JP5634123B2 - 軽量樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量樹脂組成物およびその成形体に関する。
ポリアミドは、耐熱性、剛性および耐薬品性などに優れた材料であることが知られている。また、ポリフェニレンエーテルにポリアミドを配合したポリマーアロイ(ポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイ)は、ポリアミドの優れた機械的強度および耐薬品性と、ポリフェニレンエーテルの優れた低吸水性、寸法安定性および耐衝撃性とを併せ持った材料であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
現在、ポリアミドやポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイは、様々な改良が進められており、例えば、無機フィラーの添加による高強度、高剛性の樹脂組成物が提案されている。このような樹脂組成物は、電気電子部品や自動車部品等の金属代替材としての用途に主に用いられている。
これらの中でも、自動車部品においては、近年、環境対応および安全性という観点から、より高度な特性を有する材料が求められている。具体的には、金属代替材としての剛性と、低燃費対応としての軽量性とを有する材料が求められてきている。さらに使用環境によっては、断熱性も保持している材料が望まれる。
材料を軽量化する方法としては、これまでに、樹脂に中空フィラーを充填する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、押出機内で溶融樹脂と中空粒子とを混練する技術が開示されている。また、特許文献2には、中空粒子を金型内に投入し、その後、真空に引きながらポリプロピレンの溶融液を注入し、中空粒子を包み込むように含浸させる技術が開示されている。また、特許文献3には、溶融樹脂中に中空ガラス球体を添加する製造方法が開示されている。
特開平6−271763号公報 特開2008−283125号公報 特開昭63−278967号公報
近年、自動車部品に関して、高剛性、且つ、軽量化した材料への要求が高まっている。
しかしながら、軽量化を目的とした技術として、上述のように中空フィラーを充填した樹脂組成物が開示されているものの、このような樹脂組成物は充分な剛性や断熱性を有していないという問題がある。また、開示されている樹脂組成物の具体例のほとんどは粒子径を制御したガラス球体を充填したものであり、経済性の面でも問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてされたものであり、剛性と軽量性とのバランスに優れ、さらには断熱性など多面的観点において、同時に満足した樹脂組成物およびその成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した。その結果、(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを特定量含み、前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量の(B)成分全体に対する比率(P45)、および、目開き250μmのふるいの通過量の(B)成分全体に対する比率(P250)が特定の範囲である樹脂組成物により、剛性と軽量性とのバランスに優れ、さらには断熱性を同時に満足させる成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを含み、
前記(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分の含有量が30〜95質量部であり、前記(B)成分の含有量が5〜70質量部であり、
前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(P45)が、(B)成分全体に対して5〜20質量%であり、かつ、
前記(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(P250)が、(B)成分全体に対して90質量%以上である、樹脂組成物。
[2]
さらに、(C)ポリフェニレンエーテルおよび/または(D)衝撃改良剤を含み、
前記(C)および(D)成分の合計含有量が、前記(A)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、10〜60質量部である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、前記(C)成分の含有量が40〜100質量部であり、前記(D)成分の含有量が0〜60質量部である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(P45)が、(B)成分全体に対して7〜20質量%であり、かつ、
前記(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(P250)が、(B)成分全体に対して95質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記(B)成分のかさ比重が0.15〜0.4g/cm3である、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記(B)成分の構成成分が、SiO2、Al23、Fe23、Na2OおよびK2Oを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記(B)成分が、シラスバルーンである、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
(E)導電性付与剤をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
[10]
[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を射出成形して得られる自動車部品。
[11]
溶融混練加工押出機を用いて、(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを溶融混練する工程を含み、
(A)ポリアミドを(B)中空球状無機フィラーよりも上流側で溶融混練加工押出機に供給する、[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
[12]
前記溶融混練加工押出機が、前記(B)成分の供給口以降のゾーンにニーディングディスクを含まないスクリュー構成である、[11]に記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明により、剛性、軽量性、断熱性を併せ持つ樹脂組成物および成形体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
≪樹脂組成物≫
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを含み、前記(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分の含有量が30〜95質量部であり、前記(B)成分の含有量が5〜70質量部であり、前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(P45)が、(B)成分全体に対して5〜20質量%であり、かつ、前記(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(P250)が、(B)成分全体に対して90質量%以上である。
以下、本実施形態の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
[(A)ポリアミド]
本実施形態に用いる(A)ポリアミドとしては、ポリマー主鎖の繰り返し構造中にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有するものであれば、特に限定されるものではない。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの具体的な例としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン)・6、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6,T/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I、ポリアミド9,T、およびこれらの混合物が挙げられる。ここで、例えば、ポリアミド6,Iは、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重合ポリアミド樹脂を意味し、ポリアミド6/6,Tは、ε−アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸との共重合ポリアミド樹脂を意味する。さらに、これらのポリアミド樹脂を2種類以上用いて、押出機等でさらに共重合化したポリアミドも使用することができる。
上記の中でも好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12の脂肪族ポリアミド、およびこれらの混合物が挙げられる。上記の中でも、ポリアミド6、ポリアミド6,6、もしくはこれらの混合物がより好ましい。脂肪族ポリアミドを用いることにより、成形性が容易であり、優れた機械物性を保持できる傾向にある。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。その他の製造方法としては、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、および/またはアミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合した後、押出機等で更に高分子量化してポリアミドを得る方法も挙げられる。
ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、およびω−ラウロラクタムが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、および芳香族ジアミンが挙げられる。その具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸が挙げられる。その具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびダイマー酸が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、および13−アミノトリデカン酸が挙げられる。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの粘度数[VN]の下限値としては、45mL/g以上が好ましく、より好ましくは50mL/g以上である。(A)ポリアミドの粘度数[VN]の上限値としては、180mL/g以下が好ましく、より好ましくは160mL/g以下、更に好ましくは150mL/g以下であり、特に好ましくは140mL/g以下である。樹脂組成物の流動性を低下させない観点から、(A)ポリアミドの粘度数[VN]の上限を180mL/g以下とすることが好ましく、樹脂組成物の靭性を低下させない観点から、(A)ポリアミドの粘度数[VN]の下限を45mL/g以上とすることが好ましい。ここでいう粘度数とは、ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定された粘度数[VN]である。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの末端アミノ基濃度の下限値は、3μmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは5μmol/g以上である。また、(A)ポリアミドの末端アミノ基濃度の上限値は、80μmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは70μmol/g以下であり、更に好ましくは60μmol/g以下であり、特に好ましくは50μmol/g以下である。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値としては、20μmol/g以上が好ましく、より好ましくは30μmol/g以上である。また、濃度の上限値としては、150μmol/g以下が好ましく、より好ましくは120μmol/g以下である。
本実施形態において、(A)ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度とのモル比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、成形体の機械的特性に影響を及ぼし得るため、好適な範囲が存在する。末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度とのモル比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.9以下であり、更に好ましくは0.8以下であり、特に好ましくは0.7以下である。前記モル比の下限は特に限定されないが、0.1以上であることが好ましい。
(A)ポリアミドの末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、(A)ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン、モノアミン、ジカルボン酸、モノカルボン酸、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等の末端アミノ基と反応する末端調整剤および/または末端カルボキシル基と反応する末端調整剤の1種または2種以上を添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;およびこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。上記の中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましく、安息香酸が特に好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;およびこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。上記の中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
アミノ末端基およびカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めることができる。これらの末端基の濃度を求める方法としては、具体的には、特開平7−228775号公報に記載された方法を用いることができる。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H−NMRの積算回数は、充分な分解能を有する機器で測定した場合でも、少なくとも300スキャンは必要である。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドは、その含水率が500ppm以上3000ppm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500ppm以上2000ppm以下である。樹脂組成物の色調悪化を抑制する観点から、前記含水率は500ppm以上であることが好ましく、加工時の粘度低下を抑制する観点から、前記含水率は3000ppm以下であることが好ましい。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの含有量は、(A)ポリアミドと後述する(B)中空球状無機フィラーとの合計100質量部に対して、30〜95質量部であり、30〜90質量部であることが好ましく、35〜85質量部であることがより好ましい。
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの含有量が前記範囲内であると、軽量性および剛性を併せ持つ樹脂組成物となる。
[(B)中空球状無機フィラー]
本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーとしては、シラスバルーン、マールライト、ガラスバルーン、パーライト、金属バルーン、カーボンバルーン等の公的に知られている中空球状無機フィラーを使用することができる。これらの中で強度、安全性および経済性の点において、ガラス質火山噴出物を原料として得られる中空球状無機フィラーがより好ましく、具体的にはシラスバルーン、マールライトがさらに好ましく、シラスバルーンが最も好ましい。
シラスバルーンは、自然界から産出されるシラス(火山噴出物)を原料としており、その原料を選別、高温熱処理をするだけで中空形状を保持できるため、他の合成中空球状無機フィラーと比較して安価である。さらに、製品および製造工程において有害物質を含まないことから、安全面においても好ましい。
本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーとしては、SiO2およびAl23およびFe23の成分を含み、強熱減量分が6%以下であるものが好ましい。強熱減量分を6%以下とすることにより、(A)ポリアミドの分解を抑制することができる。
また、本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーの構成成分は、SiO2、Al23、Fe23、Na2OおよびK2Oを含むことが好ましい。このような構成成分の(B)中空球状無機フィラーを用いることにより、軽量性および剛性を併せ持つ樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーは、後述する電磁振動篩機を用いたふるい分け法により分級した際に、目開き45μmのふるいの通過量(以下「P45」とも記す。)が、(B)成分全体に対して5〜20質量%であり、好ましくは7〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。また、目開き250μmのふるいの通過量(以下「P250」とも記す。)が、(B)成分全体に対して90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。P45が20質量%を超えて、P250が90質量%未満である場合や、P250が90質量%以上であってもP45が5質量%未満である場合においては、破砕率が高く、製品物性の安定性の面で劣る。また、P250が90質量%以上であり、P45が20質量%を超える場合においては、生産時の供給が不安定となる場合がある。
ここで、以下に本実施形態における電磁振動篩機を用いたふるい分け法について説明する。
ミクロ型電磁振動ふるい器M−2形(筒井理化学器械社製)に、JISZ8801に準じたふるい網(東京スクリーン社製)を重ねる。ふるい網としては、下から順に、目開きが45μm、106μm、150μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1700μm(全9段)を用意する。目開き45μmのふるいの下には、最下段として皿を入れる。
次に、目開き1700μmのふるい網に上記(B)成分のサンプルを35〜45g入れ、蓋をする。その後、振動調節ダイヤルを6.5に合わせ、10〜15分間振動させて(B)成分のサンプルのふるい分けを行う。当該ふるい分け操作終了後、最下段の皿および各ふるい網に残ったサンプル質量を測定する。当該ふるい分け操作終了後の最下段の皿のサンプル質量をW0とし、各ふるい網に残ったサンプル質量を、ふるい網に応じて下から順にW45、W106、W150、W250、W355、W500、W710、W1000、W1700とする。
P45およびP250は、下記式(1−1)および(1−2)で算出することができる。
Figure 0005634123
なお、上記本実施形態のふるい分け法と同等の測定をすることができる場合においては、この限りではない。
また、本実施形態において、ふるいの通過量の全体に対する比率(PX)とは、以下(1)式で計算することができる。
Figure 0005634123
本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーのかさ比重としては、0.15〜0.4g/cm3であることが好ましく、さらに好ましくは0.25〜0.35g/cm3のであることが好ましい。0.15g/cm3以上であることにより、ハンドリング性に優れ、0.4g/cm3以下であることにより軽量性に優れる。
本実施形態において、(B)中空球状無機フィラーのかさ比重は、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製:パウダーテスターTYPE PT−E)により得られる値である。
本実施形態に用いる(B)中空球状無機フィラーの含有量は、上述した(A)ポリアミドと(B)中空球状無機フィラーとの合計100質量部に対して、5〜70質量部であり、10〜70質量部であることが好ましく、15〜65質量部であることがより好ましい。
また、前記(B)中空球状無機フィラーを樹脂組成物に配合する割合としては、(B)中空球状無機フィラーと、上述した成分(A)、後述する(C)および(D)成分との合計量に対して、上述した成分(A)、後述する(C)および(D)成分の合計を好ましくは30〜95質量%、より好ましくは45〜80質量%であり、前記(B)成分を好ましくは5〜70質量%、より好ましくは20〜55質量%である。樹脂組成物の軽量化効果を得るためには、(B)成分を5質量%以上配合することが好ましく、樹脂組成物の押出性や機械物性の観点から、(B)成分を70質量%以下配合することが好ましい。
さらに、前記(B)中空球状無機フィラーの表面は、上述した成分(A)との界面密着性向上を目的として、有機シラン、有機チタネート等の表面処理剤や、水酸基、アミド基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、グリシジル基、酸無水物基およびこれらの誘導体等の各種官能基を持つ1種または2種以上の公知の表面処理剤により表面処理が施されていてもよい。上記の中でも、アミノシラン、エポキシシランにより表面処理が施されていることが好ましい。表面処理剤の使用量としては、(B)中空球状無機フィラー100質量部に対して0.05〜5質量部であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(C)ポリフェニレンエーテルおよび/または(D)衝撃改良剤を含んでいてもよい。
以下、(C)ポリフェニレンエーテルおよび(D)衝撃改良剤について説明する。
[(C)ポリフェニレンエーテル]
本実施形態に用いる(C)ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(i)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体および/または共重合体である。
Figure 0005634123
ここで、式(i)中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜7のハロアルキル基、炭素数1〜7のアミノアルキル基、炭素数1〜7のヒドロカルビロキシ基、または炭素数1〜7のハロヒドロカルビロキシ基(ここで、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てている。)を示す。
本実施形態に用いる(C)ポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、単独重合体として、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)が挙げられる。また、共重合体として、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール化合物との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されている2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)が挙げられる。
上記の中でも特に好ましい(C)ポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体における好ましい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)、分散度ともいう。)は、2.5〜4.0の範囲である。前記分子量分布は、より好ましくは2.5〜3.8の範囲であり、更に好ましくは2.5〜3.5の範囲である。分子量分布が上記範囲であると、成形時の金型内流動性の観点から好ましい。ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した値を指す。
本実施形態に用いる(C)ポリフェニレンエーテルの製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。ポリフェニレンエーテルは、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書および同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報および同63−152628号公報等に記載された製造方法によって得ることができる。
本実施形態に用いる(C)ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/C:0.5g/dLクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)は、0.15〜0.55dL/gの範囲であることが好ましい。(C)ポリフェニレンエーテルの還元粘度のより好ましい下限値は0.20dL/g以上であり、更に好ましくは0.21dL/g以上であり、更により好ましくは0.25dL/g以上、特に好ましくは0.27dL/g以上である。(C)ポリフェニレンエーテルの還元粘度のより好ましい上限値は0.50dL/g以下であり、更に好ましくは0.45dL/g以下、特に好ましくは0.40dL/g以下である。本実施形態の樹脂組成物の高温環境における熱変形を抑制する観点から、(C)ポリフェニレンエーテルの還元粘度の下限値は0.15dL/g以上であることが好ましく、後述する(D)衝撃改良剤との相溶性を悪化させない観点から、(C)ポリフェニレンエーテルの還元粘度の上限値は0.55dL/g以下であることが好ましい。
本実施形態においては、還元粘度の異なる2種以上の(C)ポリフェニレンエーテルをブレンドした混合物を用いてもよい。そのような(C)ポリフェニレンエーテルをブレンドした混合物としては、例えば、還元粘度0.35dL/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dL/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物、還元粘度0.35dL/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.45dL/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
本実施形態に用いる(C)ポリフェニレンエーテルは、本実施形態に用いる上述の(A)ポリアミドとの相溶性を向上させ、物理的性質を改良するために、相溶化剤により官能化された官能化ポリフェニレンエーテルであると好ましい。相溶化剤としては、例えば、特開平8−48869号公報および特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、単独で用いても併用してもよい。これらの相溶化剤の中でも、マレイン酸、フマル酸、クエン酸およびこれらの無水物ならびにこれらの混合物が好ましく、より好ましくは、マレイン酸および/またはその無水物である。
相溶化剤の使用量は、(C)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.01〜8質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部であり、更に好ましくは0.05〜3質量部である。樹脂組成物(もしくは成形体)としての耐衝撃性を低下させない観点から、相溶化剤の使用量は0.01質量部以上であることが好ましく、射出成形時のシルバーストリークスの発生や機械物性の低下を抑制する観点から、8質量部以下であることが好ましい。
また、(C)ポリフェニレンエーテルを安定化させるために、公知の各種安定剤を使用してもよい。安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。安定剤の配合量は、(C)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、好ましくは5質量部未満である。
さらに、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な他の公知の添加剤も、(C)ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、好ましくは10質量部未満の量で添加してもよい。
[(D)衝撃改良剤]
本実施形態の樹脂組成物は、(D)衝撃改良剤を含んでもよい。本実施形態に用いる(D)衝撃改良剤は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」とも記す。)、前記ブロック共重合体の水素添加物、ポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。その中でも特に、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物が耐光性、熱安定性の観点から好ましい。
なお、本実施形態において、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、50質量%以上が芳香族ビニル化合物であることを指し、当該ブロックにおいて好ましくは70質量%以上が芳香族ビニル化合物であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上が芳香族ビニル化合物である。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、50質量%以上が共役ジエン化合物であることを指し、当該ブロックにおいて好ましくは70質量%以上が共役ジエン化合物であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上が共役ジエン化合物である。
ここで、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物または他の化合物が結合されている場合であっても、当該ブロックの50質量%以上が芳香族ビニル化合物から形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、中でもスチレンが特に好ましい。共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレンおよび1,3−ペンタジエンからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
共役ジエン化合物の結合形態には1,2−ビニル結合、3,4−ビニル結合および1,4−ビニル結合の3種があることが知られている。本実施形態において、ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は、1,2−ビニル結合量、または1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計量が、5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、耐衝撃性および低温衝撃性がより良好となる傾向にある。ここでいうビニル結合量とは、上記3種の結合形態中の共役ジエン化合物の結合形態の割合を示すものであり、例えば、1,2−ビニル結合量は、上記3種の結合形態の合計に対する1,2−ビニル結合の割合を意味する。ここで、各ビニル結合量は、1H−NMRにより測定することができる。
本実施形態において、ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]とが、A−B型、A−B−A型、およびA−B−A−B型の中から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。上記の中でも、A−B−A型、A−B−A−B型、またはこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型が更に好ましい。
また、上記ブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を、0%を超えて100%以下の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、より好ましくは98%以上である。ここで、水素添加率は1H−NMRによって測定できる。
これらのブロック共重合体は、水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体との混合物であってもよい。
また、これらの芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本実施形態の効果を損なわない限り、結合形式が異なるもの、芳香族ビニル化合物の種類が異なるもの、共役ジエン化合物の種類が異なるもの、1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量との合計量が異なるもの、芳香族ビニル化合物の含有量が異なるもの等から選ばれる2種以上を混合して用いてもよい。
また、本実施形態に用いるブロック共重合体としては、ブロック共重合体中にパラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。ブロック共重合体中にパラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合することにより、樹脂組成物の加工性が向上する傾向にある。
本実施形態に用いるブロック共重合体の数平均分子量は、上限として250,000以下であることが好ましい。より好ましくは150,000以下であり、更に好ましくは80,000以下である。一方、下限として40,000以上であることが好ましい。ブロック共重合体の数平均分子量が上記範囲であると、押出し時の不具合や流動性の悪化のリスクが低減される。
また、ブロック共重合体は、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物であっても構わない。そのような混合物としては、例えば、数平均分子量80,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量200,000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
ブロック共重合体の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量を指す。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分を含めない。
また、ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数平均分子量が、4000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。
ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックnの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下記式(2)により求めることができる。
Figure 0005634123
ここで、上記式(2)中において、Mn(a),nはブロック共重合体n中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、およびN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を示す。
本実施形態に用いるポリオレフィンとは、エチレン鎖を主体とし、エチレンとコモノマーとが共重合したエチレン性共重合体を指す。エチレン性共重合体としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体等が挙げられる。
上記の中でも、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体が特に好ましい。
本実施形態に用いる(D)衝撃改良剤としては、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(以下「SEBS」とも記す。)が好ましい具体例として挙げられる。
[(C)ポリフェニレンエーテルおよび(D)衝撃改良剤の含有量]
本実施形態において、(C)ポリフェニレンエーテルおよび/または(D)衝撃改良剤の好ましい含有量は、前記(A)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜50質量部である。
また、前記(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、前記(C)成分の含有量が40〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜85質量部であり、前記(D)成分の含有量が0〜60質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜50質量部である。
[その他の含有物]
また、本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂を、(A)ポリアミドと(C)ポリフェニレンエーテルとの合計100質量部に対して、50質量部未満の量であれば含有してもかまわない。スチレン系熱可塑性樹脂としては、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物中は、(E)導電性付与剤をさらに含んでいてもよい。本実施形態において、(E)導電性付与剤の含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%であり、更に好ましくは、1〜3質量%である。
(E)導電性付与剤としては、耐衝撃性と導電性とを両立させる観点から、導電性カーボンブラック、グラファイトおよびカーボンフィブリルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。中でも、導電性カーボンブラックを含むことがより好ましい。
(E)導電性付与剤として導電性カーボンブラックを用いる場合、ジブチルフタレート(以下「DBP」とも記す。)吸油量が250mL/100g以上の導電性カーボンブラックが好ましい。より好ましくはDBP吸油量が300mL/100g以上、さらに好ましくは350mL/100g以上の導電性カーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
また、導電性カーボンブラックは、BET比表面積(JIS K6221−1982)が200m2/g以上であることが好ましく、400m2/g以上であることがより好ましい。市販されている導電性カーボンブラックを例示すると、ケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD、エボニックデグサ社から入手可能なプリンテックスXE,XE−2B等が挙げられる。
(E)導電性付与剤の添加方法に関しては特に制限はないが、(A)ポリアミドと(C)ポリフェニレンエーテルとの溶融混合物中に、(E)導電性付与剤を添加して溶融混練する方法、樹脂中に(E)導電性付与剤を予め配合したマスターバッチの形態で添加する方法等が挙げられる。(E)導電性付与剤を配合したマスターバッチに使用される樹脂としては、(A)ポリアミド、(C)ポリフェニレンエーテルおよび(D)衝撃改良剤からなる群から選ばれる1種以上を挙げることができるが、中でも特に好ましいのは(A)ポリアミドである。
マスターバッチ中の(E)導電性付与剤の配合量としては、マスターバッチを100質量%としたとき、(E)導電性付与剤の配合量が5〜25質量%であることが好ましい。(E)導電性付与剤として導電性カーボンブラックを使用する場合、マスターバッチ中の導電性カーボンブラックの配合量は、好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。また、(E)導電性付与剤として、グラファイトまたはカーボンフィブリルを使用する場合、マスターバッチ中のグラファイトまたはカーボンフィブリルの配合量は、好ましくは15〜25質量%であり、より好ましくは18〜23質量%である。
(E)導電性付与剤を配合したマスターバッチ(以下、「導電性マスターバッチ」とも言う。)の製造方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。導電性マスターバッチの製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
上流部に1箇所の供給口と下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口より(A)ポリアミドの一部を供給し、(A)ポリアミドの融点以上の温度で(A)ポリアミドの一部を溶融混練した後、下流部供給口より残りの(A)ポリアミドと(E)導電性付与剤を溶融することなく混合した混合物を添加して更に溶融混練する製造方法である。また、これらのマスターバッチを製造する際の加工機械のシリンダー設定温度としては、特に制限はなく、上述のように(A)ポリアミドの融点以上の温度であれば問題ないが、好ましい範囲としては240〜330℃の範囲であり、より好ましくは240℃〜300℃の範囲である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分以外にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を、任意の方法により配合することができる。そのような添加剤としては、滴下防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量としては、樹脂組成物に対して、それぞれ15質量%を超えない範囲であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、上記官能化ポリフェニレンエーテルを用いない場合には、樹脂組成物の製造の際に相溶化剤を添加してもかまわない。このような相溶化剤としては、上記官能化ポリフェニレンエーテルを得る際に用いることが可能な相容化剤と同様のものが好適に使用できる。
相溶化剤の配合量としては、(A)ポリアミドと(C)ポリフェニレンエーテルとの混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)ポリアミドの熱安定剤として、リン元素を含む化合物を含有することが好ましい。リン元素を含む化合物としては、例えば、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩が挙げられる。リン元素を含む化合物の好ましい配合量は、樹脂組成物中に含まれる(A)ポリアミド全量に対してリン元素換算で1〜5000ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜2500ppm、更に好ましくは50〜2000ppmである。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で、特開平1−163262号公報に記載されているような金属系安定剤を含んでもよい。金属系安定剤としては、例えば、CuI、CuCl2、酢酸銅、ステアリン酸セリウムが挙げられる。上記の中でも、CuI、酢酸銅等に代表される銅化合物が好ましく、より好ましくはCuIである。
銅化合物の配合量としては、本実施形態の樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドの全量に対して、銅元素として好ましくは1〜400ppmであり、より好ましくは1〜300ppm、更に好ましくは1〜100ppmである。
≪樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、溶融混練加工押出機を用いて、上述した(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを溶融混練する工程を含み、前記(A)ポリアミドを前記(B)中空球状無機フィラーよりも上流側で溶融混練加工押出機に供給する製造方法である。
次に、本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一例を、以下に説明する。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、本実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、例えば、(1)上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)ポリアミド、下流側供給口より(B)中空球状無機フィラーを供給し溶融混練する方法、(2)上流側供給口と2カ所以上の下流側供給口(下流側供給口の内、より上流側を下流側第1供給口、より下流側を下流側第2供給口とする)を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(C)ポリフェニレンエーテル、(D)衝撃改良剤を供給し溶融混練した後、下流側第1供給口より(A)ポリアミド、場合により導電性マスターバッチ((B)ポリアミドと(E)導電性付与剤とのマスターバッチ)を供給し溶融混練し、下流側第2供給口より(B)中空球状無機フィラーを供給し、さらに溶融混練する方法、等が挙げられる。
前記溶融混練する際の温度は、240〜330℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述の樹脂組成物を射出成形して得られる。
また、本実施形態の自動車部品は、上述の樹脂組成物を射出成形して得られる。
本実施形態の成形体は、各種部品の成形体として使用できる。これら各種部品としては、例えば、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、各種コンピューターおよびその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車の外装材、内装材等に好適に使用できる。上記の中でも、自動車部品に好適に使用可能である。
以下、実施例によって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらによって何ら限定されるものではない。
使用した原料は以下のとおりである。
(使用した原料)
1.(A)ポリアミドとして、ポリアミド6(以下「PA」とも記す。末端アミノ基濃度:36μmol/g、末端カルボキシル基濃度:86μmol/g、粘度数[VN]:88mL/g)を用いた。なお、粘度数は、ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定した。
2.(B)中空球状無機フィラーとして、以下のB1およびB2を用いた。また、比較用の無機フィラーとして、以下のB3を用いた。
(B1)シラスバルーン(中空)
商品名「ウインライト MSB−3011」、アクシーズケミカルズ社製、
構成主成分(SiO2、Al23、Fe23、Na2O、K2O)
(B2)シラスバルーン(中空)
商品名「ウインライト WB−9011」、アクシーズケミカルズ社製
構成主成分(SiO2、Al23、Fe23、Na2O、K2O)
(B3)タルク(非中空)
商品名「TALCAN PAWDER PK−C」、林化成社製
構成主成分(SiO2、MgO、Al23、Fe23、CaO、K2O、Na2O)
〈(B)成分のP45およびP250の測定方法〉
(1)(B)成分の調製
表1または表2に示すとおり、各実施例および比較例に用いる(B)成分として、上記B1〜B3のいずれか、またはB1およびB2の混合物を予め調製した。
(2)測定装置の準備
ミクロ型電磁振動ふるい器M−2形(筒井理化学器械社製)に、JISZ8801に準じたふるい網(東京スクリーン社製)を重ねた。ふるい網としては、下から順に、目開きが45μm、106μm、150μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μmおよび1700μm(全9段)を用意した。目開き45μmのふるいの下には、最下段として皿を入れた。
(3)最下段の皿および各ふるい網に残ったサンプル質量の測定
最上段の目開き1700μmのふるい網に上記(1)で調製した各(B)成分のサンプルを35〜45g入れて蓋をした。その後、振動調節ダイヤルを6.5に合わせ、10〜15分間振動させて(B)成分のサンプルのふるい分けを行った。当該ふるい分け操作終了後、最下段の皿および各ふるい網に残ったサンプル質量を測定した。当該ふるい分け操作終了後の最下段の皿のサンプル質量をW0とし、各ふるい網に残ったサンプル質量を、ふるい網に応じて下から順にW45、W106、W150、W250、W355、W500、W710、W1000、W1700とした。
(4)P45およびP250の算出
(B)成分全体に対する、(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(以下「P45」とも記す。)および(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(以下「P250」)を、下記式(1−1)および(1−2)により算出した。結果を表1および表2に示す。
Figure 0005634123
〈(B)成分のかさ比重の測定方法〉
上記(1)で調製した各(B)成分のサンプルを用い、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製:パウダーテスターTYPE PT−E)により、(B)成分のかさ比重を測定した。結果を表1および表2に示す。
3.(C)ポリフェニレンエーテルとして、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下「PPE」とも記す。還元粘度:0.44dL/g(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃で測定))を用いた。
4.(D)衝撃改良剤として、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(以下「SEBS」とも記す。商品名「H1387」、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
5.相容化剤として、無水マレイン酸(以下「MAH」とも記す。商品名「CRYSTALMAN−AB」、日本油脂社製)を用いた。
(評価方法)
<比重の測定>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、80℃で3時間乾燥した。当該乾燥後のペレットから、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。得られた試験片を20×25×4mmの形状に加工し、ISO1183のA法(水中置換法)に準じて、該試験片の比重を測定した。
<曲げ弾性率の測定>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、80℃で3時間乾燥した。当該乾燥後のペレットから、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、ISO178に準じて、該試験片の曲げ弾性率を測定した。
<熱伝導係数の測定>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物ノペレットを、80℃で3時間乾燥した。当該乾燥後のペレットから、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃に設定)を用いて、ISO294に準じて厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。得られた試験片を20×25×4mmの形状に加工し、ホットディスク法にて、該試験片の熱伝導係数を測定した。
[実施例1〜6および比較例1〜4]
上流側に1ヶ所の供給口(以下「上流側供給口」とも記す。)および下流側に1ヶ所の供給口(以下「下流側供給口」とも記す。)を有する同方向回転2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて以下のとおりに樹脂組成物のペレットを作製した。
表1および表2に記載の割合で、(A)ポリアミドを2軸押出機の上流側供給口から供給し、溶融混練した後、下流側供給口より各種無機フィラーを供給し、さらに溶融混練して押し出し、ペレタイズして樹脂組成物のペレットを得た。この際、下流側供給口以降のスクリューパターンは1(ニーディングディスクなし)とした。
なお、上記押出機のシリンダー温度は、上流側供給口から下流側供給口までを300℃、下流側供給口からダイスまでを280℃、ダイヘッドを300℃にそれぞれ設定した。
また、このときの溶融混練物の吐出量は300kg/時間、スクリュー回転数は300rpmであった。
以上の工程における原材料の種類、配合割合を表1および表2に示す。得られた樹脂組成物のペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表1および表2に示す。
Figure 0005634123
[実施例7]
上流側に1ヶ所の供給口(以下「上流側供給口」とも記す。)および下流側に2ヶ所の供給口(より上流側に位置する供給口を「下流側第1供給口」と称し、より下流側に位置する供給口を「下流側第2供給口」と称する。)を有する同方向回転2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて以下のとおりに樹脂組成物のペレットを作製した。
表2に記載の割合で、(C)ポリフェニレンエーテルの粉末と、相容化剤とをタンブラーで20分間攪拌して予備混合物を得た。表2に記載の割合で、この予備混合物と(D)衝撃改良剤とを2軸押出機の上流側供給口から供給し、溶融混練した後、下流側第1供給口より(A)ポリアミドを供給し、溶融混練して、下流側第2供給口より(B1)中空球状無機フィラーを供給し、さらに溶融混練して押し出し、ペレタイズして樹脂組成物のペレットを得た。この際、下流側第2供給口以降のスクリューパターンは1(ニーディングディスクなし)とした。
なお、押出機のシリンダー温度は、上流側供給口から下流側第2供給口までを320℃、下流側第2供給口からダイスまでを280℃、ダイヘッドを300℃にそれぞれ設定した。また、このときの溶融混練物の吐出量は300kg/時間、スクリュー回転数は300rpmであった。
得られた樹脂組成物のペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例8]
下流側供給口以降のスクリューパターンを2(ニーディングディスクあり)とした以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
得られた樹脂組成物のペレットを用い、上述の各評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005634123
本発明の樹脂組成物は、優れた剛性、軽量性、断熱性を有していることから、電気電子部品や自動車部品等への産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. (A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを溶融混練押出機を用いて溶融混練する工程によって得られる樹脂組成物であって
    前記(A)および(B)成分の合計100質量部に対して、前記(A)成分の含有量が30〜95質量部であり、前記(B)成分の含有量が5〜70質量部であり、
    前記溶融混練する工程の前の前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(P45)が、(B)成分全体に対して5〜20質量%であり、
    前記溶融混練する工程の前の前記(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(P250)が、(B)成分全体に対して90質量%以上であり、かつ
    前記溶融混練する工程の前の前記(B)成分が、かさ比重が0.15〜0.4g/cm 3 であるシラスバルーンからなり、
    比重が1.14〜1.24g/cm 3 の範囲である、樹脂組成物。
  2. 比重が1.21〜1.24g/cm 3 の範囲である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. さらに、(C)ポリフェニレンエーテルおよび/または(D)衝撃改良剤を含み、
    前記(C)および(D)成分の合計含有量が、前記(A)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、10〜60質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、前記(C)成分の含有量が40〜100質量部であり、前記(D)成分の含有量が0〜60質量部である、請求項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記溶融混練する工程の前の前記(B)成分の目開き45μmのふるいの通過量(P45)が、(B)成分全体に対して7〜20質量%であり、かつ、
    前記溶融混練する工程の前の前記(B)成分の目開き250μmのふるいの通過量(P250)が、(B)成分全体に対して95質量%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. (E)導電性付与剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を射出成形して得られる自動車部品。
  9. 溶融混練加工押出機を用いて、(A)ポリアミドおよび(B)中空球状無機フィラーを溶融混練する工程を含み、
    (A)ポリアミドを(B)中空球状無機フィラーよりも上流側で溶融混練加工押出機に供給する、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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