量が55重量%以上のフッ素樹脂シートの表面に接着性被膜を設けたガラスとの貼り合わせ用シートであって、フッ素樹脂シートの全光線透過率Tb(%)が90以上、接着性被膜の厚さDa(μm)が0.03〜0.4であり、接着性被膜の屈折率をNa、フッ素樹脂シートの屈折率をNbで表したとき、(Na−Nb)の絶対値、|Na−Nb|が0.13以下であることを特徴とする貼り合わせ用シート。
  3. Da(μm)が0.1〜0.4の範囲にあり、かつ
    Da×|Na−Nb| ≦ 0.03
    であることを特徴とする請求項2記載の貼り合わせ用シート。
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