JP4361990B2

JP4361990B2 - 圧電体磁器組成物

Info

Publication number: JP4361990B2
Application number: JP20052099A
Authority: JP
Inventors: 慶一高橋; 正光西田; 裕之長谷
Original assignee: Panasonic Corp; Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Current assignee: Panasonic Corp; Panasonic Holdings Corp
Priority date: 1999-07-14
Filing date: 1999-07-14
Publication date: 2009-11-11
Anticipated expiration: 2019-07-14
Also published as: JP2001026480A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、圧電共振子および圧電発振子等の圧電セラミック素子の材料となる圧電体磁器組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、圧電セラミックフィルタや圧電セラミック発振子、アクチュエーター等の圧電セラミック素子に用いられる圧電磁器組成物としては、Ｐｂ（Ｔｉ，Ｚｒ）Ｏ₃を主成分とするいわゆるＰＺＴ系セラミックス、ＰｂＴｉＯ₃を主成分とするいわゆるＰＴ系セラミックス、また、これらのセラミックスにＰｂ（Ｍｇ_1/3Ｎｂ_2/3）Ｏ₃、Ｐｂ（Ｚｎ_1/3Ｎｂ_2/3）Ｏ₃等を固溶した多成分系圧電セラミックス等が使用されてきた。さらに、これらの圧電磁器組成物の磁器特性を改善するために、Ｍｎ等の種々の微量添加物を添加したり、Ｐｂの一部をＳｒ等で置換すること等により、所望の圧電特性を持つ圧電セラミックが得られている。
【０００３】
しかし、これらの圧電材料は、環境上問題とされている鉛（Ｐｂ）を多く含有しているため、環境保護の観点から、これらの廃棄処分が問題となっている。そのため、Ｐｂを含まない圧電体材料の実現が望まれている。しかしながら、これまで前記ＰＺＴ系セラミックスやＰＴ系セラミックスと同等の圧電特性を有するＰｂを含まない圧電磁器組成物は、得られていない。
【０００４】
また、一般のＰＺＴ系圧電セラミックスは、その比誘電率が大きく（εｒ＝約８００〜４０００）、高周波領域においてはインピーダンス整合がとりにくいため、例えば、高周波共振子や発振子等の高周波用圧電素子には適当でないという問題点がある。さらに、厚み縦振動モードと面積振動モードとの各々の電気機械結合係数が、ほぼ同等の値であるため、厚み縦振動モードを用いて構成される高周波用圧電素子においては、面積振動モードのスプリアスが発生しやすい等の欠点を有する。
【０００５】
また、ＰＺＴ系およびＰＴ系セラミックスは、その周波数が約２０００Ｈｚ・ｍ程度であるため、例えば、高周波モードで使用する場合、圧電素子の厚みを薄くする必要がある。このため、前記圧電素子の加工において、寸法精度を保つために、加工が困難になるという問題点もある。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、Ｐｂを含有せず、実用的な圧電特性を有する圧電磁器組成物、特に高周波での使用に適した圧電磁器組成物の提供である。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の圧電磁器組成物は、下記一般式（１）で表される複合酸化物を主成分として含むことを特徴とする。ただし、本発明の圧電磁器組成物は、鉛を含まない。
ｘＮａ（Ｎｂ_1-aＴａ_a）Ｏ₃ −ｙＫ（Ｎｂ_1-aＴａ_a）Ｏ₃−ｚＭＢｉ₂（Ｎｂ_1-aＴａ_a）₂Ｏ₉ …（１）
但し、前記一般式（１）において、Ｍはアルカリ土類金属であり、ｘ、ｙ、ｚおよびａが、ｘ＋ｙ＋ｚ＝１、０≦ａ≦０．５、０．２≦ｘ≦０．９８、０≦ｙ≦０．７８、０．０２≦ｚ≦０．２である。
【０００８】
このような本発明の圧電磁器組成物は、前記複合酸化物が、Ｐｂを含まないことにより環境上の問題を回避でき、また、ｚＭＢｉ₂（Ｎｂ_1-aＴａ_a）₂Ｏ₉を含むことによって、充分に実用可能な圧電特性、特に高周波での使用に適した圧電特性を備える。例えば、圧電特性のうち周波数定数および比誘電率は、特に高周波での使用に適した値が安定して得られる。このように大きい周波数定数が得られると、高周波用として使用するために、圧電素子の厚みをさらに薄くする必要がなく、圧電素子の加工が容易になる。また、機械品質係数についても充分に実施可能な値が得られる。また、目的の圧電体等に応じた所望の電気機械結合定数が得られるため、例えば、面積振動モードの電気機械結合係数を、厚み縦振動モードの電気機械結合係数よりも小さく設定することができ、面積振動モードのスプリアス発生等の問題も回避できる。したがって、このような圧電磁器組成物によれば、Ｐｂを含有することなく、圧電共振子や発振子等の圧電素子を容易に製造でき、特に高周波特性に優れた圧電体素子を製造できる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電磁器組成物において、前記一般式（１）のＭは、アルカリ土類金属であれば特に制限されないが、好ましくはＳｒである。また、前記一般式（１）に示す複合酸化物は、前記アルカリ土類金属を１種類でもよいし、２種類以上含んでいてもよい。
【００１０】
前記一般式（１）において、ｘ、ｙ、ｚおよびａは、前記範囲内であれば特に制限されず、目的とする圧電体の種類や、使用条件（例えば、高周波領域等での使用）により適宜決定される。例えば、圧電体を高周波において使用する場合、０≦ａ≦０．５、０．３５≦ｘ≦０．９５、０≦ｙ≦０．４７５、０．０５≦ｚ≦０．１５の範囲がそれぞれ好ましい。また、例えば、ｘ／ｙが、０．７〜１．５の範囲になるように設定することにより、電気機械結合定数ｋｐまたはｋｔを向上できる。
【００１１】
また、本発明の圧電磁器組成物において、前記一般式（１）は、ａが０であり、ＭがＳｒであることが好ましく、このような複合酸化物は、下記一般式（２）で表すことができる。
ｘＮａＮｂＯ₃−ｙＫＮｂＯ₃−ｚＳｒＢｉ₂Ｎｂ₂Ｏ₉…（２）
但し、前記一般式（２）において、ｘ、ｙおよびｚは、ｘ＋ｙ＋ｚ＝１、０．２≦ｘ≦０．９８、０≦ｙ≦０．７８、０．０２≦ｚ≦０．２である。
【００１２】
前記一般式（２）において、ｘ、ｙおよびｚは、０．３５≦ｘ≦０．９５、０≦ｙ≦０．４７５、０．０５≦ｚ≦０．１５の範囲がそれぞれ好ましい。
【００１３】
本発明の圧電磁器組成物は、前記一般式（１）の複合酸化物のみを含んでもよいし、前記複合酸化物とその他の酸化物とを含んでもよい。前記複合酸化物の含有量は、特に制限されないが、例えば、９７〜１００重量％の範囲である。前記その他の酸化物としては、例えば、Ｖ₂Ｏ_5、ＭｎＯ₂、Ｆｅ₂Ｏ₃、ＣｏＯ、Ｃｒ₂Ｏ₃、ＮｉＯ等があげられる。
【００１４】
本発明の圧電磁器組成物は、例えば、Ｖ₂Ｏ₅を、０．０１〜１．８重量％の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは０．２〜０．８重量％の範囲である。また、本発明の圧電磁器組成物は、ＭｎＯ₂を、０．０１〜１．０重量％の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは、０．２〜０．８重量％の範囲である。このように、例えば、Ｖ₂Ｏ₅やＭｎＯ₂を添加すれば、圧電磁器の焼結性を向上でき、また、その密度も向上できる。
【００１５】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【００１６】
（実施例１〜実施例３５）
出発原料粉末として、Ｎａ₂ＣＯ₃、Ｋ₂ＣＯ₃、ＢａＣＯ₃、ＳｒＣＯ₃、ＭｎＣＯ₃、Ｖ₂Ｏ₅、Ｂｉ₂Ｏ₃、Ｎｂ₂Ｏ₅、ＣａＣＯ₃およびＴａ₂Ｏ₅を用いて、最終的に得られる圧電セラミックスが、下記表１〜表４に示す組成比になるように秤量した。そして、これらの原料粉末を、ボールミルを用いて均一になるように十分混合してから、８００〜９００℃で２時間仮焼した。前記仮焼により形成された化合物を再びボールミルで粉砕し、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）等のバインダーを用いて造粒した。この粉末を、７０ＭＰａの圧力で一軸プレス成形することにより、直径１３ｍｍの円板状成形体を作製し、これを１０５０〜１２００℃で４時間焼成した。焼成により得られた磁器を厚み０．３ｍｍに研磨した後、その両面に、Ａｇを７００℃で焼き付けて電極を形成した。そして、これを１５０℃のシリコーンオイル中において、前記両電極間に２〜５ＫＶ／ｍｍの電界を３０分間印加し、分極処理を行って圧電セラミックスを作製し、これを試料とした。
【００１７】
この試料について、測定器（４１９４Ａ型：ＨＰ製）を用いて、比誘電率(εｒ)、円板径方向広がりモードの電気機械結合係数(ｋｐ)、厚み縦振動モードの電気機械結合係数(ｋｔ)、機械的品質係数(Ｑｍ)および径方向の広がりモードの周波数定数(Ｎｐ)を測定した。これらの結果を、下記表１〜表４に併せて示す。
【００１８】
【表１】

【００１９】
【表２】

【００２０】
【表３】

【００２１】
【表４】

【００２２】
前記表１〜４に示す様に、実施例１〜３５の圧電セラミックスは、充分に使用可能な圧電特性を有していた。さらに、高周波モードにおける使用を考慮した場合、周波数定数および機械的品質係数の双方に優れ、電気機械結合係数も良好であり、比誘電率も充分に低い値を示した。また、一般のＰｂ系セラミックスは、周波数定数が約２０００Ｈｚ・ｍであり、比誘電率が約８００〜４０００の範囲であるのに対し、実施例の圧電セラミックスは、充分に高い周波数定数と、低い比誘電率と兼ね備えることからも、高周波での使用に適しているといえる。
【００２３】
図１に、前記一般式（２）に示す複合酸化物の３元組成図を示す。同図において、斜線部は、前記一般式（２）における０．２≦ｘ≦０．９８、０≦ｙ≦０．７８、０．０２≦ｚ≦０．２の範囲を示す。前記実施例１〜１５の圧電セラミックスの組成比が、同図の斜線部領域に含まれていることからも、この斜線部の組成比が好ましいことがわかる。
【００２４】
【発明の効果】
以上のように、本発明の圧電磁器組成物は、Ｐｂを含有しないため、環境上の問題がなく、また、実用可能な圧電特性を有している。特に、周波数定数および機械的品質係数に優れ、電気機械結合係数も良好であるため、これを用いた圧電体素子は、高周波領域での使用に適しており、例えば、高周波用共振子や高周波用発振子等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の圧電磁器組成物の一実施例のうち、代表的な組成比率を示す３元組成図である。

Claims

下記一般式（１）で表される複合酸化物を主成分として含み、ただし鉛を含まない圧電磁器組成物。
ｘＮａ（Ｎｂ_1-aＴａ_a）Ｏ₃ −ｙＫ（Ｎｂ_1-aＴａ_a）Ｏ₃−ｚＭＢｉ₂（Ｎｂ_1-aＴａ_a）₂Ｏ₉ …（１）
但し、前記一般式（１）において、Ｍはアルカリ土類金属であり、ｘ、ｙ、ｚおよびａが、ｘ＋ｙ＋ｚ＝１、０≦ａ≦０．５、０．２≦ｘ≦０．９８、０≦ｙ≦０．７８、０．０２≦ｚ≦０．２である。
前記一般式（１）において、ＭがＳｒである請求項１に記載の圧電磁器組成物。
さらにＶ₂Ｏ₅が、０．０１〜１．８重量％の範囲で含有された請求項１または２に記載の圧電磁器組成物。
さらにＭｎＯ₂が、０．０１〜１．０重量％の範囲で含有された請求項１〜３のいずれか一項に記載の圧電磁器組成物。