JP3659284B2 - 高周波用多層配線基板およびその製造方法 - Google Patents

高周波用多層配線基板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波、ミリ波等の高周波帯で用いられる高周波用の多層配線基板と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
マイクロ波帯、ミリ波帯等の高周波で用いられる高周波回路の伝送線路には小型で伝送損失が小さいことが求められる。従来、伝送線路としては、同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレナー線路、導波管等が知られている。
【0003】
同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレナー線路は誘電体と導体層からなる信号線路と地板(グランド層)で構成されており、信号線路と地板の周囲の空間および誘電体中を電磁波が伝播するものである。
【0004】
この時、誘電体として高誘電率のものを用いれば、回路全体を小型に形成できるが、誘電体損失と導体損失が大きい場合は特に高周波での伝送損失が大きいという問題があった。
【0005】
更に、マイクロストリップ線路とコプレナー線路は信号線路が地板で完全に囲まれていないため、放射による損失が大きいという問題があった。一方、導波管は金属製の壁で囲まれた空間を電磁波が伝播する構造となっており、高周波での伝送損失が小さく放射損失も小さいが、サイズが大きくなるという問題があった。
【0006】
そこで、導波管の伝送特性が優れている利点を活かしながら小型化する方法として導波管の内部の空間を誘電体で満たした誘電体導波管が知られている。誘電体導波管は管内部に誘電体が存在するため、誘電体が存在しない導波管と比較して誘電体損失による伝送損失は大きくなる可能性があるが、小型に形成することができる。
【0007】
また、このような誘電体導波管の伝送特性と小型化を活かし、配線基板内の伝送線路として、例えば、特開平6−53711号によれば、誘電体層の上下面に導体層を形成し、その導体層間を2列のビアホール導体で電気的に接続した伝送線路が提案されている。
【0008】
従って、誘電体損失の小さい材料を用いれば、小型で低伝送損失な伝送線路が得られる。高周波回路を小型化するためには伝送線路を小型化し、基板に内蔵する必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、導波管の内部に誘電体を充填した誘電体線路は、伝送ケーブル等として用いられるのがほとんどであり、配線基板の伝送線路には使用されていない。ただ、特開平6−53711号の線路は、一対の導体層と2列のビアホール導体によって疑似的な誘電体導波管を形成したものであるが、この誘電体導波管導波管のE面またはH面に平行な面が2列のビアホール導体列で形成されているため、ビアホール導体間の間隙から電磁波が漏れることを完全に防ぐことができず、伝送損失が大きくなるという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、誘電体が導体層によって囲まれた誘電体誘電体導波管からなる伝送線路を具備する高周波用多層配線基板を提供することを目的とする。また、本発明は、誘電体導波管構造の伝送線路を簡便な方法で形成可能な高周波用多層配線基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、誘電率εr1の誘電体からなる複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板内に、側壁に導体層が形成された幅Lの長孔と、該長孔内に充填された誘電体導波管を構成する誘電率をεrの誘電体と、該長孔の上下に形成され、前記幅L以上の幅をもって形成された1対の導体層とからなり、前記長孔内に充填された誘電体の誘電率をεrとし、かつ前記幅Lが導波管の遮断波長の1/(2(εr1/2)である伝送線路を配設したときに、εr>εrとしたことを特徴とする高周波用多層配線基板により上記目的が達成される。
また、伝送線路における信号伝送の周波数が1GHz以上であること、絶縁層厚みに相当する長孔の上下に形成され、前記幅L以上の幅をもって形成された1対の導体層の間隔が導波管の遮断波長の1/(4(εr1/2)であることが望ましい。
【0012】
また、本発明によれば、誘電体からなる第1の絶縁層に、該絶縁層を貫通する幅L1 の長孔を形成する工程と、前記長孔内の側壁に側壁導体層を形成する工程と、誘電体からなる第2の絶縁層の上面に、前記長孔を全面にわたって塞ぐような位置に、前記幅L1 以上の幅L2 からなる第1の導体層を形成する工程と、前記第1の絶縁層の下面に、前記長孔が前記第1の導体層によって塞がれるように前記第2の絶縁層を積層する工程と、前記長孔の下面が前記第1の導体層によって塞がれた長孔内に誘電体を充填する工程と、前記第1の絶縁層の上面および前記長孔内部に充填された誘電体の露出面に、前記幅L1 以上の幅L3 からなる第2の導体層を形成する工程と、を具備することを特徴とする高周波用多層配線基板の製造方法により、前記多層配線基板が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の高周波用多層配線基板の概略配置図を図1に示した。図1によれば、本発明の多層配線基板1は、誘電率εr1 の誘電体からなる絶縁層2を複数層積層して絶縁基板3は形成されるとともに、配線基板1内には、信号の伝達を行うための伝送線路が形成されている。一般に、高周波用として適用する場合、伝送線路としては、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレナー線路などが知られているが、これらの線路は、その性質を活かし、配線基板内の所定の箇所に所定の線路を形成することができるが、本発明によれば、その伝送線路の1つとして、誘電体導波管構造の伝送線路を有するものである。また、本発明の多層配線基板における誘電体導波管構造の伝送線路は、特に、1GHz以上、特に30GHz以上のマイクロ波、ミリ波の信号伝送用に用いられるものである。
【0014】
本発明における誘電体導波管構造の伝送線路は、絶縁基板3を構成する絶縁層のうち少なくとも1層の絶縁層2に対して、側壁に導体層4、5が形成された幅L1 の長孔6が設けられ、その長孔6内には誘電率εr2 の誘電体7が充填されている。そして、その長孔6を上下から挟持するように、長孔6の幅L1 あるいはそれよりも大きい幅をもって1対の導体層8、9が被着形成されている。かかる構成において、誘電体7の周囲が側壁用導体層4、5と、上記の導体層8、9によって囲まれることにより誘電体導波管Aが形成されている。そして、この誘電体導波管Aは、伝送線路として機能する上で、上記誘電体7、側壁用導体層4、5および導体層8、9から構成される誘電体導波管Aが、信号伝送方向に亘って形成されている。
【0015】
上記誘電体導波管Aにおける導体層8、9の間隔dは、絶縁層2の厚みに相当し、導波管の遮断波長の1/(4(εr2 1/2 )に設定され、側壁用導体層4、5の間隔L1 は、導波管の遮断波長の1/(2(εr2 1/2 )に設計されている。なお、絶縁基板3を構成する誘電率εr1 の誘電体と、誘電率εr2 の誘電体7とは同一材質として、εr1 =εr2 でもよいが、望ましくは、εr2 >εr1 とすることにより誘電体導波管のサイズをより小型化することができる。
【0016】
次に、本発明の多層配線基板において、上記の誘電体導波管構造の伝送線路を形成するための製造方法について図2、図3をもとに説明する。図2によれば、まず、図2(a)に示すように、単一層の厚みを調整するか、または積層して、前記の関係を満足する厚みdを有する絶縁層10を形成する。次に、図2(b)に示すように、その絶縁層10における線路方向に絶縁層10を貫通する幅L1 の長孔11を形成する。
【0017】
次に、図2(c)に示すように、上記の絶縁層10の長孔11の側壁に側壁導体層12、13を形成する。この側壁導体層12、13は、例えば、導電性粉末を含む導体ペーストを長孔11内に一方から充填し他方から強制的に吸引することにより、ペーストが側壁に付着することにより形成できる。
【0018】
次に、図2(d)に示すように、他の絶縁層14の上面に絶縁層10に形成した長孔11を線路方向に全面にわたって塞ぐような位置に、前記幅L1 以上の幅L2 からなる帯状の導体層15を形成し、これを長孔11が形成された絶縁層10の下面と、導体層15が形成された絶縁層14の上面とを、長孔11が導体層15によって完全に塞がれるように配置して積層する。これにより、長孔11の一方の開放端が塞がれることにより、凹構造となる。導体層15は、前述したような導体ペーストによる印刷によって形成できる。
【0019】
次に、図2(e)に示すように、凹構造となった長孔11内に、誘電体16を埋め込む。この誘電体16の埋め込みは、例えば、長孔11内に誘電体を含有するスラリーを流し込む方法、凹構造形状に整合した誘電体からなるブロックを埋設する方法などがある。
【0020】
そして、図2(f)に示すように、長孔11内に埋め込まれた誘電体16の露出面を含む前記絶縁層10の表面に、幅L3からなる導体層17を形成する。この導体層17の形成は、例えば、前記導体ペーストを絶縁層10の表面に直に印刷するか、または、図2(f’)のように、別途、絶縁層18の一方の面に導体層17を形成したものを絶縁層10に対して、誘電体16の露出面が導体層17によって塞がれるような位置にて積層することによっても形成できる。
【0021】
このように、図2に示した工程により、側壁導体層12、13、誘電体16、導体層15、17からなる誘電体導波管構造の伝送線路を具備する配線層を形成することができる。そして、この配線層を他の配線層と適宜位置合わせして積層することにより、図1に示したような多層配線基板を作製することができる。
【0022】
上記の製造方法においては、絶縁層は、Al2 3 、ガラスセラミックス、AlN,Si3 4 などの周知のセラミック材料、またはエポキシ樹脂などの有機樹脂を含む絶縁材料からなるものであってもよい。
【0023】
例えば、上記セラミック材料からなる場合には、焼成前のセラミックグリーンシートを絶縁層として、図2の工程を施した後に、絶縁層、誘電体および各導体層を一括して同時焼成することにより作製できる。その場合、導体層の形成は、それぞれのセラミック材料と同時焼成可能な導体ペーストを印刷することにより形成される。例えば、セラミック材料が、Al2 3 、Si3 4 、AlNの場合には、W,Moなどの導体が、またガラス、ガラスセラミックスの場合には、銅、銀、金などが好適に用いられる。また、貫通孔内に充填する誘電体を高誘電体により形成する場合、高誘電体としては、BaTiO3 、MgTiO3 、CaTiO3 、ZnTiO3 などの周知の高誘電率化合物やこれらの化合物を含むセラミック材料を用いて形成することができる。
【0024】
一方、絶縁層が有機樹脂を含む場合には、例えば、未硬化または半硬化状態の絶縁層の段階で、図2の工程を施した後に、絶縁層、誘電体および各導体層を一括して熱処理して完全硬化することにより作製できる。その場合、導体層の形成は、銅、金、銀などの導体を含むペーストを印刷したり、銅などの金属箔を貼り付けたり、メッキ法などにより形成することも可能である。また、高誘電体部は、前記高誘電率化合物や、これらの化合物と有機樹脂との複合材料などを用いて形成することができる。
【0025】
【実施例】
図2の方法に従い、ガラスセラミックスからなるグリーンシート(比誘電率5、誘電正接0.003)を用いて、銅メタライズで導体層および導体膜を形成することにより誘電体導波管を作製した。
【0026】
まず、比誘電率5、誘電正接0.003の特性を有するガラスセラミックスを用いて誘電体導波管からなる線路を具備した多層配線基板を作製した。まず、ほう珪酸ガラス75重量%、アルミナ25重量%の組成からなるガラスセラミック組成物を含むスラリーを用いてドクターブレード法によって厚さ200μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートを3枚重ねて厚さ600μmの積層体を作製した。次に、その積層体(A)に幅2mmの長孔を形成した。そして、この長孔内に長孔の反対側から吸引しながら銅ペーストを充填して、長孔側壁にペーストを塗布して、側壁用導体層を印刷した。
【0027】
一方、厚さ200μmのグリーンシート(B)の表面に、銅ペーストを用いて幅6mmの導体層を印刷した後、このグリーンシート(B)を積層体(A)の長孔を導体層(a)により塞ぐように積層した。そして、積層体(A)の長孔内に前記ガラスセラミック組成物を含むスラリーを充填し乾燥した。その後、スラリーを充填した長孔の表面に、幅6mmの導体層(b)を印刷した。そして、このようにして作製した積層構造体を窒素中で950℃で焼成して、誘電体導波管からなる線路を具備した配線基板を作製した。
【0028】
得られた配線基板の誘電体導波管からなる線路について、ネットワークアナライザで透過特性および反射特性を測定した。測定結果を図3に示す。図3から明らかなように、遮断周波数がf0 =33.5GHzであり、それ以上の周波数で信号が透過しており、導波管特有の伝送特性が得られている。従って、本発明によって、配線基板内に誘電体導波管が形成されたことが明らかとなった。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の多層配線基板によれば、従来の積層技術を用いて誘電体導波管からなる線路を基板内に内蔵することができるため、基板内に誘電体導波管を内蔵させることができる。しかも配線層を具備する回路基板やパッケージ等の製造と同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体導波管からなる線路を具備した多層配線基板の構造を説明するための概略斜視図である。
【図2】本発明の多層配線基板を作製するための製造方法を説明するための工程図である。
【図3】本発明の実施例によって作製された誘電体導波管の伝送特性図である。
【符号の説明】
1 多層配線基板
2,10,14,18 絶縁層
3 絶縁基板
4,5,12,13 側壁用導体層
6,11 長孔
7,16 誘電体
8,9,15,17 導体層

Claims (4)

  1. 誘電率εr1の誘電体からなる複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板内に、側壁に導体層が形成された幅Lの長孔と、該長孔内に充填された誘電体導波管を構成する誘電率をεrの誘電体と、該長孔の上下に形成され、前記幅L以上の幅をもって形成された1対の導体層とからなり、前記長孔内に充填された誘電体の誘電率をεrとし、かつ前記幅Lが導波管の遮断波長の1/(2(εr1/2)である伝送線路を配設したときに、εr>εrとしたことを特徴とする高周波用多層配線基板。
  2. 伝送線路における信号伝送の周波数が1GHz以上であることを特徴とする請求項1に記載の高周波用多層配線基板。
  3. 絶縁層厚みに相当する長孔の上下に形成され、前記幅L以上の幅をもって形成された1対の導体層の間隔が導波管の遮断波長の1/(4(εr1/2)であることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波用多層配線基板。
  4. 誘電体からなる第1の絶縁層に、該絶縁層を貫通する幅Lの長孔を形成する工程と、前記長孔内の側壁に側壁導体層を形成する工程と、誘電体からなる第2の絶縁層の上面に、前記長孔を全面にわたって塞ぐような位置に、前記幅L以上の幅Lからなる第1の導体層を形成する工程と、前記第1の絶縁層の下面に、前記第1の導体層によって前記長孔を塞ぐように前記第2の絶縁層を積層する工程と、前記第1の導体層によって下面が塞がれた前記長孔内に誘電体を充填する工程と、前記長孔内に充填された誘電体の露出面を含む前記第1の絶縁層の上面に、前記幅L以上の幅Lからなる第2の導体層を形成する工程と、を具備することを特徴とする高周波用多層配線基板の製造方法。
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