JP4929522B2 - 圧電磁器組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電磁器組成物に関し、更に詳しくは、圧電振動子、表面波フィルタ、センサ、アクチュエータ、超音波モータ、圧電トランス、ノックセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、圧電フォン、レゾネータ等に使用される圧電材料として好適な圧電磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電材料は、圧電効果を有する材料であり、その形態は、単結晶、セラミックス(磁器)、薄膜、高分子及びコンポジット(複合材)に分類される。これらの圧電材料の中で、特に、圧電磁器材料は、高性能で、形状の自由度が大きく、材料設計が比較的容易なため、広くエレクトロニクスやメカトロニクスの分野で応用されているものである。
【0003】
圧電磁器材料は、強誘電体磁器に直流を印加し、強誘電体の分域の方向を一定の方向にそろえる、いわゆる分極処理を施したものである。分極処理により自発分極を一定方向にそろえるためには、自発分極が三次元的に取りうるペロブスカイト型結晶構造が有利であることから、実用化されている圧電磁器材料の大部分は、ペロブスカイト型強誘電体磁器である。
【0004】
ペロブスカイト型強誘電体磁器としては、例えば、二成分系のPbTiO−PbZrO(以下、これを「PZT」という。)、三成分系のPbTiO−PbZrO−Pb(Ni1/3Nb2/3)O(以下、これを「PZT−PNN」という。)、BaTiO、(K1−xNa)NbO(但し、0≦x<1)などが知られている。
【0005】
これらの中で、PZTやPZT−PNN等の鉛を含んだ圧電磁器材料は、現在実用化されている圧電磁器材料の大部分を占めている。この理由は、圧電材料には、一般に、センサ、アクチュエータ、フィルタ等の各用途に応じて、大きな圧電特性、優れた長期安定性、高い機械的品質係数、低い誘電損失等の様々な特性が要求されるが、鉛系の圧電磁器材料は、各成分量の割合を調節することにより、このような諸要求を満たす様々な材料を容易に作製できるからである。
【0006】
しかし、鉛系の圧電磁器材料は、蒸気圧が高く、人体に有害な酸化鉛(PbO)を含んでいる。これらの材料を含んだ製品の産業廃棄物からは、鉛が溶出し、環境を汚染し、食物を介して人体に悪影響を与えると考えられる。そのため、鉛を含まず、大きな圧電特性を有し、しかも、圧電特性の長期安定性に優れた圧電材料が要望されている。
【0007】
一方、(K1−xNa)NbO(以下、これを「KNN」という。)又はこれを主成分とする材料は、今まで知られている非鉛系の圧電磁器材料の中でも圧電特性が高く、しかも、キュリー温度が高いという特徴を有しているので、特に、自動車用の無鉛圧電磁器材料の有力な候補材料の1つと考えられている。そのため、KNN系の圧電磁器材料の組成、製造方法等に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、特開平11−228228号公報には、一般式:(1−n)(K1−x−yNaLi(Nb1−zTa)O−nM(但し、Mは3価の金属元素、Mは1価の金属元素、Mは4価の金属元素、0.1≦x、y≦0.3、x+y<0.75、0≦z≦0.3、0.98≦m≦1.0、0<n<0.1。)で表される圧電磁器組成物が開示されている。同公報によれば、電気機械結合係数Kpが25%以上である圧電磁器組成物が得られるとされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
圧電磁器材料を圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波モータ、圧電ジャイロセンサ、ノックセンサ等に応用するためには、機械的品質係数Qmが高いこと、誘電損失tanδの初期値が低いこと、及び誘電損失tanδの長期安定性に優れていることが必要となる。
【0010】
しかしながら、KNNは、本質的には高い圧電特性を有する材料であるが、難焼結材料であるために、緻密化が不十分となり、十分な圧電特性が得られない場合がある。また、KNNは、機械的品質係数Qmが相対的に低く、誘電損失tanδの初期値も大きいという問題がある。さらに、KNNは、十分に緻密化した場合であっても、長期安定性が悪く、時間の経過と共に誘電損失tanδが増大するという問題がある。そのため、KNNは、上述した圧電フィルタ等の用途への適用が困難であった。
【0011】
この問題を解決するために、特開平11−228228号公報に開示されているように、KNNに種々の添加物を加え、圧電特性を改善することも有効な方法と考えられる。しかしながら、同公報に開示された圧電磁器組成物の電気機械結合係数Kpは、25〜30%であり、圧電フィルター等に応用するには不十分である。また、機械的品質係数Qm、並びに、誘電損失tanδの初期値及び長期安定性を改善するために、KNNへの添加物を検討した例は、従来にはない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、機械的品質係数Qmが高く、かつ、誘電損失tanδの初期値が小さいKNN系の圧電磁器組成物を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、誘電損失tanδの長期安定性に優れたKNN系の圧電磁器組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る圧電磁器組成物は、K、Na、Ag、Nb、In、Ga、Sb、O、及び、不可避不純物以外を含まず、次の化1の式に示す一般式で表される組成を有していることを要旨とするものである。
【0014】
【化1】
{(K1−xNa1−yAg}NbO−z[Mα+][O2−α/2
(但し、0≦x<1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.05、y+z>0。Mは、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素。αは、金属元素Mの平均価数。)
【0015】
KNNに対して、Ag、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素を所定量添加すると、機械的品質係数Qmが大きくなり、しかも、誘電損失tanδの初期値が小さくなる。また、KNNに対して、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素を所定量添加すると、誘電損失tanδの長期安定性が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る圧電磁器組成物は、K、Na、Ag、Nb、In、Ga、Sb、O、及び、不可避不純物以外を含まず、その組成は、次の化2の式で表される。
【0017】
【化2】
{(K1−xNa1−yAg}NbO−z[Mα+][O2−α/2
(但し、0≦x<1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.05、y+z>0。Mは、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素。αは、金属元素Mの平均価数。)
【0018】
化2の式において、xを1未満としたのは、x=1である磁器組成物、すなわち、Kを
含まない磁器組成物は、圧電特性を示さないためである。また、本発明においては、KN
Nに対する添加元素として、Ag、並びにIn、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素Mが用いられる。Ag及び金属元素Mは、いずれか一方がKNNに添加されていても良く、あるいは、双方が添加されていても良い。
【0019】
KNNに添加されたAgは、ペロブスカイト型構造を取るKNNのAサイトに置換固溶する。化2の式において、yを0.1以下としたのは、yが0.1を超えると、圧電d定数が低下し、圧電素子の作製に適さないためである。
【0020】
また、KNNに添加された金属元素Mは、主に、酸化物の形で粒界に存在すると考えられる。化2の式において、zを0.05以下としたのは、zが0.05を超えると、圧電d定数が低下し、圧電素子の作製に適さないためである。
【0021】
なお、金属元素Mは、In、Ga、Sbの内のいずれか一種類の元素であっても良く、あるいは、これらの内の2種以上の元素であっても良い。また、化2の式において、αは金属元素Mの価数を表す。金属元素Mとして価数の異なる2種以上の元素を用いた場合には、αは金属元素Mの平均価数を表す。例えば、4価の金属元素Mと2価のMgとを1:1の比率でKNNに添加する場合、αは3となる。
【0022】
次に、本発明に係る圧電磁器組成物の作用について説明する。圧電磁器組成物の焼結体密度は、一般に、誘電率、圧電定数等の電気的特性に影響を及ぼし、焼結体密度が高くなるほど良好な圧電特性を示すことが知られている。従って、良好な圧電特性を得るには、圧電磁器組成物の密度を高めることが重要である。
【0023】
しかしながら、KNNは、難焼結材料であるので、高密度の焼結体を常圧焼結法により作製するのは困難である。そのため、KNNは、本質的には高い圧電特性を有しているにもかかわらず、得られる焼結体の機械的品質係数Qmは相対的に低く、誘電損失tanδの初期値も大きい。
【0024】
また、圧電磁器組成物を圧電フィルタ、圧電振動子等に応用するためには、誘電損失tanδの初期値が低いだけではなく、誘電損失tanδの長期安定性に優れていることも重要である。これは、誘電損失tanδが大きくなると、使用中に圧電素子が発熱し、圧電特性を示さなくなるためである。信頼性の高い圧電素子を作製するためには、誘電損失tanδの初期値が2%以下であり、かつ、100日以上放置した場合の誘電損失tanδが2%以下であることが望ましい。しかしながら、KNNは、十分に緻密化した場合であっても、誘電損失tanδの長期安定性が悪く、時間の経過と共に誘電損失tanδが増大する。
【0025】
これに対し、本発明に係る圧電磁器組成物は、KNNに対してAg、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素が所定量添加されているが、添加物の種類によっては、KNNの焼結性を向上させ、高い焼結体密度を有する圧電磁器組成物が得られる。また、本発明に係る圧電磁器組成物は、焼結体の相対密度がKNNと同等以下である場合であっても、KNNよりも機械的品質係数Qmが高くなり、誘電損失tanδの初期値も小さくなる。
【0026】
さらに、KNNに対して、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素を所定量添加すると、誘電損失tanδの経時安定性も向上する。このような効果が得られる理由の詳細は不明であるが、添加物の種類や添加量を最適化すれば、高い圧電特性を有し、しかも、誘電損失tanδの初期値が2%以下であり、かつ、100日以上放置した場合の誘電損失tanδが2%以下である圧電磁器組成物も得ることができる。
【0027】
次に、本発明に係る圧電磁器組成物の製造方法について説明する。本発明に係る圧電磁器組成物は、通常のセラミックスプロセスにより製造することができる。すなわち、まず、化2の式で表される組成となるように所定の原料を混合し、これを仮焼、粉砕する。次に、これにバインダーを加えて混合し、造粒する。さらに、これを成形、焼成した後、電極を設け、分極すれば良い。
【0028】
なお、KNNに対して金属元素Mを添加する場合、まず、ペロブスカイト型化合物が得られるように配合された原料粉末を混合し、これを仮焼、粉砕した後、これに対して金属元素Mを含む化合物を添加しても良い。あるいは、ペロブスカイト型化合物が得られるように配合された原料粉末に対して、さらに金属元素Mを含む化合物を加えて混合し、これを仮焼、粉砕しても良い。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
原料として、高純度(99%以上)であるKCO、NaHCO(あるいはNaCO)、Nb、MnO、MgO及びInを用い、以下の手順に従い、圧電磁器組成物を作製した。すなわち、まず、(K0.5Na0.5)NbOの化学量論組成となるように原料を配合し、ボールミルによりアセトン中で24時間混合した。これを、800℃で5時間保持して仮焼した後、仮焼粉に対して、MnO(実験No.2)、MgO(実験No.3)及びInO3/2(実験No.4)を、それぞれ、金属元素換算で1.0mol%(外添加)添加し、24時間ボールミル粉砕を行った。
【0030】
次に、得られた粉砕粉に対して、バインダとしてポリビニルブチラールを加えて造粒した後、圧力196MPaで、直径18mm、厚さ1mmの円板状に加圧成形した。焼成は、温度1000〜1300℃で1時間保持して行った。この焼結体を両面平行研磨し、円形研磨した後、円板試料両面に、スパッタ法により金電極を設けた。次いで、100℃のシリコーンオイル中において、電極間に3kV/mmの直流電圧を10分間加え、厚み方向に分極することにより、圧電磁器組成物を得た。なお、MnOを添加したもの、及びMgOを添加したものは参考例である。
【0031】
(比較例1)
仮焼粉に対して、MnO、MgO及びInO3/2のいずれも添加しなかった以外は、実施例1と同一の手順に従い、(K0.5Na0.5)NbO組成を有する圧電磁器組成物(実験No.1)を得た。
【0032】
実施例1及び比較例1で得られた圧電磁器組成物について、焼結体密度、圧電特性及び誘電特性の測定を行った。なお、圧電特性は、インピーダンスアナライザを用いて共振−反共振法により測定し、電気機械結合係数Kp、圧電d31定数、圧電g31定数、及び機械的品質係数Qmを算出した。また、誘電特性は、インピーダンスアナライザを用いて測定周波数1kHzで測定を行い、比誘電率ε33t/ε、誘電損失tanδ、及び径方向の周波数定数Npを算出した。さらに、誘電損失tanδの長期安定性は、インピーダンスアナライザを用いて、1年以上にわたり、誘電損失tanδを測定することにより評価した。結果を表1示す。
【0033】
【表1】
Figure 0004929522
【0034】
金属元素Mを添加しない実験No.1(比較例1)の組成物の場合、焼結体の相対密度は、96.0%であった。これに対し、KNNに対してMn、Mg及びInのいずれか1種を外添加で1mol%添加した実験No.2〜4(実施例1)の場合、焼結体の相対密度は、それぞれ、97.6%、98.9%及び95.2%であり、Inを添加した実験No.4を除いて、金属元素M無添加の実験No.1より高くなった。
【0035】
また、実験No.2〜4で得られた組成物の電気機械結合係数Kp、圧電d31定数、圧電g31定数及び機械的品質係数Qmは、添加物の種類によらず、いずれも実験No.1の組成物より大きくなった。特に、MnOを1mol%添加した実験No.2の組成物の場合、機械的品質係数Qmは490となり、実験No.1の約5倍まで増加した。
【0036】
一方、比誘電率ε33t/εは、金属元素Mの添加により低下した。しかしながら、誘電損失tanδの初期値は、添加物の種類によらず、実験No.1より小さくなった。特に、MnO及びMgOを外添加で1mol%添加した実験No.2及び3の組成物の場合、初期の誘電損失tanδは0.7%以下となり、実験No.1の約1/5まで低下した。
【0037】
また、径方向の周波数定数Npは、InO3/2を添加した実験No.4の組成物については、実験No.1の組成物と同等であったが、MnO及びMgOを添加した実験No.2及び3の組成物については、実験No.1より大きな値となった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、同じ周波数の振動子を作製する場合、より小さな素子を作製可能であることを示している。
【0038】
図1に、誘電損失tanδの長期安定性を示す。金属元素Mを添加しない組成物の場合、誘電損失tanδは、時間の経過と共に増加し、100日経過後には20%を超えた。これに対し、Mn、Mg又はInを添加した場合、誘電損失tanδの経時変化が無く、100日を経過した時点において2%以下の値が維持された。特に、MnOを添加した実験No.2の組成物の場合、1年経過以降も、誘電損失tanδの悪化が無かった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、長期安定性に優れた各種の圧電素子を作製できることを示している。
【0039】
以上のように、本実施例によれば、鉛を含まない圧電材料で、機械的品質係数Qmが高く、誘電損失tanδの初期値が低く、しかも、誘電損失tanδの長期安定性に優れた材料が得られることがわかった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、優れた長期安定性及び高い特性を有する、圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波モータ、圧電ジャイロセンサ、ノックセンサ素子等を作製できることを示している。
【0040】
(実施例2)
原料として、高純度(99%以上)であるKCO、NaHCO(あるいはNaCO)、Nb、及びAgOを用い、以下の手順に従い、圧電磁器組成物を作製した。すなわち、まず、{(K0.5Na0.50.98Ag0.02}NbOの化学量論組成となるように原料を混合し、ボールミルによりアセトン中で24時間混合した。これを、800℃で5時間保持して仮焼した後、24時間ボールミル粉砕を行った。
【0041】
次に、得られた粉砕粉に対して、バインダとしてポリビニルブチラールを加えて造粒した後、圧力196MPaで、直径18mm、厚さ1mmの円板状に加圧成形した。焼成は、温度1000〜1300℃で1時間保持して行った。この焼結体を両面平行研磨し、円形研磨した後、円板試料両面に、スパッタ法により金電極を設けた。次いで、100℃のシリコーンオイル中において、電極間に3kV/mmの直流電圧を10分間加え、厚み方向に分極することにより、圧電磁器組成物を得た。
【0042】
得られた圧電磁器組成物(実験No.5)について、実施例1と同一の手順に従い、焼結体密度、圧電特性及び誘電特性を測定した。結果を表2示す。なお、表2においては、比較のため、比較例1(実験No.1)の結果も合わせて示した。
【0043】
【表2】
Figure 0004929522
【0044】
KNNに対してAgを2mol%添加した実験No.5の組成物の場合、焼結体の相対密度は、100%となり、Ag無添加の実験No.1より向上した。また、KNNに対してAgを添加することによって、すべての圧電特性が、Ag無添加のKNNよりも20%前後向上することが確認された。
【0045】
すなわち、電気機械結合係数Kpは、Ag無添加では33.4%であるのに対し、Agを添加すると41.6%となり、1.245倍に向上した。また、圧電d定数は、Ag無添加ではd31=37.6pm/Vであるのに対し、Agを添加すると、d31=43.9pm/Vとなり、1.169倍に向上した。また、圧電g定数は、Ag無添加ではg31=9.9×10−3Vm/Nであるのに対し、Agを添加すると、g31=12×10−3Vm/Nとなり、1.21倍に向上した。さらに、機械的品質係数Qmは、Ag無添加では101であるのに対し、Agを添加すると138となり、1.38倍に向上することがわかった。
【0046】
一方、比誘電率ε33t/εは、Ag無添加では429であるのに対し、Agを添加すると、413となり、若干低下した。しかしながら、誘電損失tanδの初期値は、Ag無添加では3.56%であるのに対し、Agを添加すると2.0%となり、大きく低下した。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物によれば、センサ用に適した、低損失で誘電雑音ノイズの少ない材料が得られることを示している。
【0047】
また、径方向の周波数定数Npは、Ag無添加では2577Hzmであるのに対し、Agを添加すると、2639Hzmとなり、大きく向上した。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物によれば、同じ周波数の振動子を作製する場合、より小さな素子を作製可能であることを示している。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、鉛を含まない圧電材料で、電気機械結合係数Kp、圧電d定数、圧電g定数及び機械的品質係数Qmが高く、誘電損失tanδの初期値の低い材料が得られることがわかった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、出力電圧が大きく、しかも、低雑音でS/N比の高い圧電ジャイロセンサ、ノックセンサ素子等の圧電センサ素子を作製できることを示している。
【0049】
(実施例3)
金属元素Mを含む原料として、高純度(99%以上)であるSiO(実験No.6)、GaO3/2(実験No.7)及びSbO3/2(実験No.8)を用いた以外は、実施例1と同一の手順に従い、金属元素Mを含むKNN系の圧電磁器組成物を作製した。得られた圧電磁器組成物について、実施例1と同一の手順に従い、焼結体密度、圧電特性及び誘電特性を測定した。結果を表3に示す。なお、表3においては、比較のため、比較例1(実験No.1)の結果も併せて示した。また、SiOを添加したものは参考例である。
【0050】
【表3】
Figure 0004929522
【0051】
KNNに対してSi、Ga及びSbのいずれか1種を外添加で1mol%添加した実験No.6〜8(実施例3)の場合、焼結体の相対密度は、それぞれ、97.8%、95.9%、及び96.2%となり、Gaを添加した実験No.7を除いて、金属元素M無添加の実験No.1(比較例1)より高くなった。
【0052】
また、実験No.6〜8で得られた組成物の電気機械結合係数Kp、圧電d31定数、圧電g31定数及び機械的品質係数Qmは、添加物の種類によらず、いずれも実験No.1の組成物より大きくなった。表4に、圧電特性の向上率を示す。なお、「向上率」とは、金属元素Mを添加しない圧電磁器組成物(実験No.1)の圧電特性に対する金属元素Mを添加した圧電磁器組成物の圧電特性の比をいう。
【0053】
【表4】
Figure 0004929522
【0054】
表4より、KNNに対してSiO、GaO3/2及びSbO3/2を外添加で1mol%添加すると、電気機械結合係数Kpは、それぞれ、1.26倍、1.11倍及び1.25倍に向上することがわかる。また、圧電d31定数は、それぞれ、1.21倍、1.14倍及び1.28倍に向上し、さらに、圧電g31定数は、それぞれ、1.21倍、1.12倍及び1.25倍に向上することがわかる。
【0055】
また、比誘電率ε33t/εは、表3に示すように、実験No.1では429であるのに対し、実験No.6〜8では、いずれも430以上に向上した。また、誘電損失tanδの初期値は、添加物の種類によらず、実験No.1より小さくなり、低損失の材料が得られた。誘電損失tanδの初期値は、SiO添加で1.17%、GaO3/2添加で1.83%、SbO3/2添加で1.94%であり、いずれも2%以下であった。
【0056】
一方、径方向の周波数定数Npは、GaO3/2及びSbO3/2を添加した実験No.7及び8の組成物については、実験No.1の組成物と同等以下であったが、SiOを添加した実験No.6の組成物については、Np=2667Hzmとなり、実験No.1より大きな値となった。この結果は、SiOを添加した圧電磁器組成物を用いれば、同じ周波数の振動子を作製する場合、より小さな素子を作製可能であることを示している。
【0057】
図2に、誘電損失tanδの長期安定性を示す。金属元素Mを添加しない組成物の場合、誘電損失tanδは、時間の経過と共に増加し、100日経過後には20%を超えた。これに対し、Si、Ga又はSbを添加した場合、誘電損失tanδの経時変化が無く、100日を経過した時点において2%以下の値が維持された。また、100日経過以降も、誘電損失tanδが2%を超えることはなく、長期間にわたって安定な値であった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、長期安定性に優れた各種の圧電素子を作製可能であることを示している。
【0058】
以上のように、本実施例によれば、鉛を含まない圧電材料で、電気機械結合係数Kp、圧電d定数、圧電g定数及び機械的品質係数Qmが高く、誘電損失tanδの低く、しかも誘電損失tanδの長期安定性に優れた材料が得られることがわかった。この結果は、本実施例に係る圧電磁器組成物を用いれば、高い圧電検出感度を有し、低ノイズで、しかも高い長期安定性を有する圧電センサ(圧電ジャイロセンサ、ノックセンサなど)、圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波モータ等の圧電素子を作製できることを示している。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しないで種々の改変が可能である。
【0060】
例えば、上記実施例においては、Ag及び金属元素Mの内、いずれか1種をKNNに対して添加した例について説明したが、Ag及び金属元素Mの内の2種以上をKNNに対して添加しても良い。また、上記実施例においては、x=0.5であるKNNに対してAg又は金属元素Mを添加した例について説明したが、他の組成域のKNN(0≦x<1)に対してAg及び/又は金属元素Mを添加した場合であっても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る圧電磁器組成物は、KNNに対して、Ag、In、Si、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素が所定量添加されているので、機械的品質係数Qmが高く、かつ、誘電損失tanδの初期値が小さくなるという効果がある。また、KNNに対して、In、Si、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素を所定量添加した場合には、誘電損失tanδの長期安定性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 KNN系圧電磁器組成物の誘電損失の長期安定性に及ぼす添加物(MnO、MgO、InO3/2)の影響を示す図である。
【図2】 KNN系圧電磁器組成物の誘電損失の長期安定性に及ぼす添加物(SiO、GaO3/2、SbO3/2)の影響を示す図である。

Claims (1)

  1. K、Na、Ag、Nb、In、Ga、Sb、O、及び、不可避不純物以外を含まず、一般式
    {(K1−xNa1−yAg}NbO−z[Mα+][O2−α/2
    (但し、0≦x<1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.05、y+z>0。Mは、In、Ga、Sbの内の少なくとも一種以上の金属元素。αは、金属元素Mの平均価数。)
    で表される圧電磁器組成物。
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