JP6639121B2 - ポリアミド組成物、成形品、及びled用反射板 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は下記の通りである。
(A)ポリアミドと、
(B)無機充填材と、
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物0.1〜20質量%と、
を、含有し、
前記(B)無機充填材が、ウォラストナイト又はタルクであり、
前記(C)金属水酸化物が、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムであり、
前記(D)金属酸化物が、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムであり、
組成物中のFe濃度が、5〜200ppmである、ポリアミド組成物。
[2]
前記(A)ポリアミドが、270〜350℃の融点を有する、[1]に記載のポリアミド組成物。
[3]
前記(A)ポリアミドが、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から構成される(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を50モル%以上含む(a)ジカルボン酸単位を有する、[1]又は[2]に記載のポリアミド組成物。
[4]
前記(B)無機充填材が、アスペクト比が20以下のウォラスナイトを含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[5]
Ca濃度が、500〜45000ppmである、[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[6]
Mg濃度が、500〜8000ppmである、[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[7]
Caの含有量とFeの含有量との比率(Ca/Fe)が100以上である、[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[8]
(E)リン系化合物を0.1〜20質量%、さらに含有する、[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[9]
(F)酸化チタンを5質量%以上、さらに含有する、[1]乃至[8]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[10]
前記(B)無機充填材が、造核剤を含有し、
ポリアミド組成物における造核剤の含有量が0.001〜15質量%である、[1]乃至[9]のいずれかに記載のポリアミド組成物。
[11]
[1]乃至[10]のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む、成形品。
[12]
メタルハライドランプ式耐光性試験機で100℃、照度が10mW/cm2となる位置で1000時間暴露した後の反射率保持率が95%以上である、[11]に記載の成形品。
[13]
[1]乃至[11]のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む、LED用反射板。
本実施形態のポリアミド組成物(以下、単に「ポリアミド組成物」ともいう。)は、
(A)ポリアミドと、
(B)無機充填材と、
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物0.1〜20質量%と、
を、含有し、組成物中のFe濃度が5〜200ppmである。
本実施形態において用いられる(A)ポリアミドは、(a)ジカルボン酸単位と、(b)ジアミン単位と、を有する。
上記(a)ジカルボン酸単位及び(b)ジアミン単位の合計量は、(A)ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、20〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
(A)ポリアミドにおいて、上記(a)ジカルボン酸単位及び(b)ジアミン単位以外の(A)ポリアミドの構成単位としては、特に限定されないが、例えば、後述する(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位が挙げられる。
(a)ジカルボン酸単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(a−1)脂環族ジカルボン酸単位、(a−2)芳香族ジカルボン酸単位、及び(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位が挙げられる。
(a)ジカルボン酸単位は、(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を50〜100モル%含むことが好ましく(ジカルボン酸全モル数基準)、60〜100モル%含むことがより好ましく、70〜100モル%含むことがさらに好ましく、100モル%含むことがさらにより好ましい。
(a)ジカルボン酸単位中の(a−1)脂環族ジカルボン酸単位の割合(モル%)が上記範囲であることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等を同時に満足する、ポリアミド組成物を得ることができる。
前記(a−1)脂環族ジカルボン酸単位(以下、「脂環式ジカルボン酸単位」ともいう。)を構成する脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環構造の炭素数が3〜10の脂環族ジカルボン酸が挙げられ、脂環構造の炭素数が5〜10の脂環族ジカルボン酸が好ましい。
このような(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を構成する脂環族ジカルボン酸の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。この中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
このような脂環族ジカルボン酸から構成される(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を含むことにより、ポリアミド組成物の耐熱性、低吸水性、及び剛性等がより優れる傾向にある。
なお、(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を構成する脂環族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド組成物は、(A)ポリアミドが、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から構成される(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を50モル%以上含む(a)ジカルボン酸単位を有することが好ましい。(A)ポリアミドが、このような(a)ジカルボン酸単位を有することにより、ポリアミド組成物の耐熱性、低吸水性、及び剛性等がより一層優れる傾向にある。
この置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸としては、トランス体とシス体とのどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体とを所定の比率で含む混合物として用いてもよい。
なお、脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し、トランス体とシス体とが一定の比率になることが知られており、シス体の脂環族ジカルボン酸の方がトランス体の脂環族ジカルボン酸に比べて、脂環族ジカルボン酸とジアミンとの当量塩の水溶性が高い傾向にある。このことから、原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
(A)ポリアミド中において、(a−1)脂環族ジカルボン酸単位全体におけるトランス異性体の比率を、「トランス異性体比率」という。トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、本実施形態のポリアミド組成物は、高融点、靭性及び剛性により優れるという特徴に加えて、高いガラス転移温度(Tg)による熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性とを同時に満足するという性質を持つ傾向にある。
これらの特徴は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から構成される(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を50モル%以上含む(a)ジカルボン酸単位と、2−メチルペンタメチレンジアミンから構成される(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を50モル%以上含む(b)ジアミン単位との組み合わせから得られる(A)ポリアミドであって、かつ前記トランス異性体比率が50〜85モル%である(A)ポリアミドで特に顕著である。
前記「トランス異性体比率」は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
(a−2)芳香族ジカルボン酸単位を構成する芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル基又はナフチル基を有するジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の芳香族基は、無置換でも置換基を有していてもよい。
この置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びその塩(ナトリウム塩等)等が挙げられる。
(a−2)芳香族ジカルボン酸単位を構成する芳香族ジカルボン酸の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は所定の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
(a−2)芳香族ジカルボン酸単位を構成する芳香族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
このような(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位を含むことにより、ポリアミド組成物の耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等がより優れる傾向にある。
中でも、(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。このような脂肪族ジカルボン酸から構成される(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位を含むことにより、ポリアミド組成物の耐熱性及び低吸水性等がより優れる傾向にある。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸等が挙げられる。この中でも、ポリアミド組成物の耐熱性等の観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位を構成する脂肪族ジカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸から構成される(a−3)脂肪族ジカルボン酸単位の割合が上記範囲であることにより、より優れた、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等を同時に満足する、ポリアミド組成物が得られる傾向にある。
ここで「ジカルボン酸と等価な化合物」とは、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物をいう。このような化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位、(b−2)脂肪族ジアミン単位、(b−3)脂環式ジアミン単位、及び(b−4)芳香族ジアミン単位等が挙げられる。
(b)ジアミン単位は、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むことが好ましい。
(b)ジアミン単位が、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を含むことにより、本実施形態のポリアミド組成物は、より優れた、流動性、靭性及び剛性等を同時に満足できる傾向にある。
(b)ジアミン単位は、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を50モル%以上含むことがより好ましい。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位における前記「主鎖から分岐した置換基」としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、2−メチルペンタメチレンジアミンが好ましい。このような(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を含むことにより、耐熱性及び剛性等により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
なお、(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を構成するジアミンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン単位中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位の割合が、上記範囲であることにより、流動性、靭性、及び剛性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
前記(b−2)脂肪族ジアミン単位を構成する脂肪族ジアミン(ただし、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを除く)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
前記(b−3)脂環族ジアミン単位を構成する脂環族ジアミン(以下、「脂環式ジアミン」ともいう。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
前記(b−4)芳香族ジアミン単位を構成する芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであれば以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
このような(b−2)脂肪族ジアミン単位を含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
なお、(b)ジアミン単位を構成するジアミンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン単位中のジアミン単位(b−2)〜(b−4)の合計割合が、上記範囲であることにより、流動性、靭性、及び剛性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
3価以上の多価脂肪族アミンは、1種のみ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)ポリアミドは、(c)ラクタム単位(c−1)及び/又はアミノカルボン酸単位(c−2)をさらに含有することができる。
このような単位を含むことにより、靭性により優れるポリアミド組成物が得られる傾向にある。なお、ここでラクタム単位(c−1)及びアミノカルボン酸(c−2)を構成するラクタム及びアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及びアミノカルボン酸をいう。
中でも、ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。このようなラクタムから構成されるラクタム単位(c−1)を含むことにより、靭性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
前記アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。このようなアミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
ラクタム単位(c−1)及びアミノカルボン酸単位(c−2)の合計割合が上記範囲であることにより、流動性の向上等の効果が得られる傾向にある。
本実施形態において用いる(A)ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上述したジカルボン酸とジアミンと、必要に応じて用いるラクタム及び/又はアミノカルボン酸とから、(A)ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
この中でも、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。(A)ポリアミドの末端が末端封止剤で封止されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
末端封止剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記モノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
モノアミンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)ポリアミドの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(a)ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸と、(b)ジアミン単位を構成するジアミンと、必要に応じてラクタム単位(c−1)及び/又はアミノカルボン酸単位(c−2)を構成するラクタム及び/又はアミノカルボン酸と、を重合して重合体を得る工程を含むものとし、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。また、必要に応じて、得られた重合体の末端を末端封止剤により封止する封止工程を含んでいてもよい。
1)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」ともいう。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」ともいう。)。
3)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」ともいう。)。
4)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、あるいはこれらの水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」ともいう。)。
5)ジカルボン酸−ジアミン塩、又はジカルボン酸とジアミンとの混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」ともいう。)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いて重合させる方法(以下、「溶液法」ともいう。)。
重合反応中の(b)ジアミン単位を構成するジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン単位を構成するジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
特に、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率を80%以下に維持して重合することにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドが得られる傾向にある。
(A)ポリアミドの製造に用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができ、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
まず、例えば、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を、約40〜60質量%含有する水溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。
次いで、得られた濃縮溶液をオートクレーブに移し、当該オートクレーブにおける圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、オートクレーブにおいて、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。
オートクレーブ内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。
その後、オートクレーブを窒素等の不活性ガスで加圧し、オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、(A)ポリアミドのペレットを得る。
まず、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を約40〜60質量%含有する水溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱する。次いで、予備加熱した水溶液を濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。
得られた濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出する。
その後、フラッシャー内の圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。フラッシャー内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じてさらに減圧する。その後、フラッシャーからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、(A)ポリアミドのペレットを得ることができる。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドのポリマー末端としては、特に限定されないが、以下のように分類され、定義することができる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボン酸末端、3)環状アミノ末端、4)封止剤による末端、5)その他の末端である。
アミノ末端の量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは5〜100μ当量/gであり、より好ましくは5〜70μ当量/gであり、さらに好ましくは5〜50μ当量/gであり、さらにより好ましくは5〜30μ当量/gであり、よりさらに好ましくは、5〜20μ当量/gである。
アミノ末端の量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、耐光変色性、耐加水分解性、及び熱滞留安定性がより優れる傾向にある。アミノ末端の量は、中和滴定により測定することができる。
カルボン酸末端の量は、(A)ポリアミド1gに対して、好ましくは5〜100μ当量/gであり、より好ましくは5〜70μ当量/gであり、さらに好ましくは5〜50μ当量/gであり、さらにより好ましくは5〜30μ当量/gであり、よりさらに好ましくは、5〜20μ当量/gである。カルボン酸末端の量が上記の範囲であることにより、ポリアミド組成物の白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、及び耐光変色性がより優れる傾向にある。カルボン酸末端の量は、中和滴定により測定することができる。
下記(式1)中でRはピペリジン環を構成する炭素に結合する置換基を示す。Rの具体例としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
また、例えば、原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの脱アンモニア反応により環化したピペリジンがポリマー末端に結合してもこの環状アミノ基の末端となる。これらの構造は、モノマーとして、ペンタメチレンジアミン骨格を有するものを含む場合にとることがある。
環状アミノ末端の量が上記の範囲であることにより、本実施形態のポリアミド組成物は、靭性、耐加水分解性、及び加工性がより優れる傾向にある。
本実施形態において、環状アミノ末端は、原料のジアミンに由来することが好ましい。
環状アミンを末端封止剤として重合初期に添加せずに、原料のジアミンに由来して環状アミノ末端が生成することにより、低分子量のカルボン酸末端を重合初期の段階で封止することが回避され、ポリアミドの重合反応速度が高く維持され、結果として高分子量体が得られやすい傾向にある。このように、反応の途中で環状アミンが生成する場合、重合後期の段階で環状アミンによりカルボン酸末端を封止することになるため、高分子量のポリアミドが得られ易くなる。
(A)ポリアミドの分子量の指標としては、25℃の硫酸相対粘度ηrを利用できる。ηrが大きいほど(A)ポリアミドの分子量が高く、小さいほど(A)ポリアミドの分子量が低い。
(A)ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrは、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
(A)ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrが上記範囲であることにより、靭性及び剛性等の機械物性並びに成形性等により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。なお、25℃の硫酸相対粘度ηrは、JIS−K6920に従って、98%硫酸中濃度1%の条件下で測定することができる。より具体的には、下記実施例に記載する方法により測定することができる。
また、(A)ポリアミドの融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
(A)ポリアミドの融点Tm2が270℃以上であることにより、耐熱性により優れるポリアミド組成物を得ることができる傾向にある。
また、(A)ポリアミドの融点Tm2が350℃以下であることにより、押出、成形等の溶融加工における(A)ポリアミドの熱分解等をより抑制することができる傾向にある。
(A)ポリアミドの融点Tm2は、後述の実施例に記載の方法により、JIS−K7121に準じて測定することができる。
(A)ポリアミドの融解熱量ΔHが10J/g以上であることにより、ポリアミド組成物の耐熱性がより向上する傾向にある。
(A)ポリアミドの融解熱量ΔHは、後述の実施例に記載の方法により、JIS−K7121に準じて測定することができる。
上述した(A)ポリアミドの融点Tm2及び融解熱量ΔHの測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
また、(A)ポリアミドのガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
(A)ポリアミドのガラス転移温度が90℃以上であることにより、耐熱変色性や耐薬品性に優れるポリアミド組成物を得ることができる傾向にある。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度が170℃以下であることにより、外観のよい成形品を得ることができる傾向にある。
(A)ポリアミドのガラス転移温度は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて測定することができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
本実施形態のポリアミド組成物は、(B)無機充填材を含有する。本実施形態に用いる(B)無機充填材は、ウォラストナイト又はタルクである。
これらの中でも、(B)無機充填材としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ウォラストナイト、炭酸カルシウムがより好ましい。
(B)無機充填材としては、組成物中のFe濃度を5〜200ppmとするため、Fe含有量の少ない無機充填材が好ましい。Fe含有量の少ない無機充填材としては、Fe含有量の少ない無機充填材を使用することや、不純物として存在するFeを機械的に除去した無機充填材を使用することが挙げられる。
(B)無機充填材の平均粒径は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の白色度、機械的強度、耐熱エージング性、表面外観及び押出加工性の観点から、0.01〜30μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましく、1〜15μmがさらに好ましく、2〜10μmがさらにより好ましく、2〜6μmがよりさらに好ましい。(B)無機充填材の平均粒径を30μm以下にすることにより、機械的強度、耐熱エージング性、表面外観に優れるポリアミド樹脂組成物が得られ、また、(B)無機充填材の平均粒径を0.01μm以上、さらには0.01μm以上にすることにより、耐熱エージング性、コスト面、粉体のハンドリング面と物性とのバランスが良好なものとなる。
また、(B)無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような、針状の形状を持つ無機充填材に関しては、数平均繊維径を平均粒径とする。さらに、断面が円でない場合はその長さの最大値を繊維径とする。針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、白色度、機械的強度、耐熱エージング性、表面外観及び押出加工性の観点から、1〜30が好ましく、2〜30がより好ましく、3〜25がさらに好ましく、5〜20がよりさらに好ましく、5〜15が特に好ましい。
具体的な平均粒径の測定方法としては、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、JSM−6700F)を用いて、(B)無機充填材像を倍率1000倍から50000倍で撮影し、任意に選んだ500個の無機充填材から粒径を測定する。(B)無機充填材が、針状の場合であって、断面が円である場合は、針径を粒径とし、断面が円でない場合は、針状体の長さの最大値を針径とし、これを粒径とみなす。
前記「造核剤」とは、添加により熱示差走査分析(DSC)で測定される結晶化温度を上昇させる効果や、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化に効果が得られる物質のことを意味する。
造核剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
前記造核剤の中でも、造核剤効果の観点で、タルク、窒化ホウ素、及びカーボンブラックが好ましく、より好ましくはタルク、窒化ホウ素であり、さらに好ましくはタルクである。
造核剤の数平均粒子径が上記範囲内であることにより、造核効果がより向上する傾向にある。
造核剤の数平均粒子径は、本実施形態のポリアミド組成物の成形品をギ酸などのポリアミドが可溶な溶媒で溶解し、得られた不溶成分の中から、例えば100個以上の造核剤を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
(B)無機充填材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせる場合は形状の異なる組み合わせが好ましく、針状の形状を持つ無機充填材と板状の形状をもつ無機充填材との組み合わせがより好ましい
(B)無機充填材は、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。
前記シランカップリング剤としては、下記の例に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
特に、上記の列挙した成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
表面処理剤は、予め(B)無機充填材の表面に処理することもできるし、(A)ポリアミド、(B)無機充填材を混合する際に添加してもよい。表面処理剤の量は、(B)無機充填材100質量部に対して、0.05質量部〜1.5質量部の範囲であることが好ましい。
(B)無機充填材の含有量は、本実施形態のポリアミド組成物中のFe濃度を5〜200ppmとするために、(B)無機充填材に含まれるFe含有量を踏まえて含有量を決定することが重要である。
(B)無機充填材の含有量が上記の範囲内であることにより、本実施形態のポリアミド組成物の機械的強度、成形加工安定性、流動性、白色度がより優れる傾向にある。
造核剤の含有量は、本実施形態のポリアミド組成物100質量%に対して、0.001〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%であり、さらに好ましくは0.001〜3質量%であり、さらにより好ましくは0.5〜2.5質量%である。
造核剤の含有量をポリアミド組成物100質量%に対して0.001質量%以上とすることにより、本実施形態のポリアミド組成物の成形加工安定性が向上し、また、造核剤の含有量を15質量%以下とすることにより、機械的強度、白色度、耐熱エージング性、耐熱変色性及び耐光性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
本実施形態のポリアミド組成物は、(C)金属水酸化物及び/又は後述する(D)金属酸化物を含有する。本実施形態に用いる(C)金属水酸化物は、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムであり、本実施形態に用いる(D)金属酸化物は、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムである。
(C)金属水酸化物は、一般式M(OH)x(Mは、金属元素を示し、xは、Mの多価に対応する数を示す。)で表されることが好ましい。
前記金属元素Mは、1価以上の金属であることが好ましい。前記1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素Mとしては、アルカリ土類金属が好ましい。
(C)金属水酸化物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
金属酸化物は、一般式MxOy(Mは、金属元素を示し、x及びyは、それぞれ、0<x≦5、0<y≦5であり、Mの多価×x=2×yを満たす数である。)で表されることが好ましい。
本実施形態のポリアミド組成物においては、金属元素Mとして、特定の元素を有する(D)金属酸化物を用いることが好ましい。
前記金属元素Mは、1価以上の金属であることが好ましい。前記1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素としては、アルカリ土類金属が好ましい。
前記(D)金属酸化物は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の混合物として用いてもよい。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属水酸化物全体に対する30μm以上の粒子の質量割合を上記範囲内とすることにより、ポリアミド組成物において、耐リフロー性、耐熱変色性の効果が得られる。
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド組成物は耐熱変色性、押出加工安定性、成形加工安定性により優れる。
(C)金属水酸化物及び(D)金属酸化物以外の金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物等が挙げられる。
(C)金属水酸化物及び(D)金属酸化物以外の金属化合物に含まれる金属元素としては、特に限定されないが、例えば、1価以上の金属元素が好ましい。このような金属元素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムバリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等を挙げることができる。金属元素として、アルカリ土類金属が好ましい。
本実施形態のポリアミド組成物は、(E)リン系化合物をさらに含有してもよい。
(E)リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物、2)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類等が挙げられる。
なお、(E)リン系化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記2)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムとの塩を挙げることができる。
よりさらに好ましい(E)リン系化合物は、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族から選ばれる金属と、を含む金属塩である。
これらの中でも、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムが好ましく、より好ましくはアルカリ土類金属塩である次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムである。このような(E)リン系化合物を含有することにより、本実施形態のポリアミド組成物は、白色度、耐熱変色性、耐光変色性及び押出加工性により優れる傾向にある。
特に、前記(E)リン系化合物の金属種としては、アルカリ土類金属であることが好ましい。
(E)リン系化合物が金属塩、金属塩の分子内縮合物、及び金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるものであり、かつ(E)リン化合物の金属種が(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物の金属種が同一であることにより、熱安定性が高まり、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。さらに、(E)リン系化合物の金属種としてアルカリ土類金属を用いることにより、上記特性において、より一層優れた効果が得られる。
(E)リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を使用することにより、加工時に発生する水分量を抑えることができ、ポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。また、(E)リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を用いることにより、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
(E)リン系化合物として潮解性の低い金属塩を用いることにより、ポリアミド組成物の製造時に各原料成分を混合する際に作業性が低下や原料成分中の水分量が高くなることによる、加工時のポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。潮解性の低い金属塩を用いることにより、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
前記有機リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ,ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)−ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。
前記有機リン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド組成物中の(E)リン系化合物は、(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物よりも多く含有している方が好ましい。
(E)リン系化合物の含有量が上記の範囲内であることにより、本実施形態のポリアミド組成物は白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工安定性、成形加工安定性に優れる傾向にある。
ポリアミド組成物中に含まれる(E)リン系化合物由来のリン元素濃度が上記範囲であることにより、ポリアミド組成物は白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工安定性、成形加工安定性に優れる。
なお、ポリアミド組成物中に含まれる(E)リン系化合物由来のリン元素濃度は、後述する実施例に記載されている金属元素濃度の測定方法により測定することができる。
なお、ポリアミド組成物中に含まれるFe濃度は、後述する実施例に記載されている金属濃度の測定方法により測定することができる。
なお、ポリアミド組成物中に含まれるCa濃度は、後述する実施例に記載されている金属濃度の測定方法により測定することができる。
なお、ポリアミド組成物中に含まれるMg濃度は、後述する実施例に記載されている金属元素濃度の測定方法により測定することができる。
また、本実施形態のポリアミド組成物において、Caの含有量とFeの含有量との比率(Ca/Fe)が100以上であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましく、300〜800であることがさらに好ましい。ポリアミド組成物におけるCaの含有量とFeの含有量との比率(Ca/Fe)が上記範囲であることにより、ポリアミド組成物は、成形加工安定性、白色度、耐熱エージング性、耐熱変色性に一層優れる傾向にある。
なお、金属元素濃度は、実施例に記載されている金属元素濃度の測定方法により測定することができる。
本実施形態のポリアミド組成物は、(F)酸化チタンをさらに含有してもよい。
(F)酸化チタンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti2O3)、及び二酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。
中でも、二酸化チタンが好ましい。
(F)酸化チタンの数平均粒子径が0.1μm以上であることにより、ポリアミド組成物の押出加工性がより向上する傾向にある。
(F)酸化チタンの数平均粒子径が0.8μm以下であることにより、ポリアミド組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。
(F)酸化チタンの数平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により測定することができる。例えば、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、ポリアミド組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば任意に選択した100個以上の酸化チタンを、電子顕微鏡で観察して、これらの粒子径を測定することにより、(F)酸化チタンの数平均粒子径を求めることが可能である。
特に、(F)酸化チタンの表面に無機コーティング層を有し、該無機コーティング層上に有機コーティング層を有する(F)酸化チタンが好ましい。
前記無機コーティングとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物を含むことが好ましい。
中でも、ポリアミド組成物の耐光性及び押出加工性の観点から、(F)酸化チタン粒子の表面は、ポリオール類、有機ケイ素化合物を使用してコーティングされることがより好ましく、ポリアミド組成物の加工時の発生ガスの低減の観点から、有機ケイ素化合物を使用してコーティングされることがさらに好ましい。
(F)酸化チタンの含有量が上記範囲であることにより、ポリアミド組成物の白色度がより優れる傾向にある。
本実施形態のポリアミド組成物は、熱安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤を含有していてもよい。
中でも、耐熱エージング性向上の観点から、前記ヒンダードフェノール化合物としては、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
なお、上述したフェノール系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、本実施形態のポリアミド組成物は、耐熱エージング性により優れ、発生ガス量のより低いものとなる傾向にある。
なお、本実施形態において、アミン系酸化防止剤とは、芳香族アミン系化合物を含む。アミン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド組成物は、耐熱エージング性により優れ、発生ガス量のより低いものとなる傾向にある。
本実施形態のポリアミド組成物は、光安定性の観点から、アミン系光安定剤をさらに含有していてもよい。
前記アミン系光安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、アミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートがより好ましく、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミドがさらに好ましい。
本実施形態のポリアミド組成物は、離型性の観点から、シリコーン化合物を含有していてもよい。
本実施形態のポリアミド組成物は、上記した成分の他に、必要に応じてさらに、その他の成分を添加してもよい。
その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、離型剤、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光増白剤、可塑化剤、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム、強化剤並びに他のポリマー等が挙げられる。
ここで、上記その他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法としては、特に限定されず、前記(A)ポリアミド、(B)無機充填材、(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物、さらに必要に応じて、(E)リン系化合物、(F)酸化チタン、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤、アミン系光安定剤、造核剤、前記その他の成分等を含む各原料成分を混合する方法を用いることができる。
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物、(E)リン系化合物の混合方法としては、サイドフィダーから配合する方法の方が好ましい。サイドフィダーから配合する方法によりポリアミド組成物を製造することにより、ポリアミド組成物の白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、耐光変色性、及び成形加工安定性が優れたものとなる傾向にある。
本実施形態のポリアミド組成物の25℃の硫酸相対粘度ηr、融点Tm2、融解熱量ΔH、ガラス転移温度Tgは、前記(A)ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
また、ポリアミド組成物における測定値が、前記ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性、及び耐薬品性により優れるポリアミド組成物を得ることができる。
ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度Tc(℃)は、より好ましくは245℃以上であり、さらに好ましくは250℃以上であり、さらにより好ましくは255℃以上であり、よりさらに好ましくは260℃以上である。また、ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度Tc(℃)は、より好ましくは280℃以下であり、より好ましくは275℃以下であり、さらに好ましくは270℃以下である。
ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度Tc(℃)が240℃以上であることにより、成形時の離型性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。また、ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度Tc(℃)が290℃以下であることにより、成形時のゲートシールが速すぎることがなく、薄肉成形品等の微細部品を良好に成形できるポリアミド組成物を得ることができる。
本実施形態において、ポリアミド組成物の融点結晶化ピーク温度Tcの測定は、後述の実施例に記載の方法により、JIS−K7121に準じて行うことができる。
結晶化ピーク温度Tcの測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
本実施形態のポリアミド組成物の100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピークTc(℃)とガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)が大きいほど、結晶化できる温度範囲が広く、金型内で十分に結晶化しやすいことを意味する。
本実施形態のポリアミド組成物の100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)と、ガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)が90℃以上であるポリアミド組成物は、成形時の離型性に優れる。本実施形態のポリアミド組成物の100℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tc(℃)と、ガラス転移温度Tgとの差(Tc−Tg)の上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましい。
本実施形態の成形品は、上述のポリアミド組成物を含む。
本実施形態の成形品は、耐リフロー性、耐熱変色性、耐光変色性に優れ、反射板等に好適に用いることができる。
本実施形態の成形品は、例えば、上述のポリアミド組成物を公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
当該公知の成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸等、一般に知られているプラスチック成形方法を挙げることができる。
当該反射率保持率を95%以上とするためには、上述のポリアミド組成物に(E)リン系化合物を含有させることが有効である。
また、成形品の上記反射率保持率は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
自動車用部品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、及び電装部品等が挙げられる。
上記のように本実施形態のポリアミド組成物を含有する成形品は、反射板として好適に用いることができる。
当該反射板においては、前記(A)ポリアミドと、前記(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物と、(E)リン系化合物とを、組み合わせて用いることにより、熱による反射率の低下を効果的に抑制することができる。
前記反射率については、後述する実施例に記載する方法により測定することができ、上述した組み合わせにより、本実施形態のポリアミド組成物を含有する反射板において、効果的に反射率の低下が抑制できることは、後述する実施例において検証されている。
なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
((A)ポリアミド)
本実施例、比較例において用いる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を適宜用いて製造した。
<(a)ジカルボン酸>
(a−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(イーストマンケミカル社製、商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75))
(a−2)テレフタル酸(和光純薬工業社製)
<(b)ジアミン>
(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MC5DA)(東京化成工業製)
(b−2)1,9−ノナメチレンジアミン(C9DA)(アルドリッチ社製)
(b−3)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MC9DA)(特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。)
(B−1)ウォラストナイト NYCO製 商品名 ASPECT−4000 数平均繊維径(平均粒径)10.0μm、重量平均繊維長112μm、アスペクト比11.2
(B−2)ウォラストナイト NYCO製 商品名 Nyglos8 数平均繊維径(平均粒径)8.0μm、重量平均繊維長136μm、アスペクト比17
(D−1)酸化カルシウム 純度99.9% (和光純薬工業社製)
(D−2)酸化マグネシウム 和光一級 (和光純薬工業社製)
(E−1)次亜リン酸カルシウム(和光純薬工業社製、分解開始温度 340℃)
(F−1)TiO2(石原産業社製、商品名:タイペーク(登録商標)CR−63、数平均粒子径:0.21μm、コーティング:アルミナ、シリカ及びシロキサン化合物)
なお、(F)酸化チタンの数平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により以下のとおり測定した。
後述する実施例及び比較例のポリアミド組成物を電気炉に入れて、ポリアミド組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、任意に選択した100個以上の酸化チタンを、電子顕微鏡で観察して、これらの粒子径を測定することにより、(F)酸化チタンの数平均粒子径を求めた。
フェノール系酸化防止剤(BASF社製、商品名:IRGANOX(登録商標)1098)
エポキシ変性反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF−105、粘度(25℃)15mm2/s、官能基当量=490g/mol)
タルク(日本タルク社製、商品名:MICRO ACE(登録商標)L−1 平均粒子径 5μm)
[脂環族ジカルボン酸単位(a−1)のモル%の計算]
脂環族ジカルボン酸単位(a−1)のモル%は、下記式を用いて計算により求めた。
式:脂環族ジカルボン酸単位(a−1)のモル%=(原料モノマーとして加えた脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全てのジカルボン酸のモル数)×100
(1)ポリアミドの融点Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)、結晶化ピーク温度Tc(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて、ポリアミドの融点Tm2(℃)、及び融解熱量ΔH(J/g)を測定した。
具体的には、以下のとおり測定した。
まず、窒素雰囲気下、サンプル約10mgを、室温からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。次に、昇温の最高温度で温度を2分間保った。この最高温度ではポリアミドは溶融状態であった。その後、降温速度100℃/minで30℃まで降温する。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTcとする。その後、30℃で2分間保持した後、30℃からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最高ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなし、最大のΔHを有する吸熱ピ−ク温度を融点Tm2(℃)とした。例えば、吸熱ピーク温度295℃(ΔH=20J/g)と、吸熱ピーク温度325℃(ΔH=25J/g)との二つのピークが存在する場合、融点Tm2は325℃とし、ΔH=25J/gとした。
(A)ポリアミド中の(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率を以下のとおり測定した。
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、得られた溶液を用いて1H−NMRで前記トランス異性体比率を測定した。
(a−1)脂環族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積と、シス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積と、の比率からトランス異性体比率を求めた。
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いてガラス転移温度Tg(℃)を測定した。具体的には以下のとおり測定した。サンプルをホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて、得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定用サンプルとした。その測定用サンプル10mgを、前記DSCにより、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、該昇温の際に観測されるガラス転移温度Tg(℃)を測定した。
JIS−K6810に準じて25℃の硫酸相対粘度ηrの測定を実施した。
具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、得られた溶解液を用いて25℃の温度条件下で硫酸相対粘度ηrを測定した。
ICP発光分光分析法(島津製作所製ICPS−8100)により、ポリアミド組成物中に含まれる(B)無機充填材、(C)金属水酸化物、(D)金属酸化物、(E)リン系化合物、(F)酸化チタンに由来するFe濃度、Ca濃度、Mg濃度を算出した。前処理として試料0.1gをTFM(テトラフルオロメタキシール)製分解容器に精秤し、硫酸、硝酸及びフッ酸を加えてマイクロウェーブ分解装置で加圧分解を行った。分解液を50mlに定容して測定液とした。
後述する実施例及び比較例で製造したポリアミド組成物のペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×幅60mm×厚さ1.0mmの成形品を作製した。
当該成形の際、射出+保圧時間2秒、冷却時間6秒、金型温度を130℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドの融点Tm2+10℃に設定した。
成形性の評価判定は下記の通りとした。問題なく成形品が得られることは、生産性の向上に繋がると評価した。
◎:問題なく成形品が得られた。
○:問題なく離型し成形品が得られるがバリが発生した。
△:時々スプルーが金型に残った。
×:離型性が不十分であり、成形品が金型に貼り付いたり変形したりした。
(7)成形時のガス
上記(6)の成形を連続で100ショット行い、成形終了後のガスベントを目視で確認した。
成形時のガス発生の評価判定は下記の通りとした。問題なく成形品が得られることは、生産性の向上に繋がると評価した。
◎:ガスベントに付着物が見られない
○:ガスベントに付着物あり
△:ガスベント部に付着物があり、詰まりかけている
×:ガスベント部に付着物があり、詰まりがある
(8)初期白度
後述する実施例及び比較例で製造したポリアミド組成物のペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×幅60mm×厚さ1.0mmの成形片を作製した。
当該成形の際、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融ポリアミド組成物の温度を(A)ポリアミドの融点Tm2+10℃に設定した。
得られた成形片のハンター白度を日本電色社製色差計ZE−2000を用いて測定した。
上記(8)で得られた成形片を150℃の熱風乾燥機中で300時間加熱処理した。熱処理後の成形片のハンター白度を測定した。
(10)長期エージング時(熱処理後)のクラック発生(%)
後述する実施例及び比較例で製造したポリアミド組成物のペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×幅60mm×厚さ1.0mmの成形片を作製した。
当該成形の際、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドの融点Tm2+10℃に設定した。得られた成形片を、180℃の熱風乾燥機中で熱処理した。長期エージング時のクラック発生の評価判定は下記の通りとした。
◎:300時間後もクラックの発生は無。
○:200時間後はクラックの発生は無、300時間後にクラックの発生はあり。
△:100時間後はクラックの発生は無、200時間後にクラックの発生はあり。
×:100時間後にクラックの発生はあり。
上記(8)で得られた成形片を100℃のメタルハライドランプ式耐光性試験機(岩崎電気株式会社製)にて、1000時間、メタルハライド暴露処理した。成形片を設置した位置での照度は10mW/cm2であった。
このメタルハライド暴露処理前後の成形片に対して波長450nmの光を照射し、その光の反射率を日立分光光度計(U−3310)により測定し、反射率保持率を算出した。
(製造例1)
CHDA896g(5.20モル)、及び2MC5DA604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%の水混合液を作製した。
得られた水混合液と、溶融重合時の添加物である、2MC5DA15g(0.15モル)とを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込んだ。
次に、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温した。
その後、オートクレーブ内を窒素置換した。
オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」ともいう。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記した。)、約2.5kg/cm2になるまで加熱を続けた。このとき液温は約145℃であった。
槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、槽内の水溶液の濃度が約85質量%になるまで濃縮した。
水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた。
槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(約345℃)より50℃低い温度(約295℃)になるまで加熱を続けた。さらに加熱を続けながら、槽内の圧力を60分間かけて大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで降圧した。槽内の樹脂温度(液温)の最終温度が約345℃になるようにヒーター温度を調整した。
槽内の樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。その後、槽内を窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から生成物をストランド状にして排出した。さらにストランド状の生成物を、水冷、カッティングを行いペレット状のポリアミド(ポリアミドペレット)を得た。
前記溶融重合を用いて得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、該真空乾燥機内を十分に窒素置換した。
該真空乾燥機内に1L/分で窒素を流したまま、ポリアミドペレットを攪拌しながら260℃で6時間、加熱した。その後、窒素を流通したまま該真空乾燥機内の温度を約50℃まで下げて、ポリアミドペレットを、ペレット状のまま該真空乾燥機から取り出し、ポリアミド(以下、「PA−1」ともいう。)を得た。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満に調整してから、該ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
該測定の結果、ポリアミド(PA−1)は、融点Tm2が327℃、ガラス転移温度Tgが150℃、トランス異性体比率が71%、25℃の硫酸相対粘度が3.1であった。
CHDA782g(4.54モル)とC9DA575g(3.63モル)と2MC9DA144g(0.91モル)とを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%の水混合液を作製した。
得られた水混合液と、溶融重合時の添加物である、C9DA11g(0.07モル)とを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込んだ。
次に、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温した。
その後、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として、約2.5kg/cm2になるまで加熱を続けた。このとき液温は約145℃であった。
槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、槽内の水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた。
槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(約340℃)より50℃低い温度(約290℃)になるまで加熱を続けた。さらに加熱を続けながら、槽内の圧力を90分間かけて大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで降圧した。
槽内の樹脂温度(液温)の最終温度が約340℃になるようにヒーター温度を調整した。槽内の樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で400torrの減圧下に30分維持した。その後、槽内を窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から生成物をストランド状にして排出した。さらにストランド状の生成物を、水冷、カッティングを行いペレット状のポリアミド(以下、「PA−2」ともいう。)を得た。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満に調整してから、該ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
該測定の結果、ポリアミド(PA−2)は、融点Tm2が316℃、ガラス転移温度Tgが119℃、トランス異性体比率が70%、25℃の硫酸相対粘度が2.4であった。
ポリアミド9T(以下、「PA−3」とも略記する)を、特開平7−228689号公報の実施例1に記載された方法に従って製造した。
その際、原料のジカルボン酸として、テレフタル酸を用い、原料ジアミンとして、1,9−ノナメチレンジアミン及び2−メチルオクタメチレンジアミン[1,9−ノナメチレンジアミン:2−メチルオクタメチレンジアミン=80:20(モル比)]を用いた。
具体的には、上記の各原料及び蒸留水等を20リットル容のオートクレーブに入れて水混合液を得た。次に、該オートクレーブ内を窒素で置換した。その後、該オートクレーブ内の水混合液を、100℃で30分間撹拌した。
次に、2時間かけて該オートクレーブの内部温度を210℃まで昇温した。その際、オートクレーブは22kg/cm2まで昇圧した。
そのまま1時間反応を続けた後、該オートクレーブの内部温度を230℃に昇温した。その後2時間、オートクレーブの内部温度を230℃で恒温し、水蒸気を徐々に抜いてオートクレーブの内の圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。
次に、30分かけてオートクレーブの内の圧力を10kg/cm2まで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。粉砕したプレポリマーを、230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、ポリアミド(PA−3)を得た。
該ポリアミド(PA−3)の各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
該測定の結果、ポリアミド(PA−3)は、融点Tm2が298℃、ガラス転移温度Tgが122℃、25℃の硫酸相対粘度が2.6であった。
(実施例1〜10及び比較例1〜4)
上記製造例1〜3で得られたポリアミド(PA−1)〜(PA−3)と、上記各原材料とを、下記表1に記載の種類及び割合で用いて、ポリアミド組成物を以下のとおり製造した。
該二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、該二軸押出機において、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)は48であり、バレル数は12であった。
該二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を上記製造例にて製造した各(A)ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
次に、表1に示すポリアミド組成物を製造する場合には、前記二軸押出機の下流側第1供給口より、下記表1に記載の種類及び割合で(F)酸化チタンを供給した。
さらに二軸押出機の下流側第2供給口より、下記表1に記載の種類及び割合で(B)無機充填材を供給した。
上記のとおり供給した原料を二軸押出機で溶融混練してポリアミド組成物のペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
水分量を調整した後のポリアミド組成物を用いて上記のとおり各種評価を実施した。
評価結果を下記表1に示す。
Claims (12)
- (A)ポリアミドと、
(B)無機充填材と、
(C)金属水酸化物及び/又は(D)金属酸化物0.1〜20質量%と、
を、含有し、
前記(B)無機充填材が、アスペクト比が20以下のウォラスナイトを含み、
前記(C)金属水酸化物が、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムであり、
前記(D)金属酸化物が、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムであり、
組成物中のFe濃度が、5〜200ppmである、ポリアミド組成物。 - 前記(A)ポリアミドが、270〜350℃の融点を有する、請求項1に記載のポリアミド組成物。
- 前記(A)ポリアミドが、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から構成される(a−1)脂環族ジカルボン酸単位を50モル%以上含む(a)ジカルボン酸単位を有する、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
- Ca濃度が、500〜45000ppmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
- Mg濃度が、500〜8000ppmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
- Caの含有量とFeの含有量との比率(Ca/Fe)が100以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
- (E)リン系化合物を0.1〜20質量%、さらに含有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
- (F)酸化チタンを5質量%以上、さらに含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
- 前記(B)無機充填材が、造核剤を含有し、
ポリアミド組成物における造核剤の含有量が0.001〜15質量%である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む、成形品。
- メタルハライドランプ式耐光性試験機で100℃、照度が10mW/cm2となる位置で1000時間暴露した後の反射率保持率が95%以上である、請求項10に記載の成形品。
- 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む、LED用反射板。
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