JP3649934B2 - 光走査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザプリンタやデジタル複写機等の画像記録装置に用いられる光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光走査装置は、画像信号によって変調されたレーザ光を、高速回転する回転多面鏡(ポリゴンミラー)によって偏向走査し、その走査光を折り返しミラーで反射させて感光体に照射するものである。
【0003】
図7は、従来から用いられている光走査装置の概略を示す構成図であり、図示しないLD(レーザダイオード)から出射した光束は、ポリゴンモータ等の回転駆動手段1によって等角速度で高速回転する回転多面鏡2によって偏向される。偏光された光束は結像素子3を通り、折り返しミラー4によって光路を変え、カバーガラス5を通過して感光体6上にスポット光として集光する。
【0004】
この図7では、結像素子3はレンズ系として示されているが、反射光学系やレンズ系と反射光学系との組み合わせであっても差支えない。これらの各光学素子や各部材は密閉された光学ハウジング7内に収納されており、この光学ハウジング7に上述のカバーガラス5が固定されて防塵性を確保している。また、折り返しミラー4は通常走査方向に長い長尺の短冊状をなし、その両端部のみを板ばね等の保持固定部材により弾装している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の光走査装置にあっては、折り返しミラーを長手方向の両端部のみで保持していたので、回転多面鏡を回転駆動するポリゴンモータのアンバランスによる振動やスキャナモータ等の画像記録装置本体駆動系のモータやギヤ等の回転振動により、長尺の折り返しミラーが両端部を節とし中央部付近をハラとして振動する。このとき、ミラー中央部の振幅が最大となる。
【0006】
それに伴って感光体上のスポット光が正規の位置から感光体の円周方向に振動し、走査ピッチムラを生じ、画像上では濃度ムラとなって観察される。この濃度ムラは通常バンディングと称され、感光体等の駆動系の回転ムラによっても発生するが、ピッチの細かい濃度ムラの要因としては折り返しミラーの振動による場合が多く、これを低減することが画質向上における重要課題となっている。
【0007】
このような折り返しミラーの振動を低減するための技術として、例えば特開平2−253274号公報や特開平9−197320号公報に示されるようなものが知られている。
前者は、両端部を一対の固定部材で保持した折り返しミラーの中央部のミラー面と直交する面側と光学ハウジングとの間にゴムや発泡ポリウレタン等の緩衝部材を介在させるようにしたものである。
【0008】
また、後者は、折り返しミラーの振動振幅のもっとも大きい中央部近傍のミラー面の背面に、折り返しミラーとほぼ平行して短冊状の振動低減部材の中央部を取り付け、この振動低減部材の1次又は2次の固有振動数を折り返しミラーの固有振動数に近くなるように設定したものである。
【0009】
しかし、このような構成では、前者は折り返しミラーの中央部側面が緩衝部材に一方から摺接しているだけであるので、長尺の折り返しミラー中央部の振動を充分に抑え込むことは困難である。
また、後者は、折り返しミラー中央部の質量が重くなり、かえって外部からの振動の影響を受けやすく、さらに、折り返しミラーに垂直な方向でハラの部分が振動するので、振動低減部材の振動位相が半波長分ずれて両者の振動を相殺することは難しいと思われる。
【0010】
図8は、前者の折り返しミラーの中央部に加速度計を搭載し、図7に示した回転多面鏡をその回転駆動手段によって高速回転させた場合の加速度計の出力電圧Vを縦軸に、時間の経過Tを横軸にとって示した折り返しミラーの振動特性線図であり、出力電圧Vは折り返しミラー中央部の振幅の大きさに相当する。
【0011】
また、図9は、同じく縦軸に加速度計の出力電圧Vを、横軸を振動周波数としてFFT(周波数分析)をかけた図である。これから分かるように、折り返しミラーの固有周波数が200.2Hz,397.95Hz,1594.2Hzにそれぞれ35.2mV,137.6mV,37.6mVの3つの振動のピークが見られる。
【0012】
このうち、画像上にバンディングとして現れるのは、感光体表面の線速を折り返しミラーの固有周波数で除した値が目で認識し得る大きさになった場合である。すなわち、例えば線速を101.27mmとすると共振周波数200.2Hzの場合には、画像上略0.5mmピッチとなり、この大きさは充分に目で確認することができる。なお、共振周波数397.95Hz及び1594.2Hzの場合はピッチが小さすぎて確認不能である。
【0013】
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、回転多面体の高速回転時のダイナミックバランスに起因する振動や画像記録装置本体の駆動系の回転振動により、光走査装置内の折り返しミラーが共振して、感光体面上の走査位置がずれることにより発生する画面の濃度ムラを低減させることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の目的を達成するため、光学ハウジング内に、回転多面鏡と、該回転多面鏡によって偏向走査された走査光を感光体に向けて反射する折り返しミラーとを設けた光走査装置において、前記光学ハウジングに、上記折り返しミラーの長手方向の一側面の中間部をその反射面と垂直な面で受ける受け面を備えたリブ状の中間受け部と、前記折り返しミラーの長手方向の他の側面を前記反射面に平行な方向から弾性変形することにより押圧して固定する中間押圧部材とを設け、その中間押圧部材は、上記光学ハウジングに対して止めねじによって螺着され、その止めねじを螺入することにより、前記折り返しミラーの側面を押圧する付勢力を調整可能にしたものである。
【0015】
上記光走査装置において、上記折り返しミラーの中間部の上記中間押圧部材に当接する側面を破断面とするのが好ましい。
さらに、上記光走査装置において、上記中間受け部の上記受け面と上記折り返しミラーの上記一側面との間に弾性片を介在させるとよい
【0016】
この発明による光走査装置は上記のように構成することにより、光学ハウジングに、長尺の折り返しミラー長手方向中間部に対して少なくとも1箇所の受け部とそれに対応する中間押圧部を設け、上記折り返しミラーの一側面をその受け部の反射面と垂直な受け面で受け、他の側面を上記中間押圧部材の弾性変形によって反射面に平行な方向から押圧して固定し、その中間押圧部材を光学ハウジングに対して止めねじによって螺着することにより、上記折り返しミラーの側面を押圧する付勢力が調整される。
それによって、上記折り返しミラーの固有振動数見かけ上高い方にシフトさせ、光学ハウジング内外からの振動に対する共振点をずらして有害な振動を防止することができる。
したがって、折り返しミラーの振動に基づく感光体面上の走査位置のずれが防止され、それに起因して発生する画面の濃度ムラが低減される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態を示す分解斜視図であり、図7に対応する部分には同一の符号を付して示してある。なお、図1では、図を簡略にするため、この発明の要旨に直接関係のないLD(レーザダイオード)ユニット,ポリゴンミラー,その回転駆動手段,結像素子等は省略してある。
【0018】
光学ハウジング7の底面から一対の逆L字状の両端受け部7a,7aを、その中間部に一対のリブ状の中間受け部7b,7bをそれぞれ一体に突設し、長尺の折り返しミラー4の反射面4aの両端部を両端受け部7a,7aの受け面7c,7cに当接させ、折り返しミラー4の裏面側から押圧部材である板ばね状の両端押さえばね8,8により押圧して弾装する。
【0019】
図2は、折り返しミラー4の一端を両端受け部7aと両端押さえばね8とにより光学ハウジング7に弾装した状態を示す一部拡大断面図である。両端押さえばね8をその付勢力に抗してその折曲げ角を挾めるように押圧しながら折り返しミラー4の背面側から挿入し、その底部に形成した透孔8aを光学ハウジング7に突出して形成したストッパ部7dに嵌入させた状態でその押圧を釈放すれば、両端押さえばね8は折り返しミラー4の端面を両端受け部7aの受け面7cへ押圧固定する。
【0020】
一方、折り返しミラー4の中間部側面を支持する中間受け部7bは、その詳細を図3の一部拡大断面図に示すように、先端部に折り返しミラー4の長手方向の側面4bを受ける反射面4aに略垂直(側面4bに平行)な受け面7eを備えている。したがって、折り返しミラー4の側面4bを直接上記受け面7eに当接させることも可能であるが、図1及び図3に示す実施形態では、両者の間にゴム等や発泡ポリウレタン等の短冊状の弾性片9を介在させている。
【0021】
両端部を両端受け部7a,7aと両端押さえばね8,8で保持した折り返しミラー4の中間部側面を、それぞれ弾性片9,9を介して中間受け部7,7の受け面7e,7eに支持させ、支持側と反対側の側面を、光学ハウジング7に基部を止めねじ10,10で固設した中間押圧部材である板ばね状の中間押さえばね11,11の球状突起部11a,11a(図1ではこれらの部材はいずれもその一方のみを示す)により押圧して固定している。このとき、中間押さえばね11の付勢力により弾性片9が僅かに弾性変形することによって折り返しミラー4の反射面4aの位置決めが行われる。
【0022】
図4は、中間押さえばね11の止ねじ10による光学ハウジング7への螺着工程初期の状態を示す説明図であり、この状態から図示しないドライバにより止めねじ10をさらに螺入すると、中間押さえばね11の球状突起部11aが折り返しミラー4の側面4bを強力に摺動しながらほぼ鉛直方向に移動する。それによって、折り返しミラー4の側面4bを押圧する付勢力が強くなるので、その付勢力を最適に調整できる。
【0023】
この過程で折り返しミラー4の側面4bに強い摩擦力が作用して折り返しミラー4が図で下方に凸となる反りが発生することがないように、折り返しミラー4の弾性片9側と反対側の中間押えばね11に摺接する側の側面4bは、摺動摩擦係数の低い破断面にするとよい。このようにすれば、中間押さえばね11の球状突起部11aと折り返しミラー4の側面4bとの摺動摩擦が小さくなって折り返しミラー4の曲げ剛性より大きくなるおそれがなく、折り返しミラー4の反りが防止される。
【0024】
もし、この折り返しミラー4の側面4bがすり面となっている場合は、止めねじ螺入時の折り返しミラー4の反りを防止すること困難なる。そのため、折り返しミラー4を逆方向へ指で矯正したり、中間押さえばね11を組付後一時的にばね圧を解除する等の無駄な矯正工程の必要が生じ、生産性も低下する。
【0025】
なお、上記の実施形態においては折り返しミラー4の中間部側面を受ける中間受け部7bを2箇所設けたので、その受け面7eの僅かな位置ずれや弾性片9の僅かな厚さの差等により折り返しミラー4の両端部の位置が前後するおそれがある。そのため、図2に示すように、折り返しミラー4の両端部を保持する両端受け部7aの垂直壁面7fと折り返しミラー4の側面4bとの間に隙間Gを形成して両端部の僅かな変位を吸収するようにするとともに、折り返しミラー4の両端部と両端受け部7aの内壁面7gとの間にも若干の隙間を形成することにより、折り返しミラー4の固有振動数が変化しないようにしている。
【0026】
このように、折り返しミラー4を両端部だけでなく、その中間部2箇所で弾性的に支持することにより、見かけ上折り返しミラー4の固有振動数を高周波側にシフトすることができ、光学ハウジング7の内外からの振動に対する折り返しミラー4の共振点をずらすことが可能になり、簡単な構成でその振動を防止することができる。
【0027】
図5及び図6は、先に図8及び図9で示した従来例と同様の条件下でこの発明を適用した場合の折り返しミラーの振動特性を示す線図である。
回転多面鏡高速回転時の折り返しミラー中央部に搭載した加速度計の出力電圧V、すなわち折り返しミラー中央部の振動は、図5に示すように全時間に亘って図8より明らかに低減されていることが分かる。
【0028】
また、図6に示すように折り返しミラーの固有振動数は図9に現れたバンディングの原因となる200.2Hzのピークは消滅してバンディングが認められないより高周波の1196.3Hzにシフトするとともに、397.95Hzのピークも図9の半分以下に減少し、周波数全域に亘って画像上のバンディングが認められない周波数側にシフトしている。
【0029】
なお、図1に示した上記の実施形態では、折り返しミラーの長手方向の中間部を受ける中間受け部とその中間押さえばねを2箇所に設けたが、これはそれに限るものではなく、折り返しミラーの長さや厚さ等に応じて1箇所でもよく、3箇所以上設けても差支えない。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明による光走査装置は、折り返しミラーの一側面を保持するための受け部と弾性変形により他の側面を押圧する中間押圧部材を長手方向中間部設け、その中間押圧部材による折り返しミラーの側面に対する付勢力を調整可能にしたので、折り返しミラーの見かけ上の固有振動数を高い方にシフトさせて、装置内外からの振動に対する共振点を簡単な構成でバンディング発生のおそれのない高周波側へずらすことが可能になる。
【0031】
そして、上記の光走査装置において、折り返しミラー中間部の押圧部材に当接する側面を破断面による摺動摩擦係数の低い面にすれば、押圧部材組付け時の折り返しミラー側面との摺動により折り返しミラーに反りが発生するおそれがなくなり、生産性が向上する。
【0032】
また、光走査装置の光学ハウジングに、折り返しミラーの一側面の中間部をその反射面と垂直な面で受ける受け面を備えたリブ状の中間受け部と、他の側面を上記反射面に平行な方向から弾性変形することにより押圧して固定する中間押圧部材とを設けたので、折り返しミラーを反射面に対して直交する方向で受けることができ、一方、押圧部材は反射面に対して略平行な方向から折り返しミラーを押圧することができ、反射面の平面度を劣化させるおそれがなく、走査線の曲がりも防止される。
【0033】
そして、上記の光走査装置において、中間受け部と折り返しミラーの中間部側面との間に弾性片を介在させるようにすると、各接触面の摩擦係数が増大し、弱い押圧力でも反射面に平行なハラ部の振動を抑えることができ、反射面に対してひずみを与えるおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同じくその折り返しミラー端部の支持状態を示す断面図である。
【図3】同じくその折り返しミラー中間部の支持状態を示す断面図である。
【図4】同じくその折り返しミラー中間部の中間押さえばねの取付け初期工程を示す断面図である。
【図5】同じくその折り返しミラー中央部の振動状態を示す特性線図である。
【図6】同じくその折り返しミラー中央部の周波数毎の振動の大きさを示す特性線図である。
【図7】従来の光走査装置の概略を示す構成図である。
【図8】同じくその折り返しミラー中央部の振動状態を示す特性線図である。
【図9】同じくその折り返しミラー中央部の周波数毎の振動の大きさを示す特性線図である。
【符号の説明】
1:回転駆動手段 2:回転多面鏡
3:結像素子 4:折り返しミラー
6:感光体 7:光学ハウジング
8:両端押さえばね 9:弾性片
10:止めねじ 11:中間押さえばね

Claims (3)

  1. 光学ハウジング内に、回転多面鏡と、該回転多面鏡によって偏向走査された走査光を感光体に向けて反射する折り返しミラーとを設けた光走査装置において、
    前記光学ハウジングに、前記折り返しミラーの長手方向の一側面の中間部をその反射面と垂直な面で受ける受け面を備えたリブ状の中間受け部と、前記折り返しミラーの長手方向の他の側面を前記反射面に平行な方向から弾性変形することにより押圧して固定する中間押圧部材とを設け
    該中間押圧部材は、前記光学ハウジングに対して止めねじによって螺着され、該止めねじを螺入することにより、前記折り返しミラーの側面を押圧する付勢力を調整可能としたことを特徴とする光走査装置。
  2. 請求項1記載の光走査装置において、前記折り返しミラー中間部の前記中間押圧部材に当接する側面を破断面としたことを特徴とする光走査装置。
  3. 請求項1又は2記載の光走査装置において、前記中間受け部の前記受け面と前記折り返しミラーの前記一側面との間に弾性片を介在させたことを特徴とする光走査装置。
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