JP4608151B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4608151B2 JP4608151B2 JP2001253569A JP2001253569A JP4608151B2 JP 4608151 B2 JP4608151 B2 JP 4608151B2 JP 2001253569 A JP2001253569 A JP 2001253569A JP 2001253569 A JP2001253569 A JP 2001253569A JP 4608151 B2 JP4608151 B2 JP 4608151B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- component
- resin composition
- thermoplastic resin
- weight
- group
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強度、塗装性に優れ、かつ導電性や帯電防止性などの電気的性質に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁性である熱可塑性樹脂に導電性物質を混合し、導電性や帯電防止性などの特性を付与することは従来から広く行われており、この目的のために各種の導電性物質が提案されている。一般に用いられる導電性物質としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官基を有する高分子帯電防止剤などの有機化合物類の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉末、金属酸化物などの無機物類が挙げられる。
【0003】
特に、少量の導電性物質を配合して高い導電性樹脂組成物を得るために、中空炭素フィブリルが使用され、さらに高導電性を達成するために、ミクロ形態が海−島構造を呈する樹脂組成物の海相を構成する樹脂中に、高濃度、高密度、または均一に複合化する方法が多数提案されている。しかしながら、これらの導電性樹脂組成物は、導電性は発揮するが、同時に成形加工性、機械的強度(特に靱性)、成形品表面外観などが低下し、熱可塑性樹脂が本来具備する特性を犠牲にしている。
【0004】
他方、自動車部品製造用樹脂材料の用途においては、導電性を付与した樹脂成形品に電気を流し、それと反対の電荷を付加した塗料を吹き付ける「静電塗装」技術が採用されている。この静電塗装では、成形品表面と塗料とに反対の電荷を持たせることによって互いに引き合う性質を利用し、塗料の付着率を向上させたものである。自動車の外装、外板部品製造用の樹脂材料としては、ポリアミドと他の熱可塑性樹脂とのブレンド物が多く使用されている。しかしながら、これら樹脂材料も、導電性を付与した場合には、靱性や流動性の低化が問題となっている。また、導電性物質は熱可塑性樹脂との分散性に劣り、ただ混合しただけでは期待する導電性が得られず、また分散不良に起因して成形品の外観が低下するという問題もある。
【0005】
熱可塑性樹脂に導電性物質を混合した場合、熱可塑性樹脂組成物中での導電性物質の分散状態が得られる成形品の電気特性に大きく影響し、導電性物質を均一に分散させないと、期待した電気特性が得難い。従来は、良好な電気特性を発揮させるためには、導電性物質の添加量を増加する方法を採っていたが、得られる成形品の表面外観が低下し、衝撃強度も低下する原因となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の諸欠点を解消した熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的として鋭意検討の結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.熱可塑性樹脂が本来具備する機械的強度や流動性を損なうことなく、優れた導電性や帯電防止性といった電気的性質を発揮する熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
2.優れた塗装性を発揮する熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、ポリアミド樹脂{(A)成分}90〜99.9重量%、導電性物質{(B)成分}0.1〜10重量%からなる樹脂組成物100重量部に対し、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体{(C)成分}が0.1〜15重量部配合されてなる熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分に(B)成分を溶融混練されてなる樹脂組成物に、(C)成分をドライブレンドしたものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。また、第2発明では、ポリアミド樹脂{(A)成分}90〜99.9重量%、導電性物質{(B)成分}0.1〜10重量%からなる樹脂組成物100重量部に対し、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体{(C)成分}が0.1〜15重量部配合されてなる熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(C)成分とを予め溶融混練し、その後に(B)成分を溶融混練したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を構成する原料樹脂の一種であるポリアミド{以下、単に(A)成分と略称することがある}とは、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できるものである。その代表的なものとしては、ポリアミド−4、ポリアミド−6、ポリアミド−6・6、ポリアミド−4・6、ポリアミド−12、ポリアミド−6・10、その他公知の芳香族ジアミン、芳香族ジカルン酸などの単量体成分を含む結晶性、または非晶性のポリアミドが挙げられる。ここでいう非晶性ポリアミドとは、示査走査熱量計(DSC)により測定される融解熱が1カロリー/グラム未満のものを意味する。好ましいポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6・6、半芳香族ポリアミであり、これらの混合物であってもよい。
【0009】
また、ポリアミド{(A)成分}は、23℃、98%濃硫酸中で測定した相対粘度が2.0〜7.0の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.0未満であると、機械的強度が不足し、7.0を越えると成形性に劣るため、好ましくない。中でも好ましいのは、(A)成分の末端カルボン酸含量が70μeq/g以下で、末端カルボン酸量と末端アミン量との比([末端カルボン酸]/[末端アミン])が4以下で、23℃、98%硫酸の相対粘度が3.0以下のものである。
【0010】
本発明において導電性物質{以下、単に(B)成分と略称することがある}とは、熱可塑性樹脂に配合することによって導電性や帯電防止性などの電気的性質を改良する物質をいう。具体的には、中空炭素フィブリル(b1)、導電性カーボンブラック(b2)、グラファイト(b3)、カーボンファイバー、カーボンファイバーの粉砕物、銅、ニッケル、亜鉛などの金属粉または金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆した無機または有機化合物、イオン性や非イオン性の有機界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤などが挙げられる。これらの導電性物質は、単独でも2種を以上組み合わせたものであってもよい。
【0011】
中空炭素フィブリル(b1)は、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルをいう。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmの範囲のものが好ましい。このような中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書に詳しく記載されている。その製法は、上記特許公報や米国特許明細書に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子などの遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素などの炭素含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解により生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。このような中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタリシス社より、グラファイト・フィブリルという商品名で販売されており、容易に入手することができる。
【0012】
導電性カーボンブラック(b2)は、ペイントなどに着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態のものもである。好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0013】
グラファイト(b3)としては、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。好ましくは70重量%以上の粒子が、アスペクト比3以下であるグラファイト粉末である。具体的な製造法としては、乾式または湿式粉砕機により粉砕した後、傾斜振動板などにより篩い分ける方法が挙げられる。
【0014】
本発明において、オレフィンと不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体{以下、単に(C)成分と略称することがある}は、次式、{−(S)m−(T)n−}、(この式において、Sはオレフィンから誘導される構成単位、Tは不飽和基および極性基を有する化合物から誘導される構成単位を表し、m、nは2以上の整数である。)、で表される共重合体であり、ランダム共重合体やブロック共重合体が挙げられる。
【0015】
上記式におけるSで表される構成単位を生成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2,3ージメチル−2−ブテン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどで表されるオレフィン系モノマーや、アレン、メチルアレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエンなどで表されるジオレフィン系モノマーを挙げることができる。上記式において、m、nは2以上の整数、好ましくは10以上である。これらのオレフィン系モノマー、ジオレフィン系モノマー1種の重合体、または2種以上の共重合体であってもよい。
【0016】
上記式におけるTで表される構成単位を生成する化合物としては、ヒドロキシル基、カルボン酸基、エポキシ基、酸無水物基、酸アミド基、イミド基、カルボン酸エステル基、およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種と、不飽和基とを有する化合物をいう。具体的には、例えば、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2−ノルボルネン−5,6ージカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジグリシジルマレートなどが挙げられる。
【0017】
上記式で表される(C)成分の具体例としては、好ましくは、エチレンとアクリル酸のランダム共重合体(c1)、またはエチレンとビニルアルコールとのランダム共重合体(c2)が挙げられる。エチレンとアクリル酸のランダム共重合体(c1)は、アクリル酸の共重合比率が1〜20重量%のものが好ましく、さらに好ましくは5〜15重量%のものが好ましく、中でも特に好ましいのは7〜9重量%である。エチレン−アクリル酸共重合体は、ハウエル社からACワックスという商品名で販売されている。また、エチレンとビニルアルコールとのランダム共重合体(c2)は、エチレンの共重合比率が20〜60モル%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜55モル%である。エチレン−ビニルアルコール共重合体(c2)は、クラレ社からエバールという商品名で販売されている。
【0018】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分の組合せに、さらに(A)成分、(C)成分以外の熱可塑性樹脂{以下、単に(D)成分と略称することがある}を配合した熱可塑性樹脂組成物とすることができる。(D)成分は、溶融、成形できるものであれば特に限定されるものではない。(D)成分の具体例としては、ポリオレフィン(d1)、ポリエステル(d2)、ポリアセタール(d3)、ポリフェニレンスルフィド(d4)、ポリフェニレンエーテル(d5)、ビニル芳香族化合物重合体(d6)、ゴム状重合体(d7)、ポリカーボネート(d8)、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0019】
(D)成分としてのポリオレフィン(d1)としては、α−オレフィンの単独重合体、これらα−オレフィンの共重合体、これらα−オレフィン(複数種でもよい)を主成分とし、必要により他の不飽和単量体(複数種でもよい)を副成分とする共重合体などが挙げられる。ここで共重合体とは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、またはこれらの複合物などのずれであってもよい。また、これらのポリオレフィンを塩素化、スルホン化、カルボニル化などによって変性したものであってもよい。
【0020】
これらポリオレフィン(d1)の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線条高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、プロピレン−エチレンブロック共重合体、またはランダム共重合体、エチレンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0021】
(D)成分としてのポリエステル(d2)としては、例えば、その一つとして、通常の方法に従って、ジカルボン酸、その低級アルキルエステル、酸ハライドまたは酸無水物誘導体と、グリコールまたは二価フェノールとを縮合させて製造する熱可塑性ポリエステルが挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イフタル酸、p,p’−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフェノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、または2,7−ナフタリンジカルボン酸、またはこれらカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0022】
脂肪族グリコールとしては、炭素数2〜12の直鎖アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテングリコール、1,6−ヘキセングリコール、1,12−ドデカメチレングリコールなどが挙げられる。また、芳香族グリコール化合物としては、p−キシリレングリコールが挙げられ、二価フェノールとしては、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンまたはこれらの化合物のアルキル置換誘導体が挙げられる。他の適当なグルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールも挙げられる。
【0023】
また、更に他の好ましいポリエステル(d2)としては、溶融状態で液晶を形成するポリマー(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)としてのポリエステルがり、イーストマンコダック社のX7G、ダートコ社のXyday(ザイダー)、住友化学社のエコノール、セラニーズ社のベクトラなどが挙げられる。上に挙げた飽和ポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、または液晶性ポリエステルなどが好適な飽和ポリエステルである。他の好ましいポリエステルとしては、ラクトンの開環重合によるポリエステルも挙げられる。例えば、ポリピバロラクトン、ポリ(ε−カプロラクトン)などである。
【0024】
ポリアセタール(d3)は、例えば、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンの重合によって製造された高分子量ポリアセタールホモ重合体、共重合体が挙げられる。ホルムアルデヒドから製造されるアセタール樹脂は、高分子量であり、次式、すなわち、−H−O−(CH2−O−CH2−O)x−H−、{この式において、末端基は制御された量の水から導かれたものであり、xは、頭−尾結合の形で結合した多数(好ましくは、約1500)のホルムアルデヒドユニットを表す}、によって表される構造を有する。
【0025】
耐熱性および化学的抵抗性を増加させるために、末端基をエステル基または、エーテル基に変換することが一般に行われている。これらの共重合体の例には、ホルムアルデヒドと、活性水素を提供することのできる他種物質の単量体またはプレポリマー、例えばアルキレングリコール、ポリチオール、ビニルアセテートーアクリル酸共重合体または還元したブタジエン/アクリロニトリルポリマーとのブロック共重合体が挙げられる。ホルムアルデヒドおよびトリオキサンは、他のアルデヒド、環状エーテル、ビニル化合物、ケテン、環状カーボネート、エポキシド、イシアネートおよびエーテルと共重合させることができる。これらの化合物の具体例には、エチレンオキサイド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセペン、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、イソブチレンオキサイドおよびスチレンオキサイドが挙げられる。
【0026】
ポリフェニレンスルフィド(d4)は、下記の式[I]で示される繰り返し単位を主構成要素として含有する結晶性樹脂である。
【0027】
【化1】
【0028】
ポリフェニレンスルフィド(d4)の重合法としては、p−ジクロロベンゼンを硫黄と炭酸ゼダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウまたは水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウム、もしくは硫化水素と水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合などが挙げられる。中でも、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒やスルホランなどのスルホン系溶媒中で、硫化ナトリウとp−ジクロロベンゼンを反応させる方法が適当である。本発明では、上記の繰り返し単位を主構成要素とするもの、すなわち上記の繰り返し単位からなるホモポリマー、または、これを主構成成分(80モル%以上)とし、他の繰り返し単位の一種または二種以上を20モル%以下の割合で有するコポリマーを使用することができる。
【0029】
(D)成分としてのポリフェニレンエーテル(d5)とは、下記の式[II]で表される構造を有する単独重合体または共重合体である。
【0030】
【化2】
【0031】
式[II]において、Q1およびQ2の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−もしくは4−メチルペンチルまたはヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イプロピル、sec−ブチルまたは1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1はアルキル基またはフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2は水素原子である。
【0032】
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な単独重合体またはランダム共重合体が、特許公報および文献に記載されている。例えば、分子量、溶融粘度および/または耐衝撃強度などの特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルもまた好適である。
【0033】
ここで使用するポリフェニレンエーテル(d5)は、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gのものが好ましい。固有粘度が0.2dl/g未満では組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを越えると成形性が不満足である。固有粘度は上記範囲で好ましいのは0.2〜0.7dl/gであり、中でも特に好ましいのは0.25〜0.6dl/gの範囲である。
【0034】
(D)成分としてのビニル芳香族化合物重合体(d6)とは、下記の式[III]で示される構造を有する化合物から誘導された重合体(樹脂)をいう。
【0035】
【化3】
【0036】
上記式[III]で表される構造を有する重合体(d6)の具体例としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸−アクリロニトリル−スチレン共重合体、メチルメタクート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、メチルメタクート−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体などが挙げられる。
【0037】
(D)成分としてのゴム状重合体(d7)としては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと共役ジエン化合物重合体Bとからなるブロック共重合弾性体(d71)、このブロック共重合弾性体の水素添加物(d72)、エチレン・プロピレン共重合体系ゴム、エチレン・ブテン共重合体系ゴムなどのエチレン−α−オレフィン系共重合体(d73)、これらエチレン−α−オレフィン系共重合体に非共役ジエンを共重合させたもの(d74)などが挙げられる。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0038】
ブロック共重合体(d71)は、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖ブロック「A」と、共役ジエン系化合物に由来する連鎖ブロック「B」を各々少なくとも一個有する構造を有する、ビニル芳香族化合物−共役ジエン系化合物ブロック共重合体のブロックBを有するブロック共重合弾性体である。水素添加物(d72)は、このブロック共重合弾性体(d71)の脂肪族不飽和結合を水素化して、不飽和結合を減少させたブロック共重合弾性体である。ブロックAおよびブロックBの配列は、線状構造をなすもの、または分岐構造(ラジカルテレブロック)のものを含む。また、これらの構造のうち一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これらのうちで線状構造のものが好ましく、ジブロック構造のものがより好ましい。
【0039】
ビニル芳香族化合物−共役ジエン系化合物ブロック共重合弾性体の水素添加物(d71)において、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲がより好ましい。水素添加物(d72)における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン系化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合は、その約25%以下が水素添加されていてもよい。
【0040】
これらの水素添加ブロック共重合弾性体(d72)は、それらの分子量の目安として、濃度15重量%のトルエン溶液の温度25℃での粘度が、30000〜10cpsの範囲内にあるものが好ましい。溶液粘度が、30000cpsより大きいと、最終組成物の成形加工性に難点を生じ、また10cpsより小さい値の範囲では、最終組成物の機械的強度レベルが低く好ましくない。
【0041】
ビニル芳香族化合物としては、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンが挙げられる。中でも好ましいのは、スチレンである。共役ジエンとしては、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0042】
(D)成分としてのゴム状重合体(d7)は、官能基を有する単量体をグラフトさせて変性させたもの(d75)であってもよい。変性用に使用できる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸等のα,β−飽和ジカルボン酸、またはエンド−シクロ[2,2,1]−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、もしくはこれらの誘導体などの脂環式カルボン酸、またはグリシジル基と(メタ)アクリレート基を同一分子内に持つ化合物、グリシジルオキシ基とアクリルアミド基を同一分子内に持つ化合物、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体、およびブチルグリシジルマレートなどの含エポキシ化合物が挙げられる。ゴム状重合体(D7)をこれら単量体によって変性する方法としては、(1)両者を混合して溶融混練する方法、(2)電離放射線を照射する方法、および(3)紫外線を照射する方法、などが挙げられる。
【0043】
(D)成分としてのポリカーボネート(d8)は、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートを挙げることができ、中でも芳香族ポリカーボネートが好適である。芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。製造方法は、限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)または溶融法(エステル交換法)などで製造することができる。さらに、溶融法で製造された、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネートであってもよい。
【0044】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ビスフェノールAである。この樹脂の難燃性を一層高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムを1個以上結合した化合物、および/または、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーまたはオリゴマーなどを、少量共存させることができる。
【0045】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物類、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用すればよく、その使用量は0.01〜10モル%の範囲が好ましい。
【0046】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーを共重合させることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、2種以上の組成の異なる樹脂の混合物であってもよい。
【0047】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、原料として一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよい。一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、およびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
【0048】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、メチレンクロライドを溶媒とし、温度25℃で測定した溶液粘度から換算した粘度平均分子量で、13,000〜30,000の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が13,000未満であると、樹脂組成物から得られる機械的強度が不足し、30,000を越えると樹脂組成物の成形性が悪く、いずれも好ましくない。
【0049】
上に例示した(D)成分の中で好ましいのは、ポリフェニレンエーテル(d5)、ポリカーボネート(d8)、ビニル芳香族化合物重合体(d6)、ゴム状重合体(d7)などが好ましい。中でも好ましいのは、ポリフェニレンエーテル(d5)、ゴム状重合体(d7)の中のビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体の水素添加物(d72)、エチレン−α−オレフィン系共重合体(d73)、ゴム状重合体(d7)に官能基を有する単量体によって変性させたもの(d75)の1種または2種以上の混合物である。
【0050】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を調製するには、まず、樹脂成分である(A)成分と(B)成分を、さらに要すれば(D)成分、後記する各種樹脂添加剤{(E)成分}などをそれぞれ所定量秤量して混合し、溶融混練する。次いで、(C)成分を混練するのが好ましい。(C)成分の割合は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し、0.1〜15重量部である。(C)成分が15重量部を超えると、樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度、成形性などが不満足であり、0.1重量%部未満であると、成形品の塗装性、導電性が不満足である。上記範囲で好ましいのは、(C)成分が0.5〜10重量部であり、より好ましいのは1〜8重量部である。
【0051】
導電性物質の(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対し0.1〜15重量部の範囲で選ぶものとする。(B)成分が0.1重量部未満であると、樹脂組成物から得られる成形品の導電性が不満足であり、15重量部を越えると、成形品の機械的強度、成形性が不満足である。上記範囲で好ましいのは0.5〜10重量部であり、より好ましいのは1〜8重量部である。
【0052】
熱可塑性樹脂組成物に(D)成分を配合する場合には、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、1〜80重量部の範囲で選ぶのが好ましい。(D)成分を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度、成形性などが改良されるが、80重量部を越えると、導電性、流動性が不十分になりやすい。(D)成分の好ましい配合量は、1.5〜60重量部であり、中でも特に好ましいのは2〜40重量部である。
【0053】
熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を混合・混練する方法としては、(1)所定量の各成分をタンブラーミキサーなどの混合機で混合し、この混合物を各種混練機、例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダープラストグラムなどの各種溶融・混練機で溶融・混練した後、粒状化する方法、(2)適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同士または溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混合する溶液混合法などが挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。工業的観点からは、上記(1)の溶融・混練法が好ましい。
【0054】
上記(1)の溶融・混練法では、あらかじめ(B)成分の含量が10〜30重量%のマスターバッチを調製し、このマスターバッチを溶融・混練する方法によると、(B)成分が良好に分散した樹脂組成物とすることができ好ましい。また、(A)成分と(B)成分とからなる樹脂成物を調製し、成形直前に(C)成分をドライブレンドして、成形に供するのが好ましい。
【0055】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を調製する際に、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、他の各種樹脂添加剤{(E)成分}を配合することができる。配合できる各種樹脂添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填材、発泡剤、難燃剤、防錆剤などが挙げられる。例えば、無機質充填材を配合すると、成形品の曲げ弾性率を向上させることができるので、好ましい。無機質充填材の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部であり、より好ましくは3〜30重量部である。無機質充填材としては、ワラストナイトなどのメタケイ酸カルシウム、マイカ、タルクなどが挙げられる。中でも好ましいのは、メタケイ酸カルシウムである。これら各種樹脂添加剤は、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を調製する際の最終工程で配合するのが好ましい。
【0056】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、導電性や帯電防止性が要求される製品、例えばOA機器、電子機器、導電性包装用部品、帯電防止性包装用部品、静電塗装が適用される自動車部品などの製造用の成形材料として好適に使用される。これら製品を製造する際には、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によることができる。成形法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法などが挙げられる。
【0057】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明は以下に記載の例に限定されるものではない。なお、以下に記載の例において、使用した各成分の物性などの詳細は次のとおりである。また、以下に記載の実施例、比較例において配合量は重量部を意味し、得られた樹脂組成物についての評価試験は、下記に記載の方法で行った。
【0058】
(A)成分(熱可塑性樹脂):
(A−1)PA6:末端カルボン酸含量が126μeq/g、末端カルボン酸と末端アミンとの比が4.8、温度23℃の98%硫酸中で測定したときの相対粘度が2.0のポリアミド6(以下、PA6と略記する)である。
(A−2)PA6:末端をステアリン酸とステアリルアミンで封鎖したポリアミド6。末端カルボン酸含量が49μeq/g、末端カルボン酸と末端アミンとの比が3.5、温度23℃の98%硫酸中で測定したときの相対粘度が、2.1の低カルボン酸末端ポリアミド6(以下、PA6と略記する)である。
【0059】
(B)成分(導電性物質):
(B-1)カーボンブラック:比表面積が28m2/g、DBP吸油量が65ml/100gのカーボンブラック{ライオン社製で、商品名:SRFカーボン(汎用カーボンブラック)}である。
(B-2)PA/20BN:グラファイト・フィブリルBN(外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル)を20重量%、ポリアミド6を80重量%含有するマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PA/20BN)である。
【0060】
(C)成分(熱可塑性樹脂):
(C-1)エチレン−アクリル酸共重合体:アクリル酸含量が9.2重量%のエチレン−アクリル酸共重合体(ハウエル社製、ACワックス5120)である。
(c-2)エチレン−ビニルアルコール共重合体:エチレン含量が47モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ製、商品名:エバールG156A)である。
【0061】
(D)成分(熱可塑性樹脂):
(D-1)変性SEBS:ビニル芳香族化合物−共役ジエン系化合物ブロック共重合体の水素添加物(シェル社製、商品名:クレートンG1652)100重量部と、無水マレイイ酸(試薬一級)2重量部とを、スーパーミキサーで十分に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)を用いて溶融混練し、ペレット化したもの。
(D-2)PPE:温度30℃、クロロホルム中で測定した固有粘度[η]が0.3dl/gの、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。
【0062】
(E)その他:
(E-1)ワラストナイト:ナイコ社製のナイグロス4(商品名)である。
【0063】
(1)MFR(g/10min):JIS K7210に準拠し、温度260℃、荷重5kgとして測定した。
(2)滞留後の外観:射出成形機(東芝社製品、型式:IS−150、型締め力150トン)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、シリンダー内での滞留時間を通常の4倍の20分間として平板(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成し、得られた平板について目視観察した。判定基準は、シルバー模様が認められなかったものを◎、シルバー模様が平板面積の10%以下のものを○、シルバー模様が平板面積の50%以上のものを×とした。
【0064】
(3)曲げ弾性率(Mpa):ASTM D790に準拠して曲げ試験を行った。
(4)アイゾット衝撃強度(J/m):ASTM D256に準拠し、厚さが3.2mm、ノッチ付きの試験片で測定した。
【0065】
(5)塗装性:上記射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形して平板(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成し、この平板について、次のような方法で評価を行った。まず、平板の表面にアクリルウレタン系塗料(オリジン電気社製、OP−Z−NY)を塗布し、塗布面を温度を変えて焼き付け、焼き付けたあとの塗布面に一辺が1mm幅で碁盤目状のスリットを刻設し、この上にセロハンテープを貼着したあと、セロハンテープを剥離する方法である。焼き付け温度80℃で塗布面が全く剥離しないものを◎、焼き付け温度100℃で塗布面が全く剥離しないものを○+、焼き付け温度120℃で塗布面が全く剥離しないものを○、一部でも剥離が認められたものを×、と表示した。
【0066】
(6)体積抵抗(単位:Ωcm):射出成形機(東芝社製品、型式:IS−150、型締め力150トン)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で平板(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成し、この平板の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、テスターで抵抗値(RL)を測定し、体積抵抗Rは、次式、RL×AL/L(ALは試験片の断面積、Lは長さを意味する)、より計算した。
【0067】
<中間組成物Yの調製>
上記の(A-1)PA6を30重量部と、(C-1)エチレン−アクリル酸共重合体2重量部とを、タンブラーミキサーによって均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下でペレット化した。
【0068】
[実施例1〜実施例5、実施例7〜実施例10]
各原料を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーによって均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmでペレット化した。次にこの樹脂組成物を、射出成形機(住友ネスタール社製品、型締め力75トン)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形して試験片を作成し、試験片について上記した方法で評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0069】
[実施例6]
各原料を表−1に示す割合で秤量し、まず、(C)成分を除く成分を実施例1におけると同様に二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmでペレット化した。次いで、試験片を作成する直前にこのペレットに(C)成分をドライブレンドして試験片を作成し、試験片について実施例1におけると同様に評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0070】
[比較例1]
各原料を表−1に示す割合で秤量し{(C)成分を配合しない}、実施例1におけると同様に二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmでペレット化した。次いで、試験片を作成する直前にこのペレットに(C)成分をドライブレンドして試験片を作成し、試験片について実施例1におけると同様に評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0071】
[比較例2]
各原料を表−1に示す割合で秤量し{(B)成分を配合しない}、実施例1におけると同様に二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpmでペレット化した。次いで、試験片を作成する直前にこのペレットに(C)成分をドライブレンドして試験片を作成し、試験片について実施例1におけると同様に評価試験を行った。評価結果を、表−1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表−1より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明の実施例の樹脂組成物は、流動性、熱安定性、機械的強度、塗装性、導電性などに優れている(実施例4〜実施例7参照)。
(2)これに対して、(C)成分が配合されていない比較例1の樹脂組成物は、熱安定性、塗装性に劣る。
(3)また、(B)成分が配合されていない比較例2の樹脂組成物は、導電性が大幅に劣る。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のようが特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂が本来有する優れた機械的強度や流動性を損なうことなく、優れた導電性、帯電防止性などの電気的特性を発揮する。
2.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、優れた熱安定性、塗装性を発揮する。
3.本発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、機械的強度、塗装性、熱安定性、衝撃強度に優れ、かつ導電性、帯電防止性が優れているので、電気電子の搬送、包装用部品、電気電子分野やOA機器用部品、静電塗装用の自動車部品など、多くの分野に有用である。
Claims (7)
- ポリアミド樹脂{(A)成分}90〜99.9重量%、導電性物質{(B)成分}0.1〜10重量%からなる樹脂組成物100重量部に対し、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体{(C)成分}が0.1〜15重量部配合されてなる熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分に(B)成分を溶融混練されてなる樹脂組成物に、(C)成分をドライブレンドしたものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂{(A)成分}90〜99.9重量%、導電性物質{(B)成分}0.1〜10重量%からなる樹脂組成物100重量部に対し、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体{(C)成分}が0.1〜15重量部配合されてなる熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分と(C)成分とを予め溶融混練し、その後に(B)成分を溶融混練したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分の末端カルボン酸含量が70μeq/g以下で、末端カルボン酸量と末端アミン量との比([末端カルボン酸]/[末端アミン])が4以下で、23℃、98%硫酸の相対粘度が3.0以下である、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 極性基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基、酸アミド基、イミド基、カルボン酸エステル基、およびアミノ基からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (C)成分が、エチレン−アクリル酸共重合体またはエチレン−ビニルアルコール共重合体である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分ないし(C)成分に、さらに(A)成分および(C)成分以外の熱可塑性樹脂{(D)成分}が配合されてなる、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (D)成分が、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビニル芳香族化合物の重合体ブロックAと、共役ジエン系化合物の重合体ブロックBとが、A−B−A型の構造を有するブロック共重合弾性体の水素添加物、または、エチレン−α−オレフィン系共重合体、からなる群から選ばれる1種または2種以上の組合せから選ばれものである、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001253569A JP4608151B2 (ja) | 2001-08-23 | 2001-08-23 | 熱可塑性樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001253569A JP4608151B2 (ja) | 2001-08-23 | 2001-08-23 | 熱可塑性樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003064254A JP2003064254A (ja) | 2003-03-05 |
JP4608151B2 true JP4608151B2 (ja) | 2011-01-05 |
Family
ID=19081875
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001253569A Expired - Lifetime JP4608151B2 (ja) | 2001-08-23 | 2001-08-23 | 熱可塑性樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4608151B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4951196B2 (ja) * | 2003-05-06 | 2012-06-13 | 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物 |
JP2004346234A (ja) * | 2003-05-23 | 2004-12-09 | Mitsubishi Engineering Plastics Corp | 導電性熱可塑性樹脂組成物 |
JP5276248B2 (ja) * | 2004-07-12 | 2013-08-28 | ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. | 導電性熱可塑性樹脂組成物 |
WO2006006535A1 (ja) * | 2004-07-12 | 2006-01-19 | Mitsubishi Engineering-Plastics Corporation | 熱可塑性樹脂組成物 |
JP5281228B2 (ja) * | 2004-07-12 | 2013-09-04 | ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. | 熱可塑性樹脂組成物 |
WO2006049139A1 (ja) * | 2004-11-04 | 2006-05-11 | Lion Corporation | 導電性マスターバッチ及びそれを含む樹脂組成物 |
Citations (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0350263A (ja) * | 1989-07-18 | 1991-03-04 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | 熱可塑性樹脂組成物 |
JPH05105809A (ja) * | 1991-04-08 | 1993-04-27 | Mitsubishi Petrochem Co Ltd | ポリフエニレンエーテル樹脂組成物の製造方法 |
JPH05117424A (ja) * | 1991-10-30 | 1993-05-14 | Sumitomo Chem Co Ltd | ポリアミド系樹脂組成物成形品の表面処理方法および塗装方法 |
JPH0867816A (ja) * | 1994-06-24 | 1996-03-12 | Unitika Ltd | 樹脂組成物 |
JPH08151442A (ja) * | 1994-11-29 | 1996-06-11 | Toyobo Co Ltd | ポリアミド樹脂およびその組成物 |
JPH10292106A (ja) * | 1997-04-18 | 1998-11-04 | Toray Ind Inc | ポリアミド樹脂組成物 |
JPH11343407A (ja) * | 1998-03-31 | 1999-12-14 | Toray Ind Inc | 溶着用導電性熱可塑性樹脂組成物および導電性樹脂成形体 |
JP2000160004A (ja) * | 1998-11-27 | 2000-06-13 | Degussa Huels Ag | プラスチック製品およびポリアミド含有成形材料 |
-
2001
- 2001-08-23 JP JP2001253569A patent/JP4608151B2/ja not_active Expired - Lifetime
Patent Citations (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0350263A (ja) * | 1989-07-18 | 1991-03-04 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | 熱可塑性樹脂組成物 |
JPH05105809A (ja) * | 1991-04-08 | 1993-04-27 | Mitsubishi Petrochem Co Ltd | ポリフエニレンエーテル樹脂組成物の製造方法 |
JPH05117424A (ja) * | 1991-10-30 | 1993-05-14 | Sumitomo Chem Co Ltd | ポリアミド系樹脂組成物成形品の表面処理方法および塗装方法 |
JPH0867816A (ja) * | 1994-06-24 | 1996-03-12 | Unitika Ltd | 樹脂組成物 |
JPH08151442A (ja) * | 1994-11-29 | 1996-06-11 | Toyobo Co Ltd | ポリアミド樹脂およびその組成物 |
JPH10292106A (ja) * | 1997-04-18 | 1998-11-04 | Toray Ind Inc | ポリアミド樹脂組成物 |
JPH11343407A (ja) * | 1998-03-31 | 1999-12-14 | Toray Ind Inc | 溶着用導電性熱可塑性樹脂組成物および導電性樹脂成形体 |
JP2000160004A (ja) * | 1998-11-27 | 2000-06-13 | Degussa Huels Ag | プラスチック製品およびポリアミド含有成形材料 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003064254A (ja) | 2003-03-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4078537B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
US9062191B2 (en) | Polyphenylene ether-based resin composition and molded product using the same | |
EP2066750B1 (en) | Reinforced poly (arylene ether)/polyamide composition and article comprising the foregoing | |
US8092717B2 (en) | Thermoplastic poly(arylene ether) / polyester blends and articles thereof | |
JP2010100837A (ja) | 樹脂組成物 | |
JP2015199959A (ja) | 導電性ポリアミド成形材料 | |
JP2003064255A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
WO2006006535A1 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
KR20100134639A (ko) | 난연성 폴리프탈아미드/폴리(아릴렌에테르) 조성물 | |
US20070049690A1 (en) | Impact modified poly(arylene ether)/polyester blends and method | |
JP4608151B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
KR101875266B1 (ko) | 전도성 폴리아미드/폴리페닐렌 에테르 수지 조성물 및 이로부터 제조된 자동차용 성형품 | |
JP2002146206A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
JP4397115B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 | |
KR101277723B1 (ko) | 폴리페닐렌에테르계 열가소성 수지 조성물 | |
JP2002146205A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
JP4450557B2 (ja) | 導電性熱可塑性樹脂組成物 | |
US8536272B2 (en) | Thermoplastic poly(arylene ether)/polyester blends and method of making | |
JP4393110B2 (ja) | 導電性熱可塑性樹脂組成物 | |
JP2005179547A (ja) | 自動車外装部品製造用樹脂組成物 | |
JP4570682B2 (ja) | 導電性熱可塑性樹脂組成物 | |
JP5352364B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物及びその成形体 | |
JPH0812768A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物成形体 | |
JP7459387B2 (ja) | 高電圧絶縁用成形品、高電圧絶縁用成形品の製造方法および高電圧絶縁用成形品による耐トラッキング性向上方法 | |
JP2003026937A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080131 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20091222 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100506 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20100630 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20100630 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100705 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20100630 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20100722 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20100722 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20100727 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100902 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20100928 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20101008 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 4608151 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131015 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |