JP3651545B2 - 金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂 - Google Patents

金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属粉体を樹脂に配合した金属粉体複合成形品[例えば、プラスチックマグネット(ボンド磁石)など]を成形する際にバインダーとして用いられるポリアミド樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックマグネットなどの金属粉体複合成形品は、金属粉体と、この金属粉体を結合するポリアミド樹脂などのバインダー樹脂とを含む金属粉体組成物を溶融混練し、射出成形、押出成形、圧縮成形などで成形することにより製造される。上記成形品を、例えば射出成形などにより製造する場合には、優れた成形性及び均質性を得るため、混練時及び成形時において高い流動性が要求される。また、金属粉体の特性(例えば、磁気特性など)は高温加工により低下しやすいため、低温であっても溶融流動性の高い樹脂が望まれる。さらに、一定の品質を有する成形品を安定に製造するためは、バインダー樹脂の成形可能温度域(成形温度幅)が広い程好ましい。また、得られた成形品は実用上十分な機械的強度を有する必要がある。
【0003】
成形時における金属粉体組成物の流動性を高めるため、ポリアミド樹脂の末端基を調整する試みがなされている。例えば、特開昭63−299207号公報および特開平1−139644号公報には、末端カルボキシル基濃度が70mg当量/kg以下のポリアミドと金属粉末とからなる組成物が開示されている。特開平5−51528号公報には、末端カルボキシル基濃度が90mg当量/kg以下、末端アミノ基濃度が40mg当量/kg以下の末端変性ポリアミド樹脂と金属粉末とからなる高比重ポリアミド樹脂が開示されている。特開平5−262978号公報には、末端カルボキシル基濃度が90mg当量/kg以下、末端アミノ基濃度が10mg当量/kg以下で、且つ相対粘度が1.50〜1.70であるポリアミド樹脂と金属粉末とからなる高比重ポリアミド樹脂が開示されている。
また、特開平7−226312号公報には、磁性粉体70〜97重量%と、平均分子量6000〜18000のポリアミド樹脂3〜30重量%とからなり、該ポリアミド樹脂末端基が末端調整されている磁性材樹脂複合材料が開示されている。この文献には、前記ポリアミド樹脂のカルボキシル基およびアミノ基の濃度は、0〜0.2mmeq/gの範囲にあることが望ましいと記載されている。特開平9−71721号公報には、カルボキシル基濃度92〜120ミリ当量/kg、相対粘度2.3以下のポリアミドと磁性粉末とからなるプラスチックマグネット組成物が開示されている。
【0004】
しかし、上記組成物においても、工業的な生産性の観点からみて成形条件が狭く、安定な品質が得られなかったり、成形品の機械強度が不十分であったり、あるいは加工時の流動安定性がさほど高くなく、工業製品として満足のいくものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、金属粉体との複合成形品を作成するに際し、広い成形条件(成形温度幅)で成形できると共に、高い機械的強度を有する成形品を得ることのできる金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂を提供することにある。 本発明の他の目的は、流動安定性が高く、金属粉体を均一に分散でき、均質な成形品を得ることのできる金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、金属粉体複合成形に用いられるポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度と分子量分布とを特定の範囲に設定すると、機械強度特性に優れた複合成形品が得られると共に、広い成形条件下で安定した生産ができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が0〜10mg当量/kgであって、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が2.8以上であり、かつ相対粘度が1.2〜1.45である
このポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は0〜250mg当量/kg程度である。ポリアミド樹脂には、ナイロン11又はナイロン12の構成単位を含むナイロンホモポリマー又はナイロンコポリマーなどが含まれる。
【0007】
【発明の実施の形態】
[ポリアミド樹脂]
本発明の金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合を有する重合体であれば、ジアミンと二塩基酸との重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合などの何れの方法によって製造されたものでもよい。前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1212など、及びこれらの重合体の構成モノマーの共重合体などが挙げられる。好ましいポリアミド樹脂には、ナイロン11又はナイロン12の構成単位を含むナイロンホモポリマー又はナイロンコポリマーなどが含まれる。このようなポリアミド樹脂として、ナイロン11;ナイロン12;及び11−ω−アミノウンデカン酸、12−ω−アミノドデカン酸、ラウリンラクタムなどを構成単量体として含むナイロンコポリマーなどが挙げられる。特に、ナイロン12は、吸湿性が小さく、寸法安定性に優れている点で好ましい。上記の樹脂は単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0008】
本発明のポリアミド樹脂の第1の特徴は、末端アミノ基濃度が0〜10mg当量/kgである点にある。末端アミノ基濃度は、好ましくは0〜8mg当量/kg、さらに好ましくは0〜6mg当量/kg(特に、0〜4.5mg当量/kg)程度である。末端アミノ基濃度が高いと、加熱時に架橋反応が進行するためか溶融混合物の粘度が増大しやすい。溶融混合物の粘度が高いと、成形性が低下し、安定した成形ができない。また、プラスチックマグネット用に用いる場合には、溶融混練物を着磁する際、磁性体の配向性が低下し、磁気特性が悪化して、均質で強い磁力を有するプラスチックマグネットを得ることが困難となることもある。したがって、末端アミノ基濃度は低い程好ましい。
本発明のポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は、溶融時の流動性を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば0〜250mg当量/kg(10〜250mg当量/kg程度)、好ましくは0〜240mg当量/kg(60〜240mg当量/kg程度)、さらに好ましくは0〜230mg当量/kg(95〜230mg当量/kg程度)程度である。ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度が高すぎると、金属粉体との相互作用が強固になりすぎるためか、成形時に溶融混合物の粘度が上昇しやすい。
ポリアミド樹脂における末端カルボキシル基の個数は、1分子当たりの平均個数として、例えば0〜1.5個、好ましくは0〜1.25個、さらに好ましくは0〜1.1個程度である。分子の両末端が、ほとんどアミノ基やカルボキシル基で占められているポリアミド樹脂では、溶融混合物の流動性が低い。
ポリアミド樹脂における末端アミノ基と末端カルボキシル基の比率(末端アミノ基/末端カルボキシル基)は、例えば0〜5程度、好ましくは0〜1程度、さらに好ましくは0〜0.2程度であり、0〜0.1程度(例えば、0〜0.08程度)である場合が多い。ポリアミド樹脂の末端は、カルボキシル基及びアミノ基以外は、アルキル基であるのが好ましい。
【0009】
ポリアミド樹脂の末端調整は、慣用の方法、例えば、末端調整剤の存在下でモノマーを重合させたり、重合して得られたポリアミド樹脂と末端調整剤とを加熱して反応させることにより行うことができる。ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基及びアミノ基の濃度は、末端調整剤の種類及び使用量を選択することにより調整できる。なお、ポリアミド樹脂の末端調整は、分子量分布の調整と併せて行うことができる点で、モノマーの重合時に行うのが好ましい。前記末端調整剤として、例えば、カルボン酸、アミン、ラクトンなどを使用できる。ポリアミド樹脂の末端アミノ基は、例えばカルボン酸又はラクトンにより封止でき、末端カルボキシル基は、例えばアミンにより封止できる。
【0010】
上記カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)などの飽和脂肪族モノカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;乳酸などのヒドロキシカルボン酸などが例示できる。好ましいカルボン酸には、モノカルボン酸、特に、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸などのC5-20飽和脂肪族モノカルボン酸及び安息香酸などの芳香族モノカルボン酸などが含まれる。
【0011】
前記アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミンなどの脂肪族モノアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;アニリン、トルイジンなどの芳香族モノアミン;フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;シクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;1,4−シクロヘキシルジアミンなどの脂環式ジアミン;エタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。前記ラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0012】
末端調整剤として、沸点が180℃以上、特に200℃以上であり、熱分解温度が200℃以上、特に250℃以上の化合物が好ましい。末端調整剤は、単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0013】
ポリアミド樹脂の平均分子量は、金属粉体複合成形品の成形時の溶融混合物の流動特性及び成形品の機械的特性を損なわない範囲で選択できる。例えば、ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば6000〜18000、好ましくは6500〜16000、さらに好ましくは7000〜13000であり、9000〜11000程度である場合が多い。また、ポリアミド樹脂の相対粘度で言えば、例えば1.2〜1.5(例えば1.22〜1.48)程度、好ましくは1.23〜1.45程度、さらに好ましくは1.25〜1.42程度である。ポリアミド樹脂の平均分子量及び相対粘度は、重合条件、例えば、重合温度、開始剤濃度、反応溶媒量等を適宜選択することにより調整できる。
ポリアミド樹脂の相対粘度が高すぎると、溶融混合物の粘度が上昇するため、低温(例えば、240℃以下)での成形が困難となる。一方、ポリアミド樹脂の相対粘度が低すぎる場合には、樹脂のみが流動して金属粉体が流動しにくくなり、分散性が低下する。そのため、プラスチックマグネットを作成する場合には、磁石としての性能が低下しやすい。また、相対粘度が低すぎると、金属粉体複合成形品の機械的強度も低下しやすい。ポリアミド樹脂の平均分子量(又は相対粘度)を上記範囲に設定することにより、金属粉体の分散性を高いレベルに維持できる。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂の第2の特徴は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が大きい点、すなわち2.8以上(例えば、2.8〜10程度)に設定されている点にある。分子量分布は、好ましくは2.8〜5程度、さらに好ましくは2.8〜4.2程度である。分子量分布は、慣用の方法、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。分子量分布を特定値以上の大きな値に設定することにより、成形品の機械的強度を保持しつつ、成形時の成形可能温度域(成形温度幅)を大幅に拡大できる。これは、比較的低分子量の樹脂が可塑剤の働きをし、比較的高分子量の樹脂が成形品に強度を付与するためと考えられる。また、分子量分布を2.8以上に設定することにより、溶融混合物が適度に流動するため、流動安定性に優れ、均質性の高い成形品を得ることができる。なお、分子量分布を2.8未満のシャープな分布にすると、成形温度幅が狭くなるだけでなく、機械的強度や溶融混合物の流動性が低下しやすくなる。なお、流動性の低下を防止するため、分子量分布を2.8未満に保持しつつ、ポリアミド樹脂の分子量を小さくしても、前記のように、樹脂のみが流動して、金属粉体が均一に分散せず、優れた特性を有する金属粉体複合成形品を得ることは困難である。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量などを選択したり、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整できる。なお、分子量分布が4.0(特に4.2)を越えるポリアミド樹脂は、通常、平均分子量の異なる複数の樹脂を混合することにより調整する。
【0015】
前記ポリアミド樹脂では、優れた特性を有する金属粉体複合成形品(例えば、プラスチックマグネットなど)を得るため、水分含有量は少ないほど好ましい。例えば、成形加工前のポリアミド樹脂中の水分含有量は、通常0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
また、特にプラスチックマグネット用に用いる場合には、優れた磁気特性を確保するため、ポリアミド樹脂中の鉄分含有量は少ないほどよく、例えば0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。ポリアミド樹脂中の鉄分含有量は、例えば鉄分含有量の少ないモノマーを使用したり、鉄分の溶出しない又は鉄分の溶出が小さい反応器を用いることにより低減できる。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が特定の範囲内にあり、しかも特定値以上の分子量分布を有するので、各種の金属粉体と溶融混練しても、トルクの上昇がほとんどなく、かつ適度な流動性が得られる。また、成形可能な温度幅が広いため、一定の品質の成形品を安定に製造できる。さらに、成形品の機械的強度を向上できる。そのため、金属粉体の有する特性(例えば、磁気特性、剛性など)を生かした金属粉体複合体成形品を成形するためのバインダーとして好適に使用できる。
【0017】
[金属粉体複合成形品の製造]
金属粉体複合成形品は、前記ポリアミド樹脂(バインダー樹脂)、金属粉体、及び必要に応じて添加剤を含む金属粉体組成物を、溶融混練する混練工程、溶融混合物を成形する成形工程を経ることにより製造できる。なお、バインダー樹脂として、成形性や成形品の特性を損なわない範囲で、前記ポリアミド樹脂とそれ以外の樹脂とを併用することもできる。
【0018】
ポリアミド樹脂の形状は、特に限定されず、ペレット状、ビーズ状、粉末状、ペースト状などの何れであってもよい。金属粉体組成物中のポリアミド樹脂の含有量は、例えば3〜40重量%程度、好ましくは3〜20重量%程度である。
【0019】
前記金属粉体を構成する金属材料は、特に限定されず、広い範囲の金属材料を使用できる。特に、プラスチックマグネットに用いる金属材料としては、例えば、希土類金属磁性体(例えば、SmCo系など)、フェライト系磁性体[例えば、MFe2 4 (MはFe又は鉄族金属を示す)で表される鉄族金属の酸化物など、及び前記酸化物の2種以上の固溶体など]が挙げられる。
【0020】
金属粉体は、ポリアミド樹脂とのぬれ性を改良し、溶融粘度を低下させるため、カップリング剤や表面改質剤であらかじめ処理してもよい。カップリング剤または表面改質剤として、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、亜リン酸エステルその他の有機リン化合物系、クロム系、メタクリレート系、アミノ酸系などの慣用のカップリング剤または表面改質剤を使用できる。中でも、ポリアミド樹脂との相溶性を高めるため、アミノ基を有する化合物が好ましい。アミノ基を有するカップリング剤または表面改質剤としては、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、γ−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン系化合物、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどのアミノ基含有チタネート系化合物などが挙げられる。
【0021】
金属粉体の粒径は、例えば0.1〜300μm、好ましくは0.1〜200μm、さらに好ましくは0.5〜180μm程度であり、1〜150μm程度である場合が多い。前記金属粉体組成物中の金属粉体の含有量は、通常50〜97重量%、好ましくは65〜95重量%、さらに好ましくは80〜95重量%程度である。本発明の前記特定のポリアミド樹脂をバインダー樹脂として用いると、金属粉体は、その量が多くても、均一に分散される。
【0022】
前記添加剤には、例えば、滑剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤などの安定剤、結晶核剤、難燃剤などが含まれる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックスなどのワックス類;ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ステアリルアルコールなどのアルコール;シリコーンオイル、シリコーングリ−スなどのポリシロキサン類;フッ素化合物;窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナなどの無機化合物の粉体などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類(ジエチルフタレート、ジブチルフタレートなど)、スルホンアミド類、オキシ安息香酸エステル類などが挙げられる。カップリング剤としては、前記金属粉体処理用のカップリング剤または表面処理剤として例示したものを使用できる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、アミン系、イオウ系、リン系の酸化防止剤などが例示される。上記添加剤は、単独でまたは2種以上混合して使用できる。金属粉体組成物中における上記添加剤の総含有量は、例えば0〜15重量%、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%程度である。
前記金属粉体組成物の溶融混練は、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロール、一軸または二軸押出機などの慣用の混練機(または混合機)を用いて行うことができる。混練温度は、金属粉体及びバインダー樹脂の種類に応じて、例えば50〜400℃程度の範囲から選択できる。金属粉体(例えば、フェライトや希土類金属磁性体)を用いてプラスチックマグネットを製造する場合には、磁力の低下を防止するため、240℃以下の温度で混練するのが好ましい。
【0023】
混練混合物は、そのまま所望する形状に成形してもよい(一段成形)が、例えば、造粒により粉粒化したり、棒状又はシート状に押し出し、適当な大きさに切断または粉砕してペレット化または粉粒化した後、成形に供してもよい(二段成形)。
プラスチックマグネットを成形する場合は、必要に応じて磁場をかけながら、射出成形、押出成形、圧縮成形などの慣用の成形手段により成形してもよい。中でも、射出成形により成形すると、表面が平滑でかつ優れた磁気特性を有するプラスチックマグネットを容易に製造できる。成形温度は、前記混練温度と同様である。
【0024】
【発明の効果】
本発明の金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂によれば、金属粉体との複合成形品を作成するに際して、広い成形条件(成形温度幅)で成形できると共に、高い機械的強度を有する成形品を得ることができる。また、金属粉体を均一に分散でき、均質で優れた特性を有する成形品を得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
ポリアミド樹脂の特性評価は以下の方法によった。なお、金属粉体として、以下の磁性粉体を、特に表面処理することなく使用した。
(a)フェライト系磁性粉体:戸田工業(株)製、MA−951
(b)サマリウム−コバルト系(Sm−Co系)磁性粉体:信越化学工業(株)製、R−30
(1)相対粘度
DIN53727の方法に準拠し、0.5重量%m−クレゾール溶液(25℃)で測定した。
(2)末端基濃度
ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基の濃度(mg当量/kg)の測定は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.01N−NaOHを用いた電位差滴定法による中和滴定によって行った。また、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度(mg当量/kg)の測定は、ポリアミド樹脂をフェノール/メタノール(体積比10/1)の混合溶媒に溶解し、0.01N−HClを用いた電位差滴定法による中和滴定によって行った。
(3)分子量分布
GPCにより得られたスチレン換算の分子量から算出した。
(4)流動特性
ポリアミド樹脂10重量部と金属粉体90重量部とのコンパウンド品の流動性を、JIS K 7210流れ試験方法に準じて測定した。すなわち、高さ1mm、直径1mmのダイを用い、荷重30kg/cm2 、温度250℃における、10分間の流動体積(ml)を測定した。
(5)成形温度幅(成形可能温度域)
ポリアミド樹脂と金属粉体とを前記割合で混練し、2軸押出機により押し出し、カッティングしてペレットを作製した。このペレットを、磁場成型機(タナベ工業(株)製、TL−50MGS)を用い、型締め圧40トンの条件下、磁場をかけながら射出成形した。成形時のバレル温度を種々変更し、成形が可能な温度範囲を求め、成形温度幅(℃)とした。
(6)機械強度
ポリアミド樹脂と金属粉体とのコンパウンド品の機械強度を、JIS K 7214に従い、剪断試験により測定した。すなわち、ポリアミド樹脂と金属粉体とを前記割合で混練した後、10mm×10mm×3mmの板状に成形し、試験速度1mm/分の条件での剪断降伏値(単位:MPa)を求めた。
【0026】
実施例1
12−ω−アミノドデカン酸1000g、触媒として水40g、及び末端調整剤としてステアリン酸22gをオートクレーブに仕込み、密閉下(圧力5kg/cm2 )、230℃で5時間撹拌して、ポリアミド樹脂を得た。
【0027】
実施例2
末端調整剤としてステアリン酸28gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0028】
実施例3
末端調整剤としてステアリン酸32gを用い、反応時間を4時間とした以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0029】
比較例1
末端調整剤としてデカン酸18gを用い、4時間重合した以外は実施例1と同様の操作を行って得られた樹脂を、60℃のメタノール中で3時間撹拌した後、同温度でガラスフィルターを用いて濾過し、濾滓(残滓)を乾燥してメタノール不溶性のポリアミド樹脂を得た。
【0030】
比較例2
末端調整剤としてデカン酸6gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0031】
実施例4
末端調整剤としてデカン酸22gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0032】
実施例5
末端調整剤としてステアリン酸34gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0033】
実施例6
末端調整剤としてデカン酸22gを用い、重合時間を6時間とした以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリアミド樹脂を得た。
【0034】
比較例3
実施例3で得られた樹脂につき、比較例1と同様の操作により、低分子量の樹脂をメタノールで抽出、除去してメタノール不溶性のポリアミド樹脂を得た。
【0035】
実施例1〜6および比較例1〜3で得られたポリアミド樹脂の相対粘度、末端カルボキシル基濃度、末端アミノ基濃度および分子量分布、並びに前記ポリアミド樹脂と金属粉体とのコンパウンド品の流動特性、成形温度幅および機械強度を測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例2では、ポリアミド樹脂と金属粉体との混練中にゲル化が起こったため、流動特性、成形温度幅および機械強度の測定はできなかった。
【0036】
【表1】
Figure 0003651545

Claims (3)

  1. 末端アミノ基濃度が0〜10mg当量/kgであって、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が2.8以上であり、かつ相対粘度が1.2〜1.45である金属粉体複合成形品用ポリアミド樹脂。
  2. 末端カルボキシル基濃度が0〜250mg当量/kgである請求項1記載のポリアミド樹脂。
  3. ナイロン11又はナイロン12の構成単位を含むナイロンホモポリマー又はナイロンコポリマーである請求項1記載のポリアミド樹脂。
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