JP2932297B2 - 強誘電体磁器組成物 - Google Patents

強誘電体磁器組成物

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康治 横田
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圭佑 岡部
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、チタン酸鉛,チタン酸カルシウム,チタン
酸アンチモンを基本構成成分とする強誘電体磁器組成物
に関し、さらに詳しくは、焦電素子,セラミックフィル
タ,セラミック共振子などに用いる強誘電体磁器組成物
に関するものである。
〔従来の技術〕
近年、圧電素子は、例えばセラミックフィルタ,セラ
ミック共振子,焦電素子,弾性表面波素子など広い分野
で利用されており、その用途はますます拡大している。
このような用途拡大に伴って圧電素子に要求される特
性も多岐にわたり、しかも要求される特性はますます厳
しくなっており、さらに優れた特性を有する圧電材料の
開発が望まれている。
圧電素子として、例えば、硫酸グリシン,ニオブ酸リ
チウム,タンタル酸リチウムなどの単結晶や、チタン酸
ジルコン酸鉛,チタン酸鉛系磁器材料が知られている。
焦電素子としては、温度変化に対応する自発分極の変
化が大きい程、焦電係数(dPs/dT)が大きく、比誘電率
が小さい程優れたものであって、キュリー点Tcの高い安
定なものが安価に提供されることが、実用上望ましい。
高周波フィルタ用圧電素子としては、誘電率,tanδが
小さく、共振周波数の温度係数の小さい材料が望まし
い。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、硫酸グリシンは水溶性の結晶であるため、
温度に弱くもろく加工がむずかしいうえ、キュリー点が
49℃と著しく低いため、焦電素子としても高周波フィル
タ用圧電素子としても使用温度範囲が著しく限定され、
好ましくない。
ニオブ酸リチウムは加工性は良好であるが焦電係数が
小さく高価であり、タンタル酸リチウムは加工性は良く
焦電係数も比較的大きく、切断方位により零温度係数を
持ち、圧電素子としても優れているが、何分単結晶のた
め高価で工業上の利用に不利である。
チタン酸ジルコン酸鉛系磁器は加工性が良く、焦電係
数も組成により大きいものを選ぶことができ、圧電材料
としてその特性を組成により制御できることから、この
材料系の開発が積極的に行われてきた。
このチタン酸ジルコン酸鉛系材料はPb(Zr/Ti)O3
主体としたものであって、さらにMn,Cr,Nb,Co,Feなどの
金属酸化物を添加するか、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3などの複
合酸化物を固溶させるなどの改良が圧電材料分野におい
て広く行われている。
しかしながら、このようなチタン酸ジルコン酸鉛系磁
器では一般に温度特性の良い組成では、誘電率は500〜1
200程度と高く、焦電材料や高周波圧電材料としては適
していない。そのため、誘電率の小さい材料が検討され
ているが、実効的誘電率を350より小さくすることは困
難である。
さらにチタン酸鉛系磁器は、焦電係数が大きく比誘電
率も比較的小さいが、これは焼結しにくく、鉛が焼成中
蒸発して均一な組成で安定した圧電特性を持つ磁器が得
られ難い欠点がある。しかもこの磁器は分極にかなり高
電圧が必要である。一方これらの欠点を改善するために
希土類、その他金属酸化物を同時添加又は置換したチタ
ン酸鉛系磁器が知られている。この材料は誘電率が150
〜300程度とジルコンチタン酸鉛に比べて低く、圧電特
性も良好であるが、焼結性にやや難点があり、大型磁器
が得られにくいことや、分極条件が厳しいため、工業化
における歩留りを高めにくいなどの欠点があり、高価な
希土類の添加物を用いるなど商品化に難点がある。
本発明の目的はこのような問題点を解決し、焦電素
子,セラミックフィルタ,セラミック共振子などの圧電
素子に有用な強誘電体磁器組成物を提供することにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明による強誘電体磁器
組成物においては、チタン酸鉛,チタン酸カルシウム及
びチタン酸アンチモンを基本成分とする強誘電体磁器組
成物であって、 基本組成が化学式、 (l−x−y)PbTiO3−xCaTiO3−ySb2/3TiO3 但しxは1.0〜35mol%,yは1.0〜30mol%, で表わされ、 上記化学式のTiは、Mnで0.5〜5mol%置換され、 Sb2/3の添加量y(%)は、Mnの添加量m(%)の2倍
以上である。
〔作用〕
発明者らは焦電素子として優れた素子を提供すべく鋭
意研究を重ねた結果、チタン酸鉛,チタン酸カルシウ
ム,チタン酸アンチモンを基本成分とする特定の組成物
からなり、かつTiがMnにより特定の割合で置換されたも
のが、誘電特性,圧電特性,焦電特性及びその温度特性
に優れており、その上良好な焼結性を有し、かつ分極条
件が穏かであることを見出し、この知見に基づいて本発
明を完成するに至った。
本発明の強誘電体磁器組成物は、基本組成が、化学
式:(l−x−y)PbTiO3−xCaTiO3−ySb2/3TiO3で表
わされるチタン酸鉛,チタン酸カルシウム,チタン酸ア
ンチモンを基本構成成分とする組成物からなるもので、
この組成物のチタン酸カルシウムの含有割合については
上記化学式のxが1.0〜35mol%の範囲であることが必要
である。このxの値が1.0mol%未満であると圧電特性と
その温度特性とがともに劣化し焦電係数も小さく、焦電
素子としても不適合である。また35mol%を超えると誘
電率が300を超え、焦電用としても高周波用としても適
さなくなる。
一方、チタン酸アンチモンの含有割合は、yが1.0〜3
0mol%の範囲であることが必要である。
このyの値が1.0mol%未満では該磁器の焼結性が劣
り、素体の変形が著しいし、また30mol%を超えると粒
界に異相が析出し、圧電特性が劣化し、焦電材料として
使用できない。
また本発明の磁器組成物においては、上記化学式にお
けるTiがMnで0.5〜5mol%置換されることが必要であ
る。この割合が、0.5mol%未満では分極中絶縁破壊を起
こしやすく、製造上好ましくない傾向を示し、また5mol
%を超えると焼結性が悪くなり、かつ電気的特性が著し
く減少して分極不能となり焦電素子として、あるいは圧
電素子としては使用できない。
本発明の磁器は次に示すような通常の窯業的手法によ
って容易に製造することができる。
例えばPbO,TiO2,CaCO3,Sb2O3,MnO2又は焼成により酸
化物に変換し得る、それぞれに対応する水酸化物,炭酸
塩,蓚酸塩,硝酸塩などを出発原料として、これら原料
粉末を所定の割合で配合し、ボールミルなどを用いて十
分混合し、この混合物を700〜900℃の温度範囲で仮焼
し、さらにボールミルなどにより粉砕する。次いで、こ
のようにして得られた仮焼粉末に水又はポリビニールア
ルコールなどのバインダーを少量添加して0.5〜2ton/cm
2の圧力で加圧成形した後、この成形体を1150℃〜1250
℃の温度範囲で2〜4時間焼成することにより本発明の
磁器が得られる。
本発明による磁器は、通常の空気中の焼成においても
緻密なものが得られるが、酸素雰囲気焼成やホットプレ
ス法,熱間静水圧プレス法などを用いることにより一層
緻密なものが得られる。
本発明の磁器における組成図を第1図に示す。
第1図は、Pb(Ti1-mMnm)O3,Ca(Ti1-mMnm)O3,Sb
2/3(Ti1-mMnm)O3を頂点とする三角座標で示されたも
のであり、MnはMnO2で0.5〜5mol%である。
本発明の強誘電体磁器組成物は広い領域にわたって、
誘電率(▲εT 33▼)は100〜260,電気機械結合係数(k
t)は35〜50%と高い値を示し、焦電素子や高周波用フ
ィルタ素子として圧電特性,誘電特性,焦電特性を維持
しながら広い組成範囲にわたって焼結性が良く、かつ緻
密で、大型の磁器が容易に得られ、分極処理が80〜120
℃,40KV/cm〜60KV/cmと容易であること、希土類元素は
使用しないため比較的安価であることなどの点から極め
て工業的価値の高いものである。
〔実施例〕
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、
本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではな
い。
化学式:(l−x−y)Pb(Ti1-mMnm)O3−xCa(Ti
1-mMnm)−ySb2/3(Ti1-mMnm)O3におけるx,y,mの値を
変化させ、それぞれの組成の試料No.1〜No.30における
圧電磁器の諸特性を第1表に示す。
なお、圧電磁器の各特性を次の方法で求めた。
(1)誘電特性および圧電特性 直径20mm,厚さ1mmの円板磁器を作成し、この円板磁器
の両面にAg電極を焼付け80〜120℃,40〜60KV/cmの条件
で分極処理を行い、24時間放置後1KHzで誘電率(▲εT
33▼),tanδを測定し、また、IREの標準回路の方法に
従って厚み方向の電気機械結合係数を求めた。また共振
周波数の温度係数frTcも求めた。
(2)焦電特性 直径20mm,厚み1mmの磁器円板を作成し(1)の方法で
分極処理を施した後、焦電特性の測定を行った。
〔比較例〕
出発原料としてPbO,TiO2,Sb2O3,CaCO3,MnO2の各粉末
を用い、これらの粉末を所定の割合で配合し、この混合
物を900℃で2時間仮焼して得られた仮焼物を、ボール
ミルで粉砕した。次いで、バインダーとポリビニールア
ルコールを少量添加し、2ton/cm2の圧力で加圧成形した
後、この成形体を1150℃〜1220℃の温度で3時間焼成し
て圧電磁器を作成した。このようにして得られた圧電磁
器の各性能を組成とともに第2表に示す。
誘電率(▲εT 33▼)は、小さい方が焦電素子の感度
が向上する。高周波フィルタとしても小さい方がインピ
ーダンスのマッチングがとれ易くフィルター特性が良く
なる。第1表により、本発明によれば100〜260の範囲の
値が得られている。
誘電損失(tanδ)は、小さい方がよい。焦電素子と
しても小さい方がノイズが少ない。高周波フィルタとし
ても、伝送特性が改善される。本発明では0.5〜1.9%以
下の値が得られている。
キュリー点(Tc)は、強誘電特性が消失する温度で、
なるべく高い方が、焦電特性,フィルタ特性共に安定で
ある。本発明では、200℃以上の値が得られている。
結合係数(kt)は、大きい方が良い。焦電素子では、
感度が向上し、フィルタでは帯域幅が大きくなりフィル
タの設計が楽になる。本発明によれば35%〜50%であ
る。
焦電係数(dPs/dT)は、大きい程焦電素子の感度は向
上する。本発明によれば、4.0×10-8coul/cm2K以上であ
る。
共振周波数の温度係数(frTc)は、小さい程フィルタ
の伝送特性が安定で温度変化に対して中心周波数がずれ
ない。本発明によれば±50ppm/℃以下である。
なお、第2表における比較例としての試料No.31はx
が1.0mol%未満のものであり、焦電係数が小さい。試料
No.32はxが35mol%を超えるものであり、焦電係数が小
さく誘電率も300をはるかに超え、焦電用,高周波用い
ずれも適さない。
試料No.33はyが1.0mol%未満のもので焼結性が劣り
素体の変形が著しい。試料No.34はyが30mol%を超える
もので粒界に異相が析出して圧電特性が著しく劣化す
る。
試料No.35は、Mnが0.5mol%未満のものであり、分極
中素体が割れ易く絶縁破壊を起こし易い。No.36は、Mn
が5mol%を超えるもので、素体の電気抵抗が低くなり分
極中に電流が流れすぎて分極が困難であった。なお、Sb
2/3の添加量y(%)が1.0mol%未満のものでは焼結性
に劣り、素体の変形が著しい。Sb2/3の添加量y(%)
は、Mnの添加量m(%)の2倍以上添加しなければ、低
レベルの電気的特性しか得ることができない。
〔発明の効果〕 以上のように本発明によれば、広い領域にわたって誘
電率,電気機械結合係数が高く、圧電特性,誘電特性,
焦電特性を維持しながら広い組成範囲にわたって焼結性
に優れ、誘電率、誘電損失、キュリー点、結合係数、焦
電係数、共振周波数の温度係数は、共に規格値を満足
し、焦電素子,セラミックフィルタ,セラミック共振子
などの磁器材料に用いて優れた効果を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の磁器における組成図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山村 友宏 富山県上新川郡大沢野町下大久保3158番 地 北陸電気工業株式会社内 (72)発明者 岡部 圭佑 埼玉県狭山市新狭山1丁目11番4号 株 式会社大泉製作所内 (72)発明者 田中 陽一 埼玉県狭山市新狭山1丁目11番4号 株 式会社大泉製作所内 (72)発明者 大沢 準一 富山県上新川郡大沢野町下大久保3158番 地 北陸電気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−144165(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チタン酸鉛,チタン酸カルシウム及びチタ
    ン酸アンチモンを基本成分とする強誘電体磁器組成物で
    あって、 基本組成が化学式、 (l−x−y)PbTiO3−xCaTiO3−ySb2/3TiO3 但しxは1.0〜35mol%,yは1.0〜30mol%, で表わされ、 上記化学式のTiは、Mnで0.5〜5mol%置換され、 Sb2/3の添加量y(%)は、Mnの添加量m(%)の2倍
    以上であることを特徴とする強誘電体磁器組成物。
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