JP2021079597A - 積層フィルム、および、包装袋 - Google Patents

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【課題】殺菌処理後の落袋耐性を向上可能にした積層フィルム、および、包装袋を提供する。【解決手段】ガスバリアフィルム層11と、熱可塑性樹脂層12と、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層12との間に位置する接着層13と、を備え、接着層13の主成分は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンであり、熱可塑性樹脂層12は、ポリプロピレン系樹脂、および、ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含み、非相溶系成分の含有量が、熱可塑性樹脂層12の全量に対して1質量%以上40質量%であり、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理された包装袋の非熱溶着部において、JIS K 7211-2:2006に準拠した最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上であり、JIS K 7211-1:2006に準拠した破壊の様式が貫通である。【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋を製造するための積層フィルム、および、包装袋に関する。
熱可塑性樹脂層とガスバリアフィルム層とが接着層によって接合された積層フィルムは、熱可塑性樹脂層同士で熱溶着されて、食品や医薬品などを収容する包装袋に成形される(例えば、特許文献1を参照)。電子レンジによる加熱や高い環境適合性が求められる包装袋では、上述したガスバリアフィルム層にアルミ箔を適用する構成ではなく、ガスバリアフィルム層に無機酸化膜を適用する構成が、積極的に採用されている。そして、熱可塑性樹脂層と無機酸化膜との接着性を高める技術として、接着層に含まれる無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンのグラフト率を特定することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2011−46006号公報 特開平06−306198号公報
ところで、食品や医薬品などを収容した状態で高温の殺菌処理が施される包装袋には、熱可塑性樹脂層同士の熱溶着部に殺菌処理後の剥離などを生じない耐性、いわゆる、レトルト耐性が求められる。特に、食酢や油などの液体調味料やアルコールを含有する浴用剤などを収容する包装袋には、高い浸透力を有した揮発性物質が内容物に含まれるため、より高いレトルト耐性が求められる。一方、積層フィルムの熱溶着によって製造された包装袋に高温の殺菌処理が施されると、落袋耐性を低下させるような、ポリプロピレンの結晶化、および、結晶部と非結晶部との界面でのマイクロクラックの形成が進行してしまう。
本発明の目的は、殺菌処理後の落袋耐性を向上可能にした積層フィルム、および、包装袋を提供することである。
上記課題を解決するための積層フィルムは、ガスバリアフィルム層と、熱可塑性樹脂層と、前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する接着層と、を備え、前記熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋用の積層フィルムである。前記接着層の主成分は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンであり、前記熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、および、前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含み、前記非相溶系成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂層の全量に対して1質量%以上40質量%であり、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理された前記包装袋の非熱溶着部において、下記条件1、および、条件2を満たす。条件1は、JIS K 7211-2:2006に準拠した最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上である。条件2は、JIS K 7211-1:2006に準拠した破壊の様式が貫通である。
上述したように、殺菌処理後によるポリプロピレンの結晶化は、接着層とガスバリアフィルム層との間の接着強度の低下や、熱可塑性樹脂層における凝集力の低下などを招いて、包装袋における落袋耐性を低下させてしまう。接着層を構成する材料の特定と、熱可塑性樹脂層を構成する材料の特定とは、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層との間での密着性を殺菌処理前に高めることを可能とする一方で、殺菌処理後の落袋耐性を高めることに関しては、依然として改善の余地を残すものである。
この点、本発明者らは、非熱溶着部における最大衝撃力時エネルギー、および、破壊の様式が殺菌処理後の落袋耐性の結果と密接な関係を有することを見出した。そして、上記積層フィルムは、最大衝撃力時エネルギーと落袋耐性との関係、および、破壊の様式と落袋耐性との関係を用い、殺菌処理後の非熱溶着部のJIS K 7211-2:2006に準拠した最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上であり、かつ、JIS K 7211-1:2006に準拠した破壊の様式が貫通であることを満たすものとする。それゆえに、殺菌処理後の落袋耐性を向上することが可能となる。
上記積層フィルムにおいて、前記無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンにおける無水マレイン酸のグラフト率は、0.1質量%以上1質量%以下であってもよい。この構成によれば、グラフト率が0.1質量%以上であるため、十分な接着強度を得ることができ、殺菌処理後にデラミネーションが生じることが抑えられる。また、グラフト率が1質量%以下であるため、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンの樹脂特性が安定する。
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層と、前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備えてもよい。前記バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物、および、水酸基を有した水溶性高分子の塗工膜の乾燥物からなる群から選択されるいずれか1つを含んでもよい。
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層と、前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備えてもよい。前記プライマー層は、トリアルコキシシランとトリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含んでもよい。
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、プラズマ処理された表面を含む基材フィルム層と、バリア層と、前記基材フィルム層の表面と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備えてもよい。
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層であって、ポリカルボン酸系重合体を含む前記バリア層と、を備えてもよい。
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層であって、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含む前記バリア層と、を備えてもよい。
上記課題を解決するための包装袋は、積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、前記積層フィルムが、上述した積層フィルムである。
上記各構成によれば、殺菌処理後の落袋耐性を向上できることの実効性を高めることが可能となる。
上記課題を解決するための包装袋は、ガスバリアフィルム層と、熱可塑性樹脂層と、前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する接着層と、を備え、前記熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋である。前記接着層の主成分は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンであり、前記熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、および、前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含み、前記非相溶系成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂層の全量を基準として1質量%以上40質量%である。そして、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理された前記包装袋の熱溶着部において、前記包装袋の縁である前記熱溶着部の剥離強さの最大値が28N/15mm以上であり、かつ、下記条件3、または、下記条件4を満たす。条件3では、前記剥離強さは、前記最大値が得られて以降に安定する安定域を有し、前記安定域における剥離強さの前記最大値に対する比が0.3以上である。条件4では、前記剥離強さは、前記安定域を有さず、前記最大値が得られて以降の平均剥離強さの前記最大値に対する比が0.3以上である。
上述したように、接着層を構成する材料の特定と、熱可塑性樹脂層を構成する材料の特定とは、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層との間での密着性を殺菌処理前に高めることを可能とする一方で、殺菌処理後の落袋耐性を高めることに関しては、依然として改善の余地を残すものである。本発明者らは、殺菌処理後の熱溶着部における剥離強さの試験のなかで、剥離強さの最大値が得られて以降の剥離強さが殺菌処理後の落袋耐性の結果と密接な関係を有することを見出した。そして、上記積層フィルムは、剥離強さの最大値が得られて以降の剥離強さと落袋耐性との関係を用い、最大値が得られて以降に安定する安定域での剥離強さの最大値に対する比が0.3以上であること、を満たすものとする。また、上記積層フィルムは、最大値が得られて以降、終点までの平均剥離強さの最大値に対する比が0.3以上であること、を満たすものとする。それゆえに、殺菌処理後の落袋耐性を向上することが可能となる。
本発明によれば、殺菌処理後の落袋耐性を向上できる。
第1層構成の積層フィルムにおける構造を示す断面図。 第2層構成の積層フィルムにおける構造を示す断面図。 第3層構成の積層フィルムにおける構造を示す断面図。 第4層構成の積層フィルムにおける構造を示す断面図。 包装袋の製造方法を説明するための包装袋の平面図。 包装袋の製造方法を説明するための包装袋の平面図。 包装袋の製造方法を説明するための包装袋の平面図。 剥離強さの測定に用いた試験片を示す斜視図。 剥離強さの測定途中における試験片の端部を示す斜視図。 剥離強さと引張距離との関係の一例を示すグラフ。 剥離強さと引張距離との関係の他の例を示すグラフ。
図1から図11を参照して、積層フィルム、および、包装袋の一実施形態を説明する。
なお、図1は、第1層構成を備えた積層フィルムにおける断面構造を示し、図2は、第2層構成を備えた積層フィルムにおける断面構造を示す。
また、図3は、第3層構成を備えた積層フィルムにおける断面構造を示し、図4は、第4層構成を備えた積層フィルムにおける断面構造を示す。
(第1層構成)
図1が示すように、積層フィルム10は、ガスバリアフィルム層11、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13を備える。接着層12は、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13との間に位置する。接着層12は、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13とに接触している。ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13とは、接着層12によって接合されている。
積層フィルム10は、熱可塑性樹脂層13の一部と他部とが対向するように重ねられて、あるいは、熱可塑性樹脂層13の一部と他の積層フィルム10の熱可塑性樹脂層13の一部とが対向するように重ねられて、熱可塑性樹脂層13同士の熱溶着によって包装袋を形成する。包装袋は、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理される。殺菌処理後の包装袋のなかの非熱溶着部は、下記条件1、および、条件2を満たす。
(条件1)JIS K 7211-2:2006に準拠した最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上である。エネルギーキャリアは、重錘の質量とストライカーの質量との和である。
(条件2)JIS K 7211-1:2006に準拠した破壊の様式が貫通である。
殺菌処理後の包装袋のなかの熱溶着部は、熱溶着部の始点から終点までの剥離強さを連続的に測定した際の最大値が28N/15mm以上であり、かつ、下記条件3、または、下記条件4を満たす。
(条件3)剥離強さは、最大値が得られて以降に安定する安定域を有し、安定域における剥離強さの最大値に対する比が0.3以上である、
(条件4)剥離強さは、安定域を有さず、最大値が得られて以降、終点までの平均剥離強さの最大値に対する比が0.3以上である。
[ガスバリアフィルム層11]
図1が示すように、ガスバリアフィルム層11は、基材フィルム層11a、プライマー層11b、酸化金属層11c、および、バリア層11dを備える。プライマー層11bは、基材フィルム層11aとバリア層11dとの間に位置する。酸化金属層11cは、プライマー層11bとバリア層11dとの間に位置する。バリア層11dは、基材フィルム層11aと接着層12との間に位置する。基材フィルム層11aと酸化金属層11cとは、プライマー層11bによって接合されている。
[基材フィルム層11a]
基材フィルム層11aは、1枚の樹脂フィルムからなる単層構造、あるいは、2枚以上の樹脂フィルムからなる積層構造を備える。基材フィルム層11aの厚さは、包装袋に求められる各種の耐性や加工性に応じて適宜変更可能であり、例えば、3μm以上200μm以下である。包装袋の柔軟性が高められる観点から、基材フィルム層11aの厚さは、6μm以上30μm以下であることが好ましい。
樹脂フィルムを構成する材料は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、および、水酸基含有重合体である。ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、これらの共重合体である。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、および、ポリプロピレンである。ポリアミド系樹脂は、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、および、ナイロン−12である。水酸基含有重合体は、例えば、ポリビニルアルコール、および、エチレン−ビニルアルコール共重合体である。樹脂フィルムを構成する材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、および、水酸基含有重合体のうちの1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。機械的強度、および、寸法安定性に優れている観点において、樹脂フィルムが延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムである。
[プライマー層11b]
プライマー層11bは、化学的な吸着機能やアンカー機能などの各種の密着機能を備え、基材フィルム層11aと酸化金属層11cとの間での密着性を高める。プライマー層11bを構成する材料は、例えば、トリアルコキシシランと、トリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含む。
トリアルコキシシランは、一般式RSi(ORによって示される。Rは、アルキル基、ビニル基、イソシアネート基を含むアルキル基、グリシドキシ基を含むアルキル基、エポキシ基を有するアルキル基である。Rに含まれるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもあってもよいし、分岐鎖のアルキル基であってもよいし、環状のアルキル基であってもよい。Rは、基材フィルム層11a、および、酸化金属層11cを構成する材料に合わせて適宜変更可能である。ORは、メトキシ基、エトキシ基、および、エトキシメトキシ基などの加水分解性を有したアルコキシ基である。トリアルコキシシランの加水分解生成物は、例えば、トリアルコキシシランに酸またはアルカリなどを添加してトリアルコキシシランを加水分解することによって得られる。トリアルコキシシランは、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせで使用可能である。
トリアルコキシシランは、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、および、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランである。トリアルコキシシランは、これらのうちでも、イソシアネート基を含むイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランであることが好ましい。また、トリアルコキシシランは、グリシドキシ基を有するグリシドオキシトリメトキシシラン、あるいは、エポキシ基を含むエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランであることが好ましい。
アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させて得られる高分子化合物、または、アクリル酸誘導体モノマーを共重合させて得られる高分子化合物である。アクリル酸誘導体モノマーを共重合させて得られる高分子化合物は、末端に水酸基を有し、イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する化合物を含む。アクリル酸誘導体モノマーは、例えば、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、および、ヒドロキシブチルメタクリレートである。アクリル酸誘導体モノマー以外のモノマーは、例えば、スチレンである。
アクリルポリオールは、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートと、および、ヒドロキシブチルメタクリレートから構成される群から選択される1種のアクリル酸誘導体モノマーの単独重合体であることが好ましい。あるいは、アクリルポリオールは、上述した群から選択されるアクリル酸誘導体モノマーとスチレンとの共重合体であることが好ましい。アクリルポリオールは、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせを使用可能である。
アクリルポリオールの水酸基価は、5KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であることが好ましい。これにより、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応性が高められる。アクリルポリオールの質量(MA)と、トリアルコキシシランの質量(MO)との比(MA/MO)は、1/1以上100/1以下であることが好ましく、2/15以上50/1以下であることがより好ましい。
イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有し、アクリルポリオールと反応することによってウレタン結合を形成する。イソシアネート化合物は、基材フィルム層11aと酸化金属層11cとの間の密着性を高めるための架橋剤、または、硬化剤として機能する。
イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物である。また、イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物、または、脂肪族系イソシアネート化合物と、ポリオールとの重合によって得られるイソシアネート基を有した重合体である。また、イソシアネート化合物は、芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物、および、上述したイソシアネート基を有した重合体の誘導体である。イソシアネート化合物は、上述したなかから選択された1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
芳香族系イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、および、ジフェニルメタンジイソシアネートなどである。脂肪族イソシアネート化合物は、例えば、キシレンジイソシアネート、および、ヘキサレンジイソシアネートなどである。
アクリルポリオールに由来する水酸基の数(NH)に対するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基の数(NI)の比(NI/NH)は、例えば、50倍以下である。アクリルポリオールに由来する水酸基の数は、例えば、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基の数と等しい。これにより、イソシアネート化合物が少なすぎるためにプライマー層11bの硬化不良が生じたり、イソシアネート化合物が多すぎるためにブロッキングが生じて積層フィルム10の加工が難しくなったりすることが抑えられる。
プライマー層11bを構成する反応生成物は、トリアルコキシシラン、または、トリアルコキシシランの加水分解生成物のいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とを、溶媒中で反応させることによって得られる。
溶媒は、各成分を溶解、および、希釈可能であればよい。溶媒は、例えば、エステル類、アルコール類、ケトン類、および、芳香族炭化水素類である。エステル類は、例えば、酢酸エチルや酢酸ブチルである。アルコール類は、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、および、イソプロピルアルコールである。ケトン類は、例えば、メチルエチルケトンである。芳香族炭化水素類は、例えば、トルエンやキシレンである。溶媒は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
なお、プライマー層11bを構成する反応生成物の生成に際して、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとの反応を促すための触媒を用いてもよい。反応性が高まる観点、および、重合安定性が得られる観点から、触媒は、塩化錫、オキシ塩化錫、および、錫アルコキシドなどの錫化合物であることが好ましい。触媒は、各成分の配合時に反応液に直接添加されてもよいし、メタノ−ルなどの溶媒に溶かした後に、反応液に添加されてもよい。
また、プライマー層11bを構成する反応生成物の生成に際して、反応生成物を含む液体の安定性を高めるための金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物を用いてもよい。金属アルコキシドを構成する金属原子は、Si、Al、Ti、または、Zrである。水系の溶媒中において安定に存在する観点から、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム、または、これらの混合物であることが好ましい。金属アルコキシドの加水分解生成物は、トリアルコキシシランの加水分解生成物を得る方法と同様である。金属アルコキシドの加水分解生成物の生成は、トリアルコキシシランの加水分解生成物の生成と同時であってもよいし、トリアルコキシシランの加水分解生成物の生成と別であってもよい。
また、プライマー層11bは、各種の添加剤を含んでもよい。添加剤は、例えば、硬化促進剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、および、充填剤である。硬化促進剤は、例えば、3級アミン、イミダゾ−ル誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、および、4級ホスホニウム塩である。酸化防止剤は、例えば、フェノ−ル系、硫黄系、および、ホスファイト系である。
プライマー層11bを形成する1つの方法例は、触媒の存在下において、トリアルコキシシランを加水分解した液、または、トリアルコキシシランを金属アルコキシドとともに加水分解した液に、アクリルポリオール、および、イソシアネート化合物を混合して、塗工液を生成する。次いで、塗工液を基材フィルム層11aに塗工し、塗工膜を乾燥させることによって、プライマー層11bを形成する。
プライマー層11bを形成する他の方法例は、触媒と金属アルコキシドとが存在する溶媒中において、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとを混合した液に、イソシアネート化合物を加えて混合する。あるいは、触媒と金属アルコキシドとが存在する溶媒中において、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとを混合した後に、さらに加水分解反応を行い、加水分解反応後の液にイソシアネート化合物を加えて、塗工液を生成する。次いで、塗工液を基材フィルム層11aに塗工し、塗工膜を乾燥させることによって、プライマー層11bを形成する。
なお、塗工液を塗工する方法は、例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、および、グラビアオフセット法である。
また、塗工膜を乾燥する方法は、塗工液を加熱することによって溶媒分子を気化させる方法であればよい。塗工膜を乾燥する方法は、例えば、熱風乾燥、熱ロ−ル乾燥、高周波照射、赤外線照射、および、紫外線照射である。塗工液の乾燥には、上述した方法のうち2つ以上の方法を用いてもよい。
[酸化金属層11c]
酸化金属層11cは、金属酸化物から構成される。金属酸化物は、例えば、酸化ケイ素、および、酸化アルミニウムである。金属酸化物は、酸化アルミニウムであることが好ましい。酸化金属層11cの形成方法は、例えば、真空蒸着法、または、スパッタ法である。
酸化金属層11cの厚さは、10nm以上50nm以下であることが好ましく、15nm以上30nm以下であることがより好ましい。酸化金属層11cの厚さが10nm以上であることによって、酸化金属層11cによるバリア性が十分に確保される。酸化金属層11cの厚さが50nm以下であることによって、酸化金属層11cの透明性、ひいては、積層フィルム10、および、包装袋の透明性が確保される。
[バリア層11d]
バリア層11dを構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、および、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物からなる群から選択されるいずれか1つを含む。
金属アルコキシドは、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランなどのアルコキシシランである。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシメトキシ基である。アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートは、例えば、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。
バリア層11dは、例えば、金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物と、ビニルアルコールを含む重合体と、イソシアネート化合物と、シランカップリング剤と、を混合した塗工液を塗工し、塗工液を乾燥することによって得られる。ビニルアルコールを含む重合体は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、および、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物であって、トリレンジイソシアネート、および、キシリレンジイソシアネートである。
シランカップリング剤は、一般式RSi(ORによって示される。Rは、有機官能基であり、ORは、メトキシ基、エトキシ基、および、エトキシメトキシ基などの加水分解性を有したアルコキシ基である。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシランカップリング剤、アミンシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、および、アクリルシランカップリング剤である。なお、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を、イソシアネート化合物とシランカップリング剤との両方を兼ねる化合物として用いてもよい。
飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いてバリア層11dを分析した場合には、アルコキシシランに由来する成分、ビニルアルコールを含む重合体に由来する成分、イソシアネート化合物に由来する成分、および、シランカップリング剤に由来する成分が検出される。なお、TOF−SIMSは、分析対象の表面にイオンを照射した際に生じる2次イオンのマススペクトルを測定し、分析対象の表面における構成元素や化学構造に関する情報を得ることが可能な表面分析法である。
バリア層11dには、バリア層11dに隣接する層との密着性、濡れ性、および、収縮によるクラックの抑制などを考慮して、粘土鉱物、安定化剤、着色剤、および、粘度調整剤などの添加剤が添加されてもよい。粘土鉱物は、例えば、コロイダルシリカ、および、スメクタイトなどであってよい。
バリア層11dの厚さは、0.01μm以上50μm以下であることが好ましい。バリア層11dの厚さが0.01μm以上であることによって、バリア層11dのガスバリア性を高めることができる。バリア層11dが50μm以下であることによって、バリア層11dにクラックが生じることが抑えられる。
バリア層11dを形成する1つの方法は、まず、金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物と、ビニルアルコールを含む重合体と、イソシアネート化合物と、シランカップリング剤と、を溶媒中で混合することによって塗工液を調製する。次いで、酸化金属層11cなどの下地に塗工液を塗工し、塗工膜を乾燥することによって、バリア層11dを形成する。金属アルコキシドは、水系溶媒中では均一に分散しにくいため、加水分解された金属アルコキシドを用いることが好ましい。塗工膜を形成する方法、および、塗工膜を乾燥する方法には、プライマー層11bの形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
なお、積層フィルム10は、ガスバリアフィルム層11と接着層12との間に、インキ層を形成してもよい。インキ層を形成するためのインキは、有色顔料を含むインキであってもよいし、有色顔料を含まないインキであってもよい。有色顔料を含まないインキは、例えば、メジウム、および、ワニスである。インキの溶媒は、例えば、エステル類、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類である。エステル類は、例えば、酢酸エチル、および、酢酸ブチルである。アルコール類は、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、および、イソプロピルアルコールである。ケトン類は、例えば、メチルエチルケトンである。芳香族炭化水素類は、例えば、トルエン、および、キシレンである。溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。なお、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を低減する観点から、水系の溶媒が好ましい。
インキ層を形成するための印刷方法は、例えば、グラビア印刷、および、フレキソ印刷である。インキ層を形成する際のインキの塗工量は、例えば、0.5g/m以上15g/m以下が好ましく、1g/m以上5g/m以下であることがより好ましい。インキ層は、積層フィルム10の厚さ方向から見て、積層フィルム10の全体に形成されることが好ましい。すなわち、インキ層は、積層フィルム10の厚さ方向から見て、積層フィルム10を用いて包装袋を形成した場合に熱溶着される部分にも形成されることが好ましい。
[接着層12]
接着層12の主成分は、熱溶融性を有した無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンである。接着層12の主成分は、接着層12を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、接着層12の全質量に対して50質量%以上の含有率を有する成分であって、変性濃度は問わない。以下、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンを変性PPとも言う。接着層12は、主成分以外の成分として、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、および、プロピレン−αオレフィン共重合体を含む。αオレフィンは、例えば、エチレン、および、1−ブテンである。
変性PPは、ポリプロピレンを無水マレイン酸によってグラフト変性したポリプロピレンである。変性PPを生成するためのポリプロピレンは、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、および、プロピレン−αオレフィン共重合体である。αオレフィンは、例えば、エチレン、および、1−ブテンである。
変性PPの融点は、100℃以上であることが好ましい。これにより、積層フィルム10のレトルト耐性を高めることができる。変性PPにおける無水マレイン酸のグラフト率は、0.1質量%以上1質量%以下である。グラフト率が0.1質量%以上であることによって、十分な接着強度を得ることができ、これによって、殺菌処理後にデラミネーションが生じることが抑えられる。グラフト率が1質量%以下であることによって、変性PPの樹脂特性が安定する。なお、グラフト率が1質量%を超える場合には、ポリプロピレンをグラフト化する際に用いる反応触媒が、PP樹脂本体の分解を促し、これによって、変性PPの分子量が小さくなる。変性PPの分子量が小さくなることは、変性PPのMFR(Melt Flow Rate:メルトフロ−レート)を極端に上昇させて、製膜適性を低下させたり、皮膜強度が低下して、接着強度が得られなかったりする。変性PPは、上述したなかから選択された1種、あるいは、2種以上の組み合わせである。
接着層12の厚さは、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましい。接着層12の厚さが1μm以上であることによって、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13との間においてデラミネーションが生じることが抑えられる。接着層12の厚さが30μm以下であることによって、積層フィルム10の熱伝導性が高く維持されるため、積層フィルム10を用いて包装袋を形成した場合に、適正なラミネ−ト強度を有した包装袋を得ることができる。
[熱可塑性樹脂層13]
熱可塑性樹脂層13は、ポリプロピレン系樹脂、および、ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含む。熱可塑性樹脂層13を構成する熱可塑性樹脂は、熱融着性を有する樹脂であればよい。非相溶系成分の含有量が、熱可塑性樹脂層13の全量に対して1質量%以上40質量%である。
ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体である。非相溶系成分は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂、および、これらの金属架橋物である。
食品包装におけるレトルト殺菌に対する適性を考慮した場合には、熱可塑性樹脂層13を形成する熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、および、耐熱性のLLDPEであることが好ましい。熱可塑性樹脂層13は、熱可塑性樹脂を2種のみ含んでもよいし、3種以上含んでもよい。
熱可塑性樹脂層13の厚さは、30μm以上200μm以下であってよい。熱可塑性樹脂層13の厚さは、積層フィルム10の使用目的に応じて適宜設定することが可能である。
[積層フィルムの製造方法]
まず、積層フィルムの製造方法は、ガスバリアフィルム層11、および、熱可塑性樹脂層13としての樹脂フィルムを準備する。次いで、サンドイッチラミネーション法を用いて、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13とを積層した。すなわち、溶融押出法を用いて、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層13との間に、接着層12を形成するための樹脂を押し出し、ガスバリアフィルム層11、押し出された樹脂層、および、熱可塑性樹脂層13をこの順に積層した積層体を得た。そして、熱ラミネーションを用いて、接着層12を形成するための樹脂の融点以上の温度で積層体を加熱した。これによって、ガスバリアフィルム層11と接着層12との間の密着性、および、接着層12と熱可塑性樹脂層13との間の密着性を高めて、ガスバリアフィルム層11、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13からなる積層フィルムを得た。
また、積層フィルムの製造方法は、サンドイッチラミネーション以外の方法に変更することも可能である。すなわち、ガスバリアフィルム層11のバリア層11dに、溶融押出法、キャストフィルム加工法、または、コーティング加工法を用いて、変性PPから形成される接着層12を積層する。次いで、ガスバリアフィルム層11に積層された接着層12に、熱ラミネ−ト法を用いて、熱可塑性樹脂層13を積層する。
溶融押出法を用いる製法では、接着層12のみを単層で形成してもよいし、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、または、ブロックポリプロピレンとの共押出によって、変性PP層と他のポリプロピレン層との積層体を形成することも可能である。キャストフィルム法を用いる製法では、接着層12が熱可塑性樹脂層13とともに形成される。
コーティング加工法を用いる製法では、まず、ガスバリアフィルム層11のうち、バリア層11dが有する表面に、変性PPを含む液状塗工剤を塗工する。次いで、塗工した塗工膜を加熱して溶媒を蒸発させることによって、接着層12を形成する。液状塗工剤に用いる溶媒は、変性PPを分散または溶解することができる溶媒である。溶媒は、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、および、酢酸n−プロピルなどであってよい。液状接着剤の塗工方法は、プライマー層11bの形成に例示した塗工方法である。また、塗工された液状接着剤の乾燥方法は、プライマー層11bの形成に例示した乾燥方法である。
レトルト加熱殺菌用包装袋のように加熱殺菌耐性を要する包装袋では、従前の積層フィルムの接着層として、ウレタン2液硬化タイプのようなドライラミネ−ト用接着剤が用いられる。ドライラミネ−ト用接着剤を用いる場合には、加熱殺菌耐性が得られるような接着剤の養生に1日以上の長い時間を要している。また、積層フィルムの製造時においては、巻き芯に近いフィルムが養生時の熱などによって巻き締まってしまい、巻締まりによる負荷によってフィルム特性の低下が生じることもある。一方、上述した接着層12の形成においては、ウレタン2液硬化タイプのようなドライラミネ−ト用接着剤を用いていないため、接着剤の養生時間が不要である分、積層フィルムの製造に要する時間を短くすることが可能である。また、巻き芯の近傍に巻かれたフィルムが熱によって巻き締まることが抑えられて、巻き締まりに起因した積層フィルムの特性低下が抑えられる。
また、ドライラミネ−ト用接着剤で使用される酢酸エチルやトルエンなどの有機溶媒が積層フィルムに残留するため、VOCの排出量を低減させて安全性や環境適合性を高める観点で、ドライラミネ−ト用接着剤を用いる構成に改善の余地が残されている。この点、上述した接着層12を押出法によって形成する場合であれば、接着層12の形成に有機溶媒を用いないため、安全性や環境適合性に優れた積層フィルムを提供することが可能でもある。
(第2層構成)
図2を参照して、積層フィルムが備える第2層構成を説明する。第2層構成は、第1層構成からプライマー層11bを割愛した構成であり、ガスバリアフィルム層の層構成が主に相違する。以下では、第1層構成との相違点を主に説明し、第1層構成と同様の構成に関しては、同じ符号を付してその説明を割愛する。
図2が示すように、第2層構成もまた、ガスバリアフィルム層21、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13を備える。積層フィルム20は、熱可塑性樹脂層13の一部と他部とが対向するように重ねられて、あるいは、熱可塑性樹脂層13の一部と他の積層フィルム20の熱可塑性樹脂層13の一部とが対向するように重ねられて、熱可塑性樹脂層13同士の熱溶着によって包装袋を形成する。
包装袋は、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理される。殺菌処理後の包装袋のなかの非熱溶着部は、上記条件1、および、条件2を満たす。また、殺菌処理後の包装袋のなかの熱溶着部は、熱溶着部の始点から終点までの剥離強さを連続的に測定した際の最大値が28N/15mm以上であり、かつ、上記条件3、または、上記条件4を満たす。
ガスバリアフィルム層21は、基材フィルム層21a、酸化金属層11c、および、バリア層11dを備える。酸化金属層11cは、基材フィルム層21aとバリア層11dとの間に位置する。酸化金属層11cは、基材フィルム層21aとバリア層11dとに接触している。酸化金属層11c、および、バリア層11dは、基材フィルム層21aと接着層12との間に位置する。
基材フィルム層21aは、プラズマ処理された表面21afを備える。酸化金属層11cは、基材フィルム層21aの表面21afと接触している。バリア層11dは、酸化金属層11cにおいて基材フィルム層21aに接する面とは反対側の面に接触している。
基材フィルム層21aは、プラズマ処理された表面21afを含むこと以外は、第1実施形態に記載の基材フィルム層11aと同様である。プラズマ処理は、例えば、反応性イオンエッチングであり、表面21afと対向するアノードを備えたホローアノードプラズマ処理装置を用いて行われる。プラズマ処理された表面21afは、化学的な吸着機能やアンカー機能などの各種の密着機能が高められて、表面21afと酸化金属層11cとの密着性を高める。
(第3層構成)
図3を参照して、積層フィルムが備える第3層構成を説明する。第3層構成は、第1層構成からプライマー層11bと酸化金属層11cとが割愛された構成であって、ガスバリアフィルム層の層構成が相違する。以下では、第1層構成との相違点を主に説明し、第1層構成と同様の構成に関しては、同じ符号を付してその説明を割愛する。
図3が示すように、第3層構成もまた、ガスバリアフィルム層31、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13を備える。積層フィルム30は、熱可塑性樹脂層13の一部と他部とが対向するように重ねられて、あるいは、熱可塑性樹脂層13の一部と他の積層フィルム30の熱可塑性樹脂層13の一部とが対向するように重ねられて、熱可塑性樹脂層13同士の熱溶着によって包装袋を形成する。
包装袋は、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理される。殺菌処理後の包装袋のなかの非熱溶着部は、上記条件1、および、条件2を満たす。また、殺菌処理後の包装袋のなかの熱溶着部は、熱溶着部の始点から終点までの剥離強さを連続的に測定した際の最大値が28N/15mm以上であり、かつ、上記条件3、または、上記条件4を満たす。
[ガスバリアフィルム層31]
ガスバリアフィルム層31は、基材フィルム層11aと、バリア層31dとを備える。バリア層31dは、基材フィルム層11aと接着層12との間に位置し、基材フィルム層11aと接着層12とに接触している。
バリア層31dを構成する材料は、水酸基を有した水溶性高分子を含む塗工膜の乾燥物である。水溶性高分子は、常温で水に完全に溶解、または、微分散可能な高分子である。
バリア層31dを構成する材料は、例えば、ポリカルボン酸系重合体を含む。ポリカルボン酸系重合体は、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体は、例えば、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種類以上のα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、α,β−モノエチレン性不飽カルボン酸と、他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である。また、ポリカルボン酸系重合体は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、および、ペクチンなどのように、分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類である。バリア層31dを構成するポリカルボン酸系重合体は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および、クロトン酸である。α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合が可能な他のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネ−ト類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、および、スチレンである。飽和カルボン酸ビニルエステル類は、例えば、エチレン、プロピレン、および、酢酸ビニルである。
ポリカルボン酸系重合体が、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である場合には、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合割合は、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
ポリカルボン酸系重合体が、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のみから形成される重合体である場合には、重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および、クロトン酸から構成される群から選択される少なくとも1種の重合性単量体の重合によって、カルボン酸系重合体を得ることができる。重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、および、マレイン酸から構成される群から選択される少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られた重合体であることが好ましい。また、重合体は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、ポリマレイン酸、または、これらの混合物であることがより好ましい。
ポリカルボン酸系重合体が酸性多糖類である場合には、モノマー成分がアルギン酸であることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000以上10,000,000以下であることが好ましく、5,000以上1,000,000以下であることがより好ましい。これにより、バリア層31dをコーティング加工によって形成する場合に、バリア層31dの加工性を高めることができる。
バリア層31dは、ガスバリア性を損なわない範囲で、ポリカルボン酸系重合体の他に、他の重合体を含んでもよい。バリア層31dは、例えば、ポリカルボン酸系重合体と、ポリアルコール類の混合物から形成されてもよい。
ポリアルコール類は、分子内に2個以上の水酸基を含む化合物であって、低分子化合物であってもよいし、アルコール系重合体であってもよい。ポリアルコール類は、例えば、ポリビニルアルコール、糖類、および、澱粉などであってよい。上述した低分子化合物は、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、および、ポリプロピレングリコールである。バリア層31dに含まれるポリアルコール類は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
ポリビニルアルコールのケン化度は、95%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、300以上1500以下であることが好ましい。ポリアルコール類は、ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコールポリ(メタ)アクリル酸共重合体であることが好ましい。ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコールポリ(メタ)アクリル酸共重合体は、ポリカルボン酸系重合体に対して相溶性を有する点で好ましい。
糖類は、単糖類、オリゴ糖類、および、多糖類であってよい。糖類は、糖アルコール、糖アルコールの置換体、および、糖アルコールの誘導体を含む。糖アルコールは、例えば、ソルビト−ル、マンニト−ル、ズルシト−ル、キシリト−ル、および、エリスリトールなどである。糖類は、水、アルコール、または、水とアルコールとの混合溶液に溶解する糖であることが好ましい。バリア層31dに含まれる糖類は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
澱粉類は、多糖類に含まれる。澱粉類は、例えば、生澱粉、すなわち未変性澱粉、または、各種の加工澱粉である。生澱粉は、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、および、サゴ澱粉である。加工澱粉は、例えば、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、および、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉である。澱粉類のなかで、馬鈴薯澱粉を酸で加水分解した水可溶性加工澱粉、または、澱粉の末端基であるアルデヒド基が水酸基に置換された糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。バリア層31dに含まれる澱粉類は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
ポリカルボン酸系重合体の質量(MC)と、ポリアルコール類(MA)の質量との比(MC:MA)は、99:1から20:80であることが好ましく、95:5から40:60であることがより好ましく、95:5から50:50であることがさらに好ましい。これにより、高湿度条件下においても、優れた酸素ガスに対するバリア性を有したバリア層31dを得ることが可能である。
バリア層31dを形成する1つの方法は、まず、ポリカルボン酸系重合体と溶媒とを含む第1塗工液、または、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール類、および、溶媒を含む第2塗工液を基材フィルム層11a上に塗工する。次いで、第1塗工液、または、第2塗工液の乾燥によって溶媒を蒸発させて、バリア層31dを形成する。
第1塗工液は、ポリカルボン酸系重合体を溶媒に溶解、または、分散することによって調製される。溶媒は、ポリカルボン酸系重合体を均一に溶解、または、分散できる液体であればよい。溶媒は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミドなどであってよい。溶媒は、非水系溶媒、または、非水系溶媒と水との混合物であることが好ましい。第1塗工液におけるポリカルボン酸系重合体の濃度は、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
第2塗工液は、例えば、第2塗工液を構成する溶媒以外の各成分を溶媒に溶解する方法、各成分を含む溶液を混合する方法、および、ポリアルコール類の溶液中においてカルボキシル基を含むモノマーを重合して必要に応じて重合後にアルカリを用いて溶液を中和する方法によって調製される。溶媒は、例えば、水、アルコール、および、水とアルコールとの混合物であってよい。第2塗工液における固形分濃度は、1質量%以上30質量%であることが好ましい。
第1塗工液、および、第2塗工液は、これらを用いて形成されたバリア層31dにおける酸素ガスのバリア性が損なわれない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、および、無機の層状化合物などを含んでもよい。なお、可塑剤は、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物を除く。無機の層上化合物は、例えば、モンモリロナイトである。
第1塗工液は、1価の金属、および、2価の金属の少なくとも一方を含む化合物を含んでもよい。これにより、バリア層31dにおける酸素ガスのバリア性を高めることができる。1価の金属、および、2価の金属は、例えば、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、および、銅である。1価の金属、および、2価の金属の少なくとも一方を含む化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、および、酸化カルシウムである。第1塗工液に対する1価の金属、および、2価の金属の少なくとも一方を含む化合物の添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、70モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。
酸素ガスバリア性の向上を目的として、基材フィルム層11aに第2塗工液を塗工し、塗工膜の乾燥後に熱処理を施してもよい。この際、熱処理条件を緩和することを目的として、第2塗工液の調製時に、水に可溶な、アルカリ金属化合物、あるいは、無機酸や有機酸のアルカリ金属塩を第2塗工液に添加してもよい。アルカリ金属化合物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。アルカリ金属化合物の添加量は、第2塗工液に含まれるポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、30モル%以下が好ましい。無機酸や有機酸のアルカリ金属塩は、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウムである。これらのアルカリ金属塩のなかでも、ホスフィン酸ナトリウム、ホスフィン酸カルシウムなどのホスフィン酸金属塩が好ましい。アルカリ金属塩の添加量は、第2塗工液の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上30質量部以下がより好ましい。
第1塗工液、および、第2塗工液を用いた塗工膜を形成する方法、および、塗工膜を乾燥する方法には、プライマー層11bの形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
バリア層31dを形成する他の方法は、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを含む塗工液を基材フィルム層11a上に塗工する。次いで、紫外線または電子線を塗工液に照射することによってモノマーを重合させて、バリア層31dを形成する。
バリア層31dを形成する他の方法は、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを基材フィルム層11aに蒸着し、かつ、蒸着したモノマーに電子線を照射することによってモノマーを重合させて、バリア層31dを形成する。
バリア層31dの厚さは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。バリア層31dは、接着層12と接触する表面に、亜鉛化合物を含むコーティング層を備えてもよい。
亜鉛化合物は、例えば、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩である。亜鉛化合物は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛が好ましい。亜鉛の毒性は低く、レトルト臭の原因となる硫化水素と亜鉛とが反応して生成する白色の硫化亜鉛は、包装袋の外観にほとんど影響を与えない。
亜鉛化合物は、コーティング適性、および、溶媒への分散性の観点から、平均粒子径が5μm以下の粒子状であることが好ましく、平均粒子径は、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。亜鉛化合物の含有量は、1mの積層フィルム30に亜鉛として32.7mg以上含まれることが好ましい。1mの積層フィルム30に亜鉛として32.7mg以上含まれる構成であれば、硫化水素が亜鉛化合物に吸収される効果が官能的に認知されやすい。亜鉛化合物の含有量は、1mの積層フィルム30に亜鉛として65.4mg以上含まれることがより好ましく、131mg以上含まれることがさらに好ましく、196mg以上含まれることが特に好ましい。亜鉛化合物の含有量が増大するほどレトルト臭の吸収効果も大きくなる。なお、亜鉛化合物の含有量が増大するほど、内容物の風味が損なわれるおそれもある。例えば、ニンニク調味製品などのように、含硫化合物に由来する風味が重要な食品が内容物である場合には、食品の風味が損なわれやすい。そのため、亜鉛化合物の含有量は、包装袋の内容物によって適宜変更することが好ましい。
コーティング層の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上2μm以下がより好ましく、0.1μm以上1μm以下がさらに好ましい。コーティング層の厚さが0.1μm以上であれば、コーティング層の厚さが安定しやすい。コーティング層の厚さが10μm以下であれば、コーティング層が凝集破壊しにくくなる。
コーティング層を形成する方法は、例えば、溶媒、または、分散媒と亜鉛化合物とを含むコーティング剤を塗工する。溶媒、または、分散媒は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエ−テル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルである。塗工適性や製造性の観点から、溶媒、または、分散媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、水が好ましい。溶媒、または、分散媒は、1種類であってもよく、2種以上を混合してもよい。
なお、コーティング剤は、樹脂、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤などの添加物を適宜含んでもよい。樹脂は、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノ−ル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの塗料用樹脂である。亜鉛化合物の分散性の観点から、コーティング剤は、分散剤を含むことが好ましい。
コーティング適性の観点から、亜鉛化合物の含有量は、コーティング剤に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。コーティング剤を用いたコーティング層を形成する方法は、プライマー層11bの形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
(第4層構成)
図4を参照して、積層フィルムが備える第4層構成を説明する。第4層構成は、第1層構成からプライマー層11bと酸化金属層11cとを割愛した構成であって、ガスバリアフィルム層の層構成が相違する。以下では、第1層構成との相違点を主に説明し、第1層構成と同様の構成に関しては、同じ符号を付してその説明を割愛する。
図4が示すように、第4層構成もまた、ガスバリアフィルム層41、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13を備える。積層フィルム40は、熱可塑性樹脂層13の一部と他部とが対向するように重ねられて、あるいは、熱可塑性樹脂層13の一部と他の積層フィルム40の熱可塑性樹脂層13の一部とが対向するように重ねられて、熱可塑性樹脂層13同士の熱溶着によって包装袋を形成する。
包装袋は、80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理される。殺菌処理後の包装袋のなかの非熱溶着部は、上記条件1、および、条件2を満たす。また、殺菌処理後の包装袋のなかの熱溶着部は、熱溶着部の始点から終点までの剥離強さを連続的に測定した際の最大値が28N/15mm以上であり、かつ、上記条件3、または、上記条件4を満たす。
ガスバリアフィルム層41は、基材フィルム層11aと、バリア層41dとを備える。バリア層41dは、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含有する。金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、基材フィルム層11aとバリア層41dとの密着性を高めて、基材フィルム層11aとバリア層41dとの間でデラミネーションが発生することを抑える。
バリア層41dは、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含有する単層、あるいは、加水分解生成物を含有する多層である。
金属酸化物を構成する金属原子は、例えば、Mg、Ca、Zn、Al、Si、Ti、Zrであり、2価以上の原子価を有する。金属酸化物は、加水分解可能な官能基を有した金属化合物を加水分解縮合させることによって生成される。金属化合物を加水分解縮合させる方法は、ゾルゲル法などの液相合成法である。金属酸化物は、微小な粒子であり、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状を有する。バリア性と耐熱水性とを高める観点から、金属酸化物の粒子は、繊維状、または、針状であることが好ましい。金属酸化物の粒子の平均粒子径は、例えば、1nm以上0.5μm以下である。バリア層41dのバリア性と透明性とが優れる観点から、金属酸化物の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
リン化合物は、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、および、これらの誘導体である。リン化合物は、金属酸化物と反応する反応点を1以上有する。反応点は、リン原子と酸素原子との結合、あるいは、リン原子とハロゲン原子との結合である。
金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、リン化合物に由来するリン原子を介して金属酸化物の粒子同士が結合された構造を有する。金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、例えば、金属酸化物とリン化合物とを含む塗工膜を熱処理することによって得られる。
なお、バリア層41dは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体を含んでもよい。また、バリア層41dは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(ポリ)アクリル酸/メタクリル酸、および、これらの塩を含んでもよい。また、バリア層41dは、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のけん化物を含んでもよい。
高いバリア性と高い耐熱水性とが得られる観点から、バリア層41dにおいて800cm−1以上1400cm−1以下の範囲内における赤外線吸収スペクトルでの最大吸収波数は、1080cm−1以上1130cm−1以下の範囲内であることが好ましい。最大吸収波数が1080cm−1以上1130cm−1以下の範囲内であることから、金属原子はAlであることが好ましい。
ガスバリアフィルム層41の寸法変化が印刷時やラミネ−ト時に変わることを抑えられる観点から、バリア層41dの厚さの上限値は、4.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましく、0.9μmが特に好ましい。また、バリア層11dの厚さが薄いほど、ガスバリアフィルム層41の柔軟性が高まり、ガスバリアフィルム層41の力学的特性を、基材フィルム層11a自体の力学的特性に近づけることができる。なお、バリア層41dの厚さの下限値は、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。
(包装袋)
図5から図7を参照して、包装袋の一実施形態を説明する。なお、包装袋は、第1層構成から第3層構成までのいずれか1つを備えた積層フィルムを用いて製造される。
包装袋は、例えば、以下に例示する3つの製袋によって製造される。
図5が示すように、包装袋を製造する1つの方法例は、例えば、矩形状を有した2枚の積層フィルム50Aを用いる。2枚の積層フィルム50Aの四方に位置する熱可塑性樹脂層13同士が互いに接するように、2枚の積層フィルムは重ねられる。そして、四辺に位置する熱可塑性樹脂層13同士が熱溶着されて、熱溶着部50Ahを備えた1つの包装袋が製造される。
図6が示すように、包装袋を製造する他の方法例は、例えば、矩形状を有した1枚の積層フィルム50Bを用いる。1枚の積層フィルム50Bにおける熱可塑性樹脂層13同士が接するように、1枚の積層フィルム50Bが二つ折りされる。そして、折り曲げられた積層フィルム50Bにおける三方の熱可塑性樹脂層13同士が熱溶着されて、熱溶着部50Bhを備えた1つの包装袋が製造される。
図7が示すように、包装袋を製造する他の方法例は、例えば、矩形状を有した1枚の積層フィルムを用いる。1枚の積層フィルム50Cにおける熱可塑性樹脂層13が内側となるように、積層フィルム50Cが筒状に曲げられる。そして、筒面の接続部位に位置する熱可塑性樹脂層13同士が熱溶着されて背貼り部が形成されると共に、筒面の上下開口部に位置する熱可塑性樹脂層13同士が熱溶着されて、これによって、熱溶着部50Chを備えたピロー形状を有する包装袋が製造される。
[実施例1]
サンドイッチラミネーション法を用いて、第1層構成を備えたガスバリアフィルム層11のバリア層11dと熱可塑性樹脂層13とを積層した。この際、熱可塑性樹脂層13の表面にコロナ放電処理を施して、コロナ放電処理が施された表面と接着層12とを対向させた。また、溶融押出法を用いて、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層13との間に、変性PPとランダムポリプロピレンとを厚さが20μmとなるように共押し出した。そして、共押し出しされた樹脂の融点以上の温度で積層体を加熱する熱ラミネ−ト法を行い、バリア層11dと接着層12との密着性、および、接着層12と熱可塑性樹脂層13との密着性を高めた。これによって、ガスバリアフィルム層11、接着層12、および、熱可塑性樹脂層13からなる実施例1の積層フィルムを得た。
実施例1の2枚の積層フィルムを用い、各積層フィルムの熱可塑性樹脂層同士が接するように重ね合わせて、三方に位置する熱可塑性樹脂層13同士を熱溶着し、横方向の長さが100mmであって、縦方向の長さが150mmである包装袋を製造した。そして、包装袋の上方の開口部から、酢、油、食塩、および、香辛料を含む100gの調味料を充填し、包装袋の上部に位置する熱可塑性樹脂層13同士を熱溶着して密封し、これによって、実施例1の包装袋を得た。
変性PPとして、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(三菱ケミカル株式会社製)を用いた。変性PPの融点ピークは、104℃、140℃、155℃であり、変性PPの密度は、0.88g/cmであり、変性PPのMFRは、10.3g/10minである。なお、変性PPの試料を用いて、1H−NMR測定、および、マレイン酸部位をメチルエステル化した後の1H−NMR測定を行い、1Hピーク面積の差からグラフト率を質量%単位で算出した結果、グラフト率は、0.1質量%以上1質量%以下であった。
ランダムポリプロピレンとして、エチレン−プロピレン−1−ブテンターポリマー(商品名「FL02C」:日本ポリプロ株式会社製)を用いた。ランダムポリプロピレンの融点は、138℃であり、ブロックポリプロピレンの密度は、0.89g/cmであり、ブロックポリプロピレンのMFRは、18g/10minである。
熱可塑性樹脂層13として、厚さが70μmのレトルト殺菌用の無延伸ポリプロピレンフィルム(商品名「ZK500」:東レフィルム加工株式会社製)を用いた。
熱溶着時の熱溶着温度は180℃であり、熱溶着時間は1秒、熱溶着圧力は0.2MPaである。
[実施例2]
ガスバリアフィルム層を、第2層構成を備えたガスバリアフィルム層21に変更し、また、熱可塑性樹脂層13を、厚さが50μのレトルト殺菌用の無延伸ポリプロピレンフィルム(商品名「ZK500」:東レフィルム加工株式会社製)に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層フィルム、および、包装袋を得た。
[実施例3]
ガスバリアフィルム層を、第3層構成を備えたガスバリアフィルム層21に変更した。また、熱可塑性樹脂層13を、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンとエラストマーとが50:20:30の重量比率でブレンドされた熱可塑性樹脂からなる厚さが50μmの積層体に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層フィルム、および、包装袋を得た。
[比較例1]
熱可塑性樹脂層13を、ホモポリプロピレンからなる厚さが50μmの積層体に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層フィルム、および、包装袋を得た。
[比較例2]
熱可塑性樹脂層13を、ランダムポリプロピレンからなる厚さが50μmの積層体に変更し、それ以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層フィルム、および、包装袋を得た。
[評価]
実施例1から実施例3の包装袋、および、比較例1,2の包装袋を用い、以下の条件で殺菌処理を行った。
殺菌温度 : 121℃
殺菌時間 : 30分
次いで、殺菌処理後の包装袋のなかから非熱溶着部の試験片を切り出し、JIS K 7211-2:2006に準拠した非計装化衝撃試験、および、JIS K 7211-1:2006に準拠した計装化衝撃試験を、以下の条件で行った。なお、非計測化衝撃試験では、試験片に目視で確認される亀裂が発生することを破壊とした。実施例1から実施例4、および、比較例1,2の最大衝撃力時エネルギー、および、破壊の様式を、表1に示す。
ストライカーの形状 : 直径20mmの半球状
ストライカーの質量 : 500g
定落下高さ : 130cm
図8が示すように、殺菌処理後の包装袋のなかから試験片50Pを切り出し、引張試験機を用い、以下の条件で、JIS Z 0238:1998に準拠したヒートシール強さ(剥離強さ)を測定した。
試験片50Pは、1つの包装袋が含む2辺のサイドシール部、および、トップシール部のなかから、各シール部に10個ずつの測定部位から採取した。各試験片50Pは、熱溶着部50PAで折り返されるような帯状であって、図9が示すように、熱溶着部50PAの延在方向に対して直角となる方向に試験片50Pが展開された状態で、幅が15mm、かつ、展開長さが100mm以上を有するものとした。熱溶着部50PAの延在方向における両端部のなかで、熱溶着部50PAと熱溶着部50PA以外との境界となる端部が、始点50P1であり、始点50P1以外の端部が、終点50P2である。
剥離強さの測定では、試験片50Pの両端部をクランプで挟み、試験片50Pにおける両端部の間隔を広げるように両端部を定速で引っ張りながら、両端部の移動した距離である引張距離と、試験片50Pに加えられている荷重である剥離強さとの関係を測定した。そして、1つの包装袋から採取された30個の試験片50Pでの剥離強さのなかでの最大値Sm、漸減モードの試験片50Pにおいて最大値が得られて以降の平均剥離強さ、および、安定モードの各試験片50Pにおいて安定域での平均値を測定した。
ここで、引張距離と剥離強さとの関係は、破断モード、漸減モード、安定モードの3種類に分けられる。破断モードは、剥離強さが十分に高いと評価される試験片50Pにて観測される。漸減モードは、剥離強さが破断モードよりも低いと評価される試験片50Pにて観測される。安定モードは、剥離強さが破断モードと漸減モードとの間に存すると評価される試験片50Pにて観測される。
破断モードでは、試験片50Pの両端部を定速で引っ張ると、剥離強さが十分に高いため、剥離強さが最大値に到達する前に、積層フィルムが荷重に耐えられなくなり、それによって破断するという現象が観測される。積層フィルムにおいて破断する位置は、概ね、始点50P1である。破断モードでは、剥離強さを定めることができず、十分な剥離強さを有する試験片50Pであると言える。
一方、図10が示すように、漸減モードでは、試験片50Pの両端部を定速で引っ張ると、剥離強さが最大値に到達して始点から剥離が生じた後に、終点50P2まで剥離強さが漸減するという現象が観測される。漸減モードでは、最大値が得られて以降の剥離強さの平均値を算出し、剥離強さの最大値Smに対する、剥離強さの最大値が検出されて以降の剥離強さの平均値(Su)の比(Su/Sm)を、剥離強さ比として算出した。
また、図11が示すように、安定モードでは、試験片50Pの両端部を定速で引っ張ると、剥離強さが最大値Smに到達して始点から剥離が生じた後に、剥離強さが最大値Smに到達した後に、剥離強さが一度安定してから漸減するという現象が観測される。安定モードでは、剥離強さが安定している引張距離である安定域での剥離強さを算出し、剥離強さの最大値Smに対する、安定域での剥離強さの平均値(Ss)の比(Ss/Sm)を、剥離強さ比として算出した。なお、剥離強さの安定域は、剥離強さの最大値が検知されて以降、剥離強さが±5N/mm以内に保たれる領域である。
実施例1から実施例3、および、比較例1,2について、剥離強さの最大値Sm、および、剥離強さ比を、表1に示す。
引張速度 : 300mm/min
剥離角度 : 180度
また、殺菌処理後の包装袋における外観を目視で確認し、デラミネーションの有無を確認した。表1の外観評価において、「〇」印は、外観の評価においてデラミネーションが生じていない水準を示す。
また、内容物を詰めた包装袋を5℃に冷やした状態で、100cmの高さから、包装袋の角がコンクリートの上面に当たらないように包装袋を水平な姿勢で自由落下させて、コンクリートの上面に落下した包装袋における破壊の状態を目視で確認した。表1の落袋耐性評価において、「〇」印は、非熱溶着部の裂けや熱溶着部の剥がれなどの破壊によって内容物の漏れが認められなかった水準を示し、「×」印は、非熱溶着部の裂けや熱溶着部の剥がれなどの破壊によって内容物の漏れが認められた水準を示す。
Figure 2021079597
表1が示すように、実施例1から実施例3のいずれにおいても、最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上であり、かつ、破壊様式が貫通であることが認められた。すなわち、殺菌処理後の包装袋における非熱溶着部において、上記条件1、および、条件2が満たされることが認められた。一方で、比較例1、および、比較例2のいずれにおいても、最大衝撃力時エネルギーは0.45J未満であり、破壊様式が裂けであることが認められた。
また、実施例1から実施例3のいずれにおいても、剥離強さの最大値は28N/15mm以上であることが認められた。また、実施例1から実施例3のいずれにおいても、剥離強さ比は、0.3以上であることが認められた。すなわち、殺菌処理後の包装袋における溶着部において、剥離強さの最大値が認められた後においても最大値の30%に相当する剥離強さが得られており、上記条件3、または、条件4が満たされることが認められた。一方で、比較例1、および、比較例2のいずれにおいても、剥離強さの最大値は28N/15mm以上ではあるが、剥離強さ比は0.3未満であり、剥離強さの最大値が認められて以降は、ほぼ剥離強さを得られないことが認められた。
そして、実施例1から実施例3、および、比較例1,2のいずれにおいても、外観の評価においてデラミネーションが生じていないことが認められた。一方、落袋耐性評価においては、実施例1から実施例3のいずれにおいても、内容物の漏れが認められなかったが、比較例1,2では、非熱溶着部の裂けや熱溶着部の剥がれなどの破壊によって内容物の漏れが認められた。
以上、上記実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)積層フィルムの非熱溶着部が条件1と条件2とを満たすため、殺菌処理後の落袋耐性を向上することが可能となる。特に、揮発性物質を含む内容物を収容する包装用途であっても、デラミネーションの発生が十分に抑えられる。
(2)包装袋の熱溶着部が条件3、あるいは、条件4を満たすため、殺菌処理後の落袋耐性を向上することが可能となる。特に、揮発性物質を含む内容物を収容する包装用途であっても、デラミネーションの発生が十分に抑えられる。
(3)変性PPのグラフト率が0.1質量%以上である場合には、十分な接着強度を得ることができ、殺菌処理後にデラミネーションが生じることが抑えられる。
(4)変性PPのグラフト率が1質量%以下である場合には、変性PPの樹脂特性を安定させることが可能ともなる。
(5)ウレタン2液硬化タイプのようなドライラミネ−ト用接着剤を用いていないため、接着剤の養生時間が不要である分、積層フィルムの製造に要する時間を短くすることが可能である。
(6)巻き芯の近傍に巻かれたフィルムが熱によって巻き締まることが抑えられて、巻き締まりに起因した積層フィルムの特性低下が生じることも抑えられる。
(7)接着層12を押出法によって形成する場合であれば、接着層12の形成に有機溶媒を用いないため、安全性や環境適合性に優れた積層フィルムを提供することが可能でもある。
10,20,30,40,50A,50B,50C…積層フィルム、11,21,31,41…ガスバリアフィルム層、11a,21a…基材フィルム層、11b…プライマー層11b…酸化金属層、11d,31d,41d…バリア層、12…接着層、13…熱可塑性樹脂層、21af…表面、50Ah,50Bh,50Ch…熱溶着部。

Claims (9)

  1. ガスバリアフィルム層と、
    熱可塑性樹脂層と、
    前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する接着層と、を備え、
    前記熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋用の積層フィルムであって、
    前記接着層の主成分は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンであり、
    前記熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、および、前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含み、前記非相溶系成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂層の全量に対して1質量%以上40質量%であり、
    80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理された前記包装袋の非熱溶着部において、下記条件1、および、条件2を満たす、
    (条件1)JIS K 7211-2:2006に準拠した最大衝撃力時エネルギーが0.45J以上である、
    (条件2)JIS K 7211-1:2006に準拠した破壊の様式が貫通である、
    積層フィルム。
  2. 前記無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンにおける無水マレイン酸のグラフト率が、0.1質量%以上1質量%以下である
    請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記ガスバリアフィルム層は、
    基材フィルム層と、
    前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層と、
    前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
    前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
    前記バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物、および、水酸基を有した水溶性高分子の塗工膜の乾燥物からなる群から選択されるいずれか1つを含む
    請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記ガスバリアフィルム層は、
    基材フィルム層と、
    前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層と、
    前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
    前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
    前記プライマー層は、トリアルコキシシランとトリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含む
    請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  5. 前記ガスバリアフィルム層は、
    プラズマ処理された表面を含む基材フィルム層と、
    バリア層と、
    前記基材フィルム層の表面と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備える、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  6. 前記ガスバリアフィルム層は、
    基材フィルム層と、
    前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層であって、ポリカルボン酸系重合体を含む前記バリア層と、を備える
    請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  7. 前記ガスバリアフィルム層は、
    基材フィルム層と、
    前記基材フィルム層と前記接着層との間に位置するバリア層であって、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含む前記バリア層と、を備える
    請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
  8. 積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、
    前記積層フィルムが、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層フィルムである
    包装袋。
  9. ガスバリアフィルム層と、
    熱可塑性樹脂層と、
    前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する接着層と、を備え、
    前記熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、
    前記接着層の主成分は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンであり、
    前記熱可塑性樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂、および、前記ポリプロピレン系樹脂に非相溶である非相溶系成分を含み、前記非相溶系成分の含有量が、前記熱可塑性樹脂層の全量を基準として1質量%以上40質量%であり、
    80℃以上130℃以下の温度で殺菌処理された前記包装袋の熱溶着部において、
    前記包装袋の縁である前記熱溶着部の剥離強さの最大値が28N/15mm以上であり、かつ、下記条件3、または、下記条件4を満たす、
    (条件3)前記剥離強さは、前記最大値が得られて以降に安定する安定域を有し、前記安定域における剥離強さの前記最大値に対する比が0.3以上である、
    (条件4)前記剥離強さは、前記安定域を有さず、前記最大値が得られて以降の平均剥離強さの前記最大値に対する比が0.3以上である、
    包装袋。
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