以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
本発明の積層体は、少なくとも特定のガスバリア層を有することを特徴とする。以下、本発明の積層体を構成するガスバリア層について詳細に説明する。
(ガスバリア層(I))
本発明の積層体を構成するガスバリア層(以下、ガスバリア層(I)と記すことがある)は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体を含む組成物からなり、前記少なくとも1つの官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されていること、換言すれば、上記少なくとも1つの官能基の少なくとも一部は、2価以上の金属イオンと塩を構成していることを特徴とする。
(カルボン酸含有重合体)
ガスバリア層(I)を構成する組成物は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(以下、「カルボン酸含有重合体」と言う場合がある)を含む。該組成物における、カルボン酸含有重合体の中和物の含有率は、特に限定はなく、たとえば25重量%〜95重量%の範囲とすることができる。ここでいうカルボン酸含有重合体の中和物とは、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含む重合体に対して、上記少なくとも1つの官能基の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる重合体である。
カルボン酸含有重合体は、重合体1分子中に、2個以上のカルボキシル基または1個以上のカルボン酸無水物基を有する。具体的には、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位などの、カルボキシル基を1個以上有する構造単位を重合体1分子中に2個以上含有する重合体を用いることができる。また、無水マレイン酸単位や無水フタル酸単位などのカルボン酸無水物の構造を有する構造単位を含有する重合体を用いることもできる。カルボキシル基を1個以上有する構造単位および/またはカルボン酸無水物の構造を有する構造単位(以下、両者をまとめてカルボン酸含有単位(C)と略記する場合がある)は、1種類でもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
また、カルボン酸含有重合体の全構造単位に占めるカルボン酸含有単位(C)の含有率を10モル%以上とすることによって、高湿度下でのガスバリア性が良好なガスバリア性積層体が得られる。この含有率は、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。なお、カルボン酸含有重合体が、カルボキシル基を1個以上含有する構造単位と、カルボン酸無水物の構造を有する構造単位の両方を含む場合、両者の合計が上記の範囲であればよい。
カルボン酸含有重合体が含有していてもよい、カルボン酸含有単位(C)以外の他の構造単位は、特に限定されないが、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位、メタクリル酸ブチル単位等の(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構造単位;ギ酸ビニル単位、酢酸ビニル単位などのビニルエステル類から誘導される構造単位;スチレン単位、p−スチレンスルホン酸単位;エチレン単位、プロピレン単位、イソブチレン単位などのオレフィン類から誘導される構造単位などから選ばれる1種類以上の構造単位を挙げることができる。カルボン酸含有重合体が、2種以上の構造単位を含有する場合、該カルボン酸含有重合体は、交互共重合体の形態、ランダム共重合体の形態、ブロック共重合体の形態、さらにはテーパー型の共重合体の形態のいずれであってもよい。
カルボン酸含有重合体の好ましい例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体を挙げることができる。カルボン酸含有重合体は、1種類であってもよいし、2種類以上の重合体の混合物であってもよい。たとえば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種の重合体を用いてもよい。また、上記した他の構造単位を含有する場合の具体例としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物などが挙げられる。
カルボン酸含有重合体の分子量は特に制限されないが、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が優れる点、および落下衝撃強さなどの力学的物性が優れる点から、数平均分子量が5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましい。カルボン酸含有重合体の分子量の上限は特に制限がないが、一般的には1,500,000以下である。
また、カルボン酸含有重合体の分子量分布も特に制限されるものではないが、ガスバリア性積層体のヘイズなどの表面外観、および後述する溶液(S)の貯蔵安定性などが良好となる観点から、カルボン酸含有重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比で表される分子量分布は1〜6の範囲であることが好ましく、1〜5の範囲であることがより好ましく、1〜4の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の積層体を構成するガスバリア層(I)を構成する重合体は、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基(以下、官能基(F)という場合がある)の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和して得られる。換言すれば、この重合体は、2価以上の金属イオンで中和されたカルボキシル基を含む。
ガスバリア層(I)を構成する重合体は、官能基(F)に含まれる−COO−基のたとえば10モル%以上(たとえば15モル%以上)が、2価以上の金属イオンで中和されている。なお、カルボン酸無水物基は、−COO−基を2つ含んでいるとみなす。すなわち、aモルのカルボキシル基とbモルのカルボン酸無水物基とが存在する場合、それに含まれる−COO−基は、全体で(a+2b)モルである。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合は、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは40モル%以上であり、特に好ましくは50モル%以上(たとえば60モル%以上)である。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合の上限は、特に制限はないが、たとえば、95モル%以下とすることができる。ガスバリア層(I)を構成するカルボン酸含有重合体中のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基が2価以上の金属イオンで中和されることによって、該ガスバリア層は、乾燥条件下および高湿条件下の双方において、良好なガスバリア性を示す。
官能基(F)の中和度(イオン化度)は、ガスバリア層(I)の赤外吸収スペクトルをATR(全反射測定)法で測定するか、または、積層体からガスバリア層(I)をかきとり、その赤外吸収スペクトルをKBr法で測定することによって求めることができる。中和前(イオン化前)のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察され、中和(イオン化)された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるため、赤外吸収スペクトルにおいて両者を分離して評価することができる。具体的には、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を求め、予め作成した検量線を用いてガスバリア性積層体におけるガスバリア層(I)を構成する重合体のイオン化度を算出することができる。なお、検量線は、中和度が異なる複数の標準サンプルについて赤外吸収スペクトルを測定することによって作成できる。
官能基(F)を中和する金属イオンは2価以上であることが重要である。官能基(F)が未中和または後述する1価のイオンのみによって中和されている場合には、良好なガスバリア性が得られない。ただし、2価以上の金属イオンに加えて少量の1価のイオン(陽イオン)で官能基(F)が中和されている場合には、ガスバリア性積層体のヘイズが低減して表面の外観が良好となる。このように、本発明は、カルボン酸含有重合体の官能基(F)が2価以上の金属イオンと1価のイオンとの双方で中和される場合を含む。2価以上の金属イオンとしては、たとえば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、2価の鉄イオン、3価の鉄イオン、亜鉛イオン、2価の銅イオン、鉛イオン、2価の水銀イオン、バリウムイオン、ニッケルイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオンなどを挙げることができる。たとえば、2価以上の金属イオンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1つのイオンを用いてもよい。
本発明においては、カルボン酸含有重合体の官能基(F)(カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物)に含まれる−COO−基の0.1〜10モル%が、1価のイオンで中和されていることが好ましい。ただし、1価のイオンによる中和度が高い場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が低下する。1価イオンによる官能基(F)の中和度は、0.5〜5モル%の範囲であることがより好ましく、0.7〜3モル%の範囲であることがさらに好ましい。1価のイオンとしては、たとえば、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられ、アンモニウムイオンが好ましい。
ガスバリア層(I)を構成する組成物は、上記カルボン酸含有重合体およびその中和物に加え、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基(原子団)が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物を含むことが好ましい。化合物(L)の加水分解縮合物を含むことで極めて良好なガスバリア性が達成される。
(加水分解縮合物)
化合物(L)には、以下で説明する化合物(A)および/または化合物(B)の少なくとも1種を適用できる。以下、化合物(A)および化合物(B)について説明する。
化合物(A)は、次に示す化学式(I)で表される少なくとも1種の化合物である。
M1(OR1)nX1 kZ1 m-n-k・・・(I)
化学式(I)中、M1は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表す。M1は、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSiである。また、化学式(I)中、R1はメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。また、化学式(I)中、X1はハロゲン原子を表す。X1が表すハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが、塩素原子が好ましい。また、化学式(I)中、Z1は、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基を表す。ここで、カルボキシル基との反応性を有する官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、オキサゾリン基またはカルボジイミド基などが挙げられるが、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、またはハロゲン原子が好ましい。このような官能基で置換されるアルキル基としては、前出のものを例示することができる。また、化学式(I)中、mは金属元素M1の原子価と等しい。化学式(I)中、nは0〜(m−1)の整数を表す。また、化学式(I)中、kは0〜(m−1)の整数を表し、1≦n+k≦(m−1)である。
化合物(A)の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。また、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、イソシアネートメチルジメチルメトキシシラン、2−イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン、2−イソシアネートエチルジメチルメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、ウレイドメチルメチルジメトキシシラン、ウレイドメチルジメチルメトキシシラン、2−ウレイドエチルメチルジメトキシシラン、2−ウレイドエチルジメチルメトキシシラン、3−ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルジメチルメトキシシラン、ビス(クロロメチル)メチルクロロシランが挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。さらに、クロロメチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−クロロプロピルトリメトキシシラン、4−クロロブチルトリメトキシシラン、5−クロロペンチルトリメトキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン、(ジクロロメチル)ジメトキシシラン、(ジクロロエチル)ジメトキシシラン、(ジクロロプロピル)ジメトキシシラン、(トリクロロメチル)メトキシシラン、(トリクロロエチル)メトキシシラン、(トリクロロプロピル)メトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、(ジメルカプトメチル)ジメトキシシラン、(ジメルカプトエチル)ジメトキシシラン、(ジメルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(トリメルカプトメチル)メトキシシラン、(トリメルカプトエチル)メトキシシラン、(トリメルカプトプロピル)メトキシシラン、フルオロメチルトリメトキシシラン、2−フルオロエチルトリメトキシシラン、3−フルオロプロピルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、2−ブロモエチルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、ヨードメチルトリメトキシシラン、2−ヨードエチルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、(クロロメチル)フェニルエチルトリメトキシシラン、1−クロロエチルトリメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、(3−クロロシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(4−クロロシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(メルカプトメチル)フェニルトリメトキシシラン、(メルカプトメチル)フェニルエチルトリメトキシシラン、1−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−(メルカプトメチル)アリルトリメトキシシラン、(3−メルカプトシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(4−メルカプトシクロヘキシル)トリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4−ヒドロキシブチルアミド、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、6−イソシアネートヘキシルトリメトキシシラン、(ジイソシアネートメチル)ジメトキシシラン、(ジイソシアネートエチル)ジメトキシシラン、(ジイソシアネートプロピル)ジメトキシシラン、(トリイソシアネートメチル)メトキシシラン、(トリイソシアネートエチル)メトキシシラン、(トリイソシアネートプロピル)メトキシシラン、ウレイドメチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、2−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、4−ウレイドブチルトリメトキシシラン、5−ウレイドペンチルトリメトキシシラン、6−ウレイドヘキシルトリメトキシシラン、(ジウレイドメチル)ジメトキシシラン、(ジウレイドエチル)ジメトキシシラン、(ジウレイドプロピル)ジメトキシシラン、(トリウレイドメチル)メトキシシラン、(トリウレイドエチル)メトキシシラン、(トリウレイドプロピル)メトキシシラン、が挙げられ、これらの化合物のメトキシ基の部分を、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基といったアルコキシ基や塩素基とした化合物を用いてもよい。
好ましい化合物(A)としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
また、化合物(B)は次の化学式(II)で表される少なくとも1種の化合物である。
M2(OR2)qR3 p-q-rX2 r・・・(II)
化学式(II)中、M2は、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaおよびNdから選択される原子を表すが、好ましくはSi、Al、TiまたはZrであり、特に好ましくはSi、AlまたはTiである。また、化学式(II)中、R2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基を表すが、好ましくは、メチル基またはエチル基である。また、化学式(II)中、X2はハロゲン原子を表す。X2が表すハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが塩素原子が好ましい。また、化学式(II)中、R3は、アルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。R3が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基などが挙げられる。また、R3が表すアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基などが挙げられる。また、R3が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基などが挙げられる。また、R3が表すアルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。さらに、化学式(II)中、pは金属元素M2の原子価と等しい。化学式(II)中、qは0〜pの整数を表す。また、化学式(II)中、rは0〜pの整数を表し、1≦q+r≦pである。
化学式(I)および(II)において、M1とM2とは同じであってもよいし異なっていてもよい。また、R1とR2とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
化合物(B)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のシリコンアルコキシド;ビニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等のハロゲン化シラン;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン等のアルコキシチタン化合物;テトラクロロチタン等のハロゲン化チタン;トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、メチルジイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、ジエトキシアルミニウムクロリド等のアルコキシアルミニウム化合物;テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、メチルトリイソプロポキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウム化合物等が挙げられる。
ガスバリア層(I)を構成する組成物は、化合物(L)の加水分解縮合物を含むことが好ましい。化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)のハロゲンおよびアルコキシ基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属元素が酸素を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物となる。
ガスバリア層(I)に含まれる、化合物(L)の加水分解縮合物は、以下で定義される縮合度Pが65〜99%であることが好ましく、70〜99%であることがより好ましく、75〜99%であることがさらに好ましい。化合物(L)の加水分解縮合物における縮合度P(%)は、以下のようにして算出されるものである。
化合物(L)の1分子中のアルコキシ基とハロゲン原子の合計数をaとし、該化合物(L)の加水分解縮合物中、縮合したアルコキシ基とハロゲン原子の合計がi(個)である化合物(L)の割合が、全化合物(L)中のyi(%)である時、iが1〜aの整数(1とaを含む)のそれぞれの値について{(i/a)×yi}を算出し、それらを加算する。すなわち、縮合度P(%)は、以下の数式で定義される。
上記したyiの値は、ガスバリア層(I)中の化合物(L)の加水分解縮合物については固体のNMR(DD/MAS法)等によって測定することができる。
該加水分解縮合物は、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解、縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどを原料として、たとえば公知のゾルゲル法で用いられる手法で製造できる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、たとえば2〜10個程度の分子が加水分解、縮合して得られる縮合物を、原料として用いることができる。具体的には、たとえば、テトラメトキシシランを加水分解、縮合させて、2〜10量体の線状縮合物としたものなどを原料として用いることができる。
ガスバリア層(I)を構成する組成物における化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、加水分解、縮合に際して使用する、水の量、触媒の種類や濃度、加水分解縮合を行う温度などによって制御できる。
化合物(L)の加水分解縮合物の製造方法に特に限定はないが、ゾルゲル法の代表的な一例では、上記した原料に水と酸とアルコールとを加えることによって、加水分解および縮合を行う。
以下では、化合物(L)を金属アルコキシド(アルコキシ基が結合した金属を含む化合物)として説明する場合があるが、金属アルコキシドに代えて、ハロゲンが結合した金属を含む化合物を用いてもよい。
化合物(L)は、上述したように、化合物(A)および/または化合物(B)の少なくとも1種とすることができる。化合物(L)が、化合物(A)のみを含むか、または化合物(A)と化合物(B)の両方を含む場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が良好となるため、好ましい。そして、化合物(L)が、実質的に、化合物(A)と化合物(B)の両方からなり、さらに化合物(A)/化合物(B)のモル比が0.5/99.5〜40/60の範囲にあることがより好ましい。化合物(A)と化合物(B)とをこの比率で併用する場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性、引張り強伸度などの力学的物性、外観、取り扱い性などの性能が優れる。化合物(A)/化合物(B)のモル比は、3/97〜40/60の範囲であることがより好ましく、5/95〜30/70の範囲であることがさらに好ましい。
(無機成分など)
ガスバリア層(I)を構成する組成物中に無機成分を含有するときには、無機成分の含有率は、5〜50重量%の範囲であることが、ガスバリア性が良好となる観点から好ましい。この含有率は、より好ましくは10〜45重量%の範囲であり、さらに好ましくは15〜40重量%の範囲である。組成物中の無機成分の含有率は、該組成物を調製する際に使用する原料の重量から算出することができる。すなわち、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどが完全に加水分解・縮合して金属酸化物になったと仮定し、その金属酸化物の重量を算出する。そして算出された金属酸化物の重量を組成物中の無機成分の重量とみなして、無機成分の含有率を算出する。なお、後述するような金属塩、金属錯体、金属酸化物などの無機添加物を加える場合は、加えた無機添加物の重量を、そのまま無機成分の重量に合算する。金属酸化物の重量の算出をより具体的に説明すると、化学式(I)で示される化合物(A)が完全に加水分解、縮合したときには、組成式が、M1O(n+k)/2Z1 m-n-kで表される化合物となる。この化合物のうちM1O(n+k)/2の部分が金属酸化物である。Z1については、無機成分に含めず有機成分であるとみなす。また、化学式(II)で示される化合物(B)が完全に加水分解、縮合したときには、組成式が、M2O(q+r)/2R3 p-q-rで表される化合物になる。このうち、M2O(q+r)/2の部分が金属酸化物である。
また、ガスバリア層(I)を構成する組成物は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、ポリアルコール類またはそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有していてもよい。また、ガスバリア層(I)を構成する組成物は、上記金属アルコキシドを湿式で加水分解、縮合して製造した金属酸化物の微粉末;金属アルコキシドを乾式で加水分解、縮合又は燃焼して調製した金属酸化物の微粉末;水ガラスから調製したシリカ微粉末などを含有していてもよい。
本発明において、ガスバリア層(I)を構成する組成物に、ポリアルコール類を含有させることによって、ガスバリア層の表面外観が良好となる。より具体的には、ポリアルコール類を含有させることによって、後述するガスバリア性積層体の製造時に、ガスバリア層にクラックが発生しにくくなり、表面外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。
本発明に用いるそのようなポリアルコール類とは、分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する化合物であって、低分子量の化合物から高分子量の化合物までを包含する。好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、でんぷんなどの多糖類から誘導される多糖類誘導体などの高分子量化合物である。
上記したポリアルコール類の使用量は、カルボン酸含有重合体/ポリアルコール類の重量比が10/90〜99.5/0.5の範囲であることが好ましい。該重量比は、より好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜99/1、最も好ましくは70/30〜98/2の範囲である。
本発明においては、予め上記のガスバリア層(I)を基材フィルムの少なくとも一方の面に積層した積層体(以下、ガスバリア性積層体(IL)と記すことがある)を製造し、これを後述の酸素吸収剤を含む層やその他の樹脂層などと積層することによって本発明の積層体とすることが実用上有利な場合がある。この場合、基材フィルムの少なくとも一方の面に、カルボキシル基含有重合体の中和物と、好ましくは上記した化合物(L)の加水分解縮合物とを含む組成物からなるガスバリア層が形成される。このガスバリア層は、基材の一方の面のみに形成されていてもよいし、両方の面に形成されてもよい。基材の両方の面にガスバリア層を形成した積層体は、他のフィルムを貼り合わせるなどの後加工がしやすいという利点がある。
ガスバリア層(I)の厚さは特に制限されないが、0.1μm〜100μmの範囲にあることが好ましい。0.1μmよりも薄い場合には、ガスバリア性積層体のガスバリア性が不十分となる場合がある。また、100μmよりも厚い場合には、ガスバリア性積層体の加工時、運搬時、使用時にガスバリア層にクラックが入り易くなる場合がある。ガスバリア層の厚さは、0.1μm〜50μmの範囲であることがより好ましく、0.1μm〜20μmの範囲であることがさらに好ましい。
上記ガスバリア性積層体(IL)は、基材とガスバリア層(I)との間に配置された接着層(T)をさらに含んでもよい。この構成によれば、基材とガスバリア層との接着性を高めることができる。接着性樹脂からなる接着層(T)は、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布することで形成できる。
また、上記ガスバリア性積層体(IL)は基材とガスバリア層(I)との間に、無機物からなる層(以下、「無機層」という場合がある)を含んでもよい。無機層は、無機酸化物などの無機物で形成できる。無機層は、蒸着法などの気相成膜法で形成できる。
無機層を構成する無機物は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよく、好ましくは透明性を有するものである。たとえば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、またはそれらの混合物といった無機酸化物で無機層を形成できる。これらの中でも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムは、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性が優れる観点から好ましく用いることができる。
無機層の好ましい厚さは、無機層を構成する無機酸化物の種類によって異なるが、通常、2nm〜500nmの範囲である。この範囲で、ガスバリア性積層体のガスバリア性や機械的物性が良好となる厚さを選択すればよい。無機層の厚さが2nm未満である場合、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性の発現に再現性がなく、十分なガスバリア性を発現しない場合がある。無機層の厚さが500nmを超える場合は、ガスバリア性積層体を引っ張ったり屈曲させたりした場合にガスバリア性が低下し易くなる。無機層の厚さは、好ましくは5〜200nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100nmの範囲である。
無機層は、基材上に無機酸化物を堆積させることによって形成できる。形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)などを挙げることができる。これらの中でも、真空蒸着法は、生産性の観点から好ましく用いることができる。真空蒸着を行う際の加熱方法としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式のいずれかが好ましい。また、無機層と基材との密着性および無機層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着してもよい。また、無機層の透明性を上げるために、蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んで反応を生じさせる反応蒸着法を採用してもよい。
ガスバリア層(I)を形成させる基材としては、透明な熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムを用いることができる。中でも熱可塑性樹脂フィルムは、食品包装材料に用いられるガスバリア性積層体の基材として特に有用である。なお、基材は複数の材料からなる多層構成のものであってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を成形加工したフィルムを挙げることができる。食品包装材料に用いられる積層体の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、またはナイロン66からなるフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、またはナイロン66であることがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムは、無延伸のフィルム、延伸されたフィルムのいずれでもよいが、成形加工性の観点から延伸されたフィルムが好ましい。
(ガスバリア性積層体(IL)の製造方法)
以下、ガスバリア性積層体(IL)を製造するための方法について説明する。この方法によれば、ガスバリア性積層体(IL)を容易に製造できる。本発明の製造方法に用いられる材料、および積層体の構成は、上述したものと同様であるので、重複する部分については説明を省略する場合がある。
本発明の製造方法では、まず、ハロゲン原子およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(カルボン酸含有重合体)とを含む組成物からなる層を基材上に形成する(第1の工程)。第1の工程は、たとえば、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの金属元素含有化合物とカルボン酸含有重合体とを含む溶液(S)を調製する工程と、溶液(S)を基材に塗工して乾燥させて上記した成分を含有する層を形成する工程とによって、実施することができる。溶液(S)の乾燥は、溶液(S)に含まれる溶媒を除去することによって実施することができる。
なお、溶液(S)に含まれるカルボン酸含有重合体においては、上述したように、官能基(F)に含まれる−COO−基の一部(たとえば0.1〜10モル%)が1価のイオンによって中和されていてもよい。
次に、基材上に形成した層を、2価以上の金属イオンを含む溶液に接触させる(第2の工程。以下、この工程をイオン化工程という場合がある)。第2の工程によって、層中のカルボン酸含有重合体に含まれる官能基(F)(カルボン酸および/またはカルボン酸無水物)の少なくとも一部が2価の金属イオンで中和される。このとき、2価の金属イオンで中和される割合(イオン化度)は、金属イオンを含む溶液の温度、金属イオン濃度、および金属イオンを含む溶液への浸漬時間といった条件を変更することによって調整できる。
第2の工程は、たとえば、形成した層に2価以上の金属イオンを含む溶液を吹きつけたり、基材と基材上の層とをともに2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬したりすることによって行うことができる。
なお、以下では、イオン化工程前の積層体を積層体(A)といい、イオン化工程後の積層体を積層体(B)という場合がある。
以下、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および、化合物(L)が完全に加水分解し、その一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの金属元素含有化合物を、「化合物(L)系成分」という場合がある。溶液(S)は、化合物(L)系成分、カルボン酸含有重合体、および溶媒を用いて調製することができる。たとえば、(1)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶媒に、化合物(L)系成分を添加して混合する方法を採用できる。また、(2)カルボン酸含有重合体を溶解させた溶媒に、化合物(L)系成分である化合物(A)を加え、その後、化合物(L)系成分を添加して混合する方法も採用できる。また、(3)溶媒存在下または無溶媒下で化合物(L)系成分からオリゴマー(加水分解縮合物の1種)を調製し、このオリゴマーに、カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液を混合する方法も採用できる。なお、化合物(L)系成分やそのオリゴマーは、単独で溶媒に加えてもよいし、それらを溶解させた溶液の形態で溶媒に加えてもよい。
溶液(S)の調製方法として上記の調製方法(3)を用いることによって、ガスバリア性が特に高いガスバリア性積層体が得られる。以下、調製方法(3)について、より具体的に説明する。
調製方法(3)は、カルボン酸含有重合体を溶媒に溶解して溶液を調製する工程(St1)と、化合物(L)系成分を特定の条件下で加水分解、縮合させてオリゴマーを調製する工程(St2)と、工程(St1)で得られる溶液と工程(St2)で得られるオリゴマーとを混合する工程(St3)とを含む。
工程(St1)において、カルボン酸含有重合体を溶解させるために使用される溶媒は、カルボン酸含有重合体の種類に応じて選択すればよい。たとえば、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などの水溶性の重合体の場合には、水が好適である。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体やスチレン−無水マレイン酸共重合体などの重合体の場合には、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を含有する水が好適である。また、工程(St1)においては、カルボン酸含有重合体の溶解の妨げにならない限り、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどを併用することも可能である。
工程(St2)においては、化合物(L)系成分、酸触媒、水および必要に応じて有機溶媒を含む反応系中において、化合物(L)系成分を加水分解、縮合させてオリゴマーを得ることが好ましい。具体的には、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用できる。化合物(L)系成分として、化合物(L)を用いると、ガスバリア性がより高いガスバリア積層体が得られる。
工程(St2)で用いられる酸触媒としては、公知の酸触媒を用いることができ、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等を用いることができる。その中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸、酪酸が特に好ましい。酸触媒の好ましい使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、化合物(L)系成分の金属原子1モルに対して、1×10-5〜10モルの範囲であることが好ましく、1×10-4〜5モルの範囲であることがより好ましく、5×10-4〜1モルの範囲であることがさらに好ましい。酸触媒の使用量がこの範囲にある場合、ガスバリア性が高いガスバリア性積層体が得られる。
また、工程(St2)における水の好ましい使用量は、化合物(L)系成分の種類によって異なるが、化合物(L)系成分のアルコキシ基またはハロゲン原子(両者が混在する場合はその合計)1モルに対して、0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.1〜4モルの範囲であることがより好ましく、0.2〜3モルの範囲であることがさらに好ましい。水の使用量がこの範囲にある場合、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が特に優れる。なお、工程(St2)において、塩酸のように水を含有する成分を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定することが好ましい。
さらに、工程(St2)の反応系においては、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。使用される有機溶媒は化合物(L)系成分が溶解する溶媒であれば特に限定されない。たとえば、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類が好適に用いられ、化合物(L)系成分が含有するアルコキシ基と同種の分子構造(アルコキシ成分)を有するアルコールがより好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシランに対してはメタノールが好ましく、テトラエトキシシランに対してはエタノールが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、化合物(L)系成分の濃度が1〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%となる量であることが好ましい。
工程(St2)において、反応系中において化合物(L)系成分の加水分解、縮合を行う際に、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常2〜100℃の範囲であり、好ましくは4〜60℃の範囲であり、さらに好ましくは6〜50℃の範囲である。反応時間は触媒の量、種類等の反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜60時間の範囲であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲である。また、反応系の雰囲気は、必ずしも限定されるものではなく、空気雰囲気、二酸化炭素雰囲気、窒素気流下、アルゴン雰囲気といった雰囲気を採用することができる。
工程(St2)において、化合物(L)系成分は、全量を一度に反応系に添加してもよいし、少量ずつ何回かに分けて反応系に添加してもよい。いずれの場合でも、化合物(L)系成分の使用量の合計が、上記の好適な範囲を満たしていることが好ましい。工程(St2)によって調製されるオリゴマーは、前記した縮合度Pで表示すると25〜60%程度の縮合度を有していることが好ましい。
工程(St3)においては、化合物(L)系成分から誘導されるオリゴマーと、カルボン酸含有重合体を含む溶液とを混合することによって溶液(S)を調製する。溶液(S)の保存安定性、および得られるガスバリア性積層体のガスバリア性の観点から、溶液(S)のpHは1.0〜7.0の範囲であることが好ましく、1.0〜6.0の範囲であることがより好ましく、1.5〜4.0の範囲であることがさらに好ましい。
溶液(S)のpHは、公知の方法で調整でき、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウム等の酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を添加することによって調整できる。このとき、溶液中に1価の陽イオンをもたらす塩基性化合物を用いると、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の一部を1価のイオンで中和することができるという効果が得られる。
また、溶液(S)は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、上述したポリアルコール類、及びそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含んでいてもよい。また、溶液(S)は、上記金属アルコキシドを湿式で加水分解、重縮合して製造した金属酸化物の微粉末;金属アルコキシドを乾式で加水分解、重縮合又は燃焼して調製した金属酸化物の微粉末;水ガラスから調製したシリカ微粉末などを含んでいてもよい。
なお、溶液(S)に添加するポリアルコールの量は、カルボン酸含有重合体/ポリアルコール類の重量比が10/90〜99.5/0.5の範囲であることが好ましい。該重量比の範囲はより好ましくは30/70〜99/1、さらに好ましくは50/50〜99/1、最も好ましくは70/30〜98/2である。
工程(St3)で調製された溶液(S)は、基材の少なくとも一方の面に塗工される。溶液(S)を塗工する前に、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布してもよい。溶液(S)を基材に塗工する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましい方法としては、たとえば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
溶液(S)を基材上に塗工した後、溶液(S)に含まれる溶媒を除去することによって、イオン化工程前の積層体(積層体(A))が得られる。溶媒の除去の方法は特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの方法を単独で、または組み合わせて適用できる。乾燥温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、80℃〜200℃の範囲が好ましく、100〜180℃の範囲がより好ましく、110〜180℃の範囲がさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
上記の工程によって得られる積層体(A)を2価以上の金属イオンを含む溶液(以下、溶液(MI)という場合がある)に接触させること(イオン化工程)によって、ガスバリア性積層体(IL)が得られる。なお、イオン化工程は、本発明の効果を損なわない限り、どのような段階で行ってもよい。たとえば、イオン化工程は、包装材料の形態に加工する前あるいは加工した後に行ってもよいし、さらに包装材料中に内容物を充填して密封した後に行ってもよい。
溶液(MI)は、溶解によって2価以上の金属イオンを放出する化合物(多価金属化合物)を、溶媒に溶解させることによって調製できる。溶液(MI)を調製する際に使用する溶媒としては、水を使用することが望ましいが、水と混和しうる有機溶媒と水との混合物であってもよい。そのような溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン等の有機溶媒を挙げることができる。
多価金属化合物としては、本発明の積層体を構成するガスバリア層(I)に関して例示した金属イオン(すなわち2価以上の金属イオン)を放出する化合物を用いることができる。たとえば、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシム、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸銅(II)、酢酸銅(III)、酢酸鉛、酢酸水銀(II)、塩化バリウム、硫酸バリウム、硫酸ニッケル、硫酸鉛、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン(KAl(SO4)2)、硫酸チタン(IV)などを用いることができる。多価金属化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい多価金属化合物としては、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛が挙げられる。
溶液(MI)における多価金属化合物の濃度は、特に制限されないが、好ましくは5×10-4重量%〜50重量%の範囲であり、より好ましくは1×10-2重量%〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは1重量%〜20重量%の範囲である。
溶液(MI)に積層体(A)を接触させる際において、溶液(MI)の温度は、特に制限されないが、温度が高いほどカルボキシル基含有重合体のイオン化速度が速い。好ましい温度は、たとえば30〜140℃の範囲であり、好ましくは40℃〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは50℃〜100℃の範囲である。
溶液(MI)に積層体(A)を接触させた後、その積層体に残留した溶媒を除去することが望ましい。溶媒の除去の方法は、特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法といった乾燥法を単独で、または2種以上を組み合わせて適用できる。溶媒の除去を行う温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、好ましくは40〜200℃の範囲であり、より好ましくは40〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは40〜100℃の範囲である。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
また、ガスバリア性積層体の表面の外観を損なわないためには、溶媒の除去を行う前または後に、積層体の表面に付着した過剰の多価金属化合物を除去することが好ましい。多価金属化合物を除去する方法としては、多価金属化合物が溶解していく溶剤を用いた洗浄が好ましい。多価金属化合物が溶解していく溶剤としては、溶液(MI)に用いることができる溶媒を用いることができ、溶液(MI)の溶媒と同一のものを用いることが好ましい。
ガスバリア性積層体(IL)の製造方法では、第1の工程ののちであって第2の工程の前および/または後に、第1の工程で形成された層を120〜240℃の温度で熱処理する工程をさらに含んでもよい。すなわち、積層体(A)または(B)に対して熱処理を施してもよい。熱処理は、塗工された溶液(S)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、どの段階で行ってもよいが、イオン化工程を行う前の積層体(すなわち積層体(A))を熱処理することによって、表面の外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。熱処理の温度は、好ましくは120℃〜240℃の範囲であり、より好ましくは130〜230℃の範囲であり、さらに好ましくは150℃〜210℃の範囲である。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などで実施することができる。
また、ガスバリア性積層体(IL)の製造方法では、積層体(A)または(B)に、紫外線を照射してもよい。紫外線照射は、塗工された溶液(S)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、いつ行ってもよい。その方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。照射する紫外線の波長は、170〜250nmの範囲であることが好ましく、170〜190nmの範囲及び/又は230〜250nmの範囲であることがより好ましい。また、紫外線照射に代えて、電子線やγ線などの放射線の照射を行ってもよい。
熱処理と紫外線照射は、どちらか一方のみを行ってもよいし、両者を併用してもよい。熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって、積層体のガスバリア性能がより高度に発現する場合がある。
基材とガスバリア層(I)との間に接着層(T)を配置するために、溶液(S)の塗工前に基材の表面に処理(アンカーコーティング剤による処理、または接着剤の塗布)を施す場合、第1の工程(溶液(S)の塗工)の後であって上記熱処理および第2の工程(イオン化工程)の前に、溶液(S)が塗工された基材を、比較的低温下に長時間放置する熟成処理を行うことが好ましい。熟成処理の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは30〜120℃である。熟成処理の時間は0.5〜10日の範囲であることが好ましく、1〜7日の範囲であることがより好ましく、1〜5日の範囲であることがさらに好ましい。このような熟成処理を行うことにより、基材とガスバリア層との間の接着力がより強固となる。この熟成処理ののちに、さらに上記熱処理(120℃〜240℃の熱処理)を行うことが好ましい。
本発明の積層体は、上記ガスバリア層(I)に加え、酸素吸収剤を含む層(以下、酸素吸収剤含有層(II)と記すことがある)を有する。以下、酸素吸収剤含有層について詳細に説明する。
(酸素吸収剤)
本発明の積層体において、酸素吸収剤含有層(II)に含まれる酸素吸収剤としては、積層体を包装材などとして使用する条件において酸素を吸収する能力のあるものを適宜選択して使用することができる。このような酸素吸収剤としては前述の通り、例えば遷移金属による熱可塑性樹脂の酸化によって酸素を吸収するもの(特許文献1参照)、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の酸化分解あるいは酸素付加反応によって酸素を吸収するもの(特許文献2参照)、遷移金属錯体への酸素配位結合によって酸素を吸収するもの(特許文献3参照)、被還元性化合物の還元/酸化反応を用いて酸素を吸収するもの(特許文献4参照)、還元鉄を熱可塑性樹脂に配合したもの(特許文献5参照)等、種々のものが従来知られており、これら従来公知のものを使用することができる。
これらの中で、還元鉄など金属が酸化される際に酸素を吸収する酸素吸収剤は広く使用されているが、本発明において酸素吸収剤として使用する際には、他の樹脂などに分散させて酸素吸収剤含有層とする必要がある。還元鉄などの酸素吸収剤は、熱可塑性樹脂と溶融混合する際に樹脂を劣化させたり、混錬装置を磨耗させたりする場合がある。
上記のような、層を形成するという観点から、本発明に使用する酸素吸収剤としては、酸素吸収能力を有する、換言すれば酸化されうる有機化合物を主たる成分とするものが好ましい。ここでいう酸化されうる有機化合物とは、常温付近で、単独で、あるいは触媒などの酸化促進剤の存在下に分子状酸素で酸化されうる有機化合物を指す。以下、このような有機化合物を被酸化有機化合物と称することがある。酸素吸収剤の主たる成分が有機化合物であれば、そのまま、あるいは他の熱可塑性樹脂と混合して層を形成することが比較的容易である。
(被酸化有機化合物)
このような被酸化有機化合物としては、分子内にエチレン性炭素−炭素二重結合を有するもの、アルデヒドを有するもの、アミンやアミド結合を有するもの、エーテル結合を有するものなどが挙げられ、低分子量化合物、高分子量化合物のいずれも使用することができる。なお、どのような有機物を被酸化有機物として使用できるかは、後述する酸化促進剤の有無や酸化促進剤の種類にもよる。
被酸化有機化合物が高分子量化合物、特に熱可塑性樹脂であれば、酸素吸収剤含有層(II)は酸素吸収剤のみで構成されていてもよいし、酸素吸収剤以外に、層の強度などの物理的性質、ガスバリア性などを改善するための他の熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(C)と記すことがある)をさらに含んでいてもよい。酸素吸収剤のみで層を構成すると、酸素吸収剤が酸素を吸収するのに伴い、力学的物性や色相などが悪化する場合がある。酸化可能な有機化合物が低分子量化合物である場合は、酸素吸収剤を熱可塑性樹脂(C)中に溶解あるいは分散させた組成物で酸素吸収剤含有層(II)を構成することができる。
被酸化有機化合物としては、酸素吸収速度を大きくしやすいなどの観点からは、エチレン性炭素−炭素二重結合を有するものが好ましく用いられる。なお、ここでいうエチレン性炭素−炭素二重結合には共役二重結合を包含するが、芳香環に含まれる多重結合は含有しない。この場合、被酸化有機化合物に含まれるエチレン性炭素−炭素二重結合の量は0.001eq/g(当量/g)以上であることが好ましく、0.005eq/g以上がより好ましく、0.01eq/g以上がさらに好ましい。炭素−炭素二重結合の含有量が0.001eq/g未満である場合、得られる樹脂組成物の酸素掃去機能が不十分となるおそれがある。
エチレン性炭素−炭素二重結合を有する有機化合物のうち、他の熱可塑性樹脂と混練するなどの際の取り扱いが容易、使用時のブリードアウトの恐れが小さいなどの面からは、エチレン性炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
このようなエチレン性炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ジエンなどのポリエン単量体を単独重合あるいは共重合したものが上げられる。ポリエン単量体の例としては、これに限定されるものではないが、ブタジエン、イソプレン、2−エチルブタジエン、2−ブチルブタジエン、クロロプレン等の共役ジエンが挙げられる。
上記ポリエンの単独重合体の中では、工業的入手が容易、炭素−炭素二重結合の密度が高いなどの理由で、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンが好適に使用される。
また、上記ポリエン単量体の共重合体としては、2種以上のポリエン単量体の、あるいはポリエン単量体と他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体が例示できる。ここで、上記ポリエンと共重合させる他の単量体としては、炭素数が2乃至20のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど、各種のビニル化合物;例えばスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルなど;α,β不飽和ニトリル類例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;α,β不飽和カルボン酸およびその誘導体、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
さらにこのようなエチレン性炭素−炭素二重結合を有する上記以外の熱可塑性樹脂としては、ポリオクテニレン、環状オレフィンのメタセシス重合体などを例示することができる。これらは、1,4−ポリブタジエン、1,4−ポリイソプレンなどと同様に炭素―炭素二重結合が実質的に主鎖のみに存在するため、酸化されても低分子物質を発生しにくく、臭気防止の点で好ましい。
被酸化有機化合物として使用されるエチレン性炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の分子量は、好適には1000〜500000であり、より好適には10000〜250000であり、さらに好適には40000〜200000の範囲である。分子量が1000未満の場合や500000を超える場合は、得られる樹脂組成物の成形加工性、ハンドリング性、更には成形品とした場合の強度や伸度などの機械的性質が低下する場合がある。また、酸素吸収剤以外の熱可塑性樹脂(C)と混合して使用する場合において分散性が低下し、その結果酸素掃去機能が低下する場合がある。
これらのエチレン性炭素−炭素二重結合を有する樹脂が、後述のガスバリア性樹脂のような極性樹脂、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体と混合して酸素吸収剤含有層(II)に使用される場合には、相容性あるいは分散性の観点から、エチレン性炭素−炭素二重結合を有する樹脂に極性基が導入されていることが好ましい。特に好ましい極性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基等のカルボキシル基類、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基等のホウ素含有極性基、水酸基が挙げられる。
エチレン性炭素−炭素二重結合を有する樹脂へ上記官能基を導入する方法としてはポリエン系単量体の単独あるいは共重合体をベースポリマーとして、このベースポリマーに、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基などの官能基を有する単量体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させる方法、前述したポリエン単量体と上記の官能基を有する単量体と、必要に応じてその他の単量体とをランダム共重合させる方法等が挙げられる。
これらの官能基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体を用いるのが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
本発明に特に好適な酸変性ポリエン系重合体は、不飽和カルボン酸乃至その誘導体を0.01乃至10重量%含有していることが好ましい。不飽和カルボン酸乃至その誘導体の含有量が上記範囲にあると、酸変性ポリエン系重合体のガスバリア性樹脂への分散が良好に成ると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
一方、酸素吸収剤を、後述するガスバリア性樹脂、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体などと共に酸素吸収剤含有層を構成する場合、極性基を有するガスバリア性樹脂に対する分散性が良好であるなどの点から、被酸化有機化合物としてはエチレン性炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸やその塩が好適に使用できる。
このようなカルボン酸としては、ガスバリア性樹脂への分散性を良好にする面では分子量はあまり大きくない方がよく、分子量は3000以下、好ましくは500以下である。一方あまり分子量が小さいとブリードアウトなどが起こる懸念があるため、100以上が好ましい。このようなカルボン酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、パリナリン酸、ダイマー酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、魚油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸(主にエレオステアリン酸)、糖油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、綿実油脂肪酸、菜種油脂肪酸、およびトール油脂肪酸が例示できる。また、これらのカルボン酸を塩として使用する場合に塩を形成する金属イオンとしては特に制限はないが、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオンなどが例示できる。
(酸化促進剤)
酸素吸収剤には、上記被酸化有機化合物と共に適切な酸化促進剤が含まれていることが、実用的な酸素吸収能力を得るためには好適である。酸化促進剤とは、被酸化有機化合物の酸素酸化を促進するためのものであり、遷移金属触媒、光触媒、ラジカル発生剤などを挙げることができる。
〈遷移金属触媒〉
上記酸化促進剤の中では、微量の添加で酸化速度の向上効果があるなどの理由で遷移金属触媒が好適に使用される。遷移金属触媒としては遷移金属塩や遷移金属錯体が好適に使用される。
遷移金属塩を構成する遷移金属としては、たとえば、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、およびルテニウムが挙げられる。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、およびコバルトが好ましい。遷移金属塩を構成するアニオンとしては、たとえば、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、たとえば、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、およびナフテン酸が挙げられる。遷移金属塩は酸素吸収促進剤として使用することを目的として添加されるため、それを構成する有機酸は炭素−炭素二重結合を含むものであってもよいし、炭素−炭素二重結合を含まないものであってもよい。代表的な遷移金属塩としては、たとえば、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、およびステアリン酸コバルトが挙げられる。なお、遷移金属塩として、イオノマー(ionomer)を用いてもよい。
上記の遷移金属触媒は、酸素吸収剤含有層(II)を構成する組成物全量に対し金属元素換算で1〜50000ppmの割合で含有されるのがよい。より好適には、5〜10000ppm、更に好適には10〜5000ppmの範囲で含有される。遷移金属触媒の含有量が1ppmに満たない場合は、その添加の効果が不十分となる場合がある。一方、遷移金属触媒の含有量が50000ppmを超えると、樹脂組成物の熱安定性が低下し、分解ガスの発生やゲル・ブツの発生が著しくなる場合がある。
(ラジカル発生剤)
酸化促進剤として利用できるラジカル発生剤としては、たとえば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N、N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミドが特に好ましい。
(光触媒)
光触媒粒子は、光の照射によって、カルボン酸塩(A)の酸化反応の触媒として機能する粒子である。光触媒粒子としては、たとえば、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウムの粒子が挙げられる。これらは、通常、粉末の形態で用いられる。これらの中でも、光触媒機能が高く、食品添加物としても認められており安全かつ安価であることから、二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンはアナターゼ型であることが好ましく、二酸化チタン粉末の30重量%以上(より好ましくは50重量%以上)がアナターゼ型二酸化チタンであることが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンを用いることによって、高い光触媒作用が得られる。
本発明においては、上記のような酸化可能な有機化合物と酸化促進剤とを含む組成物を酸素吸収剤として使用することができる。
(熱可塑性樹脂(C))
本発明における酸素吸収剤含有層(II)には、酸素吸収剤以外の熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂(C))を含んでいてもよい。前述の通り、熱可塑性樹脂(C)を含む場合酸素吸収に伴う酸素吸収剤含有層(II)の力学的物性の低下を抑制できるため、通常は熱可塑性樹脂(C)を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂(C)としては、特に制限なく、溶融成形が可能で、使用条件下に著しい酸化を受けないものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレブタレートやこれらの共重合体などのポリエステル;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂などが挙げられる。本発明の積層体によって、酸素を積極的に吸収させたい場合などは汎用の比較的酸素透過性の大きい樹脂を使用したほうがよい場合もある。
本発明の酸素吸収剤含有層(II)が熱可塑性樹脂(C)を含有する場合、前記酸素吸収剤と前記熱可塑性樹脂(C)の合計重量を100重量%としたときに、前記熱可塑性樹脂(C)が70〜99重量%、前記酸素吸収剤が30〜1重量%の割合で含有されることが好ましい。熱可塑性樹脂(C)の含有割合が70重量%未満である場合、酸素の吸収に伴う酸素吸収剤含有層の物性低下などが問題になる場合がある。また、熱可塑性樹脂(C)が後述のガスバリア性樹脂の場合、酸素吸収剤含有層(II)の、酸素ガス、炭酸ガス等に対するガスバリア性が低下するおそれがある。一方、含有割合が99重量%を超える場合、酸素吸収剤の含有割合が少なくなるため、酸素掃去機能が低下するおそれがある。熱可塑性樹脂(C)の含有割合は、より好適には80〜98重量%であり、更に好適には85〜97重量%である。同様に、酸素吸収剤の含有割合は、より好適には20〜2重量%であり、更に好適には15〜3重量%である。
一方、熱可塑性樹脂(C)がガスバリア性樹脂(D)であれば、上記ガスバリア層(I)との相乗効果で飛躍的に長期間のガスバリア性が確保できる。さらに、上記熱可塑性樹脂(C)がガスバリア性樹脂であれば、先に詳述した本発明の積層体を構成するガスバリア層に使用条件下で微細な欠陥が生じたりした場合でも高度なガスバリア性が確保できるため好ましい。
このようなガスバリア性樹脂(D)としては、特に制限はないが、特に、酸素透過速度が500ml・20μm/(m2・day・atm)(20℃、65%RH)以下のガスバリア性樹脂(D)を含有することが好ましい。これは、20℃、相対湿度65%の環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m2、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、500ml以下であることを意味する。酸素透過速度が500ml・20μm/(m2・day・atm)を超える樹脂を使用すると、得られる樹脂組成物のガスバリア性が不十分となるおそれがある。ガスバリア性樹脂(D)の酸素透過速度は、より好適には100ml・20μm/(m2・day・atm)以下であり、更に好適には20ml・20μm/(m2・day・atm)以下であり、最も好適には5ml・20μm/(m2・day・atm)以下である。このようなガスバリア性樹脂(D)と酸素吸収剤とを配合することで、ガスバリア効果に加えて酸素捕捉効果が発揮され、結果として極めて高度なガスバリア性を有する樹脂組成物を得ることができる。
上記のようなガスバリア性樹脂(D)の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が代表的な樹脂として例示されるが、これらの樹脂に限定されない。
上記ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、又はビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的な化合物として挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には96%以上である。ケン化度が90モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下する。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと記すことがある)である場合、熱安定性が不充分となり、ゲル・ブツが発生し、成形物に含有され易くなる。
ポリビニルアルコール系樹脂がケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂の混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
上記のようなポリビニルアルコール系樹脂の中でも、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好な点から、EVOHが好適である。
EVOHのエチレン含有量は5〜60モル%であるのが好ましい。エチレン含有量が5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化することがある。EVOHのエチレン含有量は、好適には10モル%以上であり、より好適には15モル%以上、最適には20モル%以上である。一方、エチレン含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。エチレン含有量は、好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。
好適に用いられるEVOHは、上述のようにエチレン含有量が5〜60モル%であり、かつケン化度が90%以上である。本発明の積層体において、耐衝撃剥離性に優れたものを所望する場合は、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が90%以上99%未満のEVOHを使用することが好ましい。
EVOHがエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、混合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。この場合、エチレン含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン含有量の差が30モル%以下であり、かつケン化度の差が10%以下であることが好ましい。これらの条件から外れる場合には、酸素吸収剤含有層(II)の透明性が損なわれる場合がある。エチレン含有量の差はより好適には20モル%以下であり、更に好適には15モル%以下である。また、ケン化度の差はより好適には7%以下であり、更に好適には5%以下である。本発明の積層体において、耐衝撃剥離性及びガスバリア性がより高いレベルでバランスがとれたものを所望する場合は、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が90%以上99%未満のEVOH(c1)と、エチレン含有量が25モル%以上55モル%以下であり、ケン化度が99%以上のEVOH(c2)とを、配合重量比c1/c2が5/95〜95/5となるように混合して使用することが好ましい。
EVOHのエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
このEVOHには、上述のように、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン及びビニルアルコール以外の単量体を共重合成分として少量含有することもできる。このような単量体の例としては、次の化合物が挙げられる:プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分又は完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類等。
EVOHに、アルカリ金属塩を好適にはアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm添加しておくことも層間接着性や相容性の改善のために効果的である。アルカリ金属塩の添加量は、より好適にはアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、更に好適には30〜500ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられ、これらの中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが好適である。
EVOHに対し、リン酸化合物を好適にはリン酸根換算で20〜500ppm、より好適には30〜300ppm、最適には50〜200ppmの割合で添加することも好ましい。上記範囲でリン酸化合物を配合することにより、EVOHの熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。
EVOHに添加するリン化合物の種類は特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形であってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種がアルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン化合物を添加することが好ましい。
EVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、更に好適には1〜30g/10分である。
ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリアミド樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)等の脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)等の芳香族ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)がガスバリア性の観点から好適である。
ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル又は塩化ビニリデンの単独重合体のほか、酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテル等との共重合体が挙げられる。
ポリアクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリルの単独重合体のほか、アクリル酸エステル等との共重合体が挙げられる。
ガスバリア性樹脂(D)として、これらのうちの1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のEVOHがより好ましい。
上記のガスバリア性樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィン等)をあらかじめブレンドすることもできる。
上記のように、本発明の酸素吸収剤含有層(II)が比較的高分子量の酸素吸収剤及びガスバリア性樹脂(D)を含有する場合には、これらの樹脂の混和性を考慮することが好ましい。これらの樹脂の混和性により、透明性、清浄性、酸素掃去剤としての有効性、バリア性、機械的性質、製品のテキスチャー等が影響を受けることがある。両者の混和性を改善するために、樹脂組成物に相容化剤(E)を共存させることが好ましい。
上記相容化剤(E)は、酸素吸収剤とガスバリア性樹脂(D)との相容性を向上させ、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させる化合物である。相容化剤(E)の種類は特に限定されず、使用する酸素吸収剤及びガスバリア性樹脂(D)の組み合わせにより適宜選択される。
ガスバリア性樹脂(D)がポリビニルアルコール系樹脂のように極性の高い樹脂である場合には、相容化剤(E)としては、極性基を含有する炭化水素系重合体又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。例えば、極性基を含有する炭化水素系重合体の場合には、重合体のベースとなる炭化水素重合体部分により、該相容化剤(E)と酸素吸収剤との親和性が良好となる。極性基により、該相容化剤(E)とガスバリア性樹脂(D)との親和性が良好となる。その結果、得られる樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させることができる。
極性基を含有する炭化水素系重合体の炭化水素系重合体部分としては、以下のようなものが例示できる:ポリエチレン(超低密度、低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、エチルエステル等)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等)、その水添物等のスチレン系重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等。これらの中でも、スチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等)、その水添物等のスチレン系重合体が好ましい。
相容化剤(E)に含有される極性基としては特に限定されないが、酸素原子を含有する官能基が好ましい。具体的には、活性水素含有極性基(−SO3H、−SO2H、−SOH、−CONH2、−CONHR、−CONH−、−OH等)、窒素を含有し活性水素を含有しない極性基(−NCO、−OCN、−NO、−NO2、−CONR2、−CONR−等)、エポキシ基、カルボニル基含有極性基(−CHO、−COOH、−COOR、−COR、>C=O、−CSOR、−CSOH等)、リン含有極性基(−P(OR)2、−PO(OR)2、−PO(SR)2、−PS(OR)2、−PO(SR)(OR)、−PS(SR)(OR)等)、ホウ素含有極性基等が挙げられる。
ここで、上記一般式中、Rはアルキル基、フェニル基又はアルコキシ基を表す。 相容化剤(E)が炭化水素系重合体である場合に、特に好ましい極性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基等のカルボキシル基類、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基等のホウ素含有極性基が挙げられる。
このうち、極性基がカルボキシル基である場合、得られる樹脂組成物は高い熱安定性を有する。前述のように、樹脂組成物に遷移金属塩(B)が過剰に含まれる場合、該樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるが、遷移金属塩(B)と共にカルボキシル基を有する相容化剤(E)が含まれていると、該樹脂組成物の熱安定性が保持される。このような効果が発現する理由は明らかではないが、該相容化剤(E)と遷移金属塩(B)とのなんらかの相互作用によると考えられる。また、極性基がホウ素含有極性基である場合、得られる樹脂組成物において、酸素吸収剤とガスバリア性樹脂(D)の相容性が著しく改善され、安定したモルフォロジーが形成される。
このような極性基を有する相容化剤は、例えば特許文献6(特開2002−146217号公報)に詳細に開示されている。開示されている相容化剤の中でも、ボロン酸エステル基を有するスチレン−水添ジエン系ブロック共重合体が好ましい。
相容化剤(E)として、上述のように、エチレン−ビニルアルコール共重合体も使用され得る。特に、ガスバリア性樹脂(D)がEVOHである場合、相容化剤としての効果が十分に発揮される。中でも、エチレン含有量70〜99モル%、ケン化度40%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体が相容性の改良の観点から好ましい。エチレン含有量はより好適には72〜96モル%、更に好適には72〜94モル%である。エチレン含有量が70モル%に満たない場合、酸素吸収剤との親和性が低下することがある。また、エチレン含有率が99モル%を超える場合、EVOHとの親和性が低下することがある。またケン化度はより好適には45%以上である。ケン化度の上限に特に制限はなく、実質的に100%のケン化度のものも使用できる。ケン化度が40%に満たない場合、EVOHとの親和性が低下することがある。
以上に述べた相容化剤(E)は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の酸素吸収剤含有層(II)がガスバリア性樹脂(D)に加えて相容化剤(E)を含有する場合、前記酸素吸収剤、前記ガスバリア性樹脂(D)及び前記相容化剤(E)の合計重量を100重量%としたときに、前記ガスバリア性樹脂(D)が70〜98.9重量%、前記酸素吸収剤が29.9〜1重量%、前記相容化剤(E)が29〜0.1重量%の割合で含有されることが好ましい。ガスバリア性樹脂(D)の含有割合が70重量%未満である場合、該樹脂組成物の、酸素ガス、炭酸ガス等に対するガスバリア性が低下するおそれがある。一方、含有割合が98.9重量%を超える場合、酸素吸収剤及び相容化剤(E)の含有割合が少なくなるため、酸素掃去機能が低下するおそれがある他、樹脂組成物全体のモルフォロジーの安定性が損なわれるおそれがある。ガスバリア性樹脂(D)の含有割合は、より好適には80〜97.5重量%であり、更に好適には85〜96重量%である。同様に、酸素吸収剤の含有割合は、より好適には19.5〜2重量%であり、更に好適には14〜3重量%である。更に、相容化剤(E)の含有割合は、より好適には18〜0.5重量%であり、更に好適には12〜1重量%である。
酸素吸収剤含有層に含まれていてもよい熱可塑性樹脂(C)は、ガスバリア性樹脂のみから構成されていてもよいし、ガスバリア性樹脂とその他の樹脂の両方を含んでいてもよい。その他の樹脂の例としては、先に熱可塑性樹脂(C)として例示したポリオレフィン等の樹脂が使用できる。
酸素吸収剤含有層(II)には、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物等が挙げられる。このような添加剤は、例えば特許文献6(特開2002−146217号公報)に詳細に開示されている。
酸素吸収剤含有層(II)がガスバリア性樹脂(D)を含有する場合、酸素吸収剤からなる粒子がガスバリア性樹脂(D)からなるマトリックス中に分散していることが好ましい。このような樹脂組成物からなる成形物は、透明性、ガスバリア性及び酸素掃去機能が良好である。このとき、酸素吸収剤からなる粒子の平均粒径は10μm以下であることが好適である。平均粒径が10μmを超える場合には、酸素吸収剤とガスバリア性樹脂(D)等でなるマトリックスとの界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性及び酸素掃去機能が低下する場合がある。酸素吸収剤粒子の平均粒径は5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。
酸素吸収剤含有層(II)を構成する樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基く)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、更に好適には1〜30g/10分である。本発明の樹脂組成物のメルトフローレートが上記の範囲から外れる場合、溶融成形時の加工性が悪くなる場合が多い。
本発明の積層体の構成は、前記したガスバリア層と酸素吸収剤含有層(II)を含んでいれば制限はない。ガスバリア層と酸素吸収剤含有層(II)のみの積層体であっても良いし、ガスバリア層と酸素吸収剤含有層(II)を含む多層積層体であっても良い。本発明の積層体の層構成としては、該積層体を包装材料として使用する際に外側となる層から内側となる層に向かって、例えば以下のような構成が挙げられる。ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ポリオレフィン層(以下PO層)、酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/EVOH層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/EVOH層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、紙層/PO層/EVOH層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/ナイロン層/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/EVOH層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/ガスバリア性積層体(IL)/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/酸素吸収剤含有層(II)/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/酸素吸収剤含有層(II)/EVOH層/PO層、PO層/紙層/PO層/ナイロン層/ガスバリア性積層体(IL)/EVOH層/酸素吸収剤含有層(II)/PO層、など。層と層の間には適宜接着層を設けることができる。ポリオレフィン層、ナイロン層、紙層について以下詳細に説明する。
上記ポリオレフィン(PO)層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、アイオノマー、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを用いることができる。これらのポリオレフィン層は延伸または無延伸のいずれでもよい。好ましいポリオレフィン層としては低密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンからなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートである。より好ましくは、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。成型加工の容易さ、耐熱性などの観点から、上記積層体を構成するいずれのPO層も無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンであるのは好ましく、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンであるのがさらに好ましい。
特に上記積層体の、包装材として使用する際に最内層となる層に配置されたPO層は、無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンで構成されていることが好ましい。
PO層の厚みとしては特に制限されるものではないが、機械的強靱性、耐衝撃性、耐突き刺し性等の観点から、10〜200μmの範囲にあるのが好ましく、20〜150 μmの範囲にあるのがより好ましい。
上記ナイロン層としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロンMXD6樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを用いることができる。これらのナイロン層は延伸または無延伸のいずれでもよい。好ましいナイロン層としてはナイロン6、ナイロン66をフィルム化、延伸したシートである。
ナイロン層の厚みとしては特に制限されるものではないが、機械的強靱性、耐衝撃性、耐突き刺し性等の観点から、5〜200μmの範囲にあるのが好ましく、5〜100 μmの範囲にあるのがより好ましい。
上記紙層に用いられる紙としては、クラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙等が使用できる。
ポリオレフィン(PO)層、ナイロン層の形成の方法としては、予め用意された無延伸ポリオレフィンフィルム、延伸ポリオレフィンフィルム、無延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルムと他の層を構成するフィルムと周知のドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等により貼り合わせる方法、あるいは周知のTダイ押出し法等により、他の層を構成するフィルム上にPO層、ナイロンを形成させる方法等を採用することができる。また、必要に応じてポリオレフィン層と他の層との間に、接着層を配置することができる。接着層はアンカーコート剤、接着剤、接着性樹脂などを用いて形成する。
本発明の積層体は、高湿度下においても高い酸素バリア性を有する。また、加工時、輸送時などに酸素バリア性が低下することもない。さらに、環境適性を有する。本発明の積層体は、米飯、カップラーメン、ヨーグルト、フルーツゼリー、プリン、味噌などを内容物とする容器の蓋材、宇宙食、軍事携行食などを内容物とするスパウト付きパウチ、スタンディングパウチ、真空断熱板、真空包装袋、紙容器、窓付き紙容器、ラミネートチューブ容器、医療用輸液バッグ、電子部材包装用の積層体として使用することができ、長期間に亘り内容物の変質を防ぐことができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。以下の実施例における測定および評価は、次に示す方法(1)〜(3)によって実施した。なお、以下の実施例において積層体の層構成を表記する際に、物質名のみを表記し、「層」の表記を省略することがある。
(1)レトルト殺菌処理後の酸素バリア性
実施例、比較例で得られたパウチに蒸留水を充填し、120℃、30分間の条件でレトルト殺菌処理を施した。レトルト殺菌処理後、パウチから酸素透過度測定用のサンプルを切り取り、表面に付着した水を紙タオルで軽く押し付けるように拭き取り、酸素透過度の測定を実施した。酸素透過度は、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN10/50」)を用いて測定した。具体的には、酸素供給側にパウチを構成する積層体の外層が向くように、積層体の内層がキャリアガス側に向くように積層体をセットし、温度20℃、酸素供給側の湿度85%RH、キャリアガス側の湿度100%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過度(単位:cm3/m2・day・atm)を測定した。
(2)レトルト殺菌処理後の累積侵入酸素量測定
実施例、比較例で得られたパウチにあらかじめ窒素バブリングを行った蒸留水を充填した。非破壊酸素濃度計(Presens 酸素濃度計;Fibox3)を用いて測定したこの時点での蒸留水中の酸素濃度は約12%であった。このパウチに対し、120℃、30分間の条件でレトルト殺菌処理を施した。レトルト殺菌処理後、上記非破壊酸素濃度計(Presens 酸素濃度計;Fibox3)を用いて、レトルト殺菌処理後、室温まで冷却した直後から経時的にパウチ中の蒸留水の酸素濃度測定を行った。
(3)イオンによるカルボキシル基の中和度(イオン化度)
実施例で得られた積層体(B−1)について、フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、8200PC)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、ガスバリア層に含まれるC=O伸縮振動のピークを観察した。イオン化前のカルボン酸含有重合体のカルボキシル基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm−1〜1850cm−1の範囲に観察され、イオン化された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm−1〜1600cm−1の範囲に観察された。そして、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を算出し、その比と予め下記の方法で作成した検量線とを用いてイオン化度を求めた。
[検量線の作成]
数平均分子量150,000のポリアクリル酸を蒸留水に溶解し、所定量の水酸化ナトリウムでカルボキシル基を中和した。得られたポリアクリル酸の中和物の水溶液を、基材上に、イオン化度の測定の対象となる積層体のガスバリア層と同じ厚さになるようにコートし、乾燥させた。基材には、2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケラックA626(商品名)およびタケネートA50(商品名)、以下ACと略記することがある)を表面にコートした延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレム(商品名)、厚さ15μm、両面コロナ処理品、以下「ONy」と略記することがある)を用いた。このようにして、カルボキシル基の中和度が、0〜100モル%間で10モル%ずつ異なる11種類の標準サンプル[積層体(ポリアクリル酸の中和物からなる層/AC/ONy)]を作製した。これらのサンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製、8200PC)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、赤外吸収スペクトルを測定した。そして、ポリアクリル酸の中和物からなる層に含まれるC=O伸縮振動に対応する2つのピーク、すなわち、1600cm−1〜1850cm−1の範囲に観察されるピークと1500cm−1〜1600cm−1の範囲に観察されるピークとについて、吸光度の最大値の比を算出した。そして、算出した比と、各標準サンプルのイオン化度とを用いて検量線を作成した。