JP3661160B2 - サーミスタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温ハンダ(融点が309℃付近)を用いて、サーミスタ素子両面に配線処理が施されるサーミスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、サーミスタはサーミスタ素子両面に素子電極が取付けられており、素子電極は、貴金属ペーストを用いて素子両面に膜状に形成されていた。
【0003】
ところで、この種のサーミスタにおいて、高温ハンダを使用して素子電極にリード線を取付ける際に、素子電極は高温下に曝されるため、素子電極をなす貴金属ペーストの一部がハンダ側に拡散されてしまい、結果として素子電極の電極面積が減少して電極の抵抗値が異常に大きくなってしまい、サーミスタの電気的特性が悪化したり、また電極面積が減少してハンダ付けの面積が実質的に減少し、ハンダ付け強度が劣化する等の不具合が生じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した課題を解決するため、従来ではサーミスタ素子の表面に貴金属ペーストを2回塗布する等の方法により、膜厚の厚い素子電極をサーミスタ素子の表面に形成し、これにより貴金属の一部がハンダ側に拡散されたとしても、素子電極の電極面積を一定に確保するようにしていた。
【0005】
しかしながら素子電極の膜厚が厚くなったとしても、素子電極自身が高温ハンダに拡散され易い貴金属であるため、貴金属がハンダ側に拡散する量を考慮に入れて一定の電極面積を確保する必要があり、このことを考慮に入れてハンダ付け作業を行なうこととなるため、ハンダ付け温度,時間等の管理が難しく、実際の製造には不向きなものであった。
【0006】
また貴金属ペーストを2回塗布する必要があるため、電極材料費がサーミスタの価格を高騰させてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、共晶ハンダ或いは高温ハンダによる配線処理を施しても、必要な電極面積を確保できるサーミスタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係るサーミスタは、サーミスタ素子の電極にハンダ付けによる配線処理が施されるサーミスタであって、
電極は、特性が異なる素子電極とカバー電極との2層構造からなり、
素子電極は、ガラスフリットとRuO 2 とを含み、サーミスタ素子に積層して膜状に形成され、電極面積を確保してサーミスタの電気的特性を維持するものであり、
カバー電極は、貴金属とガラスフリットとを含むペーストを前記素子電極を被覆して膜状に形成され、配線がハンダ付けされて該配線と前記素子電極との電気的接続を確保するものである。
【0009】
また前記素子電極は、RuO 2 と貴金属とガラスフリットを含むペーストで形成されたものである。
【0013】
また前記貴金属は、少なくともAu,Ag,Ag/Pd,Pt/Auの一成分を含むものである。
【0014】
サーミスタに設けた電極は、特性が異なる素子電極とカバー電極との2層構造からなっている。下層の素子電極により電極面積を確保してサーミスタの電気的特性を維持させ、上層のカバー電極により配線と素子電極との電気的接続を確保させる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図により説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態に係るサーミスタを示す断面図である。
【0016】
図において本発明に係るサーミスタは、サーミスタ素子1の電極にハンダ付けによる配線処理が施されるサーミスタであって、電極は、特性が異なる素子電極2とカバー電極3との2層構造からなっている。
【0017】
素子電極2は、少なくとも抵抗値の酸化物からなり、サーミスタ素子1の表面に積層して膜状に形成され、電極面積を確保してサーミスタの電気的特性を維持するものである。ここに、サーミスタの電気的特性とは、比抵抗,B定数等を含む特性をいう。比抵抗は、単位長さ当たりの電気抵抗を意味し、またB定数は、25℃と50℃の抵抗値の比から算出されたサーミスタ定数を意味する。
【0018】
カバー電極3は、素子電極2を被覆して膜状に形成され、配線がハンダ付けされて該配線と素子電極2との電気的接続を確保するものである。ここに、配線とは、リード線,プリント基板上にパターン形成された導線パターン等を含むものであり、要はサーミスタ素子1と外部回路との間に介装されて、電源,信号の授受等の機能を作用するものであれば、いずれのものでもよい。
【0019】
またサーミスタ素子1の形状は、ディスク型,チップ型,角型等に成形されるが、サーミスタ素子1の使用目的,使用場所,用途等に合わせて、サーミスタ素子1の形状は種々変更される。
【0020】
サーミスタの電極は、低抵抗値をもつことが条件とされ、一般に貴金属ペーストが用いられている。ところが、貴金属ペーストは、高温ハンダ(融点309℃付近)を使用して高温下に曝されることにより溶融し、ハンダ側に拡散する性質があるため、結果として電極面積が縮小して電極の抵抗値が異常に大きくなってしまう。
【0021】
そこで本発明は、サーミスタの電極を機能分割して電極面積の縮小化に対処している。すなわち、サーミスタの電極を素子電極2とカバー電極3を積層した2層構造とし、素子電極2に電極面積を確保してサーミスタの電気的特性を維持する機能を分担させ、カバー電極3に配線と素子電極2との電気的接続を確保する機能を分担させている。
【0022】
上記のように各電極2,3に機能を分担させるにあたっては、貴金属ペーストがハンダ側に拡散するという特性を考慮に入れなければならず、本発明では、酸化物はハンダとは馴染まず、ハンダをはじく作用があることに着目し、サーミスタ素子1の表面に直に形成される素子電極2を低抵抗値をもつ酸化物で形成し、素子電極2を酸化物電極として構成している。
【0023】
本発明における素子電極2は酸化物電極であるため、ハンダ付けの高温下に曝されたとしても、ハンダとは馴染まずにハンダをはじく作用があるため拡散現象がなく、結果として必要な電極面積を確保できることとなり、電極面積の減少による不良発生を防止できる。
【0024】
しかも素子電極2は、低抵抗値の酸化物を選定しており、電極の抵抗値を低く抑えることができる。
【0025】
素子電極2によりサーミスタに必要な電極面積が確保されることとなるが、素子電極2は酸化物電極であり、ハンダをはじく作用があるため、素子電極2と配線との電気的接続を確保する必要が生じる。
【0026】
以上のように電極面積は素子電極2により確保されているため、カバー電極3によって電極面積を確保する必要はなく、カバー電極3は、素子電極2と配線との電気的接続を確保することを重要な役割とすればよい。
【0027】
そこで本発明は、素子電極2を被覆してカバー電極3を積層して形成している。ここに、カバー電極3には、ハンダと馴染みがよい素材を用いて、素子電極2と配線との電気的接続を確保させており、電極を2層構造としたことによる悪影響を生じることはない。
【0028】
本発明では、上述した電極の機能分担を達成するため電極の素材を選定しており、具体的には素子電極2は、低抵抗値の酸化物とガラスフリットを含むペーストで形成しており、前記酸化物としては、RuO2、またはRuO2と貴金属との組合せのうちいずれかを用いている。そして前記ペーストをサーミスタ素子1の表面に塗布し、これを焼付け処理をすることにより、サーミスタ素子1に素子電極2を膜状に形成している。
【0029】
またカバー電極3は、貴金属とガラスフリットを含むペーストで形成しており、このペーストを素子電極2を被覆して塗布し、これを焼付け処理をすることにより、素子電極2上にカバー電極3を膜状に一体に形成している。
【0030】
また貴金属としては、Au,Ag,Ag/Pd,Pt/Auの内少なくとも一成分を用いている。
【0031】
次に素子電極2及びカバー電極3からなる電極をサーミスタ素子1に設ける場合について図を用いて説明する。
【0032】
図1では、サーミスタ素子1の対向する端面に素子電極2とカバー電極3の2層構造の電極をそれぞれ設けている。この構造のものでは、配線としてリード線を用い、リード線を上下のカバー電極3にそれぞれ高温ハンダ付けすることとなる。
【0033】
図2及び図3は、プリント基板に表面実装されるサーミスタの例を示すものである。
【0034】
図2では、サーミスタ素子1の左右端を取り囲むように素子電極2とカバー電極3とを設け、サーミスタ素子1の上面又は下面に配置されたカバー電極3a,3a又は3b,3bのいずれかを、プリント基板にパターン形成された導体パターン(配線)に高温ハンダをもって直付けするようにしたものである。
【0035】
図2に示す例では、対をなすカバー電極3a,3a又は3b,3bを左右対称に設けていたが、図3は、対をなす一対のカバー電極3a,3a又は3b,3bがサーミスタ素子1の表面上に占める割合を異ならせて電極を設け、サーミスタ素子1の上面又は下面に配置されたカバー電極3a,3a又は3b,3bのいずれかを、プリント基板にパターン形成された導体パターン(配線)に高温ハンダをもって直付けするようにしたものである。
【0036】
(実施例)以下に本発明の実施例を示す。
【0037】
各実施例と比較例のサーミスタ素子は、ポリビニールアルコールをバインダーとして素子材料に添加し、所要量を取り出して40mm×40mm×12mmのブロックに成形後、1400℃で5時間大気中で焼成し、得られたブロックをスライスして厚み200〜1000ミクロンのウェーハーを取り出し、まず素子電極2をスクリーン印刷により塗布乾燥後、次にカバー電極3を同じようにスクリーン印刷により塗布し、850℃で10分間大気中で加熱し焼き付けた後、所望の寸法にカッテイングしてチップに成形加工したものである。
なお、比較例の電極としては、貴金属ペーストのみをスクリーン印刷により2回塗布し、850℃で10分間加熱し焼き付けたものを用いている。
【0038】
表1には実施例と比較例の電極材料及び電極構造の違いを示し、表2には実施例と比較例の試験結果(n=10,ここにnは資料の個数を表わす)を示している。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1と表2から明らかなように、本発明のように電極を素子電極2とカバー電極3の二層構造とし、かつ素子電極2をRuO2系電極(酸化物電極)として構成することにより、高温ハンダによる電極面積の減少を抑制することができ、サーミスタの電極抵抗値の変化を防止することができる。なお、本発明においては、比較的ハンダが喰われが少ないといわれている共晶ハンダによる配線処理において、ハンダによる電極面積の減少を抑制して、サーミスタの電極抵抗値の変化を防止できることが分かった。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サーミスタの電極を2層構造として、ハンダ喰われ等によりカバー電極の一部が損失しても、素子電極が「ハンダ食われ」の影響を受けないようにしたため、サーミスタ自身の電気的特性(比抵抗,B定数等)の低下を防止することができ、高温ハンダを用いて配線処理するのに適したサーミスタを提供することができる。
【0043】
また本発明に係る機能分担した2層構造のサーミスタの電極は、高温ハンダに限らず共晶ハンダの場合も同じ効果を発揮することができ、ガラス封止型サーミスタ(素子の両面電極面をリード線で圧着した状態でガラス封入されたもの例えばDHT型サーミスタ)の場合にも同様に適用することができる。
【0044】
さらに高温ハンダ或いは共晶ハンダを用いても、サーミスタの電極面積が減少することはなく、ハンダ付け面積の減少を防止して必要なハンダ付け強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーミスタを示すものであって、配線としてのリード線を電極にハンダ付けした構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサーミスタを示すものであって、表面実装タイプを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るサーミスタを示すものであって、他の表面実装タイプを示す断面図である。
【符号の説明】
1 サーミスタ素子
2 素子電極
3 カバー電極
Claims (3)
- サーミスタ素子の電極にハンダ付けによる配線処理が施されるサーミスタであって、
電極は、特性が異なる素子電極とカバー電極との2層構造からなり、
素子電極は、少なくともガラスフリットとRuO 2 とを含み、サーミスタ素子に積層して膜状に形成され、電極面積を確保してサーミスタの電気的特性を維持するものであり、
カバー電極は、貴金属とガラスフリットとを含むペーストを前記素子電極を被覆して膜状に形成され、配線がハンダ付けされて該配線と前記素子電極との電気的接続を確保するものであることを特徴とするサーミスタ。 - 前記素子電極は、RuO 2 と貴金属とガラスフリットを含むペーストで形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のサーミスタ。
- 前記貴金属は、少なくともAu,Ag,Ag/Pd,Pt/Auの一成分を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーミスタ。
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