JP3658319B2 - 汚染地盤の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油類で汚染された地盤を効率的に浄化できる汚染地盤の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、石油系炭化水素などの油類で汚染された地盤中の汚染層を浄化する方法として、土壌中に普遍的に存在する土壌微生物の炭化水素分解作用を利用したバイオレメディエーション技術が知られている。また、難水溶性有機物で汚染された土壌を水を入れた分離槽に投入して混合する混合工程と、アルカリ剤を分離槽に供給する工程と、気泡を分離槽へ供給して難水溶性有機物を水面まで浮上させる浮上工程、とを有する土壌浄化工法が開示されている(特開平9−299924号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バイオレメディエーション技術は、有用な技術としてそれなりの効果を奏してはいるものの、土壌微生物が汚染土壌に均等に分布されているとは言い難く、高濃度汚染土の処理が困難であり、また、修復に長期間を必要とする。また、難水溶性有機物で汚染された土壌、水及びアルカリ剤を分離槽で混合して浄化する方法は、原位置の汚染土壌を浄化するものではなく、プラント設備などにコストが嵩む。原位置の汚染土壌を浄化するものとして、油分で汚染された土壌を水等との混合状態において気泡の吹き込み等により、油の疎水的性質を利用して浮遊泡沫と共に浮上分離させる土壌の洗浄方法も知られている。しかし、油分で汚染された土壌と水との混合のみでは、いくら空気の吹き込みを行ったとしても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分までは十分に除去されず、洗浄が不十分である、という問題がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、原位置の汚染土壌を浄化するものであって、油分が高濃度であっても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分であっても分離除去が可能な汚染地盤の浄化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、従来のいわゆる粉体あるいはスラリー状の改良材による地盤を改良する深層混合処理工法で使用する施工装置を利用して、該施工装置を汚染層の所定の深度まで貫入する際、界面活性材などの洗浄材を投入する洗浄材混合工程と、次いで、下方の開口から水を吐出し、該攪拌軸の回転又は上下移動により混合攪拌を行い油類を地盤表面に浮上させる洗浄工程とを行えば、油分が高濃度であっても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分であっても分離除去が可能であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明(1)は、下方の開口から水又は洗浄材などの流体を噴射する攪拌軸の下部に複数の攪拌翼を設けた施工装置を、油類で汚染された汚染層が存在する地盤中に貫入し、該貫入は前記下方の開口から洗浄材を地盤中に投入しつつ行う洗浄材混合工程と、前記下方の開口から水を吐出し、該攪拌軸の回転又は上下移動により混合攪拌を行い油類を地盤表面に浮上させる洗浄工程と、を行うことを特徴とする汚染地盤の浄化方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、洗浄材混合工程においては、界面活性材等の洗浄材が粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分に作用し、乳化、分散、不溶性の油を溶解できる可溶化などの機能を発現して、粗粒子から油分を除去する。次いで、洗浄工程では、乳化、分散、可溶化された油分を水の投入と攪拌により地盤表面に浮上させるから、油分が高濃度であっても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分であっても汚染層から完全に分離除去される。
【0007】
また、本発明(2)は、前記洗浄工程後、前記攪拌軸の下方の開口からの水の吐出を停止し、該攪拌翼の上方に設けた開口からセメントミルクを吐出しつつ攪拌軸を引き上げる固化処理杭造成工程を更に設けることを特徴とする前記(1)記載の汚染地盤の浄化方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、洗浄工程終了後の攪拌軸を引き上げる際、洗浄が完了した緩い地盤に固化杭を形成できるため、地上構造物を造成するなどの将来の跡地利用に対応できる。
【0008】
また、本発明(3)は、前記洗浄工程後、前記攪拌軸の下方の開口からの水の吐出を停止し、混合攪拌される土壌中に微生物の栄養源を投入しつつ攪拌軸を引き上げる微生物の栄養源投入工程を更に設けることを特徴とする前記(1)記載の汚染地盤の浄化方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、洗浄工程終了後、バイオレメディエーション技術を適用すれば、更に、汚染層は浄化される。
【0009】
また、本発明(4)は、前記洗浄工程において、混合攪拌される土壌中に気泡を導入して油類の地盤表面への浮上を促進させる前記(1)〜(3)に記載の汚染地盤の浄化方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、洗浄工程における乳化、分散、可溶化された油分の地表面への浮上を更に促進させることができる、洗浄効率の向上及び工期の短縮化が図れる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態例における汚染地盤の浄化方法について、図1を参照して説明する。図1(A)〜(H)は本実施の形態例における汚染地盤の浄化方法を説明する図を示す。本例の汚染地盤の浄化方法は、石油系炭化水素などの油分で汚染された地盤について、ボーリングを行い、汚染物質や汚染の程度などの汚染状況を把握することで始められる。先ず、施工装置1は油分で汚染された地盤上の地表面にセットされ、次いで、油分などで汚染された汚染層Bが存在する地盤中の所定の深度B1まで貫入される(図1(A))。
【0011】
施工装置1は、回転駆動機(不図示)に昇降自在、且つ回転自在に吊り下げられ、下方に複数の攪拌翼3を備え、先端の開口6から水及び洗浄材などを排出するパイプ状の攪拌軸2を有するものである。攪拌軸2には更に、上方の攪拌翼3の真上にセメントミルクなどの固化材を投入する固化材投入口4とを有し、先端の開口6は攪拌軸2内に配設される水又は洗浄材投入配管を通じて、地上の洗浄材供給手段(不図示)及び洗浄水供給手段(不図示)に連結され、これらの供給手段は施工工程に対応して切り換えることができる。固化材投入口4は攪拌軸2内に配設される固化材投入配管を通じて、地上の固化材供給手段(不図示)に連結されている。また、施工装置1は攪拌軸2が2本の2軸型も使用できる。なお、固化材投入口4は、攪拌軸2の周面に形成され、開口が横向きで、1枚の攪拌翼3内において、上部が覆われて付設されている場合もある。
【0012】
本発明の汚染土壌の洗浄方法において、洗浄材混合工程は、施工装置1を汚染層Bが存在する地盤中の所定の深度B1まで貫入し、この貫入の際、先端の開口6から洗浄材7を地盤中に投入しつつ行う(図1(B))。なお、先端の開口6は、攪拌軸2の先端部に下向きに形成されている他、地盤の硬さによっては、攪拌軸2の周面に形成され、開口が横向きで、1枚の攪拌翼3内にその上方が覆われるように付設されている場合もある。なお、図1(B)は、攪拌軸2の先端の開口6を用いて、洗浄材7を投入している。
【0013】
洗浄材7としては、油分に作用し、吸着、分解あるいは不溶性の油を溶解できるミセルを形成できるものであればよく、石鹸類、界面活性材、アルカリ材などのビルダー、酵素、アルカリ分を含む灰汁などが挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。酵素は、界面活性材と組み合わせて使用することが、酵素の生化学的作用により分解された油分に界面活性材が効果的に作用し除去できる点で好適である。
【0014】
洗浄材混合工程において、油分で汚染された汚染土壌5は攪拌翼3で攪拌され、且つ洗浄材7と十分に混合される。このため、界面活性材等の洗浄材は粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分に作用し、乳化、分散、可溶化などの機能を発現して、粗粒子から油分を除去する。また、洗浄材混合工程における攪拌軸2の貫入は、汚染の度合い、洗浄材の洗浄力等を考慮し、更に、地中貫入の際、貫入障害が発生した場合、その障害物を排除する目的などで、攪拌軸2の先端の開口6から水を噴射しつつ行ってもよい。
【0015】
施工装置1を地盤中の所定の深度B1まで貫入したら洗浄工程に入る(図1(C))。洗浄工程は、地上の供給手段を洗浄材から水に切替え、攪拌軸2の先端の開口6から水を吐出し、攪拌軸2の回転又は上下移動により回転翼域内にある汚染土壌5を混合攪拌し、洗浄材混合工程において乳化、分散、可溶化などで粗粒子から除去された油類を地盤表面に浮上させる工程である。
【0016】
洗浄工程における水の吐出は、連続的又は断続的に行われる。また、この水には、アルカリ材として作用するケイ酸ナトリウムを含んでいてもよい。攪拌軸2の回転方向は、特に制限されず、右回転、左回転のいずれでもよい。2軸型施工装置の場合、攪拌軸2の回転方向を互いに逆回転させると、攪拌軸間の攪拌混合土5に対流を発生させることができ、混合効率が向上する点で好適である。また、攪拌軸2の上下移動は、攪拌軸の回転を伴っていても、伴っていなくともよい(図1(D))。更に、この洗浄工程においては、混合攪拌される土壌5中に気泡を導入して気泡連行により油類の地盤表面への浮上を促進させることもできる。気泡の導入は、先端の開口6を利用し、洗浄材に代えて空気を送るようにしてもよく、また、別途の空気吹き込み管を地盤中に導入する方法であってもよい(図1(E))。
【0017】
本発明の洗浄工程においては、洗浄材混合工程で乳化、分散、可溶化された油分を水の投入と十分な攪拌により地盤表面に浮上させるから、油分が高濃度であっても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分であっても汚染土壌5から完全に分離除去できる。また、地表面にピットを付設すれば、地表面に浮上した油分、水及び乳化物を公知の手段で回収したり、廃棄処分などが容易に行える点で好適である。回収された水は、当該洗浄工程の吐出水として利用することができる。
【0018】
本発明の汚染地盤の洗浄方法は、洗浄工程の後、任意の工程として、固化処理杭造成工程又はバイオレメディエーション処理を行うことができる。固化処理杭造成工法は、公知の方法が適用され、攪拌軸2の先端の開口6からの水の吐出を停止し、上方の攪拌翼3の真上に設けた開口4からセメントミルクなどの固化材8を吐出しつつ、攪拌軸2を回転させながら引き上げることで行われる(図1(F)〜(H))。固化処理杭造成工程を行うことにより、洗浄工程終了後の攪拌軸を引き上げる際、洗浄が完了した緩い地盤に固化杭9を造成できるため、地上構造物を造成するなどの将来の跡地利用に対応できる。
【0019】
また、バイオレメディエーション処理は公知の方法が適用できる。すなわち、洗浄工程後、必要に応じて行われる脱水工程で水分量が調整された洗浄土壌51に対して、窒素、カリウム及びリン酸等の無機塩類の水溶液が栄養源として投入される。これらの栄養源は洗浄土壌の性質に応じて、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用される。更に、洗浄土壌によってはpHの調整、必要に応じて、固化材投入口4より空気を吐出させることで通気性の改善等を行う。
【0020】
【発明の効果】
本発明(1)によれば、洗浄材混合工程においては、界面活性材等の洗浄材が粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分に作用し、乳化、分散、可溶化などの機能を発現して、粗粒子から油分を除去する。次いで、洗浄工程では、乳化、分散、可溶化された油分を水の投入と攪拌により地盤表面に浮上させるから、油分が高濃度であっても、粗粒子の表面凹凸に入り込んだ油分であっても汚染層から完全に分離除去される。
また、本発明(2)によれば、洗浄工程終了後の攪拌軸を引き上げる際、洗浄が完了した緩い地盤に固化杭を形成できるため、地上構造物を造成するなどの将来の跡地利用に対応できる。
また、本発明(3)によれば、洗浄工程終了後、バイオレメディエーション技術を適用すれば、更に、汚染層は浄化される。
また、本発明(4)によれば、洗浄工程における乳化、分散、可溶化された油分の地表面への浮上を更に促進させることができる、洗浄効率の向上及び工期の短縮化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(H)は本実施の形態における汚染地盤の浄化方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 施工装置
2 攪拌軸
3 攪拌翼
4 固化材投入口
5 汚染土壌
6 先端の開口
7 洗浄材
8 固化材
9 固化杭
51 洗浄土壌
Claims (4)
- 下方の開口から水又は洗浄材などの流体を噴射する攪拌軸の下部に複数の攪拌翼を設けた施工装置を、油類で汚染された汚染層が存在する地盤中に貫入し、該貫入は前記下方の開口から洗浄材を地盤中に投入しつつ行う洗浄材混合工程と、前記下方の開口から水を吐出し、該攪拌軸の回転又は上下移動により混合攪拌を行い油類を地盤表面に浮上させる洗浄工程と、を行うことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
- 前記洗浄工程後、前記攪拌軸の下方の開口からの水の吐出を停止し、該攪拌翼の上方に設けた開口からセメントミルクを吐出しつつ攪拌軸を引き上げる固化処理杭造成工程を更に設けることを特徴とする請求項1記載の汚染地盤の浄化方法。
- 前記洗浄工程後、前記攪拌軸の下方の開口からの水の吐出を停止し、混合攪拌される土壌中に微生物の栄養源を投入しつつ攪拌軸を引き上げる微生物の栄養源投入工程を更に設けることを特徴とする請求項1記載の汚染地盤の浄化方法。
- 前記洗浄工程において、混合攪拌される土壌中に気泡を導入して油類の地盤表面への浮上を促進させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚染地盤の浄化方法。
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