JP3673602B2 - ガラス積層体およびガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シート - Google Patents

ガラス積層体およびガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスとフッ素樹脂シートとの積層体、およびその積層体を得るためのガラスに接着性を有するフッ素樹脂シートに関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
ガラス板は、透明性、強度を有する材料であるが耐衝撃性が弱く、それを補う方法として、プラスチックシートと貼り合わせた安全ガラスが一般に用いられている。しかし、一般のプラスチックシートでは、ガラスが割れたときの破片の飛散を防止することができるが、火災時にはプラスチックシートが燃焼するので、難燃性を満足させることはできない。そこで、防火・防炎性を有し、かつ通常時に割れても破片飛散防止性を有するガラスとして、ガラス板にフッ素樹脂シートを接着した防火安全ガラスが提案されている。
【0003】
しかしフッ素樹脂シートはガラスなどの他材料との接着性に乏しいので、強固な接着を達成しようとすると、接着剤を用いることが必要となるが、ガラスの持つ高度の透明性を損なわずに強固な接着を達成することは困難であった。
【0004】
従来、合わせガラスを製造するための中間膜として、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが用いられているが、これらの材料をフッ素樹脂シートとガラスとの接着に適用しても、透明性良好でしかも強固な接着を達成することはできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガラスとフッ素樹脂シートとが強固に接着され、しかも高透明性を維持した積層体を提供するものである。またそのような積層体を得るための貼り合わせ用フッ素樹脂シートを提供するものである。
【0006】
すなわち本発明の要旨は、ガラスとフッ素樹脂シートとを、数平均分子量 Mn が4万〜15万のフッ素樹脂成分40〜80重量%と、数平均分子量 Mn が2千〜5万のアクリル樹脂成分60〜20重量%のブレンド体を含む接着剤により接着したことを特徴とするガラス積層体にある。
【0007】
また別の発明の要旨は、フッ素樹脂シートの少なくとも片面に、数平均分子量 Mn が4万〜15万のフッ素樹脂成分40〜80重量%と、数平均分子量 Mn が2千〜5万のアクリル樹脂成分60〜20重量%のブレンド体を含む接着性被膜を設けたことを特徴とするガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シートにある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明におけるフッ素樹脂シートは、モノマ−成分が、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの含フッ素系モノマ−の単独重合体または共重合体、あるいは前記含フッ素系モノマ−に、エチレン、アルキルビニルエーテルなどのビニルモノマ−などが併用された共重合体、あるいはこれらの混合物からなるものである。そしてシート状に成形できるもの、すなわち熱溶融成形可能なものであればよく、テトラフルオロエチレンの単独重合体(PTFE)以外のフッ素樹脂は特に制限なく使用することができる。
【0009】
具体的には、テトラフルオロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライドなどが挙げられる。
【0010】
そして防火ガラスを得ようとするときは、難燃性を確保するためにフッ素の含有量が55重量%以上、好ましくは60重量%以上のものを選定するのが好ましい。
【0011】
このフッ素樹脂シートとしては、後述の理由により成分としてフッ化ビニリデンを含むものが好ましい。特に好ましいフッ素樹脂シートとしては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンの3元共重合体が挙げられる。この3元共重合体の好ましい共重合比は、フッ化ビニリデン20〜40重量%、テトラフルオロエチレン20〜60重量%、ヘキサフルオロプロピレン5〜20重量%の範囲である。
【0012】
この共重合体のシートは、結晶性が低く透明性が良好で、柔軟で耐衝撃性に優れ、また融点が比較的低いのでガラスとの熱融着に適している。
【0013】
フッ素樹脂シートの厚さは特に制限されないが、ガラスと積層したときの耐衝撃性に及ぼす影響などを考慮すると、50〜2000μmの範囲が好ましい。 フッ素樹脂シートの成形は一般に知られている方法によればよく、例えば、フッ素樹脂を有機溶剤に溶解して、剥離性基材の上に均一に塗布した後、有機溶剤を乾燥除去して基材から剥がしてシート化する方法、フッ素樹脂の水系デイスパージョンを剥離性の基材上に均一に塗布した後、水を乾燥する方法、あるいは、押出法、カレンダ−法などの熱可塑成形によりシート化する方法などが可能である。
【0014】
このフッ素樹脂シートには、各種添加剤をフッ素樹脂シートの特性、特に透明性を損なわない範囲内で添加することができる。
【0015】
このフッ素樹脂シートをガラスと接着するための接着性被膜は、フッ素樹脂シートの少なくとも片面、好適には両面に設けられる。またガラス面に形成してもよい。
【0016】
接着性被膜を形成する接着剤は、フッ素樹脂成分40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%と、アクリル樹脂成分60〜20重量%、好ましくは50〜30重量%とを含むものである。フッ素樹脂成分が40重量%未満ではフッ素樹脂シートとの接着性が損なわれ、またフッ素樹脂成分が80重量%を越えると(アクリル樹脂成分が20重量%未満)、ガラスとの接着性が損なわれる。
【0017】
この両成分の形態は、フッ素含有モノマーのブロックと(メタ)アクリル酸エステルのブロックを有するブロック共重合体や、一方の樹脂に他方の樹脂成分がグラフトしたグラフト共重合体であってもよいが、実用上は樹脂の製造効率やコストの面からフッ素樹脂とアクリル樹脂のブレンド体が好適である。
【0018】
フッ素樹脂成分としては、モノマ−成分としてフッ化ビニリデンを主体とするものが用いられる。具体的には、フッ化ビニリデン50〜100重量%、テトラフルオロエチレン0〜40重量%およびヘキサフルオロプロピレン0〜30重量%を含むものが好適である。
【0019】
一方、アクリル樹脂成分のモノマ−としては、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、ラウリルまたはステアリルなどのエステルが挙げられるが、メチルメタクリレートは必須の成分であり、アクリル樹脂成分中90重量%以上の割合で含まれることが必要である。90重量%より少ない場合にはガラスと接着した場合に、ガラスとの接着性が不十分になる。
【0020】
また、その他のアルキル(メタ)アクリレ−トモノマ−としては、メチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト、ブチルメタクリレ−ト、イソブチルメタクリレ−トなどを好ましく用いることができる。
【0021】
さらに、ガラスとの接着性を向上させるために、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸などの酸モノマ−を加えることが好ましい。
【0022】
接着剤がフッ素樹脂成分とアクリル樹脂成分とのブレンド体である場合には、両成分の相溶性がよいことが透明性や接着強度の面から重要となる。その点でフッ素樹脂成分として、アクリル系樹脂と相溶性のよいフッ化ビニリデンを主モノマー成分とするものを用いるのが好ましい。
【0023】
また、両樹脂成分に上述したような共重合成分を含有させたり、両成分の分子量を調整することにより相溶性を調整することができる。一般にフッ素樹脂成分の数平均分子量Mnは4万〜15万、アクリル樹脂系成分の数平均分子量Mnは2千〜5万の範囲が好適である。
【0024】
このように接着剤成分としてフッ化ビニリデン系フッ素樹脂を含むのが好ましく、従ってフッ素樹脂シートとして共通成分のフッ化ビニリデンを含むものを用いれば、シートと接着剤との密着度が高くなり好ましい。
【0025】
接着性被膜の形成は、上述のフッ素樹脂成分およびアクリル樹脂成分を含む接着剤を有機溶剤に溶解させ、ガラスまたはフッ素樹脂シートの表面に均一に塗布してその後加熱して乾燥させ、直接被膜を形成する方法や、接着剤溶液を剥離性の基材上に均一に塗布し乾燥させ、その後フッ素樹脂シートとの熱融着により転写して形成する方法などが可能である。
【0026】
なお、この溶液中には、第3成分として紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、界面活性剤、シランカップリング剤、衝撃改良剤などを接着性、透明性を損なわない範囲で添加することが可能である。
【0027】
フッ素樹脂シートに接着性被膜を形成する場合、フッ素樹脂シートの表面にしわが入るおそれがある場合は、剥離性の基材をフッ素樹脂シートの背面に積層して「腰」を持たせ、接着性被膜を形成したのち、剥離性の基材を剥離させる方法もあり、フッ素樹脂シートの形成の際に剥離性の基材を使用すれば、それがそのまま利用できる。
【0028】
フッ素樹脂シートの表面に接着性被膜を形成するにあたっては、フッ素樹脂シートと接着性被膜との接着性を向上させるため、フッ素樹脂シートの表面を予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、ナトリウム−アンモニア処理などの方法によりエッチングあるいは酸化することもできる。
【0029】
本発明のガラス積層体を得るには、ガラスの表面に前記接着性被膜を形成し、フッ素樹脂シートと加熱圧着して融着させる方法、またはフッ素樹脂シート表面に前記接着性被膜を形成し、これをガラスに加熱圧着して融着させる方法によることができる。そして得られるガラス積層体は、透明性、接着強度に優れ、また高い難燃性を持った積層体も製造可能となる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
フッ化ビニリデン40重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%、テトラフルオロエチレン40重量%からなる共重合フッ素樹脂を押出機により押出して、厚さ200μmのフッ素樹脂シートを得た。
【0031】
そして接着剤として、フッ化ビニリデン61重量%、テトラフルオロエチレン24重量%、ヘキサフルオロプロピレン15重量%からなるフッ素樹脂と、メチルメタクリレ−ト95重量%、エチルメタクリレ−ト5重量%からなるアクリル樹脂とを重量比で70:30でブレンドしたものを用い、この接着剤を酢酸ブチルとメチルイソブチルケトン(重量比75:25)の混合溶剤に溶解したものをフッ素樹脂シートにコ−タ−で塗布し、120℃の加熱炉で30秒間加熱して溶剤を乾燥除去し、フッ素樹脂シート片面に厚さ1μmの接着性被膜を持つ貼り合わせ用シートを得た。
【0032】
このシートを用い下記に示す(a)接着性と(b)透明性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
(a)接着強度
1)試料の作製
厚さ3mm(150mm×50mm)のソ−ダガラスと、フッ素樹脂シートとを、接着性被膜がガラス面に向くように重ねて熱プレス機で140℃、2Kg/cm2 の条件で5分間加圧・加熱を行って貼り合わせた。
【0034】
2)常態強度
貼り合わされたフッ素樹脂シートの表面に18mmの間隔で2本のノッチを入れて、そのノッチ間のフッ素樹脂シートをノッチ方向に平行に、23℃において180゜の角度で速度5mm/分で剥がし、その時の接着強度(gf/18mm)を常態強度とした。
【0035】
3)ボイル強度
上記の条件で貼り合わせた後、100℃の沸騰水中に2時間漬けて取り出し、同様に測定した接着力をボイル強度とした。
【0036】
(b)透明性
(a)の条件で貼り合わせた物を目視で観察し、透明性のレベルを3段階で評価した。
【0037】
○ :透明
△ :わずかに曇る。
【0038】
× :曇る。
【0039】
(実施例2)
フッ素樹脂シートとして、フッ化ビニリデン20重量%、テトラフルオロエチレン60重量%、ヘキサフルオロプロピレン20重量%の共重合フッ素樹脂のシートを用いた以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0040】
(実施例3)
接着剤として、フッ化ビニリデン100重量%からなるフッ素樹脂と、メチルメタクリレ−ト100重量%のアクリル樹脂とを重量比で55:45でブレンドしたものを用い、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0041】
(比較例1)
接着性被膜を設けないフッ素樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0042】
(比較例2)
接着剤として、メチルメタクリレ−ト95重量%とエチルメタクリレ−ト5重量%からなるアクリル系共重合体を用い、接着性被膜の厚さを1.5μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0043】
(比較例3)
接着剤として、フッ化ビニリデン61重量%、テトラフルオロエチレン24重量%、ヘキサフルオロプロピレン15重量%からなるフッ素樹脂を用い、接着性被膜の厚さを1.5μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0044】
(比較例4)
接着剤として、テトラフルオロエチレン−ビニルエステル共重合体(セントラル硝子(株)製;セフラルコートA−402B)を用い、接着性被膜の厚さを1.5μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0045】
(比較例5)
接着剤として、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(武田薬品工業(株)製;タケメルトSD−181)を用い、接着性被膜の厚さを2μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0046】
(比較例6)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製)を用い、接着性被膜の厚さを2μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0047】
(比較例7)
接着剤として、エポキシ系接着剤(チバガイギー社製;アラルダイトAER280)を用い、接着性被膜の厚さを5μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0048】
(比較例8)
接着剤として、シリコーン系接着剤(コニシ(株)製;ボンドMOS−7)を用い、接着性被膜の厚さを5μmとし、それ以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
これらの評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0003673602
【0050】
表1に示す結果から明らかなように、フッ素樹脂成分とアクリル樹脂成分とを含む接着剤を使用した実施例においては、透明性、接着強度に優れた積層体が得られた。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスとフッ素樹脂シートとを強固に、かつ高透明性を維持して積層することができ、得られる積層体は難燃性を有するものとすることができる。

Claims (2)

  1. ガラスとフッ素樹脂シートとを、数平均分子量 Mn が4万〜15万のフッ素樹脂成分40〜80重量%と、数平均分子量 Mn が2千〜5万のアクリル樹脂成分60〜20重量%のブレンド体を含む接着剤により接着したことを特徴とするガラス積層体。
  2. フッ素樹脂シートの少なくとも片面に、数平均分子量 Mn が4万〜15万のフッ素樹脂成分40〜80重量%と、数平均分子量 Mn が2千〜5万のアクリル樹脂成分60〜20重量%のブレンド体を含む接着性被膜を設けたことを特徴とするガラス貼り合わせ用フッ素樹脂シート。
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