JP3638409B2 - 圧電磁器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電磁器およびその製造方法に関わり、例えばセラミックフィルタ、セラミックレゾネータ、超音波応用振動子、圧電ブザー、圧電点火ユニット、超音波モータ、圧電ファン、圧電アクチュエータおよび加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサ等に適する圧電磁器およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、圧電磁器組成物を利用した製品としては、例えばセラミックフィルタ、セラミックレゾネータ、超音波応用振動子、圧電ブザー、圧電スピーカー、超音波モータ、圧電ファン、圧電アクチュエータ等がある。
【0003】
従来、ブザーやスピーカー等の圧電発音体素子の材料としては、PbZrO3 −PbTiO3 を主成分とした磁器組成物が利用されており、これにNb2 O5 やMnO2 等の金属酸化物、Pb(Nb2/3 Sn1/3 )O3 等の複合ペロブスカイト酸化物を添加したり、置換することにより圧電特性の向上が図られている。
【0004】
例えば特公昭54−36756号公報に記載のPb( Nb2/3 Sn1/3 )O3 −PbZrO3 −PbTiO3 系の圧電磁器組成物が開示されている。
【0005】
一方、例えばセラミックフィルター、セラミックレゾネーター等においては、その特性を最大限に引き出すためには、一般的に圧電磁器の電気機械結合係数Kpが大きい方が良い。他方、近年では、電子部品は屋内使用の機器だけではなく、環境変化の激しい車両搭載用通信装置などにも使われており、温度変化に対する信頼性が要求されている。
【0006】
従って、近年においては、電気機械結合係数Kpが高く、さらに共振周波数の温度係数(FrTC)が小さい材料が望まれている。
【0007】
また、近年、回路基板への表面実装化が進み、上記電子部品を基板上に半田付けする際、短時間ながら230℃程度の高温にさらされる状況にある。このため、上記電子部品に使用する圧電材料には、230℃程度のサーマルショック(熱衝撃)に耐えられることが必要となってきている。
【0008】
そして、上記した例えば、Pb( Nb2/3 Sn1/3 )O3 −PbZrO3 −PbTiO3 系の圧電磁器は、例えば、Pb( Nb2/3 Sn1/3 )O3 粉末、PbZrO3 粉末、PbTiO3 粉末を作製し、これらを所定量で混合した後、仮焼して固溶体粉末を作製し、この後、固溶体粉末を成形し、1200〜1300℃で2〜4時間焼成することにより得られていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した圧電磁器では、圧電特性、例えば、電気機械結合係数Kpや共振周波数の温度係数FrTCの制御が困難であった。即ち、圧電磁器は一般的に上記したPb( Nb2/3 Sn1/3 )O3 −PbZrO3 −PbTiO3 系圧電磁器のように、仮焼して固溶体粉末を作製し、この固溶体粉末を用いて圧電磁器を作製しているため、ほぼ均一な特性を有する単一結晶相の圧電磁器となり、その結晶相の特性がそのまま圧電磁器の特性となるが、結晶相は焼成条件等の影響を受けやすく、何らかの原因で結晶相が変化することがあり、圧電磁器を作製しなければ実際の特性を知り得ず、圧電特性の制御が困難であった。
【0010】
また、230℃程度のサーマルショックを受けた際、共振周波数が変化してしまい、電子部品の素子として使用する上で大きな制限を受けるという問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、従来のほぼ均一な特性を有する単一種類のぺロブスカイト型結晶相からなる圧電磁器に代えて、サーマルショックによる共振周波数の変化が少なく、圧電特性の異なる2種以上のぺロブスカイト型結晶相を複合化させることにより、共振周波数の温度係数FrTCや電気機械結合係数Kp、耐サーマルショック性等の制御が容易となることを見い出し、本発明に至った。また、圧電特性の異なる2種以上のぺロブスカイト型結晶相を複合化させるには、マイクロ波にて焼成することにより達成できることを見い出し、本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明の圧電磁器は、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子からなる圧電磁器であって、前記2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有し、かつ少なくとも1種のペロブスカイト型結晶粒子が、25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrsが0.5%以下の特性を有するものである。
【0013】
ここで、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、Cr、Sr、La、YおよびCoを含有するペロブスカイト型結晶粒子と、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、SbおよびCrを含有するペロブスカイト型結晶粒子とを含むことが望ましい。
【0014】
また、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が共振周波数の温度係数FrTCsが正の結晶粒子と負の結晶粒子とを含むことが望ましい。
【0015】
さらに、共振周波数の温度係数FrTCが−150〜150ppm/℃、電気機械結合係数Kpが55%以上、25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrが0.7%以下の特性を有することが望ましい。
【0016】
このような圧電磁器は、電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有する2種以上のペロブスカイト型酸化物粉末からなる混合粉末であって、前記2種以上のペロブスカイト型酸化物粉末のうち少なくとも1種が25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrsが0.5%以下の特性を有するペロブスカイト型酸化物粉末である混合粉末を用いて成形体を作製し、該成形体をマイクロ波にて焼成し、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶相を複合化させることにより製造される。
【0017】
【作用】
本発明の圧電磁器では、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶相を複合化させるため、例えば、高い電気機械結合係数Kpsを有し、且つ、耐サーマルショック性を有するペロブスカイト型結晶相であって、共振周波数の温度係数FrTCsの異なる2種以上のペロブスカイト型結晶相を存在せしめ、その割合を調整することにより、高い電気機械結合係数Kpおよび耐サーマルショック性を有し、各ペロブスカイト型結晶相が個別に有する共振周波数の温度係数FrTCsの範囲内で、圧電磁器の共振周波数の温度係数FrTCを制御することができる。
【0018】
また、ペロブスカイト型結晶相のうち1種が耐サーマルショック性を有することにより、圧電磁器全体としての耐サーマルショック性を向上できる。例えば、耐サーマルショック性を有し、負の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶相と、高い電気機械結合係数Kpsを有し、正の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶相とを複合させることにより、高い電気機械結合係数Kpおよび耐サーマルショック性を有し、かつ共振周波数の温度係数FrTCが0近傍の圧電磁器が得られる。
【0019】
従って、従来の圧電磁器では得ることが困難であった、共振周波数の温度係数FrTCが−150〜150ppm/℃、25〜250℃のサーマルショック(熱衝撃)を受けた後の共振周波数の変化率ΔFrが0.5%以下、電気機械結合係数Kpが55%以上の特性を容易に得ることができる。
【0020】
このような圧電磁器は、異なる圧電特性を有する2種以上の複合ペロブスカイト型酸化物粉末により成形体を作製し、この成形体をマイクロ波にて、例えば、1000〜1200℃の低温短時間で焼成することにより容易に得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電磁器では、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子を含有するもので、この他に金属粒子、酸化物粒子を含有しても良い。ペロブスカイト型結晶粒子の平均結晶粒径は、高強度という観点から、0.3〜1μm、特には0.5〜0.8μmの粒子であることが望ましい。また、他の金属粒子、酸化物粒子は存在しないことが望ましいが、存在する場合には、高強度という観点から、その平均粒子は1μm以下であることが望ましい。
【0022】
圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子は、電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有しており、少なくとも1種のペロブスカイト型結晶粒子が、25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrsが0.5%以下の特性を有することが必要である。これは、耐サーマルショック性を有するペロブスカイト型結晶粒子の含有量を制御することにより、圧電磁器としても耐サーマルショック性を有することができ、上記した利用分野において利用価値が高いからである。
【0023】
2種以上のペロブスカイト型結晶粒子は、共振周波数の温度係数FrTCsが−70〜400ppm/℃であることが望ましい。
【0024】
尚、電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有するペロブスカイト型結晶粒子とは、そのペロブスカイト型結晶粒子で圧電磁器を構成した場合には、電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有するという意味である。耐サーマルショック性、共振周波数の温度係数FrTCsについても同様である。
【0025】
圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、Cr、Sr、La、YおよびCoを含有するペロブスカイト型結晶粒子と、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、SbおよびCrを含有するペロブスカイト型結晶粒子とを含むことが望ましい。特に、これらの2種類のペロブスカイト型結晶粒子からなることが望ましい。
【0026】
これは、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、Cr、Sr、La、YおよびCoを含有するペロブスカイト型結晶粒子は、この粒子より磁器が形成されている場合、共振周波数の温度係数FrTCsは負の方に大きいものの、電気機械結合係数Kpsが高く、サーマルショックを受けた場合でも共振周波数の変化率ΔFrsが小さい特性を有するからであり、組成により、ペロブスカイト型結晶粒子の共振周波数の温度係数FrTCsが変化するからである。
【0027】
また、Pb、Zr、Ti、Nb、SbおよびCrを含有するペロブスカイト型結晶粒子は、この粒子より磁器が形成されている場合、サーマルショックに弱いものの、共振周波数の温度係数FrTCsは正の方に大きく、電気機械結合係数Kpsが高いからである。そしてこれらのペロブスカイト型結晶粒子を複合化させることにより、高い電気機械結合係数Kp、耐サーマルショック性を有し、共振周波数の温度係数FrTCが0近傍の優れた特性が得られるからである。
【0028】
圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子としては、例えば、耐サーマルショック性を有し、高い電気機械結合係数Kpsを有し、且つ負の共振周波数の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶粒子と、高い電気機械結合係数Kpsを有し、且つ正の共振周波数の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶粒子の組み合わせがある。この場合には、サーマルショックに強く、高い電気機械結合係数Kpを有し、共振周波数の温度係数FrTCが0に近い圧電磁器を得ることができる。
【0029】
従って、異なる圧電特性のぺロブスカイト型結晶粒子の組み合わせを種々変更することにより、圧電磁器の共振周波数の温度係数FrTC、電気機械結合係数Kpを制御でき、ぺロブスカイト型結晶粒子のうち少なくとも1種に耐サーマルショック性に強いぺロブスカイト型結晶粒子を用いることにより、耐サーマルショック性に強い圧電磁器を得ることができる。即ち、本発明の圧電磁器では、共振周波数の温度係数FrTCが−150〜150ppm/℃、電気機械結合係数Kpが55%以上、25〜280℃のサーマルショックを受けた後の共振周波数の変化率ΔFrを0.7%以下にすることができる。
【0030】
本発明の圧電磁器は、不可避不純物として+1、2、3、4、5価の電荷を持つイオンとなり得る元素を1種以上、少なくとも5重量%以下含有する場合がある。このような不可避不純物は含有しないことが望ましいが、原料中において不可避的に混入するものであり、少ない方が望ましい。
【0031】
本発明の圧電磁器の製造方法は、例えば、以下のような方法により作製される。まず、例えば、原料としてPbO、ZrO2 、TiO2 、Nb2 O5 、Cr2 O3 、SrCO3 、La2 O3 、Y2 O3 、Co3 O4 の各原料粉末を所定量秤量し、ボールミル等で10〜24時間湿式混合し混合粉末を作製する。
【0032】
また、別に、PbO、ZrO2 、TiO2 、Nb2 O5 、Sb2 O5 、Cr2 O3 の各原料粉末を所定量秤量し、ボールミル等で10〜24時間湿式混合し混合粉末を作製する。
【0033】
ついで、これらの混合粉末を乾燥した後、それぞれ800〜1300℃で1〜3時間仮焼し、ボールミル等で粉砕する。この後、粉砕物に有機バインダーを混合し、スプレードライヤー等で造粒して、圧電特性の異なる2種の複合ペロブスカイト型化合物の造粒体を作製する。
【0034】
そして、これらの造粒体を適切な比率で混合し、例えば、この混合粉末を所定圧力で成形して成形体を作製し、これを大気中において1000〜1200℃で5〜30分間マイクロ波にて焼成することにより得られる。得られた本発明の圧電磁器の密度は7.0g/cm3 以上である。
【0035】
圧電特性の異なる2種以上の複合ペロブスカイト型化合物の造粒体により作製された成形体を、マイクロ波にて焼成する場合には、低温短時間での焼成のためペロブスカイト型結晶粒子はほとんど粒成長せず、また圧電特性の異なるペロブスカイト型結晶粒子同士が相互に固溶することが無いため、添加されたペロブスカイト型結晶粒子がほとんどそのまま存在することになる。
【0036】
このような方法により得られた圧電磁器は、上記した様に2種または3種以上以上の圧電特性の異なるペロブスカイト型結晶粒子からなるが、それらの粒界には金属元素、酸化物が存在する場合もある。また、ペロブスカイト型結晶粒子の構成元素化合物、パイロクロア相が存在する場合もある。
【0037】
【実施例】
原料粉末としてPbO、ZrO2 、TiO2 、Nb2 O5 、Sb2 O5 、Cr2 O3 、SrCO3 、La2 O3 、Y2 O3 、Co3 O4 の各原料粉末をZrO2 ボールを用いたボールミルで湿式混合し、乾燥した後、900℃で3時間仮焼し、その後、Cr2 O3 を外部添加で2重量%添加し、再びボールミルで粉砕する。その後、この粉砕物に有機バインダーを混合し、スプレードライヤーで乾燥、造粒を行い、( Pb0.96Sr0.03La0.01) (Nb1/2 Cr1/2 )0.232(Nb1/2 Y1/2 )0.232(Nb2/3 Co1/3)0.416 Nb0.12]0.06[Zr0.505 Ti0.495 ]0.94O3 からなる第1スプレー原料と、Pb( Nb1/2 Sb1/2)( Zr0.52Ti0.48)O3 +0.2wt%Cr2 O3 からなる第2スプレー原料を作製した。
【0038】
第1スプレー原料▲1▼は、単独で圧電磁器を作製した場合には、電気機械結合係数Kpsが57%、共振周波数の温度係数FrTCs−70ppm/℃、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrsは0.1%の特性を有するものであり、第2スプレー原料▲2▼は、単独で圧電磁器を作製した場合には、電気機械結合係数Kpsが65%、共振周波数の温度係数FrTCs400ppm/℃、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrsは1%の特性を有するものであった。
【0039】
そして、これらの第1および第2スプレー原料を表1に示す比率にて混合し、混合粉末を1.5t/cm2 の圧力で直径23mm、厚さ2mmの寸法からなる円板にプレス成形した。更に、これらの成形体を大気中820℃で2時間脱脂した後、周波数28GHz、最大出力10KWのジャイラトロンを発信源としたマイクロ波発信器を用いたステンレス製のマイクロ波加熱炉を用いて大気中1050℃で10分間焼成した。
【0040】
得られた焼結体を研磨して厚み0.5mmの円板を形成した。この円板の両主面にAgペーストを焼き付けることにより電極を形成し、80℃のシリコンオイル中で3KV/mmの直流電圧を30分間印加して分極処理した後、電気機械結合係数Kp、共振周波数の温度係数FrTCを評価した。また、室温(25℃)から280℃のトンネル炉を通過させ(25℃〜280℃のサーマルショック)、100時間経過後の共振周波数を測定し、その変化率を算出した。さらに、平均結晶粒径をインタセプト法により求めた。
【0041】
電気機械結合係数Kp、共振周波数の温度係数FrTCは、インピーダンスアナライザーで測定した共振周波数Fr、反共振周波数Fa、電気容量C、共振抵抗R0 の値から計算により求めた。
【0042】
また、共振周波数の温度係数FrTCは、−30及び85℃の共振周波数を測定し、FrTC=(Fr(85)−Fr(−30))/(Fr(−30)×115)×106 (ここでFr(85)、Fr(−30)はそれぞれ85℃、−30℃での共振周波数の値である。)で求めた。これらの結果を表1に記載する。
【0043】
本発明の試料の結晶粒子をX線マイクロアナライザー(EPMA)にて元素分析した結果、添加した各スプレードライ原料の各結晶粒子が存在し、圧電磁器中に2種のペロブスカイト型結晶相が存在することを確認した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、本発明の圧電磁器では、電気機械結合係数Kps、共振周波数の温度係数FrTCsが異なる2種以上のスプレー原料をマイクロ波焼成することにより、電気機械結合係数Kp及び共振周波数の温度係数FrTCを制御できることがわかる。つまり、電気機械結合係数Kpについては、より高い電気機械結合係数Kpsを有するスプレー原料の割合が増加するにつれて高くなり、共振周波数の温度係数FrTCについても、その割合に応じて増減することがわかる。
【0046】
また、耐サーマルショック性については、耐サーマルショック性を有するスプレー原料を複合化することにより、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrが0.5%に低下することがわかる。特に、第1スプレー原料▲1▼と第2スプレー原料▲2▼の混合比が、重量比で55〜95:45〜5の場合には、電気機械結合係数Kpが57.4〜60.6、共振周波数の温度係数FrTCが−47〜142ppm/℃、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrが0.5%と優れていることが判る。特に、第1スプレー原料▲1▼と第2スプレー原料▲2▼の混合比が、重量比で75〜95:25〜5の場合には、電気機械結合係数Kpが57.4〜59.0、共振周波数の温度係数FrTCが−47〜48ppm/℃、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrが0.5%と優れていることが判る。
【0047】
尚、本発明者らは、比較例として、試料No.14のスプレー原料を混合し、大気中で900℃で3時間仮焼し、粉砕した後、これを上記実施例と同様にして成形し、大気中で820℃で2時間脱脂した後、大気中において1260℃で2時間焼成し、圧電磁器を作製した。この焼結体の両主面にAgペーストを焼き付けることにより電極を形成し、80℃のシリコンオイル中で3KV/mmの直流電圧を30分印加して分極処理した後、電気機械結合係数Kp、共振周波数の温度係数FrTC、サーマルショック後の共振周波数の変化率ΔFrを評価した。
【0048】
この結果、電気機械結合係数Kpは40%、共振周波数の温度係数FrTCは−2000ppm/℃、サーマルショック後の共振周波数の変化量ΔFrは1%であった。また、結晶粒子をX線マイクロアナライザー(EPMA)にて元素分析した結果、2種のスプレー原料は固溶して、ほぼ均一な単一結晶相になっていることを確認した。この結果を表1の試料No.18に記載した。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶相を複合化させるため、圧電特性の制御が容易になり、例えば、耐サーマルショック性を有し、高い電気機械結合係数Kpsを有し、且つ負の共振周波数の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶粒子と、高い電気機械結合係数Kpsを有し、且つ正の共振周波数の温度係数FrTCsを有するペロブスカイト型結晶粒子とを複合させることにより、耐サーマルショック性および高い電気機械結合係数Kpを有し、共振周波数の温度係数FrTCが0に近い圧電磁器を得ることができる。
Claims (5)
- 圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子からなる圧電磁器であって、前記2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有し、かつ少なくとも1種のペロブスカイト型結晶粒子が、25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrsが0.5%以下の特性を有することを特徴とする圧電磁器。
- 圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、Cr、Sr、La、YおよびCoを含有するペロブスカイト型結晶粒子と、金属元素としてPb、Zr、Ti、Nb、SbおよびCrを含有するペロブスカイト型結晶粒子とを含むことを特徴とする請求項1記載の圧電磁器。
- 圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶粒子が、共振周波数の温度係数FrTCsが正の結晶粒子と負の結晶粒子とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の圧電磁器。
- 共振周波数の温度係数FrTCが−150〜150ppm/℃、電気機械結合係数Kpが55%以上、25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrが0.7%以下の特性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電磁器。
- 電気機械結合係数Kpsが45%以上の特性を有する2種以上のペロブスカイト型酸化物粉末からなる混合粉末であって、前記2種以上のペロブスカイト型酸化物粉末のうち少なくとも1種が25〜280℃のサーマルショックを受けた際の共振周波数の変化率ΔFrsが0.5%以下の特性を有するペロブスカイト型酸化物粉末である混合粉末を用いて成形体を作製し、該成形体をマイクロ波にて焼成し、圧電特性の異なる2種以上のペロブスカイト型結晶相を複合化させることを特徴とする圧電磁器の製造方法。
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