JP6034689B2 - 含フッ素エラストマー組成物およびゴム部材 - Google Patents

含フッ素エラストマー組成物およびゴム部材 Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素エラストマー組成物およびゴム部材に関する。
半導体やフラットパネルディスプレイ、太陽電池の製造工程では、化学気相成長(CVD)工程やエッチング工程、アッシング工程などの様々な工程においてプラズマを用いた処理が行われている。これらの処理装置には、シール材、搬送ローラまたは搬送パッド等の部品が装着されているが、これらの部品に使用されるゴム部材にとって、プラズマ処理は非常に過酷な条件であり、たとえば、プラズマが照射される部分に汎用のゴム部材を用いると、ゴム部材が著しく劣化して短期間で使用できなくなる。それゆえ、プラズマ処理装置の部品に使用されるゴム部材には、一般的にはフルオロエラストマー(FKM)、パーフルオロエラストマー(FFKM)等のフッ素系エラストマー組成物を架橋成形したものが使用されている。
たとえば、特許文献1には、高負荷のかかった状態でプラズマ照射された場合にも、優れた性能を有する架橋成形品を形成せしめる含フッ素ゴム組成物として、過酸化物で架橋可能なフッ素含量68重量%以上のフッ素ゴム100重量部当り、多官能性不飽和化合物共架橋剤0.7重量部〜2.4重量部、および有機過酸化物0.3重量部〜1.0重量部を含有せしめたフッ素ゴム組成物が開示されている。
しかし、特許文献1に記載された含フッ素ゴム組成物の架橋成形品は、高負荷のかかった状態でプラズマ照射された場合、破断は生じないが、大きなクラックを生じる場合が多く、未だ高負荷のかかった状態における耐プラズマ性が十分とは言い難いものである。また、特許文献1に記載の発明では、高負荷のかかった状態における耐プラズマ性が高いものは、圧縮永久ひずみが極めて大きくなる傾向にあり(たとえば、特許文献1の実施例4、5のOリングについて、200℃、70時間での圧縮永久ひずみが56%および58%である)、シール材とした場合のシール性能や、搬送ローラまたは搬送パッドとした場合の搬送性能などが低く、問題であった。
特開2008−56739号公報
従って、本発明の目的は、圧縮永久ひずみが小さく、かつ高負荷のかかった状態でプラズマ照射した際においても、クラックが極めて発生しにくいゴム部材を成形することのできる含フッ素エラストマー組成物を提供することにある。
本発明は次の[1]〜[28]に関する。
[1]テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を60質量%以上含有する架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、下記式(I)で示されるシラン化合物から選択される1種または2種以上の化合物を0.1質量部〜10質量部含有する、含フッ素エラストマー組成物。
[式中、Rはフルオロアルキル基、R、RおよびRは同一または異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示し、R、RおよびRのうち2個以上がアルコキシ基である。]
[2]架橋可能な含フッ素エラストマーが、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量%からなる、上記[1]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[3]架橋可能な含フッ素エラストマーが、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体およびヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、上記[1]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[4]架橋可能な含フッ素エラストマーが、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体およびヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体からなる、上記[1]または[3]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[5]架橋可能な含フッ素エラストマーが、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[6]式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が、3個以上のフッ素により置換された炭素数2〜15のアルキル基である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[7]式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が、3〜13個のフッ素により置換された炭素数3〜8のアルキル基である、上記[6]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[8]式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が下記式Zで示される基である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[式中、mは0または1〜10の整数であり、nは1〜3の整数である。]
[9]式Z中、mが0または1〜5の整数であり、nが2である、上記[8]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[10]式Zで示される基が、トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシルまたはトリデカフルオロオクチルである、上記[8]または[9]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[11]式(I)中、R、RおよびRで示される基が互いに同一または異なるアルコキシ基である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[12]アルコキシ基がメトキシ基またはエトキシ基である、上記[11]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[13]式(I)中、R、RおよびRで示される基が互いに同一である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[14]式(I)で示されるシラン化合物が、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランまたは3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランである、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[15]さらに合成非晶質シリカを、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し1質量部〜100質量部含有する、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[16]合成非晶質シリカを、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し3質量部〜50質量部含有する、上記[15]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[17]合成非晶質シリカが乾式シリカである、上記[15]または[16]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[18]乾式シリカが親水性乾式シリカである、上記[17]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[19]さらに有機過酸化物を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し0.3質量部〜3質量部含有する、上記[1]〜[18]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[20]有機過酸化物を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し0.5質量部〜3質量部含有する、上記[19]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[21]有機過酸化物が1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンである、上記[19]または[20]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[22]さらに共架橋剤を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し2質量部〜10質量部含有する、上記[1]〜[21]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物。
[23]共架橋剤を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し3質量部〜8質量部含有する、上記[22]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[24]共架橋剤がトリアリルイソシアヌレートである、上記[22]または[23]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[25]上記[1]〜[24]のいずれかに記載の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなる、ゴム部材。
[26]プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器に装着される部品に用いられる、上記[25]に記載のゴム部材。
[27]プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器が、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置、またはそれらの周辺機器である、上記[26]に記載のゴム部材。
[28]部品が、シール材、搬送ローラまたは搬送パッドである、上記[26]または[27]に記載のゴム部材。
本発明の含フッ素エラストマー組成物を用いることにより、圧縮永久ひずみが小さく、かつ高負荷のかかった状態でプラズマ照射された際にも、クラックが極めて発生しにくいゴム部材を成形することができる。それゆえ、該組成物を用いることにより、プラズマ照射時の寿命が長く、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置等、プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器に装着される部品(シール材、搬送ローラまたは搬送パッドなど)に好適に使用できるゴム部材を提供することができる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を60質量%以上含有する架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、下記式(I)で示されるシラン化合物から選択される1種または2種以上の化合物0.1質量部〜10質量部を含有してなる。
[式中、Rはフルオロアルキル基、R、RおよびRは同一または異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示し、R、RおよびRのうち2以上がアルコキシ基である。]
本発明においては、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を60質量%以上含有する架橋可能な含フッ素エラストマーを用いる。かかる含フッ素エラストマーを用いることにより、高負荷のかかった状態における耐プラズマ性を向上させることができる。耐プラズマ性向上の観点からは、架橋可能な含フッ素エラストマー中のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体の含有量は80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
本発明において、「架橋可能な含フッ素エラストマー」とは、分子内にフッ素を含むエラストマーであって、電子線または放射線や、過酸化物等により架橋することが可能であるものをいう。
従って、上記「テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体」には、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンを主な構成モノマーとする共重合体であって、電子線や放射線により架橋可能である共重合体、および、さらに二重結合や反応性ハロゲン基等の架橋点となるモノマー単位を有し、過酸化物等により架橋可能である共重合体が含まれる。「テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体」としては、「アフラス100S」、「アフラス100H」、「アフラス150P」、「アフラス150E」、「アフラス150L」、「アフラス150C」、「アフラス150CS」、「アフラス300S」(以上旭硝子株式会社製)等の市販の製品を用いることができる。本発明においては、これらから1種または2種以上を選択して用いることができる。
なお、本発明の目的には、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体のフッ素含有率は、53%〜63%であることが好ましい。
架橋可能な含フッ素エラストマーは、上記テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体以外の架橋可能な含フッ素エラストマーを、40質量%以下の量で含有していてもよい。前記含フッ素エラストマーとしては、公知の種々のものを用いることができ、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド系共重合体等の二元系含フッ素エラストマーや、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体等の三元系含フッ素エラストマーが例示される。中でも、三元系含フッ素エラストマーが好ましく用いられ、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体がより好ましく用いられる。
従って、本発明の含フッ素エラストマー組成物において、架橋可能な含フッ素エラストマーとして、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体以外の含フッ素エラストマーを含む場合には、該含フッ素エラストマーは、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体と、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体とからなることが好ましい。
ここで、「テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体」、「ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド系共重合体」、および「ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体」には、上記「トラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体」の場合と同様に、電子線や放射線により架橋可能な各共重合体と、二重結合や反応性ハロゲン基等の架橋点となるモノマー単位を有し、過酸化物等により架橋可能な各共重合体が含まれる。
上記ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド系共重合体としては、「ダイエルG−801」(ダイキン工業株式会社製)等の市販の製品を用いることができ、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体としては、「ダイエルG−901」、「ダイエルG−902」、「ダイエルG−912」、「ダイエルG−952」、「ダイエルG−9074」、「ダイエルG−9062」(以上ダイキン工業株式会社製)、「バイトンGF−600S」(デュポン社製)、「テクノフロンP959」、「テクノフロンP459」、「テクノフロンP757」、「テクノフロンP457」(以上ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)等の市販の製品を用いることができる。本発明においては、これらから1種または2種以上を選択して用いることができる。また、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体についても、同様に市販の製品を利用することができる。
なお、本発明においては、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体以外の架橋可能な含フッ素エラストマーとしては、フッ素含有率が66質量%以上であるものを用いることが好ましい。
また、本発明において、架橋可能な含フッ素エラストマーとしては、製造コストの点から過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーが好ましく用いられる。過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーとは、過酸化物による架橋点となるモノマー単位(たとえば二重結合構造、反応性ハロゲン基など)を分子構造中に有する含フッ素エラストマーをいう。かかる過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーは、たとえば、過酸化物架橋点となるモノマー単位を分子構造中に持たない含フッ素エラストマーに、熱処理により二重結合を導入したり、反応性ハロゲン基(たとえば、臭化オレフィン、ヨウ化オレフィン等)等の有機過酸化物架橋性基を導入したりすることによって得ることができるが、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーとして各社より提供されている市販の製品を用いることが便利である。
本発明の含フッ素エラストマー組成物における、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を60質量%以上含有する架橋可能な上記含フッ素エラストマーの含有量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー組成物全量に対し、総量で40.0質量%〜99.5質量%とすることが好ましく、60.0質量%〜97.0質量%とすることがより好ましく、70.0質量%〜95.0質量%とすることがさらに好ましい。
本発明において用いるシラン化合物は、下記の式(I)で示される。
[式中、Rはフルオロアルキル基、R、RおよびRは同一または異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示し、R、RおよびRのうち2以上がアルコキシ基である。]
式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基としては、3個以上のフッ素により置換された炭素数2〜15程度のアルキル基が挙げられ、3個以上のフッ素により置換された炭素数3〜12のアルキル基が好ましく、3〜13個のフッ素により置換された炭素数3〜8のアルキル基がより好ましい。また、下記Zで示される基(式中、mは0または1〜10の整数であり、好ましくは0または1〜8の整数、より好ましくは0または1〜6の整数であり、さらに好ましくは0または1〜5の整数である。nは1〜3の整数であり、好ましくは2である。)が好ましく、トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロオクチル等が特に好ましい。
[式中、mは0または1〜10の整数であり、nは1〜3の整数である。]
式(I)中、R、RまたはRで示されるアルキル基としては、炭素数1〜10程度のアルキル基が挙げられ、メチル基が特に好ましい。また、アルコキシ基としては、炭素数1〜3程度のアルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。本発明の目的には、式(I)中、R、RおよびRで示される基のうち、2個以上がアルコキシ基であることを要し、3個ともアルコキシ基であることがより好ましい。また、入手性の点で、式(I)中のR、RおよびRで示される基が互いに同一であるものが好ましい。
本発明においては、上記シラン化合物として、たとえば、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどが挙げられ、機能性シランとして市販されている製品を用いることができる。かかる市販製品としては、「KBM−7103」(信越化学工業株式会社製)、「DYNASYLAN F8261」(エボニック インダストリーズ社製)、「SIT8175.0」、「SIT8176.0」、「SIN6597.65」、「SIN6597.7」(以上ゲレスト社製)等を挙げることができる。本発明の含フッ素エラストマー組成物には、上記のシラン化合物より、1種または2種以上を選択して用いることができるが、製造性(配合作業効率)の点で1種を単独で用いることが好ましい。
上記シラン化合物の1種または2種以上の化合物は、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、これらの総量で0.1質量部〜10質量部、好ましくは0.2質量部〜5質量部、より好ましくは0.5質量部〜3質量部含有させる。上記シラン化合物の総含有量が0.1質量部未満である場合、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材のプラズマ照射時の耐クラック性が不十分である。一方、上記シラン化合物の総含有量が10質量部を超えると、含フッ素エラストマー組成物の成形加工時に発泡が生じ、成形が困難となるため問題である。
本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋することによって、本発明のゴム部材が得られる。本発明の含フッ素エラストマー組成物の架橋方法は特に制限されず、たとえば、電子線架橋、放射線架橋、有機過酸化物を用いた過酸化物架橋が挙げられ、これらを組み合わせて架橋することができる。製造コストの観点からは、有機過酸化物を用いた過酸化物架橋(以下本明細書において「有機過酸化物架橋」という)が好ましい。
有機過酸化物架橋によって本発明のゴム部材を得る場合、架橋剤として用いる有機過酸化物としては、一般的にエラストマーの架橋剤として用いられる有機過酸化物であれば特に制限なく用いることができ、たとえば、ジベンゾイルパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いる。
本発明においては、含フッ素エラストマー組成物を架橋して得られるゴム部材の圧縮永久ひずみの観点から、有機過酸化物として、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましく用いられる。
本発明において、上記有機過酸化物は、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、好ましくは0.3質量部〜3質量部、より好ましくは0.5質量部〜3質量部、さらに好ましくは0.5質量部〜2質量部、より一層好ましくは0.7質量部〜1.5質量部含有させる。過酸化物の含有量が0.3質量部以上であると、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の圧縮永久ひずみ特性が極めて良好であり、3質量部以下であると含フッ素エラストマー組成物の成形時に発泡等を生じにくいなど、成形性の点で好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物には、共架橋剤を含有させてもよい。
かかる共架橋剤としては、一般的にエラストマーの共架橋剤として用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、たとえば、キノンジオキシム系(p−キノンジオキシム等)、メタクリレート系(トリエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等)、アリル系(ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート等)、マレイミド系(マレイミド、フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等)、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンまたは1,2−ポリブタジエン等の複数の炭素−炭素不飽和基を有するモノマー(多官能モノマー)が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物においては、アリル系の共架橋剤を用いることが好ましく、より好ましくはトリアリルイソシアヌレートを用いることができる。
本発明において、上記共架橋剤は、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、好ましくは2質量部〜10質量部、より好ましくは3質量部〜8質量部、さらに好ましくは4質量部〜6質量部含有させる。共架橋剤の含有量が2質量部以上であると、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の圧縮永久ひずみ特性が極めて良好であり、共架橋剤の含有量が10質量部以下であると、金型汚染性が低く、本発明のゴム部材の成形加工性上、好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物には、さらに充填剤を含有させることができる。充填剤は、エラストマー組成物において、エラストマーの補強、増量、加工性の改善等の目的で使用される。
上記充填剤としては、たとえば、ポリアクリロニトリル、ナイロンおよびポリエステル等の合成繊維;ポリスチレンラテックス、尿素−ホルムアルデヒド粒子およびポリエチレン−パウダー等の合成樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリドおよびポリビニルフルオリド等のフッ素樹脂パウダーなどの有機充填剤、カーボンブラック;ホワイトカーボン、ケイ酸、珪藻土、焼成珪藻土、珪石、珪砂およびクリストバライト等のケイ酸;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリナイト、カオリンクレー(カオリナイトおよび石英)、焼成クレー(メタカオリン)、タルク、白雲母、絹雲母、ウォラストナイト、蛇紋石、パイロフィライト等のケイ酸塩類;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩類;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ドロマイト等の炭酸塩類などの無機充填剤が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラック、グラファイト、ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の無機充填剤、およびフッ素樹脂パウダーが好ましく用いられ、より好ましくはケイ酸が用いられる。本発明の含フッ素エラストマー組成物には、これら充填剤より1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明において、ケイ酸としては、一般的にエラストマーの充填剤として用いられるものであれば特に制限なく、1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明に用いるケイ酸のSiO純度は特に限定されないが、99%以上であることが好ましい。本発明の含フッ素エラストマー組成物に、該純度が99%以上であるケイ酸を含有させた場合、これを架橋してなるゴム部材を半導体やフラットパネルディスプレイ製造等に用いると、前記ゴム成分の不純物成分(重金属、マグネシウム、カルシウムまたはナトリウムなど)に起因するメタルコンタミが極めて生じにくいため好ましい。
本発明の目的には、ケイ酸として、乾式シリカまたは湿式シリカなどの合成非晶質シリカが好ましく、親水性乾式シリカまたは疎水性乾式シリカなどの乾式シリカがより好ましく、親水性乾式シリカがさらに好ましい。
また、ケイ酸の平均一次粒子径は特に限定されないが、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは7nm〜100nmである。
ケイ酸の平均一次粒子径が5nm以上であると、含フッ素エラストマー組成物の分散性の観点で好ましく、また500nm以下であると、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の物理的強度の観点で好ましい。ここで、前記平均一次粒子径は、3,000〜5,000個のケイ酸粒子の電子顕微鏡写真の直径を測定し、それらの算術平均から求めた値である。
次に、ケイ酸の比表面積は特に限定されないが、好ましくは20m/g〜500m/g、より好ましくは30m/g〜400m/gである。
ケイ酸の比表面積が20m/g以上であると、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の物理的強度の観点で好ましく、また500m/g以下であると、含フッ素エラストマー組成物の成形加工性の観点で好ましい。ここで、前記比表面積は、BET法により測定した値である。
本発明においては、上記ケイ酸として、市販されている製品を用いることができる。かかる市販品としては、「アエロジルOX50」、「アエロジル50」、「アエロジル90G」、「アエロジル130」、「アエロジル200」、「アエロジル300」、「アエロジル380」、「アエロジルR972」、「アエロジルR974」、「アエロジルR976」、「アエロジルRY50」、「アエロジルNAX50」、「アエロジルNX90G」、「アエロジルRX200」、「アエロジルRX300」(以上日本アエロジル株式会社製)、「ニップシールAQ」、「ニップシールVN3」、「ニップシールLP」、「ニップシールER」、「ニップシールNS」、「ニップシールNA」、「ニップシールKQ」、「ニップシールKM」、「ニップシールKP」、「ニップシールE−75」、「ニップシールE−743」、「ニップシールE−150J」、「ニップシールE−170」、「ニップシールE−200」、「ニップシールK−500」、「ニップシールL−250」、「ニップシールG−300」(以上東ソー・シリカ株式会社製)等を挙げることができる。本発明の含フッ素エラストマー組成物には、上記のケイ酸より1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明において上記充填剤の含有量は特に限定されないが、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、好ましくは1質量部〜100質量部、より好ましくは2質量部〜60質量部、さらに好ましくは3質量部〜50質量部である。充填剤の総含有量が1質量部以上であると、含フッ素エラストマー組成物の混合加工性の点で好ましく、100質量部以下であると、含フッ素エラストマー組成物の成形加工性の点で好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物には、充填剤として、上記した乾式シリカ等のケイ酸を含有させることが好ましい。ケイ酸の含有量は、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、3質量部〜50質量部とすることが好ましく、3質量部〜40質量部とすることがより好ましく、5質量部〜30質量部とすることがさらにより好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物には、たとえば老化防止剤(たとえばアミン系老化防止剤(フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等)、フェノール系老化防止剤(モノ(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、イミダゾール系老化防止剤(2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール等)など)、可塑剤(たとえばフタル酸系可塑剤(フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸系可塑剤(ジオクチルアジペート等)、セバシン酸系可塑剤(セバシン酸ジオクチル等)、トリメリット酸系可塑剤(トリメリテート等)、重合型可塑剤(たとえばポリエーテルもしくはポリエステル等の重合型可塑剤)など)または加工助剤(たとえばステアリン酸またはその金属塩、パルミチン酸またはその金属塩、パラフィンワックス等)など、ゴム工業で一般的に使用されている配合剤を必要に応じて適宜添加することができる。前記の各配合剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて適宜設定することができる。
なお、本発明の含フッ素エラストマー組成物には、加工助剤を添加してもよい。かかる加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の脂肪酸金属塩が好ましい。前記脂肪酸金属塩の添加量は、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対して0.1質量部〜2質量部とすることが好ましい。
また、本発明の含フッ素エラストマー組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、非架橋性の含フッ素エラストマーを含有させることができる。
「非架橋性の含フッ素エラストマー」とは、電子線や放射線により主鎖切断が優先的に起こる崩壊型(切断型)のエラストマーで、過酸化物による架橋点となるモノマー単位をも有しないようなものをいう。
本発明の含フッ素エラストマー組成物を、従来公知のインタミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機、オープンロール又は二軸混練押出機等を用いて混練した後、射出成形機、圧縮成形機、加熱プレス機又は押出成形機等を用いて架橋し、所望の形状に成形して本発明のゴム部材を得ることができる。前記成形時において、たとえば140℃〜200℃で2分間〜30分間の一次架橋を施した後、必要に応じて、150℃〜230℃で1時間〜24時間の二次架橋を施す、というような条件で架橋を行うことが好ましい。二次架橋を施すと、一次架橋のみの場合のゴム部材と比較して圧縮永久ひずみを小さくできるため、好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材は、圧縮永久ひずみが小さく、かつ高負荷のかかった状態でプラズマ照射した際においてもクラックが極めて発生しにくく、プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器に装着される部品において、寿命の長いゴム部材として好適に用いられる。プラズマを用いた処理を含む工程としては、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池等の製造における化学気相成長(CVD)工程やエッチング工程、アッシング工程などが挙げられる。
従って、本発明は、上記含フッ素エラストマー組成物を適宜成形することにより、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置またはそれらの周辺機器等に装着される部品(シール材、搬送ローラまたは搬送パッドなど)に好適に用い得るゴム部材を提供することができる。
本発明のゴム部材の形状は、特に限定されず、たとえば、Oリング、Dリング、角リング、Xリング、Tリング等のリング形状や、シート形状、円柱形状等が挙げられる。本発明のゴム部材は、金属材料や樹脂材料と接着等により組み合わせた複合体としてもよい。本発明のゴム部材の大きさは、特に限定されず、目的に応じ適宜選ばれる。
さらに本発明について、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例のエラストマー組成物の調製に使用した材料は、以下のとおりである。
架橋可能な含フッ素エラストマーとしては、次の過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーを用いた。
(a)テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体;「アフラス100S」および「アフラス150P」(旭硝子株式会社製)、フッ素含有率=57質量%
(b)ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体;「ダイエルG−912」(ダイキン工業株式会社製)、フッ素含有率=71質量%
式(I)で示されるシラン化合物としては、次の化合物を用いた。
(a)3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン;「KBM−7103」(信越化学工業株式会社製)、式(I)中、R=−CHCHCF、R、RおよびR=−OCH
(b)3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン;「Dynasylan F8261」(エボニック インダストリーズ社製)、式(I)中、R=−(CH(CFCF、R、RおよびR=−OCHCH
式(I)で示される化合物以外のシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン;「KBM−1003」(信越化学工業株式会社製)を用いた。
有機過酸化物としては、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;「パーブチルP」(日油株式会社製)を、共架橋剤としては、多官能モノマーであるトリアリルイソシアヌレート;「TAIC」(日本化成株式会社製)を用いた。
充填剤としては、次のものを用いた。
(a)ケイ酸:合成非晶質親水性乾式シリカ;「アエロジル50」(日本アエロジル株式会社製)、SiO純度=99.9%、平均一次粒子径=40nm、BET比表面積=50m/g、および「アエロジル200」(日本アエロジル株式会社製)、SiO純度=99.9%、平均一次粒子径=12nm、BET比表面積=200m/g
(b)ケイ酸:合成非晶質疎水性乾式シリカ;「アエロジルR972」(日本アエロジル株式会社製)、疎水性(ジメチルジクロロシラン処理)、SiO純度=99.8%、平均一次粒子径=16nm、BET比表面積=130m/g
加工助剤としては、次の脂肪酸金属塩を用いた。
脂肪酸金属塩:「ステアリン酸ナトリウム」(和光純薬工業株式会社製)、パルミチン酸ナトリウム約30質量%含有
[実施例1および比較例1]
表1に示す割合の各成分をオープンロールにて混練して、実施例1および比較例1の含フッ素エラストマー組成物を得た。次いで、各含フッ素エラストマー組成物を、それぞれプレス成形装置にて170℃で20分間プレス架橋した後、さらに200℃で4時間2次架橋して、シート形状(縦150mm、横150mm、厚さ2mm)、円柱形状(直径29mm、厚さ12.5mm)、Oリング形状(AS568−206に規定する内径および太さを有する)のゴム部材を得た。なお、表1中の各成分の含有量は、質量部により示した。
実施例1および比較例1の各含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材を用いて、以下の評価を行った。
(1)常態物性
含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の硬さ、引張強さおよび切断時伸びを次に示す方法により、測定した。
(a)硬さ
JISK6253:1997に準拠し、上記シート形状のゴム部材を3枚重ねて試験片として、タイプAデュロメータを用いて瞬間値を測定した。本発明の目的には、タイプAデュロメータにより測定される含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の硬さは、50〜95であることが好ましい。
(b)引張強さ
引張強さは、JISK6251に準拠し、上記シート形状のゴム部材を試験片として、ダンベル3号形を用いて測定した。本発明の目的には、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の引張強さは、10MPa以上であることが好ましい。
(c)切断時伸び
伸びは、JISK6251に準拠し、上記シート形状のゴム部材を試験片として、ダンベル3号形を用いて測定した。本発明の目的には、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の切断時伸びは、100%以上であることが好ましい。
(2)圧縮永久ひずみ
JISK6262に準拠し、上記円柱形状のゴム部材を大型試験片として用い、圧縮率25%、200℃で70時間圧縮し、圧縮装置から取り出して30分後に残留するひずみを求めた。圧縮永久ひずみ(%)は、次の式(1)により算出した。
なお、本発明の目的には、含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材の圧縮永久ひずみが50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
(3)20%伸長時の耐プラズマ性
上記Oリング形状のゴム部材を試料として、直径15mmの石英製の円柱に引き伸ばして装着し、20%伸張した状態で、下記条件にて酸素プラズマまたは酸素・四フッ化炭素混合プラズマを発生させた平行平板電極間の下部電極上に載置することによってプラズマ照射し、プラズマ照射による試料の質量減少率(%)を求めた。また、試料におけるクラックの発生の有無を、試料表面を顕微鏡により100倍に拡大して観察した。
<装置>
ヤマト科学株式会社製 プラズマクリーニング装置 型式V―1000
<酸素プラズマ照射条件>
処理モード:DP方式
周波数:13.56MHz
出力:1,000W
酸素流量:100mL/分
圧力:20Pa
照射時間:表中に示す時間
<酸素・四フッ化炭素混合プラズマ照射条件>
処理モード:DP方式
周波数:13.56MHz
出力:1,000W
酸素・四フッ化炭素混合ガス流量:100mL/分
酸素・四フッ化炭素混合ガス混合比: 酸素:四フッ化炭素=9:1(体積流量比率)
圧力:10Pa
照射時間:表中に示す時間
上記についての評価結果は、表1に併せて示した。
表1より明らかなように、本発明の実施例1の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材は良好な常態物性を示し、圧縮永久ひずみも十分に小さいものであった。さらに、20%伸張した状態においても、酸素プラズマ照射および酸素・四フッ化炭素混合プラズマ照射によるクラックの発生は見られなかった。すなわち、本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材は、充分に小さい圧縮永久ひずみ特性とともに、高負荷のかかった状態でプラズマ照射した際においても、良好な耐プラズマ特性を併せ持つことが確認された。
一方、式(I)で示されるシラン化合物を含有しない比較例1の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材においては、常態物性、圧縮永久ひずみ、および20%伸長した状態におけるプラズマ照射時の質量減少率については、実施例1の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材と大差なかったが、酸素プラズマ照射後および酸素・四塩化炭素混合プラズマ照射後のいずれにおいても、クラックの発生が観察された。
[実施例2〜11、比較例2〜7]
表2に示す割合の各成分をオープンロールにて混練し、実施例2〜11および比較例2〜7の含フッ素エラストマー組成物を得た。次いで、実施例1および比較例1の場合と同様に、前記各含フッ素エラストマー組成物の架橋により、シート形状(縦150mm、横150mm、厚さ2mm)、円柱形状(直径29mm、厚さ12.5mm)、Oリング形状(AS568−206に規定する内径および太さを有する)のゴム部材を得た。なお、表2中の各成分の含有量は、質量部により示した。
実施例2〜11および比較例2〜7の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなる各ゴム部材について、上記と同様に(1)常態物性、(2)圧縮永久ひずみ、および(3)20%伸張時の耐プラズマ性を評価し、評価結果を表2に併せて示した。
表2より明らかなように、本発明の実施例2〜11の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材は良好な常態物性を示した。さらに、20%伸張した状態で、酸素プラズマ照射後、酸素・四フッ化炭素混合プラズマ照射後のいずれにおいても、試料におけるクラックの発生は見られなかった。
一方、式(I)で示されるシラン化合物を含有しない比較例2、3、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマー中のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体の含有量が40質量%である比較例4、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーとしてテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を含有しない比較例5、および式(I)で示される化合物以外のシラン化合物を含有する比較例6の各含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材においては、常態物性、圧縮永久ひずみ、および20%伸張した状態におけるプラズマ照射時の質量減少率については、実施例2〜11の各含フッ素エラストマー組成物を架橋してなるゴム部材と大差なかったが、酸素プラズマ照射後および酸素・四塩化炭素混合プラズマ照射後のいずれにおいても、クラックの発生が観察された。また式(I)で示されるシラン化合物を、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し20質量部含有する比較例7の含フッ素エラストマー組成物は、成形時に発泡したため成形することができず、評価を行うことができなかった。
以上詳述したように、本発明によれば、圧縮永久ひずみが小さく、耐プラズマクラック性が極めて高いため、高負荷のかかった状態でプラズマ照射した際に、クラックがきわめて発生しにくいゴム部材の成形に好適な、含フッ素エラストマー組成物を提供することができる。
また、本発明により、半導体装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置等、プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器に装着される部品(シール材、搬送ローラまたは搬送パッドなど)に好適に用い得るゴム部材を提供することができる。

Claims (28)

  1. フッ素含有率が53%〜63%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を60質量%以上含有する架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し、下記式(I)で示されるシラン化合物から選択される1種または2種以上の化合物を0.1質量部〜10質量部含有する、含フッ素エラストマー組成物。
    [式中、Rはフルオロアルキル基、R、RおよびRは同一または異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示し、R、RおよびRのうち2個以上がアルコキシ基である。]
  2. 架橋可能な含フッ素エラストマーが、フッ素含有率が53%〜63%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量%からなる、請求項1に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  3. 架橋可能な含フッ素エラストマーが、フッ素含有率が53%〜63%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体およびヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、請求項1に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  4. 架橋可能な含フッ素エラストマーが、フッ素含有率が53%〜63%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体およびヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン系共重合体からなる、請求項1または3に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  5. 架橋可能な含フッ素エラストマーが、過酸化物架橋可能な含フッ素エラストマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  6. 式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が、3個以上のフッ素により置換された炭素数2〜15のアルキル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  7. 式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が、3〜13個のフッ素により置換された炭素数3〜8のアルキル基である、請求項6に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  8. 式(I)中、Rで示されるフルオロアルキル基が下記式Zで示される基である、請求項1〜のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
    [式中、mは0または1〜10の整数であり、nは1〜3の整数である。]
  9. 式Z中、mが0または1〜5の整数であり、nが2である、請求項8に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  10. 式Zで示される基が、トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシルまたはトリデカフルオロオクチルである、請求項8または9に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  11. 式(I)中、R、RおよびRで示される基が互いに同一または異なるアルコキシ基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  12. アルコキシ基がメトキシ基またはエトキシ基である、請求項11に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  13. 式(I)中、R、RおよびRで示される基が互いに同一である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  14. 式(I)で示されるシラン化合物が、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランまたは3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  15. さらに合成非晶質シリカを、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し1質量部〜100質量部含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  16. 合成非晶質シリカを、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し3質量部〜50質量部含有する、請求項15に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  17. 合成非晶質シリカが乾式シリカである、請求項15または16に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  18. 乾式シリカが親水性乾式シリカである、請求項17に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  19. さらに有機過酸化物を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し0.3質量部〜3質量部含有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  20. 有機過酸化物を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し0.5質量部〜3質量部含有する、請求項19に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  21. 有機過酸化物が1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンである、請求項19または20に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  22. さらに共架橋剤を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し2質量部〜10質量部含有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  23. 共架橋剤を、架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対し3質量部〜8質量部含有する、請求項22に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  24. 共架橋剤がトリアリルイソシアヌレートである、請求項22または23に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の含フッ素エラストマー組成物を架橋してなる、ゴム部材。
  26. プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器に装着される部品に用いられる、請求項25に記載のゴム部材。
  27. プラズマを用いた処理を含む工程で用いられる装置またはそれらの周辺機器が、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置、またはそれらの周辺機器である、請求項26に記載のゴム部材。
  28. 部品が、シール材、搬送ローラまたは搬送パッドである、請求項26または27に記載のゴム部材。
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