JP3632888B2 - 耐プラズマ性シール材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管・装置等の広範囲な分野で使用される静的および動的シールを担当するゴム系シール材のうち、特に半導体デバイス等を製造する場合に使用するプラズマを発生させる機器に用いるフッ素ゴム系シール材の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴムOリングのように、合成ゴムを主材料とし、これに加硫剤・可塑剤・カーボンブラック等のゴム薬品を配合し、金型によって加圧加熱成型したゴム系シール材は、柔らかく、接合面(フランジ表面等)とのなじみが良くシール性が優れているために、各種産業の装置・機器に幅広く使用されている。
このうち、半導体産業においては、エッチング等の工程における薬液ラインのシール材などに、耐熱性・耐薬品性に優れ、パーティクルと呼ばれる微粒子やガスの発生の少ないフッ素ゴム系シール材が使われている。
【0003】
このフッ素ゴムはフッ素によって炭素鎖が結合され不飽和結合を含まぬため、化学的に極めて安定であり、加工性は良好とはいえないが、アミンや過酸化物による架橋が可能で、ゴム中で最も耐熱性、耐油性、耐候性、耐オゾン性に優れている。
そして、このフッ素ゴムの中には、六フッ化プロピレンとフッ化ビニリデンの共重合体であるバイトン、ダイエルで代表される主鎖の一部に炭素−水素結合が存在するFKMと分類されるタイプと、主鎖が完全にフッ素化されているFFKMと分類されるパーフロロエラストマーとがあり、特にパーフロロエラストマーは従来のフッ素ゴム(FKM)を上回る耐熱性、耐薬品性を有しているため、半導体デバイスの製造においてエッチング工程等で使われる場合が多かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、最近このエッチング工程は、半導体デバイスの集積度を上げるために、薬液中で溶解するウエットエッチング方式から、微細加工の精度が良く加工形状を制御しやすい、気相中でプラズマによりエッチングするドライエッチング方式に変更され、この方式が主流となりつつある。
これに対応して、パーフロロエラストマーを主成分とするシール材も、補強剤として用いているカーボンブラックをホワイトカーボン等の白色充填材に変更して、耐プラズマ性の向上を図っているが、まだ十分ではない。特に、フロロカーボン系のエッチングガスに対する耐プラズマ性が不十分である。
【0005】
そのため、このフッ素ゴム系シール材がプラズマにより劣化し、表面のゴムが粉末化してパーティクルとなったり、動的シール材として用いているような部分ではゴムにねじれやひねりなどの応力が加わるため、クラックが入り破断することがあり、不良率の増大やシール材の交換のために装置を頻繁に停止させるので稼働率の低下につながり、半導体デバイスの製造上重大な問題となっていた。
本発明の目的は上記課題を解決するために、耐プラズマ性及びシール性に優れたフッ素ゴム系シ一ル材を提供することにある。
【0006】
【発明を解決しようとする手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは、エッチング等の装置に用いるシール材の耐プラズマ性を上げるために検討を行った結果、フッ素ゴム、特にパーフロロエラストマー、シリカ、硫酸バリウムを所定量で配合したゴム成形品が高い耐プラズマ性を示し、またシール性などの一般特性も良好であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本願の請求項1に係る発明は、フッ素ゴム100重量部に対して、シリカ10〜20重量部及び硫酸バリウム25〜35重量部を含んでなる耐プラズマ性シール材である。
また、請求項2に係る発明は、上記フッ素ゴム系シール材において、ゴムの種類がパーフロロエラストマーである耐プラズマ性シール材である。
【0008】
【作用】
ここで、フッ素樹脂100重量部に対してシリカ10〜20重量部及び硫酸バリウム25〜35重量部含むゴム成形品が耐プラズマ性に優れる理由は、以下のように推察される。
シリカはプラズマに対して遮蔽の効果があるといわれており、シリカの量を増やしてゆくと耐プラズマ性は改良される。しかし、シリカ量が多くなりすぎるとゴム成形品のゴム弾性がなくなり、シール性が著しく低下してしまう。また、シリカは超微粒子のため、ゴム中での分散があまり良くない。ところが、ここに硫酸バリウムを加えると、硫酸バリウムの真比重がシリカに比べて大きいため、ゴム中のシリカの分散を助ける働きをし、シリカが比較的少ない量でもゴム中に均一に分散され、耐プラズマ性に効果があるものと考えられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
フッ素ゴムとしては、主鎖に炭素−水素結合を含まず、完全にフッ素化されているパーフロロエラストマーが耐プラズマ性の点から最も好ましいが、条件の緩いところでは、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとの共重合体やフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレン、四フッ化エチレンとの共重合体、あるいは四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体や四フッ化エチレンとプロピレン、フッ化ビニリデンとの共重合体等の通常のフッ素ゴムを用いることもできる。
【0010】
シリカとしては、超微粒子で高純度の一般のゴム工業においてホワイトカーボンと称される無水けい酸、含水けい酸を使用し、その表面処理したものや造粒したものを用いることもできる。
【0011】
硫酸バリウムとしては、通常の工業用途に使う製品を使用することができるが、粒子径の細かい沈降性硫酸バリウムを用いるのが最も望ましい。
【0012】
上記シリカ及び硫酸バリウムの配合量は、フッ素ゴム100重量部に対して、シリカが10〜20重量部、好ましくは13〜17重量部であり、硫酸バリウムが25〜35重量部、好ましくは30〜35重量部である。
シリカ量が10重量部未満では、十分な耐プラズマ性が得られない。一方、シリカ量が20重量部を越える場合には、シール材のゴム弾性がなくなり、シール性が低下する。
硫酸バリウム量が25重量部未満では、ゴム中でのシリカの分散性が向上されず、耐プラズマ性を改善できない。一方、硫酸バリウム量が35重量部を越える場合には、シリカの体積比が低くなり、耐プラズマ性改善の効果が低下してしまい好ましくない。
【0013】
本発明のシール材には、必要に応じて、一般のゴム配合に用いる加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、受酸剤等のゴム配合薬品および可塑剤、補強剤、充填材等を適量配合してもよい。
【0014】
本発明のシール材の成型方法は特に制限されず、一般的な金型による圧縮成型以外に、押し出し成形等公知のゴム成型方法を用いることができる。また、シール材の形状も制限されず、例えばOリング状とすることができる。
一例を示すと、加硫剤入りフッ素ゴムとシリカ、硫酸バリウム及びその他の配合材料をオープンロールで混練後、Oリング用金型に充填して160℃で10分間架橋成形を行った後にオーブン中で180℃で4時間二次加硫を行うことで、Oリングが得られる。
【0015】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
表1に示す、加硫剤を含むパーフロロエラストマー100重量部、シリカ(日本アエロジル(株)製#200)15重量部、硫酸バリウム(堺化学工業(株)製B−1)30重量部をオープンロールで混練し、コンパウンドを得た。このコンパウンドを金型に充填し、160℃で10分間架橋成型を行った後、オーブン中で180℃で4時間二次加硫を行ないOリング(P26)を作成した。
〔比較例1〕
表1の比較例1に示す配合を用いて実施例1と同等のOリングを作成した。
〔比較例2〕
表1の比較例2に示す配合を用いて実施例1と同等のOリングを作成した。
【0016】
【表1】
【0017】
この実施例1、比較例1,2のOリングをブラズマ試験装置に入れ、CF4ガス流量30SCCM、高周波電力100W、電源周波数13.56MHzの条件で5時間プラズマ照射を行なう試験を3回繰り返した。
プラズマ試験後の試料の重量減少率および内圧10kgf/cm2Gのヘリウムガスを用いてのシール試験の結果を表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
表2より判るように、実施例は重量減少率が少なく、シール性も良好である。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により得られたフッ素ゴム系シール材は、耐プラズマ性やシール性が良好で、半導体デバイスの製造においてエッチング工程等に使用する装置のシール材として長期にわたり安定的に使用することができる。
Claims (2)
- フッ素ゴム100重量部に対して、シリカ10〜20重量部及び硫酸バリウム25〜35重量部を含んでなることを特徴とする耐プラズマ性シール材。
- 上記フッ素ゴムがパーフロロエラストマーであることを特徴とする請求項1記載の耐プラズマ性シール材。
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