JP3774336B2 - 高周波用配線基板およびその製造方法 - Google Patents

高周波用配線基板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波帯からミリ波帯領域の高周波信号を伝送する高周波用配線基板に関し、特に高周波信号の伝送損失を低減できる高周波用配線基板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、比較的高密度の配線が可能な多層セラミック配線基板が多用されている。この多層セラミック配線基板は、アルミナやガラスセラミックなどの誘電体基板と、その表面に形成されたWやMo、Cu、Ag等の金属からなる配線導体とから構成されるもので、この誘電体基板の一部にキャビティが形成され、このキャビティ内に半導体素子が収納され、蓋体によってキャビティを気密に封止されるものである。
【0003】
近年、高度情報化時代を迎え、使用される周波数帯域はますます高周波帯へと移行しつつある。このような高周波信号を伝送する高周波回路素子等を搭載した配線基板においては、高周波信号の損失がなく伝送することが重要であり、高周波用配線層を形成する導体の抵抗が小さいこと、また誘電体基板の高周波領域での誘電損失が小さいことが要求される。
【0004】
また、上記の高周波用配線層は、例えばマイクロストリップ線路等の中心導体とグランド層との導体層によって形成されるものであるが、高周波信号はこの中心導体とグランド層間に発生する磁界によって伝送されるものであり、高周波信号の伝送特性は中心導体とグランド層間に挟持される誘電体基板と中心導体およびグランド層の導体層との界面の状態に大きく依存するものである。
【0005】
従来、この種の高周波用配線基板は、例えば、ガラスセラミックス等からなる誘電体層の表面に、Cu、Ag等の低抵抗金属を主成分とするメタライズペーストを用いてスクリーン印刷法等によって高周波用配線パターンを形成し、誘電体層と同時焼成する方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような導体ペーストを印刷して焼成する手法では、高周波用配線層は金属粉末が焼結したものであるために空隙が多く存在し、また、一般に誘電体層と高周波用配線層との熱収縮挙動を合わせるために導体ペースト中にセラミックスやガラス等のフィラー成分が添加されているために低抵抗化ができないものであった。また、この方法では、高周波用配線層の配線幅80μm以下とすることが困難であり、微細配線化に限界があった。
【0007】
また、この方法では、導体ペースト中の金属粉末の凝集等により誘電体層との界面の表面粗さ(Ra)が大きくなったり、さらに焼成時の誘電体層と高周波用配線層との界面での反応性が高く高周波用配線層の界面部の抵抗が増大するために、高周波信号伝送損失が増大するという問題があった。
【0008】
従って、本発明は、ガラスセラミック配線基板において、微細配線化、低抵抗化が可能であるとともに、MICやMMICなどの高周波素子を実装した場合でも高周波帯において伝送損失が小さく、効率よく作動させる高周波用配線基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記のような課題について鋭意検討した結果、ガラスセラミック配線基板において、金属箔からなる配線回路パターンをセラミックグリーンシート表面に転写し同時焼成して、高周波用配線層と誘電体基板との界面の表面粗さを小さく、かつ界面での反応性を小さくすることによって、微細配線化、低抵抗化が可能であるとともに、高周波信号の伝送損失が低減できることを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の高周波用配線基板は、ガラスセラミックからなる誘電体基板の表面および/または内部に金属箔からなる高周波用配線層を同時焼成してなる高周波用配線基板であって、少なくとも一部の高周波用配線層が金属含有量が99重量%以上の高純度金属からなるとともに、前記誘電体基板との界面における表面粗さ(Ra)が0.3μm以下であり、かつ、前記誘電体基板と高周波用配線層との界面に厚みが10μm以下の反応層を具備することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記高周波用配線層が、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路およびトリプレート線路から選ばれる1種を具備すること、前記高周波用配線層がCu、Ag、Au、Pt、Pdから選ばれる少なくとも種以上であることが望ましい。
【0012】
また、本発明の高周波用配線基板の製造方法は、(a)転写フィルムの表面に金属含有量が99重量%以上の高純度金属からなる表面粗さ(Ra)が0.3μm以下の高周波用配線パターンに形成された高周波配線層を作製する工程と、(b)ガラスセラミック組成物によってグリーンシートを成形する工程と、(c)(b)工程によって得られたグリーンシートの表面に(a)工程によって得られた転写フィルムの高周波用配線層形成面を積層圧着して前記高周波用配線パターンを前記グリーンシート表面の所定の位置に転写する工程と、(d)(c)工程によって得られたグリーンシートを前記高周波用配線層の融点より低い温度で焼成することを特徴とするものである。
【0013】
ここで、前記(d)工程において、誘電体基板を相対密度95%以上に緻密化すること、前記(d)工程の焼成によるX−Y方向の収縮率が10%以下であることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高周波用配線基板の一例について、その概略断面図である図1に基づいて説明する。
【0015】
図1の高周波用配線基板1によれば、誘電体基板2は、複数のガラスセラミック誘電体層2a〜2dを積層してなる積層体から構成され、その誘電体層2a〜2d間および誘電体基板2表面には、厚みが3〜20μm程度の金属成分の含有量が99%以上の高純度金属箔からなる高周波用配線層3が被着形成されている。さらに、誘電体基板の誘電体層2a〜2dには厚み方向を貫くように直径が80〜200μmのビアホール導体4が形成され、高周波用配線層3とビアホール導体4とにより、所定回路が形成されている。
【0016】
誘電体基板2は、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等のホウケイ酸系ガラスやリチウム珪酸系ガラス等のガラス成分と、無機質フィラーとを含有するいわゆるガラスセラミックスからなる。
【0017】
ガラスセラミックスのガラス成分は、複数の金属酸化物を含むガラスフリットであり、磁器中には、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、スラウソナイト、ディオプサイドやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種が析出することが望ましく、誘電体基板2の誘電損失を小さくするためには、クォーツ、コージェライト、ムライト、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、スラウソナイト、ディオプサイド等の高周波領域で低損失な結晶相が析出することが望ましく、誘電損失を増大させる鉛等を含有しないことが望ましい。
【0018】
また、誘電体基板2の熱膨張係数を高め、高周波用配線層との熱膨張係数差を小さくする上では、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、ガーナイト等の熱膨張係数の大きい結晶相が析出することが望ましい。
【0019】
また、無機質フィラー成分としては、クォーツ、クリストバライト、トリジマイト、非晶質SiO2 、アルミナ、ムライト、コージライト、フォルステライト、ZnO、TiO2 等が使用可能であるが、誘電体基板2の誘電損失を小さくするためにはクォーツ、非晶質SiO2 、アルミナ、ムライト、コージライト、フォルステライト等の高周波領域で低損失な結晶相が析出することが望ましい。さらに、誘電体基板2の熱膨張係数を高める上でSiO2 結晶相であるクォーツ、クリストバライト、トリジマイトが、 中でもクォーツ結晶相(熱膨張係数17.5ppm/℃)が析出することが望ましい。
【0020】
また、本発明によれば、誘電体基板2と高周波用配線層3との界面の表面粗さを小さくすることによって高周波信号の伝送特性を高めることができる。すなわち、高周波信号は誘電体基板2と高周波用配線層3との界面に最も電界および磁界が集中するために、この界面の表面粗さが大きくなると信号の伝送行路が長くなり、抵抗が大きくなることから信号の伝送損失が増大するためである。高周波信号の伝送特性を高める上では、誘電体基板2と高周波用配線層3との界面の表面粗さ(Ra)を0.3μm以下、特に0.2μm以下とする必要がある。また、表面粗さ(Ra)を上記範囲とするためには、表面粗さ(Rmax)を20μm以下、特に10μm以下とすることが望ましい。また、誘電体基板2と導体配線層3との界面の表面粗さ(Ra)を0.3μm以下および表面粗さ(Rmax)20μm以下とするためには、無機質フィラーの平均粒径は5μm以下であることが望ましく、誘電体基板2の相対密度が95%以上、特に98%以上であることが望ましい。
【0021】
高周波用配線層3は、金属含有量99重量%以上の高純度な金属導体からなり、特にCu、Ag、Au、Pt、Pd又はそれらの混合物からなることが望ましく、さらに、高周波用配線層3の微細配線化および低抵抗化の点で金属箔からなることが望ましい。また、該金属箔は焼成によって粒成長していてもよい。
【0022】
また、高周波用配線層3中には、高周波信号を効率よく伝送するために高周波用伝送線路は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路およびトリプレート線路から選ばれる1種が存在することが望ましい。
【0023】
なお、高周波用配線層3中には、低周波信号伝送線路、電源供給用線路、キャパシタ、抵抗体、インダクタ等が形成されていてもよく、また、金属含有量が99%より低い導体からなる回路層が形成されていてもよい。
【0024】
さらに、誘電体基板2と高周波用配線層3との界面の反応層の厚みを10μm以下に制御することにより、導体配線層3の界面の抵抗値が増大することなく高周波信号の良好な伝送が可能となる。
【0025】
すなわち、誘電体基板2は、高周波用配線層3との反応性が低い成分、例えばSi、Mg等を含有し、反応性が高いPb、Ti、Li、Na、K等を含まないことが望ましい。
【0026】
ここで、本発明における界面の反応層の厚みは配線基板の断面における電子線プローブマイクロアナリシス(EPMA)分析によって測定される誘電体基板の成分と導体配線層の成分が混在した領域の厚みを指す。
【0027】
上記構成からなる高周波用配線層3は、誘電体基板2との界面の界面導電率が0.3×108 Ω-1・m-1以上、特に0.35×108 Ω-1・m-1以上となり、高周波信号の伝送損失を低減することができる。
【0028】
また、本発明の高周波用配線基板は、30GHz以上、特に50GHz以上の高周波信号を伝送する場合に特に有効であり、50〜110GHzでの伝送特性(S21)が1.5dB/cm以下、特に1.0dB/cm以下であることが望ましい。
【0029】
また、ビアホール導体4は、上記の高周波用配線層3と類似の成分からなることが望ましく、金属粉末が焼結したものからなる。
【0030】
また、配線基板2表面には、ICチップなどの電子部品6との接続用配線、電子部品6実装用のパッド、シールド用導体膜が、また、裏面には外部回路と接続する端子電極が形成され、電子部品6が高周波用配線層5に半田や導電性接着剤などを介して接合される。なお、図示していないが、必要に応じて、配線基板2の表面には、さらに珪化タンタル、珪化モリブデンなどの厚膜抵抗体膜やエポキシ樹脂などの配線保護膜などを形成しても構わない。
【0031】
なお、本発明の多層配線基板は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱硬化樹脂にガラス等のフィラー成分を添加した基体の表面にCu、Au、Al、Ni、Pb−Sn等の金属を含む導体層を被着形成した外部回路基板の導体層上に半田ボール等を介して実装することができる。
【0032】
次に、本発明の配線基板を作製する方法について説明する。まず、上述したような結晶化ガラスおよび平均粒径3μm以下の無機質フィラーを混合して有機バインダ等を加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などの公知の成形方法によりシート状に成形してグリーンシートを作製する。
【0033】
次に、このグリーンシートにレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径80〜200μmのビアホールを形成し、その内部に導体ペーストを充填する。なお、導体ペーストは、高周波用配線層と類似の金属粉末に、アクリル樹脂等の有機バインダと、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶剤とを添加、混合して適当な粘度に調製されたものである。有機バインダは金属成分100重量部に対して0.5〜5.0重量部、有機溶剤は固形成分及び有機バインダ100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることが望ましい。なお、この導体ペースト中には若干のガラス成分等を添加してもよい。
【0034】
一方、高周波用配線パターンの形成方法は、高分子フィルム上に上述した金属成分からなる厚み3〜20μmの高純度金属箔を接着し、この金属層の表面にレジストを回路パターン状に塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行って高周波用配線層を形成される方法が好適に用いられる。この方法によれば、配線の切れやダレがなく微細加工が可能であることから配線幅50μm以下、配線間の距離50μm以下の微細配線を形成することができる。
【0035】
なお、誘電体基板と高周波用配線層との界面の表面粗さ(Ra)を0.3μm以下とするためには、フィルム上に形成された金属箔の表面粗さ(Ra)が0.3μm以下であることが重要である。
【0036】
そして、上述したグリーンシートの表面に高純度金属箔を転写する。転写の方法としては上記の高周波用配線パターンが形成された転写フィルムの高周波用配線パターン形成面を前記ビアホール導体が形成された誘電体シートの表面に位置合わせして積層圧着して、転写シートを剥がすことにより、ビアホール導体を接続した高周波用配線層を具備する一単位の配線シートを形成することができる。その後、得られた一単位の配線層を積層圧着して積層体を形成する。
【0037】
次に、この積層体を酸化性あるいは弱酸化性雰囲気中で400〜750℃にて加熱処理してグリーンシートやビアホール導体ペースト中の有機成分を分解除去した後、酸化性雰囲気中あるいは非酸化性雰囲気中、高純度金属導体の融点よりも低い温度、望ましくは800〜1000℃、特に900〜1000℃にて同時焼成することにより、誘電体基板の相対密度を95%以上、特に98%以上に高めることができるとともに、誘電体基板と高周波用配線層との界面の反応層の厚みが10μm以下の高周波用配線層およびビアホール導体を具備する多層配線基板を作製することができる。
【0038】
ここで、焼成時、または焼成後の冷却時の誘電体基板や高周波用配線層の変形やクラック発生を抑制しつつ、高周波用配線層の絶縁基板への接着性を高める上で、上記積層体の上下面に上述のグリーンシートよりも焼成開始温度が高く1000℃以下の焼成によっても焼結しないグリーンシートや収縮しない焼結体を積層して焼成すること、あるいは積層体の積層方向で加圧しながら焼成することにより誘電体基板のX−Y方向の収縮率を10%以下とすることができ、この方法によれば、高周波用配線層の寸法精度を高めることができる。
【0039】
また、得られた多層配線基板を外部回路基板上に実装するためには、多層配線基板の裏面に形成した接続パッドに半田等を塗布して半田ボールを取着し、これを外部回路基板表面の導体層上に載置して加熱し半田ボールを加熱溶融させることによって導体層と半田ボールとを固着させ、電気的に接続することができる。
【0040】
【実施例】
(実施例)
先ず、表1に示す組成からなるガラスおよびフィラーからなる組成物にバインダを添加して所定形状に成形し、窒素中または酸素中、表1に示す温度にて焼成して直径20mm×10mmのペレットを作製した。得られた磁器についてアルキメデス法によりかさ密度を測定し、理論密度に対する比率である相対密度を算出した。また、粉末X線回折により磁器中の析出結晶相を同定した。さらに、60GHzにてネットワークアナサイザ、シンセサイズドスイーパを用いて誘電体共振器法により磁器の誘電率および誘電損失を測定した。結果は、表1に示した。
【0041】
【表1】
Figure 0003774336
【0042】
一方、表1と同じ組成物にバインダとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコールを加えてスラリーを調製し、ドクターブレード法により厚さ200〜250μmのグリーンシートを作製した。
【0043】
他方、平均粒径が2〜5μmの表2に示す高周波用配線層を形成する成分と同じ粉末と、アクリル樹脂と、該粉末に対してフィラーとして0.5重量%のアルミナと、DBPと、アセトンを添加して3本ロールにより混練し、ビアホール導体用ペーストを作製した。
【0044】
そして、レーザーまたはパンチングによって、上記グリーンシートの所定箇所に直径100μmのビアホールを形成し、スクリーン印刷法によってそのビアホール内に先のビアホール導体用ペーストを充填した。
【0045】
次に、PETフィルム表面に純度99.8%の高純度の表2に示す成分からなる金属箔を接着し、感光性レジスト形成、露光、現像、エッチング処理、レジスト除去によって表2に示す配線幅および配線間距離の複数本の高周波用配線層を形成した。そして、ビアホールが形成されたグリーンシートにビアホールの位置合わせを行いながら転写シートを積層し、60℃、200kgf/cm2 で熱圧着した。その後、転写フィルムのみを剥がすことにより、ビアホール導体を接続した高周波用配線層を具備する一単位の配線シートを形成した。さらに、この任意の一単位の配線シートを6枚積層し、積層体を形成した。
【0046】
次いで、この未焼成状態の積層体に対し、有機バインダ等の有機成分を分解除去するために、窒素中または大気中、750℃で1時間の加熱処理を施した後、大気または窒素雰囲気中、900℃、200kgf/cm2 で積層方向からの一軸加圧焼成を1時間行い、配線基板を作製した。
【0047】
得られた幅0.2mm、長さ30mmのマイクロストリップ線路からなる高周波用配線層を含む配線基板について、50〜110GHzでの伝送特性の評価として透過損失であるS21をネットワークアナライザで測定した。また、配線基板の断面の誘電体基板と導体配線層との界面部についてEPMA(電子線プローブマイクロアナライザ)分析を行い、誘電体基板を構成する成分と高周波用配線層を構成する成分とが混在する領域の厚みを測定し、反応層の厚みとして表2に示した。また、断面についてSEMおよびBEM写真から高周波用配線層の誘電体基板との界面の表面粗さ(Ra)および表面粗さ(Rmax)を測定し、表2に示した。
【0048】
また、上記の各種誘電体基板の表面に上記と全く同様にして高周波用配線層を基板内部全面にわたって形成し、この高周波用配線層と誘電体基板との界面導電率を測定した。なお、評価用基板は、高周波用配線層厚み0.01mmとし、その上下の誘電体基板厚みを0.2mmとした。この界面導電率の測定は、以下に示す誘電体円柱共振器法にて測定した。
【0049】
この誘電体円柱共振器法を利用した界面導電率の測定方法は、比誘電率、誘電正接が既知の誘電体材料からなる誘電体円柱の両端面または一方の端面に、上記導体層が内部に形成された誘電体基板を所定の関係になるように取り付けて誘電体共振器を形成することにより、金属層と誘電体基板との界面、すなわち金属層界面での導電率を測定する方法である。
【0050】
この測定方法の原理は、所定の寸法比(高さt/直径d)を有する誘電体円柱の両端面に、縁端効果が無視できる程度に充分大きな導体板(通常は、誘電体円柱の直径dの3倍程度の直径Dを有する導体板)を平行に設けて挟持した電磁界共振器を構成した場合、TEomn 共振モードによって導体板に流れる高周波電流は短絡面、即ち、誘電体と導体との界面だけに分布していることによるものである。
【0051】
より具体的には、図2に示すように、C軸に垂直な端面を持つサファイア(直径d=10.000mm、高さt=5.004mm)の誘電体円柱20の両端面に、上記のようにして作成された内部に導体層21が形成された誘電体基板22を配設して、誘電体円柱を両端から挟持して誘電体共振器23を構成する。誘電体共振器23においては、TEomn モード(m=1,2,3・・・、n=1,2,3,・・・)によって導体層21に流れる高周波電流は、導体層21と誘電体円柱20と接する誘電体基板22の界面だけに分布することを利用して、測定されたTEomn モード(m=1,2,3・・・、n=1,2,3,・・・)の共振周波数f0 と無負荷Q、Qu から下記数1の(1)式によって界面導電率σint を算出することができる。
【0052】
【数1】
Figure 0003774336
【0053】
但し、A、B1 、B2 は下記数2の(2)(3)(4)式により計算する。
【0054】
【数2】
Figure 0003774336
【0055】
ここで、(1)式のtanδとtanδはそれぞれ誘電体円柱20と誘電体基板22の誘電正接、μは導体層21の透磁率、ωは2πf、∬|H|dSは上下の金属層界面での磁界の積分、Wは共振器の電界エネルギー、Wd1eとWd2e は誘電体円柱20内と誘電体基板22のうち、誘電体円柱20と接する側内の電界エネルギーである。なお、W、Wd1 、Wd2 の計算に必要な誘電体円柱20のε、tanδはJIS−R−1627「マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法」に開示された誘電体円柱共振器法により、誘電体基板22の比誘電率ε´とtanδは小林、佐藤らの「信学技MW87−7」「誘電体平板材料のマイクロ波複素誘電率測定」(1987年)に開示された空洞共振器法などの周知の方法によって測定することができる。このようにして測定された界面導電率を中心導体の界面導電率として表1に示した。なお、この評価用基板における導体層の両界面の界面導電率が実質上同一であることを確認した。
【0056】
比較のため、導体の形成方法を金属箔の転写に代えて、平均粒径5μmのCu粉末にフィラーとしてアルミナを0.5重量%と、アクリル樹脂を2重量%とDBPとアセトンを加え、3本ロールにて混練したペーストを用いてスクリーン印刷法で配線パターンに印刷する以外は実施例と全く同様にして配線基板を作製し、同様に評価した。結果は表2に示した。
【0057】
【表2】
Figure 0003774336
【0058】
表2より、誘電体基板のガラスの含有量が低い試料No.1、11およびアルカリガラス、ホウケイ酸鉛ガラスを用いた試料No.15,16では、誘電体基板と高周波用配線層との界面の表面粗さ(Ra)が0.3μmより大きく、高周波信号の伝送損失が大きくなった。
【0059】
また、高周波用配線層を形成する金属箔の表面粗さ(Ra)が大きい試料No.20では、誘電体基板と高周波用配線層との界面の表面粗さ(Ra)が0.3μmより大きくなり、高周波信号の伝送損失が大きくなった。
【0060】
さらに、Cuペーストを用いて高周波用配線層を形成した試料No.22では、線幅0.05mmの配線を形成することができず、また、試料No.23では、誘電体基板と高周波用配線層との反応性が高く表面粗さ(Ra)が0.3μmを超え、透過損失の大きいものであった。
【0061】
これに対して、本発明に基づく試料では、いずれも誘電体基板と高周波用配線層との界面の表面粗さ(Ra)が0.3μm以下で透過損失の小さいものであった。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、ガラスセラミックからなる誘電体基板と、金属含有量が99重量%以上の高純度金属からなる高周波用配線層とが同時焼成により形成されてなる配線基板であることから、微細配線化および導体の低抵抗化が可能となる。また、誘電体基板と高周波用配線層との界面の表面粗さを小さくでき、さらに界面での反応性を低めることができることから、高周波信号の伝送損失を低減した高周波用配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波用配線基板を説明するための概略断面図である。
【図2】界面導電率の評価方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 高周波用配線基板
2 誘電体基板
3 高周波用配線層
4 ビアホール導体
5 高周波伝送線路
6 電子部品

Claims (8)

  1. ガラスセラミックからなる誘電体基板の表面および/または内部に金属箔からなる高周波用配線層を同時焼成してなる高周波用配線基板において、少なくとも一部の高周波用配線層が金属含有量が99重量%以上の高純度金属からなるとともに、前記誘電体基板との界面における表面粗さ(Ra)が0.3μm以下であり、かつ、前記誘電体基板と前記高周波用配線層との界面に厚みが10μm以下の反応層を具備することを特徴とする高周波用配線基板。
  2. 前記誘電体基板は、SiおよびMgの少なくとも一方を含有し、Pb、Ti、Li、NaおよびKを含まないことを特徴とする請求項1記載の高周波用配線基板。
  3. 前記高周波用配線層が、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路およびトリプレート線路から選ばれる1種を具備することを特徴する請求項1または2記載の高周波用配線基板。
  4. 前記高周波用配線層がCu、Ag、Au、Pt、Pdから選ばれる少なくとも種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の高周波用配線基板。
  5. (a)転写フィルムの表面に金属成分の含有量が99重量%以上の高純度金属からなる表面粗さ(Ra)が0.3μm以下の高周波用配線パターンに形成された高周波配線層を作製する工程と、(b)ガラスセラミック組成物によってグリーンシートを成形する工程と、(c)(b)工程によって得られたグリーンシートの表面に(a)工程によって得られた転写フィルムの高周波配線層形成面を積層圧着して前記高周波用配線を前記グリーンシート表面の所定の位置に転写する工程と、(d)(c)工程によって得られたグリーンシートを前記高周波用配線層の融点より低い温度で焼成することを特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
  6. 前記ガラスセラミック組成物は、SiおよびMgの少なくとも一方を含有し、Pb、Ti、Li、NaおよびKを含まないことを特徴とする請求項5記載の高周波用配線基板の製造方法。
  7. 前記(d)工程において、誘電体基板を相対密度95%以上に緻密化することを特徴とする請求項5または6記載の高周波用配線基板の製造方法。
  8. 前記(d)工程の焼成によるX−Y方向の収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の高周波用配線基板の製造方法。
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