JP4951196B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に耐衝撃性及び寸法安定性、剛性に優れ、かつ、外観、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、電機、電子、自動車をはじめとする広範囲の分野に利用できるものであり、特に自動車外装部品用製造材料として有用な熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドは、成形性、耐薬品性、引っ張り強さ、曲げ強さ等の機械的性質、耐摩耗性等に優れているので、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用されている。しかし、得られる成形品の寸法安定性(線膨張係数)に難があり、例えば、樹脂組成物から得られる成形品を金属部品と組み合わせて使用する場合に、樹脂製成形品の線膨張係数が金属部品のものより大きすぎて、高温使用環境下では寸法差や噛み合い不良といった不具合を生じるという欠点があった。さらに、プラスチック成形品表面に塗料を塗装し、このプラスチック成形品を高温環境下で使用する場合には、塗料とプラスチック材料の熱膨張率が異なるために、成形品表面の塗装膜が剥離したり、塗装面に微細な亀裂が生じたりして、外観や意匠性が悪化するという問題があった。特に、フェンダー、ドアパネル、ボンネット、ルーフパネル等の自動車外装部品において、軽量化やデザインの自由度、モジュールアッセンブリー化が可能な点から、従来は金属製であったところでプラスチック化が進んでおり、従来のプラスチック部品と比較して、耐衝撃性、寸法安定性(線膨張係数)、剛性、流動性、外観等で高いレベルの材料が要求されるようになってきた。ポリアミドの寸法安定性や剛性を改良するために、ポリアミドに無機フィラーを配合する手法があるが、耐衝撃性が著しく低下し、外観も悪化するため、その用途が著しく限定されていた。
【0003】
このような問題の改善策として、ポリアミド樹脂の耐衝撃性を向上させる手段としてゴム状重合体を添加することが広く行われており、相溶性を高めるために不飽和カルボン酸又はその誘導体でゴム状重合体を変性することが公知の技術として知られている。例えば、ポリアミド樹脂と変性水素化ブロック共重合体からなる組成物が開示されており、無機フィラーを任意成分として配合できることが記載されている(特許文献1)。また、ポリアミド樹脂、無機充填剤、変性スチレン・オレフィン系共重合体からなる金属メッキ性又は塗装密着性に優れたポリアミド樹脂組成物の記載がある(特許文献2)。しかしながら、上記のような従来技術では、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスは十分とは言えず、耐衝撃性を向上させるためにゴム状重合体の配合量を増やすと、寸法安定性や剛性が大きく低下するため、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスを向上させる必要があった。
【0004】
また、(A)ポリアミド樹脂、(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaとオレフィン化合物重合体ブロックbとの水素化ブロック共重合体、(C)前記水素化ブロック共重合体にカルボン酸又はその誘導体基が付加した変性ブロック共重合体より成り、耐衝撃性に優れ、かつ弾性率、耐熱性、ウェルド部強度等の物性バランスが良好で、成形性及び成形品外観の改良されたポリアミド樹脂組成物(特許文献3)や、(A)特定の末端基のポリアミド樹脂、(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との水素化ブロック共重合体、(C)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との水素化ブロック共重合体にカルボン酸基又はその誘導体基が結合されている変性ブロック共重合体、(D)エチレン−α−オレフィン系共重合体、(E)末端のみに酸無水基を有するオレフィン系ポリマーからなる低温衝撃性の改良されたポリアミド樹脂組成物(特許文献4)の記載があり、これらの組成物に無機フィラーを任意成分として配合できることが記載されている。しかし、これらの発明は、いづれも前記特定成分の組み合わせ範囲内での配合効果を開示するに止まり、実施例等において無機フィラーを配合した具体例もなく、従って耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスの改善という、外観の良好なものを得るために小粒子径の無機フィラーを配合した場合の問題点及びその解決策については何らの言及も示唆もない。
【0005】
さらに、ポリミアド、官能化されたトリブロックコポリマー、官能化されていないエチレン−プロピレンコポリマー、繊維質の充填材からなる耐衝撃性ポリアミド組成物が開示されている(特許文献5)。しかし、この発明では、繊維質の充填材を用いているため外観が悪化するという問題があり、外観の良好なものを得るために小粒子径の無機フィラーを配合した場合の問題点や耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスの改良技術については何ら言及されておらず、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れ、かつ外観に優れた熱可塑性樹脂組成物の提供が強く求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特公昭63−44784号公報
【特許文献2】
特公平8−11782号公報
【特許文献3】
特公平7−26019号公報
【特許文献4】
特許第3330398号公報
【特許文献5】
特公平7−49522号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の有する前記問題点を解決して、良好な耐薬品性、耐熱性を示し、特に、金属部品と組み合わせて使用しても不具合を生じないように線膨張係数を低くして寸法安定性を改善し、かつ耐衝撃性、剛性、外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の樹脂組成物は、寸法安定性、剛性、耐衝撃性、外観ともに優れていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1発明は、成分(A):ポリアミド樹脂、成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、並びに、成分(D):平均粒子径が8μm以下の板状、及び/又は、針状の無機フィラーからなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、かつ 成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が50/50〜90/10であり、かつ 成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部の比率で配合した熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
本発明の第2発明は、予め成分(A)、(B)及び(C)を溶融反応させ、その溶融反応物に成分(D)を配合し混練させて製造した熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。また、本発明の第3発明は、第1発明の熱可塑性樹脂組成物に、さらに成分(E)として、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを、成分(A)100重量部に対し、1〜15重量部の比率で配合した熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリアミド樹脂
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(A)のポリアミド樹脂は、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できるものである。その代表的なものとしては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−6・6、ナイロン−4・6、ナイロン−12、ナイロン−6・10、その他公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸等の単量体成分を含む結晶性又は非晶性のポリアミド樹脂が挙げられる。好ましいポリアミド樹脂は、ナイロン−6、ナイロン−6・6、半芳香族ナイロンであり、これらと非晶性ポリアミド樹脂を併用することもできる。
【0011】
ポリアミド樹脂は、温度23℃、98重量%濃硫酸中濃度1重量%で測定した相対粘度が2.1〜3.5の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.1未満であると剛性、寸法安定性、耐衝撃性、外観が劣り、3.5を超えると成形性が劣り外観が悪化するので、いずれも好ましくない。また、末端基の濃度としては、末端カルボキシル基含量が100μeq/g以下のものが好ましく、末端カルボキシル基含量と末端アミノ基含量の比(末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量)が0.8〜4の範囲のものが好ましい。この比が0.8未満では流動性や外観が不充分となり、4を超えると耐衝撃性や剛性が不充分となるので好ましくない。
【0012】
ブロック共重合体の水素添加物
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物とは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物で、主にブロックb中の脂肪族不飽和結合数が水素化により減少したブロック共重合体である。また、成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物は同じであっても、異なっていてもよく、成分(B)のブロック共重合体の水素添加物は、官能基で変性されていないものである。ブロックa及びブロックbの配列は、線状構造のもの、又は分岐構造(ラジアルテレブロック)のものを含む。また、これらの構造のうちで一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造のうちでも線状構造のものが好ましく、a−b−a型のトリブロック構造のものが、耐衝撃性の点で特に好ましく、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。
【0013】
成分(B)及び成分(C)のビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成する単量体、ビニル芳香族化合物は、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等であり、更に好ましくは、スチレンである。また、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物は、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。これらブロック共重合体の水素添加物における、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜70重量%の範囲が好ましく、10〜40重量%の範囲がより好ましい。該ブロック共重合体の水素添加物が有する不飽和結合をみるに、共役ジエン系化合物に由来する脂肪族性不飽和結合のうち、水素添加されずに残存している割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよい。このようなブロック共重合体の水素添加物としては、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)と称され、また2−メチル−1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)と称され、種々のa−b−a型のトリブロック構造のものが市販されていて、容易に入手可能である。
【0014】
これら成分(B)及び成分(C)において、ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量は、180,000以下のものが好ましく、120,000のものがより好ましい。分子量が180,000を超えると、成形加工性が劣り、外観も悪化するので好ましくない。
【0015】
エチレン−α−オレフィン系共重合体
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)のエチレン−α−オレフィン系共重合体は、エチレン及びα−オレフィンを必須成分とするゴム状共重合体であり、官能基で変性されていないものをさす。エチレンとα−オレフィンとの共重合の割合(重量比)は、95:5〜5:95であり、好ましくは90:10〜40:60の範囲のものである。共重合に用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜20個を有する不飽和炭化水素化合物であり、具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜10の直鎖状のα−オレフィンであり、特に好ましいのはプロピレン、1−ブテン、1−オクテンである。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)のエチレン−α−オレフィン系共重合体としては、エチレンと上記α−オレフィンの他にジエン化合物を共重合した重合体中に不飽和基を導入したものを用いることができる。用いられるジエン化合物の種類は、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類であり、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。
これらエチレン−α−オレフィン系共重合体としては、メルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg)は、0.05〜150g/10分の範囲が好ましく、0.1〜50g/10分の範囲がより好ましい。MFRの値が0.05より低いと成形加工性に劣り、150以上では耐衝撃性に劣るので好ましくない。
【0016】
変性水素化ブロック共重合体
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(C)の変性水素化ブロック共重合体を得るためのグラフト変性剤、不飽和酸及び/又はその誘導体のうち、不飽和酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その誘導体としては、上記各種不飽和酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等があり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好ましく、特にマレイン酸、イタコン酸又はこれらの酸無水物が好適である。これらの不飽和酸又はその誘導体は、1種又は2種以上で使用される。
【0017】
前述の成分(C)のブロック共重合体の水素添加物に、上記のグラフト変性剤、不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させて、効率的に変性水素化ブロック共重合体を得るには、ラジカル発生剤を使用することが好ましい。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができる。
具体的には、有機過酸化物としては、(イ)ハイドロパーオキサイド類:例えば、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、キュメン−ハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル−ハイドロパーオキサイド、p−メンタン−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等;(ロ)ジ−アルキルパーオキサイド類:例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチル−パーオキサイド、t−ブチル−キュミル−パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−キュミルパーオキサイド等;(ハ)パーオキシケタール類:例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシ−ブタン、2,2−ビス−t−ブチル−パーオキシ−オクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−シクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等;(ニ)パーオキシエステル類:例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−ベンゾイルパーオキシ−ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等;(ホ)ジアシルパーオキサイド類:例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等がある。
【0018】
また、アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等がある。その他のラジカル発生剤としてジクミルを挙げることができる。これらのラジカル発生剤のうちでも特に好ましいのは、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤である。10時間での半減期温度が120℃未満のものでは、寸法安定性や耐衝撃性の点で好ましくない。
【0019】
無機フィラー
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(D)の無機フィラーは、平均粒子径が8μm以下の板状、針状のものであり、ガラス繊維、炭素繊維といった繊維状のもの及びシリカ、ガラスビーズ、カーボンブラックといった球状のもの以外のものをさす。すなわち、無機フィラーの形状が、繊維状の場合は、最終的に得られる組成物の外観が悪化し、球状の場合は寸法安定性、剛性に劣るので、好ましくない。しかして、本発明において、無機フィラーの形状は、以下のように球状、板状、針状、繊維状とに明確に区別される。球状の場合は、真球状だけでなくある程度楕円状のものも含み、アスペクト比が1に近いものをさす。板状の場合は、板状の形状を呈してアスペクト比(板状粉の板状面における最長の長さ/板状粉の厚み)が2〜100の範囲のものをさす。針状の場合は、長さが100μm以下でアスペクト比が2〜20の範囲のものをさし、繊維状の場合は、長さが100μmを超えるものをさす。これらは、電子顕微鏡写真により容易に区別することができる。
このような無機フィラーの具体例を挙げれば、板状フィラーとしては、タルク等の珪酸マグネシウム、クレー、マイカ、黒鉛、セリサイト、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ、ガラスフレーク等があり、針状フィラーとしては、ウォラストナイト等の珪酸カルシウム、モスハイジ、ゾノトライト、チタン酸カルシウム、硼酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状酸化チタン、テトラポット型酸化亜鉛等がある。これら無機フィラーの中で、耐衝撃性、寸法安定性、剛性、外観のバランスの点で好ましいのは珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムであり、特に好ましいのはタルク、ウォラストナイトである。これら無機フィラーであれば、1種類を単独使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0020】
ここで、本発明でいう平均粒子径とは、X線透過による液相沈隆方式で測定されたD50をいう。かかる測定を行う装置の具体例としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruement社製、モデル5100)等を挙げることができる。
すなわち、最終的に得られる樹脂組成物の寸法安定性、剛性を向上させ、良好な外観のものを得るためには、上記のようにして測定した平均粒子径が、8μm以下であることが必要であり、5μm以下のものが好ましく、さらに好ましくは平均粒子径が5μm以下の珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムであり、特に好ましくは平均粒子径が4μm以下の珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムである。
【0021】
本発明で好ましく用いられる珪酸マグネシウムとは、滑石を微粉砕した不定形板状結晶で、化学組成は含水珪酸マグネシウムであり、通常SiO2 を58〜66重量%、MgOを28〜35重量%、H2 Oを約5重量%含んでおりタルクと呼ばれる。その他少量成分として、Fe2 3 を0.03〜1.2重量%、Al2 3 を0.05〜1.5重量%、CaOを0.05〜1.2重量%、K2 Oを0.2重量%以下、Na2 Oを0.2重量%以下等含有しており、比重は約2.7である。アスペクト比は、通常5〜20である。
次に、本発明で好ましく用いられる珪酸カルシウムとは、針状結晶をもつ天然白色鉱物であり、化学式CaSiO3 で表され、通常SiO2 を50重量%、CaOを47重量%、その他少量成分として、Fe2 3 、Al2 3 等を含有しており、比重は2.9である。かかる珪酸カルシウム無水塩を主成分とする無機フィラーは、通常ウォラストナイトといわれ、川鉄鉱業から、PH330、PH450として、ナイコ社からナイグロス4、ナイグロス5として市販されているものであり、平均アスペクト比が3〜20のものが好ましい。
【0022】
上記の無機フィラーは、無処理のままであってもよいが、樹脂成分との親和性又は界面結合力を高める目的で、無機表面処理剤、高級脂肪酸又はそのエステル塩等の誘導体、カップリング剤等で処理したものが好ましい。表面処理する際に非イオン・陽イオン・陰イオン型等の各種の界面活性剤や、各種の樹脂等の分散剤による処理を併せて行ったものが、機械的強度及び混練性の向上の観点からさらに好ましい。
【0023】
導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル
本発明においては、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)からなる熱可塑性樹脂組成物に、導電性を付与するためにさらに成分(E)として、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを配合することができる。これら両種の導電剤は、導電性と耐衝撃性のバランスの点で、好ましく用いられる。
導電性カーボンブラックは、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、200ml/100g以上のものが導電性の点で好ましく、300ml/100g以上のものがより好ましい。この様な物性を備えた導電性カーボンブラックとしては、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態のものある。好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられる。
【0024】
中空炭素フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置されている、本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmの範囲のものが好ましい。このような中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。その製法は、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。また、この種の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており、容易に入手することができる。
【0025】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A):ポリアミド樹脂、成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物、及び/又は、エチレン−α−オレフィン系共重合体、成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、並びに、成分(D):平均粒子径が8μm以下の板状、及び/又は、針状の無機フィラーからなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部の比率で配合したものである。さらに、熱可塑性樹脂組成物に導電性を付与する必要がある場合は、成分(E)として、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを、成分(A)100重量部に対し、1〜15重量部の比率で配合したものが好ましい。
【0026】
成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部中で、(A)が90重量部を超え、(B)+(C)が10重量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、逆に、(A)が60重量部未満で(B)+(C)が40重量部を超えると熱可塑性樹脂組成物の外観や流動性が低下し、寸法安定性も低下する。成分(B)と(C)の合計100重量部中で、(B)が10重量部未満では寸法安定性に劣り、(C)が10重量部未満では耐衝撃性に劣る。従って、成分(B)と(C)は重量比10/90〜90/10の範囲内で併用されることが必須であり、より好ましくは成分(B)と(C)は重量比50/50〜90/10の範囲である。また、成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して成分(D)が5重量部未満では、熱可塑性樹脂組成物の寸法安定性や剛性(曲げ弾性率)に劣り、成分(D)が60重量部を超えると流動性や外観、耐衝撃性が低下するので好ましくない。また、成分(C)において、変性ブロック共重合体に付加した不飽和酸及び/又はその誘導体の付加量が0.3重量部未満では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、2.5重量部を超えると寸法安定性や流動性が低下するので好ましくない。
【0027】
次に、導電性を付与するためにさらに成分(E)を配合する場合は、成分(A)100重量部に対する成分(E)の配合比率が、1重量部未満では熱可塑性樹脂組成物の導電性の改善効果が低く、15重量部を超えると流動性や耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造は、溶融混合法が好ましく、溶融混合の代表的な方法として、熱可塑性樹脂について一般に実用化されている溶融混練機を使用する方法が挙げられる。溶融混練機としては、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0029】
混練押出機を使用する方法によるときは、好ましくは、成分(A)、(B)及び(C)を予め混合して、混練押出機の上流部分に一括投入し、溶融状態で反応させ、続けて混練押出機の中流部分で成分(D)を投入して溶融反応物と混合させ、さらに、必要に応じて下流部分から導電剤の成分(E)を投入して溶融物と混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法がある。あるいは、成分(A)、(B)及び(C)を予め混合して、混練押出機に一括投入し、溶融状態で反応させ、ペレットを得る。次に、成分(D)を、このペレットと混練押出機に投入し、成分(A)〜(C)の溶融反応物と混合させ、必要に応じて下流部分から成分(E)を投入して溶融反応物と混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法が挙げられる。また、別の方法として、成分(A)の一部又は全量の溶融反応物と成分(E)とを予め混合してマスターバッチを作成し、このマスターバッチと成分(A)〜(C)とを混合して混練押出機に投入し、溶融状態で反応させ、続けて混練押出機の中流部分で成分(D)を投入して溶融反応物と混合させ熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法や、このマスターバッチと成分(A)〜(C)とを混合して混練押出機に投入し溶融状態で反応させてペレットを得て、次に、ペレット化したものと成分(D)を混練押出機に投入し、成分(A)〜(C)の溶融反応物と混合させ熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法が挙げられる。
このような、予め成分(A)、成分(B)及び成分(C)を溶融反応させ、その溶融反応物に成分(D)を配合し溶融混合することにより、特に優れた耐衝撃性、寸法安定性(線膨張係数)、剛性、及び外観に優れた樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の成分以外に他の各種樹脂添加剤を含有させることができる。各種樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、耐性改良剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、染料、顔料、有機充填剤、補強剤、分散剤等が挙げられる。なお、液晶ポリマーを含有させると、剛性、耐熱性、寸法精度等の向上に有効である。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気機器部品、電子機器部品、自動車部品等の製造用原料として広範囲な分野に利用でき、特に自動車外装部品製造用原料として有用である。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において配合量は重量部を意味する。
【0033】
実施例及び比較例の各樹脂組成物を得るに当たり、次に示す原料を準備した。
1.成分(A):ポリアミド樹脂
ナイロン−6: 三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名−ノバミッド1010J、23℃98%濃硫酸中濃度1重量%で測定したときの相対粘度が2.5、末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量比2.6(以下、PA6−1と略す)
ナイロン−6: 三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名−ノバミッド1020J、23℃98%濃硫酸中濃度1重量%で測定したときの相対粘度が3.5、末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量比1.0(以下、PA6−2と略す)
【0034】
2.成分(B):ブロック共重合体の水素添加物、エチレン−α−オレフィン系共重合体
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS): クレイトンポリマー社製、製品名−クレイトンG1652、スチレン含量29重量%、数平均分子量49,000(以下、SEBSと略す)
エチレン−ブテン共重合体: 三井石油化学工業社製、製品名−タフマーA−4085(以下、EBRと略す)
エチレン−オクテン共重合体: デュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン社製、製品名−エンゲージ8180(以下、EORと略す)
【0035】
3.成分(C):変性水素化ブロック共重合体
[変性水素化ブロック共重合体の調製]
SEBS、無水マレイン酸及びラジカル発生剤の各成分を、表1に示す割合にてヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(スクリュウ径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmにて溶融反応させ、ペレット化して、無水マレイン酸の付加量の異なる4種の変性水素化ブロック共重合体C−1〜C−4を得た。なお、無水マレイン酸としては、三菱化学(株)製の無水マレイン酸を使用し、ラジカル発生剤としては、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製、製品名−パーカドックス14、10時間での半減期温度121℃)を使用した。
このようにして得られた変性水素化ブロック共重合体を加熱減圧乾燥した後、ナトリウムメチラートによる滴定で無水マレイン酸の付加量を求め、併せて表1に示した。
【0036】
【表1】
Figure 0004951196
【0037】
4.成分(D):無機フィラー
珪酸マグネシウム(タルク): 松村産業社製、製品名−ハイフィラー#5000PJ、平均粒子径1.8μm、平均アスペクト比6の板状結晶品(以下、D−1と略す)
珪酸カルシウム(ウォラストナイト): 川鉄鉱業社製、製品名−PH450、平均粒子径3.8μm、長さ19μm、平均アスペクト比7の針状結晶品(以下、D−2と略す)
比較例用珪酸カルシウム(ウォラストナイト): 川鉄鉱業社製、製品名−KH15、平均粒子径9.6μm、長さ83μm、平均アスペクト比10の針状結晶品(以下、D−3と略す)
比較例用ガラス繊維: 旭ファイバーグラス社製、製品名−JA FT516、径10μm、長さ3mmの繊維状品(以下、D−4と略す)
【0038】
5.成分(E):導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリル
導電性カーボンブラック: ライオン社製、製品名−ケッチェンブラックEC600JD、BET法表面積1270m2 /g、DBP吸油量495ml/100g(以下、CBと略す)
中空炭素フィブリル: ハイペリオン・カタリシス社製、製品名−PA6/20BN、ポリアミド6を80重量%と中空炭素フィブリルを20重量%とを含有するマスターバッチ(以下、20BNと略す)
【0039】
[試験片の作製]
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(東芝IS150)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形して、ASTM試験片及び100mmφ×3mmtの円盤状成形品を作製した。
【0040】
[評価方法]
(1)流動性(MFR)
JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5kgの条件でMFR(単位:g/10分)を測定した。
(2)曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
(3)耐衝撃性(面衝撃)
100mmφ円盤シート(厚さ3mmt)について、ハイレート衝撃試験機(島津製作所製)を用いて、ポンチ径1/2インチ、サポート径3インチ、打ち抜き速度1m/sにて打ち抜き衝撃試験を行った。破壊エネルギー(単位:J)が大きい程、耐衝撃性に優れている。
(4)寸法安定性(線膨張係数)
ASTM D696に準拠して線膨張係数(単位:K-1)を測定した。ただし、測定温度範囲は23〜80℃とした。
(5)外観
円盤状成形品の表面外観を目視にて観察し、蛍光灯の像が極めてくっきりと写るものを◎、くっきりと写るものを○、少し揺らいで写るものを△、揺らいで写るものを×として評価した。
(6)体積抵抗率
ASTM2号ダンベル試験片(厚さ3mm)の平行部分を長さ50mmとなるように両端を切断し、切断により生じた両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、テスターで該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率R(単位:Ωcm)を、次式より算出した。
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位:cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位:cm)を意味する。)
【0041】
[実施例1〜4及び比較例1〜8]
二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、表2に示す割合にて成分(A)(B)(C)をタンブラーミキサーにて均一に混合した後、バレル1よりフィードし溶融反応させた後、バレル5より成分(D)をフィードして溶融混合させて組成物を作成した。得られた物性を表2に示す。
実施例1〜4の組成物は、比較例の組成物と比較して、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れている。無機フィラーを添加しなかった比較例1、2の組成物は、未変性のSEBSを添加しても、耐衝撃性と剛性、寸法安定性のバランスは改善されず、剛性、寸法安定性に劣る。未変性SEBSを添加しなかった比較例3〜5の組成物は、実施例の組成物と比較して、寸法安定性、剛性に劣り、本特許の範囲から外れる比較例6、8の組成物は、耐衝撃性に劣るものであり、比較例7の組成物は、寸法安定性、剛性に劣る。
【0042】
【表2】
Figure 0004951196
【0043】
[実施例5〜6]
実施例1の成分(B)をEBR、EORとした以外は実施例1と同様にして組成物を作成し、得られた物性を表3に示す。実施例5、6の組成物は、実施例1と同様に、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れている。
【0044】
[実施例7及び比較例9〜13]
実施例1、比較例3の成分(D)を変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を作成し、得られた物性を表3に示す。実施例7の組成物は、未変性SEBSを添加しなかった比較例9の組成物に比べ、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れている。粒子径の大きいウォラストナイト及びガラス繊維を用いた比較例10〜13の組成物は、未変性のSEBSを添加しても、耐衝撃性と剛性、寸法安定性のバランスは改善されず、いずれの組成物も外観に劣る。
【0045】
【表3】
Figure 0004951196
【0046】
[実施例8及び比較例14〜15]
実施例1で用いた二軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、表4に示す割合にて成分(A)(B)(C)をタンブラーミキサーにて均一に混合した後、バレル1よりフィードし溶融反応させた後、バレル4より成分(D)、バレル7より成分(E)をフィードして溶融混合させて組成物を作成した。得られた物性を表4に示す。実施例8の組成物は、未変性SEBSを添加しなかった比較例14〜15の組成物に比べ、耐衝撃性と寸法安定性、剛性及び導電性のバランスに優れている。
【0047】
[実施例9及び比較例16〜17]
実施例1で用いた二軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、表4に示す割合にて成分(A)(B)(C)(E)をタンブラーミキサーにて均一に混合した後、バレル1よりフィードし溶融反応させた後、バレル5より成分(D)をフィードして溶融混合させて組成物を作成した。得られた物性を表4に示す。実施例9の組成物は、未変性SEBSを添加しなかった比較例16〜17の組成物に比べ、耐衝撃性と寸法安定性、剛性及び導電性のバランスに優れている。
【0048】
【表4】
Figure 0004951196
【0049】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れ、かつ外観に優れているので、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用でき、特に自動車外装部品用材料として有用である。

Claims (10)

  1. 成分(A):ポリアミド樹脂
    成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体
    成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、並びに、
    成分(D):平均粒子径が8μm以下の板状、及び/又は、針状の無機フィラーからなる組成物において、
    上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が50/50〜90/10であり、かつ、成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部の比率で配合したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物は、いずれも、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとが、a−b−a型のトリブロック構造を有することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 成分(C)が、ラジカル発生剤の存在下で不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させた変性水素化ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 成分(A)が、温度23℃、98重量%濃硫酸中濃度1重量%で測定した相対粘度が2.1〜3.5であり、かつ、末端カルボキシル基含量と末端アミノ基含量の比(末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量)が0.8〜4のポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 成分(D)の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 成分(D)が、珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムであることを特徴とする請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 成分(D)の平均粒子径が3.5μm以下であることを特徴とする請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 組成物が、予め成分(A)、(B)及び(C)を溶融反応させ、その溶融反応物に成分(D)を配合し混練させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物に、さらに成分(E)として、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを、成分(A)100重量部に対し、1〜15重量部の比率で配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  10. 成分(E)が、ジブチルフタレート吸油量が200ml/100g以上の導電性カーボンブラックであることを特徴とする請求項9記載の熱可塑性樹脂組成物。
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